特開2017-189142(P2017-189142A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-189142(P2017-189142A)
(43)【公開日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】魚加工食品製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20170922BHJP
【FI】
   A23L17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-81019(P2016-81019)
(22)【出願日】2016年4月14日
(71)【出願人】
【識別番号】399050806
【氏名又は名称】有限会社 いい友
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】田代 静子
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC03
4B042AC05
4B042AD08
4B042AG12
4B042AG27
4B042AH01
4B042AK11
4B042AP02
4B042AP07
4B042AP17
4B042AP18
4B042AP21
4B042AW06
(57)【要約】
【課題】表面全域にすり胡麻付着層が形成された食感および食味に優れた複数の鰯加工食品を作ることができる魚加工食品製造方法を提供する。
【解決手段】魚加工食品製造方法は、それら加工用鰯16を所定温度で所定時間乾燥させた後、乾燥させたそれら加工用鰯16を焼き上げ、焼き上げたそれら加工用鰯16を所定時間室温で放置して加工用鰯16の熱を自然に放熱させ、冷ましたそれら加工用鰯16の全体に加工用鰯16のうま味成分と調味料液とが混ざった味覚成分を染み込ませるとともに、味覚成分を染み込ませたそれら加工用鰯16を所定温度の真空雰囲気で所定時間熟成して加工用鰯16の表面全域に味覚成分を染み出させ、味覚成分が染み出したそれら加工用鰯16の表面全域にすり胡麻11を塗して表面全域にすり胡麻付着層12が形成された複数の魚加工食品10を作る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の生魚を調理加工することで複数の魚加工食品を作る魚加工食品製造方法において、
前記魚加工食品製造方法が、複数の前記生魚を洗浄しつつそれら生魚の頭を除去して複数の加工用魚材を作る前処理工程と、それら加工用魚材を所定温度で所定時間乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程によって乾燥させたそれら加工用魚材を焼き上げる焼き上げ工程と、前記焼き上げ工程によって焼き上げたそれら加工用魚材を所定時間室温で放置して該加工用魚材の熱を自然に放熱させる放熱工程と、前記放熱工程によって冷まされたそれら加工用魚材の全体に該加工用魚材のうま味成分と調味料液とが混ざった味覚成分を染み込ませる調味工程と、前記調味工程によって前記味覚成分を染み込ませたそれら加工用魚材を所定温度の真空雰囲気で所定時間熟成し、それら加工用魚材に染み込んだ前記味覚成分の一部を該加工用魚材の表面全域に染み出させる熟成工程と、前記熟成工程によって前記味覚成分が染み出したそれら加工用魚材の表面全域にすり胡麻を塗し、表面全域に前記すり胡麻が付着した複数の前記魚加工食品を作るすり胡麻塗し工程とを有することを特徴とする魚加工食品製造方法。
【請求項2】
前記すり胡麻塗し工程が、それら加工用魚材の表面全域を所定量の前記すり胡麻で包被しつつ所定量の該すり胡麻を該加工用魚材の表面全域に所定圧で押し付け、それら加工用魚材の表面全域に染み出した前記味覚成分を接着成分として該加工用魚材の表面全域に所定量の前記すり胡麻を付着させ、表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を作る請求項1に記載の魚加工食品製造方法。
【請求項3】
前記魚加工食品製造方法が、前記すり胡麻塗し工程によって表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を袋に収容する袋収容工程を含み、前記袋収容工程が、前記袋に所定量の前記すり胡麻を収容しつつ、前記すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を該袋に収容し、前記すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を前記袋に収容したすり胡麻に埋める請求項2に記載の魚加工食品製造方法。
【請求項4】
前記袋が、互いに対向する表面フィルムと裏面フィルムとの周縁部をシールしたシール袋であり、前記袋収容工程が、前記シール袋の収容容積100%に対して20〜30%の割合の前記すり胡麻を該シール袋の内部に収容しつつ、前記すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を該シール袋の内部に収容する請求項3に記載の魚加工食品製造方法。
【請求項5】
前記調味工程が、それら加工用魚材を前記調味料液に浸した状態で該加工用魚材を該調味料液とともに所定時間炊き込むことで、それら加工用魚材の全体に前記味覚成分を染み込ませる請求項1ないし請求項4いずれかに記載の魚加工食品製造方法。
【請求項6】
前記熟成工程が、前記味覚成分を染み込ませたそれら加工用魚材を真空冷却によって4〜5℃に急速冷却しつつ、それら加工用魚材を前記真空雰囲気で約24時間熟成させる請求項1ないし請求項5いずれかに記載の魚加工食品製造方法。
【請求項7】
前記生魚が、生鰯、生わかさぎ、生小アジのうちのいずれかである請求項1ないし請求項6いずれかに記載の魚加工食品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の生魚を調理加工することで複数の魚加工食品を作る魚加工食品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小魚の佃煮や魚の薫製、魚の煮付け等の魚を材料にした各種の魚加工食品が製造販売されている。そのような魚加工食品の製造方法の一例として、新鮮な魚(以下、原魚と云う)の鱗、内臓等の食せぬ部位を除き、洗浄等の事前処理を施して煮魚用原魚を作り、所定の濃度を示す下味付け調味液にその煮魚用原魚を漬け込み、氷温庫内において6時間〜24時間熟成処理を施して煮魚料理の半加工製品を作る第1製造工程と、下味付け原液に漬け込み、氷温庫内にて熟成処理を施した半加工製品を下味付け調味液から取り出して行なう密封包装過程において、半加工製品に煮付け用たれを封入し、または、密封包装を行なった半加工製品に薄味または濃い味等の人の好みに合わせた煮付け用たれを添付する第2製造工程とを有する煮魚料理の早煮半加工製品製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−132069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の早煮半加工製品製造方法では、第1製造工程において下味付け調味液に漬け込んだ煮魚用原魚を氷温庫内において6時間〜24時間熟成処理を施すから、熟成処理時間に大きなバラツキがあり、煮魚用原魚に対して同じ味付けをすることが難しい。また、第2製造工程において人の好みに合わせて薄味、濃い味等の煮付け用たれを半加工製品に封入または添付するから、味が濃すぎたり薄すぎたりして人の好みに合わせた食味に優れた早煮半加工製品を作ることが難しい。
【0005】
本発明の目的は、加工用魚材に魚のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分が染み込み、すべての加工用魚材に同じ味覚成分が染み込んだ味付けをすることができ、表面全域にすり胡麻を付着させた食感および食味に優れた複数の魚加工食品を作ることができる魚加工食品製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、表面全域にすり胡麻のすり胡麻付着層を形成することができ、魚のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分を備えるとともに、胡麻の風味と香ばしさとを備えた複数の魚加工食品を作ることができ、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の魚加工食品を作ることができる魚加工食品製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、所定の生魚を調理加工することで複数の魚加工食品を作る魚加工食品製造方法である。
【0007】
前記前提における本発明の魚加工食品製造方法の特徴は、複数の生魚を洗浄しつつそれら生魚の頭を除去して複数の加工用魚材を作る前処理工程と、それら加工用魚材を所定温度で所定時間乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程によって乾燥させたそれら加工用魚材を焼き上げる焼き上げ工程と、焼き上げ工程によって焼き上げたそれら加工用魚材を所定時間室温で放置して加工用魚材の熱を自然に放熱させる放熱工程と、放熱工程によって冷まされたそれら加工用魚材の全体に加工用魚材のうま味成分と調味料液とが混ざった味覚成分を染み込ませる調味工程と、調味工程によって味覚成分を染み込ませたそれら加工用魚材を所定温度の真空雰囲気で所定時間熟成し、それら加工用魚材に染み込んだ味覚成分の一部を加工用魚材の表面全域に染み出させる熟成工程と、熟成工程によって味覚成分が染み出したそれら加工用魚材の表面全域にすり胡麻を塗し、表面全域にすり胡麻が付着した複数の魚加工食品を作るすり胡麻塗し工程とを有することにある。
【0008】
本発明の魚加工食品製造方法の一例としては、すり胡麻塗し工程が、それら加工用魚材の表面全域を所定量のすり胡麻で包被しつつ所定量のすり胡麻を加工用魚材の表面全域に所定圧で押し付け、それら加工用魚材の表面全域に染み出した味覚成分を接着成分として加工用魚材の表面全域に所定量のすり胡麻を付着させ、表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を作る。
【0009】
本発明の魚加工食品製造方法の他の一例としては、すり胡麻塗し工程によって表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を袋に収容する袋収容工程を含み、袋収容工程が、袋に所定量のすり胡麻を収容しつつ、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を該袋に収容し、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を袋に収容したすり胡麻に埋める。
【0010】
本発明の魚加工食品製造方法の他の一例としては、袋が、互いに対向する表面フィルムと裏面フィルムとの周縁部をシールしたシール袋であり、袋収容工程が、シール袋の収容容積100%に対して20〜30%の割合のすり胡麻をシール袋の内部に収容しつつ、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品をシール袋の内部に収容する。
【0011】
本発明の魚加工食品製造方法の他の一例としては、調味工程が、それら加工用魚材を調味料液に浸した状態で加工用魚材を調味料液とともに所定時間炊き込むことで、それら加工用魚材の全体に味覚成分を染み込ませる。
【0012】
本発明の魚加工食品製造方法の他の一例としては、熟成工程が、味覚成分を染み込ませたそれら加工用魚材を真空冷却によって4〜5℃に急速冷却しつつ、それら加工用魚材を真空雰囲気で約24時間熟成させる。
【0013】
本発明の魚加工食品製造方法の他の一例としては、生魚が、生鰯、生わかさぎ、生小アジのうちのいずれかである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる魚加工食品製造方法によれば、それら加工用魚材を所定温度で所定時間乾燥させた後、乾燥させたそれら加工用魚材を焼き上げ、焼き上げたそれら加工用魚材を所定時間室温で放置して加工用魚材の熱を自然に放熱させ、冷まされたそれら加工用魚材の全体に該加工用魚材のうま味成分と調味料液とが混ざった味覚成分を染み込ませるとともに、味覚成分を染み込ませたそれら加工用魚材を所定温度の真空雰囲気で所定時間熟成して味覚成分の一部を加工用魚材の表面全域に染み出させ、味覚成分が染み出したそれら加工用魚材の表面全域にすり胡麻を塗し、表面全域にすり胡麻が付着した複数の魚加工食品を作るから、それら加工用魚材に魚のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分が染み込むことで、それら加工用魚材にすべて同じ味覚成分が染み込んだ味付けをすることができ、表面全域にすり胡麻が付着することで、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の魚加工食品を作ることができる。
【0015】
すり胡麻塗し工程において、それら加工用魚材の表面全域を所定量のすり胡麻で包被しつつ所定量のすり胡麻を加工用魚材の表面全域に所定圧で押し付け、それら加工用魚材の表面全域に染み出した味覚成分を接着成分として加工用魚材の表面全域に所定量のすり胡麻を付着させ、表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を作る魚加工食品製造方法は、それら加工用魚材の表面全域を所定量のすり胡麻で包被しつつそのすり胡麻を加工用魚材の表面全域に所定圧で押し付けることで、魚加工食品の表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層を形成することができる。魚加工食品製造方法は、表面全域にすり胡麻のすり胡麻付着層が作られるから、魚のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分が染み込むとともに、胡麻の風味と香ばしさとを備えた複数の魚加工食品を作ることができ、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の魚加工食品を作ることができる。
【0016】
すり胡麻塗し工程によって表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を袋に収容する袋収容工程を含み、袋収容工程において、袋に所定量のすり胡麻を収容しつつ、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を袋に収容し、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を袋に収容したすり胡麻に埋める魚加工食品製造方法は、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品を袋に収容したすり胡麻に埋めることで、それら魚加工食品に形成された所定厚さのすり胡麻付着層が袋の内部において崩れることはなく、袋に収容中のみならず、袋から出した後もすり胡麻付着層を保持可能な魚加工食品を作ることができる。魚加工食品製造方法は、シール袋において魚加工食品に形成されたすり胡麻付着層が保持されるとともに、シール袋から出した後もすり胡麻付着層が保持されるから、食すときにすり胡麻付着層が崩れることはなく、魚のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分とともに胡麻の風味および香ばしさを食すことが可能な複数の魚加工食品を作ることができ、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の魚加工食品を作ることができる。
【0017】
袋が互いに対向する表面フィルムと裏面フィルムとの周縁部をシールしたシール袋であり、袋収容工程において、シール袋の収容容積100%に対して20〜30%の割合のすり胡麻をシール袋の内部に収容しつつ、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品をシール袋の内部に収容する魚加工食品製造方法は、シール袋の収容容積100%に対して20〜30%の割合のすり胡麻をシール袋の内部(表裏面フィルムの内側)に収容することで、すり胡麻付着層が形成されたそれら魚加工食品をシール袋に収容したすり胡麻に確実に埋めることができる。魚加工食品製造方法は、それら魚加工食品に形成された所定厚さのすり胡麻付着層がシール袋の内部において崩れることはなく、シール袋に収容中のみならず、シール袋から出した後もすり胡麻付着層を保持可能な魚加工食品を作ることができる。魚加工食品製造方法は、シール袋において魚加工食品に形成されたすり胡麻付着層が保持されるとともに、シール袋から出した後もすり胡麻付着層が保持されるから、食すときにすり胡麻付着層が崩れることはなく、魚のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分とともに胡麻の風味および香ばしさを食すことが可能な複数の魚加工食品を作ることができ、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の魚加工食品を作ることができる。
【0018】
調味工程において、それら加工用魚材を調味料液に浸した状態で加工用魚材を調味料液とともに所定時間炊き込むことで、それら加工用魚材の全体に味覚成分を染み込ませる魚加工食品製造方法は、それら加工用魚材を調味料液とともに所定時間炊き込むことで、魚のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分をそれら加工用魚材に染み込ませることができ、それら加工用魚材にすべて同じ味覚成分が染み込んだ味付けをすることができる。魚加工食品製造方法は、加工用魚材の骨が柔らかくなり、骨まで含んだ丸ごとを食すことができ、カルシウムを十分にとることが可能な魚加工食品を作ることができる。
【0019】
熟成工程において、味覚成分を染み込ませたそれら加工用魚材を真空冷却によって4〜5℃に急速冷却しつつ、それら加工用魚材を真空雰囲気で約24時間熟成させる魚加工食品製造方法は、味覚成分を染み込ませたそれら加工用魚材を真空冷却によって4〜5℃に急速冷却することで、それら加工用魚材の劣化を防ぐことができ、それら加工用魚材の食感や食味の変化を防ぐことができる。魚加工食品製造方法は、それら加工用魚材を真空雰囲気で約24時間熟成させることで、それら加工用魚材の表面全域に加工用魚材のうま味成分と調味料液とが混ざった味覚成分の一部を染み出させることができ、それら加工用魚材の表面全域に染み出した味覚成分を接着成分として加工用魚材の表面全域に所定量のすり胡麻を付着させることができる。
【0020】
生魚が生鰯、生わかさぎ、生小アジのうちのいずれかである魚加工食品製造方法は、鰯やわかさぎ、小アジのうちのいずれかを原料としたそれら加工用魚材に鰯やわかさぎ、小アジのうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分が染み込むとともに、表面全域にすり胡麻が付着することで、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の魚加工食品を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一例として示す鰯加工食品の斜視図。
図2】前処理工程が終了した後の加工用鰯の一例を示す斜視図。
図3】乾燥工程の一例を示す図。
図4】焼き上げ工程の一例を示す図。
図5】放熱工程の一例を示す図。
図6】調味工程の一例を示す図。
図7図6から続く調味工程の一例を示す図。
図8】熟成工程の一例を示す図。
図9】すり胡麻塗し工程の一例を示す図。
図10図9から続くすり胡麻塗し工程の一例を示す図。
図11】袋収容工程の一例を示す図。
図12図11から続く袋収容工程の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
一例として示す鰯加工食品10の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る魚加工食品製造方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、前処理工程が終了した後の加工用鰯15の一例を示す斜視図であり、図3は、乾燥工程の一例を示す図である。図4は、焼き上げ工程の一例を示す図であり、図5は、放熱工程の一例を示す図である。魚加工食品製造方法は、所定の生魚を調理加工することで複数の鰯加工食品10(魚加工食品)を作る。生魚には、生鰯、生わかさぎ、生小アジのうちのいずれかが使用される。以下、生魚として鰯13を使用した場合を例として魚加工食品製造方法を説明する。
【0023】
魚加工食品製造方法では、食品加工工場において前処理工程、乾燥工程、焼き上げ工程、放熱工程、調味工程、熟成工程、すり胡麻塗し工程、袋収容工程の各工程が実施されることで、複数の鰯加工食品10(魚加工食品)が作られる。鰯加工食品10(わかさぎ加工食品および小アジ加工食品を含む)は、複数のそれらがシール袋40(図11参照)の内部(表裏面フィルム41,42の内側)に収容されている。
【0024】
シール袋40の上端部43の封を切って袋40の頂部を開放し、袋40の内部から鰯加工食品10を取り出し、食器に移す。鰯加工食品10(わかさぎ加工食品および小アジ加工食品を含む)は、図1に示すように、その表面全域に所定量のすり胡麻11が付着し、表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層12が形成され、骨を含むすべて(丸ごと)を食すことができる。
【0025】
水揚げされた複数匹の鰯13は、鮮度が維持された状態で港から食品加工工場に搬送された後、食品加工工場において最初に前処理工程が行われる。前処理工程では、商品価値のない傷ついた鰯13や鮮度が低下した鰯13が排除され、新鮮な鰯13が選別される。次に、それら鰯13が水で洗浄されて鱗や表皮に付着した異物を洗い流すとともに、異物を比重差で除去する。
【0026】
前処理工程において、それら鰯13の頭14が除去され、図2に示すように、魚頭14がない残余部位15から形成された複数の加工用鰯16(加工用魚材)が作られる。それら加工用鰯16は、その長さ(頭14の除いた鰯13(魚)の先頭から尾びれまでの長さ)が5〜7cmであり、その大きさが略同一であって大きすぎたり小さすぎる不揃いのそれらが除かれている。なお、わかさぎや小アジも洗浄された後、頭が除去されて魚頭がない形が整った複数の加工用わかさぎ(加工用魚材)や加工用小アジ(加工用魚材)が作られる。
【0027】
前処理工程の後、乾燥工程が行われる。乾燥工程では、それら加工用鰯16を所定温度で所定時間乾燥させて加工用鰯16に含まれる水分を蒸発させる。乾燥工程では、乾燥室、循環装置、熱風発生装置から構成されたコンベア式の乾燥機17が利用され、それら加工用鰯15が乾燥機17の投入口18から乾燥機17の中に投入される。コンベア式の乾燥機17では、熱風発生装置から乾燥室に乾燥した熱風が供給され、コンベア19上を移動する加工用鰯16に乾燥した熱風が吹き付けられる。
【0028】
それら加工用鰯16は、コンベア式の乾燥機17の投入口18と排出口20との間に設置されたコンベア19上を移動する間にそれに含まれる水分が蒸発する。コンベア式の乾燥機17(乾燥工程)では、水分含有量が落ちた略丸干し状態の加工用鰯16が作られる。乾燥工程によって乾燥させた加工用鰯16は、そのうま味成分であるアミノ酸が大幅に増加するとともに、水分が減少することでうま味成分が濃縮され、その食味が良くなる。
【0029】
乾燥工程の後、焼き上げ工程が行われる。焼き上げ工程では、乾燥工程によって略丸干し状態に乾燥させたそれら加工用鰯16を焼き上げる。焼き上げ工程では、コンベア方式で長手方向へ移動する長尺の焼網コンベア21を備えた循環装置、焼網コンベア21の両面に燃焼炎を噴き出すガスバーナー22から構成されたコンベア式の魚焼グリル23が利用される。魚焼グリル23は、焼網コンベア21の上方および下方に長手方向へ長いガスバーナー22が配置され、焼網コンベア21の両面がそれらガスバーナー22に挟まれている。
【0030】
焼き上げ工程では、それら加工用鰯16が適当な間隔を開けて長尺の焼網コンベア21の上に載置され、焼網コンベア21を長手方向へ所定の速度でゆっくりと移動させつつ、それら加工用鰯16の両面に向かってガスバーナー22から燃焼炎を噴き出し、燃焼炎によってそれら加工用鰯16の全体を十分に焼き上げる。それら加工用鰯16は、魚焼グリル23の進入口24と送出口25との間に延びる焼網コンベア21上を移動する間にガスバーナー22によって焼き上げられる。魚焼グリル23(焼き上げ工程)によって焼き上げられたそれら加工用鰯16は、その内部に十分に火が通っている。
【0031】
焼き上げ工程の後、放熱工程が行われる。放熱工程では、焼き上げ工程によって焼き上げたそれら加工用鰯16を所定時間室温で放置して加工用鰯16の熱を自然に放熱させる。放熱工程では、それら加工用鰯16が上下方向へ並ぶ複数の金網ラック26の上に載置され、室内に所定時間放置される。焼き上げ工程によって焼き上げたそれら加工用鰯16は、金網ラック26において室内に所定時間放置されることで、内部にこもった熱が放出され、その温度が室温まで下がる。
【0032】
図6は、調味工程の一例を示す図であり、図7は、図6から続く調味工程の一例を示す図である。図8は、熟成工程の一例を示す図であり、図9は、すり胡麻塗し工程の一例を示す図である。図10は、図9から続くすり胡麻塗し工程の一例を示す図である。放熱工程の後、調味工程(煮熟工程)が行われる。調味工程では、放熱工程によって冷まされたそれら加工用鰯16を調味料液27に浸した状態で加工用鰯16を調味料液27とともに所定時間炊き込み、それら加工用鰯16の全体にうま味成分と調味料とが混合された味覚成分を染み込ませる。
【0033】
調味工程では、加工用鰯16を収容する金網笊28、所定容積の煮釜29が利用され、各種の調味料が調合された調味料液27が使用される。煮釜29には、上記によって加熱する蒸気釜(スチームケトル)やガスの直火によって加熱する直火釜が使用される。調味工程では、加工用鰯16を正確に計量し、調味料液28を配合する。放熱工程によって温度が室温まで下がった複数の加工用鰯16が金網笊28に収容され、煮釜29の中に調味料液27が注入された後、煮釜29の中(調味料液27の中)にそれら加工用鰯16を収容した金網笊28が投入される。煮釜28によって調味料液27が加熱され、それら加工用鰯16が調味料液27とともに炊き込まれる。
【0034】
それら加工用鰯16を調味料液27に浸した状態で煮釜29において加工用鰯16を調味料液27とともに所定時間炊き込むことで、それら加工用鰯16の全体にうま味成分と調味料とが混合された味覚成分を染み込ませる。加工用鰯16を炊き込む過程において鰯13(魚)からうま味成分が染み出し、そのうま味成分が調味料液27に混入し、鰯13のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分が作られ、その味覚成分が加工用鰯16の全体に染み込む。なお、調味工程では、炊き込み中における加工用鰯16の型崩れが防がれ、全体に味覚成分が染み込んだ形の整った加工用鰯16が作られる。
【0035】
調味工程における炊き込み温度(煮熟温度)は100〜120℃であり、調味工程における炊き込み時間は2時間30分である。調味工程において加工用鰯16を前記時間炊き込むことで、骨まで食すことが可能な程度に加工用鰯16の骨が軟らかくなる。調味料液27はその濃度が高いから、沸点が上昇し、炊き込み温度が100℃を超え、炊き込み時の残存細菌が極めて少なくなり、さらに、水分活性が低いから、保存性に優れた加工用鰯16にすることができる。調味工程において、それら加工用鰯16を調味料液27に浸した状態で加工用鰯16を調味料液27とともに所定時間炊き込むことで、鰯13(魚)のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分をそれら加工用鰯16の全体に十分に染み込ませることができ、それら加工用鰯16にすべて同じ味覚成分が染み込んだ味付けをすることができる。
【0036】
調味工程の後、熟成工程が行われる。熟成工程では、調味工程によって味覚成分を染み込ませたそれら加工用鰯16を所定温度の真空雰囲気(真空冷却方式)で所定時間熟成し、それら加工用鰯16に染み込んだ味覚成分のうちの一部を加工用鰯16の表面全域に染み出させる。それら加工用鰯16から染み出した味覚成分は、うま味成分が混じった煮釜29に残存する調味料液27よりも粘度(粘着度)が高い。
【0037】
熟成工程では、調味工程の後の加工用鰯16を載置した金網ラック31、冷却槽内を真空にして気化熱で加工用鰯を冷却する真空冷却機30が利用される。調味工程において付着した余分な調味料液27(味覚成分)を液切りし、それら加工用鰯16を載置した金網ラック31を真空冷却機30の冷却槽内に収容し、真空冷却機30を起動させる。真空冷却機30では、調味工程後(加熱調理後)のそれら加工用鰯16を減圧状態にすることで、加工用鰯16に含まれている水分を蒸発させ、その蒸発熱で加工用鰯16を冷却する。
【0038】
熟成工程は、味覚成分(鰯13のうま味成分+調味料)を染み込ませたそれら加工用鰯16を真空冷却機30を利用した真空冷却によって4〜5℃に急速冷却しつつ、それら加工用鰯16を真空雰囲気で約24時間熟成させる。熟成工程において調味工程後のそれら加工用鰯16を4〜5℃の真空雰囲気で24時間熟成させることで、それら加工用鰯16の表面全域に鰯13のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分の一部が染み出す。それら加工用鰯16は、真空冷却機30の冷却槽において所定時間熟成された後、冷却槽内から搬出される。
【0039】
熟成工程において、味覚成分を染み込ませたそれら加工用鰯16を真空冷却によって4〜5℃に急速冷却することで、それら加工用鰯16の劣化を防ぐことができ、それら加工用鰯16の食感や食味の変化を防ぐことができる。また、それら加工用鰯16を4〜5℃の真空雰囲気で24時間熟成させることで、それら加工用鰯16の表面全域に鰯13のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分の一部を染み出させることができる。
【0040】
熟成工程を省いて調味工程後に直ちにすり胡麻塗し工程に移ると、加工用鰯16が煮くずれを起こし、形の整った鰯加工食品10を作ることができないが、熟成工程において加工用鰯16を熟成されることで、加工用鰯16の身が引き締まり、すり胡麻塗し工程において加工用鰯16が煮くずれを起こすことはなく、形の整った鰯加工食品10を作ることができる。また、熟成工程を省いて調味工程後にすり胡麻塗し工程に移ると、加工用鰯16の表面に付着した調味料液27を接着成分としてすり胡麻を加工用鰯16の表面に付着させることになるが、煮釜29に残存する調味料液27はその粘度(粘着度)がそれら加工用鰯16から染み出した味覚成分のそれよりも低く、所定量のすり胡麻11を加工用鰯16の表面に付着させることができず、加工用鰯16の表面にすり胡麻付着層12を形成することができない。しかし、熟成工程を行うことで、加工用鰯16の表面全域に粘度(粘着度)の高い味覚成分が染み出し、その味覚成分を接着成分としてすり胡麻11を加工用鰯16の表面に付着させるから、加工用鰯16の表面全域に所定厚みのすり胡麻付着層12を確実に形成することができる。
【0041】
熟成工程の後、すり胡麻塗し工程が行われる。すり胡麻塗し工程では、熟成工程によって味覚成分が染み出したそれら加工用鰯16の表面全域にすり胡麻11を塗し、表面全域に所定量のすり胡麻11が付着し、表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層12が形成された複数の鰯工食品10を作る。すり胡麻塗し工程では、すり胡麻塗し成型機32が利用され、すり胡麻11が使用される。
【0042】
すり胡麻塗し成型機32は、コンベア式であり、長手方向へ並んでいて加工用鰯16を一匹ずつ収容する複数の収容容器33と、長手方向へ並んでいて収容容器33の上面に被せる複数の圧縮蓋34と、対向配置された一対の圧縮ローラ35とから形成されている。それら収容容器33とそれら圧縮蓋34とは、コンベアによって長手方向へ連続的に移動する。収容容器33は、長手方向と交差する幅方向へ長い長円形の収容凹部36と、幅方向へ長い長円形の頂部開口37とを有し、長手方向へ連続して移動する。収容凹部36は、収容する加工用鰯16の長さよりも長く、その断面形状が略半円形に成型されている。
【0043】
圧縮蓋34は、収容容器33の収容凹部36の長さよりもよりもわずかに短く、収容凹部36の内部に挿脱可能な大きさを有する。圧縮蓋34は、幅方向へ長い長円形の圧縮凹部38と、幅方向へ長い長円形の底部開口39とを有し、収容凹部36とともに長手方向へ連続して移動する。圧縮凹部38は、収容する加工用鰯16の長さよりも長く、その断面形状が略半円形に成型されている。
【0044】
すり胡麻塗し工程では、圧縮蓋34を収容容器33の上方へ離間させて収容容器33の頂部開口37を開放し、それら収容容器33の収容凹部36の全域に所定量のすり胡麻11(収容凹部36の略下半分を埋める量のすり胡麻11)を収容した後、それら加工用鰯16を収容容器33の頂部開口37から収容凹部36の内部に1匹毎個別に収容する。加工用鰯16を収容凹部36に収容すると、加工用鰯16の略下半身(下面)がすり胡麻11に包被され、加工用鰯16の残余の略上半身(上面)が頂部開口37に対向する。
【0045】
加工用鰯16を収容凹部36に収容した後、収容凹部36にさらに所定量のすり胡麻11(収容凹部36全域(下半分および上半分)を埋める量のすり胡麻11)を収容し、加工用鰯16の上半身(上面)をすり胡麻11で包被する。加工用鰯16は、その下半身および上半身(表面全体)が所定厚みのすり胡麻11によって包まれる。
【0046】
次に、圧縮蓋34を収容容器33の頂部開口37に被せ、圧縮蓋34で頂部開口37を閉じる。圧縮蓋34で頂部開口37を閉じると、加工用鰯16の上半身と上半身を包被するすり胡麻11とが圧縮蓋34の底部開口39から圧縮凹部38に位置するとともに、加工用鰯16の下半身と下半身を包被するすり胡麻11とが収容容器33の頂部開口37から収容凹部36に位置する。
【0047】
圧縮蓋34で頂部開口37を閉じた後、すり胡麻塗し成型機32を起動させる。すり胡麻塗し成型機32を起動させると、圧縮蓋34によって頂部開口37が閉鎖された収容容器33が長手方向へ移動し、収容容器33と圧縮蓋34とがそれら圧縮ローラ35の間に進入する。圧縮ローラ35の間に進入した収容容器33と圧縮蓋34とはそれら圧縮ローラ35によって上下方向へ圧縮され、圧縮ローラ35の間から送出される。
【0048】
それら圧縮ローラ35によって収容容器33と圧縮蓋34とが上下方向へ圧縮されることで、収容容器33の収容凹部36に位置するすり胡麻11や圧縮蓋34の圧縮凹部38に位置するすり胡麻11が収容凹部36と圧縮凹部38とに押圧され、すり胡麻11が加工用鰯16の表面全域に所定圧で押し付けられる。加工用鰯16の表面全域に染み出した味覚成分が接着成分となり、収容容器33の収容凹部36に位置するすり胡麻11と圧縮蓋34の圧縮凹部38に位置するすり胡麻11とに味覚成分が滲入し、味覚成分によってすり胡麻11が加工用鰯16の表面全域に付着し、加工用鰯16の表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層12が形成される。加工用鰯16の表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層12が形成されることで、図1の鰯加工食品10が作られる。
【0049】
収容容器33と圧縮蓋34とがそれら圧縮ローラ35の間から送出された後、圧縮蓋34を上方へ旋回させて収容容器33の頂部開口37を開け、収容凹部36から鰯加工食品10を取り出す。収容凹部36から取り出された鰯加工食品10は、頭を除いた加工用鰯16の残余部位15の表面全域に層状になった多量のすり胡麻11が付着し、加工用鰯16の残余部位15の表面全域に約1〜2mmのすり胡麻付着層12が形成され、残余部位15の表面全域がすり胡麻付着層12に包被されており、加工用鰯16の全体がすり胡麻付着層12に埋没している(図1参照)。
【0050】
なお、コンベア式のすり胡麻塗し成型機31において、連続して移動するそれら収容容器33の収容凹部36に所定量のすり胡麻11が自動的に充填(収容)された後、加工用鰯16が収容凹部36に1匹毎個別に収容され、さらに、収容凹部36に所定量のすり胡麻11が自動的に充填(収容)され、圧縮蓋34が自動的に下降して収容容器33の頂部開口37が閉鎖され、収容容器33と圧縮蓋34とがそれら圧縮ローラ35の間に進入するとともに、収容容器33と圧縮蓋34とが圧縮ローラ35の間から送出された後、圧縮蓋34が自動的に上昇して収容容器33の頂部開口37が開放され、収容凹部36から鰯加工食品10が取り出されるように、各作業が自動的に行われてもよい。
【0051】
魚加工食品製造方法は、それら加工用鰯16(加工用魚材)を所定温度で所定時間乾燥させた後、乾燥させたそれら加工用鰯16を焼き上げ、焼き上げたそれら加工用鰯16を所定時間室温で放置して加工用鰯16の熱を自然に放熱させ、冷ましたそれら加工用鰯16の全体に加工用鰯16(鰯13)のうま味成分と調味料液27とが混ざった味覚成分を染み込ませるとともに、味覚成分を染み込ませたそれら加工用鰯16を所定温度の真空雰囲気で所定時間熟成して味覚成分の一部を加工用鰯16の表面全域に染み出させ、味覚成分が染み出したそれら加工用鰯16の表面全域にすり胡麻11を塗して表面全域にすり胡麻付着層12が形成された複数の鰯加工食品10(魚加工食品)を作るから、それら加工用鰯16に鰯13(魚)のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分が染み込むことで、それら加工用鰯16にすべて同じ味覚成分が染み込んだ味付けをすることができ、表面全域にすり胡麻11が付着した所定厚みのすり胡麻付着層12が形成されることで、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の鰯加工食品10を作ることができる。
【0052】
魚加工食品製造方法は、それら加工用鰯16(加工用魚材)の表面全域を所定量のすり胡麻11で包被しつつ、すり胡麻塗し成型機31を利用してすり胡麻11を加工用鰯16の表面全域に所定圧で押し付けることで、鰯加工食品10の表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層12を形成することができる。魚加工食品製造方法は、鰯加工食品10(魚加工食品)の表面全域に所定厚さのすり胡麻11が付着したすり胡麻付着層12が作られるから、鰯13(魚)のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分が染み込むとともに、胡麻の風味と香ばしさとを備えた複数の鰯加工食品10を作ることができ、味覚成分と胡麻の風味および香ばしさとが結びついた食感および食味の優れた複数の鰯加工食品10を作ることができる。魚加工食品製造方法は、加工用鰯16(加工用魚材)の骨が柔らかくなり、骨まで含んだ丸ごとを食すことができ、カルシウムを十分にとることが可能な鰯加工食品10(魚加工食品)を作ることができる。
【0053】
図11は、袋収容工程の一例を示す図であり、図12は、図11から続く袋収容工程の一例を示す図である。図11,12では、シール袋40の裏面フィルム42の一部を破断した状態で示す。すり胡麻塗し工程の後、袋収容工程が行われる。袋収容工程では、すり胡麻塗し工程によって表面全域に所定厚さのすり胡麻付着層12が形成されたそれら鰯加工食品10(魚加工食品)がシール袋40に収容される。シール袋40は、互いに対向する表面フィルム41(アルミ蒸着フィルム)と裏面フィルム42(アルミ蒸着フィルム)とから作られ、幅方向へ延びる上端縁部43(周縁部)と、幅方向へ延びる下端縁部44(周縁部)と、縦方向へ延びる両側縁部45(周縁部)とを有する。
【0054】
シール袋40は、下端縁部44(周縁部)と両側縁部45(周縁部)とがシール(ソニックシール、熱シール)された3方シール袋である。シール袋40は、その両側縁部45の間の幅方向の長さ寸法が鰯加工食品10の長さ(頭14の除いた鰯13(魚)の先頭から尾びれまでの長さ)よりも短く、その上端縁部43と下端縁部44との間の縦方向の長さ寸法が鰯加工食品10の長さよりも長い。
【0055】
袋収容工程では、シール袋40の内部に所定量のすり胡麻11を事前に収容した後、すり胡麻付着層12が形成された複数個の鰯加工食品10をシール袋40に収容し、鰯加工食品10をシール袋40に収容した後、シール袋40の内部にさらに所定量のすり胡麻11を事後に収容し、すり胡麻付着層12がされたそれら鰯加工食品10をシール袋40に収容されたすり胡麻11に埋め、それら鰯加工食品10をシール袋40のすり胡麻11に埋没させる。
【0056】
鰯加工食品10の先頭から尾びれまでがシール袋40の両側縁部45に並行するとともに、その先頭から尾びれまでがシール袋40の上下端縁部43,44の間に延びるように、それら鰯加工食品10を縦方向へ延ばしつつ幅方向に並べた状態でシール袋40の内部に収容する。シール袋40の両側縁部45の間の幅方向の長さ寸法が鰯加工食品10の長さよりも短いから、鰯加工食品10がシール袋40の両側縁部45の間で幅方向へ位置を変えることはなく、それら鰯加工食品10のシール袋40の上下端縁部43,44に延びる状態が保持され、シール袋40の内部における鰯加工食品10の姿勢が維持される。
【0057】
次に、シール袋40の上端縁部43をシールすることで、それら鰯加工食品10がシール袋40に密封される。なお、鰯加工食品10をシール袋40に収容する前に事前に袋40の内部に収容されるすり胡麻11の収容割合(収容量)は、シール袋40の収容容積100%とした場合の20〜30%である。したがって、シール袋40の内部に事前に収容するすり胡麻11の収容割合はシール袋40の収容容積100%に対して10〜15%であり、シール袋40の内部に事後に収容するすり胡麻11の収容割合はシール袋40の収容容積100%に対して10〜15%である。
【0058】
シール袋40の収容容積100%に対して20〜30%の割合のすり胡麻11をシール袋40の内部(表裏面フィルム41,42の内側)に収容することで、すり胡麻付着層12が形成されたそれら鰯加工食品10をシール袋40に収容したすり胡麻11に確実に埋めることができる。また、シール袋40の内部における鰯加工食品10の姿勢が維持されるから、シール袋40の内部における鰯加工食品10の遊動が防止され、シール袋40の内部において鰯加工食品10が自由に遊動することによるすり胡麻11の鰯加工食品10からの剥離(脱落)を防ぐことができ、鰯加工食品10に形成されたすり胡麻付着層12を保持することができる。
【0059】
魚加工食品製造方法は、すり胡麻付着層12が形成されたそれら鰯加工食品10(魚加工食品)をシール袋40に収容したすり胡麻11に埋めることで、それら鰯加工食品10に形成された所定厚さのすり胡麻付着層12がシール袋40の内部において崩れることはなく、シール袋40に収容中のみならず、シール袋40から出した後もすり胡麻付着層12を保持可能な鰯加工食品10を作ることができる。
【0060】
魚加工食品製造方法は、シール袋40において鰯加工食品10に形成されたすり胡麻付着層12が保持されるとともに、シール袋40から出した後もすり胡麻付着層12が保持されるから、食すときにすり胡麻付着層12が崩れることはなく、鰯(魚)のうま味成分と調味料とが混ざった味覚成分とともに胡麻の風味および香ばしさを食すことが可能な複数の鰯加工食品10(魚加工食品)を作ることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 鰯加工食品(魚加工食品)
11 すり胡麻
12 すり胡麻付着層
13 鰯(魚)
14 頭
15 残余部位
16 加工用鰯(加工用魚材)
17 乾燥機
18 投入口
19 コンベア
20 排出口
21 焼網コンベア
22 ガスバーナー
23 魚焼グリル
24 進入口
25 送出口
26 金網ラック
27 調味料液
28 金網笊
29 煮釜
30 真空冷却機
31 金網ラック
32 すり胡麻塗し成型機
33 収容容器
34 圧縮蓋
35 圧縮ローラ
36 収容凹部
37 頂部開口
38 圧縮凹部
39 底部開口
40 シール袋
41 表面フィルム
42 裏面フィルム
43 上端縁部
44 下端縁部
45 両側縁部



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12