【実施例】
【0021】
図1は、本発明のCu−Alの合金からなるろう材によって接合されたアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の写真である。
図2は、耐圧試験用のアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の写真である。アルミパイプの素材としては、φ12.7mm、t=1.6mm、L=100mmのJIS規格3003アルミニウムである。図中、丸で囲った部分がろう接合部である。ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金である。フラックスとしては無洗浄対応のCsF系フラックスを用いた。ろう付けは、
図3に示すようにガスバーナーを使用した差しろうにより行った。ろう付けの仕上がり状態は良好であった。
【0022】
耐圧試験は
図4に示すような耐圧試験装置を用いて行った。24MPaまで水漏れはなく十分な強度であることを確認した。安全のため、24MPaで耐圧を停止した。
【0023】
図5は、耐圧試験後のアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の断面写真である。図の左右の矢印が指すところはアルミニウムパイプの側面であるが、耐圧試験により壁面は膨張して湾曲していることがわかる。
図6は、
図5の断面写真の(丸1)、(丸2)及び(丸3)の符号を付した□(四角)で囲った部分で示す部分を拡大した部分拡大写真である。ろう差し口のフィレット形状は良好であることがわかる。また、ろうはパイプの下部にまで流れており、アルミニウム及び銅のいずれにも接合できていることが確認できる。
【0024】
図7は、
図5の断面写真の(丸1)符号を付した□(四角)で囲った部分で示す部分の合金層の顕微鏡写真である。
図5で説明したように、アルミニウムパイプの側壁は耐圧試験により膨れているが、ろうはアルミニウムパイプの側壁及び銅パイプの側壁としっかり接合されている。
図7における(丸1)部分金属顕微鏡写真における(丸2)の符号を付した□(四角)で囲った部分の顕微鏡写真から、アルミニウム側及び銅側のいずれにも合金層を確認することができた。コントラストを変更した写真も合わせて示す。
【0025】
図8から
図15は、アルミニウム撚り線と銅撚り線の本発明に係るろう材による接合試験に関する図である。
【0026】
図8は、接合前の銅端子線とアルミニウム撚り線の写真である。写真上方のものは、銅端子線としてはAWG8を用い、ろう付けする部分は錫メッキが施されており、他端は銅線がバラケないようにリン銅ろうにてろう付け処理を施している。アルミニウム撚り線はφ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたものである。またアルミニウム撚り線はバラケ防止のため銅細線で締結している。写真下方のものは、銅端子線としてはAWG12を用い、ろう付けする部分は錫メッキが施されており、他端は銅線がバラケないようにリン銅ろうにてろう付け処理を施している。アルミニウム撚り線はφ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたものである。
【0027】
図9は、ろう付け方法を示す概念図である。ろう付けする際には図に示すように、銅端子線とアルミニウム撚り線のろう付けする部分がバラケないように銅線で2重巻きした。ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金である。フラックスとしては無洗浄対応のCsF系フラックスを用いた。ろう付けは、ガスバーナーを使用した差しろうにより行った。
【0028】
図10は、銅端子線とアルミニウム撚り線をろう付けにより接合した接合体の写真である。
図10の(1)の接合体は、銅端子線はAWG8であり、アルミニウム撚り線はφ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたものである。
図10の(2)の接合体は、銅端子線はAWG12であり、アルミニウム撚り線はφ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたものである。また、
図10の下方の写真は断面観察位置(点線で切断と示している位置)を示したものである。
【0029】
図11は、
図10の(1)の接合体と(2)の接合体のそれぞれの接合部分の断面写真である。ろうは銅の撚り線内部まで充填されている。アルミニウム線は円形を保っており、食われが非常に少ないことがわかる。
図12は、
図11と同じ図であるが、(2)の接合体の拡大部分(丸1)、(丸2)の符号を付した□(四角)で囲った部分)の位置、及び(1)の接合体の拡大部分(丸3)、(丸4)の符号を付した□で囲った部分)の位置を示す図である。
【0030】
図13は、
図10の(2)の接合体の接合部分を切断した断面の拡大写真である。
図13の図面向かって左側の写真は、
図12における(丸1)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、ろうとアルミニウム線の間に隙間は見られない。また、
図13の図面向かって右側の写真は、
図12における(丸2)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、ボイドは見られるがろうと銅線の間に隙間は見られない。
【0031】
図14は、
図10の(1)の接合体の接合部分を切断した断面の拡大写真である。
図14の図面向かって左側の写真は、
図12における(丸3)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、アルミニウム線同士の間に隙間があり、そこにフラックスが詰まっているが、ろうとアルミニウム線の接合自体はできている。
図14の図面向かって右側の写真は、
図12における(丸4)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、銅線同士の間に隙間があり、そこにフラックスが詰まっているが、ろうと銅線の接合自体はできている。
【0032】
図15は、
図10の接合体の接合部分を切断した断面のアルミニウム線とろう及び銅端子線とろうのそれぞれの合金層をレーザースコープにて観察した写真である。アルミニウム線とろう及び銅端子線とろうのそれぞれ合金層が確認できる。
【0033】
図16から
図25は、アルミニウム撚り線と銅撚り線の本発明に係るろう材による接合部の腐食試験に関する図である。
【0034】
図16は、銅端子線とアルミニウム撚り線を接合した接合体の写真である。(丸1)は、アルミニウム撚り線(φ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG12)の接合体である。(丸2)は、アルミニウム撚り線(φ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG8)の接合体である。写真の接合体はろう付け後の初期状態である。
【0035】
ろう付け方法は
図9に示した方法と同じである。ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金である。フラックスとしては無洗浄対応のCsF系フラックスを用いた。
【0036】
図17は、アルミニウム撚り線(φ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG12)の接合体(n=2)の85℃、湿度85%の加速試験の結果を示す写真である。フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0037】
図18は、アルミニウム撚り線(φ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG8)の接合体(n=2)の85℃、湿度85%の加速試験の結果を示す写真である。フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0038】
図19は、
図16に示す、それぞれの接合体を、点線で切断と示している位置で切断したろう付け初期の断面写真である。(丸1)は、アルミニウム撚り線(φ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG12)の接合体である。(丸2)は、アルミニウム撚り線(φ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG8)の接合体である。アルミニウム線は円形を保っており、食われが非常に少ない。
【0039】
図20は、腐食試験40日経過後の断面を観察した写真である。
図20の図面向かって左側の(丸1)は、
図17の撚り線1の40日の写真の点線で示す位置で切断した断面写真である。
図20の図面向かって右側の(丸2)は、
図18の撚り線3の40日の写真の点線で示す位置で切断した断面写真である。腐食試験後の断面は、初期状態と変わらず、フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0040】
図21は、
図20と同じ写真であるが、拡大位置を示した図である。
図22は、
図21の図面の左側の写真の(丸1)の符号を付したアルミニウム線の部分の拡大図と、
図21の図面の左側の写真の(丸2)の符号を付した銅線の部分の拡大図である。
【0041】
図23は、
図21の図面の右側の写真の(丸3)の符号を付したアルミニウム線の部分の拡大図と、
図21の図面の右側の写真の(丸4)の符号を付した銅線の部分の拡大図である。
【0042】
図24の図面の左側の写真は、
図23の符号(丸5)を付した□(四角)で囲った部分のアルミニウム線の部分の合金層をレーザースコープにて観察した写真である。また、
図24の右側の写真は、
図24の左側の写真の符号(丸5)を付した□(四角)で囲った部分のアルミニウム線の部分の合金層をレーザースコープにて拡大して観察した写真である。
【0043】
図25の図面の左側の写真は、
図23の符号(丸6)を付した□(四角)で囲った部分の銅線の部分の合金層をレーザースコープにて観察した写真である。また、
図25の右側の写真は、
図25の左側の写真の符号(丸8)を付した□(四角)で囲った部分の銅線の部分の合金層をレーザースコープにて拡大して観察した写真である。
【0044】
図22、
図23、
図24及び
図25の拡大写真でも明らかなように、腐食試験後の断面は、初期状態と変わらず、フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0045】
ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金に換えて、銅の含有量が38質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金のろう材を用いて、上記と同様な耐圧試験、接合試験及び腐食試験を行ったが、銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金と同様な結果が得られた。