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特開2017-189779ろう材及びろう材によって接合されている接合体並びにアルミニウム素材と銅素材を接合する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-189779(P2017-189779A)
(43)【公開日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】ろう材及びろう材によって接合されている接合体並びにアルミニウム素材と銅素材を接合する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/28 20060101AFI20170922BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20170922BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20170922BHJP
   B23K 101/14 20060101ALN20170922BHJP
   B23K 103/10 20060101ALN20170922BHJP
   B23K 103/12 20060101ALN20170922BHJP
   B23K 103/18 20060101ALN20170922BHJP
【FI】
   B23K35/28 310A
   C22C21/00 D
   B23K1/19 Z
   B23K1/19 A
   B23K1/19 K
   B23K101:14
   B23K103:10
   B23K103:12
   B23K103:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-78630(P2016-78630)
(22)【出願日】2016年4月11日
(71)【出願人】
【識別番号】510273754
【氏名又は名称】松本 輝政
(71)【出願人】
【識別番号】503186940
【氏名又は名称】茅野 卓史
(71)【出願人】
【識別番号】510273765
【氏名又は名称】草間 誠
(71)【出願人】
【識別番号】511258307
【氏名又は名称】巖 道利
(71)【出願人】
【識別番号】516107790
【氏名又は名称】岡本 健太郎
(71)【出願人】
【識別番号】516108616
【氏名又は名称】佐藤 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 輝政
(72)【発明者】
【氏名】茅野 卓史
(72)【発明者】
【氏名】草間 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博司
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルミニウム素材と銅素材の接合において、接合部の電蝕の問題を回避できるろう材を提供する。
【解決手段】アルミニウム素材と銅素材を接合するろう材であって、銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるCu−Alの合金からなることを特徴とするろう材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム素材と銅素材を接合するろう材であって、銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるCu−Alの合金からなることを特徴とするろう材。
【請求項2】
アルミニウム素材と銅素材が、銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるCu−Alの合金からなるろう材によって接合されていることを特徴とするアルミニウム素材と銅素材の接合体。
【請求項3】
銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるCu−Alの合金からなるろう材を用いて、アルミニウム素材と銅素材を接合することを特徴とするアルミニウム素材と銅素材を接合する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム素材と銅素材を接合するのに適したろう材及びろう材を用いて接合されている接合体並びにアルミニウム素材と銅素材をろう材で接合する方法に関する。なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「アルミニウム素材」という用語には、純アルミニウム及びアルミニウム合金を含むものとする。同じく、本発明に係るアルミニウムと銅の二元金属からなるろう材を用いて接合される部材である「銅素材」という用語には、純銅及び銅合金を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム素材と銅素材を接合した接合体は、熱伝導性に優れるなどの理由により冷蔵庫などの冷凍サイクルにおける蒸発器や配管などの熱交換装置などに用いられている。
【0003】
アルミニウム素材と銅素材を接合する方法は様々な方法が検討されている。
【0004】
特許文献1では、銅管とアルミニウム管を接触加圧させた状態で、一方を回転し接触面の摩擦によりアルミニウム表面の酸化被膜を除去し、さらに摩擦熱により接合部位を溶融軟化させ、急速に回転を停止させ接合を行なっている。
【0005】
特許文献2では、銅製のキャピラリーチューブとアルミニウム製のサクションパイプをAl−Si系ろう材によって接合すると共に、キャピラリーチューブとサクションパイプの外周囲をAl−Si系ろう材によって連続的に被覆した熱交換器が開示されている。キャピラリーチューブとサクションパイプの外周囲をAl−Si系ろう材によって連続的に被覆することによって電蝕を防止する効果がある。
【0006】
特許文献3では、アルミニウム合金を一方の被接合部材とし、銅合金を他方の被接合部材として、一方の被接合部材と他方の被接合部材が金属的に接合された接合体であって、一方の被接合部材はCu:3.0mass%〜8.0mass%及びSi:0.1mass%〜10mass%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、Cu濃度をC(mass%)、Si濃度をS(mass%)としたとき、C+2.4×S≧7.8を満たし、他方の被接合部材は一方の被接合部材よりも固相線温度が高い銅合金であるアルミニウム合金と銅合金とからなる接合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52−048542号公報
【特許文献2】特開2008−267757号公報
【特許文献3】WO2013/081021号公報(再公表公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アルミニウム素材と銅素材を接合する方法は上記のとおり様々あるが、摩擦圧接などの固相接合法では、接合体の形状、寸法に制限があり、複雑な形状の接合には適用し難いという問題がある。特許文献2に記載されるようにアルミニウムと銅のろう付けにはAl−Si系のろう材を使用することができるが、電蝕という問題を避けることできない。特許文献2に記載の発明では、電蝕の問題を避けるために、Al−Si系のろう材でろう付けした後に、キャピラリーチューブとサクションパイプの外周囲をAl−Si系ろう材によって連続的に被覆するという工程を必須とする。一工程増える上に、Al−Si系ろう材をろう付けに使用する以上に余分に使用するため、大幅なコストアップを招くという問題がある。特許文献3に記載の接合方法は、被接合部材の変形がほとんどない優れた接合方法であるが、接合に要する時間が30秒から60秒であり、また、形状維持に必要な接合時間が3600秒乃至は1800秒程度を必要とする。
【0009】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、第1の目的は、アルミニウム素材と銅素材をろう付けしても電蝕の問題を回避できるろう材を提供するものである。第2の目的はアルミニウム素材と銅素材をろう材で接合した接合体であるにも関わらず接合部において実質的に電蝕の発生しないアルミニウム素材と銅素材の接合体を提供するものである。第3の目的は、電蝕の問題を回避できるろう材を用いてアルミニウム素材と銅素材を接合する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、銅とアルミニウムを接合する技術として従来から知られている共晶接合が実績あったので、銅とアルミニウムの共晶合金からなる金属がろう材として使用できるのではないかと考え試作・検討を行い本発明に至った。
【0011】
共晶接合では接合体の形状と寸法に制限があり、板厚が薄いものでは接合できないという欠点があった。銅とアルミニウムの電蝕を考えたとき、実績のある銅とアルミニウムの共晶合金をろう材とした場合、共晶接合の欠点を補えて広い範囲で使用することができることを見出した。特に汎用モータのアルミニウム線と銅線を接合する場合にも使用することができる。
【0012】
本発明に係るろう材は、アルミニウム素材と銅素材を接合するろう材であって、銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるCu−Alの合金からなることを特徴とする。
また、本発明に係るアルミニウム素材と銅素材の接合体は、アルミニウム素材と銅素材が、銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるCu−Alの合金からなるろう材によって接合されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係るアルミニウム素材と銅素材を接合する方法は、銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるCu−Alの合金からなるろう材を用いて、アルミニウム素材と銅素材を接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本発明に係るろう材はろう付け温度が約600℃程度とアルミニウムの融点より低いので、汎用モータのアルミニウム線と銅線の接合、管径の細いアルミニウムパイプと銅パイプの接合、板厚の薄いアルミニウムと銅の接合、などに適用しても、アルミニウム素材を溶解、損傷するようなことがない。
【0014】
本発明によれば、本発明に係る接合体はアルミニウム素材と銅素材の接合であるにも係わらず電蝕の問題を実質的に回避し(理論的には電蝕は起きていると考えられるが、実用的には全く問題がない。)強固にろう接できている。よって、接合する素材が、アルミニウム素材のパイプと銅素材のパイプの場合であっても耐圧性に優れ、気密性を保って接続することができる。したがって、冷蔵庫などの冷凍サイクルの構成部品のように構成部品と構成部品の連結部が管形状のものであってもガス冷媒が漏れることがない
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のCu−Alの合金からなるろう材によって接合されているアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の写真である。
図2】耐圧試験用のアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の写真である。
図3】ろう付け作業を行っている様子を示す写真である。
図4】耐圧試験状況を示す写真である。
図5】耐圧試験後のアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の断面写真である。
図6図5で示す断面写真の部分拡大写真である。
図7図5で示す断面写真の(丸1)の部分の合金層の顕微鏡写真である。
図8】接合前の銅端子線とアルミニウム撚り線の写真である。
図9】ろう付け方法を示す概念図である。
図10図8で示す銅端子線とアルミニウム撚り線を接合した接合体の写真である。
図11図10の接合体の接合部分を切断した断面の写真である。
図12図10の接合体の接合部分を切断した断面の写真で拡大写真の位置を示す図である。
図13図10の接合体の接合部分を切断した断面の拡大写真である。
図14図10の接合体の接合部分を切断した断面の拡大写真である。
図15図10の接合体の接合部分を切断した断面のアルミニウム線とろう及び銅端子線とろうのそれぞれの合金層をレーザースコープにて観察した写真である。
図16】銅端子線とアルミニウム撚り線を接合した接合体の写真である。
図17図16の接合体(丸1)を85℃、湿度85%にて腐食試験した結果を示す写真である。
図18図16の接合体(丸2)を85℃、湿度85%にて腐食試験した結果を示す写真である。
図19】ろう付け初期の断面を観察した写真である。
図20】腐食試験40日経過後の断面を観察した写真である。
図21図20と同じ写真であるが、拡大位置を示した図である。
図22図21の部分拡大写真である。
図23図21の部分拡大写真である。
図24図23のアルミニウム線の部分の合金層をレーザースコープにて観察した写真である。
図25図23の銅線の部分の合金層をレーザースコープにて観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のろう材は、Cu−Alの合金からなるものであり、銅の含有量が29〜40質量%であり残部がアルミニウムと不可避的不純物からなる。銅の含有量が29%未満であると、固相温度はおおよそ548℃〜575℃で共晶温度(548℃)とほとんど変わらないが、液相温度が580℃を超えてろう付け温度が640℃近傍まで高くなり、アルミニウム素材は溶解する。また、銅の含有量が40質量%を超えても、固相温度はおおよそ548℃〜580℃で共晶温度(548℃)とほとんど変わらないが、液相温度が580℃を超えてろう付け温度が640℃近傍まで高くなり、アルミニウム素材は溶解する。
【0017】
上記の理由で本発明のCu−Alの合金からなるろう材における銅の含有量を29〜40質量%としたものであるが、好ましくは30〜35質量%である。銅の含有量をこの範囲にすると、ろう付け温度が600℃近傍に低下する。
【0018】
本発明のろう材は常法に従い容易に調製することができる。すなわち、規定組成量の配合で銅とアルミニウムを溶融して混合し、規定組成の配合のCu−Alの合金からなるろう材を作製する。
【0019】

本発明に係るCu−Alの合金からなるろう材を用いて、アルミニウム素材と銅素材を接合する際に、フラックスを用いることが好ましい。使用するフラックスはCsF系フラックス、塩化物系フラックス、非腐食性のフッ化物系フラックスが挙げられる。
【0020】
本発明においては、アルミニウム素材としては、純アルミニウムであってもアルミニウム合金であってもよい。アルミニウムの中でも熱伝導性、加工性、耐食性が良好なJIS1000系アルミニウム、JIS1000系アルミニウムより強度の強いJIS3000系合金などを使用することができる。また、銅素材としては純銅または銅合金を使用することができる。また、銅素材はその表面が錫メッキされているものであってもよい。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明のCu−Alの合金からなるろう材によって接合されたアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の写真である。図2は、耐圧試験用のアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の写真である。アルミパイプの素材としては、φ12.7mm、t=1.6mm、L=100mmのJIS規格3003アルミニウムである。図中、丸で囲った部分がろう接合部である。ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金である。フラックスとしては無洗浄対応のCsF系フラックスを用いた。ろう付けは、図3に示すようにガスバーナーを使用した差しろうにより行った。ろう付けの仕上がり状態は良好であった。
【0022】
耐圧試験は図4に示すような耐圧試験装置を用いて行った。24MPaまで水漏れはなく十分な強度であることを確認した。安全のため、24MPaで耐圧を停止した。
【0023】
図5は、耐圧試験後のアルミニウムパイプと銅パイプ接合体の断面写真である。図の左右の矢印が指すところはアルミニウムパイプの側面であるが、耐圧試験により壁面は膨張して湾曲していることがわかる。図6は、図5の断面写真の(丸1)、(丸2)及び(丸3)の符号を付した□(四角)で囲った部分で示す部分を拡大した部分拡大写真である。ろう差し口のフィレット形状は良好であることがわかる。また、ろうはパイプの下部にまで流れており、アルミニウム及び銅のいずれにも接合できていることが確認できる。
【0024】
図7は、図5の断面写真の(丸1)符号を付した□(四角)で囲った部分で示す部分の合金層の顕微鏡写真である。図5で説明したように、アルミニウムパイプの側壁は耐圧試験により膨れているが、ろうはアルミニウムパイプの側壁及び銅パイプの側壁としっかり接合されている。図7における(丸1)部分金属顕微鏡写真における(丸2)の符号を付した□(四角)で囲った部分の顕微鏡写真から、アルミニウム側及び銅側のいずれにも合金層を確認することができた。コントラストを変更した写真も合わせて示す。
【0025】
図8から図15は、アルミニウム撚り線と銅撚り線の本発明に係るろう材による接合試験に関する図である。
【0026】
図8は、接合前の銅端子線とアルミニウム撚り線の写真である。写真上方のものは、銅端子線としてはAWG8を用い、ろう付けする部分は錫メッキが施されており、他端は銅線がバラケないようにリン銅ろうにてろう付け処理を施している。アルミニウム撚り線はφ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたものである。またアルミニウム撚り線はバラケ防止のため銅細線で締結している。写真下方のものは、銅端子線としてはAWG12を用い、ろう付けする部分は錫メッキが施されており、他端は銅線がバラケないようにリン銅ろうにてろう付け処理を施している。アルミニウム撚り線はφ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたものである。
【0027】
図9は、ろう付け方法を示す概念図である。ろう付けする際には図に示すように、銅端子線とアルミニウム撚り線のろう付けする部分がバラケないように銅線で2重巻きした。ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金である。フラックスとしては無洗浄対応のCsF系フラックスを用いた。ろう付けは、ガスバーナーを使用した差しろうにより行った。
【0028】
図10は、銅端子線とアルミニウム撚り線をろう付けにより接合した接合体の写真である。図10の(1)の接合体は、銅端子線はAWG8であり、アルミニウム撚り線はφ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたものである。図10の(2)の接合体は、銅端子線はAWG12であり、アルミニウム撚り線はφ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたものである。また、図10の下方の写真は断面観察位置(点線で切断と示している位置)を示したものである。
【0029】
図11は、図10の(1)の接合体と(2)の接合体のそれぞれの接合部分の断面写真である。ろうは銅の撚り線内部まで充填されている。アルミニウム線は円形を保っており、食われが非常に少ないことがわかる。図12は、図11と同じ図であるが、(2)の接合体の拡大部分(丸1)、(丸2)の符号を付した□(四角)で囲った部分)の位置、及び(1)の接合体の拡大部分(丸3)、(丸4)の符号を付した□で囲った部分)の位置を示す図である。
【0030】
図13は、図10の(2)の接合体の接合部分を切断した断面の拡大写真である。図13の図面向かって左側の写真は、図12における(丸1)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、ろうとアルミニウム線の間に隙間は見られない。また、図13の図面向かって右側の写真は、図12における(丸2)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、ボイドは見られるがろうと銅線の間に隙間は見られない。
【0031】
図14は、図10の(1)の接合体の接合部分を切断した断面の拡大写真である。図14の図面向かって左側の写真は、図12における(丸3)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、アルミニウム線同士の間に隙間があり、そこにフラックスが詰まっているが、ろうとアルミニウム線の接合自体はできている。図14の図面向かって右側の写真は、図12における(丸4)の符号を付した□(四角)で囲った部分の拡大写真であり、銅線同士の間に隙間があり、そこにフラックスが詰まっているが、ろうと銅線の接合自体はできている。
【0032】
図15は、図10の接合体の接合部分を切断した断面のアルミニウム線とろう及び銅端子線とろうのそれぞれの合金層をレーザースコープにて観察した写真である。アルミニウム線とろう及び銅端子線とろうのそれぞれ合金層が確認できる。
【0033】
図16から図25は、アルミニウム撚り線と銅撚り線の本発明に係るろう材による接合部の腐食試験に関する図である。
【0034】
図16は、銅端子線とアルミニウム撚り線を接合した接合体の写真である。(丸1)は、アルミニウム撚り線(φ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG12)の接合体である。(丸2)は、アルミニウム撚り線(φ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG8)の接合体である。写真の接合体はろう付け後の初期状態である。
【0035】
ろう付け方法は図9に示した方法と同じである。ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金である。フラックスとしては無洗浄対応のCsF系フラックスを用いた。
【0036】
図17は、アルミニウム撚り線(φ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG12)の接合体(n=2)の85℃、湿度85%の加速試験の結果を示す写真である。フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0037】
図18は、アルミニウム撚り線(φ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG8)の接合体(n=2)の85℃、湿度85%の加速試験の結果を示す写真である。フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0038】
図19は、図16に示す、それぞれの接合体を、点線で切断と示している位置で切断したろう付け初期の断面写真である。(丸1)は、アルミニウム撚り線(φ0.7mmのアルミニウム線を2本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG12)の接合体である。(丸2)は、アルミニウム撚り線(φ1.6mmのアルミニウム線を8本撚りしたもの)と銅(錫メッキ)端子線(AWG8)の接合体である。アルミニウム線は円形を保っており、食われが非常に少ない。
【0039】
図20は、腐食試験40日経過後の断面を観察した写真である。図20の図面向かって左側の(丸1)は、図17の撚り線1の40日の写真の点線で示す位置で切断した断面写真である。図20の図面向かって右側の(丸2)は、図18の撚り線3の40日の写真の点線で示す位置で切断した断面写真である。腐食試験後の断面は、初期状態と変わらず、フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0040】
図21は、図20と同じ写真であるが、拡大位置を示した図である。図22は、図21の図面の左側の写真の(丸1)の符号を付したアルミニウム線の部分の拡大図と、図21の図面の左側の写真の(丸2)の符号を付した銅線の部分の拡大図である。
【0041】
図23は、図21の図面の右側の写真の(丸3)の符号を付したアルミニウム線の部分の拡大図と、図21の図面の右側の写真の(丸4)の符号を付した銅線の部分の拡大図である。
【0042】
図24の図面の左側の写真は、図23の符号(丸5)を付した□(四角)で囲った部分のアルミニウム線の部分の合金層をレーザースコープにて観察した写真である。また、図24の右側の写真は、図24の左側の写真の符号(丸5)を付した□(四角)で囲った部分のアルミニウム線の部分の合金層をレーザースコープにて拡大して観察した写真である。
【0043】
図25の図面の左側の写真は、図23の符号(丸6)を付した□(四角)で囲った部分の銅線の部分の合金層をレーザースコープにて観察した写真である。また、図25の右側の写真は、図25の左側の写真の符号(丸8)を付した□(四角)で囲った部分の銅線の部分の合金層をレーザースコープにて拡大して観察した写真である。
【0044】
図22図23図24及び図25の拡大写真でも明らかなように、腐食試験後の断面は、初期状態と変わらず、フラックスによる腐食及び電解腐食(電蝕)は見られなかった。
【0045】
ろう材としては銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金に換えて、銅の含有量が38質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金のろう材を用いて、上記と同様な耐圧試験、接合試験及び腐食試験を行ったが、銅の含有量が33質量%、残部がアルミニウムのCu−Al合金と同様な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、汎用モータのアルミニウム線と銅線の接合、管径の細いアルミニウムパイプと銅パイプの接合などに利用することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25