(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-189961(P2017-189961A)
(43)【公開日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】接合用シート、接合構造及び接合方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/06 20060101AFI20170922BHJP
【FI】
B29C65/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-81982(P2016-81982)
(22)【出願日】2016年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】武田 真一
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD20
4F211AD24
4F211AD35
4F211AG03
4F211TA01
4F211TC02
4F211TD01
4F211TH17
4F211TJ30
4F211TN20
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】接合部材に加工を施すことなく、かつ、様々な材料の接合部材に対応して接合することができる接合用シート、接合構造及び接合方法を提供すること。
【解決手段】溶着接合用シート10は、シート本体11と、シート本体11の一方の面に形成されたエネルギダイレクタとしての機能を有する多数の突起部12とを有する。溶着接合用シート10は、シート本体11及び突起部12が接合材料と同一の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂複合材からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、
前記シート本体の少なくとも一方の面に形成された多数の突起部と、を具備し、
エネルギの付与により溶融し、その後固化又は硬化する材料からなる
接合用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の接合用シートであって、
摩擦熱によって溶融し、その後固化又は硬化する樹脂からなる
接合用シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接合用シートであって、
前記シート本体は、異なる材料からなる第1の層と第2の層とを張り合わせてなる
接合用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の接合用シートであって、
異なる材料からなる第1の領域と第2の領域とを有する
接合用シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の接合用シートであって、
前記シート本体の両面に前記多数の突起部が形成されている
接合用シート。
【請求項6】
第1の接合部材と、
第2の接合部材と、
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間に介在し、エネルギの付与により溶融されてその後固化又は硬化した請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の接合用シートと
が積層された接合構造。
【請求項7】
少なくとも第1の接合部材の接合面にシート本体と、前記シート本体の少なくとも一方の面に形成された多数の突起部とを有し、エネルギの付与により溶融し、その後固化又は硬化する材料からなる接合用シートを前記接合面に前記突起部が当接するようにして圧接し、
少なくとも前記第1の接合部材の接合面に圧接された前記接合用シートをエネルギの付与により溶融してその後固化又は硬化する
接合方法。
【請求項8】
請求項7に記載の接合方法であって、
前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化する工程で、前記第1の接合部材の接合面と第2の接合部材の接合面との間に前記接合用シートを挟んで、前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化する
接合方法。
【請求項9】
請求項7に記載の接合方法であって、
前記接合用シートは、前記シート本体の両面に前記多数の突起部が形成されているものであり、
前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化した後、前記第1の接合部材の接合面との間で前記接合用シートを挟むようにして第2の接合部材の接合面を圧接し、
前記第2の接合部材の接合面に圧接された前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化する
接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機やロケットにおける補強材の取り付け、自動車における樹脂部品の取り付け、パソコンにおけるリブやスティフナの取り付け等の様々な技術分野に適用が可能な接合用シート、接合構造及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂及び樹脂複合材の接合方法は、主として締結部品(ボルト、リベット、ファスナ等)を用いた機械接合、接着剤を用いた接着接合、溶着を用いた溶着接合の三種類に大別される。それらの中で、溶着接合は処理時間が短く、締結部品等のような重量増が無いことから、高効率な接合手段として注目されている。
【0003】
特許文献1に記載された溶着方法は、複合材に空隙を有するエネルギダイレクタを設け、エネルギダイレクタを有する接合予定部を、相手方の複合材の接合予定部と重ね、圧着する。エネルギダイレクタは典型的には突起形状であり、圧着の際にこの突起部先端に応力が集中して加圧力が増大し、効率良く溶着が行える。
【0004】
特許文献2に記載された繊維強化熱可塑性樹脂一体化構造体の製造方法は、強化繊維がランダムに配向された繊維強化熱可塑性樹脂成形体と被接着体を溶着により接合するに際し、成形体や被接着体の接合面に格子状の溝や格子状の凸条を予め設け、超音波により溶着を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−233729号公報
【特許文献2】特開2014−151558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、エネルギダイレクタと呼ばれる突起部を、予め接合部材に対して加工しておく必要がある。特許文献2に記載された技術では、接合部材にエネルギダイレクタを加工する替わりに、接合部材自体に凹凸を予め加工しておく必要がある。従って、特許文献1や特許文献2に記載された技術では、接合部材に対する形状的な制約を果たしており、どのような形状の接合部材へも対応できるような柔軟性を持ち合わせた手法ではない。
【0007】
また、樹脂及び樹脂複合材以外の様々な種類の材料でも溶着によって接合したいという要求は多く存在するが、特許文献1や特許文献2に記載された技術では、熱可塑性樹脂・樹脂複合材どうしの接続を前提としており、このような要求には対応できない場合がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、接合部材に加工を施すことなく、かつ、様々な材料の接合部材に対応して接合することができる接合用シート、接合構造及び接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る接合用シートは、シート本体と、前記シート本体の少なくとも一方の面に形成された多数の突起部と、を具備し、エネルギの付与により溶融し、その後固化又は硬化する材料からなる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る接合用シートでは、典型的には接合部材間に挟んで超音波や摩擦を接合用シートに付与することで、突起部にエネルギが集中しそこから溶融してその後固化又は硬化して接合部材間が接合される。
【0011】
本発明の一形態に係る接合用シートでは、シート自体に突起部が設けられているので、接合部材に加工を施す必要はない。また、シートの材料を適宜選択することにより、様々な材料の接合部材に対応することができる。従って、接合部材に加工を施すことなく、かつ、様々な材料の接合部材に対応して接合することができる。
本発明の一形態に係る接合用シートは、摩擦熱によって溶融し、その後固化又は硬化する樹脂からなるものである。
本発明の一形態に係る接合用シートは、前記シート本体は、異なる材料からなる第1の層と第2の層とを張り合わせてなるものである。
【0012】
本発明の一形態に係る接合用シートでは、第1の接合部材の材料と第2の接合部材の材料とが異なる場合であっても各接合部材に対応して接合することができる。
本発明の一形態に係る接合用シートは、異なる材料からなる第1の領域と第2の領域とを有するものである。
本発明の一形態に係る接合用シートでは、接合部材の接合面が材料の異なる領域を有する場合であっても各領域に対応して接合することができる。
本発明の一形態に係る接合用シートは、前記シート本体の両面に前記多数の突起部が形成されているものである。
【0013】
本発明の一形態に係る接合用シートでは、典型的には、第1の接合部材と第2の接合部材とを別工程で接合する場合にそれぞれの工程でそれぞれの面に形成された突起部にエネルギを集中して接合することができる。
【0014】
本発明の一形態に係る接合構造は、第1の接合部材と、第2の接合部材と、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間に介在し、エネルギの付与により溶融されてその後固化又は硬化した請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の接合用シートとが積層されたものである。
本発明の一形態に係る接合構造では、接合部材に加工を施すことなく、かつ、様々な材料の接合部材に対応した接合構造を得ることができる。
【0015】
本発明の一形態に係る接合方法は、少なくとも第1の接合部材の接合面にシート本体と、前記シート本体の少なくとも一方の面に形成された多数の突起部とを有し、エネルギの付与により溶融し、その後固化又は硬化する材料からなる接合用シートを前記接合面に前記突起部が当接するようにして圧接し、少なくとも前記第1の接合部材の接合面に圧接された前記接合用シートをエネルギの付与により溶融してその後固化又は硬化するものである。
本発明の一形態に係る接合方法では、接合部材に加工を施すことなく、かつ、様々な材料の接合部材に対応して接合することができる。
【0016】
本発明の一形態に係る接合方法は、前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化する工程で、前記第1の接合部材の接合面と第2の接合部材の接合面との間に前記接合用シートを挟んで、前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化するものである。
本発明の一形態に係る接合方法では、手間を要することなく第1の接合部材と第2の接合部材とを接合することができる。
【0017】
本発明の一形態に係る接合方法は、前記接合用シートは、前記シート本体の両面に前記多数の突起部が形成されているものであり、前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化した後、前記第1の接合部材の接合面との間で前記接合用シートを挟むようにして第2の接合部材の接合面を圧接し、前記第2の接合部材の接合面に圧接された前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化するものである。
【0018】
本発明の一形態に係る接合方法では、典型的には、第1の接合部材と第2の接合部材とを別工程で接合することが必要な場合に、接合部材に加工を施すことなく、かつ、様々な材料の接合部材に対応して接合することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明により、接合部材に加工を施すことなく、かつ、様々な材料の接合部材に対応して接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る溶着接合用シートの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した溶着接合用シートの断面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示した溶着接合用シートを用いた溶着接合工程を示す説明図である。
【
図4】
図3に示す溶着接合工程により溶着された溶着接合構造を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る溶着接合用シートの断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る溶着接合工程を示す説明図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る溶着接合用シートの断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る溶着接合工程を示す説明図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係る溶着接合用シートの断面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る溶着接合工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明の一実施形態に係る溶着接合用シートの外観を示す斜視図、
図2は
図1に示した溶着接合用シートの断面図である。
【0022】
これらの図に示すように、この溶着接合用シート10は、シート本体11と、シート本体11の一方の面に形成されたエネルギダイレクタとしての機能を有する多数の突起部12とを有する。
【0023】
シート本体11は、典型的には薄く矩形をなす。シート本体11は100μm以下であることが好ましい。また、突起部12は、典型的には、円錐状乃至円錐台状の形状をなし、例えばその高さは3mm以下であることが好ましい。シート本体11が厚いと、或いは突起部12が高いと、溶着工程での溶着接合用シート10の溶融が不十分となり、或いは溶着接合用シート10の溶融のために大きなエネルギが必要とされるからである。
【0024】
ただし、本発明に係る溶着接合用シート10のシート本体11の形状や厚さ、或いは突起部12の形状や高さ、密度などは接合部材に応じたものとなる。例えば、溶着接合用シート10が航空機やロケットにおける補強材の接合に使われる場合とパソコン等に使われる場合とではその態様はかなり異なるものとなる。また、突起部12は、様々な形態が考えられ、例えば長い凸壁状であってもよく、或いは溝が一方向或いは縦横に形成されたものであってもよい。
【0025】
溶着接合用シート10は、典型的には、シート本体11及び突起部12が後述の接合材料と同一の熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂複合材からなる。ただし、必ずしも接合材料と同一の材料とする必要はなく、溶着接合に適合する材料から適宜選択すればよい。溶着接合用シート10は、熱硬化性樹脂などの樹脂であってもよく、また樹脂系以外の他の材料であってももちろん構わない。また、シート本体11と突起部12とが別の材料であってもよい。
【0026】
このような溶着接合用シート10は、例えばインプリト技術(熱、紫外線)やスパッタリング技術、射出成形技術、エッチング技術を単独、もしくは組み合わせて用いて製造することが可能である。
このように構成された溶着接合用シート10を用いて接合部材を溶着接合する工程を
図3に基づき説明する。
【0027】
図3(a)に示すように、まず接合部材13の接合面13aと接合部材14の接合面14aとを対面させた状態で、これらの間に溶着接合用シート10を配置する。その際、例えば溶着接合用シート10の突起部12が上方の接合部材13側を向くように、溶着接合用シート10を配置する。
【0028】
ここで、接合部材13及び接合部材14は、典型的には、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂複合材からなる。接合部材は、熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂複合材からなるものでもよく、更に金属やセラミック、木材からなるものであってもよい。これらの材料の接合部材に対する溶着接合用シート10は、溶着接合として適合する材料を適宜選択すればよい。
【0029】
次に、
図3(b)に示すように、溶着接合用シート10の突起部12が上方の接合部材13の接合面13aに当接するようにして、接合部材13の接合面13aと接合部材14の接合面14aとの間で溶着接合用シート10を挟んで加圧し、圧接する。
【0030】
そして、超音波溶着機(超音波ウェルダ)により、接合部材13の上側からホーンを当てて例えば熱可塑性樹脂からなる溶着接合用シート10に超音波振動を与え、加圧力によって溶融する。具体的は、接合部材13の接合面13aと溶着接合用シート10の突起部12との境界面から突起部12が溶融し、それがシート本体11に及び、全体が溶融する。これにより、接合部材13と接合部材14とが溶着接合用シート10を介して溶着される。
【0031】
その後、
図4に示すように、接合部材13と接合部材14とが溶着接合用シート10を介在した溶着接合構造となる。つまり、本実施形態に係る溶着接合構造16は、接合部材13と、接合部材14と、接合部材13と接合部材14との間に介在し、接合部材13及び接合部材14に溶着した溶着接合用シート10とが積層されたものである。
【0032】
溶着手段としては、突起部近傍で発生した摩擦熱を利用する溶着技術が適用可能であり、上記の超音波溶着以外に、振動溶着やスピン溶着等の溶着技術が適用可能である。
【0033】
この実施形態に係る溶着接合用シート10は、溶着接合用シート10自体に突起部12を有しているため、溶着接合工程において接合部材13、14の接合面などに加工を施す必要はない。従来は、接合部材の接合面に溝や凸部などのエネルギダイレクタを設ける必要があったが、この溶着接合用シート10を用いることで接合部材13、14には何ら加工を施す必要がなくなり、溶着接合用シート10をいわば両面テープのごとく用いることが可能となる。
【0034】
また、従来の溶着接合技術は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂複合材からなる接合部材どうしを接合するものであったが、この実施形態に係る溶着接合用シート10では、当該シートの材料を適宜選択することにより、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂複合材以外の様々な材料の接合部材13、14に対応することができる。例えば、接合部材13、14が熱硬化性樹脂からなる場合には、典型的は、溶着接合用シート10を同一の熱硬化性樹脂からなるものとすればよい。溶着手段も熱硬化性樹脂に適合した溶着技術を適用すればよい。
〈第2の実施形態〉
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る溶着接合用シートの断面図である。
【0035】
図5に示すように、この溶着接合用シート20は、シート本体21と、シート本体21の一方の面に形成されたエネルギダイレクタとしての機能を有する多数の突起部22とを有する。
この実施形態に係る溶着接合用シート20は、シート本体21が2層を有する点で第1の実施形態に係る溶着接合用シート10と構成を異にする。
このシート本体21は、異なる材料からなる第1の層21aと第2の層21bとを張り合わせてなるものである。
【0036】
第1の層21aは、図中上方に露出した面を有し、典型的にはこの面に溶着接合される接合部材23(
図6参照)と同じ材料からなる。例えば、接合部材23が所定の熱可塑性樹脂であるならば、第1の層21aは同一の熱可塑性樹脂からなる。この実施形態においては、この第1の層21aの露出面側に突起部22が形成されている。
【0037】
第2の層21bは、図中下方に露出した面を有し、典型的にはこの面に溶着接合される接合部材24(
図6参照)と同じ材料からなる。例えば、接合部材24が所定の熱可塑性樹脂複合材であるならば、第2の層21bは同一の熱可塑性樹脂複合材からなる。
このような第1の層21a及び第2の層21bは直接溶着接合される接合部材に応じて同一の材料乃至親和性の高い材料を適宜選択すればよい。
このように構成された溶着接合用シート20を用いて接合部材を溶着接合する工程を
図6に基づき説明する。
【0038】
図6(a)に示すように、まず接合部材23の接合面23aと典型的には接合部材23とは異なる材料からなる接合部材24の接合面24aとを対面させた状態で、これらの間に溶着接合用シート20を配置する。その際、第1の層21aの露出面が接合部材23の接合面23aと対面し、第2の層21bの露出面が接合部材24の接合面24aと対面するように、溶着接合用シート20を配置する。
【0039】
次に、
図6(b)に示すように、溶着接合用シート20の突起部22が上方の接合部材23の接合面23aに当接するようにして、接合部材23の接合面23aと接合部材24の接合面24aとの間で溶着接合用シート20を挟んで加圧し、圧接する。
【0040】
そして、超音波溶着機(超音波ウェルダ)により、接合部材23の上側からホーンを当てて溶着接合用シート20に超音波振動を与え、加圧力によって溶融する。具体的は、接合部材23の接合面23aと溶着接合用シート20の突起部22との境界面から突起部22が溶融し、それが第1の層21a、更に第2の層21bに及び、全体が溶融する。これにより、接合部材23と接合部材24とが溶着接合用シート20を介して溶着される。
【0041】
この実施形態に係る溶着接合用シート20は、シート本体21が2層21a、21bからなり、それぞれの層21a、21bの材料を溶着接合する接合部材に応じて変えているので、接合部材の材料が異なっていても溶着接合することができる。
〈第3の実施形態〉
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る溶着接合用シートの断面図である。
【0042】
図7に示すように、この溶着接合用シート30は、シート本体31と、シート本体31の一方の面に形成されたエネルギダイレクタとしての機能を有する多数の突起部32とを有する。
【0043】
この実施形態に係る溶着接合用シート30は、シート本体31が異なる材料からなる第1の領域31aと第2の領域31bとを有する点で第1の実施形態に係る溶着接合用シート10と構成を異にする。典型的には、各突起部32は属する領域の材料と同じ材料からなる。
【0044】
ここで、この実施形態に係る溶着接合用シート30は、典型的には、
図8に示すように、接合部材33、34の接合面がそれぞれ材料の異なる領域33a、33b、34a、34bを有する場合の溶着接合に用いられる。
第1の領域31aは、典型的にはこの領域の面に溶着接合される接合部材33、34(
図8参照)の一方の領域33a、34aと同じ材料からなる。
第2の領域31bは、典型的にはこの領域の面に溶着接合される接合部材33、34(
図8参照)の他方の領域33b、34bと同じ材料からなる。
【0045】
例えば、接合部材33、34の一方の領域33a、34aが所定の熱可塑性樹脂であるならば、第1の領域31aは同一の熱可塑性樹脂からなる。また、接合部材33、34の他方の領域33b、34bが所定の熱可塑性樹脂複合材であるならば、第2の領域31bは同一の熱可塑性樹脂複合材からなる。
【0046】
このような第1の領域31a及び第2の領域31bは溶着接合される接合部材の当該領域の材料に応じて同一の材料乃至親和性の高い材料を適宜選択すればよい。なお、接合部材の領域が3種以上の材料からなる場合にも、それらの領域に対応するように溶着接合用シート30の各領域の材質を適宜設定すればよい。
このように構成された溶着接合用シート30を用いて接合部材を溶着接合する工程を
図8に基づき説明する。
【0047】
図8(a)に示すように、まず接合部材33の接合面と接合部材34の接合面とを対面させた状態で、これらの間に溶着接合用シート30を配置する。その際、例えば溶着接合用シート30の突起部32が上方の接合部材33側を向くように、溶着接合用シート30を配置する。また、溶着接合用シート30は、第1の領域31aが接合部材33、34の一方の領域33a、34aと一致し、第2の領域31bが他方の領域33b、34bと一致するように、位置させる。
【0048】
次に、
図8(b)に示すように、溶着接合用シート30の突起部32が上方の接合部材33の接合面に当接するようにして、接合部材33の接合面と接合部材34の接合面との間で溶着接合用シート30を挟んで加圧し、圧接する。
【0049】
そして、超音波溶着機(超音波ウェルダ)により、接合部材33の上側からホーンを当てて溶着接合用シート30に超音波振動を与え、加圧力によって溶融する。これにより、接合部材33と接合部材34とが溶着接合用シート30を介して溶着される。
【0050】
この実施形態に係る溶着接合用シート30は、シート本体31が異なる材料からなる第1の領域31aと第2の領域31bとを有し、それぞれの領域31a、31bの材料を接合部材33、34の領域33a、33b、34a、34bに応じて変えているので、場所によって材料が異なる接合部材33、34を確実に溶融接着することができる。
〈第4の実施形態〉
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。
図9は、本発明の第4の実施形態に係る溶着接合用シートの断面図である。
【0051】
図9に示すように、この溶着接合用シート40は、シート本体41と、シート本体41の両面に形成されたエネルギダイレクタとしての機能を有する多数の突起部42とを有する。
この実施形態に係る溶着接合用シート40は、シート本体41の両面に突起部42を有する点で第1の実施形態に係る溶着接合用シート10と構成を異にする。
このように構成された溶着接合用シート40を用いて接合部材を溶着接合する工程を
図10に基づき説明する。
【0052】
図10(a)に示すように、まず接合部材43の接合面43aと、溶着接合用シート40とは溶着接合することがない非接合部材(治工具の形態や剥離シートの形態等)45とを対面させた状態で、これらの間に溶着接合用シート40を配置する。
次に、
図10(b)に示すように、接合部材43の接合面43aと非接合部材45との間で溶着接合用シート40を挟んで加圧し、圧接する。
【0053】
次に、超音波溶着機(超音波ウェルダ)により、接合部材43の上側からホーンを当てて例えば熱可塑性樹脂からなる溶着接合用シート40に超音波振動を与え、加圧力によって溶融する。これにより、溶着接合用シート40が接合部材43に溶着する。なお、溶着接合用シート40は非接合部材45には溶着せず、非接合部材45より離間できる。また、この溶着工程においては、溶着接合用シート40の非接合部材45側の突起部42が残存する程度の摩擦熱とする。
【0054】
次に、溶着接合用シート40が溶着した接合部材43を非接合部材45より離間して、
図10(c)に示すように、接合部材44の接合面44aに溶着接合用シート40を挟むようにして、接合部材43の接合面43aと接合部材44の接合面44aとを対面するように配置する。
次に、
図10(d)に示すように、接合部材43の接合面43aと接合部材44の接合面44aとの間で溶着接合用シート40を挟んで加圧し、圧接する。
【0055】
そして、超音波溶着機(超音波ウェルダ)により、接合部材43の上側からホーンを当てて溶着接合用シート40に超音波振動を与え、加圧力によって溶融する。これにより、溶着接合用シート40が接合部材44に溶着する。
【0056】
この実施形態に係る溶着接合用シート40は、別の工程で接合部材43、44をそれぞれ溶着することができる。例えば、溶着接合用シート40が溶着した接合部材43を製品として流通させて、その製品を購入したユーザが上記の
図10(c)及び(d)の工程を経て接合部材44に溶着するという用途が考えられる。
なお、上記の実施形態では、非接合部材を用いていたが、これを用いずに溶着したくない接合面に過大な摩擦熱が与えられないようにしてもよい。
また、この第4の実施形態では、溶着接合用シート40が一層であることを前提に説明したが、溶着接合用シート40は第2の実施形態で示したように異なる材料からなる第1の層と第2の層とを張り合わせてなるものであってもよい。
〈その他〉
本発明は上記の実施形態に限定されず、様々な変形が可能であり、その変形態様も本発明の技術的思想の範囲内にある。
【0057】
例えば、上記実施形態では、溶着接合用シートが摩擦熱によって溶融し、その後固化又は硬化する樹脂からなる熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂複合材、熱硬化性樹脂などを例にとり説明したが、これに限定されない。
また、上記実施形態では、熱可塑性樹脂や金属等からなる接合部材を溶着接合用シートを使って溶着により接合するものであったが、他の材料からなる接合部材を接合用シートを使って接合するものであっても構わない。
【0058】
更に、本発明は、工業的なエネルギにより接合用シートが溶融するものばかりでなく、人間の手等で擦った際に発生する摩擦熱によって接合部材に接合用シートを接合するものも含んでいる。接合用シートの材料としては、典型的には、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ等を用いることができる。例えば、本発明に係る接合用シートが従来からある両面テープを代用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10、20、30、40 溶着接合用シート
11、21、31、41 シート本体
12、22、32、42 突起部
13、14、23、24、33、34、43、44、45 接合部材
【手続補正書】
【提出日】2017年6月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接合部材と第2の接合部材との間に配置され、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とを接合するために用いられる接合用シートであって、
厚さが100μm以下のシート本体と、
前記シート本体の少なくとも一方の面に形成され、高さが3mm以下の多数の突起部と、を具備し、
前記突起部側からのエネルギの付与により前記突起部及び前記シート本体が溶融し、その後固化又は硬化する材料からなる
接合用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の接合用シートであって、
摩擦熱によって溶融し、その後固化又は硬化する樹脂からなる
接合用シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接合用シートであって、
前記第1の接合部材と第2の接合部材とは、異なる材料からなるものであり、
前記シート本体は、異なる材料からなる第1の層と第2の層とを張り合わせてなり、
前記第1の層は、前記第1の接合部材と同一の材料又は前記第1の接合部材と親和性の高い材料からなり、
前記第2の層は、前記第2の接合部材と同一の材料又は前記第2の接合部材と親和性の高い材料からなる
接合用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の接合用シートであって、
少なくとも前記第1の接合部材の接合面は、異なる材料からなる第1及び第2の接合面領域を有するものであり、
前記シート本体の前記第1の接合面領域に対応する第1の領域は、前記第1の接合部材の第1の接合面領域の材料と同一の材料又は前記第1の接合部材の第1の接合面領域の材料と親和性の高い材料からなり、
前記シート本体の前記第2の接合面領域に対応する第2の領域は、前記第1の接合部材の第2の接合面領域の材料と同一の材料又は前記第1の接合部材の第2の接合面領域の材料と親和性の高い材料からなる
接合用シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の接合用シートであって、
前記シート本体の両面に前記多数の突起部が形成されている
接合用シート。
【請求項6】
第1の接合部材と、
第2の接合部材と、
厚さが100μm以下のシート本体と、前記シート本体の少なくとも一方の面に形成され、高さが3mm以下の多数の突起部とを有し、前記突起部側からのエネルギの付与により前記突起部及び前記シート本体が溶融し、その後固化又は硬化する材料からなり、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間に配置され、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とを接合する接合用シートと
が積層された接合構造。
【請求項7】
少なくとも第1の接合部材の接合面に、厚さが100μm以下のシート本体と、前記シート本体の少なくとも一方の面に形成され、高さが3mm以下の多数の突起部とを有し、エネルギの付与により前記突起部及び前記シート本体が溶融し、その後固化又は硬化する材料からなる接合用シートを前記接合面に前記突起部が当接するようにして圧接し、
少なくとも前記第1の接合部材の接合面に圧接された前記接合用シート全体をエネルギの付与により溶融してその後固化又は硬化する
接合方法。
【請求項8】
請求項7に記載の接合方法であって、
前記接合用シートを溶融してその後固化又は硬化する工程で、前記第1の接合部材の接合面と第2の接合部材の接合面との間に前記接合用シートを挟んで、前記接合用シート全体を溶融してその後固化又は硬化する
接合方法。