【解決手段】自動ワインダは、複数のワインダユニットを備える。この自動ワインダは、作業台車としての玉揚台車と、位置取得部と、移動制御部と、を備える。玉揚台車は、複数のワインダユニットが並べられた方向に移動可能である。位置取得部は、自動ワインダで作業を行うオペレータの位置を取得する。移動制御部は、位置取得部で取得したオペレータの位置が玉揚台車から離れる方向に移動したとき、玉揚台車をオペレータに近づけるように移動させる(ステップS107)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成のように、玉揚作業及びその後の巻取管の取付けを自動化した場合においても、依然として、オペレータが自動ワインダを監視中にパッケージの異常等を発見し、手動でパッケージを取り外して新しい巻取管を巻取部に取り付けたいような状況が発生する場合があった。そのようなときに、上記特許文献1の構成の自動ワインダでは、オペレータが新しい巻取管を玉揚台車から取って来たり、あるいは巻取管を自動ワインダの一端部にある巻取管供給装置から取って来たり、あるいはオペレータが巻取管を持ち歩いたりする必要があり、面倒であった。また、巻取管に限らず、オペレータが作業に使うその他の道具等も、オペレータにとってアクセスし易い場所に配置すること等が望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、繊維機械において、オペレータの作業を支援することにある。
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の繊維機械が提供される。即ち、この繊維機械は、複数の巻取ユニットを備える。この繊維機械は、作業台車と、位置取得部と、移動制御部と、を備える。前記作業台車は、前記複数の巻取ユニットが並べられた方向に移動可能である。前記位置取得部は、前記繊維機械で作業を行うオペレータの位置を取得する。前記移動制御部は、前記位置取得部で取得したオペレータの位置が前記作業台車から離れる方向に移動したとき、前記作業台車をオペレータに近づけるように移動させる。
【0009】
これにより、オペレータが作業台車から離れる方向に移動したとき、作業台車をオペレータに近づけるように移動させるので、オペレータが作業に必要とする道具を作業台車に搭載しておくことにより、当該作業台車を、オペレータの作業を支援する移動棚として利用することができる。
【0010】
前記の繊維機械においては、前記作業台車は、前記各巻取ユニットで形成されたパッケージを玉揚げする玉揚台車であることが好ましい。
【0011】
これにより、玉揚台車を、オペレータの作業を支援する移動棚としても利用することが可能となり、特別な構成を必要とすることなくオペレータの作業を支援することができる。
【0012】
前記の繊維機械においては、前記移動制御部は、前記複数の巻取ユニットの何れかから玉揚処理の要求が出された場合には、前記位置取得部で取得したオペレータの位置が前記作業台車から離れる方向に移動したとき前記作業台車をオペレータに近づけるように移動させる追従モードを解除して、前記作業台車を前記玉揚処理の対象となる前記巻取ユニットに対応する位置まで移動させることが好ましい。
【0013】
これにより、玉揚処理の要求が出されていない場合に限り、追従モードにして、玉揚台車をオペレータの作業を支援する移動棚として利用することができる。従って、玉揚作業の効率の低下を防止することができる。
【0014】
前記の繊維機械においては、前記作業台車は、前記巻取ユニットに取付け可能な巻取管をストックできることが好ましい。
【0015】
これにより、オペレータが新しく巻取ユニットに取り付ける巻取管を取得し易くなり、作業負担が軽減される。例えば、オペレータがパッケージの異常等に気付いたときに、当該パッケージを取り外して、作業台車から新しい巻取管を取り出して、巻取ユニットに取り付けることができる。
【0016】
前記の繊維機械においては、前記作業台車は、圧縮空気源から供給される空気を噴射することが可能なエアガンを備えることが好ましい。
【0017】
これにより、繊維機械の所望の場所で、オペレータが容易に作業台車からエアガンを取り出して、例えば繊維屑又は糸屑を除去する清掃作業を行うことができる。
【0018】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記各巻取ユニットには、前記作業台車を当該巻取ユニットに対応する位置又はその近傍に移動させるための呼出し操作部が備えられる。前記移動制御部は、前記呼出し操作部が操作されたら、前記作業台車を前記巻取ユニットに対応する位置又はその近傍に移動させた後、前記位置取得部で取得したオペレータの位置が前記作業台車から離れる方向に移動したとき前記作業台車をオペレータに近づけるように移動させる追従モードを開始する。
【0019】
これにより、呼出し操作部が操作されたことをきっかけにして、呼出し操作部が操作された巻取ユニットに対応する位置又はその近傍にまで作業台車を移動させて、オペレータが作業台車から離れる方向に移動したとき作業台車をオペレータに近づけるように移動させる追従モードを開始することができ、必要なときだけ作業台車をオペレータについてこさせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
初めに、本実施形態の繊維機械である自動ワインダ1の概要について
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ1の全体的な構成を示す正面図である。本実施形態の自動ワインダ(繊維機械)1は、
図1に示すように、並べて配置された複数のワインダユニット(巻取ユニット)2と、複数のワインダユニット2の並べられた方向の一端に配置された機台制御装置5と、複数のワインダユニット2の並べられた方向の他端に配置された巻取管供給装置8と、玉揚台車(作業台車)7と、を備えている。
【0023】
各ワインダユニット2は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム3と、このユニットフレーム3の側方に設けられた巻取ユニット本体4と、を備えている。ユニットフレーム3の内部には、巻取ユニット本体4の各部を制御するユニット制御部(図略)が配置されている。機台制御装置5が備える機台制御部50は、各ワインダユニット2が備える前記ユニット制御部と通信可能に構成されている。自動ワインダ1のオペレータは、機台制御装置5を適宜操作することにより、複数のワインダユニット2を一括して管理することができる。
【0024】
図2は、ワインダユニット2の側面図である。
図1及び
図2に示すように、ワインダユニット2は、給糸ボビン21の糸を解舒し、解舒された糸20を綾振りしながら糸巻取部22の巻取管23に巻き取るように構成されている。なお、以下では、糸20が巻き取られた状態の巻取管をパッケージ29と呼ぶことがある。
【0025】
図1及び
図2に示すように、ワインダユニット2の正面側には、オペレータが給糸ボビン21を供給するためのマガジン式のボビン供給機構6が備えられている。
図2に示すように、ボビン供給機構6は、複数のポケット部62pが形成されたマガジンカン62等を備え、オペレータがこのポケット部62pに給糸ボビン21を供給できるようになっている。ボビン供給機構6に供給された給糸ボビン21は、適時にマガジンカン62からボビンセット部10に向かって案内されながら落下して、当該ボビンセット部10に直立状態でセットされる。
【0026】
図2に示すように、糸巻取部22は、クレードル24と、巻取ドラム27と、を備えている。
【0027】
クレードル24は、巻取管23(又はパッケージ29)を回転可能に支持することができる。また、クレードル24は、支持しているパッケージ29の外周を巻取ドラム27の外周に接触させることができるように構成されている。
【0028】
巻取ドラム27は、パッケージ29の表面で糸20をトラバース(綾振り)させるとともに前記パッケージ29を回転させるためのものである。巻取ドラム27は、図略の駆動源(電動モータ等)によって回転駆動される。パッケージ29の外周を巻取ドラム27に接触させた状態で、巻取ドラム27を回転駆動することにより、パッケージ29を従動回転させることができる。また、この巻取ドラム27の外周面には螺旋状の綾振溝が形成されており、給糸ボビン21から解舒された糸20は、前記綾振溝によって一定の幅でトラバースされながらパッケージ29表面に巻き取られる。これにより、一定の巻幅を有するパッケージ29を形成することができる。
【0029】
玉揚台車7は、複数のワインダユニット2のうちの1つにおいてパッケージ29が満巻(規定量の糸が巻き取られた状態)となった際に、当該ワインダユニット2に対応する位置まで移動し、満巻パッケージを自動的に取り外すとともに、新しい巻取管(紙管)23をセットするように構成されている。玉揚台車7は、糸巻取部22に取り付けるための巻取管23を本体フレーム71の内部に複数本ストックできるように構成されている。この巻取管23のストックが無くなったら、玉揚台車7は
図1に示す巻取管供給装置8に対応する位置まで移動し、新しい巻取管23を補給できるようになっている。
【0030】
巻取ユニット本体4は、給糸ボビン21を支持するボビンセット部10と、糸20を巻き取る糸巻取部(巻取部)22との間の糸20の走行経路中に各種の装置を備えている。具体的に説明すると、糸20の走行経路に配置されている主要な装置として、ボビンセット部10側から糸巻取部22側へ向かって順に、解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、糸品質測定装置15と、が配置されている。
【0031】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21から解舒される糸20が振り回されて給糸ボビン21上部に形成されるバルーンに対し、可動部材を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助するためのものである。
【0032】
図2に示すテンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式に構成されている。可動側の櫛歯は、櫛歯状態が噛合せ状態又は解放状態となるように、ロータリ式のソレノイドにより回動可能に構成されている。
【0033】
糸品質測定装置15は、糸20の太さを監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。また、糸品質測定装置15よりも糸道の上流側(下方)には、当該糸品質測定装置15が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が配置されている。
【0034】
糸継装置14は、糸品質測定装置15が糸欠陥を検出してカッタ39で糸20を切断する糸切断時、給糸ボビン21から解舒中の糸20の糸切れ時、又は給糸ボビン21の交換時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ29側の上糸とを糸継ぎするものである。本実施形態の糸継装置14は、供給される空気により糸の撚り合わせ等が行われて糸継ぎが行われる形式のものである。
【0035】
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を吸引捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ29側の上糸を吸引捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス(吸引口)34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26は負圧源に接続されており、吸引口32及びサクションマウス34に吸引流が発生するようになっている。
【0036】
この構成で、給糸ボビン21の交換時等においては、糸道側方に待機している下糸案内パイプ25の吸引口32が新しく供給された給糸ボビン21の下糸を吸引捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することで糸継装置14まで下糸を案内する。また、これと略同時に、上糸案内パイプ26のサクションマウス34が、逆転駆動されるパッケージ29から解舒される上糸を吸引捕捉し、その後、軸35を中心として下方へ回動することで糸継装置14まで上糸を案内する。そして、糸継装置14において下糸と上糸の糸継ぎが行われる。
【0037】
以上の構成で、自動ワインダ1の各ワインダユニット2は、ボビンセット部10に支持された給糸ボビン21から糸20を解舒して巻取管23に巻き取って、所定長のパッケージ29を形成することができる。
【0038】
次に、玉揚台車7について、
図1から
図5を参照して説明する。
図3は、玉揚台車7の模式的な斜視図である。
図4は、
図3とは別の方向から見た玉揚台車7の模式的な斜視図である。
図5は、自動ワインダ1が備える制御系の構成を示すブロック図である。
【0039】
図1から
図5に示すように、玉揚台車7は、本体フレーム71と、糸引出しアーム72と、クレードル開放アーム73と、チャッカ74と、台車制御部70と、巻取管保持部83と、エアガン82と、道具保持部84と、を主要な構成として備えている。
【0040】
図1、
図3及び
図4に示す玉揚台車7の本体フレーム71は、ワインダユニット2が並べられる方向(
図1の左右方向)に沿って当該ワインダユニット2の上方に配置されたレール40に沿って移動可能に構成されている。
図3等に示すように、本体フレーム71には、当該レール40上を走行可能な走行車輪90が回転可能に支持されている。この走行車輪90が図略の電動モータによって駆動されることで、玉揚台車7を走行させることができる。
【0041】
図1に示す糸引出しアーム72は、細長く形成され、伸縮可能に構成されている。この糸引出しアーム72には図示しないエアシリンダが取り付けられており、このエアシリンダは、自動ワインダ1が稼動する工場に設置されている図略のコンプレッサーから供給される圧縮空気により伸縮駆動させることができる。糸引出しアーム72の先端には糸捕捉部76が取り付けられている。この糸捕捉部76は、適宜の方法で下糸案内パイプ25の近傍の糸20を捕捉することができるように構成されている。
【0042】
図1に示すクレードル開放アーム73は、前記クレードル24を操作して開放し、満巻となったパッケージ29をクレードル24から取り外すことができるように構成されている。
【0043】
図1に示すチャッカ74は、玉揚台車7内にストックされている空の巻取管(紙管)23を掴むことができるように構成されている。また、このチャッカ74は、軸77に対して回動可能に取り付けられている。玉揚台車7は、このチャッカ74を、玉揚台車7内にストックされている空の巻取管23を掴む位置と、当該巻取管23をクレードル24に取り付ける位置と、の間で回動させるための図略のカム機構を備えている。
【0044】
図5に示す台車制御部70は、玉揚台車7の移動や玉揚作業を制御するためのものである。台車制御部70は、機台制御部50及び前記ユニット制御部と同様に、CPU、ROM、RAM等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成されている。台車制御部70のROMには適宜の制御プログラム(玉揚台車7の移動を制御するプログラム、玉揚作業を制御するプログラム等)が記憶されており、上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、玉揚台車7が適切に動作するように制御することができる。
【0045】
台車制御部70には、玉揚台車7の玉揚作業(玉揚処理)を制御するための玉揚制御部88が備えられる。
【0046】
図3に示す巻取管保持部83は、空の巻取管(紙管)23を、上記のチャッカ74に供給するものとは別に保持するものである。本実施形態の巻取管保持部83は、玉揚台車7の右側面から略L字型に突出する丸棒状に形成されている。それぞれの巻取管保持部83には、1本又は数本程度の巻取管23を差し込んで保持(ストック)しておくことができる。
【0047】
エアガン82は、図示しないボタンを押すことで圧縮空気を噴射することが可能に構成されている。このエアガン82は、可撓性を有するホースを介して、玉揚台車7が備えるエア配管75の一端に接続される。当該エア配管75の他端には、自動ワインダ1を装備する工場に設けられている図略のコンプレッサーからの圧縮空気が、図示しないホース等を介して供給されるようになっている。オペレータは、例えばワインダユニット2の停止時等に、糸巻取部22等の繊維屑及び糸屑が溜まり易い場所にエアガン82からの空気を吹き付けることにより、当該場所の繊維屑及び糸屑を吹き飛ばして清掃することができる。
【0048】
図4に示す道具保持部84は、オペレータが作業に使う道具を載置しておくことが可能な棚状のものである。本実施形態の道具保持部84は、玉揚台車7の左側面から略L字型に突出する板状に構成されている。道具保持部84には、例えば、糸20に塗るワックスを入れた容器、懐中電灯等の照明、カメラ、電話、工具類、軍手、その他の交換用消耗品(ローラ等)等を積載することができる。
【0049】
本実施形態の自動ワインダ1では、玉揚台車7の動作モードを、通常の玉揚作業を行う「通常モード」から、オペレータが移動することに伴って移動する(オペレータについて回る)移動棚として機能する「追従モード」に切り換えることができる。このモードの切換は、当該自動ワインダ1が設置された工場等で作業をするオペレータが所定の操作を行うことで実現することができる。ただし、玉揚台車7が「追従モード」で動作しているときに何れかのワインダユニット2において玉揚要求が発生した場合、動作モードは自動的に「通常モード」に切り換わるように構成されている。
【0050】
以下では、上記の「追従モード」を実現するために自動ワインダ1が備える構成について、
図5を参照して詳細に説明する。
【0051】
自動ワインダ1は、「追従モード」を実現するための構成として、
図1及び
図5に示すように、呼出しボタン(呼出し操作部)37を各ワインダユニット2に備える。また、
図5に示すように、機台制御部50は指令部51を備える。台車制御部70は、移動制御部78と、位置取得部79と、追従モード設定部89と、を備える。更に、玉揚台車7の正面側には、
図3等に示すように距離センサ81が取り付けられている。
【0052】
図1及び
図5に示す呼出しボタン37は、当該呼出しボタン37が押されたワインダユニット2の近傍にまで玉揚台車7を移動させて、その後に玉揚台車7がオペレータについて回るようにする「追従モード」を開始したいときに、オペレータが操作するボタンである。本実施形態では、呼出しボタン37は各ワインダユニット2のユニットフレーム3の正面側に設けられている。呼出しボタン37が操作された場合、当該ワインダユニット2の前記ユニット制御部は、当該呼出しボタン37が押されたワインダユニット2に対応する位置(呼出しボタン37が押されたワインダユニット2に対面する位置)まで、玉揚台車7を移動させることを要求する信号(呼出信号)を、機台制御装置5が備える機台制御部50の指令部51に送信する。なお、ワインダユニット2には、各ワインダユニット2を識別するために、自動ワインダ1の一端側のワインダユニット2から順に、例えば1番から40番までのユニット番号が割り当てられている。
【0053】
また、それぞれのワインダユニット2の前記ユニット制御部は、当該ワインダユニット2においてパッケージ29が満巻になった場合に、玉揚台車7による玉揚作業(玉揚処理)を要求する信号(玉揚要求信号)を、機台制御部50の指令部51に送信する。
【0054】
図5に示す指令部51は、ワインダユニット2から送信された呼出信号又は玉揚要求信号を受信し、それに応じて、移動制御部78及び玉揚制御部88に指令信号を送信する。
【0055】
移動制御部78は、玉揚台車7のレール40に沿った移動を制御するコンピュータである。移動制御部78は、機台制御部50の指令部51から送信された信号を受信して、その受信結果に基づいて玉揚台車7を適宜に移動させる。
【0056】
位置取得部79は、玉揚台車7から所定の距離の範囲内にオペレータがいる場合に、当該オペレータと玉揚台車7との距離を取得するものである。具体的には、玉揚台車7に取り付けられている距離センサ81の検出可能領域内にオペレータがいる場合に、距離センサ81からオペレータまでの距離を取得する。
【0057】
本実施形態の距離センサ81は、超音波センサにより構成される。この距離センサ81は、送波器により超音波を周囲に向けて発信し、オペレータからの反射波を受波器で受信することにより、オペレータから距離センサ81までの距離を検出する。距離センサ81の検出結果は位置取得部79に出力される。
【0058】
追従モード設定部89は、玉揚台車7を「追従モード」に設定したり、又は玉揚台車7の「追従モード」を解除したりすることができるモード切換部である。「追従モード」が解除された場合、「通常モード」に自動的に設定される。
【0059】
次に、玉揚台車7の移動を制御するために移動制御部78等により行われる処理について、
図6を参照して説明する。
図6は、移動制御部78が行う処理を説明するフローチャートである。
【0060】
初めに、ステップS101において、移動制御部78は、玉揚要求が出されているか否かを判断する。具体的には、移動制御部78は、玉揚要求が出されたワインダユニット2まで移動することを指令する信号を指令部51から受信しているか否かを判断する。
【0061】
ステップS101の判断の結果、玉揚要求が出されている場合、移動制御部78は、「追従モード」に設定されているか否かの情報を追従モード設定部89から取得する。そして、「追従モード」に設定されている場合、移動制御部78は、追従モード設定部89に「追従モード」の解除を要求し、これに伴って、追従モード設定部89は、「追従モード」を解除して「通常モード」を設定する(ステップS102)。
【0062】
続いて、ステップS103において、移動制御部78は、玉揚要求が出されたワインダユニット2に対応する位置まで、玉揚台車7を移動させる。即ち、移動制御部78は、玉揚要求が出されたワインダユニット2に対面する位置に至るまで、レール40に沿って玉揚台車7を移動させる。
【0063】
続いて、移動制御部78は、玉揚制御部88から玉揚作業の進行状況を取得し、玉揚作業が終了するまで、玉揚台車7を、玉揚要求が出されたワインダユニット2に対応する位置で待機させる(ステップS104)。玉揚作業が終了したら、ステップS101の処理に戻る。
【0064】
ステップS101の判断の結果、玉揚要求が出されていない場合、移動制御部78は、「追従モード」に設定されているか否かの情報を追従モード設定部89から取得する(ステップS105)。そして、「追従モード」に設定されている場合、ステップS106の処理に移行する。
【0065】
ステップS106において、移動制御部78は、位置取得部79から距離センサ81とオペレータとの間の距離を取得し、オペレータが玉揚台車7(距離センサ81)から所定距離以上離れているか否かを判断する。
【0066】
ステップS106の判断の結果、オペレータが玉揚台車7(距離センサ81)から所定距離以上離れている場合、移動制御部78は、玉揚台車7をオペレータに近づけるように移動させる(ステップS107)。このとき、例えば玉揚台車7がオペレータに対して一定の距離を保つように当該玉揚台車7を移動させることとしてもよい。
【0067】
ステップS106の判断の結果、オペレータが玉揚台車7(距離センサ81)から所定距離よりも近いところにいる場合、玉揚台車7はオペレータが十分アクセスし易い範囲にあるので、それ以上玉揚台車7をオペレータに近づける必要はないと考えられる。そのため、移動制御部78は、玉揚台車7の位置を現在の位置で待機させて、ステップS101の処理に戻る。
【0068】
ステップS105の判断の結果、「追従モード」に設定されていなかった場合、続いて移動制御部78は、何れかの呼出しボタン37が押されたか否かの判断を行う(ステップS108)。具体的には、移動制御部78は、指令部51から玉揚台車7の呼出しを要求する信号が受信されたか否かを判断する。
【0069】
ステップS108の判断の結果、何れかの呼出しボタン37が押されていた場合、移動制御部78は、当該呼出しボタン37が押されたワインダユニット2に対応する位置まで玉揚台車7を移動させる(ステップS109)。これにより、玉揚台車7の位置がオペレータの位置の近傍となる。
【0070】
その後、移動制御部78は、追従モード設定部89に「追従モード」に設定するよう要求し、これに伴って、追従モード設定部89は、「通常モード」を解除して「追従モード」に設定する(ステップS110)。
【0071】
このような移動制御部78による一連の処理により、「追従モード」に設定されているときは、オペレータが玉揚台車7から離れる方向に移動した場合には玉揚台車7をオペレータに近づけるように移動させることができる(ステップS107)。言い換えれば、玉揚台車7をオペレータについてこさせることができる。よって、オペレータが作業に必要とする巻取管23やワックス等の道具を玉揚台車7に積載しておくことにより、当該玉揚台車7を、オペレータの作業を支援する移動棚として利用することができる。
【0072】
また、「追従モード」に設定されていない場合でも、オペレータが何れかの呼出しボタン37を押したら、それをきっかけにして玉揚台車7をオペレータの近傍まで移動させて(ステップS109)、自動で「通常モード」から「追従モード」に切り換えて(ステップS110)、「追従モード」を開始することができる。これにより、オペレータが玉揚台車7の所までわざわざ行って、前記のモード切換のための図略のスイッチを操作しなくても、呼出しボタン37が押されたことをきっかけにして玉揚台車7を近くに呼び出してその後はオペレータについてこさせることができ、オペレータの作業負担が軽減される。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態の自動ワインダ1は、複数のワインダユニット2を備える。この自動ワインダ1は、作業台車としての玉揚台車7と、位置取得部79と、移動制御部78と、を備える。玉揚台車7は、複数のワインダユニット2が並べられた方向に移動可能である。位置取得部79は、自動ワインダ1で作業を行うオペレータの位置を取得する。移動制御部78は、位置取得部79で取得したオペレータの位置が玉揚台車7から離れる方向に移動したとき、玉揚台車7をオペレータに近づけるように移動させる(
図6のステップS107)。
【0074】
これにより、オペレータが玉揚台車7から離れる方向に移動したとき、玉揚台車7をオペレータに近づけるように移動させるので、オペレータが作業に必要とする道具等を玉揚台車7に予め積載しておくことにより、当該玉揚台車7を、オペレータの作業を支援する移動棚として利用することができる。
【0075】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、前記作業台車は、各ワインダユニット2で形成されたパッケージ29を玉揚げする玉揚台車7である。
【0076】
これにより、玉揚台車7を、オペレータの作業を支援する移動棚としても利用することが可能となり、特別な構成を必要とすることなくオペレータの作業を支援することができる。また、このようなオペレータの作業を支援する移動棚を低コストで実現することができる。
【0077】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、移動制御部78は、複数のワインダユニット2の何れかから玉揚処理の要求が出された場合には、位置取得部79で取得したオペレータの位置が玉揚台車7から離れる方向に移動したとき当該玉揚台車7をオペレータに近づけるように移動させる追従モードを解除して、玉揚台車7を前記玉揚処理の対象となるワインダユニット2に対応する位置まで移動させる(
図6のステップS103)。
【0078】
これにより、玉揚処理の要求が出されていない場合に限り、追従モードにして、玉揚台車7をオペレータの作業を支援する移動棚として利用することができる。この結果、玉揚作業の効率の低下を防止できる。
【0079】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、玉揚台車7は、ワインダユニット2に取付け可能な巻取管23をストックできる。
【0080】
これにより、オペレータが新しくワインダユニット2の糸巻取部22に取り付ける巻取管23を取得し易くなり、作業負担が軽減される。これにより、例えば、オペレータがパッケージ29の異常等に気付いたときに、当該パッケージ29を取り外して、オペレータの近くにある玉揚台車7から新しい巻取管23を取り出して、ワインダユニット2の糸巻取部22に取り付けることができる。
【0081】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、玉揚台車7は、圧縮空気源から供給される空気を噴射することが可能なエアガン82を備える。
【0082】
これにより、自動ワインダ1の所望の場所で、オペレータが容易に玉揚台車7からエアガン82を取り出して、例えば繊維屑又は糸屑を除去する清掃作業を行うことができる。
【0083】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、各ワインダユニット2には、玉揚台車7を当該ワインダユニット2に対応する位置又はその近傍に移動させるための呼出しボタン37が備えられる。移動制御部78は、呼出しボタン37が操作されたら、玉揚台車7を前記ワインダユニット2に対応する位置又はその近傍に移動させた後、位置取得部79で取得したオペレータの位置が玉揚台車7から離れる方向に移動したとき前記玉揚台車7をオペレータに近づけるように移動させる追従モードを開始する。
【0084】
これにより、呼出しボタン37が操作されたことをきっかけにして、呼出しボタン37が操作されたワインダユニット2に対応する位置又はその近傍にまで玉揚台車7を移動させて、オペレータが玉揚台車7から離れる方向に移動したとき玉揚台車7をオペレータに近づけるように移動させる追従モードを開始することができ、必要なときだけ玉揚台車7をオペレータについてこさせることができる。
【0085】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0086】
上記の実施形態では、呼出しボタン37の操作により、玉揚台車7の動作モードが「追従モード」に切り換えられている。しかしながら、このモードの切換は、呼出しボタン37に限らず、例えば玉揚台車7に設けられている図略のスイッチを操作したり、機台制御装置5を操作したりすること等により行うこともできる。
【0087】
道具保持部84は、棚状に構成することに代えて、例えば箱状又は袋状に構成することができる。また、エアガン82、巻取管保持部83、及び道具保持部84等は、玉揚台車7の側面に代えて別の面(例えば、工場の通路側を向く面、上面、又は底面等)に配置することもできる。更には、エアガン82、巻取管保持部83、及び道具保持部84等を、本体フレーム71の内部に配置することもできる。
【0088】
上記の実施形態では、呼出し操作部としての呼出しボタン37が操作されたら、当該呼出しボタン37を有するワインダユニット2に対応する位置まで、玉揚台車7が移動されるものとした。具体的には、例えばユニット番号が20番のワインダユニット2の呼出しボタン37が操作されたら、この20番のワインダユニット(錘)2に対面する位置まで玉揚台車7がレール40に沿って移動する。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、呼出しボタン37が操作されたワインダユニット2の1又は2以上隣のワインダユニット(例えば、19番、21番、18番、22番、・・・)に対面する位置まで玉揚台車7が移動されることとしてもよい。
【0089】
上記の実施形態では、玉揚台車7が「追従モード」で動作しているときに何れかのワインダユニット2において玉揚要求が発生した場合、当該「追従モード」は直ちに解除され、「通常モード」に切り換えられる。しかしながら、移動棚としての機能が唐突に終了して玉揚台車7が玉揚作業のために走行を開始するのは不便な場合も考えられるので、玉揚要求が発生してもオペレータが所定の操作を行うまでは玉揚台車7が「追従モード」から「通常モード」に切り換わらないように構成しても良い。
【0090】
上記の実施形態では、距離センサ81は超音波センサであるものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、距離センサ81を赤外線センサであるものとしてもよい。即ち、玉揚台車7からオペレータまでの距離を測定できるものであればよい。
【0091】
上記の実施形態では、位置取得部79は、距離センサ81の検出結果を取得することにより、オペレータの位置(オペレータから玉揚台車7までの距離)を取得するものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、自動ワインダ1を装備する工場全体でのオペレータ(人)の位置を公知の人感センサ等で検出し、その検出結果に基づいてオペレータの位置を取得することとしてもよい。
【0092】
距離センサ81や上述の人感センサに代えて、玉揚台車7を自らについてこさせて作業を行うオペレータが、自動ワインダ1を装備する工場内で発信機を持ち歩き、この発信機から発信される信号を位置取得部79が受信することにより、オペレータの位置を取得することとしてもよい。
【0093】
上記の実施形態では、エアガン82には、工場に設けられている図略のコンプレッサーからの圧縮空気が供給されるものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、玉揚台車7に搭載されたコンプレッサーからの圧縮空気がエアガン82に供給されるものとしてもよい。また、エアガン82に必要となる圧縮空気に加えて、玉揚作業のために必要となる圧縮空気(例えば、糸引出しアーム72を伸縮させるための前記エアシリンダに用いられる圧縮空気)を、玉揚台車7に配置されたコンプレッサーから供給するように構成しても良い。この場合、工場のコンプレッサーから玉揚台車7に圧縮空気を導く必要がなくなるので、配管等の構成を簡素化することができる。
【0094】
本発明は、自動ワインダ以外の様々な繊維機械(例えば、紡績ユニットを複数並べて備える空気精紡機等)にも適用することができる。
【0095】
作業台車は、上記の実施形態のような玉揚作業を行う玉揚台車7に限るものではなく、例えばこれに代えて、糸継作業を行う糸継台車を作業台車としてもよい。