【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0081】
(作製例1:試験用金属プレート(1)の作製)
市販洗剤(マジックリン(花王株式会社製);エタノールアミン、アルキルアミンオキシドおよびアルキルグリコシドを含有)を、蒸留水で2%(v/v)に希釈して、洗浄水溶液(1)を得、これを超音波洗浄機内に入れた。次いで、長さ(L)60mm×幅(W)20mm×厚み(T
1)1mmのアルミニウム(A5052)で構成される金属プレートの表面に付された保護フィルムを除去し、これを、超音波洗浄機の洗浄水溶液(1)中に全体を浸漬させた。その後、超音波洗浄機を、28kHzで10秒間、45kHzで10秒間かつ100kHzで10秒間を1サイクルとして、このサイクルを10分間繰り返して、当該金属プレートの超音波洗浄を行った。
【0082】
超音波洗浄機から金属プレートを取り出し、当該プレートの表面に蒸留水をかけて、表面に付着した洗浄水溶液(1)を洗い流した。次いで、この金属プレートをビーカーに入れ、プレート全体が浸漬するまで蒸留水を注ぎ、このビーカーを超音波洗浄機内に配置した。その後、超音波洗浄機を、28kHzで10秒間、45kHzで10秒間かつ100kHzで10秒間を1サイクルとして、このサイクルを10分間繰り返して、当該金属プレートのさらなる超音波洗浄を行った。
【0083】
超音波洗浄機から金属プレートを取り出し、当該プレートの表面に蒸留水かけ、表面の水分を不織布ワイパー(ベンコット リントフリー(旭化成株式会社製)で全て吸い取って、金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)を得た。
【0084】
(作製例2:試験用金属プレート(2)の作製)
アルミニウム(A5052)で構成される金属プレートの表面に付された保護フィルムを除去し、これに蒸留水を滴下し、3μmのラッピングシート上で研磨した。次いで、金属プレートの研磨した表面を蒸留水で洗浄した。
【0085】
その後、この金属プレートをビーカーに入れ、プレート全体が浸漬するまで蒸留水を注ぎ、このビーカーを超音波洗浄機内に配置した。その後、超音波洗浄機を、28kHzで10秒間、45kHzで10秒間かつ100kHzで10秒間を1サイクルとして、このサイクルを10分間繰り返して、当該金属プレートのさらなる超音波洗浄を行った。
【0086】
超音波洗浄機から金属プレートを取り出し、当該プレートの表面に蒸留水かけ、表面の水分を不織布ワイパー(ベンコット リントフリー(旭化成株式会社製)で全て吸い取って、試験用金属プレート(2)(表面研磨Alプレート)を得た。
【0087】
(作製例3:試験用金属プレート(3)の作製)
アルミニウム(A5052)で構成される金属プレートの代わりに、長さ(L)60mm×幅(W)20mm×厚み(T
1)1mmの銅(C1100)で構成される金属プレートを用いたこと以外は作製例2と同様にして、試験用金属プレート(3)(表面研磨Cuプレート)を得た。
【0088】
(作製例4:試験用金属プレート(4)の作製)
アルミニウム(A5052)で構成される金属プレートの代わりに、長さ(L)60mm×幅(W)20mm×厚み(T
1)1mmのステンレス鋼(SUS304)で構成される金属プレートを用いたこと以外は作製例2と同様にして、試験用金属プレート(4)(表面研磨SUS304プレート)を得た。
【0089】
(作製例5:試験用金属プレート(5)の作製)
洗浄水溶液(1)の代わりに、市販洗剤(マジックリン(花王株式会社製);エタノールアミン、アルキルアミンオキシドおよびアルキルグリコシドを含有)を蒸留水で0.5%(v/v)に希釈して、洗浄水溶液(2)を得、この洗浄水溶液(2)を用いたこと以外は作製例1と同様にして、試験用金属プレート(5)(0.5%洗浄Alプレート)を得た。
【0090】
(実施例1:樹脂組成物(A1)の調製および複合成形体(B1)の製造)
ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標))、充填剤(平均繊維径150μmのミルドファイバー(セントラルグラスファイバー株式会社製EFH150−01)、およびポリアミド樹脂のゴム変性物(日本化薬株式会社製KAYAFLEX BPAM−155)を、以下表2に示す割合で2軸スクリュー混練押出機(株式会社井元製作所製)に仕込み、(出口)310℃→310℃→300℃→170℃(入口)のシリンダー温度にてスクリュー回転数65rpmで混練して、樹脂組成物(A1)を得た。
【0091】
調製例1で得られた試験用金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)を、射出成型機(株式会社日本製鋼所製J85AD)の金型内に配置し、上記で得られた樹脂組成物(A1)を以下の表1に示す成形条件にてインサート成形して、
図1に示す試験用金属プレート(1)60上に、樹脂製円盤80(直径(Φ)15mm、厚み(T
2)2mm)が配置された複合成形体(B1)100を得た。
【0092】
【表1】
【0093】
上記で得られた複合成形体(B1)の金属プレートと樹脂製円盤との間の密着強度について、精密万能試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG−10kN−X)を用いて、引張速度1mm/分による引張剪断試験により測定した。得られた結果を表2に示す。
【0094】
さらに、上記で得られた複合成形体(B1)で使用した樹脂組成物(A1)の曲げ強度および曲げ弾性率を、精密万能試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG−10kN−X)を用い、JIS K7171に基づいて測定した。得られた結果をそれぞれ表2に示す。
【0095】
(実施例2〜4:樹脂組成物(A2)〜(A4)の調製および複合成形体(B2)〜(B4)の製造)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標))、充填剤(平均繊維径150μmのミルドファイバー(セントラルグラスファイバー株式会社製EFH150−01)、およびポリアミド樹脂のゴム変性物(日本化薬株式会社製KAYAFLEX BPAM−155)を、それぞれ表2に示す割合で2軸スクリュー混練押出機(株式会社井元製作所製)に仕込んだこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(A2)〜(A4)を得た。
【0096】
次いで、これらの樹脂組成物(A2)〜(A4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験用金属プレート(1)とのインサート成形により、複合成形体(B2)〜(B4)を得た。
【0097】
得られた複合成形体(B2)〜(B4)について、実施例1と同様にして密着強度、ならびに樹脂組成物(A2)〜(A4)についての曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2に示すように、実施例1〜4で得られた樹脂組成物(A1)〜(A4)を用いると、金属プレートと樹脂製円盤との間の密着強度が高い値を示しており、両者の間で優れた密着性が提供されていたことがわかる。また、ポリアミド樹脂のゴム変性率を増加させても、密着強度の数値は大きく変動しておらず、むしろ樹脂組成物中に、少量のポリアミド樹脂のゴム変性物を含有させていたことにより、複合成形体における金属プレートと樹脂製円盤との間で優れた密着強度が得られていたことがわかる。また、ポリアミド樹脂のゴム変性物の含有量を増加するほど、曲げ弾性率が低下する傾向にあり、これにより複合成形体における樹脂部材の応力緩和性が向上することがわかる。
【0100】
(実施例5〜7:樹脂組成物(A5)の調製および複合成形体(B5)〜(B7)の製造)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標))、充填剤(平均繊維径150μmのミルドファイバー(セントラルグラスファイバー株式会社製EFH150−01)、およびポリアミド樹脂のゴム変性物(日本化薬株式会社製KAYAFLEX BPAM−155)を、表3に示す割合で2軸スクリュー混練押出機(株式会社井元製作所製)に仕込んだこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(A5)を得た。
【0101】
次いで、この樹脂組成物(A5)を用い、かつ試験用金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)の代わりに、作製例2で得た試験用金属プレート(2)(表面研磨Alプレート)、作製例3で得た試験用金属プレート(3)(表面研磨Cuプレート)、または作製例4で得た試験用金属プレート(4)(表面研磨SUS304プレート)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、それぞれインサート成形することにより、複合成形体(B5)〜(B7)を得た。
【0102】
得られた複合成形体(B5)〜(B7)について、実施例1と同様にして密着強度をそれぞれ測定した。得られた結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3に示すように、実施例5〜7で得られた樹脂組成物(A5)を用いると、金属プレートを構成する金属種(すなわち、アルミニウム、銅またはステンレス鋼)に関わらず、金属プレートと樹脂製円盤との間の密着強度が高い値を示しており、両者の間で優れた密着性が提供されていたことがわかる。
【0105】
(実施例8:樹脂組成物(A8)の調製および複合成形体(B8)の製造)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標)0220A9)、ポリアミド樹脂のゴム変性物(日本化薬株式会社製KAYAFLEX BPAM−155)および充填剤(平均繊維径150μmのミルドファイバー(セントラルグラスファイバー株式会社製EFH150−01)を、それぞれ表4に示す割合で2軸スクリュー混練押出機(株式会社井元製作所製)に仕込んだこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(A8)を得た。
【0106】
次いで、この樹脂組成物(A8)を用い、かつ試験用金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)の代わりに、作製例5で得た試験用金属プレート(5)(0.5%洗浄Alプレート)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインサート成形することにより、複合成形体(B8)を得た。
【0107】
得られた複合成形体(B8)について、実施例1と同様にして密着強度を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0108】
(実施例9:樹脂組成物(A9)の調製および複合成形体(B9)の製造)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標)0220A9)、ポリアミド樹脂のゴム変性物(日本化薬株式会社製KAYAFLEX BPAM−155)、充填剤(平均繊維径150μmのミルドファイバー(セントラルグラスファイバー株式会社製EFH150−01)、およびオレフィン系共重合体(エチレン−アクリル酸メチル共重合体;日本ポリエチレン株式会社製REXPEARL EMA EB140F)を、それぞれ表4に示す割合で2軸スクリュー混練押出機(株式会社井元製作所製)に仕込んだこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(A9)を得た。
【0109】
次いで、この樹脂組成物(A9)を用い、かつ試験用金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)の代わりに、作製例5で得た試験用金属プレート(5)(0.5%洗浄Alプレート)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインサート成形することにより、複合成形体(B9)を得た。
【0110】
得られた複合成形体(B9)について、実施例1と同様にして密着強度を測定した。得られた結果を表4に示す。
【0111】
(実施例10:樹脂組成物(A10)の調製および複合成形体(B10)の製造)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標)0220A9)、ポリアミド樹脂のゴム変性物(日本化薬株式会社製KAYAFLEX BPAM−155)、充填剤(平均繊維径150μmのミルドファイバー(セントラルグラスファイバー株式会社製EFH150−01)、およびオレフィン系共重合体(無水マレイン酸変性エチレン−アクリル酸吸重合体;日本ポリエチレン株式会社製REXPEARL ET ET220X)を、それぞれ表4に示す割合で2軸スクリュー混練押出機(株式会社井元製作所製)に仕込んだこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(A10)を得た。
【0112】
次いで、この樹脂組成物(A10)を用い、かつ試験用金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)の代わりに、作製例5で得た試験用金属プレート(5)(0.5%洗浄Alプレート)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインサート成形することにより、複合成形体(B10)を得た。
【0113】
得られた複合成形体(B10)について、実施例1と同様にして密着強度を測定した。得られた結果を表4に示す。
【0114】
(実施例11:樹脂組成物(A11)の調製および複合成形体(B11)の製造)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標)0220A9)、ポリアミド樹脂のゴム変性物(日本化薬株式会社製KAYAFLEX BPAM−155)、充填剤(平均繊維径150μmのミルドファイバー(セントラルグラスファイバー株式会社製EFH150−01)、およびオレフィン系共重合体(エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート;アルケマ株式会社製LOTADER GMA AX8840)を、それぞれ表4に示す割合で2軸スクリュー混練押出機(株式会社井元製作所製)に仕込んだこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(A11)を得た。
【0115】
次いで、この樹脂組成物(A11)を用い、かつ試験用金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)の代わりに、作製例5で得た試験用金属プレート(5)(0.5%洗浄Alプレート)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインサート成形することにより、複合成形体(B11)を得た。
【0116】
得られた複合成形体(B11)について、実施例1と同様にして密着強度を測定した。得られた結果を表4に示す。
【0117】
(比較例1:複合成形体(BC1)の製造)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチック株式会社製ジュラファイド(登録商標)0220A9)を用い、かつ試験用金属プレート(1)(2%洗浄Alプレート)の代わりに、作製例5で得た試験用金属プレート(5)(0.5%洗浄Alプレート)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインサート成形することにより、複合成形体(BC1)を得た。
【0118】
得られた複合成形体(BC1)について、実施例1と同様にして密着強度を測定した。得られた結果を表4に示す。
【0119】
【表4】
【0120】
表4に示すように、比較例1で得られた樹脂組成物(AC1)と比較して、実施例8で得られた樹脂組成物(A8)を用いると、得られた複合成形体(B8)における金属プレートと樹脂製円盤との間の密着強度が著しく向上しており、金属プレートと樹脂製円盤との間で優れた密着性が提供されていたことがわかる。さらに、実施例8で得られた樹脂組成物(A8)と比較して、実施例9〜11で得られた樹脂組成物(A9)〜(A11)を用いると、得られた複合成形体(B9)〜(B11)における金属プレートと樹脂製円盤との間の密着強度がさらに向上していた。このことから、熱可塑性樹脂にポリアミド樹脂のゴム変性物およびオレフィン系共重合体を共存させることにより、複合成形体における金属プレート(金属基材)と樹脂製円盤(樹脂部材)との間の密着性が一層高まることがわかる。