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特開2017-190524アルミニウム合金製フィン材及びこれを用いたアルミニウム合金製ブレージングシート、ならびに、当該フィン材又はブレージングシートをフィンに用いた熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-190524(P2017-190524A)
(43)【公開日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】アルミニウム合金製フィン材及びこれを用いたアルミニウム合金製ブレージングシート、ならびに、当該フィン材又はブレージングシートをフィンに用いた熱交換器
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20170922BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20170922BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20170922BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20170922BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20170922BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20170922BHJP
【FI】
   C22C21/00 E
   C22C21/00 J
   B23K35/28 310A
   B23K35/22 310E
   F28F21/08 B
   F28F21/08 D
   C22F1/04 Z
   C22F1/00 604
   C22F1/00 623
   C22F1/00 627
   C22F1/00 630A
   C22F1/00 640A
   C22F1/00 651A
   C22F1/00 681
   C22F1/00 682
   C22F1/00 683
   C22F1/00 685Z
   C22F1/00 686B
   C22F1/00 691B
   C22F1/00 691C
   C22F1/00 694A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-60744(P2017-60744)
(22)【出願日】2017年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-79933(P2016-79933)
(32)【優先日】2016年4月12日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】100155572
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 恵視
(72)【発明者】
【氏名】黒崎友仁
(72)【発明者】
【氏名】二宮淳司
(72)【発明者】
【氏名】水田貴彦
(72)【発明者】
【氏名】藤村涼子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接合加熱時における板厚減少を抑制して、接合性低下や剛性低下を防止したフィン材及びこれを用いたブレージングシート、並びに、当該フィン材又はブレージングシートを用いた熱交換器を提供する。
【解決手段】Si:1.50〜5.00mass%含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、単層で加熱接合機能を有するフィン材であって、当該フィン材の厚さ方向に沿った断面において、Si粒子の円相当直径をD、表層からSi粒子の中心までの距離をL、フィン材の厚さをt、表層に平行な長さをWとした時に、長さWの範囲内に存在し、D≧L、かつ、L+D>0.04tを満たす全Si粒子が、0≦ΣπD<0.08tWを満たすミニウム合金製フィン材及びこれを用いたアルミニウム合金製ブレージングシート、並びに、当該フィン材又はブレージングシートをフィン12に用いた熱交換器10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si:1.50〜5.00mass%含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、単層で加熱接合機能を有するフィン材であって、当該フィン材の厚さ方向に沿った断面において、Si粒子の円相当直径をD、表層からSi粒子の中心までの距離をL、フィン材の厚さをt、表層に平行な長さをWとした時に、長さWの範囲内に存在し、D≧L、かつ、L+D>0.04tを満たす全Si粒子が、0≦ΣπD<0.08tWを満たすことを特徴とするアルミニウム合金製フィン材。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が、Fe:0.01〜2.00mass%、Mn:0.05〜2.00mass%、Zn:0.05〜6.00mass%及びCu:0.05〜1.50mass%から選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1に記載のアルミニウム合金製フィン材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィン材を皮材として、アルミニウム合金からなる心材にクラッドしたことを特徴とするアルミニウム合金製ブレージングシート。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製フィン材をフィンに用いた熱交換器。
【請求項5】
請求項3に記載のアルミニウム合金製ブレージングシートをフィンに用いた熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Siを所定量含有し、単層で加熱接合機能を有するアルミニウム合金製フィン材において、接合後の板厚減少を抑制したフィン材及びこれを用いたアルミニウム合金製ブレージングシート、ならびに、当該フィン材又はブレージングシートをフィンに用いた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱接合機能を有するアルミニウム合金製フィン材としては、皮材にAl−Si系合金をクラッドしたブレージングフィンが一般的に用いられている。ブレージングフィンでは、接合加熱時に皮材が溶融して流動するため、溶融した分だけ板厚が減少する。また、特許文献1には、単層材で加熱接合機能を有するフィン材も提案されているが、板厚の減少量については制御されていない。
【0003】
接合加熱時に板厚が減少してしまうと、例えばフィンアンドチューブ型熱交換器のような形状の製品の接合時において、フィンとチューブのクリアランスが大きくなってしまうという問題がある。このような熱交換器では、例えば、互いに所定距離を隔てて重ね合わされた多数枚の板状フィンの各端縁部おいて、これら各端縁部に沿って所定間隔で上記板状フィンの同位置を貫通するように開口する切欠溝が複数個設けられている。これら切欠溝の周囲には、伝熱流体が流通する偏平チューブの表面と接するようにカラーが形成されており、偏平チューブが上記同位置の切欠溝毎に嵌め込まれる構造となっている。そして、このような板状フィンの重ね合わせ方向に延びる状態で組み付けて、加熱接合することにより上記熱交換器が製造される。
【0004】
上記熱交換器の接合加熱時においてフィン材の板厚が減少すると、チューブ表面とフィン表面との距離であるクリアランスが大きくなる。このような板厚減少が大きい場合は、溶融した接合助材ではクリアランスを埋めることができず接合率が減少する問題があった。
【0005】
また、接合加熱により板厚減少が生じる場合は、フィンの断面積低下による剛性低下を招く。そのため、接合加熱後に必要なフィン板厚よりも厚いフィン材料を使用する必要があり、材料のコスト高を招くという問題もあった。
【0006】
このような板厚減少率を抑制するためには、上記特許文献1に記載される「寸法変化が極めて小さい」単層で加熱接合機能を有するフィン材を用いることが考えられる。しかしながら、このフィン材については、寸法変化が極めて小さいとの記載があるものの、板厚減少に関する実施例の記載はなく、サグ試験と言われる曲げ応力による変形が示されているに過ぎない。このように、特許文献1の記載からは、板厚に関する制御範囲や制御手段は明確になっていない。
【0007】
また、フィン材として、クラッド率を小さくしたブレージングフィンを用いることも考えられる。しかしながら、板厚が薄いフィン材でクラッド率を低くするのは、製造上困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5021097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題に鑑みて完成に至ったものであり、接合加熱時におけるフィン材の板厚減少を抑制して、接合性低下や剛性低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、上記課題を解決するために、フィン材の接合前の板厚に対する接合後の板厚の減少率を制御することで、フィン材の接合性や剛性の低下を抑制できることを見出した。そして、このような板厚減少率の抑制は、表層近傍の金属組織を適切に制御することで達成されることを見出した。
【0011】
具体的には、本発明は請求項1において、Si:1.50〜5.00mass%含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、単層で加熱接合機能を有するフィン材であって、当該フィン材の厚さ方向に沿った断面において、Si粒子の円相当直径をD、表層からSi粒子の中心までの距離をL、フィン材の厚さをt、表層に平行な長さをWとした時に、長さWの範囲内に存在し、D≧L、かつ、L+D>0.04tを満たす全Si粒子が、0≦ΣπD<0.08tWを満たすことを特徴とするアルミニウム合金製フィン材とした。
【0012】
本発明は請求項2では請求項1において、前記アルミニウム合金が、Fe:0.01〜2.00mass%、Mn:0.05〜2.00mass%、Zn:0.05〜6.00mass%及びCu:0.05〜1.50mass%から選択される1種又は2種以上を更に含有するものとした。
【0013】
本発明は請求項3では、請求項1又は2に記載のフィン材を皮材として、アルミニウム合金からなる心材にクラッドしたことを特徴とするアルミニウム合金製ブレージングシートとした。
【0014】
本発明は請求項4では、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製フィン材をフィンに用いた熱交換器とした。
【0015】
本発明は請求項5では、請求項3に記載のアルミニウム合金製ブレージングシートをフィンに用いた熱交換器とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフィン材は、接合加熱前に対する加熱後の板厚減少率が制御されているため、接合加熱時にフィン材とその他の部材間に生じるクリアランスを抑制することができる。これにより、高い接合性を有するフィン材及びこれを用いたブレージングシートを得ることができる。また、板厚減少が小さいために接合後の剛性低下を小さくできるので、フィン材やブレージングシートの薄肉化を可能とし、これらを用いた熱交換器の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】接合性評価に用いる、本発明に係る板状フィン材と偏平チューブを組み合わせた熱交換器の斜視図である。
図2図1の板状フィンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.金属組織について
1−1.金属組織の規定
本発明に係るフィン材は、Si:1.50〜5.00mass%含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、単層で加熱接合機能を有する。そして、このフィン材の厚さをtとして厚さ方向に沿った断面を、一方の表面から厚さ(t/2)までの一方の表面側の断面部分と、他方の表面から厚さ(t/2)までの他方の表面側の断面部分とに分けて考える。
【0019】
まず、Si粒子の円相当直径をD、一方の表面又は他方の表面からSi粒子の中心までの距離をL、表層に平行な長さをWとした時に、長さWの範囲内に存在し、D≧L、かつ、L+D>0.04tを満たす全Si粒子が、0≦ΣπD<0.08tWを満たすことを特徴とする。ここで、ΣπDとは、一方と他方の両断面部分を合わせた全体(以下、「断面全体」という)において長さWの範囲内(t×Wの面積)に存在し、D≧L、かつ、L+D>0.04tを満たす全てのSi粒子の断面積πDを足し合わせたものとして定義される。なお、D、L、t及びWの単位には、通常mmが適用される。
【0020】
1−2.金属組織を規定した数式について
金属組織を規定した数式及びパラメータの数値範囲について、以下に説明する。
(1)D≧Lを満たすSi粒子
この数式は、Si粒子が溶融した際に、溶融したSi粒子が表面に流出する条件を示す。Si粒子は溶融時に周囲のマトリクスと反応し、約2倍の直径を有する球状の液相となる。この液相が表面に流出するためには、溶融後の液相の半径、すなわち、液相の直径2Dの1/2となるDが、表面からSi粒子の中心までの距離L以上となる必要がある。このように、D≧Lを満たすSi粒子のみが表面に流出する。
【0021】
(2)L+D>0.04tを満たすSi粒子。
この数式は、Si粒子が溶融して表面に流出した際に、8%以上の板厚減少に寄与する条件を示す。表面からの距離Lにある円相当直径DのSi粒子が溶融した場合、表面から液相の最深部までの距離はL+Dとなる。そして、この液相が表面に流出すると、液相が存在していた部位ではL+Dの板厚が減少する。このような1つのSi粒子が局所的に発生させる板厚減少分L+Dが、一方の又は他方の表面側において、断面全体厚さtの4%を超えると、双方の合計で8%を超える板厚減少をもたらすことになる。それに対して、1つのSi粒子が局所的に発生させる板厚減少分L+Dが、断面全体厚さtの4%以下であれば、板厚減少への寄与が限定的である。従って、一方又は他方の表面側において、L+Dが断面全体厚さtの4%を超えるSi粒子を制御する必要がある。すわなち、L+D>0.04tを満たすSi粒子のみを規定する。ここで、接合性や剛性の低下を有効に防止するためには、一方又は他方の表面側の板厚減少分が、断面全体厚さtに対して3%以下であるのが好ましく、2%以下に制御するのがより好ましい。
【0022】
(3)断面全体において、長さWの範囲内に存在し、上記(1)、(2)を満たすSi粒子が、0≦ΣπD<0.08tWを満たすことについて
一方の表面側の断面部分において、長さWの範囲内に存在し、上記(1)、(2)を満たすSi粒子は、溶融時に一方の表面に流出し、一方の表面側の断面部分において断面全体厚さtの4%を超える板厚減少を生じさせるSi粒子である。また、他方の表面側の断面部分において、長さWの範囲内に存在し、上記(1)、(2)を満たすSi粒子は、溶融時に他方の表面に流出し、他方の表面側の断面部分において断面全体厚さtの4%を超える板厚減少を生じさせるSi粒子である。これらの板厚減少を生じさせるSi粒子は共にフィン材全域の板厚減少を生じさせるので、接合性及び剛性の低下が著しくなる。しかしながら、上記(1)、(2)を満たすSi粒子が局所的にしか存在しない場合は、接合性や剛性の低下は限定的となる。そこで、一方及び他方の表面側の断面部分を合わせた断面全体において、長さWの範囲内に存在し、上記(1)、(2)を満たすSi粒子の存在状態を限定した。
【0023】
具体的には、断面全体において、上記(1)、(2)を満たすSi粒子が溶融した際の面積、すなわち、(π/4)×(2D)=πDを合計したΣπDの範囲を限定するものである。ΣπDが小さい場合は、断面全体のうち板厚減少が生じる部位は限定的となる。ΣπDが大きくなる程、断面全体のうち板厚減少が生じる部位が増加してフィン全域にわたって板厚減少が生じるようになる。本発明では、上記断面全体の面積(t×W)に対するΣπDが占める割合を8%未満、すなわち、ΣπDが占める面積を0.08tW未満に規定する。ここで、ΣπD=0の場合は、上記断面全体において8%以上に板厚を減少させるようなSi粒子は存在しないため、接合性や剛性が良好に保たれる。0<ΣπD<0.08tWの場合は、Si粒子の溶融により板厚減少は生じるものの、生じる領域が部分的であり、接合性や剛性への影響は限定的である。一方、ΣπD≧0.08tWの場合は、上記断面全体における板厚減少が8%以上となり、すなわち、フィン材全域における板厚減少率が8%以上となるため、フィン材の接合性や剛性が著しく低下する。ΣπDの好ましい範囲は、0≦ΣπD<0.06tWである。ここで、本発明における板厚減少率(%)については、実際に求められる数値の少数点以下を切り捨てたものとして定義する。
【0024】
なお、ΣπDが0に近く、板厚減少に寄与するSi粒子から供給される液相量が少ないような場合であっても、L+D≦0.04tを満たすSi粒子や、固溶Siの存在により、接合性は確保される。
【0025】
次に、上記各パラメータについて説明する。
[Si粒子の円相当直径D]
Si粒子の円相当直径Dは、通常0〜10μm程度であり、粗大な晶出物が存在する場合は最大で30μm程度である。円相当直径Dが30μm以上の粗大晶出物が存在する場合は、割れやピンホールなどの原因となり製造が困難になる虞がある。なお、0μmとは、Siが完全に固溶しており、Si粒子として存在しない場合である。
【0026】
ここで、Si粒子とは、(1)単体Si、及び、(2)単体Siの一部にCaやPなどの元素を微量に含有するものである。Si粒子の円相当直径Dは、断面のSEM観察(反射電子像観察)によって決定することができる。SEM写真を画像解析することで、Si粒子の円相当直径を求めることが好ましい。また、Si粒子とその他の粒子の区別は、SEM−反射電子像観察で、コントラストの濃淡で区別することができる。また、分散粒子の金属種は、EPMA(X線マイクロアナライザー)等でより正確に特定することができる。ここで、断面とは、アルミニウム合金材の厚さ方向に沿った断面をいうが、厚さ方向に沿ったものであれば、圧延方向に沿ったもの、或いは、圧延方向と直交する方向に沿ったものなど、任意の方向に沿ったものでよい。
【0027】
[フィン材表層からSi粒子の中心までの距離L]
フィン材の表層からSi粒子の中心までの距離Lは、板厚を超えることはないので板厚t未満となる。ここでLは、上記Si粒子の円相当直径を決定した際に、そのSi粒子の中心からフィン材表層までの距離を測定することで求められる。その際、例えばフィン材表層から、対象となるSi粒子までを含む視野のSEM像を撮影し、画像解析を行うことで測定することができる。Si粒子が等軸でない場合は、Si粒子のうち、フィン材表層に最も近い点と、フィン材表層から最も遠い点の中間位置をSi粒子の中心とする。
【0028】
[フィン板厚t]
tは特に制約はないが、通常、0.01〜0.2mm程度のものを用いるのが軽量化や加工性の観点から好ましい。また、フィン材として薄いものでは0.01〜0.1mm程度のもの、厚いものでは0.1mmを超え0.2mm程度のものが用いられる。ここで、フィン板厚tは、マイクロメータで測定するのが好ましい。その際、接合加熱前後の相違を判定するために、1つの試料につき接合加熱前後で同じ位置の板厚を3箇所以上測定して、算術平均値で評価する。
【0029】
1−3.金属組織が効果を奏する原理
本発明のフィン材は、接合加熱時に材料の一部が溶融して液相を生成することにより単層で接合機能を発揮する。生成した液相の一部は、接合加熱時において材料中のSi粒子が周囲のマトリクスと反応することにより生成する。その際、表層に粗大なSi粒子が存在すると、そのSi粒子が溶融することで板厚減少が大きくなる。そこで、本発明者らは、表層のSi粒子の大きさを制御することで板厚減少を抑制することを見出したものである。
【0030】
2.材質について
2−1.構成
本発明に係るフィン材は、基本的には単層で加熱接合機能を有するフィン材として用いられる。しかしながら、本発明に係るフィン材を他の材料(心材)にクラッドしたブレージングフィンとした場合も、表層の板厚減少効果は同様に得られるので、クラッド率を減少させる必要がない利点を有する。このように、本発明に係るフィン材は、クラッド材(ブレージングフィン)の形態で用いることもできる。
【0031】
以下の説明においては、本発明に係るフィン材を単層材として用いる前提で記載する。しかしながら、本発明に係るフィン材を用いた上記クラッド材においても、本発明に係るフィン材の部分について、以下の記載に従うことで板厚減少抑制効果を得ることができるものである。
【0032】
2−2.合金組成
本発明に係るフィン材のアルミニウム合金は、Si:1.50〜5.00mass%(以下、単に「%」と記す)を必須元素として含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。更に、このアルミニウム合金は、第1選択的添加元素として、Fe:0.01〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、Zn:0.05〜6.00%及びCu:0.05〜1.50から選択される1種又は2種以上を更に含有してもよい。
【0033】
2−2−1.Si:1.50〜5.00%
SiはAl−Si系の液相を生成し、接合に寄与する元素である。但し、Si含有量が1.50%未満の場合は十分な量の液相を生成することができず、液相の染み出しが少なくなって接合が不完全となる。一方、含有量が5.00%を超えるとアルミニウム合金材中の液相の生成量が多くなるため、加熱中の材料強度が極端に低下して構造体の形状維持が困難となる。また、表層近傍に存在するSi粒子数も増加するため、板厚減少も顕著となる。従って、Si含有量は、1.50〜5.00%と規定する。このSi含有量は、好ましくは1.50〜3.50%であり、より好ましくは2.00〜3.00%である。なお、染み出す液相の量はフィン材の体積が大きく、加熱温度が高いほど多くなるので、加熱時に必要とする液相の量は、製造する構造体の構造に応じて必要となるSi量や接合加熱温度によって調整される。
【0034】
2−2−2.Fe:0.01〜2.00%
Feはマトリクスに若干固溶して強度を向上させる効果を有するのに加えて、晶出物や析出物として分散して、特に高温での強度低下を防止する効果を有する。Feは、その含有量が0.01%未満の場合には、上記効果が十分に得られないだけでなく、高純度の地金を使用する必要があり材料コストの増加を招く。一方、Fe含有量が2.00%を超えると、鋳造時に粗大な金属間化合物が生成するので、この粗大金属間化合物が加工時の割れの原因となり製造が困難になる。また、本接合体が腐食環境(特に腐食性液体が流動するような腐食環境)に曝された場合には、耐食性が低下する。更に、接合時の加熱によって再結晶した結晶粒が微細化して粒界密度が増加するため、接合中の変形量が増大することで接合前後の寸法変化が大きくなる。従って、Fe含有量は、0.01〜2.00%とする。Feの含有量は、好ましくは0.20〜1.00%である。
【0035】
2−2−3.Mn:0.05〜2.00%
Mnは、SiやFeとともにAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系、Al−Mn−Fe系の金属間化合物を形成して分散強化として作用し、或いは、アルミニウム母相中に固溶して固溶強化として作用することにより強度を向上させる重要な添加元素である。Mn含有量が2.00%を超えると、粗大金属間化合物が形成され易くなり耐食性を低下させる。一方、Mn含有量が0.05%未満では、上記効果が不十分となる。従って、Mn含有量は、0.05〜2.00%とする。Mn含有量は、好ましくは0.10〜1.50%である。
【0036】
2−2−4.Zn:0.05〜6.00%
Znは、犠牲防食作用による耐食性向上に有効な元素である。Znは、マトリクス中にほぼ均一に固溶して自然電位を卑化させる作用を有する。本発明に係るフィン材を卑化させることで、接合しているチューブの腐食を相対的に抑制する犠牲防食作用を発揮させることができる。Zn含有量が0.05%未満の場合は、電位卑化の効果が不十分となる。一方、Zn含有量が6.00%を超える場合は、腐食速度が速くなって自己耐食性が低下し、犠牲防食作用も低減する。従って、Zn含有量は、0.05〜6.00%とする。Zn含有量は、好ましくは0.10〜5.00%である。
【0037】
2−2−5.Cu:0.05〜1.50%
Cuは、マトリクス中に固溶して強度を向上させる効果を有する元素である。Cu含有量が、1.50%を超えると耐食性が低下する。一方、Cu含有量が0.05%未満では、上記効果が不十分となる。従って、Cu含有量は0.05〜1.50%とする。Cu含有量は、好ましくは0.10〜1.00%である。
【0038】
選択的添加元素として、上記第1選択的添加元素に代えて又はこれに加えて、第2選択的添加元素として、Mg:0.05〜2.00%、In:0.05〜0.30%、Sn:0.05〜0.30%、Ti:0.05〜0.30%、V:0.05〜0.30%、Cr:0.05〜0.30%、Ni:2.00%以下及びZr:0.30%以下から選択される1種又は2種以上を更に含有してもよい。
【0039】
2−2−6.Mg:0.05〜2.00%
Mgは、接合加熱後においてMgSiによる時効硬化の作用を奏し、この時効硬化によって強度向上が図られる。このように、Mgは強度向上の効果を発揮する添加元素である。Mg含有量が2.00%を超えると、フラックスと反応して高融点の化合物を形成するため、接合性が著しく低下する。一方、Mg含有量が0.05%未満では、上記効果が不十分となる。従って、Mg含有量は、0.05〜2.00%とする。Mg含有量は、好ましくは0.10〜1.50%である。
【0040】
2−2−7.In、Sn:0.05〜0.30%
SnとInは、犠牲防食作用を発揮する効果を奏する。それぞれの含有量が0.30%を超えると、腐食速度が速くなり自己耐食性が低下する。一方、それぞれの含有量が0.05%未満では、上記効果が小さい。従って、SnとInの含有量はそれぞれ0.05〜0.30%とし、好ましくは0.10〜0.25%である。
【0041】
2−2−8.Ti、V:0.05〜0.30%
Ti及びVは、マトリクス中に固溶して強度を向上させるだけでなく、層状に分布して板厚方向の腐食の進展を防止する効果を発揮する。それぞれの含有量が0.30%を超えると粗大晶出物が発生し、成形性及び耐食性を阻害する。一方、それぞれの含有量が0.05%未満では、その効果が小さい。従って、Ti及びVの含有量はそれぞれ、0.05〜0.30%とし、好ましくは0.10〜0.25%である。
【0042】
2−2−9.Cr:0.05〜0.30%
Crは、固溶強化により強度を向上させ、またAl−Cr系の金属間化合物の析出により、加熱後の結晶粒を粗大化させる。Cr含有量が0.30%を超えると、粗大な金属間化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる。一方、0.05%未満では、上記効果が小さい。従って、Cr含有量は、0.05〜0.30%以下とし、好ましくは0.10〜0.25%である。
【0043】
2−2−10.Ni:2.00%以下
Niは、金属間化合物として晶出又は析出し、分散強化によって接合後の強度を向上させる効果を発揮する。Ni含有量は2.00%以下とし、好ましくは0.05〜2.00%である。Niの含有量が2.00%を超えると、粗大な金属間化合物を形成し易くなり、加工性を低下させ自己耐食性が低下する。
【0044】
2−2−11.Zr:0.30%以下
ZrはAl−Zr系の金属間化合物として析出し、分散強化によって接合後の強度を向上させる効果を発揮する。また、Al−Zr系の金属間化合物は、加熱中の結晶粒を粗大化させる。Zr含有量が0.30%を超えると粗大な金属間化合物を形成し易くなり、塑性加工性を低下させる。従って、Zr含有量は、0.30%以下とする。Zr含有量は、好ましくは0.05〜0.30%である。
【0045】
選択的添加元素として、上記第1選択的添加元素や第2選択的添加元素に代えて又はこれらの一方又は両方に加えて、第3選択的添加元素として、Be:0.1000%以下、Sr:0.1000%以下、Bi:0.1000%以下、Na:0.1000%以下及びCa:0.0500%以下から選択される1種又は2種以上を更に含有してもよい。
【0046】
2−2−12.Be、Sr、Bi、Na:0.1000%以下、Ca:0.0500%以下
これらの元素は、上記範囲とすることにより、液相の特性改善を図ることにより接合性を更に良好にする作用を発揮する。すなわち、これらの微量元素はSi粒子の微細分散によって、板厚減少抑制に寄与することができる。また、液相の流動性向上等によって接合性を改善することができる。なお、これら各元素の好ましい範囲は、Be:0.0001〜0.1000%、Sr:0.0001〜0.1000%、Bi:0.0001〜0.1000%、Na:0.0001〜0.1000%、Ca:0.0001〜0.0500%である。これらの微量元素は、上記の好ましい範囲として規定した下限値未満では、Si粒子の微細分散や液相の流動性向上等の効果が不十分となる場合がある。また、上記の好ましい範囲として規定した上限値を超えると耐食性低下等の弊害が生じる。
【0047】
2−3.調質
調質は、O材であってもよく、H1n材やH2n材であってもよい。
【0048】
3.製造方法について
3−1.鋳造後の加熱条件
本発明に係るフィン材では、表層近傍に存在するSi粒子のサイズを制限する。材料中の粗大な分散粒子については、鋳造時の冷却速度の影響を大きく受けることが知られている。特にFeやMnを含有する分散粒子は拡散速度が遅いため、鋳造時の冷却速度が分散粒子のサイズに強く影響を及ぼし、鋳造時の冷却速度が速いほど粒子が微細になることが知られている。
【0049】
一方、Si粒子は、SrやNaなどの微量添加元素によって、鋳造時に微細に生成されることが知られている。しかしながら、本発明に係るフィン材においては、表層近傍のSi粒子分布が重要であり、そのSi粒子の分布は、SiのAl中の拡散速度が比較的速いため、鋳造後の製造工程における高温保持時間に比較的強く影響を受ける。そのため、DC鋳造法及び連続鋳造法のいずれの場合においても、鋳造後の製造工程において、530℃以上の温度に保持される場合は、その保持時間を10時間以下とする。更に好ましい加熱条件は、520℃以上の温度に保持される場合の保持時間を0〜10時間とする。ここで、処理時間が0時間とは、所定の保持温度に達したら直ちに保持を止めることを意味する。このような加熱条件の制約により、フィン材の断面全体において長さWの範囲内に存在し、D≧L、かつ、L+D>0.04tを満たす全Si粒子が、0≦ΣπD<0.08tWを満たすことができる。一方、530℃以上の温度で10時間を超えて保持した場合にはオストワルド成長による粗大化が顕著に起こる。その結果、表層のSi粒子のうち、D≧L、かつ、L+D>0.04tを満たすSi粒子数及び各Si粒子の円相当径が増大し、0≦ΣπD<0.08tWを満たさなくなる。
【0050】
3−2.DC鋳造の場合
本発明で用いるアルミニウム合金材の製造方法は、基本的には常法に従ってよいが、上記加熱条件に留意する必要がある。DC鋳造の場合の製造方法の例を以下に示す。鋳造時のスラブの鋳造速度を下記のように制御する。鋳造速度は冷却速度に影響を及ぼすので、20〜100mm/分とする。鋳造速度が20mm/分未満の場合は十分な冷却速度が得られず、Si系粒子やAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物といった晶出物が粗大化する。一方、100mm/分を超える場合は、鋳造時にアルミニウム合金材が十分に凝固せず、正常な鋳塊が得られない。鋳造速度は、好ましくは30〜80mm/分である。そして、本発明の特徴とする金属組織を得るために、鋳造速度は製造する合金材の組成に応じて調整することができる。冷却速度は厚さや幅といったスラブの断面形状に依存するが、上記20〜100mm/分の鋳造速度とすることで、鋳塊中央部で0.1〜2℃/秒の冷却速度とすることができる。このような鋳塊中央部での冷却速度(0.1〜2℃/秒)により、粗大なSi粒子の発生を抑制できる。
【0051】
DC鋳造時の鋳塊(スラブ)厚さは、700mm以下が好ましい。スラブ厚さが700mmを超える場合は上記のような十分な冷却速度を得られず、Si粒子やAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物が粗大化する。なお、スラブ厚さは、より好ましくは500mm以下である。
【0052】
DC鋳造法で鋳造したスラブは、熱間圧延前の加熱工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程及び焼鈍工程にかけられる。鋳造後、熱間圧延前に均質化処理を施してもよい。
【0053】
DC鋳造法で製造したスラブは、均質化処理後又は均質化処理を施さずに、熱間圧延前の加熱工程にかけられる。この加熱工程では、常法に従い加熱保持温度が400〜570℃、好ましくは450〜520℃、保持時間が0〜15時間、好ましくは1〜10時間の範囲内であり、かつ、530℃以上に加熱される場合は、保持時間が10時間を超えないよう実施するのが好ましい。保持温度が400℃未満の場合は、熱間圧延でのスラブの変形抵抗が大きく割れが発生する虞がある。一方、保持温度が570℃を超える場合は、局所的に溶融が生じる虞がある。また、保持時間が15時間を超える場合は、Si粒子のオストワルド成長による粗大化が起こりやすくなることに加え、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物のオストワルド成長が進行し、析出物が粗大になるとともにその分布が疎になる。その結果、接合加熱中の再結晶粒の核発生頻度が増加して結晶粒径が小さくなり、接合加熱中の変形が生じやすくなる。保持時間が0時間とは、加熱保持温度に達した後に直ちに加熱を終了することをいう。
【0054】
加熱工程に続いて、スラブは熱間圧延工程にかけられる。熱間圧延工程は、熱間粗圧延段階と熱間仕上圧延段階を含む。ここで、熱間粗圧延段階における総圧下率を92〜97%とし、かつ、熱間粗圧延の各パス中において圧下率が15%以上となるパスが3回以上含まれるものとする。
【0055】
DC鋳造法で製造したスラブには、最終凝固部に粗大な晶出物が生成する。板材とする工程において晶出物は圧延によるせん断を受けて小さく分断されるため、晶出物は圧延後において粒子状に観察される。熱間圧延工程は、スラブからある程度の厚さの板にする熱間粗圧延段階と、数mmほどの板厚にする熱間仕上圧延段階を含む。晶出物分断のためには、スラブから圧延される熱間粗圧延段階での圧下率の制御が重要である。具体的には、熱間粗圧延段階ではスラブ厚が300〜700mmから15〜40mm程度に圧延されるが、熱間粗圧延段階での総圧下率を92〜97%、好ましくは94〜96%とし、熱間粗圧延段階が15%以上の圧下率となるパスを3回以上、好ましくは20%以上の圧下率となるパスを4回以上含むことで、粗大な晶出物を微細に分断することができる。これにより、晶出物であるSi粒子やAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物を微細化することができ、本発明に規定する適正な分布状態とすることができる。
【0056】
熱間粗圧延段階での総圧下率が92%未満では、晶出物の微細化効果が十分に得られない。一方、97%を超えるためには熱間粗圧延の上がり板厚を薄くする必要があるが、設備上困難である。また、元のスラブ厚さを厚くして総圧化率を上げる方法もあるが、スラブ厚さの上限値を超える為困難である。また、熱間粗圧延段階の各パス中の圧下率も晶出物の分布に影響し、各パスにおける圧下率を大きくすることで晶出物が分断される。熱間粗圧延段階の各パス中において圧下率が15%以上であるパスが3回未満では、晶出物の微細化効果が十分ではない。圧下率が15%未満については、圧下率が足りずに晶出物の微細化がなされないので対象とはならない。なお、圧下率が15%以上であるパス回数の上限は特に規定するものではないが、生産性等を考慮して10回程度を上限とするのが好ましい。
【0057】
H1n調質の場合、熱間圧延工程終了後は、熱間圧延材を冷間圧延工程にかける。冷間圧延工程の条件は、特に限定されるものではない。冷間圧延工程の途中において、冷間圧延材を焼き鈍す焼鈍工程が設けられる。この中間焼鈍の条件は、250〜450℃で1〜5時間、好ましくは300〜400℃で2〜4時間の範囲で実施する。焼鈍工程後は、圧延材を最終冷間圧延にかけて最終板厚とする。最終冷間圧延段階での加工率{(加工前の板厚−加工後の板厚)/加工前の板厚%}が大き過ぎると、接合加熱中の再結晶の駆動力が大きくなり結晶粒が小さくなることで、接合加熱中の変形が大きくなる。最終冷間圧延段階における加工率は、10〜30%程度とするのが好ましく、12〜25%程度とするのがより好ましい。なお、H2n調質の場合は、熱間圧延工程終了後は、熱間圧延材を冷間圧延工程で最終板厚まで加工し、最終焼鈍を施す場合と、H1n調質と同様に中間焼鈍工程を設け、最終冷間圧延後に最終焼鈍を施す場合がある。
【0058】
3−3.連続鋳造の場合
連続鋳造法としては、双ロール式連続鋳造圧延法や双ベルト式連続鋳造法等の連続的に板状鋳塊を鋳造する方法であれば特に限定されるものではない。双ロール式連続鋳造圧延法とは、耐火物製の給湯ノズルから一対の水冷ロール間にアルミニウム溶湯を供給し、薄板を連続的に鋳造圧延する方法であり、ハンター法や3C法等が知られている。また、双ベルト式連続鋳造法は、上下に対峙し水冷されている回転ベルト間に溶湯を注湯してベルト面からの冷却で溶湯を凝固させてスラブとし、ベルトの反注湯側より該スラブを連続して引き出してコイル状に巻き取る連続鋳造方法であり、ハズレー法等が知られている。
【0059】
双ロール式連続鋳造圧延法では、鋳造時の冷却速度が半連続鋳造法に比べて数倍〜数百倍速い。例えば、半連続鋳造法の場合の冷却速度が0.5〜20℃/秒であるのに対し、双ロール式連続鋳造圧延法の場合の冷却速度は100〜1000℃/秒である。そのため、鋳造時に生成する分散粒子が、半連続鋳造法に比べて微細かつ高密度に分布する特徴を有する。これにより粗大な晶出物の発生が抑制されるため、接合加熱中の結晶粒が粗大化する。また、冷却速度が速いために、添加元素の固溶量を増加させることができる。これにより、その後の熱処理によって微細な析出物が形成され、接合加熱中の結晶粒粗大化に寄与することができる。本発明においては、双ロール式連続鋳造圧延法の場合の冷却速度を100〜1000℃/秒とするのが好ましく、300〜900℃/秒とするのがより好ましい。100℃/秒未満では目的の金属組織を得ることが困難となり、1000℃/秒を超えると安定した製造が困難となる。
【0060】
双ロール式連続鋳造圧延法で鋳造する際の圧延板の速度は0.5〜3m/分が好ましいく、1〜2m/分がより好ましい。鋳造速度は、冷却速度に影響を及ぼす。鋳造速度が0.5m/分未満の場合は、上記のような十分な冷却速度が得られず化合物が粗大になる。また、3m/分を超える場合は、鋳造時にロール間でアルミニウム合金材が十分に凝固せず、正常な板状鋳塊が得られない。
【0061】
双ロール式連続鋳造圧延法で鋳造する際の溶湯温度は、650〜800℃の範囲が好ましい。溶湯温度は、給湯ノズル直前にあるヘッドボックスの温度である。溶湯温度が650℃未満の温度では、給湯ノズル内に粗大な晶出物の分散粒子が生成し、それらが鋳塊に混入することで冷間圧延時の板切れの原因となる。溶湯温度が800℃を超えると、鋳造時にロール間でアルミニウム合金材が十分に凝固せず、正常な板状鋳塊が得られない。溶湯温度は、より好ましくは680〜750℃である。
【0062】
双ロール式連続鋳造圧延法で鋳造する板状鋳塊の板厚は、2〜10mmが好ましい。この厚さ範囲においては、板厚中央部の凝固速度も速く均一な組織が得られ易い。板厚が2mm未満であると、単位時間当たりに鋳造機を通過するアルミニウム量が少なく、安定して溶湯を板幅方向に供給することが困難になる。一方、板厚が10mmを超えると、ロールによる巻取りが困難になる。板状鋳塊の板厚は、より好ましくは4〜8mmである。
【0063】
双ロール式連続鋳造圧延法で鋳造された板状鋳塊を最終板厚に冷間圧延する工程中において、530℃以上に保持される時間が10時間以下となる範囲において、250〜550℃で1〜10時間、好ましくは300〜500℃で2〜8時間の範囲で焼鈍を行う。この焼鈍は鋳造後の製造工程において、最終冷間圧延を除くどの工程で行っても良く、1回以上行う必要がある。なお、焼鈍の回数の上限は好ましくは3回、より好ましくは2回である。この焼鈍は、材料を軟化させて最終圧延で所望の材料強度を得易くするために行われ、この焼鈍により材料中の晶出物や析出物のサイズ及び密度、添加元素の固溶量を最適に調整することが出来る。
【0064】
この焼鈍温度が250℃未満では、材料の軟化が不十分なために、ろう付け加熱前のTS(引張強度)が高くなる。ろう付け加熱前のTSが高いと、成形性に劣るためコア寸法が悪化し、結果として耐久性が低下する。一方、550℃を超える温度で焼鈍を行うと、製造工程中の材料への入熱量が多くなりすぎるために、晶出物や析出物が粗大かつ疎に分布することになる。粗大かつ疎に分布した晶出物や析出物は固溶元素を取り込み難く、材料中の固溶量が低下し難い。また、1時間未満の焼鈍時間では上記効果が十分ではなく、10時間を超える焼鈍時間では上記効果が飽和しているために経済的に不利となる。
【0065】
4.接合条件について
4−1.加熱条件
次に、本発明に係るフィン材を用いた接合方法について述べる。本発明に係るフィン材は、単層で加熱接合能力を有するものであり、加熱により材料中に液相を生成し、その液相により接合機能が発揮される。加熱時の温度が高いほど液相が多く形成され、接合性が確保され易い。一方で、液相が多く形成されるほど、フィン材の板厚減少や変形が生じやすくなる。そのため、接合加熱条件を管理することが重要である。具体的には、本発明に係るフィン材内部に液相が生成する固相線以上で液相線以下の温度であって、フィン材に液相が生成することにより強度が低下して形状を維持できなくなる温度未満の温度で、接合に必要な時間加熱する。
【0066】
更に具体的な加熱条件としては、フィン材の全質量に対する当該フィン材内に生成する液相の質量の比(以下、「液相率」と記す。)が、0%を超え35%以下となる温度で接合する必要がある。液相が生成しなければ接合ができないので液相率は0%を超えることが必要である。しかしながら、液相が少ないと接合が困難となる場合があるため、液相率は5%以上が好ましい。一方、液相率が35%を超えると、生成する液相の量が多過ぎて、接合加熱時にフィン材が大きく変形してしまい形状を保てなくなる。好ましい液相率は5〜30%であり、より好ましい液相率は10〜20%である。
【0067】
また、フィン材とこれに接合される他の部材間にフィン材の液相が十分に充填される為には、その充填時間も考慮することが好ましく、液相率が5%以上である時間が30〜3600秒であるのが好ましい。より好ましくは、液相率が5%以上である時間が60〜1800秒であり、これにより更に十分な充填が行われ確実な接合がなされる。液相率が5%以上である時間が30秒未満では、接合部に液相が十分に充填されない場合がある。一方、3600秒を超えると、フィン材の変形が進行する場合がある。なお、本発明における接合方法では、液相は接合部の極近傍においてしか移動しないので、この充填に必要な時間は接合部の大きさには依存しない。
【0068】
好ましい加熱条件の具体例としては、本発明に係る上記フィン材の場合、580〜640℃を接合温度とし、この範囲の接合温度での保持時間を0分〜10分とすればよい。ここで、0分とは、部材の温度が所定の接合温度に到達したらすぐに冷却を開始することを意味する。上記保持時間は、より好ましくは30秒〜5分である。一方、接合温度については、590〜620℃とするのがより好ましく、例えば、Si含有量が4〜5%程度の場合は接合加熱温度を580〜590℃と低めにすることが望ましい。また、接合部の金属組織を後述する好適な状態にするために、組成に応じて加熱条件を調整しても良い。
【0069】
加熱中における実際の液相率を測定することは、極めて困難である。そこで、本発明で規定する液相率は、通常、平衡状態図を利用して、合金組成と最高到達温度から、てこの原理(lever rule)によって求めることができる。既に状態図が明らかになっている合金系においては、その状態図を使用し、てこの原理を用いて液相率を求めることができる。一方、平衡状態図が公表されていない合金系に関しては、平衡計算状態図ソフトを利用して液相率を求めることができる。平衡計算状態図ソフトには、合金組成と温度を用いて、てこの原理で液相率を求める手法が組み込まれている。平衡計算状態図ソフトには、Thermo−Calc;Thermo−Calc Software AB社製などがある。平衡状態図が明らかになっている合金系においても、平衡計算状態図ソフトを用いて液相率を計算しても、平衡状態図からてこの原理を用いて液相率を求めた結果と同じ結果となるので、簡便化のために平衡計算状態図ソフトを利用しても良い。
【0070】
4−2.その他
加熱処理における加熱雰囲気は窒素やアルゴン等で置換した非酸化性雰囲気等が好ましい。また、非腐食性フラックスを使用することで更に良好な接合性を得ることができる。更に、真空中や減圧中で加熱して接合することも可能である。
【0071】
上記非腐食性フラックスを塗布する方法には、被接合部材を組み付けた後、フラックス粉末を振りかける方法や、フラックス粉末を水に懸濁してスプレー塗布する方法等が挙げられる。予め材料に塗装する場合には、フラックス粉末にアクリル樹脂等のバインダーを混合して塗布すれば、塗装の密着性を高めることができる。通常のフラックスの機能を得るために用いる非腐食性フラックスとしては、KAlF、KAlF、KAlF・HO、KAlF、AlF、KZnF、KSiF等のフッ化物系フラックスや、CsAlF、CsAlF・2HO、CsAlF・HO等のセシウム系フラックスが挙げられる。
【0072】
5.接合後の金属組織
本発明に係るフィン材においては、接合加熱中の変形(反りや座屈)を抑制するため、接合加熱後の結晶粒径を50μm以上とするのが好ましく、200μm以上とするのがより好ましい。この結晶粒径が50μm未満では、接合加熱中に粒界すべりが生じ著しい変形を起こす虞がある。この結晶粒径が50μm以上であれば接合加熱中の変形が抑制されるので、フィン材とチューブなどの他の部材とのクリアランスが適切に保たれ接合性を向上させることができる。この結晶粒径の上限値は特に限定されるものではないが、合金組成や製造方法によって決まるものであり、本発明では2000μm程度である。
【0073】
6.クラッド材への適用
本発明に係るフィン材は、表層近傍の金属組織を制御することで、板厚減少が抑制された特徴を有するものである。その効果は、本発明に係るフィン材を他の材料にクラッドした場合においても同様に得られる。その際、板厚減少は大きくてもクラッドされた本発明に係るフィン材部分の厚さの8%以下であるため、クラッド材全体の板厚に対しては更に小さな板厚減少率となる。よって、クラッド率に特に制約は無く、製造可能な範囲であれば良い。具体的には、クラッド材の板厚にもよるが2%〜98%程度、好ましくは5〜95%程度である。
【0074】
このようなクラッド材としては、アルミニウム合金製の心材の一方の面又は両面に、本発明に係るフィン材を皮材としてクラッドしたアルミニウム合金製ブレージングシートが挙げられる。心材としては、例えば1000系の純アルミニウム、3000系、6000系などのアルミニウム合金が用いられる。
【0075】
7.熱交換器への適用
本発明に係るフィン材は、板厚減少を抑制しているため、熱交換器へ適用した際に接合性の向上が図られる。例えば、図1、2に示すように、互いに所定距離を隔てて重ね合わされた多数枚の板状フィン12の、それぞれの端縁部おいて、これら端縁部に沿って所定間隔で、板状フィン材の同位置を貫通するように開口する切欠溝16を複数個設ける。ここで、上記切欠溝16の周囲には、伝熱流体が流通せしめられる流路15を備えた偏平チューブ14の表面と接するようにカラー20が形成されている。そして、上記偏平チューブ14を上記同位置の切欠溝16毎に嵌め込むことにより、かかる板状フィン12の重ね合わせ方向に延びる状態で組み付けて接合加熱することにより熱交換器10が製造される。また、互いに偏平部同士が向き合うように所定間隔で並べられ、伝熱流体が流通する偏平チューブの間に、波型(コルゲート)に加工された本発明に係るフィン材を加熱接合することにより熱交換器を製造しても良い。
【実施例】
【0076】
以下に、本発明例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
まず、表1に示すA1〜A23の合金組成を有するアルミニウム合金を用いて、厚さ400mm、幅1000mm、長さ3000mmの試験材をDC鋳造法により鋳造した。鋳造速度は、冷却速度を1℃/秒と設定して50mm/分とした。なお、表1の合金組成において、「−」は検出限界以下であることを示すものであり、「残部」には不可避不純物が含まれる。次いで、DC鋳造法により鋳造した鋳塊を面削して厚さを380mmとした後に、熱間圧延前の加熱保持工程として鋳塊を480℃まで加熱してその温度で5時間保持し、次いで熱間圧延工程にかけた。熱間圧延工程では3mm厚まで圧延した。熱間圧延工程における熱間粗圧延における総圧下率は92.5%であり、かつ、熱間粗圧延の各パス中において圧下率が15%以上となるパスを3回以上実施した。その後の冷間圧延工程において、圧延板を0.09mm厚まで圧延した。更に、圧延材を380℃で2時間の中間焼鈍工程にかけ、最後に最終冷間圧延段階にて最終板厚0.07mmまで圧延して供試材とした。ここで、最終冷間圧延段階における加工率は22.2%であった。
【0078】
【表1】
【0079】
なお、A2の合金組成のものについては、上記とは別に、DC鋳造後に520℃まで加熱してその温度で10時間保持した供試材も作製した(後述の表2における実施例19のDC2)。また、A3の合金組成のものについては、上記とは別に、DC鋳造後に540℃まで加熱してその温度で15時間保持した供試材も作製した(後述の表2における比較例1のDC3)。次いで、試験材を熱間圧延工程にかけた。熱間圧延工程では3mm厚まで圧延した。熱間圧延工程における熱間粗圧延における総圧下率は92.5%であり、かつ、熱間粗圧延の各パス中において圧下率が15%以上となるパスを3回以上実施した。その後の冷間圧延工程において、圧延板を0.09mm厚まで圧延した。更に、圧延材を380℃で2時間の中間焼鈍工程にかけ、最後に最終冷間圧延段階にて最終板厚0.07mmまで圧延して供試材とした。ここで、最終冷間圧延段階における加工率は22.2%であった。
【0080】
また、A17の成分については、上記とは別に双ロール式連続鋳造圧延法によっても鋳塊を鋳造した。双ロール式連続鋳造圧延法で鋳造する際の溶湯温度は650〜800℃であり、鋳造板の厚さは6mmであった。鋳造速度は、冷却速度を200℃/秒と設定して700mm/分とした。次に、得られた板状鋳塊を0.7mmまで冷間圧延し、480℃で5時間の中間焼鈍後に、0.09mmまで冷間圧延し、380℃において2時間の2回目の焼鈍後に、0.070mmまで冷間圧延して供試材とした。
【0081】
更に、表1のC1、C2及びC3をA1〜A23と同様にして、DC鋳造法で鋳造し熱間圧延前の加熱保持工程にかけた。次いで、C1、C3をそれぞれC2の両面にクラッド率10%で合わせ、熱間クラッド圧延してクラッド材CL1(C1/C2/C1)、CL2(C3/C2/C3)を作製した。熱間クラッド圧延工程では3mm厚まで圧延した。熱間クラッド圧延工程における熱間粗圧延における総圧下率は93.8%であり、かつ、熱間粗圧延の各パス中において圧下率が15%以上となるパスを3回以上実施した。その後の冷間圧延工程において、圧延板を0.09mm厚まで圧延した。更に、圧延材を380℃で2時間の中間焼鈍工程にかけ、最後に最終冷間圧延段階にて最終板厚0.07mmまで圧延して供試材とした。ここで、最終冷間圧延段階における加工率は22.2%であった。
【0082】
上述のようにして作製した供試材について、下記の評価を行なった。
【0083】
<製造性>
まず、製造過程における製造性の評価を行った。製造性の評価方法は、板材又はスラブを製造した際に、製造過程において問題が発生せず健全な板材やスラブが得られた場合を○と、鋳造時に割れが発生した場合や、鋳造時の巨大晶出物発生が原因で圧延が難しくなり、製造性に問題があった場合を△と判定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
<金属組織>
次に、供試材の接合加熱前の金属組織の評価を行った。各供試材の厚さ方向に沿った断面を研磨し、SEM観察像を撮影した。この断面全体部分(t×W(W:3mm)の面積領域におけるSEM観察像を画像解析することで、円相当直径D及び表層からの距離Lを測定し、D≧L、かつ、D+L>0.04tを満たすSi粒子のみを選定し、それらのπDの合計(ΣπD)を算出した。本実施例では、ΣπDが0.08tW=0.08×0.07(mm)×3(mm)=0.017(mm)未満であれば本発明の規定を満たす。金属組織として、算出したΣπD(mm)の結果を表2に示す。
【0086】
<板厚減少>
また、接合加熱温度相当の温度で加熱した際における供試材の板厚減少率を評価した。ここでは、加熱前後のフィン板厚をマイクロメータで測定した。その際、加熱前後の相違を測定するために、加熱前後の同じ位置における板厚を3箇所以上測定し、算術平均値によって板厚減少率を算出した。加熱操作は、各供試材を長さ100mm、幅20mmに切断して長手方向一方の端部に穴を開け、その穴にステンレス製のワイヤーを通して架台に吊るした状態で600℃まで加熱し3分間保持した。本実施例では、板厚減少8%未満を合格とした。結果を表2に示す。なお、表2に示す板厚減少(%)については、実際に求められた数値の少数点以下を切り捨てたものである。
【0087】
<引張試験>
また、接合加熱前の各供試材の引張試験を行った。引張試験は、各供試材に対し、引張速度10mm/min、ゲージ長50mmの条件で、JIS Z2241に従って、常温にて実施した。結果を表2に示す。
【0088】
<接合性>
次に、接合性の評価を行った。図1に示すように、各試験材を幅20mm、長さ100mmに切り出し、プレス加工によって、幅2mm、長さ15mmの切欠き部をピッチ10mmで有するフィン材とした。図1の断面図に示すように、フィン材の切欠き部には高さ0.5mmにカラーを垂直に切り起こした。このフィン材を切欠き部の位置が揃うようにピッチ2mmで20枚平行に並べた。切欠き部には、表1に示すB1の組成の多穴管を挿入した。多穴管は厚さ1.98mm、幅20mm、長さ60mmとした。フィン20枚と多穴管10本を組み合わせた状態でステンレス製のジグに組み込み、テストピース(ミニコア)を作製した。
【0089】
上記のようにして作製したミニコアを、非腐食性のフッ化物系フラックスの10%懸濁液に浸漬して乾燥後に、窒素雰囲気中で600℃に加熱して3分間保持することによって、フィン材と多穴管とを加熱接合した。
【0090】
フィン材と多穴管とを加熱接合した後に、フィンを多穴管から剥してミニコアの多穴管とフィンとの接合部20箇所の状態を調べた。接合部が完全に接合していた箇所の比率(接合率)を測定した。本実施例では、接合率60%以上を合格とした。結果を表2に示す。
【0091】
<耐食性>
更に、上記で作製したミニコアの耐食性評価を行った。CASS試験を500h行い、多穴管の腐食状態を確認した。マイクロスコープにより最大腐食部の腐食深さを焦点法で計測し、深さ50μm以下のものを◎、50μmを超え150μm以下のものを○、150μmを超え300μm以下のものを△、300μmを超えるものを×とした。結果を表2に示す。
【0092】
表2から、アルミニウム合金材の組成及び金属組織において、本発明が規定する条件を具備している実施例1〜20では、製造性、板厚減少、引張試験、接合性及び耐食性が良好であった。
【0093】
一方、比較例1では、フィン材の金属組織が規定を満たさなかったため、板厚減少率が8%を超え、接合性も不良となった。
【0094】
比較例2では、フィン材のSi成分が1.50%未満であったため、液相率が不足して接合性が不良となった。
【0095】
比較例3では、フィン材のSi成分が5.00%を超えていたため、金属組織が規定を満たさず、板厚減少率が8%を超え、接合性も不良となった。
【0096】
比較例4では、クラッド材の皮材に用いたフィン材(C1)のSi含有量が多過ぎたため金属組織が規定を満たさず、板厚減少率が8%を超え、接合性も不良となった。
【0097】
比較例5では、フィン材のZn成分が6.00%を超えていたため、自己耐食性が低下して耐食性が不良となった。
【0098】
比較例6〜8では、フィン材のFe、Cu、Mn成分がそれぞれ多過ぎたため、鋳造時に粗大晶出物が形成され、製造性に問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明により、高接合性と高剛性を有し、薄肉化を可能として軽量化を達成するフィン材及びこれを用いたブレージングシート、ならびに、当該フィン材又はブレージングシートをフィンに用いた熱交換器が提供される。
【符号の説明】
【0100】
10・・・熱交換器
12・・・板状フィン
14・・・偏平チューブ
15・・・流路
16・・・切欠溝
20・・・カラー
図1
図2