【課題】特に最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を用いたターボ冷凍装置において、蒸発器のコンパクト性を保ちつつ、液相状の冷媒がターボ圧縮機側にキャリーオーバーされることによる効率低下や機器の損傷を回避する。
【解決手段】蒸発器7は、凝縮された冷媒が導入される圧力容器21と、この圧力容器21の下部に設けられる冷媒入口と、圧力容器21の上部に設けられる冷媒出口と、圧力容器21の内部を通過し、その内部に被冷却液を流通させ、該被冷却液を前記冷媒と熱交換させる伝熱管群25と、圧力容器21の内部において冷媒出口と伝熱管群25との間に設置され、前記冷媒の気液分離を行うデミスタ27と、を具備し、デミスタ27の周部と圧力容器21の内周面との間に離間部27A(例えば複数の切欠き27a)が設けられている。離間部27Aは、デミスタ27の長手方向に沿う側辺に設けられている。
【背景技術】
【0002】
例えば地域冷暖房の熱源用として使用されているターボ冷凍装置は、周知のように、冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮された冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器とを備えて構成されている。
【0003】
特許文献1には、ターボ冷凍装置の蒸発器として一般的な、いわゆるプール沸騰式シェルアンドチューブ型蒸発器が記載されている。このような蒸発器は、水平方向に延在する円胴シェル形状の圧力容器を備えており、この圧力容器を長手軸方向に貫通するように、水等の被冷却液を通過させる伝熱管群が配設されている。また、圧力容器の内部には、伝熱管群の下方に多数の冷媒流通孔が穿設された冷媒分配板が設けられ、伝熱管群の上方にデミスタ(エリミネータ、ミストセパレータとも呼ばれる)が設けられている。
【0004】
ターボ圧縮機により圧縮され、凝縮器にて凝縮された液相状の冷媒は、膨張弁によって圧力を低減された後、圧力容器の下部に設けられた冷媒入口から圧力容器内に流入し、冷媒分配板の多数の冷媒流通孔を通過することによって圧力容器の内部全域に拡散され、伝熱管群を液没させる液面高まで貯留されて伝熱管群と熱交換する。これにより伝熱管群の内部を流れる被冷却液が冷却され、この冷却された被冷却液が空調用の冷熱媒や工業用冷却液として利用される。
【0005】
伝熱管群と熱交換した液相状の冷媒は温度差により気化(沸騰)する。そして、デミスタを通過する際に液相分を除去され、気相状の冷媒のみが圧力容器の上部に設けられた冷媒出口から出てターボ圧縮機に吸入されて再び圧縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最高圧力0.2MPaG未満で使用されるR1233zd等の低圧冷媒は、ターボ冷凍装置を高効率化させることができ、しかも地球温暖化係数が低いことから、次世代冷媒として期待されている。このような低圧冷媒は、R134a等の高圧冷媒に比べてガス比体積が5倍程度大きくなる物質特性を示すため、蒸発器の内部において伝熱管群と熱交換して沸騰した際に沸騰泡が大きくなり、激しい沸騰状態となる。しかも、蒸発器内部における気化冷媒の体積流量が高圧冷媒に比べて格段に大きいため、蒸発器内部における気化冷媒の流速が高くなる。
【0008】
このため、圧力容器の内部において、デミスタによる気液分離が完全になされず、まだ気化していない液相状の冷媒(液滴)が、冷媒出口に向かって流れる気化冷媒の速い流れに乗って冷媒出口から放出されてしまう、いわゆるキャリーオーバー(気液同伴)と呼ばれる現象が起こりやすい。このような、蒸発しきっていない冷媒の液滴がターボ圧縮機に吸入されると、ターボ圧縮機の圧縮比が低下して効率が落ちるとともに、ターボ圧縮機のブレード等を損傷させる虞がある。
【0009】
このため、キャリーオーバーが発生しにくいように、圧力容器の直径を大きくするとともに、伝熱管群のチューブピッチを大きくして圧力容器内における気化冷媒の流速を低減させ、併せて伝熱管群と冷媒出口との高低差を大きくし、冷媒の液滴がその自重によって気化冷媒から分離される効果を高めている。さらに、デミスタを冷媒出口の近傍に配置して冷媒の液滴を捕捉するような対策が講じられている。
しかしながら、こうすることにより、圧力容器を始めとする蒸発器各部の寸法形状が大きくなり、ターボ冷凍装置のコンパクト性が損なわれてしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、特に最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を用いたターボ冷凍装置において、蒸発器のコンパクト性を保ちつつ、液相状の冷媒がターボ圧縮機側にキャリーオーバーされることによる効率低下や機器の損傷を回避することができる蒸発器、これを備えたターボ冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明の第1態様に係る蒸発器は、凝縮された冷媒が導入される圧力容器と、前記圧力容器の下部に設けられる冷媒入口と、前記圧力容器の上部に設けられる冷媒出口と、前記圧力容器の内部を通過し、その内部に被冷却液を流通させ、該被冷却液を前記冷媒と熱交換させる伝熱管群と、前記圧力容器の内部において前記冷媒出口と前記伝熱管群との間に設置され、前記冷媒の気液分離を行うデミスタと、を具備し、前記デミスタの周部と前記圧力容器の内周面との間に離間部が設けられたものである。
【0012】
上記のように、冷媒の気液分離を行うデミスタの周部と、圧力容器の内周面との間に離間部を設けることにより、デミスタを下方から上方に通過した冷媒の液滴を、離間部を経てデミスタの下方に迅速に戻すことができる。このため、デミスタの上方に滞留する冷媒液滴の量を減少させ、この冷媒液滴が気化冷媒の流れに乗って冷媒出口からターボ圧縮機側にキャリーオーバーされることを防止できる。
【0013】
そして、このようにデミスタ上における冷媒液滴の量を減少させることができるため、圧力容器の直径を大きくしたり、伝熱管群のチューブピッチを大きくしたりして圧力容器内における気化冷媒の流速を低減させる必要性が低下する。したがって、特に最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を用いる場合においては、蒸発器のコンパクト性を保ちつつ、液相状の低圧冷媒がターボ圧縮機側にキャリーオーバーされることによる効率低下や機器の損傷を抑制することができる。
【0014】
上記構成において、前記圧力容器は水平方向に延在する円胴シェル形状であり、前記離間部は、前記デミスタにおける前記圧力容器の軸方向に沿う側辺に設けられている構成としてもよい。
【0015】
円胴シェル形状の圧力容器の内部を軸方向に見た場合、デミスタを下方から上方に通過した気化冷媒は、圧力容器の上部中心に設けられた冷媒出口に向かう上昇気流を形成するが、同時に、この上昇気流の両側に、下方に向かってループを描く下降気流を形成する。この下降気流は、円筒形の圧力容器の内面に沿ってデミスタの離間部に向かう。このため、デミスタを通過した冷媒液滴を、この下降気流により離間部に誘導してデミスタの下方に戻すことができる。これにより、デミスタを通過した冷媒液滴を、より効果的にデミスタ下部に戻し、ターボ圧縮機側へのキャリーオーバーを防止することができる。
【0016】
上記構成において、前記圧力容器は水平方向に延在する円胴シェル形状であり、前記伝熱管群は前記圧力容器の内部を長手軸方向に通過するように設置され、前記離間部は、前記伝熱管群の上流部側に偏倚して設けられている構成としてもよい。
【0017】
円胴シェル形状の圧力容器の内部において、伝熱管群の上流部側では、その内部を流れる被冷却液と液冷媒との相対温度差が大きいために液冷媒が激しく沸騰するが、伝熱管群の下流側に向かうにつれて液冷媒の沸騰度合いは低下する。したがって、液冷媒の沸騰が激しく、液冷媒の液滴がデミスタを通過してしまいやすい位置に離間部を設けることにより、デミスタを通過した冷媒液滴を離間部からデミスタの下方に迅速に戻し、ターボ圧縮機側へのキャリーオーバーを有効に防止することができる。
【0018】
上記構成において、前記圧力容器は水平方向に延在する円胴シェル形状であり、前記伝熱管群は、前記圧力容器内部の長手軸方向一端から他端まで延びる往路管群と、前記圧力容器内部の長手軸方向他端において前記往路管群に連通し、前記圧力容器内部の長手軸方向他端から一端まで戻る復路管群と、を具備し、前記圧力容器の内部において前記往路管群が下方に配置され、前記復路管群が上方に配置されている構成としてもよい。
【0019】
本構成によれば、伝熱管内を流れる被冷却液との相対温度差が大きく、液冷媒を激しく沸騰させる往路管群が圧力容器の下部に配置され、被冷却液との温度差が小さく、液冷媒の沸騰が穏やかな復路管群が圧力容器の上部に配置される。このため、液冷媒の激しい沸騰が圧力容器内における液冷媒プールの深部で行われ、液冷媒の液面上に冷媒液滴が飛散しにくくなる。
【0020】
また、往路管群と復路管群とが上下に重なるレイアウトであるため、例えば往路管群と復路管群とが左右に重なるレイアウトとした場合に比べて、往路管群に接触して沸騰する液冷媒の気泡の量を圧力容器の幅方向に亘って均一化することができる。
これにより、デミスタの上方における気化冷媒の上昇気流の流れを左右均等化し、局所的に流速の大きな部分が発生することを防止して、流速の速い気化冷媒の流れによって冷媒液滴がターボ圧縮機側にキャリーオーバーされることを防止できる。
【0021】
上記構成において、前記デミスタは前記伝熱管群の直上部に配置されている構成としてもよい。
【0022】
低圧冷媒を用いる場合、ガス流速が大きいので、噴き上がる液冷媒の液滴が自重により気化冷媒から分離されるまでの距離が比較的長くなる。このため、液滴が自重分離する位置よりも高位置にデミスタを設置すると、冷媒液面からデミスタまでの距離が長くなり、圧力容器のシェル径が大きくなってしまう。
【0023】
上記のようにデミスタを伝熱管群の直上部に配置することにより、噴き上がる液滴量をデミスタによって減少させ、キャリーオーバー量を減少させることができる。さらに、デミスタを伝熱管群の直上部に配置することにより、デミスタ上の空間において低圧冷媒の蒸発ミストが大きな径の液滴になることを促進させ、液滴が自重分離する距離を縮めて低圧冷媒のキャリーオーバーを防止することができる。
【0024】
本発明の第2態様に係るターボ冷凍装置は、最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、圧縮された前記低圧冷媒を凝縮させる凝縮器と、膨張した前記低圧冷媒を蒸発させる請求項1から5のいずれかに記載の蒸発器と、を具備してなるものである。これにより、上記の各作用・効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る蒸発器、これを備えたターボ冷凍装置によれば、特に最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を用いたターボ冷凍装置において、蒸発器のコンパクト性を保ちつつ、液相状の冷媒がターボ圧縮機側にキャリーオーバーされることによる効率低下や機器の損傷を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るターボ冷凍装置の全体図である。このターボ冷凍装置1は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機2と、凝縮器3と、高圧膨張弁4と、中間冷却器5と、低圧膨張弁6と、蒸発器7と、潤滑油タンク8と、回路箱9と、インバータユニット10と、操作盤11等を備えてユニット状に構成されている。潤滑油タンク8は、ターボ圧縮機2の軸受や増速器等に供給する潤滑油を貯留するタンクである。
【0028】
凝縮器3と蒸発器7は耐圧性の高い円胴シェル形状に形成され、その軸線を略水平方向に延在させた状態で互いに隣り合うように平行に配置されている。凝縮器3は蒸発器7よりも相対的に高い位置に配置され、その下方に回路箱9が設置されている。中間冷却器5と潤滑油タンク8は、凝縮器3と蒸発器7との間に挟まれて設置されている。インバータユニット10は凝縮器3の上部に設置され、操作盤11は蒸発器7の上方に配置されている。
【0029】
ターボ圧縮機2は、電動機13によって回転駆動される公知の遠心タービン型のものであり、その軸線を略水平方向に延在させた姿勢で蒸発器7の上方に配置されている。電動機13はインバータユニット10によって駆動される。ターボ圧縮機2は後述するように蒸発器7の冷媒出口23から吸入管14を経て供給される気相状の冷媒を圧縮する。冷媒としては、例えば最高圧力0.2MPaG未満で使用されるR1233zd等の低圧冷媒が用いられる。
【0030】
ターボ圧縮機2の吐出口と凝縮器3の上部との間が吐出管15により接続され、凝縮器3の底部と中間冷却器5の底部との間が冷媒管16により接続されている。また、中間冷却器5の底部と蒸発器7との間が冷媒管17により接続され、中間冷却器5の上部とターボ圧縮機2の中段との間が冷媒管18により接続されている。冷媒管16には高圧膨張弁4が設けられ、冷媒管17には低圧膨張弁6が設けられている。
図2および
図3に示すように、蒸発器7は、水平方向に延在する円胴シェル形状の圧力容器21と、この圧力容器21の下部に設けられる冷媒入口22と、圧力容器21の上部に設けられる冷媒出口23と、圧力容器21の内部を長手軸方向に通過する伝熱管群25と、冷媒分配板26と、デミスタ27とを具備して構成されている。
【0031】
冷媒入口22と冷媒出口23は、それぞれ円胴シェル形状に形成されてその軸線を略水平方向に延在させる圧力容器21の長手軸方向中間部に配置されており、冷媒入口22は圧力容器21の底部から水平且つ接線状に延出する短いパイプ状に形成され、冷媒出口23は圧力容器21の上部から鉛直上方に延出する短いパイプ状に形成されている。
図1に示すように、冷媒入口22には中間冷却器5の底部から延出する冷媒管17が接続され、冷媒出口23にはターボ圧縮機2の吸入管14が接続されている。
【0032】
圧力容器21の内部には、その一端(例えば
図2に向かって左端)の下側に入口チャンバ31、その上に出口チャンバ32が、それぞれ独立した部屋として設けられている。また、圧力容器21の内部他端(例えば
図2に向かって右端)にはUターンチャンバ33が独立した部屋として設けられている。これらのチャンバ31,32,33はいずれもデミスタ27よりも下方に配置されている。入口チャンバ31には入口ノズル34が設けられ、出口チャンバ32には出口ノズル35が設けられている。
【0033】
図2および
図3、
図5に示すように、伝熱管群25は、圧力容器21内部の長手軸方向一端(
図2中の左端)から他端(
図2中の右端)まで延びる往路管群25Aと、圧力容器21内部の長手軸方向他端において往路管群25Aに連通し、圧力容器21内部の長手軸方向他端から一端まで戻る復路管群25Bとを備えている。具体的には、往路管群25Aは入口チャンバ31とUターンチャンバ33の下部との間を繋ぐように配設され、復路管群25Bは出口チャンバ32とUターンチャンバ33の上部との間を繋ぐように配設されている。即ち、往路管群25Aは圧力容器21の内部下方に配置され、復路管群25Bは圧力容器21の内部上方に配置されている。
【0034】
入口ノズル34からは、冷媒と熱交換器して冷却される被冷却液として、例えば水(水道水、精製水、蒸留水等)が流入するようになっている。この水は、入口チャンバ31から流入して往路管群25Aを流れ、Uターンチャンバ33にてUターンした後、復路管群25Bを流れ、出口チャンバ32を経て出口ノズル35から冷水として流出する。
【0035】
図3に示すように、伝熱管群25を構成する往路管群25Aと復路管群25Bは、それぞれ多数の伝熱管が束ねられた伝熱管束25aが水平方向に複数(例えば4つずつ)平行に配列された構成である。各伝熱管束25aの間には鉛直方向に延びる空隙S1が形成されている。また、往路管群25Aと復路管群25Bとの間には水平方向に延びる空隙S2が形成されている。
【0036】
図2に示すように、伝熱管群25(25A,25B)を構成する個々の伝熱管は、圧力容器21の内部において複数の伝熱管支持板37に支持されながら圧力容器21の内部に固定されている。これらの伝熱管支持板37は、圧力容器21の長手軸方向に交差する面方向を有する平板状であり、圧力容器21の長手軸方向に間隔を空けて複数配置され、圧力容器21の内面に固定されている。伝熱管支持板37には多数の貫通穴が穿設されており、これらの貫通穴に伝熱管が密に挿通されている。
【0037】
一方、
図2、
図3、
図5に示すように、冷媒分配板26は、圧力容器21の内部において冷媒入口22と伝熱管群25(往路管群25A)との間に設置されている。この冷媒分配板26は、多数の冷媒流通孔26aが穿設された板状の部材である。
【0038】
図2、
図3、
図5に示すように、デミスタ27は、圧力容器21の内部において冷媒出口23と伝熱管群25(復路管群25B)との間に配置されている。デミスタ27は、例えばワイヤーをメッシュ状に絡め合わせた通気性に富む部材であり、低圧冷媒の気液分離を行うものである。ワイヤーメッシュに限らず、通気性が良ければ他の多孔状の物質であってもよい。
【0039】
図4にも示すように、デミスタ27は、その周縁部が圧力容器21の内周に接するように取り付けられており、このデミスタ27を境に圧力容器21の内部空間が上下に二分されている。また、デミスタ27の設置高さは、伝熱管群25(25B)の直上部とされている。具体的には、伝熱管群25(25B)とデミスタ27との間隔はチューブ配置ピッチの2倍程度とされている。一方、デミスタ27と冷媒出口23との間には比較的大きな高低差(例えば圧力容器21の直径の50%程度以上)が設けられている。
【0040】
図5、
図2、
図4に示すように、デミスタ27の周部と圧力容器21の内周面との間には離間部27Aが設けられている。この離間部27Aは、デミスタ27における圧力容器21の軸方向に沿う両側辺27L,27Rに、それぞれ複数の矩形の切欠き27aを等間隔で形成したものである。
【0041】
また、離間部27A(切欠き27a)は、伝熱管群25の上流部側に偏倚して設けられている。即ち、
図2に示すように、伝熱管群25の上流部を構成する往路管群25Aが被冷却液の流入部である入口チャンバ31に繋がる側に寄せられて設けられている。離間部27Aの長さは、例えばデミスタ27の長手方向に沿う長さの約4分の1から約2分の1程度とされる。
【0042】
離間部27A(切欠き27a)の形状や間隔、縦横の大きさ、長さ等は、必ずしも
図4に記載のものに限定されることはない。例えば、切欠き27aの長さ寸法を大きくして数量を少なくしたり、切欠き状ではなくスリット状に形成したりしてもよい。また、矩形に限らず、他の形状の切欠きとしてもよい。さらに、変形例として切欠き27aに代えて穴を穿設してもよい。また、離間部27Aは必ずしもデミスタ27の両方の側辺27L,27Rに設けるとは限らず、片方の側辺にのみ設けることも考えられる。
【0043】
以上のように構成された蒸発器7を備えたターボ冷凍装置1において、ターボ圧縮機2は電動機13に回転駆動され、蒸発器7から吸入管14を経て供給される気相状の低圧冷媒を圧縮し、この圧縮された低圧冷媒を吐出管15から凝縮器3に送給する。
【0044】
凝縮器3の内部では、ターボ圧縮機2で圧縮された高温の低圧冷媒が冷却水と熱交換されることにより凝縮熱を冷却されて凝縮液化される。凝縮器3で液相状になった低圧冷媒は、凝縮器3から延出する冷媒管16に設けられた高圧膨張弁4を通過することにより膨張し、気液混合状態となって中間冷却器5に給送され、ここに一旦貯留される。
【0045】
中間冷却器5の内部では、高圧膨張弁4にて膨張した気液混合状態の低圧冷媒が気相分と液相分とに気液分離される。ここで分離された低圧冷媒の液相分は、中間冷却器5の底部から延出する冷媒管17に設けられた低圧膨張弁6によりさらに膨張して気液二相流となって蒸発器7に給送される。また、中間冷却器5で分離された低圧冷媒の気相分は、中間冷却器5の上部から延出する冷媒管18を経てターボ圧縮機2の中段部に給送され、再び圧縮される。
【0046】
図2〜
図4に示すように、蒸発器7では、低圧膨張弁6において断熱膨張した後の低温な気液二相流状の低圧冷媒が冷媒入口22から圧力容器21の内部に流入し、冷媒分配板26の下方で圧力容器21の長手軸方向に分散した後、冷媒分配板26の冷媒流通孔26aを通過して上方に流れる。そして、圧力容器21の内部で低圧冷媒のプールが形成される。この低圧冷媒プールの液面レベルは、伝熱管群25(25B)とデミスタ27との間となるように自動調整される。
【0047】
伝熱管群25(25A,25B)は、圧力容器21の内部で低圧冷媒プール中に浸漬された状態となり、低圧冷媒と熱交換する。これにより、伝熱管群25の内部を通過する水が冷却されて冷水になる。この冷水は空調用の冷熱媒や工業用冷却水等として利用される。
【0048】
伝熱管群25との熱交換により蒸発(気化)した低圧冷媒は、デミスタ27によって気液分離される。即ち、気化した低圧冷媒(気化冷媒)が圧力容器21の内部を冷媒出口23に向かう時には、高圧冷媒に比べて比体積が大きい低圧冷媒の特性によって速い流れが形成される。このため、低圧冷媒プールから噴き上げられた未気化の液相冷媒の液滴が、気化冷媒の速い流れに同伴して冷媒出口23から出ようとし、キャリーオーバーが発生する虞がある。
【0049】
しかし、この液滴は多孔状のデミスタ27に捕捉されて分離され、重力により低圧冷媒プールに落下するため、キャリーオーバーが防止される。このように気液分離された気化冷媒は、冷媒出口23から出て吸入管14を経て再びターボ圧縮機2に吸入・圧縮され、以下、この冷凍サイクルが繰り返される。
【0050】
本実施形態における蒸発器7は、デミスタ27の周部と圧力容器21の内周面との間に離間部27Aを設けたものである。離間部27Aは、デミスタ27における圧力容器21の軸方向に沿う両側辺27L,27Rに設けられている。このような離間部27Aをデミスタ27に設けることにより、デミスタ27を下方から上方に通過した冷媒の液滴を、離間部27Aを経てデミスタ27の下方に迅速に戻すことができる。
【0051】
即ち、
図5に示すように、円胴シェル形状の圧力容器21の内部を軸方向に見た場合、デミスタ27を下方から上方に通過した気化冷媒は、圧力容器21の上部中心に設けられた冷媒出口23(
図5には非図示)に向かう上昇気流Uを形成するが、同時に、この上昇気流Uの両側に、下方に向かってループを描く下降気流Dを形成する。この下降気流Dは、円筒形の圧力容器21の内面に沿ってデミスタ27の離間部27Aに向かう。このため、デミスタ27を通過した冷媒液滴Rを、この下降気流Dにより離間部27Aに誘導してデミスタ27の下方に戻すことができる。
【0052】
このように、デミスタ27を下方から上方に通過した冷媒液滴Rを、下降気流Dを利用してデミスタ27に形成した離間部27Aを経てデミスタ27の下方に戻すことができるため、デミスタ27の上方に滞留する冷媒液滴Rの量を減少させ、この冷媒液滴Rが気化冷媒の流れに乗って冷媒出口23からターボ圧縮機2側にキャリーオーバーされることを防止することができる。
【0053】
また、離間部27Aは、伝熱管群25の上流部側に偏倚して設けられている。円胴シェル形状の圧力容器21の内部において、伝熱管群25の上流部側では、その内部を流れる被冷却液と液冷媒との相対温度差が大きいために液冷媒が激しく沸騰するが、伝熱管群25の下流側に向かうにつれて液冷媒の沸騰度合いは低下する。
したがって、液冷媒の沸騰が激しく、冷媒液滴Rがデミスタ27を通過してしまいやすい位置に離間部27Aを偏倚させて設けることにより、デミスタ27を通過した冷媒液滴Rを離間部27Aからデミスタ27の下方に迅速に戻しやすくし、ターボ圧縮機2側へのキャリーオーバーを有効に防止することができる。
【0054】
さらに、伝熱管群25のレイアウトとして、上記のように伝熱管内を流れる被冷却液との相対温度差が大きく、液冷媒を激しく沸騰させる往路管群25Aが圧力容器21の下部に配置され、被冷却液との温度差が小さく、液冷媒の沸騰が穏やかな復路管群25Bが圧力容器21の上部に配置されているため、液冷媒の激しい沸騰が圧力容器21内における液冷媒プールの深部で行われ、液冷媒の液面上に冷媒液滴Rが飛散しにくくなる。
【0055】
また、このように往路管群25Aと復路管群25Bとが上下に重なるレイアウトであるため、例えば往路管群25Aと復路管群25Bとが左右に重なるレイアウトとした場合に比べて、往路管群25Aに接触して沸騰する液冷媒の気泡の量を圧力容器21の幅方向に亘って均一化することができる。
これにより、デミスタ27の上方における気化冷媒の上昇気流Uの流れを左右均等化し、局所的に流速の大きな部分が発生することを防止して、流速の速い気化冷媒の流れによって冷媒液滴Rがターボ圧縮機2側にキャリーオーバーされることを防止できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、デミスタ27は伝熱管群25の直上部に配置されている。低圧冷媒を用いる場合、ガス流速が大きいので、噴き上がる液冷媒の液滴(冷媒液滴R)が自重により気化冷媒から分離されるまでの距離が比較的長くなる。このため、液滴が自重分離する位置よりも高位置にデミスタ27を設置すると、冷媒液面からデミスタ27までの距離が長くなり、圧力容器21のシェル径が大きくなってしまう。
【0057】
上記のようにデミスタ27を伝熱管群25の直上部に配置することにより、噴き上がる液滴量をデミスタ27によって減少させ、キャリーオーバー量を減少させることができる。さらに、デミスタ27を伝熱管群25の直上部に配置することにより、デミスタ27上の空間において低圧冷媒の蒸発ミストが大きな径の液滴になることを促進させ、液滴が自重分離する距離を縮めて低圧冷媒のキャリーオーバーを防止することができる。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態に係る蒸発器7およびこの蒸発器7を備えたターボ冷凍装置1によれば、デミスタ27の上方における冷媒液滴Rの量を減少させることができるため、圧力容器21の直径を大きくしたり、伝熱管群25のチューブピッチを大きくしたりして圧力容器21内における気化冷媒の流速を低減させる必要性が低下する。
したがって、特に最高圧力0.2MPaG未満で使用される低圧冷媒を用いる場合においては、蒸発器7のコンパクト性を保ちつつ、液相状の低圧冷媒がターボ圧縮機2側にキャリーオーバーされることによる効率低下や機器の損傷を抑制することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態の構成のみに限定されるものではなく、適宜変更や改良を加えることができ、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。例えば、蒸発器7の圧力容器21の形状や、その内部における各部品のレイアウト等は、本実施形態のものに限定されることはない。