【解決手段】コントローラ(20)は、3軸加速度センサから出力される加速度情報の取得する入力処理部(21)と、加速度情報から加速度ベクトルの時系列データを生成し、さらに、加速度ベクトルの時系列データから1次固有振動に関連する加速度変化量の時系列データを生成する加速度変化量算出部(22)と、加速度変化量の時系列データから応力変化量の時系列データを生成する応力算出部(23)と、応力変化量の時系列データから応力振幅の発生頻度ヒストグラムを生成するヒストグラム算出部(24)と、応力振幅の発生頻度ヒストグラムから蓄積疲労度を算出する疲労度算出部とを備える。
構造物に設置された1個以上の3軸加速度センサから出力される前記構造物の加速度情報に基づいて、前記構造物の疲労損傷状態を定量的に評価するコントローラを備えた疲労損傷評価装置であって、
前記コントローラは、
前記構造物の特定部位に設置された前記3軸加速度センサから出力される前記加速度情報を取得する入力処理部と、
前記加速度情報から、前記構造物に対する応力方向の加速度ベクトルの時系列データを生成し、さらに、前記加速度ベクトルの時系列データから1次あるいはより高次の固有振動に関連する加速度変化量の時系列データを生成する加速度変化量算出部と、
あらかじめ規定された変換ルールに基づいて、前記加速度変化量の時系列データから応力変化量の時系列データを生成する応力算出部と、
前記応力変化量の時系列データから応力振幅の発生頻度ヒストグラムを生成するヒストグラム算出部と、
応力振幅ごとに発生回数と破断繰り返し数の対応関係をあらかじめ規定した応力−蓄積疲労テーブルを用いて、前記応力振幅の発生頻度ヒストグラムから蓄積疲労度を算出する疲労度算出部と
を備える疲労損傷評価装置。
前記加速度変化量算出部は、前記構造物の面内方向および面外方向の2方向成分における1次およびより高次の固有振動数を考慮し、面外1次固有振動加速度変化量、面内1次固有振動加速度変化量、より高次の面外固有振動加速度変化量、およびより高次の面内固有振動加速度変化量に関する複数種のデータとして前記加速度変化量の時系列データを生成し、
前記応力算出部は、前記複数種のデータとして生成された前記加速度変化量の時系列データに対応して複数種の応力変化量の時系列データを生成し、前記複数種の応力変化量の時系列データの加算結果として1つの応力変化量の時系列データを生成して出力する
請求項1または2に記載の疲労損傷評価装置。
構造物に設置された1個以上の3軸加速度センサから出力される前記構造物の加速度情報に基づいて、前記構造物の疲労損傷状態を定量的に評価する疲労損傷評価方法であって、
前記構造物の特定部位に設置された前記3軸加速度センサから出力される前記加速度情報を取得する入力処理ステップと、
前記加速度情報から、前記構造物に対する応力方向の加速度ベクトルの時系列データを生成し、さらに、前記加速度ベクトルの時系列データから1次あるいはより高次の固有振動に関連する加速度変化量の時系列データを生成する加速度変化量算出ステップと、
あらかじめ規定された変換ルールに基づいて、前記加速度変化量の時系列データから応力変化量の時系列データを生成する応力算出ステップと、
前記応力変化量の時系列データから応力振幅の発生頻度ヒストグラムを生成するヒストグラム算出ステップと、
応力振幅ごとに発生回数と破断繰り返し数の対応関係をあらかじめ規定した応力−蓄積疲労テーブルを用いて、前記応力振幅の発生頻度ヒストグラムから蓄積疲労度を算出する疲労度算出ステップと
を有する疲労損傷評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の疲労損傷評価装置および疲労損傷評価方法の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
なお、本発明において疲労損傷評価の対象となる構造物としては、橋などの道路構造物、あるいはジェットファン、情報板、表示板などの道路付帯設備が含まれ、以下の説明では、情報板を代表例として説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における疲労損傷評価装置の評価対象の構造物の一例である情報板の設置状態を示す全体構成図である。情報板10は、支柱11に取り付けられており、支柱11の根元のリブに応力が集中し、支柱11への繰り返し応力が発生することで、リブが疲労し、やがて破壊に至る。
【0017】
図1において、応力の集中するリブは、支柱11を地面へ設置する基部12と、情報板10を支柱11へ設置する横梁部13に存在する。また、支柱11が、地面ではなく橋梁部14に設置される場合は、橋梁からの張り出し部15の根元にも応力の集中が発生する。
【0018】
情報板10が地面に設置される場合には、3つの加速度センサ1〜3が、
図1中に示したそれぞれの位置に取り付けられる。また、情報板10が橋梁部14に設置される場合には、4つの加速度センサ1〜4が、
図1中に示したそれぞれの位置に取り付けられる。なお、
図1中、加速度センサ1は、情報板10内の天井面に取り付けられているが、これに限らず、例えば、情報板10の底面に取り付けられてもよい。
【0019】
情報板10の応力集中部の蓄積疲労に強く関係するのは、情報板10の固有振動数付近の揺れである。特に、情報板10の疲労損傷を評価する場合には、1次、2次など低次の固有振動数が大きく関わっている。
【0020】
情報板10の固有振動数は、面内方向(情報板がお辞儀をする方向に相当)と面外方向(情報板が旗振りをする方向に相当)の2つの成分が個別に存在する。そこで、本実施の形態1では、算出された加速度情報について、1次および2次の固有振動数の面内、面外の合計4つの周波数範囲を考慮し、情報板10の疲労損傷評価を行うこととする。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1における疲労損傷評価装置の構成図である。本実施の形態1における疲労損傷評価装置は、コントローラ20、およびN個(Nは、2以上の整数)の加速度センサ30(1)〜30(N)を備えて構成されている。
【0022】
なお、先の
図1に示した情報板10を評価対象とした本実施の形態1における疲労損傷評価装置では、3個または4個の加速度センサ30を設けることとなる。また、N個のセンサのそれぞれの機能は、全て共通である。そこで、以下の説明では、それぞれのセンサを区別する必要がない場合には、(1)〜(N)の添字を用いずに、単に加速度センサ30と記載する。
【0023】
N個の加速度センサ30のそれぞれは、センサ部31と、加速度情報出力部32を有しており、情報板10の疲労損傷評価を行う場合には、先の
図1に示したそれぞれの位置に設置されることとなる。本発明の疲労損傷評価装置によって、長期にわたって情報板10の応力集中部の蓄積疲労の監視が行われることとなる。
【0024】
ここで、センサ部31は、例えば、MEMS構造を持った3軸加速度センサである。
【0025】
また、加速度情報出力部32は、センサの設置箇所における3軸の加速度に関する信号を、所定のサンプリングレート(例えば、100Hzのサンプリングレート)でデジタル信号に変換し、加速度情報としてコントローラ20へ送信する。
【0026】
また、コントローラ20は、N個のセンサ30のそれぞれから取得した加速度情報に基づいて、情報板10の応力集中部の蓄積疲労を定量的に評価する。そして、このような定量的評価を実行するために、コントローラ20は、入力処理部21、加速度変化量算出部22、応力算出部23、ヒストグラム算出部24、および寿命算出部25を備えて構成されている。
【0027】
次に、
図3〜
図11を用いて、本実施の形態1における疲労損傷評価処理について、具体的に説明する。
図3は、本発明の実施の形態1におけるコントローラ20により実行される疲労損傷評価処理の一連の流れを示すフローチャートである。
【0028】
まず始めに、ステップS301において、コントローラ20は、それぞれの加速度センサ30から加速度情報を入力する。次に、ステップS302において、コントローラ20は、それぞれの加速度センサ30から読み取った3軸の加速度情報に対して、軸変換を施す。
【0029】
加速度センサ30は、外力が印加されていない状態では、常に重力加速度のベクトルを示す。そこで、この性質を利用して、加速度センサ30の設置誤差などの姿勢に関係なく、正常時の重力加速度ベクトルが、Z軸上を示すように軸補正を行うこととする。すなわち、コントローラ20は、初期正常状態における加速度ベクトルを基準として、軸補正角を算出する。
【0030】
図4は、本発明の実施の形態1におけるコントローラ20により実行される軸変換処理の説明図である。軸補正を行うに当たり、コントローラ20は、初期正常状態における加速度センサ30が示すベクトルがZ軸と重なるように、以下の2段階の手順にてアフィン変換を行う。
【0031】
(手順1)X軸の出力値が0になるように、Z軸回転による補正を行う。
コントローラ20は、下式に基づくアフィン変換を実施することで、
図4(a)から
図4(b)の状態となるように、補正角αによる軸補正を行う。
【0033】
(手順2)Y軸の出力値が0になるように、X軸回転による補正を行う。
次に、コントローラ20は、下式に基づくアフィン変換を実施することで、
図4(b)から
図4(c)の状態となるように、補正角βによる軸補正を行う。
【0035】
このように、コントローラ20は、補正角αおよび補正角βを用いて、加速度センサ30の出力値に対する軸補正を行うことができる。なお、取り付けられた加速度センサ30のZ軸が傾いていない場合には、加速度センサの座標軸と、コントローラ20による補正後の座標軸は、一致する。
【0036】
次に、ステップS303において、コントローラ20は、加速度センサ30間の加速度を算出する。構造物の応力集中部に関連する加速度情報を得るには、加速度センサ30単体では困難な場合も多い。
【0037】
例えば、橋梁などの揺れる構造物に取り付けられた情報板10に印加される加速度情報は、橋梁部14そのものの加速度情報を含んでおり、余分な加速度をキャンセルする必要がある。
【0038】
本実施の形態1では、情報板10の応力集中部に関連する加速度情報を、下記のように、2つの加速度センサ間の加速度の差分として算出することで、余分な加速度をキャンセルすることができる。
(1)支柱基部12の応力に関連する加速度を算出するには、センサ1−センサ2間の加速度情報の差分を用いる。
(2)横梁部13の根元の応力に関連する加速度を算出するには、センサ3−センサ1間の加速度情報の差分を用いる。
(3)橋梁部張り出し部15の根元の応力に関連する加速度を算出するには、センサ2−センサ4間の加速度情報の差分を用いる。
【0039】
上述したように、情報板10の応力集中部の蓄積疲労に強く関係するのは、情報板10の固有振動数付近の揺れであり、特に、情報板10では、1次、2次など低次の固有振動数が大きく関わっている。
【0040】
さらに、情報板10の固有振動数は、面内方向と面外方向の2つの成分が存在する。そこで、コントローラ20は、ステップS303における加速度情報については、1次および2次の固有振動数の面内、面外の合計4つの周波数範囲を考慮する。
【0041】
さらに、ステップS304において、コントローラ20は、バンドパスフィルタ処理を施すことで、各振動モードの共振成分を抽出する。
【0042】
なお、本実施の形態1においては、Z軸方向の影響は少ないため、XY面についてのみ、データをフィルタリング処理することとして、以下の説明を続ける。
【0043】
コントローラ20は、各軸(X,Y)に対し、4種類のバンドパスフィルタ(BPF)によるフィルタリングを実施する。本実施の形態1で使用するBPFは、FIR(finite impulse response:有限インパルス応答)フィルタで構成される。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態1におけるFIRフィルタの具体的な回路構成を示した図である。また、
図6は、本発明の実施の形態1におけるFIRフィルタを用いて構成されたBPFによる周波数特性を示した図である。
【0045】
BPFは、計測対象物の固有振動数を計測した後に、設計される。より具体的には、
図5の回路構成に対応して、下式を用いることにより、BPFを設計することができる。
【0047】
次に、ステップS305において、コントローラ20は、応力方向への加速度ベクトルの算出処理、および加速度変化量の算出処理を行う。
図7は、本発明の実施の形態1におけるコントローラ20により算出される加速度ベクトルに関する説明図である。
【0048】
ある方向に歪みが発生している場合には、その周辺にも主方向からの角度に応じた歪みが発生している。円柱構造の場合には、主方向に対し、90°方向で歪みは0となり、90°以上は、歪みの符号が反転する。
【0049】
支柱11がF型支柱の場合、支柱基部12のリブとの溶接部への応力集中が想定される。そこで、コントローラ20は、加速度センサ30にて計測された加速度ベクトルから、固有振動ごとに任意の方向(リブ方向)への加速度データを算出する。
【0050】
具体的には、コントローラ20は、4つの固有振動をm=0〜3とした場合に、固有振動mごとに、加速度ベクトルの大きさPs(m)と向きPf(m)を、下式に従って算出する。
【0052】
さらに、コントローラ20は、加速度ベクトルの大きさPs(m)と向きPf(m)の時系列データの遷移に基づいて、対象となるリブ方向への加速度変化量を算出する。具体的には、コントローラ20は、リブ方向nへの固有振動mにおける加速度変化量Ps_Ang(m、n)を、下式により算出する。なお、下式におけるAng_D(n)は、リブ方向nの角度を意味している。
【0054】
次に、ステップS306において、コントローラ20は、加速度変化量から応力振幅への変換処理を行う。
図8は、本発明の実施の形態1における加速度変化量から応力振幅への変換処理を行うための回路構成図である。コントローラ20は、蓄積疲労評価方向別に、各固有振動における加速度変化量のデータを変換、加算し、最終的に、総合応力変化データへ変換し、時系列データとして出力する。
【0055】
図8に示すように、コントローラ20は、加速度変化量から応力振幅への変換処理を行うための構成として、加速度−応力変換器201および加算器202を備えている。加速度−応力変換器201は、あらかじめ規定された変換ルールである、下式に示す1次式により、加速度−応力変換を実施する。
【0057】
すなわち、加速度−応力変換器201は、4つの加速度変化量である、面外1次固有振動加速度変化量211、面内1次固有振動加速度変化量212、面外2次固有振動加速度変化量213、および面内2次固有振動加速度変化量214のそれぞれに対して、上式を適用し、4つの応力変化量である、面外1次固有振動応力変化量221、面内1次固有振動応力変化量222、面外2次固有振動応力変化量223、および面内2次固有振動応力変化量224への変換処理を行う。
【0058】
なお、加速度−応力変換器201は、上式の変換ルールを用いる代わりに、変換テーブルを用いて、加速度変化量から応力振幅への変換処理を実行することもできる。
図9は、本発明の実施の形態1における加速度変化量から応力振幅への変換処理を行うために、変化量と応力の対応関係を示した変換テーブルに相当する図である。
【0059】
加速度−応力変換器201は、
図9に示したような、応力振幅と加速度振幅の変換テーブルを、面内面外各方向の固有振動数ごとに持つことで、
図8に示した変換処理を実行することができる。なお、このような変換テーブルとしては、ルックアップテーブルを用いることも可能である。
【0060】
次に、加算器202は、加速度−応力変換器201による変換後の各応力変化量を、リブ方向ごとに加算し、総合応力変化データ231を生成する。より具体的には、加算器202は、方向nにおける総合応力変化量データSt_Ang(n)を、下式により算出する。
【0062】
次に、ステップS307において、コントローラ20は、応力振幅の算出処理を行う。さらに、ステップS308において、コントローラ20は、応力振幅の発生頻度ヒストグラムの算出処理を行う。具体的には、コントローラ20は、方向別に、サイクルカウント法(ここではレインフロー法)を用いて、一定期間内の応力変化データにおける振幅と、その発生回数を算出し、応力振幅の発生頻度ヒストグラムを作成する。
【0063】
図10は、本発明の実施の形態1おけるコントローラ20により実行される応力振幅の算出処理に関する説明図である。コントローラ20は、
図10に示すレインフロー法によって得られた応力振幅とその発生頻度を、応力振幅−発生頻度ヒストグラムとして蓄積する。
【0064】
なお、計測方法としては、常時計測と間欠計測の何れを採用してもよい。
ただし、間欠計測を実施した場合、間欠計測により計測されていない時間の応力振幅を加味した発生頻度を応力振幅−発生頻度ヒストグラムへ蓄積する必要がある。
【0065】
上述したステップS301〜ステップS308の一連処理が終了すると、ステップS309において、コントローラ20は、蓄積疲労評価を行うための十分なデータを取得するための時間としてあらかじめ設定された一定時間が経過したか否かを判定する。そして、コントローラ20は、一定時間が経過していない場合には、ステップS301以降の処理に戻り、一定時間が経過している場合には、ステップS310以降の処理に進む。
【0066】
ステップS310に進んだ場合には、コントローラ20は、ヒストグラムとして求まった各リブの応力振幅頻度データから、それぞれの蓄積疲労度Dを算出する。
図11は、本発明の実施の形態1における応力振幅σと繰り返し数NSの関係をまとめた応力−蓄積疲労テーブルを示す図である。コントローラ20は、
図11の関係、および下式に基づいて、各リブの応力振幅頻度データから、それぞれの蓄積疲労度Dを算出する。
【0068】
なお、上式におけるD、n
i、NS
iは、それぞれ以下の内容を意味している。
D:蓄積疲労度
n
i:応力振幅σ
iの発生回数
NS
i:応力振幅σ
iにおける破断繰り返し数(疲労寿命)
【0069】
そして、コントローラ20は、算出した各リブの蓄積疲労度Dのうち、1つでも1を超えた場合には、疲労破壊の可能性があると判断する。
【0070】
次に、ステップS311において、コントローラ20は、疲労寿命予測の算出処理を行う。具体的には、コントローラ20は、1日当たりの蓄積疲労度増加量の平均値から、リブごとに、疲労寿命に至るまでの予測日数を算出する。なお、以下では、1日当たりの蓄積疲労度増加量の平均値に基づき疲労寿命に至るまでの予測日数を算出するが、本実施の形態は、これに限らず、単位時間当たり(例えば、三日毎、週毎、月毎等)の増加量に基づき疲労寿命に至るまでの予測時間(時間に限らず、当然予測日数や予測月数でもよい)を算出してもよい。
【0071】
図12は、本発明の実施の形態1におけるコントローラ20により実行される疲労寿命予測の算出処理に関する説明図である。まず、コントローラ20は、1日当たりの蓄積疲労度増加量の平均値dDを下式を用いて算出する。
【0073】
なお、上式におけるdD、D、tは、それぞれ以下の内容を意味している。
dD:1日当たりの蓄積疲労度増加量の平均値
D:最終評価時の計測開始からの累積D値であり、
図12中のD2に相当
t:最終評価日t
e−計測開始日t
0であり、
図12中のt
e−t
0に相当
【0074】
さらに、コントローラ20は、各リブの方向における疲労寿命Life、および最終評価日t
eからの予寿命RLifeを、下式により算出する。
【0076】
なお、上式におけるt
inは、下の内容を意味している。
t
in:供用開始日
【0077】
そして、コントローラ20は、全リブのRLifeの最小値を、残り疲労寿命日数として算出する。
【0078】
次に、ステップS312において、コントローラ20は、現時点が点検時期であるか否かを判定する。そして、コントローラ20は、点検時期でない場合には、ステップS301以降の処理に戻る。
【0079】
一方、コントローラ20は、点検時期である場合には、ステップS313の処理に進み、予測した疲労寿命に基づいて、点検・交換時期の通知を実施した後、ステップS301以降の処理に戻る。
【0080】
なお、
図2におけるコントローラ20内の各構成要素と、
図3における各ステップとの対応関係をまとめると、以下のようになる。
・ステップS301の処理は、入力処理部21により実行される。
・ステップS302〜305の処理は、加速度変化量算出部22により実行される。
・ステップS306、S307の処理は、応力算出部23により実行される。
・ステップS308の処理は、ヒストグラム算出部24により実行される。
・ステップS309〜S313の処理は、寿命算出部25により実行される。
【0081】
また、上述したような、
図3に基づく一連処理は、代表例であり、疲労損傷評価処理を実行するに当たっては、以下のような(1)〜(6)の変更、修正を考慮することができる。
(1)
図3の説明では、加速度―応力変換処理の後に応力振幅の計算を行ったが、加速度振幅を計算し、加速度振幅のヒストグラムを先に取得し、後に加速度−応力への変換処理を行って応力振幅を求めてもよい。
【0082】
(2)簡易的には、加速度振幅に比例定数を掛けたものを応力相当として直接計算することで、加速度−応力変換工程を省略してもよい。
(3)バンドパスフィルタ処理は、必ずしも必要としない。また、
図3の説明では、4つの固有振動数に対応させてバンドパスフィルタを用意したが、必ずしも全て備える必要はない。
【0083】
(4)応力振幅の計算には、レインフロー法を用いたが、必ずしもレインフロー法を用いる必要はなく、異なるアルゴリズムを用いたサイクルカウント法を採用しても構わない。
(5)軸変換については、必要がなければ省略してもよい。
【0084】
(6)
図3の説明では、加速度センサの加速度情報を用いて、疲労損傷評価を実行したが、加速度情報を時間方向に2階積分して変位情報を算出し、加速度情報の代わりに変位情報を用いて疲労寿命を算出することも可能である。
【0085】
以上のように、実施の形態1によれば、評価対象である構造物の1次固有振動数に着目し、加速度センサから得られた加速度情報に基づいて、応力振幅の発生頻度ヒストグラムを生成し、生成したヒストグラムから蓄積疲労度を算出できる構成を備えている。この結果、構造物の疲労損傷評価を定量的かつ高精度に行うことができる。