特開2017-191079(P2017-191079A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-191079振動検出装置、振動特性計測システムおよび振動特性計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-191079(P2017-191079A)
(43)【公開日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】振動検出装置、振動特性計測システムおよび振動特性計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 1/00 20060101AFI20170922BHJP
【FI】
   G01H1/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-82385(P2016-82385)
(22)【出願日】2016年4月15日
(11)【特許番号】特許第6078860号(P6078860)
(45)【特許公報発行日】2017年2月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成28年2月12日に、神奈川大学工学部の2015年度機械工学科卒業研究審査の発表用資料(卒業論文)にて発表 (2)平成28年2月12日に、神奈川大学工学部の2015年度機械工学科卒業研究審査にて発表 (3)平成28年3月22日に、「平成27年度修士論文概要集 卒業論文・卒業設計概要集」 (平成28年3月9日,第205〜206頁,神奈川大学機械工学科)にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】山崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 通
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘毅
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA14
2G064AB03
2G064AB04
2G064AB06
2G064BA02
2G064BA03
2G064BA08
(57)【要約】
【課題】2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を、作業負担が少なく実現することを可能にする。
【解決手段】構造体の表面に設置され、構造体の特性計測地点における振動特性を演算するための振動を検出する振動検出装置1において、構造体の表面上における2以上の特性計測地点における振動特性を演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動検出部2と、前記構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて各振動検出部を互いに連結する連結部3とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の表面に設置され、該構造体の特性計測地点における振動特性を演算するための振動を検出する振動検出装置において、
前記構造体の表面上における2以上の特性計測地点における振動特性を演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動検出部と、
前記構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて各振動検出部を互いに連結する連結部とを有することを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動検出装置において、
前記連結部は、各振動検出部の相対位置が変化可能に各振動検出部を連結するものであることを特徴とする振動検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の振動検出装置において、
前記連結部は、前記間隔をあけて各振動検出部が固定されるシート状部材で構成されていることを特徴とする振動検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動検出装置において、
前記振動特性は、振動インテンシティであることを特徴とする振動検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動検出装置において、
前記連結部の少なくとも一部には、前記構造体に重なる表示面上に前記振動特性の演算結果を表示する表示手段が設けられていることを特徴とする振動検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動検出装置と、
前記振動検出装置の各振動検出部で検出された各振動検出地点の振動検出結果に基づいて、前記2以上の特性計測地点における振動特性を演算する演算処理を実行する演算装置とを有することを特徴とする振動特性計測システム。
【請求項7】
請求項6に記載の振動特性計測システムにおいて、
前記振動検出装置として、請求項5に記載の振動検出装置を用い、
前記演算装置は、前記構造体の表面に設置されたときの表示面上における前記2以上の特性計測地点と重なる位置に、対応する振動特性の演算結果を表示させる表示制御処理を実行することを特徴とする振動特性計測システム。
【請求項8】
構造体の表面上における2以上の特性計測地点の振動特性を演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動検出部と、該構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて各振動検出部を互いに連結する連結部とを備えた振動検出装置を、前記構造体の表面に設置し、
前記振動検出装置の各振動検出部で検出された各振動検出地点の振動検出結果に基づいて、前記2以上の特性計測地点における振動特性を演算することを特徴とする振動特性計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の振動特性を得るための振動検出を行う振動検出装置、並びに、その振動検出結果に基づいて構造体の振動特性を計測する振動特性計測システムおよび振動特性計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、構造体内の振動エネルギーの流れを把握するために、その構造体上の各箇所(特性計測地点)における振動インテンシティ(単位時間に単位幅を通過する振動エネルギー量)を計測することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5067654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、構造体上の1箇所(特性計測地点)における振動インテンシティ等の振動特性を計測するためには、構造体上における2以上の地点(振動検出地点)の振動を検出することが必要となる。例えば、1つの特性計測地点の振動インテンシティを計測する場合、その特性計測地点の周囲に位置する少なくとも2つの振動計測地点の振動を計測することが必要である。振動インテンシティ等の振動特性を計測するのに必要な振動を検出する従来の振動検出装置には、1つの特性計測地点の振動特性を計測するのに必要な振動検出地点の数の振動検出部しか備わっていなかった。
【0005】
このような従来の振動検出装置を用いて、構造体上の2以上の特性計測地点についての振動特性を計測しようとする場合、その振動検出装置の設置箇所を変えながら各特性計測地点の振動特性を繰り返し計測するという作業が必要となる。しかしながら、この場合、特性計測地点の振動特性を計測するたびに振動検出装置の設置箇所を変える必要があり、計測作業が繁雑になる。また、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性を計測できないため、再現性のない不規則な振動特性については計測できない。
【0006】
一方、従来の振動検出装置を、特性計測地点の数に相当する数だけ用意し、各特性計測地点に対応した設置箇所に各振動検出装置をそれぞれ設置すれば、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性を計測することが可能である。しかしながら、この場合でも、各特性計測地点に対応した設置箇所に各振動検出装置をそれぞれ設置するという作業が必要であり、計測作業が繁雑である。
【0007】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を、作業負担が少なく実現可能とする振動検出装置、振動特性計測システムおよび振動特性計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、構造体の表面に設置され、該構造体の特性計測地点における振動特性を演算するための振動を検出する振動検出装置において、前記構造体の表面上における2以上の特性計測地点における振動特性を演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動検出部と、前記構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて各振動検出部を互いに連結する連結部とを有することを特徴とするものである。
本発明によれば、2以上の特性計測地点における振動特性を演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動検出部が設けられているため、1つの振動検出装置だけで、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を実現できる。
しかも、各振動検出部が、予め、構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて互いに連結されているため、本振動検出装置を構造体の表面に設置する際、個々の振動検出部をそれぞれの振動検出地点に位置させる作業が容易である。よって、多数の振動検出部が設けられていても、その設置作業負担は少ない。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の振動検出装置において、前記連結部は、各振動検出部の相対位置が変化可能に各振動検出部を連結するものであることを特徴とするものである。
これによれば、各振動検出部の相対位置が変化可能であるため、様々な表面形状をもつ構造体の表面上の各振動検出地点に各振動検出部を適切に取り付けることができる。したがって、様々な表面形状をもつ構造体の振動特性の計測を行うことができる。
また、各振動検出部の相対位置が変化可能であれば、例えば、連結部を湾曲させたり折り曲げたりして、振動検出装置を小さくまとめることができ、可搬性の高い振動検出装置を実現できる。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の振動検出装置において、前記連結部は、前記間隔をあけて各振動検出部が固定されるシート状部材で構成されていることを特徴とするものである。
これによれば、各振動検出地点間の距離に応じた間隔をあけて各振動検出部を互いに連結する構成を容易に実現できる。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動検出装置において、前記振動特性は、振動インテンシティであることを特徴とするものである。
これによれば、2以上の特性計測地点における同時期の振動インテンシティの計測を、作業負担が少なく容易に実現することができる。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動検出装置において、前記連結部の少なくとも一部には、前記構造体に重なる表示面上に前記振動特性の演算結果を表示する表示手段が設けられていることを特徴とするものである。
これによれば、構造体の表面上における各特性計測地点の振動特性を、その構造体の表面を見ながらその場で確認することができる。特に、前記表示手段が、構造体の表面上における各特性計測地点に重なる表示面をもっていれば、構造体上の各特性計測地点と重なる位置に、対応する振動特性の演算結果を表示させることが可能となる。この場合、構造体の表面上のどの地点にどのような振動特性が表れているかを、その構造体の表面上で直接的に確認することができ、その構造体全体にわたる振動の伝わり方等を直感的に認識可能となる。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動検出装置と、前記振動検出装置の各振動検出部で検出された各振動検出地点の振動検出結果に基づいて、前記2以上の特性計測地点における振動特性を演算する演算処理を実行する演算装置とを有することを特徴とする振動特性計測システムである。
本発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動検出装置を用いて特性計測地点における振動特性が得られる振動特性計測システムを提供できる。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項6に記載の振動特性計測システムにおいて、前記振動検出装置として、請求項5に記載の振動検出装置を用い、前記演算装置は、前記構造体の表面に設置されたときの表示面上における前記2以上の特性計測地点と重なる位置に、対応する振動特性の演算結果を表示させる表示制御処理を実行することを特徴とするものである。
これによれば、構造体上の各特性計測地点と重なる位置に、対応する振動特性の演算結果を表示させるので、構造体の表面上のどの地点にどのような振動特性が表れているかを、その構造体の表面上で直接的に確認することができる。これにより、その構造体全体にわたる振動の伝わり方等を直感的に認識可能となる。
【0015】
また、請求項8の発明は、構造体の表面上における2以上の特性計測地点の振動特性を演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動検出部と、該構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて各振動検出部を互いに連結する連結部とを備えた振動検出装置を、前記構造体の表面に設置し、前記振動検出装置の各振動検出部で検出された各振動検出地点の振動検出結果に基づいて、前記2以上の特性計測地点における振動特性を演算することを特徴とする振動特性計測方法である。
本発明によれば、1つの振動検出装置だけで、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を実現できる。しかも、各振動検出部が、予め、構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて互いに連結されているため、本振動検出装置を構造体の表面に設置する際、個々の振動検出部をそれぞれの振動検出地点に位置させる作業が容易である。よって、多数の振動検出部が設けられていても、その設置作業負担は少ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を、作業負担が少なく実現可能であるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における振動インテンシティ計測システムの全体構成を示す模式図である。
図2】自動車の側面ボディにセンサーシートを設置した例を示す説明図である。
図3】実施形態における振動インテンシティの計測方法を説明するための説明図である。
図4】実施形態による振動インテンシティの計測結果と、従来の高価な振動センサを用いた振動インテンシティの計測結果とを比較する実験結果を示した図である。
図5】変形例における振動インテンシティ計測システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に適用した振動検出装置を構造体の表面上に設置して、構造体上の特性計測地点における振動特性を計測する振動特性計測システムとしての振動インテンシティ計測システムを例に挙げた一実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、計測する振動特性が、単位時間に単位幅を通過する振動エネルギー量を示す振動インテンシティである例であるが、1つの特性測定地点における振動特性を演算するために2つ以上の振動検出地点を必要とする振動特性であれば、本実施形態と同様である。
また、本実施形態の構造体は、自動車(フレーム、ボディ、エンジンなどの各種自動車パーツ)や家電製品など、振動特性を知りたい物体であればよい。
【0019】
図1は、本実施形態における振動インテンシティ計測システムの全体構成を示す模式図である。
本実施形態の振動インテンシティ計測システムは、主に、振動検出装置としてのセンサーシート1と、演算装置としてのノートブック型パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)10とから構成されており、これらの間は通信ケーブル11によってデータ通信可能に接続されている。
【0020】
本実施形態のセンサーシート1は、振動インテンシティを計測する構造体の表面に設置され、その構造体上の特性計測地点における振動インテンシティを得るための振動を検出するものである。例えば、自動車のボディの振動インテンシティを計測する場合には、図2に示すように、自動車のボディ表面にセンサーシート1を設置する。
【0021】
本実施形態におけるセンサーシート1は、柔軟なシート状部材からなるシート基材3のシート面上に、多数の振動検出部としての振動センサ2が分散配置されたものである。この柔軟なシート基材3により、各振動センサ2は互いの相対位置が変化可能に連結されている。これにより、様々な表面形状をもつ構造体に対し、シート基材3が湾曲することで互いの相対位置を変化させて、様々な形状の表面上における各振動検出地点に各振動センサ2が適切に接触させる。よって、本実施形態のセンサーシート1によれば、自動車の特定箇所(図2に示すような側面ボディ)だけでなく、その箇所とは表面形状が異なる自動車のボンネットや天井ボディあるいは自動車とは異なる電化製品(冷蔵庫など)などの振動インテンシティの計測にも、同じセンサーシート1を用いることができる。
【0022】
本実施形態のシート基材3は、例えば、布地や、薄肉のポリプロピレンフィルムなどを用いることができるが、本実施形態ではポリプロピレンフィルムを採用している。なお、各振動センサ2を互いの相対位置が変化可能に連結されていれば、可動部を備えた高剛性部材(例えば鎖状のもの)で振動センサ2の間を連結するような構成を採用してもよい。また、本実施形態のセンサーシート1のように、各振動センサ2を互いの相対位置が変化可能に連結されていれば、そのシート基材3を丸めたり折り曲げたりして小さくまとめることができる。よって、可搬性の高いセンサーシート1を実現できる。ただし、必ずしも各振動センサ2を互いの相対位置が変化可能に連結する必要はなく、構造体の表面が予め決められた表面形状(平面、曲率の決まった曲面など)である場合には、その表面に各振動センサ2が適切に接触できる固定形状の非柔軟性部材もしくは高剛性部材でシート基材3を構成してもよい。
【0023】
また、シート基材3は、これを構造体の表面に設置しても構造体に伝わる振動への影響を極力小さくするために、できるだけ軽量のものが好ましい。
【0024】
また、本実施形態のセンサーシート1は、構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に応じた間隔をあけてシート基材3のシート面上に固定されている。これにより、センサーシート1のシート面全体が構造体の表面に接触するようにセンサーシート1を設置するという作業を行うだけで、各振動センサ2は各振動検出地点間の距離を開けて構造体の表面上に設置され、各振動検出地点にそれぞれ位置決めされる。したがって、その設置作業が非常に簡便である。
【0025】
なお、本実施形態では、各振動センサ2をシート基材3により互いに連結する構成を採用しているが、各振動センサ2を互いに連結する連結部はこれに限られない。例えば、各振動センサ2をワイヤー等によって互いに連結して網目状の振動検出装置などであってもよい。
【0026】
各振動センサ2は、構造体の表面上における特性計測地点の振動インテンシティを演算するために必要な各振動検出地点の振動を検出するものであり、その構造体の表面上における振動検出地点の変位、速度、加速度等を検出できるものであればよい。したがって、これらの振動センサ2としては、公知の圧力センサや加速度センサなどを用いることができ、特にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型の加速度センサは、比較的低精度であるものの安価であり、好適に利用できる。
【0027】
本実施形態の振動インテンシティ計測システムは、構造体の表面上の広範囲の振動インテンシティを全体的に概観することで、その構造体の広範囲にわたる振動伝達経路(振動エネルギーの流れ方)を把握するものである。この場合、従来のように個々の特性計測地点において高い精度の振動インテンシティを得ることより、精度が低くても、狭い特性計測地点間隔で多数の特性計測地点の振動インテンシティを得ることの方が重要である。特に、本実施形態のように構造体上の広範囲にわたる振動インテンシティを計測する場合には、広範囲の振動インテンシティを全体的に概観することが重要であり、少数の特性計測地点(間隔が広い特性計測地点)において高い精度の振動インテンシティを得るよりも、多数の特性計測地点(間隔が狭い特性計測地点)において低い精度の振動インテンシティを得る方が、構造体の広範囲にわたる振動伝達経路(振動エネルギーの流れ方)を適切に把握するうえでも、コストの面でもメリットが大きい。したがって、振動センサ2としては、比較的低精度でも安価なセンサが好ましく、これを密に配置することが好ましい。
【0028】
本実施形態におけるセンサーシート1は、構造体の表面上における2以上の特性計測地点の振動インテンシティを演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動センサ2を備える。本実施形態では、振動インテンシティの計測方法として、後述する4点法を採用するため、1つの特性計測地点の振動インテンシティを演算するためには4つの振動検出地点が必要であり、2つ以上の特性計測地点の振動インテンシティを演算するためには少なくとも5つ以上の振動検出地点が必要である。したがって、振動インテンシティの計測方法として4点法を採用する本実施形態では、少なくとも5つ以上の振動センサ2がセンサーシート1上に搭載される。
【0029】
センサーシート1を構造体の表面上に設置し、その構造体の表面上の振動検出地点の振動を各振動センサ2によって検知した結果は、センサーシート1から通信ケーブル11を介してパソコン10に送られる。パソコン10は、メモリ等の記憶部に記憶された計測プログラムをCPU等の演算処理部が実行することで、センサーシート1から受信した各振動検出地点の振動検出結果から、各特性計測地点における振動インテンシティ(ベクトル量)を演算し、その演算結果をモニター12に表示させる。本実施形態の計測プログラムは、通信ケーブル11からのデータ入力、FFT演算、振動インテンシティの演算、表示処理の順に処理する。
【0030】
図3は、本実施形態における振動インテンシティの計測方法を説明するための説明図である。
本実施形態では、振動インテンシティの計測方法として4点法を採用する。具体的には、図3に示すように、構造体の表面上における4つの振動検出地点にそれぞれ設置されるセンサーシート1上の4つの振動センサ2A,2B,2C,2Dの振動検出結果を用い、振動センサ2A,2Bを通るx軸と振動センサ2C,2Dを通るy軸との交点(特性計測地点)における振動インテンシティを演算する。
【0031】
ここで、当該特性計測地点(交点)における振動インテンシティのx軸方向成分は、下記の式(1)より求めることができる。下記の式(1)中の「ω」は角振動数を表し、「Q」はせん断力を表し、「ζ」は曲げ変位を表し、「M」は曲げモーメントを表し、「θ」は角変位を表し、「Re」は実部を表し、「j」は複素単位を表し、「*」は複素共役を表す。なお、曲げ変位ζは2つの振動センサ2A,2Bで検出された曲げ変位ζ,ζの平均値を用いる。また、角変位θは、∂ζ/∂xより得られるが、ここでは有限差分で近似した結果を用いる。
【0032】
【数1】
【0033】
特性計測地点(交点)における振動インテンシティのy軸方向成分も、x軸方向成分と同様の方法を用いて、2つの振動センサ2C,2Dの検出結果から算出する。
このようにして、振動インテンシティのx軸方向成分とy軸方向成分が算出されることで、その特性計測地点(交点)における振動インテンシティの大きさと向きを示すベクトル量を得ることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態の振動インテンシティ計測システムに用いられるセンサーシート1は、構造体上の2以上の特性計測地点についての同時期の振動インテンシティを容易に計測可能とするものである。
本発明者らは、研究の結果、構造体上の2以上の特性計測地点における振動インテンシティ等の振動特性を計測する場合、個々の特性計測地点において高い精度の振動特性を得ることより、精度が低くても、より多くの特性計測地点の振動特性を得ることの方が重要であるという知見を得た。特に、構造体上の広範囲にわたる振動特性を計測する場合、広範囲の振動特性を全体的に概観することが重要であり、少数の特性計測地点において高い精度の振動特性を得るよりも、多数の特性計測地点において低い精度の振動特性を得る方のメリットが大きい。
【0035】
本センサーシート1等の本発明に係る振動検出装置は、このような知見に基づき、特性計測地点の振動特性を得るための振動を検出する振動検出部として比較的精度の低い安価なものを用いることができるという新たな着眼点を得てなされたもので、2以上の特性計測地点における振動特性を演算するために必要な振動検出地点の数以上の振動検出部を設けたものである。これにより、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を安価な振動検出装置によって行うことができるようになるため、経済的な負担が少なく、その実現が容易となる。
【0036】
しかも、各振動検出部が、構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて互いに連結されているため、本振動検出装置を構造体の表面に設置する際、個々の振動検出部をそれぞれの振動検出地点に位置させる作業が容易である。よって、多数の振動検出部が設けられていても、その設置作業負担は少ない。
【0037】
図4は、安価な振動センサ2を用いた本実施形態のセンサーシート1における振動インテンシティの計測結果と、従来の高価な振動センサを用いた振動インテンシティの計測結果とを比較する実験結果を示す図である。
なお、図4は、横軸に構造体の表面上におけるx軸方向位置をとり、縦軸に構造体の表面上におけるy軸方向位置をとり、構造体の表面上の各特性計測地点における振動インテンシティ(ベクトル量)を矢印で示したものである。図4中の各矢印の始端が特性計測地点である。
【0038】
構造体には、320mm×70mmで厚さ2mmのアクリル平板を使用し、アクリル平板の長手方向一端部の中央Pを加振器にて1kHzまでランダムに加振した。アクリル平板の長手方向他端部はフリーである。
【0039】
本実施形態のセンサーシート1には、安価なMEMS型加速度センサからなる振動センサ2を4個×4個の格子状に配置し、そのセンサーシート1をアクリル平板の一方の面上に貼り付け、図4に示す9つの特性計測地点における振動インテンシティを計測した。各特性計測地点における振動インテンシティ(図4中実線)は、各特性計測地点の四方に隣接する4つの振動センサ2の振動検出結果からそれぞれ演算した。
【0040】
一方、従来の高価な振動センサを用いた振動インテンシティの計測では、単一の振動センサを用い、センサーシート1が貼り付けられた面とは反対側の面上の振動検出地点に振動センサを設置して振動検出を行ったら次の振動検出地点に振動センサを移動させて振動検出を行うという作業を繰り返した。これにより、センサーシート1上に搭載されている16個の振動センサ2の裏面に対応する16箇所の振動を単一の振動センサで順次検出し、その検出結果から、本実施形態のセンサーシート1が計測した9つの特性計測地点と同じ地点における振動インテンシティ(図4中破線)をそれぞれ演算した。
【0041】
この実験結果によれば、いずれの加振周波数でも、両者の振動インテンシティの計測結果は、その大きさや向きに多少のズレはあるものの、ほぼ同じ傾向が得られた。その結果、本実施形態のセンサーシート1のように安価な振動センサ2を用いた場合、高価な振動センサの計測結果ほど高精度な振動インテンシティの計測は行えないが、構造体の表面上の振動インテンシティを全体的に概観するには十分であることが確認された。
【0042】
〔変形例〕
次に、本実施形態における振動インテンシティ計測システムの一変形例について説明する。
図5は、本変形例における振動インテンシティ計測システムの全体構成を示す模式図である。
本変形例の振動インテンシティ計測システムは、振動検出装置としてのセンサーシート1上に表示手段としての表示パネル20が設けられ、その表示パネル20の表示面22に振動インテンシティの計測結果を表示させる点で、上述した実施形態とは異なる。ただし、その他の点においては、上述した実施形態と同様であるため、以下の説明では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0043】
本変形例の振動インテンシティ計測システムは、主に、センサーシート1と、センサーシート1上に設けられる表示パネル20と、パソコン10とから構成されている。センサーシート1とパソコン10との間は通信ケーブル11によってデータ通信可能に接続され、表示パネル20とパソコン10との間は通信ケーブル21によってデータ通信可能に接続されている。本変形例においては、センサーシート1及び表示パネル20によって振動検出装置が構成される。
【0044】
本変形例のセンサーシート1は、上述した実施形態と同様のものであり、柔軟なシート基材3における構造体の表面と対面する側の面(センサ配置面)上に多数の振動センサ2が分散配置されている。本変形例では、このセンサーシート1のセンサ配置面とは反対側の面に表示パネル20が設けられている。
【0045】
本変形例の表示パネル20は、センサーシート1が構造体の表面上に設置されたときに、構造体の表面上における多数の特性計測地点が存在する計測領域の全域に重なるように設けられている。本変形例でも、様々な表面形状をもつ構造体の表面に対して各振動センサ2が適切に接触するように、各振動センサ2を連結するシート基材3が柔軟なものとなっているため、このセンサーシート1に重なるように配置される表示パネル20も柔軟性を有することが好ましい。すなわち、本変形例の表示パネル20としては、各振動センサ2の相対位置変化を阻害しないような構成であることが好ましい。このような表示パネル20としては、柔軟性のある液晶パネル、有機ELパネルなどが好適に利用できる。
【0046】
なお、本変形例は、計測領域の全域に重なるように表示パネル20を設けた例であるが、計測領域外のセンサーシート1上に表示パネル20を設ける場合には、必ずしも表示パネル20として柔軟なものを用いる必要はない。もちろん、各振動センサ2を連結するシート基材3が非柔軟材料あるいは高剛性材料で構成されている場合も、表示パネル20は柔軟なものである必要はない。
【0047】
本変形例においては、表示パネル20が設けられたセンサーシート1を構造体(図5の例では自動車の側面ボディ)の表面上に設置する。そして、その構造体の表面上の振動検出地点の振動を各振動センサ2によって検知した結果は、センサーシート1から通信ケーブル11を介してパソコン10に送られる。パソコン10では、上述した実施形態と同様、計測プログラムを実行することで、センサーシート1から受信した各振動検出地点の振動検出結果から、各特性計測地点における振動インテンシティ(ベクトル量)を演算し、その演算結果をモニター12に表示させる。
【0048】
更に、本変形例のパソコン10は、通信ケーブル21を介してセンサーシート1上の表示パネル20を制御し、構造体の表面上の特性計測地点と重なる表示面22上の各位置に、それぞれの特性計測地点に対応する振動インテンシティの演算結果を表示させる表示制御処理を実行する。これにより、本変形例においては、図5に示すように、構造体の表面上の特性計測地点における振動インテンシティの演算結果を示す矢印画像が、実際の特性計測地点に重なるように表示される。これにより、構造体の表面上のどの地点にどのような振動インテンシティが表れているかを、その構造体の表面上で直接的に確認することができ、その構造体全体にわたる振動の伝わり方等を直感的に認識することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 センサーシート
2 振動センサ
3 シート基材
10 パソコン
11 通信ケーブル
12 モニター
20 表示パネル
21 通信ケーブル
22 表示面
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2016年10月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の表面に設置され、該構造体の表面上における2以上の振動検出地点の振動検出結果から演算される1つの特性計測地点における振動特性を演算するための振動を検出する振動検出装置において、
以上である所定数の特性計測地点における前記振動特性を演算するために必要な振動検出地点の一部を特性計測地点間で共通化して、当該必要な振動検出地点の総数よりも少ない振動検出部により各振動検出地点の振動を検出し
前記構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて各振動検出部を連結部によって互いに連結することを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動検出装置において、
前記連結部は、各振動検出部の相対位置が変化可能に各振動検出部を連結するものであることを特徴とする振動検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の振動検出装置において、
前記連結部は、前記間隔をあけて各振動検出部が固定されるシート状部材で構成されていることを特徴とする振動検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動検出装置において、
前記振動特性は、振動インテンシティであることを特徴とする振動検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動検出装置において、
前記連結部の少なくとも一部には、前記構造体に重なる表示面上に前記振動特性の演算結果を表示する表示手段が設けられていることを特徴とする振動検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動検出装置と、
前記振動検出装置の各振動検出部で検出された各振動検出地点の振動検出結果に基づいて、前記2以上の特性計測地点における振動特性を演算する演算処理を実行する演算装置とを有することを特徴とする振動特性計測システム。
【請求項7】
請求項6に記載の振動特性計測システムにおいて、
前記振動検出装置として、請求項5に記載の振動検出装置を用い、
前記演算装置は、前記構造体の表面に設置されたときの表示面上における前記2以上の特性計測地点と重なる位置に、対応する振動特性の演算結果を表示させる表示制御処理を実行することを特徴とする振動特性計測システム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動検出装置を、前記構造体の表面に設置し、
前記振動検出装置の各振動検出部で検出された各振動検出地点の振動検出結果に基づいて、前記所定数の特性計測地点における振動特性を演算することを特徴とする振動特性計測方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、構造体の表面に設置され、該構造体の表面上における2以上の振動検出地点の振動検出結果から演算される1つの特性計測地点における振動特性を演算するための振動を検出する振動検出装置において、2以上である所定数の特性計測地点における前記振動特性を演算するために必要な振動検出地点の一部を特性計測地点間で共通化して、当該必要な振動検出地点の総数よりも少ない振動検出部により各振動検出地点の振動を検出し、前記構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて各振動検出部を連結部によって互いに連結することを特徴とするものである。
本発明によれば、1つの振動検出装置だけで、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を実現できる。
しかも、各振動検出部が、予め、構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて互いに連結されているため、本振動検出装置を構造体の表面に設置する際、個々の振動検出部をそれぞれの振動検出地点に位置させる作業が容易である。よって、多数の振動検出部が設けられていても、その設置作業負担は少ない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動検出装置を、前記構造体の表面に設置し、前記振動検出装置の各振動検出部で検出された各振動検出地点の振動検出結果に基づいて、前記所定数の特性計測地点における振動特性を演算することを特徴とする振動特性計測方法である。
本発明によれば、1つの振動検出装置だけで、2以上の特性計測地点における同時期の振動特性の計測を実現できる。しかも、各振動検出部が、予め、構造体の表面上における各振動検出地点間の距離に相当する間隔をあけて互いに連結されているため、本振動検出装置を構造体の表面に設置する際、個々の振動検出部をそれぞれの振動検出地点に位置させる作業が容易である。よって、多数の振動検出部が設けられていても、その設置作業負担は少ない。