【解決手段】ベースフィルム4と、ベースフィルム4上に積層されたバインダー樹脂2と、バインダー樹脂2に、所定の配列パターンで、規則的に分散配置された導電性粒子3とを備え、複数の導電性粒子3のうち、表面に痕が発生しているものが粒子数全体の30%以内である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された導電性接着フィルムの製造方法、導電性接着フィルム、接続体の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
[異方性導電フィルム]
本発明が適用された導電性接着フィルムは、接着剤となるバインダー樹脂中に導電性粒子が所定のパターンで均等に分散配置され、相対向する接続端子間に導電性粒子が挟持されることにより当該接続端子間の導通を図る異方性導電フィルム1として好適に用いられる。また、本発明が適用された導電性接着フィルムを用いた接続体としては、例えば、異方性導電フィルム1を用いてICやフレキシブル基板がCOG接続、FOB接続あるいはFOF接続された接続体、その他の接続体であって、テレビやPC、携帯電話、ゲーム機、オーディオ機器、タブレット端末あるいは車載用モニタ等のあらゆる機器に好適に用いることができる。
【0019】
異方性導電フィルム1は、熱硬化型あるいは紫外線等の光硬化型の接着剤であり、図示しない圧着ツールにより熱加圧されることにより流動化して導電性粒子が相対向する接続端子間で押し潰され、加熱あるいは紫外線照射により、導電性粒子が押し潰された状態で硬化する。これにより、異方性導電フィルム1は、ICやフレキシブル基板をガラス基板等の接続対象に電気的、機械的に接続する。
【0020】
異方性導電フィルム1は、例えば
図1に示すように、膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する通常のバインダー樹脂2(接着剤)に導電性粒子3が所定のパターンで配置されてなり、この熱硬化性接着材組成物が上下一対の第1、第2のベースフィルム4,5に支持されているものである。
【0021】
第1、第2のベースフィルム4,5は、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなる。
【0022】
バインダー樹脂2に含有される膜形成樹脂としては、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変形エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0023】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、市販のエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてアクリル化合物、液状アクリレート等を適宜選択することができる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。なお、アクリレートをメタクリレートにしたものを用いることもできる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
潜在性硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、加熱硬化型、UV硬化型等の各種硬化剤が挙げられる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、熱、光、加圧等の用途に応じて選択される各種のトリガにより活性化し、反応を開始する。熱活性型潜在性硬化剤の活性化方法には、加熱による解離反応などで活性種(カチオンやアニオン、ラジカル)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤を高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる溶出・硬化方法等が存在する。熱活性型潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミン塩、ジシアンジアミド等や、これらの変性物があり、これらは単独でも、2種以上の混合体であってもよい。中でも、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が好適である。
【0027】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。シランカップリング剤を添加することにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。
【0028】
[導電性粒子]
導電性粒子3としては、異方性導電フィルム1において使用されている公知の何れの導電性粒子を挙げることができる。導電性粒子3としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、或いは、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。
【0029】
異方性導電フィルム1は、後述するように、導電性粒子3が所定の配列パターンで規則的に配列され、導電性粒子の凝集による粗密の発生が防止されている。したがって、異方性導電フィルム1によれば、接続端子間の狭小化の進行によっても導電性粒子の凝集体による端子間ショートを防止することができ、また微小化された接続端子においても導電性粒子を捕捉することができ、高密度実装の要求に応えることができる。
【0030】
なお、異方性導電フィルム1の形状は、特に限定されないが、例えば、
図1に示すように、巻取リール6に巻回可能な長尺テープ形状とし、所定の長さだけカットして使用することができる。
【0031】
また、上述の実施の形態では、異方性導電フィルム1として、バインダー樹脂2に導電性粒子3を含有した熱硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形した接着フィルムを例に説明したが、本発明に係る接着剤は、これに限定されず、例えばバインダー樹脂2のみからなる絶縁性接着剤層と導電性粒子3を含有したバインダー樹脂2からなる導電性粒子含有層とを積層した構成とすることができる。
【0032】
[異方性導電フィルムの製造方法]
次いで、異方性導電フィルム1の製造方法について説明する。異方性導電フィルム1は、導電性粒子3を配線基板上に所定の配列パターンに整列させた後、バインダー樹脂層が設けられたフィルムによって導電性粒子3を転写することにより製造される。
【0033】
導電性粒子3を整列させる配線基板10は、
図2に示すように、絶縁基板11上に、導電性粒子3の配列パターンに応じて配線パターン12が形成されている。絶縁基板11は、ガラスエポキシ基板等の公知の各種絶縁基板を用いることができる。配線パターン12は、例えばCu配線により形成され、エッチングや印刷等の公知の手法で形成することができる。また、配線パターン12は、アースされ、帯電が防止されることで、導電性粒子3の磁気吸着が防止されている。
【0034】
また、配線パターン12は、異方性導電フィルム1のバインダー樹脂3に転写される導電性粒子3の配列パターンに応じたパターンで形成され、配線基板10は、後述するスキージ13によって導電性粒子3が配線パターン12の間に帯電付着される。そのため、配線パターン12の形状は、導電性粒子3の配列パターンに応じて規定され、例えば
図2に示すように、複数の直線状パターン12aが平行に配列されることにより、導電性粒子3が各直線状パターン12aの間隔に応じて均等に分散配置される。なお、各直線状パターン12aは、絶縁基板11の一側縁に沿って形成されたアース配線12bと連続し、このアース配線12bを介して接地されている。
【0035】
スキージ13は、配線基板10上を移動することにより、導電性粒子3を配線パターン12の間に帯電付着させ、配線パターン12に応じて整列させるものである。スキージ13は、配線基板10上を摺動する摺動辺13aに、所定間隔で複数の凹部14が形成されている。各凹部14は、スキージ13の移動に伴って導電性粒子3を通過させ、隣接する凹部間の間隔によって規定される所定の間隔に整列させる。
【0036】
配線基板10上に複数の直線状パターン12aを所定間隔で平行に形成するとともに、所定間隔で複数の凹部14が形成されたスキージ13を用いることにより、導電性粒子3は、スキージ13の移動方向に対しては直線状パターン12aの間隔で、またスキージ13の移動方向と直行する方向に対しては凹部14の間隔で均等に分散配置される。
【0037】
各凹部14は、
図3に示すように、幅Wと高さHが導電性粒子3の平均粒子径よりも大きく形成され、これにより導電性粒子3が通過可能とされている。また、凹部14は、導電性粒子3の平均粒子径の2倍より小さい幅で形成されることが好ましい。凹部14は、導電性粒子3の平均粒子径の2倍以上の幅を有すると、導電性粒子3を通過させても分散してしまい、粒子捕捉率が低下するおそれがあるからである。
【0038】
なお、スキージ13は、帯電が防止されることにより導電性粒子3の磁気吸着が防止されている。例えば、スキージ13は、Ni等の導電材料によって形成されるとともにアースされることにより帯電が防止されている。また、スキージ13は、帯電しにくい材料によって形成されることにより帯電を防止するようにしてもよい。また、このようなスキージ13は、エレクトロフォーミング法、その他の公知の微細加工技術を用いて形成することができる。
【0039】
導電性粒子3を配線基板10上に整列するには、先ず、配線パターン12が形成された配線基板10の一端に導電性粒子3を置く。次いで、配線基板10の一端側から他端側へ、静電気発生器15を移動させ、導電性粒子3に電荷(例えばマイナスの電荷)を帯電させる(
図4、
図5)。
【0040】
静電気発生器15に続いてスキージ13を配線基板10の一端側から他端側へ摺動させる。これにより電荷を帯びた導電性粒子3が、スキージ13の凹部14を通過しながら直線状パターン12a間に帯電付着する。このとき、導電性粒子3は、スキージ13の移動方向に対しては直線状パターン12aの間隔で、またスキージ13の移動方向と直行する方向に対しては凹部14の間隔で配置される。
【0041】
そして、
図6(A)に示すように、スキージ13の移動方向を、直線状パターン12aの長手方向に対して90°の傾きθを有することにより、導電性粒子3は、配線基板10上に直線状パターン12a及び凹部14によって規定される所定の間隔で、格子状かつ均等に、分散配置される(
図6(B))。
【0042】
なお、配線パターン12及びスキージ13は、アースされる等により帯電が防止されているため、電荷が帯電された導電性粒子3が付着することなく、確実に直線状パターン12aの間に所定の間隔で分散配置される。
【0043】
配線基板10上に分散配置された導電性粒子3は、転写フィルムに転写される。転写フィルム20は、異方性導電フィルム1を構成する第1のベースフィルム4の一面に、上述したバインダー樹脂2が塗布されてフィルム状に成形されている。転写フィルム20は、バインダー樹脂2が塗布された面を配線基板10上に貼り合わされることにより、所定のパターンに配列された導電性粒子3を、バインダー樹脂2に当該パターンで転写することができる。
【0044】
このとき、
図6(C)に示すように、転写フィルム20は、長手方向をスキージの移動方向と平行とすることにより、長手方向に対して導電性粒子3が90°に配列し、導電性粒子3が格子状かつ均等に転写される(
図6(D))。
【0045】
導電性粒子3が転写された転写フィルム20は、異方性導電フィルム1を構成する第2のベースフィルム5によってラミネートされる(
図6(E))。第2のベースフィルム5は、転写フィルム20に転写された導電性粒子3をバインダー樹脂2に押し込み、位置決めを図るものである。第2のベースフィルム5は、剥離処理された面を転写フィルム20の導電性粒子3が転写された面に貼り合わされることにより、導電性粒子3を第1、第2のベースフィルム4,5に塗布されたバインダー樹脂2中に保持する。これにより、導電性粒子3を含有するバインダー樹脂2が上下一対の第1、第2のベースフィルム4,5に支持された異方性導電フィルム1が形成される。
【0046】
図6(F)に示すように、異方性導電フィルム1は、適宜、ラミネートロール21によって押圧されることにより、第2のベースフィルム5に塗布されたバインダー樹脂2側に押し込まれる。次いで、異方性導電フィルム1は、第1のベースフィルム4側から紫外線が照射される等により、バインダー樹脂2の導電性粒子3が押し込まれた面が硬化され、これにより導電性粒子3を転写されたパターンで固定されている。
【0047】
[接続体の製造工程]
異方性導電フィルム1は、ICやフレキシブル基板がCOG接続、FOB接続あるいはFOF接続された接続体等であって、テレビやPC、携帯電話、ゲーム機、オーディオ機器、タブレット端末あるいは車載用モニタ等のあらゆる電子機器に好適に用いることができる。
【0048】
図7に示すように、異方性導電フィルム1を介してICやフレキシブル基板が接続されるリジッド基板22は、複数の接続端子23が並列して形成されている。これら接続端子23は、高密度実装の要求から微小化、及び接続端子間の狭小化が図られている。
【0049】
異方性導電フィルム1は、実使用時には、幅方向のサイズを接続端子23のサイズに応じて切断された後、第1のベースフィルム4が剥離され、接続端子23の並列方向を長手方向として、複数の接続端子23上に貼り付けられる。次いで、接続端子23上には、異方性導電フィルム1を介してICやフレキシブル基板側の接続端子が搭載され、その上から図示しない圧着ツールにより熱加圧される。
【0050】
これにより異方性導電フィルム1は、バインダー樹脂2が軟化して導電性粒子3が相対向する接続端子間で押し潰され、加熱あるいは紫外線照射により、導電性粒子3が押し潰された状態で硬化する。これにより、異方性導電フィルム1は、ICやフレキシブル基板をガラス基板等の接続対象に電気的、機械的に接続する。
【0051】
ここで、異方性導電フィルム1は、長手方向にわたって導電性粒子3が格子状かつ均等に転写されている。したがって、異方性導電フィルム1は、微小化された接続端子23上にも確実に捕捉され、導通性を向上させることができ、また、狭小化された接続端子間においても導電性粒子3が連結することなく、隣接する端子間におけるショートを防止することができる。
【0052】
[第2の形態]
次いで、本発明が適用された異方性導電フィルムの第2の形態について説明する。なお、以下では上述した異方性導電フィルム1や配線基板10と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略する。
【0053】
図8に示す異方性導電フィルム30は、長手方向に対して導電性粒子3の配列が傾きを有するように形成されている。この異方性導電フィルム30は、長手方向に対して導電性粒子3の配列が傾きを有することにより、異方性導電フィルム1に比して、長手方向における導電性粒子3のピッチP1を狭小化することができる。したがって、異方性導電フィルム30は、接続端子23の並列方向を長手方向として貼り付けられた際に、微小化された接続端子23の幅方向の配列ピッチが狭小化されているため、当該接続端子23上における粒子捕捉率を向上させることができる。
【0054】
この異方性導電フィルム30は、配線基板10に形成された直線状パターン12aがスキージ13の移動方向に対して所定の角度θだけ傾きを有することにより、
図9(A)に示すように、直線状パターン12a間に沿って整列される導電性粒子3の配列A1、A2は、異方性導電フィルム30の長手方向L(スキージ13の移動方向)に対しても同様に傾きθを有する。
【0055】
図9(B)に、直線状パターン12aがスキージの移動方向に対して90°である異方性導電フィルム1における粒子配列A1、A2を示す。異方性導電フィルム1は、長手方向Lにおける導電性粒子3のピッチP2が、直線状パターン12aの間隔に対応している。すなわち、異方性導電フィルム1では、長手方向における導電性粒子3のピッチP2は、粒子配列A1、A2間の間隔P0によって規定される。
【0056】
一方、異方性導電フィルム30では、長手方向Lにおける導電性粒子3のピッチP1が、粒子配列A1上の導電性粒子3a,3b間、及び導電性粒子3bと粒子配列A2上の導電性粒子3c間の距離によって規定される。したがって、粒子配列A1、A2間の間隔P0が異方性導電フィルム1と同じとした場合、異方性導電フィルム30は、長手方向Lにおける導電性粒子3のピッチP1を異方性導電フィルム1に比して狭小化することができる。
【0057】
[異方性導電フィルム30の製造工程]
次いで、異方性導電フィルム30の製造工程について説明する。
図10(A)に示すように、配線基板10に複数の直線状パターン12aからなる配線パターン12を形成する。このとき、直線状パターン12aは、スキージ13の移動方向に対して所定の角度、例えば30°以上90°未満の角度の傾きθを有する。
【0058】
これにより、導電性粒子3は、配線基板10上に直線状パターン12aに沿った角度、及び凹部14の間隔によって規定される所定の間隔で、均等に分散配置される(
図10(B))。
【0059】
配線基板10上に分散配置された導電性粒子3は、転写フィルム20に転写される。転写フィルム20は、バインダー樹脂2が塗布された面を配線基板10上に貼り合わされることにより、所定のパターンに配列された導電性粒子3を、バインダー樹脂2に当該パターンで転写することができる。
【0060】
このとき、
図10(C)に示すように、転写フィルム20は、長手方向をスキージの移動方向と平行とすることにより、長手方向に対して導電性粒子3が直線状パターン12aの傾きに応じた所定の角度で配列される(
図10(D))。その後、上記異方性導電フィルム1と同様に、転写フィルム20に第2のベースフィルム5が貼り合わされることにより、異方性導電フィルム30を得る(
図10(E)(F))。
【0061】
異方性導電フィルム30は、実使用時には、第1のベースフィルム4が剥離され、接続端子23の並列方向を長手方向として、複数の接続端子23上に貼り付けられる(
図7、
図8)。次いで、接続端子23上には、異方性導電フィルム30を介してICやフレキシブル基板側の接続端子が搭載され、その上から図示しない圧着ツールにより熱加圧されることにより、ICやフレキシブル基板をガラス基板等の接続対象に電気的、機械的に接続する。
【0062】
ここで、異方性導電フィルム30は、長手方向に対して導電性粒子3が直線状パターン12aの傾きに応じた所定の角度で配列されている。したがって、異方性導電フィルム30は、異方性導電フィルム1に比して、長手方向における導電性粒子3のピッチPを狭小化することができる。そして、異方性導電フィルム30は、接続端子23の配列方向を長手方向をとして貼り付けられると、導電性粒子3の配列ピッチが微小化された接続端子23の幅方向に対して狭小化されているため、当該接続端子23上における粒子捕捉率を向上させることができる。
【0063】
[導電性粒子配列の角度]
なお、異方性導電フィルム30は、長手方向に対する導電性粒子3の配列角度が30°以上90°未満とすることが好ましい。30°未満とすると、導電性粒子3の配列方向における間隔が長くなり、かえって粒子捕捉率の低下を招くおそれが生じるからである。
【0064】
[ロール状基板]
また、配線基板は、板状に形成する他にも、
図11に示すように、ロール状に形成してもよい。ロール状基板30は、表面に配線パターン12が形成されるとともに、転写フィルム20のバインダー樹脂2が塗布された面上を転動する。そして、
図11(C)に示すように、ロール状基板30には、転動方向上流側において導電性粒子3が供給されるとともに電荷が帯電され、その後スキージ13が摺動されることにより、転写フィルム20と接触する前に導電性粒子3が配線パターン12に応じた所定のパターンに整列、帯電付着される。
【0065】
ロール状基板30を用いることにより、導電性粒子3の供給、帯電、スキージ13による導電性粒子3の整列、及び転写フィルム20への転写の一連の工程を繰り返し連続して行うことができ、製造効率を向上させることができる。
【0066】
なお、ロール状基板30においても、ロール表面に形成される配線パターン12の直線状パターン12aをロールの転動方向に対して90°の角度を有するようにすることで、長手方向に対して導電性粒子3が格子状かつ均等に転写される異方性導電フィルム1を形成することができる(
図11(A))。また、ロール状基板30は、直線状パターン12aをロールの転動方向に対して所定の傾き(例えば30°以上、90°未満)を有するようにすることで、異方性導電フィルム1に比して、長手方向における導電性粒子3のピッチPが狭小化された異方性導電フィルム30を形成することができる(
図11(B))。
【0067】
[凝集体の含有割合]
なお、上述したように、本発明によれば、スキージ13を配線基板10の一端側から他端側へ摺動させることにより電荷を帯びた導電性粒子3が、スキージ13の凹部14を通過しながら直線状パターン12a間に帯電付着する。このとき、導電性粒子3は、スキージ13の移動方向に対しては直線状パターン12aの間隔で、またスキージ13の移動方向と直行する方向に対しては凹部14の間隔で、均等に分散配置される。
【0068】
このとき、導電性粒子3が複数連結する凝集体は、全導電性粒子数の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%となる。凝集体の大きさは、最大でも導電性粒子の平均粒子径の8倍以下とすることが好ましく、より好ましくは5倍以下である。ここでいう凝集体の大きさとは、導電性粒子3が連結された凝集体の最大長も含む。
【0069】
[スキージとの摺接痕]
また、導電性粒子3は、スキージ13の凹部14を通過しながら直線状パターン12a間に帯電付着することから、スキージ13との摺接痕が発生する。例えば、導電性粒子3としてめっき粒子を用いた場合には、表面の一部が剥離し、あるいはめくれている。また導電性粒子3として金属粒子を用いた場合には、導電性粒子3の一部に変形が生じる場合もある。このような摺接痕は、導電性粒子3の表面積の5%以上に生じることにより、バインダー樹脂2の転写時や異方性導電フィルム1の熱加圧時等において導電性粒子3の流動が抑制される。また、摺接痕が発生した導電性粒子3が全体の30%以内であれば、導通性能に影響はないが、全導電性粒子数の15%以内とすることが好ましい。
【実施例】
【0070】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、製法の異なる複数の異方性導電フィルムを用意し、各異方性導電フィルムを用いてガラス基板上にICを接続した接続体サンプルを製造した。そして各接続体サンプルについて、導通抵抗(Ω)及び端子間のショート割合(ppm)を求めた。
【0071】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムは、バインダー樹脂として、
フェノキシ樹脂(YP‐50、新日鉄住金化学株式会社製) 60質量部
エポキシ樹脂(jER828 三菱化学株式会社製) 40質量部
カチオン系硬化剤(SI‐60L 三新化学工業株式会社製) 2質量部
を配合した樹脂組成物を用いた。
【0072】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムは、これら樹脂組成物をトルエンにて固形分50%になるように調整した混合溶液を作成し、厚さ50μmのPETフィルム上に塗布した後、80℃オーブンにて5分間乾燥した。これにより、厚さ20μmのバインダー樹脂2を有する異方性導電フィルムを得た。
【0073】
また、実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムは、導電性粒子として、AUL704(平均粒子径:4μm 積水化学工業株式会社製)を用いた。
【0074】
ガラス基板としては、ICチップのパターンに対応したアルミ配線パターンが形成されたガラス基板(商品名:1737F、コーニング社製、サイズ:50mm×30mm、厚さ:0.5mm)を用いた。このガラス基板上に、実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムを配置し、異方性導電フィルム上にICチップ(サイズ:1.5mm×13.0mm、厚さ:0.5mm、金バンプサイズ:25μm×140μm、バンプ高さ:15μm、ピッチ:7.5μm)を配置し、加熱押圧することにより、ICチップとアルミ配線パターンガラス基板とを接続した。圧着条件は、180℃、80MPa、5secとした。
【0075】
[実施例1]
実施例1では、導電性粒子を配線基板上に所定の配列パターンに整列させた後、バインダー樹脂層が設けられたフィルムによって導電性粒子を転写することにより製造した。実施例1に係る配線基板には、Cu配線によって複数の直線状パターンが平行に形成されるとともに、各直線状パターンはアースされ、帯電が防止されている。
【0076】
配線基板上を移動するスキージには、幅6μm高さ6μmの凹部が一定間隔で形成されている。また、スキージは、Niで形成されるとともにアースされることにより、帯電が防止されている。
【0077】
先ず、配線基板に導電性粒子を載置した後、配線基板の一端側から他端側へ、静電気発生器を移動させ、導電性粒子にマイナスの電荷を帯電させる。静電気発生器に続いてスキージを配線基板の一端側から他端側へ摺動させる。このとき、実施例1では、スキージの移動方向を、直線状パターンの長手方向に対して90°となるようにする。これにより、導電性粒子は、配線基板上に直線状パターン及び凹部によって規定される所定の間隔で、格子状かつ均等に、分散配置される(
図6(B)参照)。
【0078】
次いで、配線基板上に分散配置された導電性粒子を、上述したバインダー樹脂が塗布されたPETフィルムに転写する。このとき、PETフィルムは、長手方向をスキージの移動方向と平行とすることにより、長手方向にわたって、導電性粒子が格子状かつ均等に転写される(
図6(C)(D)参照)。
【0079】
最後に、導電性粒子が転写されたPETフィルムは、導電性粒子3が転写された面が、第2のPETフィルムによってラミネートされることにより、異方性導電フィルムを得た(
図6(E)(F)参照)。
【0080】
この異方性導電フィルムを、ガラス基板に形成されたアルミ配線パターンの接続端子の並列方向を長手方向として、複数の接続端子上に貼りつけた(
図7参照)。
【0081】
[実施例2]
実施例2では、スキージの凹部の幅を5μmとした他は、実施例1と同じ条件で異方性導電フィルムを得た。
【0082】
[実施例3]
実施例3では、スキージの凹部の幅を7μmとした他は、実施例1と同じ条件で異方性導電フィルムを得た。
【0083】
[実施例4]
実施例4では、スキージの凹部の幅を9μmとした他は、実施例1と同じ条件で異方性導電フィルムを得た。
【0084】
[実施例5]
実施例5では、スキージの移動方向を、直線状パターンの長手方向に対して30°の傾きを有するようにした。これにより、導電性粒子は、配線基板上に直線状パターンに沿った角度、及び凹部によって規定される所定の間隔で、分散配置される(
図10(B)参照)。なお、スキージの凹部寸法は実施例1と同じである。
【0085】
配線基板上に分散配置された導電性粒子は、PETフィルムに転写される。このとき、PETフィルムは、長手方向をスキージの移動方向と平行とすることにより、長手方向に対して導電性粒子が直線状パターンの傾きに応じた所定の角度で配列される(
図10(C)(D)参照)。その後、実施例1と同様に、PETフィルムに第2のPETフィルムが貼り合わされることにより、異方性導電フィルムを得た。
【0086】
[実施例6]
実施例6では、スキージの移動方向を、直線状パターンの長手方向に対して60°の傾きを有するようにした他は、実施例5と同じ条件で異方性導電フィルムを得た。
【0087】
[実施例7]
実施例7では、スキージの移動方向を、直線状パターンの長手方向に対して15°の傾きを有するようにした他は、実施例5と同じ条件で異方性導電フィルムを得た。
【0088】
[比較例1]
比較例1では、従来通りの製法で異方性導電フィルムを得た。すなわち、上述したバインダー樹脂中に導電性粒子を分散した樹脂組成物をPETフィルム上に塗布、乾燥することによりフィルム状に成形した異方性導電フィルムを得た。比較例1に係る異方性導電フィルムは、バインダー樹脂中に導電性粒子がランダムに配置されている。
【0089】
この異方性導電フィルムを、ガラス基板に形成されたアルミ配線パターンの接続端子の並列方向を長手方向として、複数の接続端子上に貼りつけた。
【0090】
[比較例2]
比較例2では、100μm無延伸共重合ポリプロピレンフィルム上にアクリルポリマーを塗布、乾燥することにより粘着剤層を形成した。この粘着材層上に導電性粒子を一面に充填し、エアーブローにより粘着剤に到達していない導電性粒子を排除することにより、充填率60%の単層導電性粒子層を形成した。
【0091】
次に、この導電性粒子が固定されたポリプロピレンフィルムを、試験用二軸延伸装置を用いて、135℃で、縦横共に10%/秒の比率で2.0倍まで延伸し、徐々に室温まで冷却し、配列シートを得た。
【0092】
次に、配列シートの導電性粒子側に、バインダー樹脂が塗布されたPETフィルム(転写フィルム)を重ね、60℃、0.3MPaの条件でラミネートを行って導電性粒子をバインダー樹脂に埋め込んだ後、ポリプロピレンフィルムと粘着剤を剥離した。その後、実施例1と同様に、PETフィルムに第2のPETフィルムが貼り合わされることにより、異方性導電フィルムを得た。
【0093】
この異方性導電フィルムを、ガラス基板に形成されたアルミ配線パターンの接続端子の並列方向を長手方向として、複数の接続端子上に貼りつけた。
【0094】
これら各実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムを用いてガラス基板上にICを接続した接続体サンプルを製造した。そして各接続体サンプルについて、導通抵抗(Ω)及び端子間のショート割合(ppm)を求めた。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、実施例1〜7は、いずれもICチップとガラス基板に形成された接続端子との間の導通抵抗が0.8Ω以下と低く、かつ端子間のショート割合も1ppm以下であった。
【0097】
一方、比較例1では、導通抵抗は0.2Ωと低いものの、端子間のショート割合が3000ppmと多かった。同様に、比較例2では、導通抵抗は0.2Ωと低いものの、端子間のショート割合が3000ppmと多かった。
【0098】
これは、実施例1〜7では、配線基板10に均等配置された導電性粒子3を転写することにより形成された異方性導電フィルムを用いているため、接続端子の微小化、及び接続端子間の狭小化に対しても、高い粒子捕捉率を維持し、かつ粒子の凝集が防止され狭小化された端子間における短絡を防止することができたことによる。
【0099】
一方、比較例1では、導電性粒子をバインダー樹脂中にランダムに分散させていることから、バインダー樹脂中に導電性粒子が密集する箇所や分散する箇所が生じ、狭小化された隣接端子間において導電性粒子が連結し、3000ppmと、端子間ショートが頻発した。
【0100】
また、比較例2においても、2軸延伸によって導電性粒子間を離す方法では、すべての導電性粒子が離間するわけではなく、複数個の導電性粒子が連結する粒子凝集が残存し、狭小化された隣接端子間における端子間ショートが300ppmで発生し、完全に防ぐことはできなかった。
【0101】
実施例1〜7を対比すると、スキージの凹部幅が2倍未満である実施例1〜3は、導通抵抗が0.2〜0.3(Ω)であるのに対し、2倍を超える実施例4では導通抵抗が2.0(Ω)と上がった。これは、導電性粒子が通過するスキージの凹部幅が広がることで粒子が分散して配列され、粒子捕捉率が若干低下したことによる。このことから、スキージの凹部幅は導電性粒子の平均粒子径の2倍未満とすることが好ましいことが分かる。
【0102】
また、スキージの移動方向が直線状パターンに対して所定の傾きを有する実施例5〜7のうち、傾きを30°及び60°とした実施例5及び実施例6においては、導通抵抗が0.1(Ω)となり、スキージの移動方向を直線状パターンに対して90°とした実施例1〜4よりも下がった。これは導電性粒子の配列が異方性導電フィルムの長手方向に対して所定の傾きを有しているため、接続端子の並列方向に沿って異方性導電フィルムを貼り付けると、接続端子の幅方向における粒子ピッチが狭小化され、微小化された接続端子においても多くの粒子が捕捉されたことによる。
【0103】
なお、実施例7では傾きを15°としたことにより、異方性導電フィルムの粒子配列上における粒子ピッチが開いたことから、接続端子の長手方向における粒子捕捉率が低下し、0.8(Ω)と若干導通抵抗が上がった。このことから、スキージの移動方向は、直線状パターンに対して30°以上とすることが好ましいことが分かる。