【課題】リレーの劣化を抑制することができるとともに、迅速且つ電気的特性への影響を抑えた状態でケーブルの接続確認つまりは電動車両との接続確認をすることができる充放電装置を提供する。
【解決手段】実施形態の充放電装置1は、充放電を開始する開始時期になると、車両3に対して接続確認用のダミー通信を行い、当該ダミー通信を行った際の信号線(CAN−H)の電圧と予め定められている基準電圧(Vthd)との比較結果に基づいて、ケーブル5が接続されているか否かを判定する接続判定部10aと、ケーブル5が接続されていると判定すると、リレーd1、d2をオンして充放電を開始する制御部10と、を備える。
前記接続判定部は、前記ケーブルが接続されていないと判定した場合、前記ダミー通信および前記信号線の電圧の検出を再度行い、前記ケーブルが接続されているか否かの判定を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の充放電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、充放電を開始する開始時期をタイマ等から取得して自動的に充放電を開始する充放電装置の場合、リレーの劣化以外にも考慮すべき要因が存在する。
例えば、自動的に充放電を開始する場合には、充放電が完了する完了時期を予め想定し、その完了時期までに充放電が完了するように開始時期が設定されていると考えられる。そのため、ケーブルが接続されていないときに再確認する際の周期が長くなると、完了時期までに充放電が完了しなくなるおそれがある。このため、ケーブルの接続確認および再確認が迅速に行われることが必要となる。
【0007】
また、充放電装置は、車種が異なっていても充放電できるように、予め定められた規格に基づいて設計されている。そのため、規格に定められていない回路構成をケーブルの接続確認のために単純に追加してしまうと、その回路構成に対応していない電動車両の場合には充放電を行うことができなくなる。また、回路構成を追加した場合には、電力線や信号線の電気的特性が変化する可能性があることから、規格に対応している電動車両であっても、電気的特性が変化したことによってケーブルが接続されていないと誤判定されてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、リレーの劣化を抑制することができるとともに、迅速且つ電気的特性への影響を抑えた状態でケーブルの接続確認つまりは電動車両との接続確認をすることができる充放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明では、時刻を取得するタイマと、充放電を行う際にオンされるリレーと、電動車両との間で車載LANの規格で通信を行う通信部と、充放電を開始する開始時期になると、電動車両に対して接続確認用のダミー通信を行い、当該ダミー通信を行った際の信号線の電圧と予め定められている基準電圧との比較結果に基づいて、ケーブルが接続されているか否かを判定する接続判定部と、ケーブルが接続されていると判定すると、リレーをオンして充放電を開始する制御部と、を備える。
【0010】
充放電を開始する開始時期をタイマから取得して自動的に充放電を開始する場合、充放電の開始時期が、例えば電気料金が相対的に安くなる深夜等に設定されることがある。その場合、充放電装置の傍にユーザが居ない可能性が高いと考えられる。そして、ユーザが傍に居る場合にはケーブルの接続を直ぐに確認できるため、リレーをオン/オフする回数、つまりは、ケーブルの接続確認を行う試行回数は、1、2回程度で済むと考えられる。
【0011】
しかし、充放電装置の傍にユーザが居ない場合には、ケーブルが正しく接続されていない状況では接続確認が繰り返されて試行回数が増加してしまうおそれがある。その結果、リレーの劣化が促進されてしまうおそれがある。そのため、自動的に充放電を開始する充放電装置の場合には、まず、リレーの劣化を抑制する必要がある。なお、ケーブルが接続されていない状況とは、ケーブルが正しく接続されていない状況だけで無く、例えば開始時刻までに帰宅することができずに電動車両がそもそも存在していないような状況も含んでいる。
【0012】
そこで、充放電装置は、電動車両に対して接続確認用のダミー通信を行い、当該ダミー通信を行った際の信号線の電圧と予め定められている基準電圧との比較結果に基づいてケーブルが接続されているか否かを判定する接続判定部を備えている。これにより、リレーをオンすること無く、ケーブルの接続確認を行うことができ、リレーの劣化を抑制することができる。
【0013】
また、充放電装置は、車種が異なっていても充放電できるように、予め定められた規格に基づいて設計されていることがほとんどであると考えられる。その場合、規格に定められていない回路等の構成部品を単純に追加してしまうと、その構成部品に対応していない電動車両には充放電ができなくなる可能性がある。また、構成部品を追加した場合には、電力線や信号線の電気的特性が変化する可能性があることから、規格に対応している電動車両にケーブルを接続しても、電気的特性の変化によってケーブルが接続されていないと誤判定されてしまうおそれがある。
【0014】
そのため、充放電装置は、車載LANの規格で通信を行う通信部の信号線の電圧を検出する。例えば自動車に広く用いられているCAN(Controller Area Network。(登録商標))のような車載LANは、エンジンやモータ等からのノイズにも対処できるように耐ノイズ性が強化されている。そのため、信号線をアナログ入力回路に接続する回路構成、つまりは、充放電装置の本来の規格には無い回路構成を追加したとしても、充放電機能にはほぼ影響を与えることがない状態で、ケーブルの接続確認を行うことができる。
【0015】
この場合、充放電装置の充放電機能に与える影響がほぼ無いことから、車種が異なる電動車両であっても、また、いわゆる充電スタンドのように多数の電動車両によって利用される場合であっても、正常な充放電を担保することができる。このとき、充放電装置は、ダミー通信と信号線の電圧の比較とによってケーブルの接続状態を判定している。そのため、ケーブルの接続確認に要する時間は、ほぼ制御部での処理時間となり、ごく短時間で迅速にケーブルの接続確認を行うことができる。
したがって、リレーの劣化を抑制することができるとともに、迅速且つ電気的特性への影響を抑えた状態でケーブルの接続確認つまりは電動車両との接続確認を行うことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、ケーブルが接続されていないと判定した場合、ダミー通信および信号線の電圧の検出を再度行い、ケーブルが接続されているか否かの判定を繰り返す。自動的に充放電を開始する場合には、充放電が完了する完了時期を予め想定し、その完了時期までに充放電が完了するように開始時期が設定されていると考えられる。この場合、ケーブルが接続されていないと判定した際に再確認を行うまでの時間が長くなると、完了時期までに充放電が完了しなくなってしま、ユーザに大きなデメリットを与えてしまうおそれがある。このため、ケーブルの接続の再確認は、迅速に行う必要がある。
【0017】
そこで、充放電装置は、ケーブルが接続されていないと判定した場合には、ダミー通信と信号線の電圧の比較とによってケーブルの接続を判定する。このとき、上記したようにケーブルの接続確認はごく短時間で済むため、再確認までに要する時間もほぼ制御部の処理時間だけとなる。したがって、ごく短時間で再確認を行うことができる。したがって、接続確認だけでなく、再確認までに要する時間もごく短時間とすることができる。
【0018】
また、接続確認および再確認を迅速に行うことができるため、ケーブルが接続されれば直ぐに充放電を開始することができ、完了時期までの残り時間つまりは充放電を行うことができる充放電可能時間が減少することを抑制でき、ユーザにデメリットを与えるおそれを低減することができる。
【0019】
請求項3に記載した発明では、信号線の電圧は、制御部に内蔵されているアナログ入力回路に入力され、接続判定部は、アナログ入力回路に入力された電圧と基準電圧と比較することにより、電動車両との間がケーブルで接続されているか否かを判定する。これにより、ケーブルの接続確認のために追加部品を設ける必要が無くなり、接続機能を実装する際のコストを低減することができる。
【0020】
請求項4に記載した発明では、アナログ入力回路に対してアナログ信号を出力するセンサと、信号線の電圧をセンサから出力されるセンサ信号にアナログ的に重畳させる重畳回路とを備え、接続判定部は、重畳回路から出力された電圧と、センサ信号をベースに基準電圧を加味した電圧とを比較することにより、電動車両との間がケーブルで接続されているか否かを判定する。これにより、アナログ入力回路のチャンネル数が少なく、あるは足らず、検出信号に専用の入力ピンを割り当てられない場合であっても、センサ信号に重畳させてアナログ入力回路に入力することにより、ケーブルの接続確認や再確認を行うことができる。
【0021】
請求項5に記載した発明では、信号線の電圧と基準電圧と比較し、その比較結果をデジタル信号として出力する比較回路を有し、比較回路は、制御部に内蔵されているデジタル入力回路に接続され、接続判定部は、デジタル入力回路に入力されたデジタル信号に基づいて、電動車両との間がケーブルで接続されているか否かを判定する。
このように、制御部の外部で検出信号と基準電圧とを比較する構成であっても、その比較結果を制御部に入力することによって、リレーの劣化を抑制することができるとともに、迅速且つ電気的特性への影響を抑えた状態で、電動車両との間がケーブルで接続されているか否かを判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付して説明する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図1から
図4を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、充放電装置1は、例えば一般家庭の商用電源等の交流電源2に接続されており、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の車両3(電動車両に相当する)のバッテリBへの電力の供給が可能となっている。また、充放電装置1は、例えば一般家庭の家電製品等の負荷4に接続されており、車両3のバッテリBから負荷4への電力の供給が可能となっている。以下、車両3のバッテリBへの電力の供給を充電と称し、車両3のバッテリBから負荷4への電力の供給を放電と称する。また、車両3への充電および車両3からの放電を、便宜的に充放電と称する。
【0025】
この充放電装置1は、交流電源2および負荷4と車両3との間に介在し、交流電源2から車両3への電力の供給、ならびに、車両3から負荷4への電力の供給を制御する。この充放電装置1は、電力を供給する際には、車両3との間がケーブル5によって接続される。このケーブル5には、電力を供給するための電力線や、通信を行うための信号線が収容されている。また、ケーブル5には、図示は省略するが、充放電装置1および車両3側のそれぞれに接続状態を維持するためのコネクタをロックするロック機構が設けられている。このロック機構は、制御部10からの制御によってコネクタのロック/ロック解除が可能となっている。
【0026】
充放電装置1は、制御部10、充放電回路11、CAN回路12、センサ13、空調ファン14、記憶部15およびタイマ16等を備えている。制御部10は、図示しないCPU、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータで構成されており、記憶部15等に記憶されているプログラムを実行することにより、充放電装置1を制御する。
【0027】
この制御部10は、接続判定部10a、デジタル入力回路10b、およびアナログ入力回路10c等を備えている。接続判定部10aは、詳細は後述するが、充放電を開始する開始時期になると、接続確認用のダミー通信を行い、ダミー通信を行った際の信号線(CAN−H)の電圧と予め定められている基準電圧と比較することにより、ケーブル5が接続されているか否かを判定する。
【0028】
デジタル入力回路10bは、制御部10の外部からのデジタル信号が入力される。アナログ入力回路10cは、制御部10の外部からのアナログ信号が入力される。本実施形態では、デジタル入力回路10bおよびアナログ入力回路10cは、複数チャンネルの信号を入力可能となっている。
【0029】
充放電回路11は、車両3との間で充放電を行うための回路である。この充放電回路11は、以下の制御シーケンスに基づいて基本的に作動する。充放電回路11のリレーd1およびリレーd2がオンされると、そのリレーd1、d2がオンされたことを、車両3側にて検知する。そして、車両3側のECU等が起動し、充放電装置1と車両3との間で、車載LANの規格による通信、本実施形態ではCANによる通信が行われる。そして、通信が正常に行われていることが確認されると、実際の充放電が開始される。なお、ケーブル5、ケーブル5が接続される充放電装置1側の端子5aや車両3側の端子5b、あるいは上記した制御シーケンス等、ならびに、車両3側に設けられている充放電回路20の回路構成等は、規格化されたものであってもよい。
【0030】
CAN回路12は、車両3側のCAN回路21との間でCAN通信を行う。CAN回路12は、通信部に相当する。なお、CANは自動車等向けに広く利用されている規格であるので、ここでは詳細な説明は省略するが、
図1にCAN−H、CAN−Lとして示す2本の信号線を用いた作動信号で通信する方式であり、エンジンやモータ等からのノイズにも対処できるように耐ノイズ性が強化されたものとなっている。
【0031】
これらCAN−HおよびCAN−Lの信号線間には、充放電装置1側には終端抵抗R1が設けられており、車両3側には終端抵抗R2が設けられている。この終端抵抗R1、R2によって、ケーブル5で接続された際のインピーダンスマッチングが取られている。そして、CAN−Hの信号線は、制御部10のアナログ入力回路10cに接続されている。つまり、CAN−Hの信号線の電圧を示す検出信号は、制御部10にて取得可能となっている。
【0032】
センサ13は、充放電装置1の環境情報、例えば充放電装置1内あるいは充放電装置1が設置されている場所の温度や湿度等の環境情報を取得する。本実施形態では、センサ13は、サーミスタで構成されており、充放電装置1内の温度を測定している。センサ13の出力は、センサ信号として制御部10が内蔵するアナログ入力回路10cに入力される。
【0033】
空調ファン14は、センサ13で測定した温度に基づいて駆動され、充放電装置1の内外で空気を循環させる。この空調ファン14は、充放電装置1が屋外に設置されている場合には、気温や日照条件によって充放電装置1内の温度が上昇した場合等に備えるために設けられている。
記憶部15は、制御部10で実行するプログラムや、後述する充放電を開始する開始時期や充放電を完了させる完了時期等、各種のデータを記憶している。
【0034】
タイマ16は、いわゆるリアルタイムクロックで構成されており、日付や時刻が取得可能となっている。本実施形態の場合、制御部10は、タイマ16から取得した時刻が記憶部15に記憶されている開始時期になると、充放電を開始する。なお、制御部10がタイマ機能を内蔵している場合には、内蔵のタイマ機能をタイマ16として用いてもよい。
【0035】
次に、上記した構成の作用について説明する。
さて、充放電を開始する開始時期をタイマ16から取得して自動的に充放電を開始する充放電装置1の場合、充放電の開始時期が、例えば電気料金が相対的に安くなる深夜等に設定されることがあるためである。この場合、充放電装置1の傍にユーザが居ない可能性が高いと考えられる。そして、ユーザが傍に居る場合にはケーブル5の接続を直ぐに確認できるため、リレーd1、d2をオン/オフする回数、つまりは、ケーブル5の接続確認を行う試行回数は、1、2回程度で済むと考えられる。
【0036】
しかし、充放電装置1の傍にユーザが居ない場合には、ケーブル5が正しく接続されていなければケーブル5の接続確認が繰り返されて試行回数が増加してしまうおそれがある。その結果、リレーd1、d2の劣化が促進されてしまうおそれがある。そのため、自動的に充放電を開始する充放電装置1の場合には、まず、リレーd1、d2の劣化を抑制する必要がある。
【0037】
また、そのような充放電装置1においては、リレーd1、d2の劣化以外にも考慮すべき要因が存在する。すなわち、自動的に充放電を開始する場合には、充放電が完了する完了時期を予め想定し、その完了時期までに充放電が完了するように開始時期が設定されていると考えられる。この場合、ケーブル5が接続されていないと判定した際に再確認を行うまでの時間が長くなると、完了時期までに充放電が完了しなくなってしまうおそれがある。このため、ケーブル5の接続確認および再確認は、迅速に行う必要がある。
【0038】
さらに、充放電装置1は、車種が異なっていても充放電できるように、予め定められた規格に基づいて設計されている。そのため、規格に定められていない回路等の構成部品を接続確認用に単純に追加してしまうと、その構成部品に対応していない車両3の場合には充放電を行うことができなくなる。また、構成部品を追加した場合には、電力線や信号線の電気的特性が変化する可能性があることから、規格に対応している車両3であっても、電気的特性が変化したことによってケーブル5が接続されていないと誤判定されてしまうおそれがある。
【0039】
このため、ケーブル5の接続確認用の構成部品は、電気的特性に影響を与えないか、あるいは、電気的特性が変化する場合であっても、十分に余裕を持って規格に対応できることが求められる。
そこで、本実施形態では、以下のように、リレーd1、d2の劣化を抑制しつつも、電気的特性への影響を抑えた状態で、ケーブル5の接続確認および再確認を迅速に行えるようにしている。
充放電装置1は、常時あるいは比較的短い周期にてタイマ16から時刻を取得しており、充放電を開始する開始時期になると、
図2に示す処理を開始する。
【0040】
充放電装置1は、まず、接続確認用のダミー通信を行う(S1)。このダミー通信は、CAN通信によって行われる。
図3に示すように、時刻t0においてCAN通信を行ったとすると、CAN−Hの信号線の電圧が変化する。より具体的には、ケーブル5が正しく接続されている場合には、車両3側の終端抵抗R2が機能することから、CAN−Hの信号線の電圧は、
図3に実線にて示す「車両接続時」のような正常値(Vn)を示すことになる。
【0041】
これに対して、ケーブル5が正しく接続されていない場合、あるいは、車両3が存在せずにそもそもケーブル5が接続されていない場合には、車両3側の終端抵抗R2が機能しないことから、CAN−Hの信号線の電圧は、
図3に破線にて示す「車両未接続時」のように、正常値(Vn)よりも高いエラー値(Ve)を示すことになる。
【0042】
このとき、正常値(Vn)とエラー値(Ve)との間に閾値としての基準電圧(Vthd)を設定することにより、ケーブル5が正しく接続されているか否かを判定することができると考えられる。なお、ケーブル5が正しく接続されていない場合とは、上記したようにそもそもケーブル5が接続されていない場合も含んでいる。
【0043】
そのため、ダミー通信を行うと、充放電装置1は、アナログ入力回路10cに入力されているCAN−Hの信号線の電圧を入力電圧として取得し(S2)、取得した入力電圧が基準電圧(Vthd)未満であるかを判定する(S3)。充放電装置1は、入力電圧が基準電圧(Vthd)以上であると判定した場合には(S3:NO)、ケーブル5が接続されていないとして、ステップS1に移行してダミー通信を再度開始する。
【0044】
つまり、充放電装置1は、リレーd1、d2をオンすること無くケーブル5が接続されているか否かの判定を行うとともに、ケーブル5が接続されていないと判定した場合には、ケーブル5の接続確認を繰り返す。このとき、ケーブル5の接続確認は、ダミー通信と入力電圧の比較とにより行われるため、制御部10の処理に要するごく短時間で迅速に接続確認を実行することができるとともに、再確認も同様に迅速に実行することができる。
【0045】
これに対して、充放電装置1は、入力電圧が基準電圧(Vthd)未満であると判定した場合には(S3:YES)、ケーブル5が接続されているとして、コネクタをロックし(S4)、リレーd1、d2をオンする(S5)。そして、充放電装置1は、充放電制御用の通信を開始する(S6)。このステップS6では、互いが正常に機能しているか否か等、規格に従った確認を行うための通信が行われる。
【0046】
そして、充放電装置1は、正しく通信できたか否かを判定し(S7)、正しく通信できたと判定すると(S7:YES)、実際に充放電を行う充放電処理を実行する(S8)。このステップS8では、規格に従って、予め設定された充電または放電が行われる。なお、図示は省略するが、充電または放電が完了すると、リレーd1、d2がオフされ、コネクタのロックが解除される。
【0047】
一方、充放電装置1は、正しく通信できなかったと判定すると(S7:NO)、リレーd1、d2をオフし(S9)、コネクタのロックを解除した後(S10)、ステップS1に移行して、ケーブル5の接続確認を繰り返す。
このように、充放電装置1は、リレーd1、d2をオンする前にケーブル5の接続確認を行っている。これにより、リレーd1、d2をオンすることなく、ケーブル5の接続確認および再確認を迅速に行うことが可能となる。
【0048】
さて、例えば
図4に示すように、開始時期が時刻T0に設定され、充放電が完了していると想定される完了時期、換言すると、ユーザが充放電を完了していて欲しいと考えている完了時期が時刻T2であったとする。また、開始時期(T0)ではケーブル5が接続されていない「ケーブル接続無し」の状態であったものの、時刻T1においてケーブル5が接続されて「ケーブル接続あり」の状態になったとする。
【0049】
この場合、
図4に「比較例」として示すように、リレーd1、d2の劣化を抑制するために相対的に時間が長い周期αごとにケーブル5の接続確認する構成の場合、時刻T1においてケーブル5が接続されたとしても、最長で周期αだけ後の時刻T11にやっと充放電を開始することができるようになる。この場合、充放電を行うことができる充放電可能時間(J1)は、J2=T2−T10となり、状況によっては、完了時期(T2)までに十分な充電ができなくなるおそれがある。そして、充電できていない場合には、想定していた距離を走行できなくなる等、ユーザに多大なデメリットを与えるおそれがある。
【0050】
これに対して、本実施形態の充放電装置1の場合には、
図4に「実施例」として示すように、制御部10の処理に要するごく短時間の周期βごとにケーブル5の接続確認が行われる。このため、時刻T1においてケーブル5が接続された場合には、最長でも周期βだけ後の時刻T11に充放電を開始することが可能となり、充放電可能時間(J2)は、J1=T2−T11となる。これにより、十分な充放電可能時間を確保することが可能となり、ユーザにデメリットを与えるおそれを低減することが可能となる。
以上説明した充放電装置1によれば、次のような効果を得ることができる。
【0051】
充放電装置1は、充放電を開始する開始時期になると、車両3に対して接続確認用のダミー通信を行い、当該ダミー通信を行った際の信号線(CAN−H)の電圧と予め定められている基準電圧(Vthd)との比較結果に基づいて、ケーブル5が接続されているか否かを判定する接続判定部10aと、ケーブル5が接続されていると判定すると、リレーd1、d2をオンして充放電を開始する制御部10と、を備える。
これにより、リレーd1、d2をオンすること無くケーブル5の接続確認を行うことができ、リレーd1、d2の劣化を抑制することができる。
【0052】
また、CAN通信に用いる信号線(CAN−H)の電圧を検出することにより、ケーブル5の接続確認を行っている。CAN通信の信号線は、前述のように耐ノイズ性が高くなっている。そのため、信号線をアナログ入力回路10cに接続したとしても、それが信号線に大きな影響を与えることはないと考えられる。これにより、信号線をアナログ入力回路10cに接続する回路構成、つまりは、充放電装置1の本来の規格には無い回路構成を追加したとしても、充放電装置1の充放電機能にはほぼ影響を与えること無く、車両3との間がケーブル5で接続されているか否かを判定すること、つまりは、ケーブル5の接続確認を行うことができる。
【0053】
そして、充放電装置1の充放電機能に影響を与えることがないことから、車種が異なる電動車両であっても、また、いわゆる充電スタンドのように多数の電動車両によって利用されるものであっても、正常に充放電することができる。
したがって、リレーd1、d2の劣化を抑制することができるとともに、迅速且つ電気的特性への影響を抑えた状態でケーブル5の接続確認つまりは車両3との接続確認を行うことができる。
【0054】
充放電装置1は、ケーブル5が接続されていないと判定した場合、ダミー通信および信号線の電圧の検出を再度行い、ケーブル5が接続されているか否かの判定を繰り返す。これにより、ごく短時間でケーブル5の再確認を行うことができる。したがって、再確認までに要する時間がごく短時間となり、充放電可能時間の減少を低減できるとともに、ユーザにデメリットを与えてしまうことおそれを低減することができる。
【0055】
充放電装置1は、制御部10に内蔵されたアナログ入力回路10cに入力された信号線の電圧である入力電圧と、基準電圧(Vthd)と比較することにより、車両3との間がケーブル5で接続されているか否かを判定する。つまり、充放電装置1は、追加部品を要すること無く、回路パターンの追加あるいは変更のみで、ケーブル5の接続を確認および再確認する機能を追加することができる。
【0056】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、
図5から
図7を参照しながら説明する。第2実施形態では、信号線の電圧と基準電圧との入力態様、または比較態様が第1実施形態と異なっている。本実施形態では、アナログ入力回路10cに入力する例と、デジタル入力回路10bに入力する例とを示す。
【0057】
<アナログ入力回路10cに入力する例>
上記した第1実施形態で説明したように、充放電装置1には、温度を測定するセンサ13が設けられている。この場合、
図1には1つのセンサ13を設けた例を示したが、充放電装置1の内部温度と外部温度とを測定するために2つのセンサ13を設けたり、湿度を測定する別センサを設けたりする構成も想定される。そして、複数のセンサ類を設けた場合には、アナログ入力回路10cのチャンネル数が余っていない可能性がある。
【0058】
そこで、充放電装置1は、以下のようにして、1つのチャンネルにセンサ13のセンサ信号と、CAN−Hの信号線の電圧を示す検出信号とを重畳させている。具体的には、本実施形態の充放電装置1は、
図5に示すように、センサ信号と検出信号とをアナログ的に加算するアナログ加算器30を備えている。そして、制御部10のアナログ入力回路10cには、センサ信号と検出信号とが重畳した信号が入力される。
このような構成でダミー通信を開始した場合には、
図6に示すように、センサ信号に対して検出信号が上乗せされた状態となる。
【0059】
ところで、本実施形態では、センサ13は温度を測定している。このとき、温度は、ダミー通信を行う数ミリ秒程度の短時間に大きく変動することは無いと考えられる。つまり、
図6に示すように時刻t0にてダミー通信を開始した場合、後の直後に検出される電圧の変動は、ダミー通信を行ったことによるCAN−Hの信号線の電圧変化を示していると考えられる。また、ダミー通信は、制御部10によって制御されているため、制御部10は、当然、ダミー通信を開始したタイミングを把握している。
【0060】
そこで、例えば時刻t0、あるいは、ダミー通信を開始する直前のアナログ入力回路10cへの入力電圧をベースとし、そのベースに対して基準電圧(Vthd)を設定することにより、実線にて示す「車両接続時」と実線にて示す「車両未接続時」との違いを検出することができる。すなわち、アナログ入力回路10cに入力された電圧と、センサ信号をベースにして基準電圧を加味した電圧つまりは
図6に「センサ信号+Vthd」として示す電圧とを比較することにより、ケーブル5の接続状態を確認することができる。
【0061】
このように、信号線の電圧をセンサ13から出力されるアナログ信号に重畳させる重畳回路を設けることにより、アナログ入力回路10cのチャンネル数が足らない場合であっても、センサ信号に重畳させてアナログ入力回路10cに入力することにより、ケーブル5の接続確認および再確認を行うことができる。
【0062】
<デジタル入力回路10bに入力する例>
第1実施形態ではアナログ入力回路10cへ検出信号を入力し、その入力電圧と基準電圧(Vthd)とを制御部10にて比較したが、
図7に示すように、制御部10の外部にコンパレータ31のような比較回路を設けてもよい。この場合、コンパレータ31に基準電圧(Vthd)と検出信号とを入力し、基準電圧(Vthd)に対する検出信号の大小を、デジタル的に「0」、「1」で出力し、その出力をデジタル入力回路10bに入力することになる。
【0063】
このように、制御部10外に比較回路を設け、検出信号と基準電圧(Vthd)との比較結果を制御部10に入力する構成によっても、第1実施形態と同様に、リレーd1、d2の劣化を抑制することができるとともに、迅速且つ電気的特性への影響を抑えた状態でケーブル5の接続確認つまりは車両3との接続確認を行うことができる。
【0064】
(その他の実施形態)
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
図1に示した充放電装置1の電気的構成は一例であり、これに限定されない。
実施形態ではCAN−Hの信号線を直接アナログ入力回路10cに接続する例を示したが、バッファ回路等を設けて、アナログ入力回路10cへのCAN通信による影響、およびアナログ入力回路10cからCAN通信への影響を抑制するようにしてもよい。
【0065】
実施形態では開始時期を予め設定しておく充放電装置1を例示したが、充放電装置1は、ユーザがケーブル5を接続したときに例えば3時間後から充放電を開始するといった予約設定を可能とする構成であってもよい。また、充放電装置1は、例えば毎日あるいは月曜から金曜までは午前0時になると充放電を開始するといった定期設定を可能とする構成であってもよい。
【0066】
実施形態では、充放電制御用の通信ができなかった場合に(S7:NO)、リレーd1、d2をオフし(S9)、コネクタのロックを解除(S10)した後にステップS1に移行して処理を繰り返す例を示した。しかし、このような場合には、リレーd1、d2のオン/オフが繰り返されてしまう可能性がある。そのため、ステップS7で「NO」と判定した回数をカウントし、例えば3回カウントしたそれ以上はケーブル5の接続確認を繰り返さないようにしてもよい。これにより、例えば充放電装置1や車両3に機能的な問題が生じている際等にリレーd1、d2のオフ/オフが繰り返されて劣化が進むことを抑制することができる。
電動車両としては、人員を輸送するいわゆる乗用車等に限らず、荷物を輸送するトラックやダンプ等であってもよい。