【課題】銀、銅、金、アルミニウム、硫化銀、硫化銅、硫化金等の制限物質を含有することで、動植物を痛めたり、その発育を阻害することなく、その根など動植物の少なくとも一部を制限するシート状物や、植物の根の制限システムを実現する。
【解決手段】動植物の少なくとも一部を制限するシート状物1である。シート状物1は、銀、銅、金、アルミニウム、硫化銀、硫化銅、硫化金等である制限物質2を含有している。シート状物1は、制限物質2を含有した制限繊維3を備え、この制限繊維3の素材は、アクリル繊維、アクリル系繊維、ポリアミド繊維又はポリエステル繊維であり、制限繊維3は、不織布、織物、編物、ネット等である制限布帛4を構成していても良い。シート状物1を貯水槽の底に敷き、シート状物上に植物を植えた容器を載置して植物の根の制限システムとしても良い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<シート状物1の全体構成>
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1には、本発明に係るシート状物1が示されている。
【0017】
シート状物1は、後述する銀、銅等である制限物質2を含有したシート状のものである。
シート状物1は、制限物質2を含有したシート状のものであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、制限部材2を含有していない非制限部材2’(例えば、繊維強化プラスチック様のもの)も同時に有していても良い。
【0018】
尚、このとき、制限物質2自体がシート状物1における制限部2であるとも言え、又、シート状物1において、制限物質2を含有する部分を制限部2としても良い。
シート状物1は、制限物質2が繊維状のもの(後述する制限繊維3)のみに含有されていたり、制限物質2が繊維状ではなくフィルム状や板状、テープ状等の制限非繊維部材3’のみに含有されていたり、制限繊維3と制限非繊維部材3’の両方に含有されていても良い。
【0019】
制限繊維3における制限物質2以外の素材は、特に限定はないが、例えば、合成樹脂などの有機材料であっても良く、繊維状になるのであれば、ガラスやセラミックスなどの無機材料、鉄鋼などの金属、そして、これらの複合材料であっても良い。
又、制限非繊維部材3’における制限物質2以外の素材も、特に限定はないが、合成樹脂などの有機材料や、ガラスやセラミックスなどの無機材料、鉄鋼などの金属、そして、これらの複合材料であっても良い。
【0020】
一方、シート状物1における非制限部材2’は、制限物質2を含有していないのであれば何れの構成でも良いが、例えば、制限物質2を含有していない繊維状の非制限繊維5や、制限物質2を含有していない且つ繊維状のものではない非制限非繊維部材5’(例えば、フィルム状や板状、テープ状等のもの)であっても良い。
非制限繊維5や非制限非繊維部材5’の素材も、特に限定はないが、合成樹脂などの有機材料であっても良く、繊維状になるのであれば、ガラスやセラミックスなどの無機材料、鉄鋼などの金属、そして、これらの複合材料であっても良い。
【0021】
従って、シート状物1は、制限繊維3と非制限繊維5を含む場合(パターン<1>)、制限繊維3と非制限非繊維部材5’を含む場合(パターン<2>)、制限非繊維部材3’と非制限繊維5を含む場合(パターン<3>)、制限非繊維部材3’と非制限非繊維部材5’を含む場合(パターン<4>)、そして、制限繊維3と制限非繊維部材3’を含む場合(パターン<5>)の5つがある。
以下、主に、シート状物1が制限物質2を含有した制限繊維3を少なくとも備えている場合(パターン<1>、<2>、<5>)について詳解する。
【0022】
<制限物質2>
図1に示したように、制限物質2は、上述したように、当該シート状物1(詳しくは、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’)に含有されている。
制限物質2は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、硫化銀(Ag
2 S、AgS、Ag
2 S
3 )、硫化銅(Cu
2 S、CuS)、硫化金(Au
2 S、Au
2 S
3 )のうち少なくとも1つである。
【0023】
つまり、制限物質2は、銀、銅、金、アルミニウム、硫化銀、硫化銅、硫化金のうち何れか1つである場合以外に、銀、銅、金、アルミニウム、硫化銀、硫化銅、硫化金のうち何れか2つであっても良い。
以下同様に、制限物質2は、銀、銅、金、アルミニウム、硫化銀、硫化銅、硫化金のうち何れか3つ、4つ、5つ、6つ、又は、7つ全てであっても構わない。
【0024】
制限物質2のうち、銀、銅、金、アルミニウムの電気抵抗率(抵抗率)は、小さい順に銀、銅、金、アルミニウムとなる。
銀、銅、金、アルミニウムの具体的な電気抵抗率の値は、温度によって変化するが、例えば、20℃であれば、銀は1.62×10
-8(Ω・m)、銅は1.72×10
-8(Ω・m)、金は2.40×10
-8(Ω・m)、アルミニウムは2.75×10
-8(Ω・m)であるとも言える。
【0025】
上述した制限物質2のうち、銀、銅、金、アルミニウムは、溶液中においてイオン化した場合、正イオン(Ag
+ 、Ag
2+又はAg
3+、Cu
+ 又はCu
2+、Au
+ 又はAu
3+、Al
3+等)となる。
又、上述した制限物質2のうち、硫化銀、硫化銅、硫化金は、溶液中において、銀原子、銅原子、金原子は、上述したように、イオン化して正イオンとなる一方で、硫黄原子(S)は、イオン化して陰イオン(S
2-等)となる。
【0026】
<制限繊維3等>
図1に示したように、制限繊維3は、上述の制限物質2を含有した繊維である。
つまり、制限繊維3は、上述したように、制限物質2とそれ以外の素材からなる。
【0027】
制限繊維3における制限物質2以外の素材は、制限物質2を含有できるのであれば、特に限定はないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)が主成分(例えば、質量%で85%以上である)アクリル繊維や、ポリアクリロニトリル(PAN)が質量%で35%以上85%未満であるアクリル系繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維であっても良い。
この他、制限繊維3における制限物質2以外の素材は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維、そして、羊毛、絹などの天然繊維等の有機材料の他、繊維状になるのであれば、ガラスやセラミックスなどの無機材料、鉄鋼などの金属、そして、これらを組み合わせた複合材料でも良い。
【0028】
一方、非制限繊維5の素材も、上述したように、特に限定はないが、合成樹脂が好ましく、例えば、制限繊維3と同様に、アクリル繊維やアクリル系繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維、そして、羊毛、絹などの天然繊維等の有機材料の他、繊維状になるのであれば、ガラスなどの無機材料、鉄鋼などの金属、そして、これらを組み合わせた複合材料でも良い。
【0029】
<本発明における「含有」>
ここまで述べたように、シート状物1において、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’に制限物質2が含有されているが、この「含有」について、以下に詳解する。
本発明における「含有」とは、制限物質2が、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’において、その表面及び/又は内部に存在していることを意味する。
【0030】
この「含有」をさせる方法は、制限物質2が、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’の表面及び/又は内部に存在した状態となれば、何れの方法であっても良いが、例えば、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’が合成樹脂等の有機材料であれば、その有機材料に制限物質2を練り込んだり(練り込み)しても良く、この場合、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’の内部に存在した状態で「含有」されている。
この他、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’の表面に、制限物質2の鍍金(メッキ)を施しても良く、浸漬や塗布、スプレ―塗布等によって、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’の表面における凹凸に制限物質2を沈着(付着・付与)させても良く、この場合、制限繊維3及び/又は制限非繊維部材3’の表面に存在した状態で「含有」されていると言える。
【0031】
ここで、制限物質2が含有されているものが繊維状である(つまり、制限繊維3)であれば、上述した練り込み、メッキ、浸漬、塗布、スプレ―塗布等の方法は、制限繊維3における制限物質2以外の素材が、合成繊維や天然繊維等の有機材料の他、繊維状になるのであれば、無機材料、金属、複合材料などの何れであっても、制限物質2を含有させることが出来る。
【0032】
<制限繊維3(アクリル繊維やアクリル系繊維)における「含有」>
このとき、制限繊維3における制限物質2以外の素材がアクリル繊維やアクリル系繊維である場合に、制限物質2のうち銀、銅、金、アルミニウムを含有させるには、1価の正イオンを含む溶液、又は、2価の正イオンと還元剤を含む溶液を、アクリル繊維やアクリル系繊維に接触させて行っても良い(この接触により、アクリル繊維やアクリル系繊維における電子吸引性基であるシアノ基(−CN)に対して、溶液中においてイオン化した銀、銅、金、アルミニウムの正イオン(特に1価の正イオンAg
+ 、Cu
+ 等)が共有結合(配位結合)することで、制限繊維3の表面に強固に付着(吸着)するとも言える)。
【0033】
このとき、溶液中に、1価の正イオンを与える化合物としては、特に限定はないが、例えば、塩化第1銀、臭化第1銀、硫酸第1銀、硝酸第2銀、酢酸第1銀等の第1銀塩や、塩化第1銅、臭化第1銅、硫酸第1銅等の第1銅塩、塩化第1金等の第1金塩などでも良い。
又、当該溶液中に、2価の正イオンを与える化合物としては、特に限定はないが、例えば、塩化第2銅、臭化第2銅、硫酸第2銅、硝酸第2銅、酢酸第2銅等の第2銅塩や、塩化第2金(八塩化四金)等の第2金塩などでも良い。
【0034】
更に、当該溶液中で、2価の正イオンと組合せて用いられる還元剤としては、2価の正イオンを1価の正イオンに変換し得るものであれば、特に限定はないが、例えば、金属銀、金属銅、金属金、金属アルミニウム、硫酸第1鉄、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミンなどでも良い。
この場合も、制限物質2のうち銀、銅、金、アルミニウムが、制限繊維3の表面に存在した状態で「含有」されていると言える。
【0035】
同様に、制限繊維3における制限物質2以外の素材がアクリル繊維やアクリル系繊維である場合に、制限物質2のうち硫化銀、硫化銅、硫化金を含有させるには、上述したように、1価の正イオンを含む溶液、又は、2価の正イオンと還元剤を含む溶液を、アクリル繊維やアクリル系繊維に接触させた(第1工程)後に、これら結合した正イオンを硫化する(第2工程)ことで、硫化銀、硫化銅、硫化金を、制限繊維3(アクリル繊維やアクリル系繊維)の表面に付着(吸着)させても良い。
このとき、第1工程の溶液中に、1価の正イオンを与える化合物としては、上述したように、特に限定はないが、例えば、第1銀塩や、第1銅塩、第1金塩などでも良く、2価の正イオンを与える化合物としても、上述したように、特に限定はないが、例えば、第2銅塩や、第2金塩などでも良い。
【0036】
第1工程における還元剤としては、上述したように、特に限定はないが、例えば、金属銀、金属銅、金属金、金属アルミニウム、硫酸第1鉄、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミンなどでも良い。
又、第2工程における硫化剤としては、上述したように、特に限定はないが、例えば、硫化ナトリウム、亜ニチオン酸、亜ニチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、ロンガリットC、ロンガリットZなどでも良い。
【0037】
更には、上述した第1、2工程に分けることなく、アクリル繊維やアクリル系繊維の表面に硫化銀、硫化銅、硫化金を1つの工程(1段処理)で付着(吸着)させても良い。
この1段処理では、1価の正イオンと硫化剤を含む溶液や、2価の正イオンと硫化剤を含む溶液、又は、2価の正イオンと還元剤と硫化剤を含む溶液を、アクリル繊維やアクリル系繊維に接触させて行っても構わない。
【0038】
このとき、1価の正イオンを与える化合物や、2価の正イオンを与える化合物、還元剤、硫化剤としては、上述した第1、2工程で用いたものと同様である。
この場合も、制限物質2のうち硫化銀、硫化銅、硫化金が、制限繊維3の表面に存在した状態で「含有」されていると言える。
【0039】
<制限繊維3(ポリアミド繊維)における「含有」>
この他、制限繊維3における制限物質2以外の素材がポリアミド繊維である場合にも、上述したアクリル繊維やアクリル系繊維である場合と同様で、制限物質2のうち銀、銅、金、アルミニウムを含有させるには、1価の正イオンを含む溶液、又は、2価の正イオンと還元剤を含む溶液を、ポリアミド繊維に接触させて行っても良い(この接触により、ポリアミド繊維における電子供与基であるアミノ基(−NH
2 )に対して、溶液中においてイオン化した銀、銅、金、アルミニウムの正イオンが結合することで、制限繊維3の表面に強固に付着(吸着)するとも言える)。
又、制限繊維3における制限物質2以外の素材がポリアミド繊維である場合においても、制限物質2のうち硫化銀、硫化銅、硫化金を含有させるには、上述した第1工程と第2工程や、上述した1段処理によって、硫化銀、硫化銅、硫化金を、制限繊維3(ポリアミド繊維)の表面に付着(吸着)させても良い。
【0040】
尚、制限繊維3における制限物質2以外の素材がポリアミド繊維である場合も、1価の正イオンを与える化合物や、2価の正イオンを与える化合物、還元剤、硫化剤としては、上述したアクリル繊維やアクリル系繊維である場合で用いたものと同様である。
この場合も、制限物質2の銀、銅、金、アルミニウム、硫化銀、硫化銅、硫化金が、制限繊維3の表面に存在した状態で「含有」されていると言える。
【0041】
<制限繊維3(ポリエステル繊維)における「含有」>
一方、制限繊維3における制限物質2以外の素材がポリエステル繊維である場合には、まずポリエステル繊維をアルカリ水溶液との接触下において加熱処理しても良い。
このとき用いるアルカリ水溶液としては、特に限定はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリや、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩を含むものでも良い。
【0042】
次に、アルカリ水溶液との接触下において加熱処理されたポリエステル繊維に、正イオン捕捉基を有する表面処理剤を付着結合させても良い。
このとき、正イオン捕捉基は、特に限定はないが、例えば、シアノ基(−CN)やアミノ基(−NH
2 )、メルカプト基(−SH)、チオカルボニル基(>CS)、イソシアネート基(−NCO)、第4級有機アンモニウム基(−NR
4 ・X(ここで、Rはアルキル、アリールアラルキル等の炭化水素基であり、Xは塩素イオン、硫酸イオン等の陰イオンである。))などであっても良い。
【0043】
又、表面処理剤は、上述した正イオン捕捉基を有し、ポリエステル繊維の表面に対して付着結合性を有するものであれば、特に限定はないが、例えば、シランカップリング剤や、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤がなどでも良い。
このように正イオン捕捉基を付着結合されたポリエステル繊維に対しては、上述したアクリル繊維やアクリル系繊維、ポリアミド繊維である場合と同様で、制限物質2のうち銀、銅、金、アルミニウムを含有させるには、1価の正イオンを含む溶液、又は、2価の正イオンと還元剤を含む溶液を、当該ポリエステル繊維に接触させて行っても良い。
【0044】
又、制限繊維3における制限物質2以外の素材が正イオン捕捉基を付着結合されたポリエステル繊維である場合においても、制限物質2のうち硫化銀、硫化銅、硫化金を含有させるには、上述した第1工程と第2工程や、上述した1段処理によって、硫化銀、硫化銅、硫化金を、制限繊維3(当該ポリエステル繊維)の表面に付着(吸着)させても良く、1価の正イオンを与える化合物や、2価の正イオンを与える化合物、還元剤、硫化剤としては、上述したアクリル繊維やアクリル系繊維、ポリアミド繊維である場合で用いたものと同様である。
この場合も、制限物質2の銀、銅、金、アルミニウム、硫化銀、硫化銅、硫化金が、制限繊維3の表面に存在した状態で「含有」されていると言える。
【0045】
上述したように、制限繊維3における制限物質以外の素材をアクリル繊維、アクリル系繊維、ポリアミド繊維又はポリエステル繊維とすることによって、銀、銅等の制限物質2が、アクリル繊維やアクリル系繊維のシアノ基や、ポリアミド繊維のアミノ基、又は、ポリエステル繊維のイオン捕捉基等によって結合し易くなる。
ここまで述べた制限繊維3は、後述する不織布等である制限布帛4の少なくとも一部を構成したものであっても良く、その他、制限繊維3は、布帛状以外のもの(例えば、押し固めて板状等にしたものであって、制限繊維3が少なくとも一部を構成しているもの)である制限非布帛部材4’を構成しても良い。
【0046】
従って、シート状物1は、上述したパターン<1>、<2>、<5>において、制限繊維3が制限布帛4の少なくとも一部のみを構成する場合(パターン<1−A>、<2−A>、<5−A>)、制限繊維3が制限非布帛部材4’の少なくとも一部のみを構成する場合(パターン<1−B>、<2−B>、<5−B>)、制限繊維3が制限布帛4と制限非布帛部材4’両方の少なくとも一部のみを構成する場合(パターン<1−C>、<2−C>、<5−C>)がある。
以下、主に、制限繊維3が制限布帛4の少なくとも一部のみを構成する場合(パターン<1−A>、<2−A>、<5−A>)について、更に詳解する。
【0047】
<制限布帛4>
図1に示したように、制限布帛4は、上述したように、その少なくとも一部が制限繊維3によって構成されている。
つまり、制限布帛4は、制限繊維3が少なくとも一部を構成していれば良く、制限布帛4の全部が制限繊維3から構成されていたり、制限布帛4が制限繊維3と非制限繊維5から構成されていても良い。
【0048】
制限布帛4は、不織布、織物、編物、ネットのうち少なくとも1つである。
つまり、制限布帛4は、不織布、織物、編物、ネットのうち何れか1つである場合以外に、不織布、織物、編物、ネットのうち何れか2つであっても良い。
【0049】
以下同様に、制限布帛4は、不織布、織物、編物、ネットのうち何れか3つ、又は、4つ全てであっても構わない。
制限布帛4が不織布の場合、何れの方法で構成されて構わないが、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布であっても良く、その他、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、吹き付け加工により成形されたケミカルボンド不織布、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものであっても良い。
【0050】
制限布帛4が織物の場合、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織、二重織、二重織以上の多重織などであっても良い。
制限布帛4が編物の場合、何れの編組織でも構わないが、例えば、デンビー編(トリコット編)や、ラッシェル編、ダブルラッシェル編、バンダイク編(アトラス編)、コード編などの経編や、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編などの緯編などであっても良い。
【0051】
制限布帛4がネット(網)である場合、ネットとは、それを編成する制限繊維3や非制限繊維5を方形・ひし形に目を透かして編んだものであって、魚等の魚介類を捉えるもの(漁網など)であったり、鳥を捉えるものであったり、道具や囲い、建具などに用いるものであり、何れの編組織でも構わない。
制限布帛4が織物や編物、ネットである場合、それらを構成(織成、編成等)する制限繊維3や非制限繊維5の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、1dtex以上3000dtex以下であっても良い。
【0052】
このように、制限繊維3で、不織布等である制限布帛4の少なくとも一部を構成することによって、シート状物1における表面積が非常に多くなって、シート状物1が多孔質な構造となり、制限繊維3に結合した銀、銅等の制限物質2が、動植物BPに作用し易くなると共に、制限布帛4によって、シート状物1自体に柔らかさ・強度を持たせつつ、軽量化等を図ることが出来る。
更に加えて、例えば、植物Pの根Nであれば、表1〜3、
図4〜8に示すように、根Nを制限するために、シート状物1を2回使用したとしても、1回目の効果と2回目使用の効果に違いはほとんどなく、3回目以降も繰り返し使用可能であることがわかる。
これに対して、例えば、水酸化第2銅などの水不溶性銅化合物を所定のシートやトレー等に含有させた場合であれば、当該シート等を一度使用した際に、水不溶性銅化合物が浸み出し、2回目以降に使用してもその効果が落ちることから、シート状物1を使用することで、長寿命化や経済性の向上が図れる。
【0053】
尚、シート状物1における制限物質2の含有量は、特に限定はないが、例えば、制限物質2を含有したシート状物1に対して、制限物質2が、5.0質量%以上30.0質量%以下、好ましくは6.0質量%以上25.0質量%以下、更に好ましくは7.0質量%以上20.0質量%以下であっても良い。
又、シート状物1は、一旦、所定の溶液に浸漬されても、制限物質2が脱落し難いと言え、浸漬前に含有していた制限物質2の質量と、浸漬後に含有する制限物質2の質量の差は、特に制限はないが、例えば、0.01g以上20.00g以下、好ましくは0.05g以上15.00g以下、更に好ましくは0.10g以上10.00g以下であっても良い。
【0054】
ここまで述べてきたシート状物1によって、
図4〜6に示すように、当該シート状物1を越えて植物Pの根N等が伸びたり、ナメクジ、カタツムリ等の軟体動物や、魚介類等の動物Bがシート状物1に近接することを抑制できる。
従って、例えば、植物Pの根Nであれば、伸び過ぎた根Nを、その根Nの先端部等を切り落とすことなく、育苗箱等の容器12から剥がすことが可能となると共に、根Nを切り落とすなどの作業分の負担がなく、作業効率が向上する。
更に加えて、例えば、植物Pの根Nであれば、後述の表1〜3、
図4〜8に示すように、根Nを制限しているにも関わらず、シート状物1を使用していない場合と略同様の植物丈T及び葉齢Yとなることから、動植物BPを痛めたり、発育不良を招くことはない。
尚、特許文献1の育苗箱のように、銀、銅等の制限物質2を含有せず、目が詰まった紙や不織布、ネット(例えば、クラパピー(登録商標))などによって、ただ単に物理的に植物Pの根Nや、動物Bの行動を制限した場合、確かに、植物Pの根Nや、動物Bの行動を制限できるものの、根Nが十分に発達しなかったり、魚類等が壁やネットに激突するため、動植物BPを痛めたり、発育不良を招く可能性がある。
【0055】
<植物の根の制限システム10>
図2、3に示したように、制限システム10は、植物Pの根Nを制限するものである。
制限システム10で制限する「植物P」とは、動物Bでなく且つ根Nを持つもの(種子植物(被子植物(単子葉植物、双子葉植物(合弁花類、離弁花類))、裸子植物)、シダ植物など)であれば、何れでも良いが、より具体的には、例えば、苗を育てる育苗箱などの容器(植物容器)12に植えられた植物や、その他、既に田畑や山野等に生えている植物など分けても良い。
【0056】
「植物P」のうち、容器12に植えられた植物は、特に限定はないが、例えば、穀物や花など(詳解すれば、イネ(水稲(米)など)やムギ(小麦、大麦など)、トウモロコシ、ススキ、タケ等のイネ科植物や、ユリ、チューリップ、タマネギ、ネギ等のユリ科植物、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ、サフラン、グラジオラス、フリージア等のアヤメ科植物などをはじめとする単子葉植物(裸子植物))や、これらの苗であっても良い。
その他、容器12に植えられた植物としては、例えば、果樹や野菜(詳解すれば、モモやイチゴ、リンゴ、ナシ、ウメ、ビワ、サクラ、バラ等のバラ科植物、ブドウ、ノブドウ、ヤブガラシ等のブドウ科植物、キャベツ、ダイコン、ナズナ、カブ、ワサビ、クレソン、カラシ等のアブラナ科植物、エンドウ、ダイズ、ソラマメ、フジ、レンゲソウ、シロツメクサ、クズ、オジギソウ、ネムノ等のマメ科植物などをはじめとする双子葉植物の離弁花類(裸子植物))であったり、例えば、花や草木、その他の野菜(詳解すれば、キク、ヒマワリ、タンポポ、コスモス、ダリア、ヒメジョオン、アザミ等のキク科植物、ヒルガオ、アサガオ、サツマイモ等のヒルガオ科植物、ツツジ、シャクナゲ、アセビ等のツツジ科植物、ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、タバコ、トウガラシ等のナス科植物、カボチャ、ヘチマ、キュウリ、スイカ、ヒョウタン、ユウガオ等のウリ科植物などをはじめとする双子葉植物の合弁花類(裸子植物))、ソテツ、マツ、イチョウ等の裸子植物、ワラビ、ゼンマイ、クサソテツ、ヘゴ、オオタニワタリ、イワヒバ、マツバラン等のシダ植物や、これらの苗などであっても良い。
【0057】
一方、「植物P」のうち、既に生えている植物は、育てた苗を田畑等に植えた後のものや、土等に直接種を播いて成長したもの、自然に生えているものなどであれば、特に限定はないが、例えば、穀物や果樹、野菜、花、草木(詳解すれば、イネ等のイネ科植物や、ユリ等のユリ科植物、アヤメ等のアヤメ科植物などの単子葉植物(裸子植物)、バラ等のバラ科植物、ブドウ等のブドウ科植物、キャベツ等のアブラナ科植物、エンドウ等のマメ科植物などの双子葉植物の離弁花類(裸子植物)、キク等のキク科植物、ヒルガオ等のヒルガオ科植物、ツツジ等のツツジ科植物、ナス等のナス科植物、カボチャ等のウリ科植物などの双子葉植物の合弁花類(裸子植物)、ソテツ等の裸子植物、ワラビ等のシダ植物など)であっても良い。
又、「植物P」のうち、既に生えている植物は、山野等に自然に生えているものであっても良い。
【0058】
制限システム10は、植物Pの根Nを制限するのであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、根Nを制限したい「植物P」が容器12に植えられた植物である場合の制限システム10(容器制限システム10’(
図2参照))であったり、根Nを制限したい「植物P」を容器12に植えていない場合(苗を田畑等に植えた後の場合や、土等に直接種を播いて成長させた場合、自然に生えている場合)の制限システム10(非容器制限システム10”(
図3参照))であっても良い。
以下は、まず、「植物P」が容器12に植えられたものである場合の容器制限システム10’について述べる。
【0059】
容器制限システム10’は、容器12に植えられた「植物P」の根Nを制限できるのであれば、特に制限はないが、例えば、容器制限システム10’は、後述する貯水槽11を有し、この貯水槽11の底11aに所定の大きさのシート状物1を敷き、敷いたシート状物1の上に、容器12を載せる構成であっても良い。
以下、主に、貯水槽11の底11aに敷いたシート状物1の上に、容器12を載せる構成について詳解する。
【0060】
<貯水槽11>
図2に示すように、貯水槽11は、容器制限システム10’の一部であり、その底(槽内底)11aに、上述したシート状物1を敷くものである。
貯水槽11は、槽内底11aにシート状物1を敷け、且つ、更にその上に容器12を載置できるのであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、地面等に窪みを作り水等の液体を貯めるプール様のものであったり、水等の液体を貯蔵できる水槽様のものであっても良い。
【0061】
貯水槽11は、その平面視形状について、特に限定はないが、例えば、略矩形状、略台形状、角が取れた略矩形状・略台形状、略円形状、略楕円形状、略三角形状、略五角形状等の略多角形状などであっても良い。
貯水槽11の側面視形状も、特に限定はなく、例えば、略矩形状、略台形状、底11a側の角が取れた略矩形状・略台形状、略円形状、略楕円形状、略三角形状などであっても良い。
【0062】
貯水槽11の平面視の面積についても、特に限定はなく、育苗箱等の容器12(例えば、容器(育苗箱等)12が平面視で略矩形状である場合には、約60cm×約30cm=約0.18m
2 など)が少なくとも1つは入る面積であれば良いが、例えば、1m
2 以上1000000m
2 以下(1反(=約991.736m
2 )や、1ha(=10000m
2 )など)であっても良い。
又、貯水槽11の深さについても、特に限定はなく、育苗箱等の容器12(例えば、容器(育苗箱等)12の深さは約3cmなど)が少なくとも1つは入る深さであれば良いが、例えば、5cm以上50cm以下、好ましくは7cm以上40cm以下、更に好ましくは10cm以上30cm以下であっても良い。
【0063】
貯水槽11の内部において、水等の液体の有無は問わないが、育苗箱等の容器12の深さ(例えば、3cmなど)を越えない量の液体が入っていても良く、例えば、その槽底部11aから0.1cm以上3.0cm以下、好ましくは0.5cm以上2.5cm以下、更に好ましくは1.0cm以上2.0cm以下であっても良い。
貯水槽11の内部には、液体以外に土や、窒素、リン、カリウムなどの栄養素その他の物質が入っていても良く、貯水槽11の槽内底11aは、溝や隆起等があっても良いが、略面一(略フラット)であっても良い。
【0064】
<容器(植物容器)12>
図2に示したように、容器12は、苗などの根Nを制限したい「植物P」が植えられ器である。
容器12は、その内部に植物Pが植えられるのであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、苗を育てる育苗箱や育苗トレー、育苗ポットであったり、その他、苗以外も植える植木鉢などであっても良い。
【0065】
容器12も、その平面視形状について、特に限定はないが、例えば、略矩形状、略台形状、角が取れた略矩形状・略台形状、略円形状、略楕円形状、略三角形状、略五角形状等の略多角形状などであっても良い。
容器12の側面視形状も、特に限定はなく、例えば、略矩形状、略台形状、その底(器内底)12a側の角が取れた略矩形状・略台形状、略円形状、略楕円形状、略三角形状などであっても良い。
【0066】
容器12の平面視の面積についても、特に限定はなく、例えば、容器(育苗箱等)12が平面視で略矩形状である場合には、0.01m
2 以上10.00m
2 以下、好ましくは0.05m
2 以上5.00m
2 以下、更に好ましくは0.10m
2 以上3.00m
2 以下(約0.18m
2 など)であっても良い。
又、容器12の深さについても、特に限定はなく、例えば、0.5cm以上100.0cm以下、好ましくは1.0cm以上50.0cm以下、更に好ましくは1.5cm以上30.0cm以下(約3cmなど)であっても良い。
【0067】
容器12の内部においては、植物Pを植えるための土(床土)や、窒素、リン、カリウムなどの栄養素や珪素などの物質が入っていても良く、その他、不織布状のもの(例えば、ロックウール(岩綿)など)を敷いても良い。
容器12の底(器内底)12aは、略面一(略フラット)としても良く、又、器外底12bを略面一(略フラット)としても良い。
【0068】
ここまで述べた植物の根の制限システム10(容器制限システム10’)によって、各容器12にシート状物1を敷く(詳解すれば、容器12の底12aに、その底12aの形状に合わせて成形したシート状物1を、1枚1枚載置する)手間がなく、貯水槽11の底11aにまとめて敷けるため、作業効率が非常に向上する。
更に加えて、シート状物1は、その上に容器12は置かれているため、シート状物1が風で飛ぶようなことが抑制される。
尚、
図4〜6に示すように、当然に、当該制限システム10(容器制限システム10’)におけるシート状物1を越えて植物Pの根Nが伸びることを抑制でき、根Nの先端部等を切り落とすことなく、根Nを切り落とすなどの作業分の負担がなく、作業効率が向上する。
そして、表1〜3、
図4〜8に示すように、根Nを制限しているにも関わらず、シート状物1を使用していない場合と略同様の植物丈T及び葉齢Yとなることから、植物Pの根Nを痛めたり、発育不良を招くことはない。
又、容器制限システム10’で根Nを制限する植物Pが、育苗箱12に植えられたイネの苗である場合には、このイネの苗を田植機で田植えする際には、イネの株の抜けが抑制される。
【0069】
一方、植物の根の制限システム10のうち、根Nを制限したい「植物P」を容器12に植えていない場合の非容器制限システム10”は、苗を田畑等に植えたり、土等に直接種を播いたり、自然に生えている植物(例えば、草木など)における土中等の根Nを、上述したシート状物1で囲ったり、下方から根N全体を覆う等する構成であっても良い。
この非容器制限システム10”においても、上述の容器制限システム10’と同様で、シート状物1を越えて植物Pの根Nが伸びることを抑制でき、根Nの先端部等を切り落とすことなく、根Nを切り落とすなどの作業分の負担がなく、作業効率が向上する。
そして、根Nを制限しているにも関わらず、シート状物1を使用していない場合と略同様の成長具合となり、植物Pの根Nを痛めたり、発育不良を招くことはない。
【0070】
その他、非容器制限システム10”は、上述したように植物Pの根Nを制限(根Nが伸びるのを制限、又は、根域を制限)することで、過剰に水分を吸収することが抑えられ、果樹の実(果物)などが甘くさせるとも言える。
又、地上からは通常は、根Nが見えないが、非容器制限システム10”によって、どこまで延びたか把握できるとも言える。
【0071】
<試験1>
ここからは、まず本発明に係る植物の根の制限システム10における実施例1−1〜1−5、実施例2−1〜2−5と、比較例1−1〜1−5について試験1をする。
尚、この試験1における制限システム10としては、まず上述した容器制限システム10’について言及する。
【0072】
<実施例1−1〜1−5>
実施例1−1〜1−5は、上述したように、本発明に係るシート状物1を貯水槽11の底11aに敷き、当該シート状物1の上に、植物Pを植えた容器12を5つ載置した制限システム10(容器制限システム10’)を用意する。
この容器制限システム10’において、シート状物1上に載置した5つの容器12それぞれを、実施例1−1〜1−5とする。
尚、これらの実施例1−1〜1−5において、シート状物1は、硫化銅を含有させたアクリル繊維(又はアクリル系繊維)を制限繊維3とし、この制限繊維3で少なくとも一部が構成された不織布(制限布帛)4である。
又、実施例1−1〜1−5において、貯水槽11はプールであり、容器12は育苗箱(平面視形状が略矩形状であって、約60cm×約30cm=約0.18m
2 )である。
【0073】
<実施例2−1〜2−5>
実施例1−1〜1−5で用いた制限システム10(容器制限システム10’)において、シート状物1を、容器制限システム10’にて一度使用したシート状物(再利用シート状物)1’に変えたものを用意する。
この容器制限システム10’において、再利用シート状物1’上に載置した5つの容器12それぞれを、実施例2−1〜2−5とする。
尚、これらの実施例2−1〜2−5における再利用シート状物1’は、一度使用した以外は、シート状物1と同様で、硫化銅を含有させたアクリル繊維(又はアクリル系繊維)を制限繊維3とし、この制限繊維3で少なくとも一部が構成された不織布(制限布帛)4である。
【0074】
<比較例1−1〜1−5>
実施例1−1〜1−5で用いた制限システム10(容器制限システム10’)において、シート状物1や再利用シート状物1’を用いないものを用意する。
従って、このシステムにおいては、貯水槽11の底11a上に直接載置した5つの容器12それぞれを、比較例1−1〜1−5とする。
【0075】
<試験1の概要>
上述した実施例1−1〜1−5、実施例2−1〜2−5と、比較例1−1〜1−5の各容器に対し、まずは、2015年5月28日にイネの種(種籾)を播種した。
尚、この種籾は、事前に消毒していても良く、又、発芽(催芽)した種籾を播種しても良く、育苗後の苗は、育苗ポットへ定植した(苗床で育てた苗を田や畑に本式に移し植えた)。
【0076】
次に、実施例1−1〜1−5、実施例2−1〜2−5と、比較例1−1〜1−5において、播種されたイネの植物丈(草丈)Tと葉齢Yを一定期間ごとに調べた。
播種から1週間後の2015年6月4日における各実施例、各比較例の植物丈(草丈)Tと葉齢Yを表1に、播種から2週間後の2015年6月11日における各実施例、各比較例の植物丈(草丈)Tと葉齢Yを表2に、播種から3週間後の2015年6月18日における各実施例、各比較例の植物丈(草丈)Tと葉齢Yを表3に示す。
【0077】
ここで、試験1において、「葉齢Y」とは、イネ等の植物Pの生育ステージを主稈(親茎)の葉の枚数で表現したものであり、その数え方は、初生葉や鞘葉を除く最初の葉を第1葉とし、この第1葉がついた時を葉齢「1」枚、その次の葉(第2葉)がついた時を葉齢「2」枚、以下同様に、第3葉がついた時を葉齢「3」枚・・・と数える。
尚、葉齢Yの数え方は、初生葉や鞘葉なども含め最初の葉を第1葉とし、この第1葉がついた時を葉齢「1」枚、第2葉がついた時を葉齢「2」枚、以下同様に、第3葉がついた時を葉齢「3」枚・・・と数えても良い。
【0081】
<試験1の評価>
表1〜3で示されたように、播種から1週間後、2週間後、3週間後の何れの時期においても、実施例1−1〜1−5のシート状物1や、実施例2−1〜2−5の再利用シート状物1’を使用した制限システム10(容器制限システム10’)は、シート状物1(1’)を使用していない比較例1−1〜1−5と遜色ない植物丈Tや葉齢Yとなっている。
以下に詳解する。
【0082】
<表1の評価>
表1においては、シート状物1によって根Nを制限されているはずの実施例1−1〜1−5の一部は、シート状物1(1’)がなく根Nが伸び放題である比較例1−1〜1−5の一部よりも、植物丈Tや葉齢Yが大きくなっており、例えば、実施例1−1、1−4、1−5の植物丈Tは、比較例1−3の植物丈Tよりも大きく、実施例1−1、1−2、1−4、1−5の葉齢Yは、比較例1−4、1−5の葉齢Yより大きいか又は同じ値となっている。
表1には、一度使用した再利用シート状物1’によって根Nを制限されているはずの実施例2−1〜2−5の一部も、シート状物1(1’)がなく根Nが伸び放題である比較例1−1〜1−5の一部よりも、植物丈Tや葉齢Yが大きくなっていることが示されており、例えば、実施例2−1、2−2、2−5の植物丈Tは、比較例1−1〜1−3の植物丈Tよりも大きく、実施例2−1、2−5の葉齢Yは、比較例1−3〜1−5の葉齢Yより大きいか又は同じ値となっていることも示されている。
【0083】
よって、播種から1週間後において、実施例のように、シート状物1(1’)で植物Pの根Nは制限しても、シート状物1(1’)がなく根Nが従来通り伸びるものと、植物丈Tや葉齢Yなどの発育(育苗)について、影響がほとんどないと言える。
これに加えて、比較例1−1〜1−5は、根切りの手間がかかると共に、成長に必要な根Nの先端部を切ることとなるため、定植した後は、イネの生育がかえって悪くなる。
【0084】
尚、実施例1−1〜1−5と、実施例2−1〜2−5を比較しても、その効果に違いは殆どなく、具体的には、実施例1−1〜1−5における植物丈Tの平均値9.22cm及び葉齢Yの平均値1.42枚は、実施例2−1〜2−5における植物丈Tの平均値9.32cm及び葉齢Yの平均値1.34枚と、植物丈Tの差が「0.10cm」で葉齢Yの差が「0.08枚」であることから、ほぼ差がない。
逆に、再利用シート状物1’を用いた実施例2−1〜2−5の植物丈Tの平均値の方が、実施例2−1〜2−5の植物丈Tの平均値よりも、かえって大きくなる(良くなる)こともあり、少なくとも一度使用した再利用シート状物1’であるからと言って、効果が下がるとは言えない。
【0085】
<表2の評価>
同様に、表2においても、実施例1−1〜1−5の一部は、比較例1−1〜1−5の一部よりも、植物丈Tや葉齢Yが大きくなっており、例えば、実施例1−1、1−2の植物丈Tは、比較例1−3〜1−5の植物丈Tよりも大きく、実施例1−1、1−2、1−4、1−5の葉齢Yは、比較例1−3〜1−5の葉齢Yより大きくなっている。
表2には、実施例2−1〜2−5の一部も、比較例1−1〜1−5の一部よりも、植物丈Tや葉齢Yが大きくなっていることが示されており、例えば、全ての実施例2−1〜2−5の植物丈Tは、比較例1−3〜1−5の植物丈Tよりも大きく、全ての実施例2−1〜2−5の葉齢Yは、比較例1−3〜1−5の葉齢Yより大きいか又は同じ値となっていることも示されている。
【0086】
よって、播種から2週間後においても、実施例のように、シート状物1(1’)で植物Pの根Nは制限しても、シート状物1(1’)がなく根Nが従来通り伸びるものと、植物丈Tや葉齢Yなどの発育(育苗)について、影響がほとんどないと言え、比較例1−1〜1−5は、根切りの手間や、根Nの先端部の切断による定植後の生育不良を招く。
尚、播種から2週間後においても、実施例1−1〜1−5と、実施例2−1〜2−5の効果に違いは殆どなく、具体的には、実施例1−1〜1−5における植物丈Tの平均値11.70cm及び葉齢Yの平均値2.12枚は、実施例2−1〜2−5における植物丈Tの平均値13.32cm及び葉齢Yの平均値2.14枚と、植物丈Tの差が「1.62cm」で葉齢Yの差が「0.02枚」であることから大差はなく、逆に、播種から2週間後でも 実施例2−1〜2−5の植物丈Tの平均値の方が、実施例2−1〜2−5の植物丈Tの平均値よりも大きくなっており、表2からも、少なくとも一度使用した再利用シート状物1’であるからと言って、効果が下がるとは言えない。
【0087】
<表3の評価>
同様に、表3においても、実施例1−1〜1−5の一部は、比較例1−1〜1−5の一部よりも、植物丈Tや葉齢Yが大きくなっており、例えば、実施例1−1、1−2の植物丈Tは、比較例1−5の植物丈Tよりも大きく、実施例1−1、1−2、1−4の葉齢Yは、比較例1−2〜1−4の葉齢Yより大きいか又は同じ値となっている。
表3には、実施例2−1〜2−5の一部も、比較例1−1〜1−5の一部よりも、植物丈Tや葉齢Yが大きくなっていることが示されており、例えば、全ての実施例2−1、2−3、2−5の植物丈Tは、比較例1−4、1−5の植物丈Tよりも大きく、全ての実施例2−1〜2−5の葉齢Yは、全ての比較例1−1〜1−5の葉齢Yより大きいか又は同じ値となっていることも示されている。
【0088】
よって、播種から3週間後においても、実施例の如くシート状物1(1’)で植物Pの根Nは制限しても、シート状物1(1’)がなく根Nが従来通り伸びるものと、植物丈Tや葉齢Yなどの発育(育苗)について、影響がほとんどないと言え、比較例1−1〜1−5は、根切りの手間や、根Nの先端部の切断による定植後の生育不良を招く。
尚、播種から3週間後においても、実施例1−1〜1−5と、実施例2−1〜2−5の効果に違いは殆どなく、具体的には、実施例1−1〜1−5における植物丈Tの平均値15.64cm及び葉齢Yの平均値3.38枚は、実施例2−1〜2−5における植物丈Tの平均値15.72cm及び葉齢Yの平均値3.32枚と、植物丈Tの差が「0.08cm」で葉齢Yの差が「0.06枚」であることからほぼ差はなく、逆に、播種から3週間後でも 実施例2−1〜2−5の植物丈Tの平均値の方が、実施例2−1〜2−5の植物丈Tの平均値よりも大きくなっており、表3からも、少なくとも一度使用した再利用シート状物1’であるからと言って、効果が下がるとは言えない。
【0089】
よって、試験1の結果、表1〜3に示すように、根Nを制限しているにも関わらず、シート状物1を使用していない場合と略同様の植物丈T及び葉齢Yとなることから、植物Pの根Nを痛めたり、発育不良を招くことはない。
又、シート状物1を植物Pに2回使用して場合でも、1回目使用における植物丈Tと2回目使用における植物丈Tの差を0.00cm以上5.00cm以下にする、及び/又は、1回目使用における葉齢Yと2回目使用における葉齢Yの差を0.00枚以上4.00枚以下とすることで、植物の根の制限システム10において、3回目以降も繰り返し使用してもその効果が落ちることが抑制され、長寿命化や経済性の向上が図れる。
【0090】
尚、1回目使用における植物丈Tと2回目使用における植物丈Tの差は、好ましくは0.02cm以上4.00cm以下、更に好ましくは0.04cm以上3.00cm以下としても良く、1回目使用における葉齢Yと2回目使用における葉齢Yの差は、好ましくは0.01枚以上3.00枚以下、更に好ましくは0.02枚以上2.50枚以下としても良い。
又、本発明にかかるシート状物1は、苗等の植物Pの根Nにおける制限で効果があれば、苗以外の植物Pにも効果があるとも言え、更には、同じ生き物として、植物P以外の動物Bにも作用するとも言える。
【0091】
<試験2>
次に、本発明に係る植物の根の制限システム10における実施例3−1、3−2と、比較例2について試験2をする。
尚、この試験2においても、制限システム10としては、まず上述した容器制限システム10’について言及する。
【0092】
<実施例3−1>
実施例3−1でも、上述した実施1−1〜1−5と同様に、本発明に係るシート状物1を貯水槽11の底11aに敷き、当該シート状物1の上に、植物Pを植えた容器12を載置した制限システム10(容器制限システム10’)を用意する。
尚、この実施例3−1においても、シート状物1は、硫化銅を含有させたアクリル繊維(又はアクリル系繊維)を制限繊維3とし、この制限繊維3で少なくとも一部が構成された不織布(制限布帛)4である。
【0093】
<実施例3−2>
実施例3−1で用いた制限システム10(容器制限システム10’)において、シート状物1を、容器制限システム10’にて一度使用したシート状物(再利用シート状物)1’に変えたものを用意する。
この容器制限システム10’において、再利用シート状物1’上に載置した容器12を、実施例3−2とする。
尚、この実施例3−2においても、再利用シート状物1’は、一度使用した以外は、シート状物1と同様で、硫化銅を含有させたアクリル繊維(又はアクリル系繊維)を制限繊維3とし、この制限繊維3で少なくとも一部が構成された不織布(制限布帛)4である。
【0094】
<比較例2>
実施例3−1で用いた制限システム10(容器制限システム10’)において、シート状物1や再利用シート状物1’を用いないものを用意する。
従って、このシステムにおいては、貯水槽11の底11a上に直接載置した容器12を、比較例2とする。
【0095】
<試験2の概要>
上述した実施例3−1、3−2と、比較例2の各容器に対し、まずイネの種(種籾)を播種した。
尚、この種籾は、事前に消毒していても良く、又、発芽(催芽)した種籾を播種しても良く、育苗後の苗は、育苗ポットへ定植した(苗床で育てた苗を田や畑に本式に移し植えた)。
【0096】
次に、実施例3−1、3−2と、比較例2において、播種されたイネにおける根Nの伸長程度を一定期間ごとに観察し、播種されたイネにおける植物丈(草丈)Tと葉齢Yも一定期間ごとに調べた。
詳解すれば、播種から1週間後(播種後7日)の各実施例、比較例における根Nの伸長程度を
図4に示し、播種から2週間後(播種後14日)の各実施例、比較例における根Nの伸長程度を
図5に示し、播種から3週間後(播種後21日)の各実施例、比較例における根Nの伸長程度を
図6に示し、同じく、播種から3週間後(播種後21日)の各実施例、比較例における根N以外の部分(地上部)の様子を
図7に示す。
又、播種から1週間後(播種後7日)の各実施例、比較例における植物丈(草丈)Tと葉齢Yと、播種から2週間後(播種後14日)の各実施例、比較例における植物丈(草丈)Tと葉齢Yと、播種から3週間後(播種後21日)の各実施例、比較例における植物丈(草丈)Tと葉齢Yを
図8に示す。
【0097】
ここで、試験2においても、「葉齢Y」とは、イネ等の植物Pの生育ステージを主稈(親茎)の葉の枚数で表現したものであり、その数え方は、初生葉や鞘葉を除く最初の葉を第1葉とし、この第1葉がついた時を葉齢「1」枚、その次の葉(第2葉)がついた時を葉齢「2」枚、以下同様に、第3葉がついた時を葉齢「3」枚・・・と数える。
尚、葉齢Yの数え方は、初生葉や鞘葉なども含め最初の葉を第1葉とし、この第1葉がついた時を葉齢「1」枚、第2葉がついた時を葉齢「2」枚、以下同様に、第3葉がついた時を葉齢「3」枚・・・と数えても良い点も、試験1と同様である。
【0098】
<試験2の評価>
図4〜6で示されたように、播種から1週間後、2週間後、3週間後の何れの時期においても、実施例3−1のシート状物1や、実施例3−2の再利用シート状物1’を使用した制限システム10(容器制限システム10’)は、シート状物1(1’)を使用していない比較例2より、根Nの伸長程度が抑制されている。
又、
図7、8で示されたように、播種から1週間後、2週間後、3週間後の何れの時期においても、実施例3−1のシート状物1や、実施例3−2の再利用シート状物1’を使用した制限システム10(容器制限システム10’)は、シート状物1(1’)を使用していない比較例2と遜色ない植物丈Tや葉齢Yとなっている。
【0099】
換言すれば、試験2では、実施例3−1、3−2及び比較例2を試験して、各々の播種後7、14及び21日後の根Nの伸長程度を観察し、植物丈(草丈)T及び葉齢Yを測定した結果、実施例3−1、3−2は、比較例2に比べて、根Nの伸長が抑えられ、細根の発生も少ないと同時に、根N以外の部分(地上部)の成長については、植物丈(草丈)T、葉齢Yともに比較例2と差異はなかった(
図8参照)。
従って、実施例3−1、3−2は、植物Pの根N(根域)を制限すると共に、根N以外の部分(地上部)の生長には影響を及ぼさないで、育苗箱(苗箱)等の容器12からのイネの脱着を容易にすることが認められ、当該シート状物1の再利用も可能であることが分かる。
【0100】
<その他>
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。シート状物1、植物の根の制限システム10等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
植物の根の制限システム10(容器制限システム10’)は、上述したように、シート状物1が貯水槽11の底11aに敷かれ、当該シート状物1の上には、植物Pを植えた容器12が載置されていても良いが、その他、シート状物1を、育苗箱、育苗トレー、育苗ポット等の容器12の底12aに敷いたものであっても構わない。