【解決手段】本発明によれば、造形領域を覆い且つ不活性ガスで充満されるチャンバと、前記造形領域上に形成される材料粉体層上の照射領域における材料粉体を焼結させるレーザ光を照射するレーザ光照射部と、前記材料粉体を焼結させて得られる焼結層を切削する切削工具を前記チャンバ内で鉛直水平方向に移動させる切削装置と、前記レーザ光又は前記レーザ光と同一光軸を有する同軸光から成る補正光の照射位置を検出する光検出部と、前記光検出部において検出された前記補正光の照射位置に基づいて前記レーザ光の照射位置を補正する補正手段と、を備え、前記光検出部は、前記切削装置に設けられる、積層造形装置が提供される。
前記切削装置は、前記レーザ光の位置制御に係る平面座標系の原点から等距離にある2点に照射したレーザ光を検出するように前記光検出部を移動させる、請求項3に記載の積層造形装置。
前記切削装置は、前記レーザ光の位置制御に係る平面座標系の原点から等距離にある2点に照射したレーザ光を第1及び第2光検出部がそれぞれ検出するように、前記光検出部を移動させる、請求項5に記載の積層造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0018】
1.第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る積層造形装置は、チャンバ1とレーザ光照射部13とを有する。
【0019】
チャンバ1は、所要の造形領域Rを覆い且つ所定濃度の不活性ガスで充満される。チャンバ1には、内部に粉体層形成装置3が設けられ、上面部にヒューム拡散装置17が設けられる。粉体層形成装置3は、ベース台4とリコータヘッド11とを有する。
【0020】
ベース台4は、積層造形物が形成される造形領域Rを有する。造形領域Rには、造形テーブル5が設けられる。造形テーブル5は、造形テーブル駆動機構31によって駆動されて上下方向(
図1の矢印A方向)に移動することができる。積層造形装置の使用時には、造形テーブル5上に造形プレート7が配置され、その上に材料粉体層8が形成される。また、所定の照射領域は、造形領域R内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。
【0021】
造形テーブル5の周りには、粉体保持壁26が設けられる。粉体保持壁26と造形テーブル5とによって囲まれる粉体保持空間には、未焼結の材料粉体が保持される。
図1においては不図示であるが、粉体保持壁26の下側には、粉体保持空間内の材料粉体を排出可能な粉体排出部が設けられてもよい。かかる場合、積層造形の完了後に造形テーブル5を降下させることによって、未焼結の材料粉体が粉体排出部から排出される。排出された材料粉体は、シューターガイドによってシューターに案内され、シューターを通じてバケットに収容されることになる。
【0022】
リコータヘッド11は、
図2〜
図4に示すように、材料収容部11aと材料供給部11bと材料排出部11cとを有する。
【0023】
材料収容部11aは材料粉体を収容する。なお、材料粉体は、例えば金属粉(例:鉄粉)であり、例えば平均粒径20μmの球形である。材料供給部11bは、材料収容部11aの上面に設けられ、不図示の材料供給装置から材料収容部11aに供給される材料粉体の受口となる。材料排出部11cは、材料収容部11aの底面に設けられ、材料収容部11a内の材料粉体を排出する。なお、材料排出部11cは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に延びるスリット形状である。
【0024】
また、リコータヘッド11の両側面には、ブレード11fb、11rbとリコータヘッド供給口11fsとリコータヘッド排出口11rsとが設けられる。ブレード11fb、11rbは、材料粉体を撒布する。換言するとブレード11fb、11rbは、材料排出部11cから排出された材料粉体を平坦化して材料粉体層8を形成する。リコータヘッド供給口11fs及びリコータヘッド排出口11rsは、リコータヘッド11の移動方向(矢印B方向)に直交する水平1軸方向(矢印C方向)に沿ってそれぞれ設けられ、不活性ガスの供給及び排出を行う(詳細は後述)。本明細書において、「不活性ガス」とは、材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が例示される。
【0025】
切削装置50は、スピンドルヘッド60と光検出部41とが設けられた加工ヘッド57を有する。加工ヘッド57は、不図示の加工ヘッド駆動機構により制御可能に、スピンドルヘッド60と光検出部41とを所望の位置に水平鉛直方向に移動させる。
【0026】
スピンドルヘッド60は、
図5に示すように、不図示のエンドミル等の切削工具を取り付けて回転させることができるように構成されており、材料粉体を焼結して得られた焼結層の表面や不要部分に対して切削加工を行うことができる。また切削工具は複数種類の切削工具であることが好ましく、使用する切削工具は不図示の自動工具交換装置によって、造形中にも交換可能である。
【0027】
光検出部41は、例えば受光素子又はCCD(Charge−Coupled Device)等の撮像素子であり、レーザ光Lの照射位置の補正処理に使用されるものである。かかる補正処理の内容については後に詳述する。
【0028】
ここで、スピンドルヘッド60と光検出部41とがともに同一の駆動系(ここでは加工ヘッド57)に設けられているため、スピンドルヘッド60に装着される切削工具の位置制御に係る平面座標系(
図5に示すx−y座標、座標を(x,y)と示す。)において光検出部41の座標は既知である。第1実施形態に係る光検出部41が、切削工具の位置制御に係る平面座標系における1つの軸、すなわちx軸あるいはy軸上に配置されることが好ましい。ここでは、光検出部41はx軸上に配置される。
図5においては、切削工具(主軸)を原点(0,0)として光検出部41は、(a,0)に配置されている。かかる構成によって、後述の補正による切削工具の位置制御に係る平面座標系とレーザ光Lの位置制御に係る平面座標系との対応付けをより高精度に行うことができる。なお、以下において造形領域Rに平行な切削工具の位置制御に係る平面座標系を単に主軸座標系といい、造形領域Rに平行なレーザ光Lの位置制御に係る平面座標系を単にレーザ光座標系という。
【0029】
チャンバ1の上面には、ウィンドウ1aを覆うようにヒューム拡散装置17が設けられる。ヒューム拡散装置17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔17eが設けられており、不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは細孔17eを通じて清浄室17fに充満される。そして、清浄室17fに充満された清浄な不活性ガスは、開口部17bを通じてヒューム拡散装置17の下方に向かって噴出される。
【0030】
レーザ光照射部13は、チャンバ1の上方に設けられる。レーザ光照射部13は、造形領域R上に形成される材料粉体層8の所定箇所にレーザ光Lを照射して照射位置の材料粉体を焼結させる。具体的には、レーザ光照射部13は、レーザ光源42と2軸のガルバノミラー43a、43bとフォーカス制御ユニット44とを有する。なお、各ガルバノミラー43a、43bは、それぞれガルバノミラー43a、43bを回転させるアクチュエータを備えている。
【0031】
レーザ光源42はレーザ光Lを照射する。ここで、レーザ光Lは、材料粉体を焼結可能なレーザであって、例えば、CO
2レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザ等である。
【0032】
フォーカス制御ユニット44は、レーザ光源42より出力されたレーザ光Lを集光し所望のスポット径に調整する。2軸のガルバノミラー43a、43bは、レーザ光源42より出力されたレーザ光Lを制御可能に2次元走査する。特にガルバノミラー43aは、レーザ光Lを矢印B方向(X軸方向)に走査し、ガルバノミラー43bは、レーザ光Lを矢印C方向(Y軸方向)に走査する。ガルバノミラー43a、43bは、それぞれ、不図示の制御装置から入力される回転角度制御信号の大きさに応じて回転角度が制御される。かかる特徴により、ガルバノミラー43a、43bの各アクチュエータに入力する回転角度制御信号の大きさを変化させることによって、所望の位置にレーザ光Lを照射することができる。
【0033】
ガルバノミラー43a、43bを通過したレーザ光Lは、チャンバ1に設けられたウィンドウ1aを透過して造形領域Rに形成された材料粉体層8に照射される。ウィンドウ1aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光Lがファイバーレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ1aは石英ガラスで構成可能である。
【0034】
次に、不活性ガス給排系統について説明する。不活性ガス給排系統は、チャンバ1に設けられる複数の不活性ガスの供給口及び排出口と、各供給口及び各排出口と不活性ガス供給装置15及びヒュームコレクタ19とを接続する配管を含む。本実施形態では、リコータヘッド供給口11fs、チャンバ供給口1b、副供給口1e、及びヒューム拡散装置供給口17gを含む供給口と、チャンバ排出口1c、リコータヘッド排出口11rs、副排出口1fを含む排出口とを備える。
【0035】
リコータヘッド供給口11fsは、チャンバ排出口1cの設置位置に対応してチャンバ排出口1cに対面するように設けられる。好ましくは、リコータヘッド供給口11fsは、リコータヘッド11が不図示の材料供給装置の設置位置に対して所定の照射領域を挟んで反対側に位置しているときにチャンバ排出口1cと対面するように、矢印C方向に沿ってリコータヘッド11の片面に設けられる。
【0036】
チャンバ排出口1cは、チャンバ1の側板にリコータヘッド供給口11fsに対面するように所定の照射領域から所定距離離れて設けられる。また、チャンバ排出口1cに接続するように不図示の吸引装置が設けられるとよい。当該吸引装置は、レーザ光Lの照射経路からヒュームを効率よく排除することを助ける。また、吸引装置によってチャンバ排出口1cにおいて、より多くの量のヒュームを排出することができ、造形空間1d内にヒュームが拡散しにくくなる。
【0037】
チャンバ供給口1bは、ベース台4の端上に所定の照射領域を間に置いてチャンバ排出口1cに対面するように設けられる。チャンバ供給口1bは、リコータヘッド11が所定の照射領域を通過してリコータヘッド供給口11fsが所定の照射領域を間に置かずにチャンバ排出口1cに直面する位置にあるとき、リコータヘッド供給口11fsからチャンバ供給口1bに選択的に切り換えられて開放される。そのため、チャンバ供給口1bは、リコータヘッド供給口11fsから供給される不活性ガスと同じ所定の圧力と流量の不活性ガスをチャンバ排出口1cに向けて供給するので、常に同じ方向に不活性ガスの流れを作り出し、安定した焼結を行える点で有利である。
【0038】
リコータヘッド排出口11rsは、リコータヘッド11のリコータヘッド供給口11fsが設けられている片面に対して反対側の側面に、矢印C方向に沿って設けられる。リコータヘッド供給口11fsから不活性ガスを供給できないとき、換言すれば、チャンバ供給口1bから不活性ガスを供給するときに、所定の照射領域のより近くで不活性ガスの流れを作り出していくらかのヒュームを排出するので、ヒュームをより効率よくレーザ光Lの照射経路から排除することができる。
【0039】
また、本実施形態の不活性ガス給排系統は、チャンバ排出口1cに対面するようにチャンバ1の側板に設けられヒュームコレクタ19から送給されるヒュームが除去された清浄な不活性ガスを造形空間1dに供給する副供給口1eと、チャンバ1の上面に設けられヒューム拡散装置17へ不活性ガスを供給するヒューム拡散装置供給口17gと、チャンバ排出口1cの上側に設けられチャンバ1の上側に残留するヒュームを多く含む不活性ガスを排出する副排出口1fとを備える。
【0040】
チャンバ1への不活性ガス供給系統には、不活性ガス供給装置15と、ヒュームコレクタ19が接続されている。不活性ガス供給装置15は、不活性ガスを供給する機能を有し、例えば、周囲の空気から窒素ガスを取り出す膜式窒素セパレータを備える装置である。本実施形態では、
図1に示すように、リコータヘッド供給口11fs、チャンバ供給口1b、及びヒューム拡散装置供給口17gと接続される。
【0041】
ヒュームコレクタ19は、その上流側及び下流側にそれぞれダクトボックス21、23を有する。チャンバ1からチャンバ排出口1c及び副排出口1fを通じて排出されたヒュームを含む不活性ガスは、ダクトボックス21を通じてヒュームコレクタ19に送られ、ヒュームコレクタ19においてヒュームが除去された清浄な不活性ガスがダクトボックス23を通じてチャンバ1の副供給口1eへ送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。
【0042】
ヒューム排出系統として、
図1に示すように、チャンバ排出口1c、リコータヘッド排出口11rs、及び副排出口1fとヒュームコレクタ19とがダクトボックス21を通じてそれぞれ接続される。ヒュームコレクタ19においてヒュームが取り除かれた後の清浄な不活性ガスは、チャンバ1へと返送され再利用される。
【0043】
(第1実施形態に係る積層造形方法及び補正方法)
次に、
図5〜
図9を用いて、第1実施形態に係る積層造形方法及び補正方法について説明する。後述するように、第1実施形態に係る補正方法は、積層造形中に実行されることが好ましい。なお、
図6〜
図9では、視認性を考慮し
図1では示していた構成要素を一部省略している。
【0044】
まず、造形テーブル5上に造形プレート7を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する(
図6)。この状態で材料収容部11a内に材料粉体が充填されているリコータヘッド11を
図6の矢印B方向に造形領域Rの左側から右側に移動させることによって、造形プレート7上に1層目の材料粉体層8を形成する。なお、リコータヘッド11のかかる移動中には、リコータヘッド11及び切削装置50の物理的な干渉を防ぐために、切削装置50を
図6における右側(退避位置)に退避させている。また、切削装置50は鉛直水平方向に移動可能に構成されるため、図中右側への退避に限らず更に鉛直上方向や紙面奥方向に退避させておいてもよい。
【0045】
次に、リコータヘッド11を造形領域Rの外に退避させるとともに材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することで材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、
図7に示すように、積層造形物全体に対して所定厚を有する分割層である1層目の焼結層81fを得る。
【0046】
次に、造形テーブル5の高さを材料粉体層8の所定厚(1層)分下げ、リコータヘッド11を造形領域Rの右側から左側に移動させることによって、焼結層81f上に2層目の材料粉体層8を形成する。かかる材料粉体層8の形成をリコートと呼ぶ。
【0047】
ここで、次に詳述する「補正方法」が実行される。以下、用語「目標照射位置」及び「実照射位置」は、光検出部41における検出可能領域内の位置としてそれぞれ使用するものとする。また本実施形態では、光検出部41の目標照射位置へと照射し、実照射位置との誤差を特定するための補正光として、焼結層の形成にも使用するレーザ光Lを用いる。なお、レーザ光Lによって光検出部41が損傷されるのを防止するため、補正時のレーザ光Lは、光検出部41が検出できる範囲で出力が弱められてもよいし、半透明板を介して減衰されてから光検出部41に入射するように構成されてもよい。
【0048】
図8に示すように、光検出部41における検出可能領域の中心が第1目標照射位置(詳細は後述)に位置するように切削装置50を所定の測定位置まで移動させる。第1目標照射位置に対応する回転制御信号がガルバノミラー43a、43bにそれぞれ入力される。ガルバノミラー43a、43bはそれぞれ所定の角度を向く。レーザ光源42からレーザ光Lが出力されガルバノミラー43a、43bを介して、光検出部41における検出可能領域上であって第1目標照射位置に対応する所定の位置(第1実照射位置)に照射される。ここで、熱変位の影響で第1実照射位置は、第1目標照射位置から幾分かずれた位置となることがある。ただし、当該変位量は光検出部41における検出可能領域に対して相対的に小さいものであり、当該検出可能領域に第1実照射位置も含まれている。すなわち、光検出部41により第1実照射位置が検出される。
【0049】
次に、光検出部41における検出可能領域の中心が第2目標照射位置に位置するように切削装置50を移動させる。第2目標照射位置に対応する回転制御信号がガルバノミラー43a、43bにそれぞれ入力される。ガルバノミラー43a、43bはそれぞれ所定の角度を向く。レーザ光源42からレーザ光Lが出力されガルバノミラー43a、43bを介して、第2目標照射位置に対応する所定の位置(第2実照射位置)に照射される。ここで、熱変位の影響で第2実照射位置は第2目標照射位置から幾分かずれた位置となることがある。ただし、当該変位量は光検出部41における検出可能領域に対して相対的に小さいものであり、当該検出可能領域に第2実照射位置も含まれている。すなわち、光検出部41により第2実照射位置が検出される。
【0050】
第1目標照射位置と第2目標照射位置は、例えば
図5に示すx座標とy座標のうち、一方が同一でもう一方が異なるように構成されることが望ましい。本例でいえば、x座標を同一にしてy座標を異なる値に設定するため、
図8における紙面奥方向に切削装置50を移動させることになる。
図10に当該移動の前後に係る状態を示す。このとき、レーザ光座標系(
図10に示すX−Y座標、座標を[X,Y]と示す。)の原点から互いに等距離に位置するように、第1及び第2目標照射位置を決定することが好ましい。これにより、2点の測定誤差が略同一となり全体としてより高精度な補正を実現することができる。
図10においては、第1目標照射位置は、[0,B]に位置し、第2目標照射位置は、[0,−B]に位置している。
【0051】
なお、ガルバノミラー43a、43bを用いたレーザ光Lの照射位置制御とは、上述の通りあくまでも2軸のガルバノミラー43a、43bの角度を制御するものである。つまり、同一の角度を変化させても照射位置の高さによって照射位置上での距離変位が異なってくる(光てこの原理)。したがって、光検出部41を予め定めた所定の高さにして実施することが望ましい。本補正方法では、造形テーブル5とは異なる所定高さにある光検出部41上へ照射するので、予め角度とかかる所定高さでの照射位置の対応付けを行っておく必要がある。
【0052】
更に、リコータヘッド11との物理的干渉について特に問題がなければ、補正精度の観点からすれば光検出部41とガルバノミラー43a、43bとの高さの差が大きいことが好ましいと解する。換言すると、切削装置50の高さをできるだけ低い位置に移動させることが好ましい。なぜなら、光てこの原理から、距離がある方が同一の誤差であっても大きな変位として計測できるからである。
【0053】
次に、不図示の補正手段(例えば、ガルバノミラー43a、43bを制御する不図示の制御装置、制御回路等)が、第1目標照射位置と第1実照射位置との誤差Δ1及び第2目標照射位置と第2実照射位置との誤差Δ2を算出する。補正手段は、それぞれの目標照射位置と実照射位置とが略一致するようにレーザ光Lの照射位置を補正する。換言すると、補正手段は、誤差Δ1及びΔ2が略0となるようにレーザ光Lの照射位置を補正する。具体的には、並進ずれ及び回転ずれの両成分を補正することができる。参考までに、
図11に並進ずれや回転ずれのパターンを示す。
図11の上段は第1目標照射位置と第1実照射位置が示されており、下段は第2目標照射位置と第2実照射位置が示されている。また、外側の円は光検出部41における検出可能領域であり、内側の円は、目標照射位置(ハッチング無し)と実照射位置(ハッチング有り)を示している。上記Δ1及びΔ2は、これらX方向の並進ずれΔx、Y方向の並進ずれΔy及び回転ずれΔθの組み合わせから成る。任意の目標照射位置の列ベクトルをp=
T(x
p,y
p)とし、かかる目標照射位置に対応する実照射位置の列ベクトルをq=
T(x
q,y
q)とすると、これらは
p=A
Rq+d (1)
【0054】
と表せる。ただしA
Rは−Δθを回転角とする2次元回転行列であり、dは並進ずれを成分とする列ベクトル(d=
T(Δx,Δy))である。すなわち、Δ1及びΔ2からA
R及びdを算出し、式(1)を補正として適用することで、実照射位置と目標照射位置とを略一致させることができる(「補正方法」はここまで。)。
【0055】
次に、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射し材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、
図9に示すように、2層目の焼結層82fを得る。
【0056】
以上の工程を繰り返すことによって、3層目以降の焼結層が形成される。隣接する焼結層は、互いに強く固着される。必要数の焼結層を形成した後、未焼結の材料粉体を除去することによって、造形した焼結体を得ることができる。この焼結体は、例えば樹脂成形用の金型として利用可能である。
【0057】
なお、上述の補正方法に際して誤差に対する閾値を設けてもよい。例えば、誤差の絶対値|Δ1|と閾値T1とを比較し、誤差の絶対値|Δ2|と閾値T2とを比較して、
|Δ1|>T1及び|Δ2|>T2
のうち少なくとも一方を満たすとき、或いは、
|Δ1|≧T1及び|Δ2|≧T2
のうち少なくとも一方を満たすとき、補正手段がレーザ光Lの照射位置を補正する。
【0058】
また、第1目標照射位置から第2目標照射位置へ移動する際にも当該移動に合わせてレーザ光Lを移動させながら照射し続け、その移動軌跡を考慮してもよい。軌跡を考慮することで計測誤差を少なくし、より信頼度の高い補正を行うことができると解する。
【0059】
好ましくは、リコータヘッド11によるリコート動作と切削装置50の移動との物理的干渉を回避するために、リコータヘッド11によるリコート動作(所定の一方向への移動)の完了後に切削装置50の移動が行われると、従来技術に比してより短い時間で積層造形を行うことができる。更に好ましくは、リコータヘッド11によるリコート動作と切削装置50の移動との物理的干渉を回避しつつもこれらを略同時に行うことで、更なる短い時間で積層造形を行うことができる。また、第1実施形態に係る補正方法では、光検出部41が主軸座標系の何れか1つの座標軸上に配置されるため、精度の高い補正を実現することができる。
【0060】
2.第2実施形態
続いて、第2実施形態に係る積層造形装置を説明する。第2実施形態では、補正時における複数の目標照射位置と同数である複数の光検出部41を有する。
図12に示すように、ここでは2つの光検出部41(第1光検出部41a、第2光検出部41b)が切削装置50に設けられる。ここで、スピンドルヘッド60、第1光検出部41a、及び第2光検出部41bがともに同一の駆動系(ここでは加工ヘッド57)に設けられているため、主軸座標系(
図12に示すx−y座標)において第1光検出部41a及び第2光検出部41bの座標は既知である。ここでは、切削工具の位置制御に係る平面座標系における1つの軸(ここでは、x軸)上から等距離に配置されることが好ましい。
図12においては、切削工具(主軸)を原点として、第1光検出部41aは、(a,b)に配置され且つ第2光検出部41bは、(a,−b)に配置される。かかる構成によれば、より高精度にレーザ光座標系と主軸座標系との対応付けをとることができる。
【0061】
(第2実施形態に係る補正方法)
図6〜
図9、
図11〜
図13を用いて、第2実施形態に係る積層造形方法及び補正方法について説明する。後述するように、第1実施形態に係る補正方法同様、第2実施形態に係る補正方法も積層造形中に実行されることが好ましい。
【0062】
まず、造形テーブル5上に造形プレート7を載置した状態で造形テーブル5の高さを適切な位置に調整する(
図6)。この状態で材料収容部11a内に材料粉体が充填されているリコータヘッド11を
図6の矢印B方向に造形領域Rの左側から右側に移動させることによって、造形プレート7上に1層目の材料粉体層8を形成する。なお、リコータヘッド11のかかる移動中には、リコータヘッド11及び切削装置50の物理的な干渉を防ぐために、切削装置50を
図6における右側(退避位置)に退避させている。また、切削装置50は鉛直水平方向に移動可能に構成されるため、図中右側への退避に限らず更に鉛直上方向や紙面奥方向に退避させておいてもよい。
【0063】
次に、リコータヘッド11を造形領域Rの外に退避させるとともに材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することで材料粉体層8のレーザ光照射部位を焼結させることによって、
図7に示すように、積層造形物全体に対して所定厚を有する分割層である1層目の焼結層81fを得る。
【0064】
次に、造形テーブル5の高さを材料粉体層8の所定厚(1層)分下げ、リコータヘッド11を造形領域Rの右側から左側に移動させることによって、焼結層81f上に2層目の材料粉体層8を形成する。
【0065】
ここで、次に詳述する「補正方法」が実行される。第1実施形態と同じく本実施形態では、光検出部41の目標照射位置へと照射し、実照射位置との誤差を特定するための補正光として、焼結層の形成にも使用するレーザ光Lを用いる。なお、レーザ光Lによって光検出部41が損傷されるのを防止するため、補正時のレーザ光Lは、光検出部41が検出できる範囲で出力が弱められてもよいし、半透明板を介して減衰されてから光検出部41に入射するように構成されてもよい。
【0066】
図8に示すように、第1光検出部41aにおける検出可能領域の中心が第1目標照射位置に位置するように切削装置50を所定の測定位置まで移動させる。このとき、
図12に示すように、第2光検出部41bにおける検出可能領域の中心は、第2目標照射位置に位置することとなる。第1実施形態と同様に、レーザ光座標系(
図13に示すX−Y座標、座標を[X,Y]と示す。)の原点から互いに等距離に位置するように、第1及び第2目標照射位置を決定することが好ましい。これにより、2点の測定誤差が略同一となり全体としてより高精度な補正を実現することができる。
図13においては、第1目標照射位置は、[0,B]に位置し、第2目標照射位置は、[0,−B]に位置している。
【0067】
第1目標照射位置に対応する回転制御信号がガルバノミラー43a、43bにそれぞれ入力される。ガルバノミラー43a、43bはそれぞれ所定の角度を向く。レーザ光源42からレーザ光Lが出力されガルバノミラー43a、43bを介して、第1目標照射位置に対応する所定の位置(第1実照射位置)に照射される。ここで、熱変位の影響で第1実照射位置は、第1目標照射位置から幾分かずれた位置となることがある。ただし、当該変位量は第1光検出部41aにおける検出可能領域に対して相対的に小さいものであり、当該検出可能領域に第1実照射位置も含まれている。すなわち、第1光検出部41aにより第1実照射位置が検出される。
【0068】
続いて、第2目標照射位置に対応する回転制御信号がガルバノミラー43a、43bにそれぞれ入力される。ガルバノミラー43a、43bはそれぞれ所定の角度を向く。レーザ光源42からレーザ光Lが出力されガルバノミラー43a、43bを介して、第2目標照射位置に対応する所定の位置(第2実照射位置)に照射される。ここで、熱変位の影響で第2実照射位置は、第2目標照射位置から幾分かずれた位置となることがある。ただし、当該変位量は第2光検出部41bにおける検出可能領域に対して相対的に小さいものであり、当該検出可能領域に第2実照射位置も含まれている。すなわち、第2光検出部41bにより第2実照射位置が検出される。
【0069】
次に、不図示の補正手段(例えば、ガルバノミラー43a、43bを制御する不図示の制御装置、制御回路等)が、第1目標照射位置と第1実照射位置との誤差Δ1及び第2目標照射位置と第2実照射位置との誤差Δ2を算出する。補正手段は、それぞれの目標照射位置と実照射位置とが略一致するようにレーザ光Lの照射位置を補正する。換言すると、補正手段は、誤差Δ1及びΔ2が略0となるようにレーザ光Lの照射位置を補正する。具体的には、第1実施形態と同様に、
図11に示すような並進ずれ及び回転ずれの両成分を補正することができる。すなわち、実照射位置と目標照射位置とを略一致させることができる(「補正方法」はここまで。)。
【0070】
次に、材料粉体層8中の所定部位にレーザ光Lを照射することによって材料粉体層8のレーザ光L照射部位を焼結させることによって、
図9に示すように、2層目の焼結層82fを得る。
【0071】
以上の工程を繰り返すことによって、3層目以降の焼結層が形成される。隣接する焼結層は、互いに強く固着される。必要数の焼結層を形成した後、未焼結の材料粉体を除去することによって、造形した焼結体を得ることができる。この焼結体は、例えば樹脂成形用の金型として利用可能である。
【0072】
なお、第1実施形態同様に補正方法に際して誤差に対する閾値を設けてもよい。例えば、誤差の絶対値|Δ1|と閾値T1とを比較し、誤差の絶対値|Δ2|と閾値T2とを比較して、
|Δ1|>T1及び|Δ2|>T2
のうち少なくとも一方を満たすとき、或いは、
|Δ1|≧T1及び|Δ2|≧T2
のうち少なくとも一方を満たすとき、補正手段がレーザ光Lの照射位置を補正する。
【0073】
好ましくは、リコータヘッド11によるリコート動作と切削装置50の移動との物理的干渉を回避するために、リコータヘッド11によるリコート動作(所定の一方向への移動)の完了後に切削装置50の移動が行われると、従来技術に比してより短い時間で積層造形を行うことができる。更に好ましくは、リコータヘッド11によるリコート動作と切削装置50の移動との物理的干渉を回避しつつもこれらを略同時に行うことで、更なる短い時間で積層造形を行うことができる。特に、第2実施形態に係る補正方法は、切削装置50の移動を伴わずに第1目標照射位置及び第2目標照射位置に向けてレーザ光Lを照射することができるため、短時間でレーザ光Lの照射位置の補正を実現することができる。
【0074】
第1実施形態及び第2実施形態に係る補正は任意のタイミングで実施してよいが、より高精度の造形を実現するためには補正の頻度は高い方が望ましい。またかかる補正は、特にその頻度が高いときは、造形時間短縮の観点からリコート中に行われるのが望ましい。対して、不活性ガスの供給やヒュームの除去を効率化するためチャンバ1は小型化されることが望ましいため、リコート中に補正を行った場合、切削装置50又は切削工具と、リコータヘッド11とが物理的に干渉するおそれがある。
【0075】
そのため、本実施形態のようにリコータヘッド11が両側面にブレード11fb、11rbを備え、リコート1回毎にリコータヘッド11の移動方向が切り替わる場合は、リコータヘッド11の移動方向と、補正開始時の切削装置50の移動方向(すなわち、退避位置から測定位置に移動するときの方向)とが一致しているときに補正を実行するように構成することが望ましい。また、リコータヘッド11の片側にのみブレードを設け、リコート時のリコータヘッド11の移動方向が常に一定になるように構成してもよい。この場合はリコータヘッド11の移動方向と、補正開始時の切削装置50の移動方向とが一致するように構成すればよい。以上のような構成によれば、リコート中に補正を行う場合でも前述の物理的干渉を防止できる。
【0076】
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0077】
第1に、上記実施形態ではレーザ光Lの走査手段として一対のガルバノミラー43a、43bを用いたが、レーザ光Lは別の手段によって走査させてもよい。
【0078】
第2に、材料粉体の焼結用に用いるレーザ光Lとは別異の光であって当該レーザ光Lと同一光軸を有する同軸光を補正光として用いてもよい。補正光は、例えば不可視のレーザ光Lの照射位置を表示するためのガイド光である。また上述の補正は、同軸光の照射位置に基づいて行うことができる。
【0079】
第3に、目標照射位置は1つであっても3つ以上であってもよい。1つである場合は、目標照射位置をレーザ光座標系の原点とすることでより高い精度の補正を実現することができる。ただし、1つである場合は回転成分のずれを補正することができない点に留意する。