【解決手段】サービスホールカバー30は、インナーパネル14に開設されたサービスホール18を塞いだ際に該インナーパネル14の側になる発泡シート32と、該発泡シート32に接着した硬質シート34との積層構造をなし、サービスホール18を塞ぎ得る立体形状に形成されている。そして、発泡シート32には、サービスホール18に嵌合する嵌合部40が形成されている。
前記嵌合部は、前記サービスホールカバーが前記サービスホールを塞いだ際に、該サービスホールの内部へ進入する凸形状になっている請求項1記載のサービスホールカバー。
前記係合爪部は、前記発泡シートを部分的に外方へ膨出させることにより形成され、該発泡シートの膨出部分と該硬質シートとの間に空洞が形成されている請求項4記載のサービスホールカバー。
前記サービスホールカバーの周縁にフランジが形成されており、該サービスホールカバーにより前記サービスホールを塞いだ際に、前記フランジが前記インナーパネルに当接して該サービスホールを封止する請求項1〜5の何れか一項に記載のサービスホールカバー。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、各種電装品等を組み込む作業等の便宜のために、所要寸法の大きさのサービスホールが開設されている。例えば、車両用ドア10は、
図10に示すように、車両外側になるアウターパネル12と、車両内側になるインナーパネル14とからなり、両パネル12,14の間に、垂直に昇降するウィンドウ16や該ウィンドウ16をモータで昇降させる機構等の電装品(図示せず)を介在させる空間15が画成されている。前記インナーパネル14の適所には、所要寸法の大きさのサービスホール(開口部)18が開設され、前記ウィンドウ昇降機構等の電装品を前記空間15内に組み込む際に、作業者の手が該空間15へ容易に到達して組み込み作業をなし得るようになっている。なお、
図10において符号20は、前記ドア10におけるインナーパネル14の外側(車両の内側になる)をカバーするドア内装パネルを示している。
【0003】
前記インナーパネル14のサービスホール18は開口部であるから、前記両パネル12,14の空間15へ各種電装品を組み付ける作業が終了すると、該サービスホール18は、例えばポリエチレン(PE)シートに吸遮音材を貼り付けたサービスホールカバー21で覆われる。具体的には、前記ポリエチレンシートからなるサービスホールカバー21は、前記サービスホール18の開口形状に倣った形状であって、かつ該サービスホール18の開口寸法より若干大きい寸法に設定されている。そして、前記サービスホール18を有する前記インナーパネル14の外周縁に、自己粘着テープ(例えば、ブチルゴム系粘着剤である所謂ブチルテープ)を貼着した後、前記サービスホールカバー21を前記自己粘着テープに当てがって押圧することでインナーパネル14に貼り付ける。これにより前記サービスホール18は、前記サービスホールカバー21により全面的に覆われる。なお、車両走行時の音や前記電装品が発する音等を吸収乃至遮蔽するために、前記サービスホールカバー21に適宜の吸遮音材が設けられることは前述した通りである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記インナーパネル14に開設したサービスホール18は、前述したように、例えば車両用ドア10の空間15に電装品等を組み込むための大きな開口部であるから、該開口部を経て車両走行時の各種騒音が車内へ侵入して来てしまう。このため、適宜の吸遮音材を取り付けた前記サービスホールカバー21で前記サービスホール18を塞ぐのであるが、前記のように自己粘着テープを使用して前記インナーパネル14の周縁に接着してから取り付ける必要があるため、作業性が悪く煩雑である、という難点がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、従来技術に内在する課題を好適に解決するべく提案されたものであって、インナーパネルに簡単に取り付けてサービスホールを塞ぐことで作業性を向上させ、かつ吸遮音効果も高めることができるサービスホールカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、
車両のインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐサービスホールカバーにおいて、
前記サービスホールカバーは、前記サービスホールを塞いだ際に前記インナーパネルに接する側になる発泡シートと、該発泡シートに接着した硬質シートとから構成されており、
前記サービスホールカバーの前記発泡シート側に、前記サービスホールと嵌合する嵌合部が形成されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、サービスホールカバーは、嵌合部をサービスホールに嵌合させればインナーパネルに取り付けることができ、取り付け作業性の向上を図り得る。そしてサービスホールカバーは、発泡シートと硬質シートとから構成されているので、該硬質シートにより形状保持性が確保される。また、インナーパネルに取り付けたサービスホールカバーは、インナーパネルに接する側となる発泡シートがサービスホールに臨んでおり、車両走行時に発生する各種騒音を吸遮音して該騒音がサービスホールを介して車内へ侵入することを抑制するので、別途の吸遮音材を不要とし得る。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記嵌合部は、前記サービスホールカバーが前記サービスホールを塞いだ際に、該サービスホールの内部へ進入する凸形状になっていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、嵌合部が凸形状になっていることで、サービスホールカバーの剛性を高めることができる。そして、前記凸形状の部分がサービスホールの内部へ進入することで、サービスホールカバーがインナーパネルに嵌合するので取付作業が容易になる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記嵌合部の外部輪郭は、前記サービスホールの開口輪郭に合致していることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、サービスホールカバーをインナーパネルに取り付けた状態では凸形状をした嵌合部がサービスホール内に位置しているので、車両走行時の振動や車両用ドアの開閉時の衝撃がサービスホールカバーに作用した場合に、該サービスホールカバーがインナーパネルに対してずれ動くのを防止し得る。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記嵌合部には、前記サービスホールの開口縁部に係合する係合爪部が形成されていることを要旨とする。
請求項4に係る発明では、嵌合部に形成された係合爪部がサービスホールの開口縁部に係合することで、サービスホールカバーをインナーパネルに対し確実に取り付けることができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記係合爪部は、前記発泡シートを部分的に外方へ膨出させることにより形成され、該発泡シートの膨出部分と該硬質シートとの間に空洞が形成されているいることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、発泡シートを膨出させて形成した係合爪部は、硬質シートとの間の空洞によって弾性変形が容易であるので、インナーパネルに対するサービスホールカバーの取り付けが容易である。
【0012】
請求項6に係る発明では、前記サービスホールカバーの周縁にフランジが形成されており、該サービスホールカバーにより前記サービスホールを塞いだ際に、前記フランジが前記インナーパネルに当接して該サービスホールを封止するすることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、フランジがインナーパネルに当接することでサービスホールが封止されるので、車外騒音や雨水がサービスホールを介して車内に侵入することを防止し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るサービスホールカバーによれば、サービスホールに嵌合可能な嵌合部を備えているので、インナーパネルに簡単に取り付けてサービスホールを塞ぐことが可能となって作業性が向上すると共に、該サービスホールカバーが発泡シートを備えているので吸遮音効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係るサービスホールカバーにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。実施例では、
図10に示す車両用ドアのインナーパネルに開設したサービスホールを塞ぐサービスホールカバーについて説明するが、該インナーパネルは車両用ドアに付帯するパネルに限るものではない。なお、以後の説明では、インナーパネルに対してサービスホールカバーを取り付けた状態を基準として横方向および縦方向を規定すると共に、該インナーパネルの厚み方向を前後方向と云い、また車内側を指向する方向を前側と云うものとする。
【0016】
(サービスホール18について)
例えば、車両用ドア10のインナーパネル14は鋼板をプレス成形したものであって、
図2に示すように、該インナーパネル14には複数(実施例では2つ)のサービスホール18が開設されている。前記サービスホール18は、前述したように前記アウターパネル12とインナーパネル14との空間15に電装品等を組み込むための作業用開口部であって、実施例に係るのサービスホールカバー30は前記インナーパネル14の右上部に開設されたサービスホール18(18A)を塞ぐものである。このサービスホール18(18A)は、横長の開口部として形成されており、その内縁を、上縁部18a、下縁部18bおよび左右の側縁部18c,18dと称する。そして、上縁部18aは略横方向に直線状に延在すると共に、右側縁部18dは縦方向に直線状に延在している。また、左側縁部18cは縦方向において湾曲して延在すると共に、下縁部18bは横方向において雲形に延在している。
【0017】
(当受け部22について)
また、
図2、
図4および
図5に示すように、前記インナーパネル14には、前記サービスホール18の開口縁部の周りを囲んで一段窪んだ形状になっている当受け部22が設けられている。この当受け部22は、
図4に示すように、前記サービスホールカバー30を前記サービスホール18に当てがって塞いだ状態でインナーパネル14に取り付けた際に、該サービスホールカバー30の外周に沿設したフランジ38(後述)を安定的に当接させるものである。
【0018】
(サービスホールカバー30について)
実施例のサービスホールカバー30は、殊に
図4に示すように、発泡シート32と、該発泡シート32に重ね合わせた硬質シート34とからなる2層の積層シートとして構成されている。このサービスホールカバー30は、
図6〜
図8に示す工程を経て製造されるもので、該工程で前記発泡シート32と硬質シート34とは熱接着される(後述)。そして、前記サービスホール18を塞いだ状態でサービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付けた際に、前記発泡シート32の面は前記インナーパネル14に接する側(後側)になり、前記硬質シート34は車内側(前側)となる。なお、発泡シート32および硬質シート34が熱接着されたサービスホールカバー30は、前記サービスホール18を塞いで前記空間15へ突出する嵌合部36と、該嵌合部36の外周囲に沿設されたフランジ38と、該フランジ38の後側に設けられた係合爪部40とを備えている(何れも後述)。このサービスホールカバー30は、前記フランジ38および係合爪部40をサービスホール18の開口縁部に係合させることで、前記インナーパネル14に取り付けられて該サービスホール18を完全に閉塞する。
【0019】
(発泡シート32について)
前記発泡シート32は、発泡成形された合成樹脂のシート材である。実施例の発泡シート32は、ポリエチレン(PE)を発泡成形した軟質のシート材を材質とし、所要の弾力性および柔軟性を備えている。前記発泡シート32は、独立気泡構造の発泡シートであって、通気性や吸水性を有していない。従って、車両走行時に発生する各種騒音を吸収・遮蔽する機能に優れている。そして、発泡シート32は厚み方向に圧縮変形が可能である。また、発泡シート32の厚みは2.0〜15.0mmの範囲が好ましい。
【0020】
(硬質シート34について)
前記硬質シート34は、合成樹脂を材質とするシート材であって、実施例の合成樹脂は、前記発泡シート32にポリエチレンを採用しているため、ソリッドのポリエチレン(PE)シートを材質としている。このため前記硬質シート34は形状保持性を有している。また、凹状(後から見れば凸状)に形成されることで、外力に対して適度の剛性を有し、外力により撓み変形や曲げ変形が発現した場合でも、この外力が解除された際には弾性域では元の形状に復帰するようになっている。なお、硬質シート34の厚みは0.3〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0021】
(嵌合部36について)
前記サービスホールカバー30の嵌合部36は、
図4および
図5に示すように、該サービスホールカバー30により前記サービスホール18を塞ぐと、該サービスホール18の内部へ進入して前記空間15に臨む凸形状になっていて、底板部36aと、該底板部36aを囲んで環状に延在する側板部36bとからなる。前記底板部36aは、前記サービスホール18より若干小さい寸法に設定されると共に、該サービスホール18の開口輪郭に略合致した外形輪郭を有している。前記底板部36aは、外縁部分よりも中央部分が前方に位置するよう湾曲している。また、前記側板部36bは、底板部36aの外縁に連なって前方へ立ち上がっている。そして、前記側板部36bの前縁は、前記サービスホール18の開口形状と略同じ形状になっている。このように凸形状になっている嵌合部36は、
図4に示すように、前記サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付ける際に前記サービスホール18内に進入して、前記底板部36aが該インナーパネル14よりも後側(アウターパネル12の側)に位置する。
【0022】
(フランジ38について)
前記フランジ38は、殊に
図5に示すように、サービスホールカバー30の周縁に形成されている。すなわちフランジ38は、前記嵌合部36の前縁から延出して斜め外方へ偏向した部位となっており、前側に位置する前記硬質シート34により形状保持されると共に、後側に位置する発泡シート32により柔軟性および吸遮音特性を確保している。そして前記フランジ38は、
図4に示すように、サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付ける際に前記当受け部22に対して前側から当接して、当該サービスホールカバー30が前記空間15内へ入り込むことを規制する。そして、前記サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付けた状態では、前記フランジ38が当受け部22に密着して該サービスホール18の周囲を全周に亘って封止するため、車両用ドア10の前記空間15内に進入した雨水が該サービスホール18からインナーパネル14の前側(車内)へ入ることが防止される。また、外部騒音の車内への進入も低減できる。
【0023】
(係合爪部40について)
前記係合爪部40は、
図1および
図3〜
図5(殊に
図4の拡大部)に示すように、前記嵌合部36を形成する側板部36bにおいて、前記発泡シート32に一体形成されたものである。この係合爪部40は、前記サービスホールカバー30の嵌合部36を前記サービスホール18に当てがって押し込んだ際に、該サービスホール18の開口周縁において前記インナーパネル14の後面に係合することで、該サービスホールカバー30が該インナーパネル14から前側へ離脱することを規制する。実施例のサービスホールカバー30には、前記係合爪部40が、前記嵌合部36の周方向へ断続的に複数(実施例では5個)形成されている。前記5つの係合爪部40の夫々は、前記サービスホール18の開口縁に沿って位置する前記当受け部22の後側に係合して、該当受け部22の前側に前記フランジ38が密着した状態を維持する。また、各係合爪部40が前記当受け部22の後側に係合することで、車両走行中の振動や車両用ドア10を閉めた際の衝撃がサービスホールカバー30に伝達された場合でも、該サービスホールカバー30がインナーパネル14から離脱するのを防止し得る。
【0024】
前記各係合爪部40は、
図7(b)を参照して製造方法の個所で後述するように、前記嵌合部36を形成する側板部36bにおいて、前記発泡シート32を部分的に外方へ膨出させて形成される。各係合爪部40は、発泡シート32において、前記嵌合部36の側板部36bを構成する部分に形成されるもので、該発泡シート32だけで形成されている。そして、前記発泡シート32の膨出により形成された各係合爪部40の内側には、硬質シート34との間に空洞42が形成されている。これにより、前記係合爪部40は硬質シート34に接着されていないこととなり、前記空洞42の存在により弾性変形を容易に生じさせる。
【0025】
(成形装置50について)
次に、前述した実施例のサービスホールカバー30の製造方法について説明する。実施例のサービスホールカバー30は、
図6に示す成形装置50により成形される。この成形装置50は、第1成形型52と、図示省略した作動手段の作動により該第1成形型52に対して近接・離間移動して開閉するよう配設された第2成形型54とを備えている。この第2成形型54は、作動手段の作動に基づいて、第1成形型52に近接した成形位置(
図6(b)、
図7参照)および該第1成形型52から離間した開放位置(
図6(a)、
図8参照)の間を開閉する。また、成形装置50は、サービスホールカバー30を構成する前記発泡シート32および硬質シート34を重ね合わせた状態で両シート32,34の周縁を環状に把持するシート把持体56を備えている。すなわち、成形装置50は、前記シート把持体56で重ね合わせた状態に把持した平坦状の発泡シート32および平坦状の硬質シート34を、第1成形型52および第2成形型54で挟み込むことで、立体形状をなす前記サービスホールカバー30を成形する。
【0026】
(第1成形型52について)
前記成形装置50の第1成形型52は、
図6に示すように、第2成形型54に対向する部位(上部)に、上方へ向いた第1成形面58が設けられている。この第1成形面58は、前記サービスホールカバー30の後面の形状を反転した凹凸状をなしており、前記シート把持体56に把持された発泡シート32の下側外面が押し付けられる。また、前記第1成形型52の第1成形面58には、前記サービスホールカバー30の各係合爪部40を成形するための凹部60が形成されている。各凹部60は、各係合爪部40の外面形状を反転した凹状をなしている。そして、第1成形型52には、前記各凹部60を含む第1成形面58の所要位置に、複数の第1吸気孔62が開口形成されている。各第1吸気孔62は、第1成形型52内に形成された第1通気路64を介して、該第1成形型52の外面に開口形成された第1排気孔66と連通している。更に、第1成形型52には、前記第1排気孔66から空気を吸引する第1吸気装置68が配設されている。すなわち、第1成形型52は、第1吸気装置68を作動させることで第1成形面58の各第1吸気孔62から空気を吸引して、前記発泡シート32を該第1成形面58および各凹部60に密着させて真空成形する真空成形型である。
【0027】
(第2成形型54について)
前記成形装置50の第2成形型54は、
図6に示すように、前記第1成形型52に対向する部位(下部)に、下方へ向いた第2成形面70が設けられている。この第2成形面70は、前記サービスホールカバー30の前面の形状を反転した凸状をなしており、前記シート把持体56に把持された硬質シート34の上側外面が押し付けられる。そして、第2成形型54の第2成形面70は、前記成形位置において、前記第1成形型52の第1成形面58との間に、前記サービスホールカバー30の厚みに基づいた間隔で対向するようになっている。但し、第1成形型52の凹部60と第2成形型54との間は、発泡シート32と硬質シート34とを重ね合わせた厚みより大きい間隔としている。そして、第2成形型54には、前記第2成形面70に、複数の第2吸気孔72が開口形成されている。各第2吸気孔72は、第2成形型54内に形成された第2通気路74を介して、該第2成形型54の外面に開口形成された第2排気孔76と連通している。更に、第2成形型54には、前記第2排気孔76から空気を吸引する第2吸気装置78が配設されている。すなわち、第2成形型54は、第2吸気装置78を作動させることで第2成形面70の各第2吸気孔72から空気を吸引して、前記硬質シート34を該第2成形面70に密着させて真空成形する真空成形型である。
【0028】
(加熱手段について)
実施例の成形装置50には、前記シート把持体56で把持した平坦状の発泡シート32および硬質シート34を、所定の成形温度まで加熱する加熱手段(図示せず)を備えている。この加熱手段は、前記第1成形型52および第2成形型54によりサービスホールカバー30を成形する前に、発泡シート32を前記嵌合部36、フランジ38および係合爪部40の形状に変形可能な状態まで加熱して軟化させるものである。また、硬質シート34も、前記嵌合部36およびフランジ38の形状に変形可能な状態まで加熱して軟化させる。但し、前記発泡シート32および硬質シート34は、軟化する状態までに温度制御されるに止まり、この段階では両シート32,34が熱接着されるものではない。
【0029】
(サービスホールカバー30の製造方法について)
次に、
図6〜
図8を引用して、前記成形装置50による実施例のサービスホールカバー30の製造方法について説明する。なお、前記発泡シート32および硬質シート34は、予め所要寸法に裁断されている。
【0030】
(発泡シート32および硬質シート34の軟化工程)
先ず、前記発泡シート32および硬質シート34を前記シート把持体56により重ね合わせた状態で把持する。なお、シート把持体56で把持した発泡シート32および硬質シート34は、成形前は重ね合わせた状態に重なっているだけで、接着剤等により互いに接着されていない。このようにシート把持体56で把持した発泡シート32および硬質シート34を、図示しない加熱手段により加熱して軟化させる。
【0031】
(発泡シート32および硬質シート34のセット)
次に、
図6(a)に示すように、前記第2成形型54を、第1成形型52の上方へ開放して開放位置に待機させ、成形装置50を型開き状態とする。そして、前記シート把持体56を第1成形型52の上方へ移動させ、加熱により軟化した発泡シート32および硬質シート34を、発泡シート32を第1成形型52に指向させると共に、硬質シート34を第2成形型54に指向させた状態で該第1成形型52の上方に位置させる。
【0032】
(発泡シート32および硬質シート34の成形工程)
次に、前記第1成形型52に配設した前記第1吸気装置68および前記第2成形型54に配設した前記第2吸気装置78を夫々作動させた状態で、第2成形型54を待機位置から成形位置に向けて閉成させる。ここで、第2成形型54が成形位置まで閉成する直前の適宜タイミングにおいて、前記シート把持体56で把持された発泡シート32が、第1成形型52の第1成形面58に接触する。この際に、前記各第1吸気孔62から空気が吸引されていることで、発泡シート32は、第1成形面58および各凹部60に真空吸引されて密着し、該第1成形面58および各凹部60の外面に沿った立体形状に真空成形される。一方、第2成形型54が成形位置まで移動する直前のタイミングにおいて、前記シート把持体56で把持された硬質シート34が、第2成形型54の第2成形面70に接触する。この際に、前記各第2吸気孔72から空気が吸引されていることで、硬質シート34は、第2成形面70に真空吸引されて密着し、該第2成形面70の外面に沿った立体形状に真空成形される。
【0033】
そして、前記第2成形型54が前記成形位置まで閉成されると、
図7に示すように、第1成形型52の第1成形面58に密着した発泡シート32と、第2成形型54の第2成形面70に密着した硬質シート34とは、該第1成形型52および第2成形型54により厚み方向両側から挟まれて押し付けられる。そして、互いに接触した発泡シート32および硬質シート34は、加圧されると共に軟化していることで相互に融着して熱接着されるようになる。但し、発泡シート32において、第1成形型52の前記各凹部60に密着した部分は、硬質シート34から離間して該硬質シート34には接着されず、該発泡シート32と硬質シート34との間には空洞42が画成される。
【0034】
前記第1成形型52および第2成形型54を型閉めした状態で所定時間に亘り保持することで、第1成形型52および該第2成形型54で押圧された前記発泡シート32と硬質シート34との密着した部分が熱接着される。これにより、発泡シート32と硬質シート34とが接着している前記嵌合部36と、該発泡シート32と硬質シート34とが接着している前記フランジ38と、硬質シート34から離間した発泡シート32からなる各係合爪部40とが成形された予備成形品Wが成形される。
【0035】
(予備成形品の脱型工程)
所定時間の経過後に、
図8に示すように、前記第2成形型54を前記第1成形型52から離間させて型開きし、シート把持体56を第1成形型52から離間させることで、成形された予備成形品Wを該第1成形型52から脱型する。なお、第1成形型52の各凹部60により成形された各係合爪部40は、該第1成形型52の第1成形面58と、予備成形品Wの脱型方向において重なっているが、各係合爪部40が、空洞42の空間が縮小するように弾性変形することで、第1成形型52から予備成形品Wの離脱が許容される。
【0036】
(トリミング工程)
成形された予備成形品Wは、後工程において、シート把持体56で把持されていた部分を含む不要部分をカッター等の切断手段により切除する。これにより、実施例のサービスホールカバー30が成形される。
【0037】
(インナーパネル14へのサービスホールカバー30の取り付け)
前記成形装置50により成形された実施例のサービスホールカバー30は、
図5に示すように、サービスホール18(18A)が開設されたインナーパネル14に対し、該サービスホール18に嵌合部36を整合させた状態で前側から押し付けて取り付ける。この際に、サービスホールカバー30に形成された各係合爪部40は、サービスホール18の開口縁部に当接するようになる。しかし、サービスホールカバー30を後方へ更に押すことにより、各係合爪部40は、サービスホール18の開口縁部に押されることで、前記空洞42の空間が縮小されるように弾性変形する。これにより、各係合爪部40は、弾性変形して一時的に潰れることでサービスホール18を通過することが許容され、該サービスホール18を抜け出てインナーパネル14の後側へ移動する。そして、各係合爪部40は、サービスホール18からインナーパネル14の後方へ抜け出ると、該サービスホール18の開口縁部による押し付けが解除されることで元の形状に弾性復帰する。なお、必要に応じて、前記フランジ38の発泡シート32部分に自己粘着テープを貼着したもとで、サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
前記各係合爪部40は、
図4に示すように、前記空洞42の空間がもとの容積に拡大するように弾性復帰することで、サービスホール18の開口縁部に沿って延在する前記当受け部22に対し、インナーパネル14の後側から係合する。一方、サービスホールカバー30のフランジ38は、前記当受け部22に対してインナーパネル14の前側から当接する。従って、サービスホールカバー30は、フランジ38および各係合爪部40が前記当受け部22に前後から係合することで、該フランジ38がサービスホール18の開口縁部を囲むように環状に当受け部22に当接し、サービスホール18を塞いだ状態でインナーパネル14に取り付けられる。
【0039】
図2および
図4に示すように、インナーパネル14に取り付けられた実施例のサービスホールカバー30は、発泡シート32がサービスホール18からドア空間15内に露出している。また、サービスホールカバー30は、フランジ38における発泡シート32の部分がサービスホール18の開口縁部に沿って延在する前記当受け部22に前側から弾力的に当接すると共に、発泡シート32からなる各係合爪部40が該当受け部22に後側から弾力的に係合することで、インナーパネル14に弾力的に掛止される。これにより、サービスホールカバー30は、サービスホール18の外周囲をフランジ38で封止した状態で該サービスホール18を塞ぐようになる。従って、サービスホールカバー30は、ドア空間15内に入った雨水がサービスホール18を介してインナーパネル14の前側へ侵入することを防止する。また、サービスホールカバー30は、車両の外部からドア空間15内に進入した車外騒音を発泡シート32で吸収し得るので、車外騒音がサービスホール18から車内へ入るのを低減する。
【0040】
従って、前述のように構成された実施例のサービスホールカバー30によれば、発泡シート32と硬質シート34とが接着された2層の積層構造となっているので、該硬質シート34により形状保持性が確保される。そして、車両用ドア10のインナーパネル14に取り付けたサービスホールカバー30は、該インナーパネル14の側となる発泡シート32がサービスホール18に臨んでいるので、車両走行時の車外騒音を吸収・遮断し、該車外騒音がサービスホール18を介して車内へ進入することを低減する。従って、実施例のサービスホールカバー30は、別途の吸遮音部材を不要とし、コスト低減を図り得る。また、サービスホールカバー30は、各係合爪部40をサービスホール18に係合させるだけで、該サービスホール18を塞いだ状態でインナーパネル14に取り付けることができ、取り付け作業性の向上を図り得る。
【0041】
また、実施例のサービスホールカバー30の各係合爪部40は、前記サービスホール18の内部へ進入する前記嵌合部36に関して、前記発泡シート32を部分的に外方へ膨出させることにより形成され、また該発泡シート32の膨出部分と該硬質シート34との間に空洞42が形成されている。従って、各係合爪部40は、前記空洞42が潰れて容易に弾性変形する。これにより、インナーパネル14に対してサービスホールカバー30を取り付ける際には、各係合爪部40が弾性変形し易いので、該インナーパネル14に対して当該サービスホールカバー30を容易に取り付けることができる。従って、インナーパネル14に対するサービスホールカバー30の取付作業が容易であると共に、該インナーパネル14に対して該サービスホールカバー30を適切な姿勢で取り付けることができる。
【0042】
更に、実施例のサービスホールカバー30には、該サービスホールカバー30が前記サービスホール18を塞いだ際に、該サービスホール18の内部へ進入する嵌合部36が形成されている。これにより、サービスホールカバー30が凹凸形状をなしており、該サービスホールカバー30の剛性を高めることができる。そして、嵌合部36がサービスホール18の内部へ進入することで、サービスホールカバー30がインナーパネル14の外側(前側)へ突出しないので、インナーパネル14と該インナーパネル14に取り付けられるドア内装パネル20との間隔を狭めることができ、車両用ドア10を車体に閉成した際に車内を広くすることができる。
【0043】
一方、前述のように構成された実施例のサービスホールカバー30の製造方法によれば、サービスホールカバー30の成形と同時に各係合爪部40を成形することができるので、製造コストを低減することができる。また、各係合爪部40を発泡シート32に形成すると共に、硬質シート34との間に空洞42を形成することができるので、弾性変形が容易な該係合爪部40を成形することができる。これにより、車両用ドア10のインナーパネル14に対する取付作業を容易にしたサービスホールカバー30を製造することができる。
【0044】
(変更例)
本発明に係るサービスホールカバーは、実施例に例示の形態に限らず種々の変更が可能である。
(1)実施例では、車体における車両用ドア10のインナーパネル14に開設されたサービスホール18を例示したが、本願のサービスホールカバーが取り付けられるサービスホールは、車両用ドア10以外のインナーパネルに開設されたサービスホールも対象とされる。
(2)インナーパネル14に開設されるサービスホール18は、車両用ドア10の形状や大きさに応じて開口形状、開口寸法、開口位置が異なっている。このため、サービスホールカバー30は、塞ぐ対象のサービスホール18に合わせて外形形状および寸法が異なる。
(3)発泡シート32に設けられる係合爪部40の数は、実施例で例示した5個に限るものではなく、サービスホールカバー30の形状やサイズに応じて6個以上または4個以下であってもよい。
(4)発泡シート32に設けられる係合爪部40の断面形状は、実施例で例示した形状に限らない。例えば、
図9に示すように、前方にいくにつれて突出量が大きくなる鉤状であってもよい。このような鉤状の係合爪部40の場合には、サービスホールカバー30をインナーパネル14に取り付ける際に、サービスホール18の開口縁部に対して該係合爪部40が引っ掛かり難くなり、該係合爪部40をサービスホール18に係合し易くすることができる。
(5)実施例では、1つの嵌合部36を設けたサービスホールカバー30により、1つのサービスホール18を塞ぐ構成を例示したが、2つ以上の嵌合部36を設けた1つのサービスホールカバー30により、2つ以上のサービスホール18を塞ぐように構成してもよい。
(6)実施例では、ポリエチレン(PE)製の発泡シートおよびポリエチレン(PE)製の硬質シートを使用したサービスホールカバー30を例示したが、これら発泡シートおよび硬質シートの材質はこれに限るものではなく、熱可塑性樹脂(好ましくはオレフィン系樹脂)であればよい。但し、発泡シートおよび硬質シートは、互いに熱接着(融着)が可能な樹脂の組み合わせとすることが好ましく、例えばポリプロピレン(PP)の発泡シートとポリプロピレン(PP)のソリッドの硬質シートとしてもよい。
(7)発泡シートとしては、比重が0.015〜0.1、圧縮応力が35KPa〜90KPa(JIS K6767 圧縮歪25%)のものが好ましく、また硬質シートは、比重が0.9〜0.97、曲げ弾性率が780MPa(JIS K7171)以上のものが好ましい。