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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-193467(P2017-193467A)
(43)【公開日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】水系サイズ剤
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/10 20060101AFI20170929BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20170929BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20170929BHJP
   D06M 13/402 20060101ALI20170929BHJP
   D06M 13/358 20060101ALI20170929BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20170929BHJP
   D06M 13/513 20060101ALI20170929BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20170929BHJP
【FI】
   C03C25/02 N
   D06M13/165
   D06M15/53
   D06M13/402
   D06M13/358
   D06M15/59
   D06M13/513
   D06M101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-85297(P2016-85297)
(22)【出願日】2016年4月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 頌平
(72)【発明者】
【氏名】中井 美穂
【テーマコード(参考)】
4G060
4L033
【Fターム(参考)】
4G060BA02
4G060BA05
4G060BC03
4G060BD15
4G060CB21
4G060CB31
4L033AA09
4L033AB01
4L033AB05
4L033AC12
4L033BA14
4L033BA58
4L033BA71
4L033BA96
4L033CA48
4L033CA55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】澱粉を含む水系サイズ剤を用いた場合のヒートクリーニング処理が不要であり、シランカップリング剤を含む水系サイズ剤を用いた場合の、液の保存安定性の低下やガラス繊維の耐熱性の低下を解消し、安定かつ優れた製織性、開繊性を実現可能な水系サイズ剤及び前記水系サイズ剤を用いて表面処理されたガラス繊維の提供。
【解決手段】ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部と、ポリアルキレングリコール(B)10〜200質量部と、カチオン性脂肪酸アミド(C)10〜200質量部と、ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)1〜30質量部とを含有し、澱粉およびシランカップリング剤を含有しない水系サイズ剤。更にポリオキシアルキレンピスフェノールAエーテル(A)100質量部に対して、ヒドロキシフェニルトリアジン又はポリアミドからなる微粒子(E)を1〜50質量部を含有することが好ましい水系サイズ剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部と、ポリアルキレングリコール(B)10〜200質量部と、カチオン性脂肪酸アミド(C)10〜200質量部と、ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)1〜30質量部とを含有し、澱粉およびシランカップリング剤を含有しないことを特徴とする水系サイズ剤。
【請求項2】
さらに、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部に対して、微粒子(E)を1〜50質量部含有することを特徴とする請求項1記載の水系サイズ剤。
【請求項3】
微粒子(E)がヒドロキシフェニルトリアジンまたはポリアミドであることを特徴とする請求項2記載の水系サイズ剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)の水酸基価が200mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水系サイズ剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水系サイズ剤を用いて表面処理されたことを特徴とするガラス繊維。
【請求項6】
請求項5記載のガラス繊維を用いることを特徴とするガラス繊維クロス。
【請求項7】
水開繊処理およびシランカップリング処理が施されたことを特徴とする請求項6記載のガラス繊維クロス。
【請求項8】
請求項6または7記載のガラス繊維クロスを用いることを特徴とするプリプレグ。
【請求項9】
請求項6または7記載のガラス繊維クロスを用いることを特徴とする複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維に集束性および製織性を付与するための水系サイズ剤、その水系サイズ剤で表面処理されたガラス繊維、そのガラス繊維を用いて製織されたガラス繊維クロス、水開繊処理およびシランカップリング処理が施されたガラス繊維クロス、および、ガラス繊維クロスを用いたプリプレグや複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の軽量化に伴い、プリント基板の補強材料であるガラス繊維クロスに対して、薄肉化の要求が高まっている。ガラス繊維クロスの薄肉化の取り組みとして、細番手(単繊維の直径が5μm以下)のガラス繊維を適用して、高密度に製織することが進められている。そして、製織されたガラス繊維クロスには、開繊処理が施され、製織直後よりさらに薄くなるように加工されている。より薄く加工することで、プリント基板を作製する際のマトリクス樹脂の含浸性を高めることができ、プリント基板の加工速度を向上させることができる。
【0003】
ガラス繊維は、製織性を改善するために、澱粉を含む水系サイズ剤を付着させてから、製織されている。澱粉がサイズされたガラス繊維を用いて製織されたガラス繊維クロスは、基板材料としての機械物性、耐熱性、電気特性等への悪影響を防ぐために、澱粉を除去するヒートクリーニング処理が施されている。また、ガラス繊維クロスは、マトリクス樹脂の接着性を高めるために、表面処理が施されている。
【0004】
しかし、ヒートクリーニング処理では、ガラス繊維クロスが、400℃以上の高温に長時間曝されるため、ガラス繊維は、熱により劣化して、その強度が低下するという不具合が生じる。また、表面処理では、ガラス繊維クロスが、高圧の水洗ジェットにより洗浄されるため、ヒートクリーニング処理で傷んだガラス繊維は、傷つき、毛羽が発生するという不具合が生じる。特に、細番手のガラス繊維を製織し、ヒートクリーニング処理されたクロスでは、これらの処理工程による影響が大きい。
【0005】
そこで、ヒートクリーニング処理を必要としない樹脂を含む水系サイズ剤の検討が行われている。例えば、特許文献1では、エポキシ樹脂と、エチレンオキサイドが付加されたビスフェノールAエーテルと、シランカップリング剤とを含む水系サイズ剤を用いることが提案されている。特許文献2では、ポリエチレングリコールのステアリン酸エステルを含む水系サイズ剤が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の水系サイズ剤では、シランカップリング剤を含んでいるため、時間経過に伴い加水分解および縮合が進み、液の状態が変化する。そのため、ガラス繊維表面に結合するシランモノマーが減少し、時間が経過したサイズ剤でサイズされたガラス繊維は、耐熱性の確保が困難になる。さらに、シランカップリング剤を含む水系サイズ剤で処理されたガラス繊維は、加熱処理が施されていないため、ガラス繊維表面に未反応のシロキサンオリゴマーが残存し、耐熱性が低下する。また、特許文献2に記載の水系サイズでは、ポリエチレングリコールのステアリン酸エステルの分子量が高いため、ガラス繊維が集束しすぎて、開繊工程で使用する水圧では、糸を開繊することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−162171号公報
【特許文献2】特開2000−80570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、澱粉を含む水系サイズ剤を用いた場合のヒートクリーニング処理が不要であり、シランカップリング剤を含む水系サイズ剤を用いた場合の、液の保存安定性の低下やガラス繊維の耐熱性の低下を解消し、安定かつ優れた製織性、開繊性を実現可能な水系サイズ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、サイズ剤から澱粉およびシランカップリング剤を除外し、特定の成分を特定量配合した水系サイズ剤が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
[1]ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部と、ポリアルキレングリコール(B)10〜200質量部と、カチオン性脂肪酸アミド(C)10〜200質量部と、ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)1〜30質量部とを含有し、澱粉およびシランカップリング剤を含有しないことを特徴とする水系サイズ剤。
[2]さらに、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部に対して、微粒子(E)を1〜50質量部含有することを特徴とする[1]記載の水系サイズ剤。
[3]微粒子(E)がヒドロキシフェニルトリアジンまたはポリアミドであることを特徴とする[2]記載の水系サイズ剤。
[4]ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)の水酸基価が200mgKOH/g以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の水系サイズ剤。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の水系サイズ剤を用いて表面処理されたことを特徴とするガラス繊維。
[6][5]記載のガラス繊維を用いることを特徴とするガラス繊維クロス。
[7]水開繊処理およびシランカップリング処理が施されたことを特徴とする[6]記載のガラス繊維クロス。
[8][6]または[7]記載のガラス繊維クロスを用いることを特徴とするプリプレグ。
[9][6]または[7]記載のガラス繊維クロスを用いることを特徴とする複合材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、澱粉を含む水系サイズ剤を用いた場合のヒートクリーニング処理が不要であり、またシランカップリング剤を含む水系サイズを用いた場合の短いポットライフを解消した、安定かつ優れた製織性と保存安定性を実現する水系サイズ剤を提供することができる。また、本発明の水系サイズ剤で表面処理されたガラス繊維を用いて製織されたガラス繊維クロスは、耐熱性および機械物性に優れているので、電気機器等に使用されるプリント基板の補強材料として、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水系サイズ剤は、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)、ポリアルキレングリコール(B)、カチオン性脂肪酸アミド(C)、ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)を含有し、澱粉およびシランカップリング剤を含有しない。ここでいう「含有しない」とは、実質的に含まないことを意味し、本発明の効果を損なわない範囲であれば、微量含んでもよい。
【0013】
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)は、ガラス繊維の表面を被覆し、製織、整経時に発生する摩擦を低減し、毛羽、糸切れの発生を抑制する目的で用いられる。ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルは、皮膜形成性が高く、毛羽、帯電防止および潤滑性付与の効果が高いものであり、特に帯電防止、毛羽の抑制に優れることから、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルであることが好ましい。
【0014】
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)は、水酸基価が200mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価が200mgKOH/gを超えると、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)は、ガラス繊維への付着量が低下することがあり、ガラス繊維は、各部材との摩擦力が高くなり、毛羽、糸切れが発生することがある。また、開繊性が低くなることがある。
【0015】
ポリアルキレングリコール(B)、カチオン性脂肪酸アミド(C)は、ガラス繊維の柔軟性を向上させ、整経工程で発生する糸切れを抑制する目的と、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)をガラス繊維表面により多く付着させる目的で用いられる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられ、帯電防止の観点から、ポリエチレングリコールであることが好ましい。また、カチオン性脂肪酸アミドとしては、例えば、ポリエチレンアミンと脂肪酸とで構成されるものが挙げられ、ポリエチレンアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンぺンタミンが挙げられ、脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が挙げられる。(B)と(C)を併用することにより、(B)単独を用いる場合や(C)単独を用いる場合よりも、開繊性が相乗的に向上する。
【0016】
ポリアルキレングリコール(B)、カチオン性脂肪酸アミド(C)の含有量は、いずれも、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部に対して、それぞれ10〜200質量部であることが必要であり、40〜100質量部であることが好ましい。(B)、(C)の含有量がそれぞれ10質量部未満であると、ガラス繊維は柔軟性が低下し、製織性が低下する。また、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)がガラス繊維表面に被覆されにくくなり、毛羽の発生の原因となる。一方、(B)、(C)の含有量が200質量部を超えると、帯電量が増し、ガラス繊維は製織性が低下する。
【0017】
ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)は、繊維の帯電性を低下させる目的で用いられる。ポリオキシアルキレンアルキルエステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエステルが挙げられる。
【0018】
ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)の含有量は、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部に対して、1〜30質量部であること必要であり、5〜15質量部であることが好ましい。(D)の含有量が1質量部未満であると、帯電を防止することが困難になり、製織時の糸の解舒性が低下し、製織性が低下する。一方、(D)の含有量が30質量部を超えると、製織機上のフィーダーからの解舒性が低下し、製織性が低下する。
【0019】
本発明の水系サイズ剤には、開繊性を向上させたり、またガラス繊維表面に微小な凹凸を形成しガラス繊維と接触する部材との摩擦を低減し、製織性、整経性を向上させたりする目的で、さらに微粒子(E)を含有させることが好ましい。微粒子は、有機物、無機物のいずれでもよい。
【0020】
有機物の微粒子としては、例えば、ポリ乳酸、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ダイマー酸ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレンイミン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート、ポリウレタンアクリレート等のポリマーからなる微粒子や、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾエート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等の微粒子が挙げられる。中でも、開繊性、製織性、整経性を向上させる効果が高いことから、ヒドロキシフェニルトリアジンやポリアミドが好ましく、耐熱性を示す複合材料が得られることから、ポリアミドがより好ましい。前記微粒子は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。前記微粒子は、有機物の水性分散体として供給することができる。
【0021】
ポリアミドの水性分散体には、アニオン型とカチオン型があるが、カチオン型の方が好ましい。カチオン型の水性分散体を用いることで、製織時の解舒性が高くなり製織性が向上しやすい。また、開繊性が向上しやすくなる。
【0022】
ヒドロキシフェニルトリアジンの水性分散体は、例えば、BASF社から、TIVUVIN479−DWとして入手することができる。また、カチオン型のポリアミドの水性分散体としては、M3−C−X20やM4−C−X025として入手することができ、アニオン型の水性分散体としては、MD−X20、ME−X25として入手することができる。
【0023】
また、無機微粒子を構成する無機物としては、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、シリカ、クレイ、窒化ホウ素、グラファイト、金属ジカルコゲナイド、ヨウ化カドミウム、硫化銀等のほか、例えば、インジウム、タリウム、スズ、銅、亜鉛、金、および銀からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属無機物が挙げられる。中でも、開繊性を向上させる効果が高いことから、無機微粒子を構成する無機物は、窒化ホウ素であることが好ましい。前記微粒子は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0024】
微粒子(E)の粒子径は0.01〜1μmであることが好ましい。微粒子(E)の粒子径が0.01μm未満であると、ガラス繊維は、製織機上でのすべり性が低下し、製織性が低下する場合がある。一方、微粒子(E)は、粒子径が1μmを超えると、ガラス繊維のフィラメント内部まで微粒子が行き届かなくなり、ガラス繊維は開繊性が低下する場合がある。
【0025】
微粒子(E)の含有量は、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。微粒子(E)の含有量が1質量部未満であると、開繊性が低い場合がある。一方、50質量部を超えると、毛羽の発生が多発し、製織性が低下する場合がある。
【0026】
本発明の水系サイズ剤は、無機繊維、天然繊維、合成繊維のような繊維の表面に付着させて用いる。無機繊維としては、例えば、ガラス、炭素、グラファイト、ムライト、酸化アルミニウムが挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、セルロース、天然ゴム、アマ、麻、カラムシ、サイザル、羊毛が挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂を含む繊維が挙げられ、例えば、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を含む繊維が挙げられる。
【0027】
本発明の水系サイズ剤は、繊維の集束性の向上、毛羽の発生抑制を目的として、さらにエポキシ樹脂以外の水溶性樹脂を含んでもよい。水溶性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、アクリロイルモルホリン系樹脂等が挙げられる。水溶性樹脂は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0028】
本発明の水系サイズ剤は、さらにpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤としては、例えば、酢酸が用いられる。
【0029】
本発明の水系サイズ剤は、さらに硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒としては、例えば、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリスエチルヘキシル酸塩が挙げられる。
【0030】
本発明の水系サイズ剤は、さらに、帯電防止助剤、増粘剤、レベリング剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、繊維状補強材、機能性フィラーを含んでもよい。機能性フィラーとしては、例えば、熱伝導性フィラー、電磁波遮蔽粒フィラー、断熱フィラー、高誘電フィラーが挙げられる。
【0031】
本発明の水系サイズ剤中における、各成分を合計した濃度は、2〜10質量%であることが好ましい。水系サイズ剤は、各成分の合計濃度が2質量%未満であると、繊維に均一に被覆することが困難になり、繊維は、毛羽が立ち易くなり、耐熱性、機械物性が低下する場合がある。一方、各成分の合計濃度が10質量%を超えると、繊維への固形分の付着量が増すことで、繊維表面のべたつき、過剰な微粒子の付着により、製織性が低下する場合がある。
【0032】
本発明の水系サイズ剤は、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)、ポリアルキレングリコール(B)、カチオン性脂肪酸アミド(C)、ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)、必要に応じて、微粒子(E)を水中に分散させることによって製造することができる。より具体的には、最初に(B)を水に混合し、(A)、(C)、(D)をさらに加えて混合してもよいし、また、(A)、(C)、(D)を、それぞれ、(B)を含む水に加えて混合してもよいし、また、(A)、(C)、(D)を混合したものを、(B)を含む水に加えて混合してもよい。(E)を含む場合、最初に(B)を水に混合し、(A)、(C)、(D)、(E)をさらに加えて混合してもよいし、また、(A)、(C)、(D)、(E)を、それぞれ、(B)を含む水に加えて混合してもよいし、また、(A)、(C)、(D)、(E)を混合したものを、(B)を含む水に加えて混合してもよい。
【0033】
(A)〜(D)または(A)〜(E)の混合には、ディスパーまたは振動攪拌を用いてもよい。また、得られた混合物に、無機フィラーを加える場合、攪拌翼、ビーズミル、3本ロールミル、ジェットミルを用いて、上記混合物と無機フィラーを混合すればよい。ディスパーを使用する場合、回転数は500〜3000rpmが好ましく、振動攪拌を使用する場合、振動数は30〜50Hzが好ましく、ビーズミルを使用する場合、チラーを用いることが好ましい。回転数や振動数が上記範囲内であり、またチラーを用いると、攪拌熱による発熱を抑制しながら水系サイズ剤を得ることができる。
【0034】
本発明の水系サイズ剤で表面が被覆された繊維は、柔軟性、低摩擦性および低帯電性に優れ、毛羽の発生が抑制されるため、優れた製織性を有する。本発明の水系サイズ剤は、澱粉およびシランカップリング剤を含まない。そのため、澱粉を含む水系サイズ剤を用いた場合に必要とされるヒートクリーニング処理が不要となり、毛羽、糸切れの発生を抑制することができる。また、シランカップリング剤を用いた場合のポットライフを無視することができる。ヒートクリーニング処理が不要であることで得られる効果は、特に、電子機器等の小型化、薄肉化に伴い、ガラス繊維を束ねる本数を減らし、さらにガラス繊維の繊維径を小さくする場合に顕著である。
【0035】
また、本発明は、本発明の水系サイズ剤で表面が処理されたガラス繊維に関する。製織性、耐熱性の観点から、ガラス繊維に付着する水系サイズ剤(固形分)の量は、ガラス繊維と、ガラス繊維に付着した水系サイズ剤(固形分)との合計100質量部に対して、0.10〜0.30質量部であることが好ましく、0.15〜0.25質量部であることがより好ましい。本発明のガラス繊維(ガラス繊維ストランド)は、本発明の水系サイズ剤を、公知の方法(例えば、ローラーサイジング法、ローラー浸漬法、スプレー法)でガラス繊維に塗布することで得られる。
【0036】
さらに、本発明は、本発明の水系サイズ剤で表面が処理されたガラス繊維を用いたガラス繊維クロスに関する。本発明のガラス繊維クロスは、水系サイズ剤で表面が処理されたガラス繊維を、公知の方法(例えば、シャットル織機、エアージェット織機、レピヤー織機を用いた方法)で製織することで得られる。製織用のガラス繊維は、例えば、ガラスヤーン(ストランドに撚りをかけたもの)やロービング(ストランドに撚りをかけずに巻き取ったもの)として用いられる。本発明のガラス繊維クロスは、水開繊処理することにより、水系サイズ剤を容易に除去することができる。水開繊処理は、通常、0.1〜5.0MPaの水圧を加えておこなわれる。また水開繊処理されたガラス繊維クロスは、シランカップリング処理することにより、耐熱性、機械物性に優れたものとすることができる。
【0037】
本発明のガラス繊維クロスにマトリクス樹脂を含浸させることにより、複合材料を得ることができる。マトリクス樹脂を含浸させる方法としては、マトリクス樹脂の溶液に、水開繊処理やシランカップリング処理がなされたガラス繊維クロスを浸漬する方法が挙げられる。エポキシ樹脂をマトリクス樹脂として含浸させた場合、例えば、150〜200℃で1〜10分かけて半硬化状態のプリプレグに加工し、プリプレグを20〜40枚積層し、プレス圧10〜40kg/cm、加熱温度150〜200℃、真空下で1.5〜2時間加熱し、硬化した複合材料とすることができる。
【0038】
本発明のガラス繊維クロスは、プリント基板用のガラス繊維−樹脂の複合基板の補強材料として好適に用いられる。このガラス繊維クロスを用いたガラス繊維−樹脂の複合基板は、耐熱性に優れ、吸湿状態でもハンダ熱の影響を受けることなく、ガラス繊維と樹脂の界面接着性を強固に維持することができる。
【0039】
本発明の水系サイズ剤は、従来の水系サイズ剤のように、澱粉およびシランカップリング剤を含んでいない。このため、本発明の水系サイズ剤を用いることにより、長時間使用しない場合での、糸質の変動や製織性の低下が抑制される。また、ヒートクリーニング工程が不要となり、従来これらの工程で生じていたガラス繊維の劣化が抑制される。前記抑制効果は、特に、電子機器等の小型化、薄肉化に伴い、ガラス繊維を束ねる本数を減らし、さらにガラス繊維の繊維径を小さくする場合に顕著である。
【0040】
上記の点から、本発明のガラス繊維およびガラス繊維クロスは、スマートフォン、タブレット、パワーデバイス、パソコン、家庭用ゲーム機等のコンピュータ類の部品;DVDプレーヤー、DVDレコーダーの部品、HDDレコーダーの部品、家庭用テレビ、プラズマディスプレイ、液晶テレビ等のディスプレイ電源ユニット等の部品;携帯電話、各種AV機器、OA機器等の部品;カーステレオ、カーナビゲーションシステム、インバーター、照明、自動車電装部材、自動車エンジン部材、自動車ブレーキ部材、自動車内装部材、宇宙航空材料、スポーツ用途、アウトドア用途、一般産業資材に好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0042】
水系サイズ剤、ガラス繊維およびガラス繊維クロスの特性を測定、評価する方法は下記のとおりである。
(1)水系サイズ剤のガラス繊維への付着量
ガラス繊維への水系サイズ剤の付着量の測定は、JIS R 3420に従い、強熱減量として以下のように測定した。
水系サイズ剤の付着したガラス繊維を110℃で1時間熱風乾燥し、ガラス繊維から水分(水系サイズ剤由来の水分)を除去し、水を除去した後のガラス繊維の重量Wを測定した。次いで、そのガラス繊維を、電気炉を用いて、625℃の環境下で30分間放置し、ガラス繊維からさらに水系サイズ剤(固形分)を除去し、水系サイズ剤(固形分)を除去した後のガラス繊維の重量Wを測定した。
水系サイズ剤のガラス繊維への付着量は、以下の式から計算した。
ガラス繊維への付着量=((水分除去後のガラス繊維重量W)−(水系サイズ剤(固形分)除去後のガラス繊維重量W))/(水分除去後のガラス繊維重量W)×100
【0043】
(2)ガラス繊維の解舒張力
得られたガラス繊維を600m/分の速度で解舒して、テンションメーター(横河電子機器社製)を用いて解舒張力を測定した。
本発明においては、解舒張力が3.0cN以下である場合、合格とした。解舒張力は2.0cN以下であることが好ましい。
【0044】
(3)ガラス繊維の毛羽
得られたガラス繊維について、300m/分の速度で解舒してテンションバーを通過した後の毛羽の数をセンサーにて測定した。
本発明においては、毛羽が2.5個/100m以下である場合、合格とした。毛羽は、1.0個/100m以下であることが好ましい。
【0045】
(4)ガラス繊維の帯電防止性
得られたガラス繊維を検尺機で巻き取り、その巻き取り部である回転体の下部に静電気センサ(オムロン社製 ZJ−SD100)を設置し、糸が配列する過程で発生する静電気量を測定した。巻き取り回数を100回とした。
本発明においては、帯電防止性が3.0kV以下である場合、合格とした。帯電防止性は、1.5kV以下であることが好ましい。
【0046】
(5)ガラス繊維の製織性
津田駒工業社製のエアージェット織機を用いてガラス繊維クロスを製織する際のガラス繊維の巻付きおよび飛走状態を目視にて観察し、1時間の製織時間において、製織を停止した回数を測定した。なお、ガラス繊維の製織は、ガラス繊維のフィードローラーへの巻付き不良が発生したり、送りだしが不安定になりショートピックが生じた場合等に停止する。
1回も停止しなかった場合「◎」、1回〜4回停止した場合「○」、5回以上停止した場合「×」とした。
【0047】
(6)ガラス繊維クロスの開繊性
ガラス繊維クロスの開繊性は、JIS R 3420に準拠して、ガラス繊維の通気量で評価を行った。通気量測定には東洋精機社製のフラジールパーミヤメーターを用いた。
本発明においては、通気量が60cm/(cm・s)以下である場合、合格とした。通気量は、45cm/(cm・s)以下であることが好ましい。
【0048】
(7)複合材料の耐熱性
得られた硬化プリプレグに湿熱処理および半田浴による熱履歴を与え、その後の硬化プリプレグの状態を評価した。なお、湿熱処理は、プレッシャークッカーを用いて、水蒸気圧力1.05kg/cmG、環境温度121℃、12時間の条件で実施した。半田浴による熱履歴は、湿熱処理された硬化プリプレグを20〜25℃の水に15分間浸した後、260℃の半田浴に25秒浸漬させて行った。
半田浴に浸漬した後の硬化プリプレグから、張り付いた半田を削り落とし、硬化プリプレグの表面を、フラットベッドスキャナー(EPSON社製)を用いて観察し、硬化プリプレグの表面の総面積に対する白化した部分(白化部)の面積の割合を求めた。硬化プリプレグ表面の白化部の割合が1%未満の場合「◎」、1%以上〜30%未満の場合「○」、30%以上の場合「×」として、複合材料の耐熱性を評価した。
【0049】
(8)複合材料の機械物性
得られた硬化した複合材料について、JIS K 6911の3点曲げ試験に準拠し、曲げ強度および曲げ弾性率を求めた。なお、測定速度5mm/分、支点間距離16mmの条件で行った。
【0050】
(9)ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)の水酸基価
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)10gを、無水酢酸/ピリジン(体積比1/5)の混合液5mLに溶解させた後、100℃で1時間、無水酢酸とポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)中の水酸基とを反応させた。その後、さらに蒸留水を添加し、100℃で10分間撹拌して、過剰の無水酢酸を分解し、試料液を得た。0.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて試料液の滴定を行い、滴定量W(mL)を求めた。同様に、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルを用いない場合(上記の混合液のみ)についても滴定を行い、滴定量W(mL)を求めた。下記式より、水酸基価を算出した。
水酸基価(mgKOH/g)=(W−W)×f×28.05/10
(f:0.5モル/L水酸化カリウム水溶液の力価)
【0051】
(10)微粒子(E)の平均粒子径
日機装社製マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用いて測定した。
【0052】
水系サイズ剤を構成する材料を、以下に示す。
(1)ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)
(A1)ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(吉村油化学社製、GF690、水酸基価123mgKOH/g)
(A2)ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(三洋化成工業社製、ニューポール BPE−60、水酸基価228mgKOH/g)
(A3)ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル(三洋化成工業社製、ニューポール BP−5P、水酸基価211mgKOH/g)
【0053】
(2)ポリアルキレングリコール(B)
(B1)ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製、PEG600)
【0054】
(3)カチオン性脂肪酸アミド(C)
(C1)カチオン性脂肪酸アミド(一方社油脂工業社製、KSK)
【0055】
(4)ポリオキシアルキレンアルキルエステル(D)
(D1)ポリオキシエチレンアルキルエステル(一方社油脂工業社製、ノイラン)
【0056】
(5)微粒子(E)
(E1)カチオン性ポリアミド水性分散体(ユニチカ社製、M3−C−X020、固形分濃度20質量%、数平均粒子径0.083μm)
(E2)カチオン性ポリアミド水性分散体(ユニチカ社製、M4−C−X025、固形分濃度25質量%、数平均粒子径0・043μm)
(E3)アニオン性ポリアミド水性分散体(ユニチカ社製、MD−X020、固形分濃度22質量%、数平均粒子径0.034μm)
(E4)アニオン性ポリアミド水性分散体(ユニチカ社製、ME−X025、固形分濃度26質量%、数平均粒子径0・054μm)
(E5)ヒドロキシフェニルトリアジン水性分散体(BASF社製、TINUVIN 479−DW、固形分濃度40質量%、平均粒子径? μm)
【0057】
実施例1〜26、比較例1〜9
表1に示す種類と質量部の各成分と、水とを混合して、各成分を合計した濃度が4〜8質量%である水系サイズ剤を作製した。
得られた水系サイズ剤を、ノズルから紡出した複数のガラス繊維フィラメント(繊維総本数:40本)からなるガラスヤーンに付着させ、ガラス繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにケークに巻き取った。得られたケークから解舒したガラスロービングを、撚りをかけながら(撚り数:0.5Z)、ボビンに巻き付け、ガラス繊維ヤーン(平均繊維径:4.1μm、番手:1.3tex)を得た。このようにして、製織用のガラス繊維を得た。
なお、ガラス繊維への水系サイズ剤(固形分)の付着量は、水系サイズ剤の濃度により変動する。水系サイズ剤の濃度が4〜8質量%である場合、水系サイズ剤(固形分)の付着量は、ガラス繊維とそれに付着した水系サイズ剤(固形分)の合計100質量部に対して、0.15〜0.4質量部であった。
上記で得られた製織用のガラス繊維を、経糸、緯糸いずれにも用いて、津田駒工業社製のエアージェット織機で製織し、ガラス繊維クロス(ロービングクロス)を得た。
得られたガラス繊維クロスを、水で開繊処理し、シランカップリング処理を行い、120℃の乾燥工程にて乾燥を実施した後、エポキシ樹脂のワニスに浸漬し、ワニスから取り上げた後、150℃で5分間、170℃で1.5〜2時間の加熱処理を行い、硬化したプリプレグを作製した。
また、得られたガラス繊維クロスを、水で開繊処理し、シランカップリング処理を行い、120℃の乾燥工程にて乾燥を実施した後、エポキシ樹脂のワニスに浸漬し、ワニスから取り上げた後、150℃で5分間加熱処理を行い、半硬化状態のプリプレグに加工した。半硬化状態のプリプレグを30枚積層し、プレス圧10〜40kg/cm、加熱温度170℃、真空下で1.5〜2時間加熱し、硬化した複合材料を作製した。
なお、上記硬化したプリプレグや複合材料の作製において、水での開繊処理は、0.1〜5.0MPaの水圧を加えて行い、シランカップリング処理は、アミノシランカップリング剤を用いて行った。またエポキシ樹脂のワニスとして、NBMA規格のFR−4組成のエポキシ樹脂100質量部をメチルエチルケトン14質量部で希釈したワニスを用いた。
上記で得られた水系サイズ剤、製織用のガラス繊維、ガラス繊維クロス、およびガラス繊維クロスから作製した硬化したプリプレグや複合材料について、各種測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1〜26の水系サイズ剤で表面が処理されたガラス繊維は、解舒張力、毛羽発生量、帯電が抑制され、安定して製織することができた。
実施例2の水系サイズ剤は、微粒子(E)として、(E1)のポリアミドの水性分散体を用いたため、実施例1と対比して、やや製織性が高かった。また、それから得られたガラス繊維クロスは開繊性がやや高かった。
実施例3の水系サイズ剤は、ポリアルキレングリコール(B)の含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも少なかったため、実施例2と対比して、毛羽発生量がやや高くなり、製織性がやや低かった。実施例4の水系サイズ剤は、ポリアルキレングリコール(B)の含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも多かったため、実施例2と対比して、解舒張力がやや高くなり、やや製織性が低かった。また、それから得られたガラス繊維クロスは開繊性がやや低かった。
実施例5の水系サイズ剤は、カチオン性脂肪酸アミド(C)の含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも少なかったため、実施例2と対比して、解舒張力がやや高くなり、製織性がやや低かった。実施例6の水系サイズ剤は、カチオン性脂肪酸アミド(C)の含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも多かったため、実施例2と対比して、帯電量がやや高くなり、製織性がやや低かった。また、それから得られたガラス繊維クロスの開繊性がやや低かった。
実施例7の水系サイズ剤は、化合物(D)の含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも少なかったため、実施例2と対比して、解舒張力がやや高くなり、製織性がやや低かった。実施例8の水系サイズ剤は、化合物(D)の含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも多かったため、実施例2と対比して、毛羽発生量がやや高くなり、製織性がやや低かった。
実施例9、10の水系サイズ剤は、水酸基価が200mgKOH/gを超えるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A2)、(A3)を用いたため、水への溶解性が低下しガラス繊維の被覆性が低下した。そのため、毛羽発生量、帯電量がやや高くなり、製織性が低かった。また、それから得られたガラス繊維クロスは開繊性がやや低かった。
実施例11の水系サイズ剤は、微粒子(E)の含有量が本発明で規定するより好ましい範囲よりも少なかったため、実施例2と対比して、それから得られたガラス繊維クロスの開繊性がやや低かった。実施例12の水系サイズ剤は、微粒子(E)の含有量が本発明で規定するより好ましい範囲よりも多かったため、実施例2と対比して、製織性がやや低かった。
実施例11、14の水系サイズ剤は、微粒子(E)として、アニオン性ポリアミド水性分散体を用いたため、カチオン型ポリアミド水性分散体を用いた実施例17、20と対比して、それから得られたガラス繊維クロスは、開繊性がやや高かった。また、実施例11、14、17、20の水系サイズ剤は、ポリアミド水性分散体を用いたため、ヒドロキシフェニルトリアジン水性分散体を用いた実施例23と対比して、それから得られたガラス繊維クロスは、開繊性がやや高かった。
同様に、実施例2、13の水系サイズ剤は、微粒子(E)として、アニオン性ポリアミド水性分散体を用いたため、カチオン型ポリアミド水性分散体を用いた実施例16、19と対比して、それから得られたガラス繊維クロスは、開繊性がやや高かった。また、実施例2、13、16、19の水系サイズ剤は、ポリアミド水性分散体を用いたため、ヒドロキシフェニルトリアジン水性分散体を用いた実施例22と対比して、それから得られたガラス繊維クロスは、開繊性がやや高かった。
同様に、実施例12、15の水系サイズ剤は、微粒子(E)として、アニオン性ポリアミド水性分散体を用いたため、カチオン型ポリアミド水性分散体を用いた実施例18、21と対比して、それから得られたガラス繊維クロスは、開繊性がやや高かった。また、実施例12、15、18、21の水系サイズ剤は、ポリアミド水性分散体を用いたため、ヒドロキシフェニルトリアジン水性分散体を用いた実施例24と対比して、それから得られたガラス繊維クロスは、開繊性がやや高かった。
実施例2の水系サイズ剤は、ポリアルキレングリコール(B)とカチオン性脂肪酸アミド(C)を併用したため、(B)を用いなかった比較例9や、(C)を用いなかった比較例8と対比して、開繊性が相乗的に向上していた。
実施例25の水系サイズ剤は、微粒子(E)の含有量が本発明で規定するより好ましい範囲より少なかったため、実施例2と対比して、それから得られたガラス繊維クロスの開繊性がやや低かった。
実施例26の水系サイズ剤は、微粒子(E)の含有量が本発明で規定するより好ましい範囲より多かったため、実施例2と対比して、製織性がやや低かった。
【0060】
比較例1の水系サイズ剤は、ポリアルキレングリコール(B)の含有量が本発明で規定する範囲より少なかったため、ガラス繊維は硬く、毛羽発生量が増加し、製織性が低かった。そのため、ガラス繊維クロスを得ることが出来なかった。
比較例2の水系サイズ剤は、ポリアルキレングリコール(B)の含有量が本発明で規定する範囲より多かったため、毛羽発生量、帯電量が高くなり、製織性が低かった。また、それから得られたガラス繊維クロスは開繊性が低かった。
比較例3の水系サイズ剤は、カチオン性脂肪酸アミド(C)の含有量が本発明で規定する範囲より少なかったため、ガラス繊維は硬く、毛羽発生量が増加し、製織性が低かった。そのため、ガラス繊維クロスを得ることが出来なかった。
比較例4の水系サイズ剤は、カチオン性脂肪酸アミド(C)の含有量が本発明で規定する範囲より多かったため、毛羽発生量、帯電量が高くなり、製織性が低かった。また、それから得られたガラス繊維クロスは開繊性が低かった。
比較例5の水系サイズ剤は、化合物(D)の含有量が本発明で規定する範囲より少なかったため、解舒張力と帯電量が高くなり、製織性が低かった。そのため、ガラス繊維クロスを得ることが出来なかった。
比較例6の水系サイズ剤は、化合物(D)の含有量が本発明で規定する範囲より多かったため、解舒張力が高くなり、製織性が低かった。
比較例7の水系サイズ剤は、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル(A)を含有しなかったため、皮膜形成性に劣り、解舒張力、毛羽発生量、帯電量が高くなり、製織性が低かった。そのため、ガラス繊維クロスを得ることが出来なかった。
比較例8の水系サイズ剤は、ポリアルキレングリコール(B)を含有しなかったため、皮膜形成性に劣り、解舒張力、毛羽発生量、帯電量が高くなり、製織性が低かった。そのため、ガラス繊維クロスを得ることが出来なかった。
比較例9の水系サイズ剤は、カチオン性脂肪酸アミド(C)を含有しなかったため、皮膜形成性に劣り、解舒張力、毛羽発生量、帯電量が高くなり、製織性が低かった。そのため、ガラス繊維クロスを得ることが出来なかった。