【課題】発泡時における発泡剤の体積が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるように構成された口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【解決手段】結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、前記発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、前記発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした口腔清浄用発泡性錠剤。
前記発泡剤は炭酸水素ナトリウム、又はこれに加えて水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムナトリウム、のいずれか一以上を含み、その総重量は、発泡剤の発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下の範囲を満たす範囲内で0.2グラム以上0.4グラム以下である請求項1に記載の口腔清浄用発泡性錠剤。
剤形が上下面が略凸レンズ形状を有する略円筒形状で、光軸方向相当高さが5ミリメートル以上7ミリメートル以下であり、レンズ径相当長さが12ミリメートル以上14ミリメートル以下であり、円筒側面相当高さが3ミリメートル以上4ミリメートル以下である請求項1から6のいずれか一に記載の口腔清浄用発泡性錠剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、口腔清浄用発泡性錠剤に含まれる発泡剤は、歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られるように、発泡時にある程度の体積を占めるものである必要がある。しかし、その一方で、こうした錠剤は、例えば外出先で人に面会する直前になるべく口に含んでいることを他人に知られないように使用することができ、使用後も泡を吐き出す必要がないなどゴミが出ないようにしたいといったニーズもある。しかし、錠剤に含まれる発泡剤の体積が口一杯に頬張るほどであると、口に含んでいることが目立ってしまい、また、清浄終了後も口の中に泡がたまってしまいこれを吐き出す必要があるなど、上記のようなニーズを満たすことが困難となる。そこで、この種の錠剤にあっては、発泡時の体積が過小でなく過大でもなく、適切な体積であることが求められる。
【0006】
また、手の不自由な身体障害者や高齢者にあっては、手を自由に動かすことができないために歯磨きの動作が困難である場合も考えられる。このような場合には、歯ブラシや水を必要とせず、口の中に入れるだけで簡単に清浄作用を行うことができる錠剤の必要性が高い。その際、特に高齢者は、誤って泡を飲み込んでしまうおそれがあり、泡の体積が大きいと泡が肺に入って肺炎を起こすといった危険がある。これを防ぐためには、泡の体積が過大なものとならないようにするとともに、下を向いた状態で清浄を行うことができるようにして泡を飲み込んでしまうおそれを減らすことが望ましい。この点、通常の歯磨き動作のように口を完全に閉じた状態で動作を行うことが難しいものであると、下を向いて清浄を行うことは困難である。錠剤であれば、口を完全に閉じた状態で清浄のための動作(口を動かすこと)を行うことができるものの、泡の体積が過大であるとやはり口を完全に閉じてこの動作を行うことが困難となる。
【0007】
さらに、最近、大規模災害に伴う避難生活で十分な水を利用できず歯磨きなどが十分にできない状態が長く続いた場合に、口腔内が清潔に保たれていないために、特に高齢者など体力が低下した者が肺炎を起こしやすいといったことが指摘されている。そこで、このような観点からも、水なしで服用でき、しかも適切な体積の発泡を行なって十分な清浄効果を得ることができる口腔清浄用発泡性錠剤の重要性がますます増大しているといえる。
【0008】
しかし、従来、このように発泡時における発泡剤の体積が適切な体積になるようにすることを目的として構成された口腔清浄用発泡性錠剤は存在しなかった。なお、特許文献1には、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、炭酸鉄、およびそれらの混合物からなる群より選択される発泡剤が10〜50重量%含まれることが記載されている(請求項1参照)とともに、錠剤の重量が700ミリグラムである例が記載されている(明細書[0026]参照)ので、当該錠剤において想定されている発泡剤の発泡時の体積を計算することができないわけではないが、同文献には発泡時における発泡剤の体積が適切な体積になるようにするという発想がないことには変わりはない。
【0009】
本発明は、以上の課題に鑑みたものであり、その解決すべき課題は、発泡時における発泡剤の体積が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるように構成された口腔清浄用発泡性錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明のうち、第一の発明は、結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、前記発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0011】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、前記発泡剤は炭酸水素ナトリウム、又はこれに加えて水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムナトリウム、のいずれか一以上を含み、その総重量は、発泡剤の発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下の範囲を満たす範囲内で0.2グラム以上0.4グラム以下である口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0012】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、前記錠剤用基材は、体積が発泡剤の発泡時の体積の1/1500以上2/1500である口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0013】
また、第四の発明は、第一から第三のいずれか一の発明を基礎として、前記錠剤用基材は、平均粒径が50ミクロン以上100ミクロン以下である口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0014】
また、第五の発明は、第一から第四のいずれか一の発明を基礎として、前記研磨剤は、平均粒径が10ミクロン以上30ミクロン以下である口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0015】
また、第六の発明は、第一から第五のいずれか一の発明を基礎として、表面粗度が算術平均粗さで100ミクロン以上300ミクロン以下である口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0016】
また、第七の発明は、第一から第六のいずれか一の発明を基礎として、剤形が上下面が略凸レンズ形状を有する略円筒形状で、光軸方向相当高さが5ミリメートル以上7ミリメートル以下であり、レンズ径相当長さが12ミリメートル以上14ミリメートル以下であり、円筒側面相当高さが3ミリメートル以上4ミリメートル以下である口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0017】
また、第八の発明は、第七の発明を基礎として、前記略円筒形状の側面の表面粗度は、前記略凸レンズ形状の上下面の表面粗度よりも低い値である口腔清浄用発泡性錠剤を提供する。
【0018】
また、第九の発明は、第一から第八のいずれか一の発明にかかる口腔清浄用発泡性錠剤と、この錠剤を包装する容器とからなる包装錠剤であって、包装はプレススルーパックであり、錠剤と接する破砕予定面は無着色アルミニウム合金箔でできている包装錠剤を提供する。
【0019】
また、第十の発明は、第九の発明を基礎として、プレス面は透明プラスティック材料である包装錠剤を提供する。
【0020】
また、第十一の発明は、第九又は第十の発明を基礎として、プレススルーパックは一組3錠で切り離し可能なシート状である包装錠剤を提供する。
【0021】
また、第十二の発明は、第九から第十一のいずれか一の発明を基礎として、プレススルーパックにはシート曲げ変形阻止用のリブが設けられている包装錠剤を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発泡時における発泡剤の体積が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるように構成された口腔清浄用発泡性錠剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項1などに関し、実施例2は主に請求項2などに関し、実施例3は主に請求項3などに関し、実施例4は主に請求項4などに関し、実施例5は主に請求項5などに関し、実施例6は主に請求項6などに関し、実施例7は主に請求項7などに関し、実施例8は主に請求項8などに関し、実施例9は主に請求項9、請求項10などに関し、実施例10は主に請求項11などに関し、実施例11は主に請求項12などに関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0026】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤を含むものであって、発泡時における発泡剤の体積が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるように構成されたものである。
【0027】
<構成>
(全般) 表1に、本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤の構成の一例について示す。この表に示すように、本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤には、(1)錠剤用基材、(2)発泡剤、(3)研磨剤などが含まれる。このほか、爽快感を与えるといった目的でクエン酸(C
6H
8O
7)(唾液の分泌を促す効果も有する)、キシリトール(C
5H
12O
5)(歯牙保護剤としての役割も有する)、ペパーミントなどを含んでいても良い。さらに、少量の塩化セチルピリジニウム(C
21H
38NCl)(歯周病や虫歯の原因菌を殺菌し、歯周病や虫歯を予防する効果を有する)、アスパルターム(C
14H
18N
2O
5)(甘味料)、L−メントール(C
10H
20O)(フレーバー剤)、ビタミンCなどを含んでいても良い。さらにアラントイン(C
4H
6N
4O
3)を含んでいてもよい。アラントインは、歯肉細胞を活性化し歯周病を予防する効果や美白効果があると言われている。なお、歯牙保護剤としてフッ素ないしフッ化化合物を含んでいても良いが、人体に有毒作用を及ぼすおそれがあることから、フッ素ないしフッ化化合物は含まれていない方が望ましい。これらの成分により、本実施例に係る口腔清浄用発泡性錠剤は、口腔内の清浄効果のほか、歯周病(歯槽膿漏)の予防、歯肉炎の予防、虫歯の発生・進行の予防、さらには口臭の防止、ホワイトニング(歯を白くすること)、口腔内の爽快感の付与といった効果を奏することができる。
【表1】
【0028】
(錠剤用基材)
錠剤用基材は、発泡剤、研磨剤等を結合させる結合剤としての役割のほか、これらを含む混合物全体を服用しやすい大きさや形に成形するための賦形剤としての役割を果たすために加えられるものである。錠剤用基材の素材としては、例えば結晶セルロース((C
6H
10O
5)
n)が用いられる。結晶セルロースは硬質なため、錠剤を成形しやすく、又口に含んだときに口当たりの良さを感じやすいという利点を有する。
【0029】
(発泡剤:全般)
発泡剤は、唾液と接触することで泡を生じさせるために添加されるものである。本発明の特徴は、錠剤中に含まれる発泡剤の重量が、発泡剤の発泡時の体積が適切な体積になるような重量に調整されている点にある。ここで、適切な体積とは、歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる程度の体積を有する一方で、なるべく口に含んでいることがわからず、また誤って飲み込んで肺炎を起こすといったおそれがない程度に抑えられた体積をいい、具体的には、発泡時において26ミリリットル以上53ミリリットル以下の体積をいう。また、さらに好適には、発泡時において26ミリリットル以上40ミリリットル以下の体積をいう。
【0030】
(発泡剤:発泡時における体積)
本発明において、発泡時における発泡剤の体積を「26ミリリットル以上53ミリリットル以下」とした理由は以下のとおりである。
【0031】
表2は、茂木健司ほか「口腔機能検査としての新しい口腔内容積測定法の検討」(北関東医学 Vol.50(2000)No.6 P511−516所収。以下「非特許文献1」という。)に開示された健常人の口腔内容積に関するデータである。
【表2】
【0032】
上記データは、含水法と呼ばれる方法により人の口腔内容積を測定したものである。含水法とは、水を満たした60ミリリットルのシリンジ(注射筒)の先端を被験者の口角より口腔内に挿入してシリンジ内の水を注入し、その最大値を記録し、6回の平均値を口腔内容積とするものであるとされている。
【0033】
上記の表2には、健常人の被験者10人に対する測定結果に基づくデータとして、それぞれ閉口位(中心咬合位で測定する状態)と開口位(顎位を自由にさせて測定する状態)のデータが掲載されているが、非特許文献1によれば閉口位のデータの方が各回による変動が少なく再現性が高いとされている。そこで、全被験者の閉口位での口腔内容積の平均値を同表から計算すると、その値は61.4ミリリットルとなる。また、非特許文献1によれば、被験者の身長、最大頭長、頬骨弓幅、全頭高の各平均値は、順に164センチメートル、17.8センチメートル、14.0センチメートル、23.6センチメートルであり、これらと口腔内容積の間に正の相関関係が認められるとされている。
【0034】
経験則に照らせば、人が泡を口に含んだときに、その泡が口腔内の各所に十分に行きわたる程度であって、かつ口一杯に頬張るほどにはならない程度の体積は、口腔内容積の概ね2/5ないし4/5程度であると考えられ、より好適には口腔内容積の概ね2/5ないし3/5程度であると考えられる。これは、自己の口腔内容積(これは例えば空気又は水を口一杯に含み、それを吐き出してその体積を量ることで知ることができる)と、口腔内の各所に十分に行きわたる程度であって、かつ口一杯に頬張るほどにはならない程度の量の気体を口に含んだ場合の体積を量り、両者の体積を比較することで知ることができる。そこで、非特許文献1に開示されている平均人の口腔内容積のデータ(61.4ミリリットル)にこの経験則に基づく比率を適用し、本発明の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡時における発泡剤の体積を26ミリリットル以上53ミリリットル以下とした。また、上述の口腔内の泡の体積が口腔内容積の概ね2/5ないし3/5程度であるというより好適な体積に対応した口腔清浄用発泡性錠剤の発泡時における発泡剤のより好適な体積を26ミリリットル以上40ミリリットル以下とした。
【0035】
なお、非特許文献1の記載からも明らかなように、口腔内容積は、人の身長、最大頭長、頬骨弓幅又は全頭高の値と正の相関関係を有することから、一般に男性は女性よりも口腔内容積が大きく、成人は子供よりも口腔内容積が大きいと認められる。そこで、本発明における口腔清浄用発泡性錠剤においても、成人男性用、成人女性用、子供用などに区別したうえで、発泡剤の発泡時の体積がこれらの区別に応じて異なるようにしてもよい。例えば、表2において男性被験者の閉口位での口腔内容積の平均値が74.0ミリリットル、女性被験者の閉口位での口腔内容積の平均値が42.5ミリリットルであることを勘案し、例えば成人男性用の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡剤の発泡時の体積を32ミリリットル以上64ミリリットル以下、成人女性用の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡剤の発泡時の体積を18ミリリットル以上36ミリリットル以下としてもよい。また、子供用の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡剤の発泡時の体積を年齢に応じて5〜35ミリリットル程度の範囲で適宜の数値とするなどとしてもよい。
【0036】
<製造方法>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、公知の方法を用いて製造することが可能である。例えば、前出の特許文献1には、(1)予備混合工程、(2)混合工程、(3)錠剤化工程からなる口腔清浄用発泡性錠剤の製造方法が開示されている。ここで、予備混合工程とは、着色剤を蒸留水に加えて作成した溶液を混合物(結晶セルロースを含む)に吸着させ、乾燥させて予備調整物を得る工程であり、混合工程は、予備混合工程で得られた予備調整物に対して発泡剤、研磨剤、歯牙保護剤、甘味料等を加えて混合物を得る工程)である。また、錠剤化工程は、混合工程で得られた混合物を錠剤化する工程である(特許文献1 参照)。本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤もこれと同様の方法で製造することができる。
【0037】
<効果>
本実施例によれば、発泡時における発泡剤の体積が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるように構成された口腔清浄用発泡性錠剤を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0038】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、発泡剤は炭酸水素ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムナトリウムのいずれか一以上であり、その総重量が0.2グラム以上0.4グラム以下であるものである。
【0039】
<構成>
(全般)
表3に、本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤の構成の一例について示す。同表では、錠剤1錠の重量(質量)を822.34ミリグラムとし、この場合にそれぞれ表1に示した割合(質量%)で含まれる錠剤用基材、発泡剤、研磨剤等の重量を示した。錠剤1錠の822.34ミリグラムという重量は、服用しやすい大きさや形状を得る上で好適な重量の一例であり、例えばこのような重量を有する錠剤を直径13ミリメートル、厚さ3.5ミリメートルの円盤形状に成形ことができる。なお、錠形の詳細については別の実施例にて後述する。
【表3】
【0040】
(発泡剤:重量)
本実施例の錠剤は、実施例1の錠剤と基本的に共通するが、発泡剤が炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、水素化マグネシウム(MgH
2)、水素化カルシウム(CaH
2)、水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH
4)のいずれか一以上であり、その総重量が0.2グラム以上0.4グラム以下である点に特徴がある。
【0041】
前出の表3には、発泡剤の総重量が0.2グラム以上0.4グラム以下である場合の一例として、発泡剤として炭酸水素ナトリウムのみが含まれ、その重量が256ミリグラム(0.256グラム)である例が示されている。本例では、錠剤1錠(重量822.34ミリグラム)中に含まれる炭酸水素ナトリウムの割合(質量%)は31.1%となり、これは表1に示した発泡剤の錠剤全体に占める割合に対応している。
【0042】
例えば、発泡剤として炭酸水素ナトリウムのみが含まれている場合において、その発泡時における体積が26ミリリットルである場合、発泡剤の重量は、0.2グラムとなる。これは以下の関係から導かれる。
【0043】
炭酸水素ナトリウムを唾液と接触させると、化学式1(化1)に示す化学反応により、二酸化炭素が発生し、これがほぼ発泡剤の発泡時の体積となる。
(化1)
2NaHCO
3→Na
2CO
3+H
2O+CO
2
【0044】
ここで、炭酸水素ナトリウムの分子量は84であるから、炭酸水素ナトリウム168グラムから1molの二酸化炭素(体積22.4リットル)が発生することとなる。そこで、この反応により26ミリリットルの二酸化炭素を発生させるための炭酸水素ナトリウムの重量は、0.2グラムとなる(≒168×26/22400)。炭酸水素ナトリウムの発泡時の体積はほぼ二酸化炭素の体積に匹敵するといえるので、発泡時の体積が26ミリリットルとなる炭酸水素ナトリウムの重量は0.2グラムとなる。また、同様の計算により、53ミリリットルの二酸化炭素を発生させるための炭酸水素ナトリウムの重量は、0.4グラムとなる。また、40ミリリットルの二酸化炭素を発生させるための炭酸水素ナトリウムの重量は、0.3グラムとなる。即ち、本実施例の錠剤は、錠剤の大きさを服用に適したものとしたときに、発泡剤の発泡量が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるようにその重量を調整したものである。
【0045】
水素化マグネシウム(MgH
2、分子量26.3)、水素化カルシウム(CaH
2、分子量42.0)、水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH
4、分子量54.0)は、これを発泡させた場合に水素を発生する水素発生剤である。例えば水素化マグネシウムから水素を発生させる場合の化学式は以下の化学式2(化2)のとおりである。
(化2)
MgH
2+2H
2O→Mg(OH)
2+2H
2
【0046】
そして、上で炭酸水素ナトリウムについて示したのと同様の計算により、所定体積の水素を発生させるために必要なこれら発泡剤の重量を知ることができるので、発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下になるように炭酸水素ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウムもしくは水素化アルミニウムナトリウム又はこれらの全部もしくは一部を組み合わせた場合の各発泡剤の重量を決定することができる。例えば、発泡剤として炭酸水素ナトリウム0.2グラム及び水素化マグネシウム0.01グラムを含有した錠剤とすれば、発泡時の体積が約35ミリリットル(二酸化炭素26.7ミリリットル、水素8.5ミリリットル)となる錠剤を得ることができる。
【0047】
水素は、身体の老化を促進する作用を有する活性酸素と結合して、これを中和することでその作用を除去することから、健康や美容に優れた効果があるとされている。そこで、本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡剤として水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムナトリウムといった水素発生剤を含むことにより、こうした健康、美容への効果が期待できる。また、水素には、殺菌作用もあり、水素発生剤を含む錠剤には口腔内の歯周病や虫歯の原因菌を殺菌する効果が期待できる。
【0048】
なお、本実施例においても、前実施例と同様に、発泡剤の発泡時の体積が成人男性用、成人女性用、子供用といった区別に応じて異なるものとなるよう発泡剤の重量にバリエーションを設けてもよい。例えば、表2に基づいて明らかにされる成人男性と成人女性の口腔内容積の平均値の差異に対応して、例えば成人男性用の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡剤の重量を0.24グラム以上0.48グラム以下、成人女性用の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡剤の重量を0.14グラム以上0.28グラム以下としてもよい。また、子供用の口腔清浄用発泡性錠剤の発泡剤の重量を年齢に応じて0.04〜0.3グラム程度の範囲で適宜の数値とするなどとしてもよい。
【0049】
<効果>
本実施例によれば、発泡時における発泡剤の体積が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるようにその重量が調整された口腔清浄用発泡性錠剤を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0050】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、錠剤用基材の体積が発泡剤の発泡時の体積の1/1500以上2/1500以下であるものである。
【0051】
<構成>
本実施例の錠剤は、実施例1又は2の錠剤と基本的に共通するが、錠剤用基材の体積が発泡剤の発泡時の体積の1/1500以上2/1500以下である点に特徴がある。錠剤用基材は結晶セルロースなどの硬質な材料を素材とすることが多く、口当たりの良さと関係する。その際、口当たりの良さは錠剤用基材の絶対量で決まるのではなく、発泡剤の発泡時の体積との相対的な関係に依存する。その際、錠剤用基材の体積が発泡剤の発泡時の体積に対して過大であると、ごつごつとした感じが強すぎて口当たりが悪くなる一方、錠剤用基材の体積が発泡剤の発泡時の体積に対して過小であると、口の中がほとんど泡だけとなり歯ごたえがなくやはり口当たりが悪くなってしまう。つまり、錠剤用基材の体積の発泡剤の発泡時の体積に対する比率は、過大でも過小でもなく、適切な範囲内であることが望ましい。この点、本発明の発明者は、錠剤用基材の体積が発泡剤の発泡時の体積の1/1500以上2/1500以下であれば、適度な口当たりの良さを得ることができることを見出した。そこで、本実施例の錠剤は、錠剤用基材の体積がこのような体積であるものを提供するものである。既述のように発泡時における発泡剤の体積は26ミリリットル以上53ミリリットル以下であるので、その1/1500以上2/1500以下の体積は、約0.018〜0.071ミリリットルとなる。前出の表3に示した構成を有する錠剤の場合、例えばその形状を後出の
図1に示したようなものとすると、その体積は、0.41〜0.82ミリリットル程度となる。従って、この場合、本実施例における錠剤用基材の体積は、錠剤全体の体積の2〜17パーセント程度となる。
【0052】
<効果>
本実施例により、錠剤を口に含んだときに適度な口当たりの良さが得られる口腔清浄用発泡性錠剤を提供することができる。
【実施例4】
【0053】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、錠剤用基材の平均粒径が50ミクロン以上100ミクロン以下のものである。
【0054】
<構成>
(錠剤用基材:平均粒径)
前実施例で述べたように、錠剤用基材の体積が発泡剤の発泡時の体積の1/1500以上2/1500以下であれば適度な口当たりの良さを得ることができるが、同じ比率であっても、相対的に小粒径の錠剤用基材が相対的に多数含まれている場合と、相対的に大粒径の錠剤用基材が相対的に少数含まれている場合とでは、口当たりは異なる。この場合、錠剤用基材の粒径が過大であると、ごつごつとした感じが強すぎて口当たりが悪くなる一方、錠剤用基材の粒径が過小であると、ほとんど歯ごたえがなくやはり口当たりが悪くなってしまう。この点、本発明の発明者は、錠剤用基材の平均粒径が50ミクロン以上100ミクロン以下であれば、適度な口当たりの良さを得ることができることを見出した。
【0055】
<効果>
本実施例により、錠剤を口に含んだときに適度な口当たりの良さが得られる口腔清浄用発泡性錠剤を提供することができる。
【実施例5】
【0056】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、研磨剤の平均粒径が10ミクロン以上30ミクロン以下のものである。
【0057】
<構成>
(研磨剤:平均粒径)
本実施例の錠剤は、実施例1から4の錠剤と基本的に共通するが、研磨剤の平均粒径が10ミクロン以上30ミクロン以下である点に特徴がある。この構成は、発泡剤の発泡に応じて研磨剤が歯の周囲やすき間に充分に行きわたって好適な研磨効果が得られるようにすることに配慮したものである。即ち、錠剤を口に含んだときにあまり目立たないようにするというニーズがあるため、本実施例の錠剤の好適な大きさは一定程度に限られており、それに伴い含まれる研磨剤にも一定の限度がある。例えば、研磨剤である無水ケイ酸の好適な質量比は、表1に示したように、錠剤一錠に対し約11.7パーセントである。そこで、研磨剤の平均粒径が過大であると、研磨剤の粒数が減って、研磨剤が歯の周囲やすき間に充分に行きわたるようにすることが困難となる半面、研磨剤の平均粒径が過小であると十分な研磨効果が得られない。この点、本発明の発明者は、研磨剤の平均粒径が10ミクロン以上30ミクロン以下であれば、研磨剤が歯の周囲やすき間に充分に行きわたるようにし、かつ十分な研磨効果が得られることを見出した。そこで、本実施例の錠剤は、研磨剤の平均粒径がこのような長さであるものを提供するものである。
【0058】
<効果>
本実施例により、錠剤を口に含んだときに、研磨剤が歯の周囲やすき間に充分に行きわたるようにし、かつ十分な研磨効果が得られる口腔清浄用発泡性錠剤を提供することができる。
【実施例6】
【0059】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、表面粗度が算術平均粗さで100ミクロン以上300ミクロン以下のものである。
【0060】
<構成>
(錠剤:表面粗度)
本実施例の錠剤は、実施例1から5の錠剤と基本的に共通するが、表面粗度が算術平均粗さで100ミクロン以上300ミクロン以下である点に特徴がある。算術平均粗さは、JIS B 0601規格で定義される粗さの尺度であり、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値の合計を平均した値で表したものである。
【0061】
本実施例の構成の目的は、錠剤の算術平均粗さの値を一定以上とすることで錠剤の表面をある程度凹凸のあるものとし、口に含んだときにその凹部に唾液中の水分が浸み込みやすくなるようにすることで、発泡剤の発泡をより促すことにある。ただし、算術平均粗さの値が過大となると、錠剤の凹部が相対的に深いものとなり、凹部への水分の浸み込みに時間がかかって発泡の促進を阻害するおそれがあることから、錠剤の算術平均粗さの値を一定以下にする必要もある。そこで、経験則に照らし、本実施例では、錠剤の算術平均粗さの値を100ミクロン以上300ミクロン以下とした。この範囲であれば、錠剤を口に含んだときに唾液が錠剤の凹部に適切に浸み込み、発泡剤を短時間で十分に発泡させることが可能となる。
【0062】
なお、錠剤の凹部に唾液中の水分が浸み込みやすくなるようにして発泡剤を短時間で十分に発泡させるためには、乾燥防止用にしばしば行われる錠剤表面の油脂などによるコーティングを行わず、発泡剤を含む混合物が表面に露出している方が望ましい。しかし、その場合、使用前に発泡剤が空気中の水分を吸って発泡してしまうことを防ぐ必要がある。そこで、本実施例の錠剤は、内部の空気の乾燥を保つことが可能なパッケージに収納して保存されることが好ましい。このような保存方法を前提として、本実施例の錠剤は、発泡剤を含む混合物が表面に露出しているものとすることができ、この結果、錠剤を口に含んだときに唾液が錠剤の凹部に適切に浸み込み、発泡剤を短時間で十分に発泡させるという効果を奏するものとすることができる。なお、口腔清浄用発泡性錠剤をパッケージに収納した包装錠剤の好適な構成については、別の実施例にて後述する。
【0063】
<効果>
本実施例により、錠剤を口に含んだときに、唾液が錠剤の凹部に適切に浸み込み、発泡剤を短時間で十分に発泡させることが可能な口腔清浄用発泡性錠剤を提供することができる。
【実施例7】
【0064】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、剤形が上下面が略凸レンズ形状を有する略円筒形状で、光軸方向相当高さが5ミリメートル以上7ミリメートル以下であり、レンズ径相当長さが12ミリメートル以上14ミリメートル以下であり、円筒側面相当高さが3ミリメートル以上4ミリメートル以下であるものである。
【0065】
<構成>
(錠剤:剤形)
図1は、本実施例の錠剤の形状の一例を示したものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。本図に示すように、本実施例の錠剤0110の剤形は、上面0111及び下面0112が略凸レンズ形状を有する略円筒形状で、光軸方向相当高さ0113が5ミリメートル以上7ミリメートル以下であり、レンズ径相当長さ0114が12ミリメートル以上14ミリメートル以下であり、円筒側面相当高さ0116が3ミリメートル以上4ミリメートル以下であるものである。その余の構成は、実施例1から実施例6までにおいて説明したところと同様である。
【0066】
本実施例の構成の目的は、錠剤の形状(剤形)を表面積、特に舌や口蓋と接触する面の面積をできるだけ大きくするのに好適な形状にしたものである。ただし、単に表面積を大きくするだけでなく、製造に際して成形しやすく、かつ服用しやすい形状であり、また、一定程度以上の表面粗度を持たせるためある程度厚みのある形状とすることにも配意したものである。これらの諸要素を勘案し、本実施例では、剤形を、上下面が略凸レンズ形状を有する略円筒形状で、光軸方向相当高さが5ミリメートル以上7ミリメートル以下であり、レンズ径相当長さが12ミリメートル以上14ミリメートル以下であり、円筒側面相当高さが3ミリメートル以上4ミリメートル以下であるものとした。これにより、上下面の面積が比較的大きなものとなり、全体の表面積、特に舌や口蓋と接触する面の面積を大きくとることができる。また、錠剤の上下面を略凸レンズ形状とすることで、服用しやすい形状とすることができる。また、中央を略凸レンズ形状とした略円筒形状とすることで、ある程度の厚みを持たせることができるため、一定程度以上の表面粗度を持たせることを容易にしている。錠剤をこのような形状とすれば、製造や服用が容易で、しかも、表面積を大きくすることで発泡剤を短時間で十分に発泡させることが可能となる。
【0067】
<効果>
本実施例により、製造や服用が容易で、しかも、表面積を大きくすることで発泡剤を短時間で十分に発泡させることが可能な口腔清浄用発泡性錠剤を提供することができる。
【実施例8】
【0068】
<概要>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、略円筒形状の側面の表面粗度が略凸レンズ形状の上下面の表面粗度よりも低い値のものである。
【0069】
<構成>
本実施例の口腔清浄用発泡性錠剤は、前実施例において
図1に示した錠剤と基本的に共通するが、本実施例の錠剤は、略円筒形状の側面0115の表面粗度が略凸レンズ形状の上下面0111、0112の表面粗度よりも低い(小さい)値のものである点に特徴があるものである。
【0070】
側面の表面粗度が略凸レンズ形状の上下面の表面粗度よりも低い値になるようにする目的は、以下のとおりである。即ち、既述のように、錠剤の表面粗度の値を一定以上とすることで錠剤の表面をある程度凹凸のあるものとし、口に含んだときにその凹部に唾液中の水分が浸み込みやすくなるようにすることで、発泡剤の発泡をより促すことができる。その際、仮に側面の表面粗度と略凸レンズ形状の上下面の表面粗度が同じ表面粗度であると、錠剤の表面全体にほぼ均等に唾液中の水分が浸み込んでいく形になるため、錠剤の表面全体からほぼ均等に発泡が生じ、これに応じて錠剤全体がほぼ均等に収縮していく。これに対し、本実施例の構成によれば、表面粗度の値が相対的に高い(大きい)略凸レンズ形状の上下面の方が相対的に早いペースで発泡していき、側面からの発泡は相対的に抑制されることとなる。このため、例えば、上下面と側面の表面粗度を同じにした場合に比べ、発泡のペースを遅くして発泡時間を持続させるといったことが可能となる。
【0071】
また、口腔内に服用された錠剤は、通例、上下面のいずれかが舌の上に接するように配置されることから、舌に接する面からの発泡がより促され、口腔内でも特に口臭等の原因となりやすい舌苔の除去に資することが可能となる。
【0072】
さらに、発泡に伴い錠剤全体が均一に縮小していくのではなく、上下から平たく押しつぶされるような形で縮小していくこととなり、舌との接触面が広く維持された状態が相対的に長く続くこととなり、舌で感じることの多い口当たりの良さを持続させることが可能となる。
【0073】
<効果>
本実施例により、略凸レンズ形状の上下面からの発泡を相対的に促し、側面からの発泡を相対的に抑制することで、発泡のペースを遅くして発泡時間を持続させたり、舌面に対する発泡を相対に促したり、口当たりの良さを持続させたりといったことが可能となる。
【実施例9】
【0074】
<概要>
本実施例は、錠剤と、この錠剤を包装する容器とからなる包装錠剤に関するものであって、包装がプレススルーパックであり、錠剤と接する破砕予定面が無着色アルミニウム合金箔でできているものである。また、プレス面が透明プラスティック材料であるものも本実施例の包装錠剤に含まれる。
【0075】
<構成>
(全般)
図2は、本実施例の包装錠剤の外観の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(aで)のX−X線断面図である。本図に示したように、本実施例の包装錠剤0200は、錠剤0210と、この錠剤を包装する容器0220とからなる。錠剤は、前述の各実施例で述べた錠剤と同様のものである。
【0076】
(錠剤を包装する容器)
錠剤を包装する容器(以下「包装容器」という。)は、アルミニウム合金箔のシート0221と、当該シート上に接着して配置される透明プラスティック製などのカバー0222とからなる。カバーは錠剤を収容するための空間を形成する収容部0224を有する。本実施例における包装容器の特徴は、包装がプレススルーパックであり、錠剤と接する破砕予定面0222は無着色アルミニウム合金箔でできている点にある。
【0077】
プレススルーパック(「プレススルーパッケージ」ともいう)とは、金属製等のシートに錠剤を収容する空間を有する透明樹脂製等の収容部を貼り合わせた構造を有する包装であり、収容部の盛り上がった部分(プレス面)をシート側に向かって押すと収容部の内部に収容された錠剤がシートを突き破ってパッケージの外に押し出され、錠剤を取り出すことができるようにしたものである。これにより、収容部内を乾燥した状態に保つことができ、錠剤に油脂コーディング等を施さなくても錠剤が湿気ることを防ぐことができる。
【0078】
錠剤と接する破砕予定面は無着色アルミニウム合金箔でできている。ここで、破砕予定面とは、シートのうち錠剤に接する側の面をいう。
図2(c)はこの状態をわかりやすく図示するために、
図2(b)の破線円0201で囲んだ部分の拡大図であって、破砕予定面0223がシートのうち錠剤0210に接する側の面をいうことを示したものである。なお、破砕予定面の範囲は、シート上面のうち、カバーによって囲まれた範囲dをいう(換言すれば、シート上面のうちカバーと接着されていない面をいう)。
【0079】
仮に破砕予定面に有色の塗料を塗布するなどした場合、錠剤に油脂コーディング等を施さず、研磨剤等が表面に露出していると、破砕予定面に塗布された塗料が研磨剤に削られるなどして錠剤の表面に付着したり浸透したりして、錠剤の表面に色が移ってしまったり、塗料の成分によって錠剤の有効成分が損なわれてしまったりするおそれがある。そこで、破砕予定面を無着色としてこのようなおそれがないようにしたものが本実施例における包装錠剤である。
【0080】
また、プレス面は透明プラスティック材料であることが望ましい。このようにすることで、包装されたままで錠剤の外観を見ることができる。また、破砕予定面をアルミニウム合金箔とし、プレス面をプラスティックとし、両者を密着させて包装容器を形成することで、錠剤を乾燥した状態を保つことを好適に実現することができる。
【0081】
<効果>
本実施例により、錠剤の表面に色が移ってしまったり、塗料の成分によって錠剤の有効成分が損なわれてしまったりするおそれのない包装錠剤を提供することができる。
【実施例10】
【0082】
<概要>
本実施例の包装錠剤は、プレススルーパックが一組3錠で切り離し可能なシート状であるものである。
【0083】
<構成>
本実施例の包装錠剤は、プレススルーパックが一組3錠で切り離し可能なシート状である点に特徴があるものである。
【0084】
図3は、本実施例の包装錠剤の外観の一例を示す図であり、平面図で示したものである。ただし、錠剤の図示は省略し、包装容器0320のみを示した。本図に示すように、本実施例の包装錠剤は、包装であるプレススルーパックが、一組3錠で切り離し可能なシート状である。本図の例では、一組に3錠の錠剤を収容することができる三組の包装容器0320a、0320b、0320cがミシン目0325で切り離し可能に形成されている。一組3錠という単位で切り離し可能に構成する理由は、当該錠剤を一日に3回(朝、昼、晩)服用することが多いと考えられることに照らし、その使用に便利なように構成したものである。例えば、複数日にわたる旅行や出張に出かける際には、その日数分のシートを切り離して持参すればよいので、必要な数の錠剤の準備を簡単に行うことができる。その余の構成は、実施例9で述べた包装錠剤の構成と同様である。
【0085】
<効果>
本実施例により、旅行や出張の日数に合わせて必要な数の錠剤の準備を簡単に行うことができる。
【実施例11】
【0086】
<概要>
本実施例の包装錠剤は、プレススルーパックが一組3錠で切り離し可能なシート状であるものであって、プレススルーパックにシート曲げ変形阻止用のリブが設けられているものである。
【0087】
<構成>
図4は、本実施例の包装錠剤の外観の一例を示す図(
図3と同様、錠剤の図示を省略し包装容器のみを示したもの)であり、平面図で示したものである。本図に示すように、本実施例の包装錠剤の包装容器0420は、プレススルーパックが一組3錠で切り離し可能なシート状であり、プレススルーパックにシート曲げ変形阻止用のリブ0435が設けられている(煩雑を避けるため、
図4(a)、(b)、(c)それぞれ一組についてのみリブの符号を付した)。当該リブは、例えば、収容部のシートに接して配置される部分の一部をプレス加工により上面側に盛り上がるように凸部を設けることで形成される。
【0088】
このようなリブを設ける目的は、包装錠剤をバッグや服のポケットなどに入れて持ち歩いている際に、押されるなどしてシートが曲げられて変形し、破砕予定面にかすかな亀裂が入ってしまうことなどを防止し、これにより錠剤が損傷したり、湿気てしまったりというおそれを防ぐことにある。リブの位置は、シートの曲げ変形が起こらないような位置に適切に設計されるが、特に上述の目的に照らし、破砕予定面近傍を含む位置に設けられることが望ましい。
図4(a)〜(c)に示したものは、いずれもこの点に配した好適なものである。また、本図の例も前実施例で
図3に示したものと同様、3錠単位でシートを切り離し可能に構成されたものであるが、錠剤の配置位置はリブの配置を考慮して適切に設計されればよく、例えば(a)、(b)に示したものは左右に互い違いになるように配置したものであり、(c)に示したものは縦一列になるように配置したものである。
【0089】
<効果>
本実施例により、シートが曲げられて変形し、破砕予定面に亀裂が入ってしまうことを防止することができる。