特開2017-193689(P2017-193689A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017193689-黒色アゾ顔料及び着色剤 図000022
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-193689(P2017-193689A)
(43)【公開日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】黒色アゾ顔料及び着色剤
(51)【国際特許分類】
   C09B 56/02 20060101AFI20170929BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20170929BHJP
【FI】
   C09B56/02CSP
   G02B5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-86510(P2016-86510)
(22)【出願日】2016年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】井口 和紀
(72)【発明者】
【氏名】小熊 尚実
(72)【発明者】
【氏名】尾迫 秀和
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148BE35
2H148BH12
(57)【要約】
【課題】十分な黒色度を有するとともに、耐溶剤性などの耐久性に優れた、新規骨格を有する近赤外線非吸収性の黒色アゾ顔料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)(一般式(1)中、R1は、置換基を有してもよいアリール基を示す)で表される黒色アゾ顔料である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される黒色アゾ顔料。
(前記一般式(1)中、R1は、置換基を有してもよいアリール基を示す)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R1が、下記式(2−X)、(2−Y)、又は(2−Z)で表される請求項1に記載の黒色アゾ顔料。
【請求項3】
アルキド/メラミン焼き付け塗料中で光学濃度(OD値)2.2以上の黒色値を有する請求項1又は2に記載の黒色アゾ顔料。
【請求項4】
体積平均粒子径が20〜1,000nmの粉末又は粒子である請求項1〜3のいずれか一項に記載の黒色アゾ顔料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の黒色アゾ顔料を含有する着色剤。
【請求項6】
カラーフィルター用のブラックマトリックス又は遮光フィルムを形成するために用いられる請求項5に記載の着色剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線非吸収性の黒色アゾ顔料、及びそれを用いた着色剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料、印刷インキ、プラスチック用の着色剤などに使用されている黒色顔料としては、カーボンブラック系の顔料や酸化鉄系の顔料などが一般的である。これらの黒色顔料は、太陽光のうちの可視光領域を含む全ての光線を吸収することで黒色を示している。
【0003】
黒色顔料(特に、カーボンブラック系の顔料)は可視光領域(約380〜780nm)の光を吸収して黒色を示すが、実際には、熱に寄与する度合いの大きい800〜1,400nmの波長領域を含む近赤外領域の光も吸収する。このため、上記のような黒色顔料で着色された物品は、太陽光を浴びることで容易に昇温するという課題があった。また、黒色顔料で着色された物品としては、近年、カラーフィルター用のブラックマトリックスなどの精緻な製品も登場している。このため、太陽光を浴びても昇温しない黒色顔料や、物品を黒色に着色する際に用いる着色剤(着色組成物)などについても種々検討されている。
【0004】
例えば、可視領域の光を吸収して黒色を示しながらも赤外線領域の光(赤外線)を吸収しない、アゾメチン基を有する黒色アゾ顔料が提案されている(特許文献1)。特許文献1においては、この黒色アゾ顔料を含有する着色剤を用いることで、直射日光等によっても過度に昇温しない物品が得られることが開示されている。
【0005】
また、下記式(A)で表される化合物をジアゾ成分として用いて得られるアゾ顔料が提案されている(特許文献2)。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−110691号公報
【特許文献2】特開平7−258565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般的なアゾ顔料は耐熱性や耐溶剤性などの耐久性に劣るものが多く、また、黒色度が不足しやすいという課題があった。例えば、特許文献1で提案された黒色アゾ顔料は耐溶剤性が不十分であるため、耐溶剤性が要求される用途には不適当であった。さらに、黒色度も不足しており、改善の余地があった。また、特許文献2においては黒色の顔料は開示されておらず、黄色、橙色、赤橙色、赤色、暗赤色、褐色、黒褐色、紫黒色、及び暗緑色の顔料のみが具体的に示されている。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、十分な黒色度を有するとともに、耐溶剤性などの耐久性に優れた、新規骨格を有する近赤外線非吸収性の黒色アゾ顔料を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の黒色アゾ顔料を用いた着色剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す黒色アゾ顔料が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される黒色アゾ顔料。
【0011】
(前記一般式(1)中、R1は、置換基を有してもよいアリール基を示す)
【0012】
[2]前記一般式(1)中、R1が、下記式(2−X)、(2−Y)、又は(2−Z)で表される前記[1]に記載の黒色アゾ顔料。
【0013】
【0014】
[3]アルキド/メラミン焼き付け塗料中で光学濃度(OD値)2.2以上の黒色値を有する前記[1]又は[2]に記載の黒色アゾ顔料。
[4]体積平均粒子径が20〜1,000nmの粉末又は粒子である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の黒色アゾ顔料。
【0015】
さらに、本発明によれば、以下に示す顔料着色剤が提供される。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の黒色アゾ顔料を含有する着色剤。
[6]カラーフィルター用のブラックマトリックス又は遮光フィルムを形成するために用いられる前記[5]に記載の着色剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分な黒色度を有するとともに、耐溶剤性などの耐久性に優れた、新規骨格を有する近赤外線非吸収性の黒色アゾ顔料を提供することができる。また、本発明によれば、この黒色アゾ顔料を用いた着色剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例及び比較例の顔料を用いて形成した塗膜の可視−赤外吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<黒色アゾ顔料>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の黒色アゾ顔料は、下記一般式(1)で表される構造を有する。以下、その詳細について説明する。
【0019】
(前記一般式(1)中、R1は、置換基を有してもよいアリール基を示す)
【0020】
一般式(1)中、R1で表されるアリール基としては、フェニル基、ヘテロアリール基、ナフチル基などを挙げることができる。なかでも、フェニル基が好ましい。また、アリール基に結合しうる置換基としては、炭素数原子1〜4の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、カーバメート基などを挙げることができる。一般式(1)中のR1は、下記式(2−X)、(2−Y)、又は(2−Z)で表される基であることが好ましい。
【0021】
【0022】
本発明の黒色アゾ顔料は、下記式(A)で表される化合物をジアゾ成分(ジアゾニウム化合物を形成しうる成分)として用いて合成される顔料であることを重要な特徴の一つとする。下記式(A)で表される化合物の性質は、特許文献1に記載された下記式(B)で表されるジアゾ成分(B)と大きく異なる。
【0023】
【0024】
第一に、式(A)で表されるジアゾ成分を用いて製造されうる本発明の黒色アゾ顔料は、式(B)で表されるジアゾ成分を用いて製造される黒色アゾ顔料に比して、耐溶剤性などの耐久性が向上している。式(A)で表されるジアゾ成分は、その構造中にキノリン部位を有しており、水素結合・π−π相互作用などの分子間力が増大しているためであると考えられる。
【0025】
第二に、本発明の黒色アゾ顔料は、吸収波長域が拡大されているために黒色度が向上している。従来の黒色アゾ顔料は、650〜700nmの波長域の吸収が弱く、黒色度が不足していた。これに対して、式(A)で表されるジアゾ成分は、その構造中にキノリン部位を有するために共鳴が拡大している。したがって、式(A)で表されるジアゾ成分を用いて製造されうる本発明の黒色アゾ顔料は、可視光の長波長領域まで吸収波長が網羅されていると考えられる。
【0026】
動的光散乱法により測定される黒色アゾ顔料の拡散係数相当径(体積平均粒子径、分布基準:光強度)は、20〜1,000nmである。この範囲であれば、黒色顔料として種々の用途で問題なく使用することができる。体積平均粒子径が20nm未満の黒色顔料を得ることは、物理的に困難な場合がある。一方、体積平均粒子径が1,000nm超であると、着色剤として用いた場合に着色力が不足することがある。黒色度及び近赤外線非吸収性をさらに高めるためには、黒色アゾ顔料の体積平均粒子径は20〜300nmであることが好ましい。より一層黒色度を高める(OD値:2.2以上)ためには、黒色アゾ顔料の体積平均粒子径は20〜100nmであることがさらに好ましい。
【0027】
本発明の黒色アゾ顔料は、近赤外線非吸収性でありながらも、黒色度が極めて高い。具体的には、本発明の黒色アゾ顔料は、アルキド/メラミン焼き付け塗料中で、好ましくは光学濃度(OD値)2.2以上、さらに好ましくは2.5以上の黒色値を有するものである。
【0028】
(黒色アゾ顔料の製造方法)
本発明の黒色アゾ顔料は、例えば、下記式(A)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾニウム化合物(ジアゾニウム塩)と、下記一般式(C)で表される化合物とをカップリング反応させることによって製造することができる。
【0029】
(前記一般式(C)中、R1は、置換基を有してもよいアリール基を示す)
【0030】
一般式(C)中のR1は、前記一般式(1)中のR1と、好ましいものも含めて同義である。なお、一般式(C)中のR1が式(2−X)で表される化合物は、カラーインデックス(C.I.)カップリングコンポーネント13として公知の化合物である。また、一般式(C)中のR1が式(2−Y)で表される化合物は、C.I.カップリングコンポーネント25として公知の化合物である。いずれの化合物も入手が容易であり、コスト的に優位である。
【0031】
また、一般式(C)中のR1が式(2−Z)で表される化合物を用いると、耐溶剤性などの耐久性により優れた黒色アゾ顔料とすることができる。なかでも、一般式(C)中のR1が式(2−Y)で表される化合物を用いると、コストと耐久性のバランスに優れているために好ましい。
【0032】
式(A)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、以下の反応式に示すように、ジイミノイソインドリンと2,4−ジヒドロキシキノリンとを、沸騰メタノール中で反応させることで、下記式(D)で表される中間体(D)を得る。
【0033】
【0034】
次いで、以下の反応式に示すように、得られた中間体(D)とパラフェニレンジアミンとを、沸騰メタノール中で反応させることで、下記式(A)で表される化合物(ジアゾ成分(A))を得ることができる。なお、酸触媒を用いると、中間体(D)とパラフェニレンジアミンとの反応が円滑に進行するために好ましい。
【0035】
【0036】
式(A)で表される化合物のジアゾ化反応、及び得られたジアゾニウム化合物と一般式(C)で表される化合物とのカップリング反応は、水及び有機溶剤中で実施することが好ましい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン等の芳香族溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
<着色剤>
本発明の着色剤(着色組成物)は、上述の黒色アゾ顔料を含有する。本発明の着色剤を用いれば、物品等を極めて黒色度の高い黒色に着色することができる。また、濃度にもよるが、カーボンブラックを用いた場合よりも黒色度を高めることができる。本発明の着色剤には、黒色アゾ顔料以外のその他の顔料成分を含有させてもよい。その他の顔料成分としては、例えば、有彩色顔料、白色顔料、その他の黒色顔料、及び体質顔料などを挙げることができる。また、目的とする色彩にあわせて2種以上のその他の顔料成分を併用してもよい。本発明の着色剤は、例えば、カラーフィルター用のブラックマトリックス又は遮光フィルムを形成するための材料として有用である。
【0038】
本発明の着色剤は、例えば、液体分散媒体又は固体分散媒体に黒色アゾ顔料を含有させることによって調製することができる。すなわち、本発明の着色剤は、目的、用途、及び使用方法などに応じて、黒色アゾ顔料を含む顔料成分を(i)液体分散媒体中に含有させた液状の着色組成物としてもよいし、(ii)固体分散媒体中に含有させた固体状の着色組成物としてもよい。
【0039】
液状の着色組成物は、主として、物品の表面に塗布される、物品を含浸させる、又は物品表面に描画・印字する着色剤として使用される。すなわち、液状の着色組成物は、例えば、塗料、プラスチック用着色剤、繊維着色剤、印刷インキ、文房具、画像記録用着色剤、又は画像表示用着色剤など種々の用途で使用することができる。
【0040】
液体分散媒体としては、それ自体が液体であるもの、又は溶剤や水を含有して液体となるものを用いることができる。また、液体分散媒体には、反応性基を有してもよい重合体、反応性基を有してもよいオリゴマー、及び反応性基を有してもよい単量体からなる群より選択される少なくとも一種の皮膜形成材料が含有されていてもよい。さらに、黒色アゾ顔料を含む顔料成分を高濃度に分散媒体中に微分散させた高濃度顔料加工品を予め用意しておけば、各種用途の着色剤を容易に製造することができるために好ましい。このような高濃度顔料加工品(高濃度顔料分散液)は、一般的には「ベースカラー」又は「ベースインク」として使用されている。
【0041】
また、固体状の着色組成物は、主として、プラスチック製品や合成繊維の着色するための着色剤として利用される。具体的には、黒色アゾ顔料を含む顔料成分を高濃度に固体分散媒体中に微分散させた高濃度顔料加工品(高濃度顔料分散体)であるマスターパウダーやマスターバッチ、又は全体に着色されたカラードペレットなどの公知の製品形状で使用される。固体分散媒体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス、脂肪酸アミド、及び脂肪酸金属石鹸などを用いることができる。これらの固体分散媒体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0043】
<ジアゾ成分(A)の製造>
(合成例1)中間体(D)の製造
メタノール75部に、1,3−ジイミノイソインドリン22部及び2,4−ジヒドロキシキノリン12部を加え、55〜60℃で3時間加熱した。熱時ろ過した後、メタノール及び水で洗浄した。80℃で乾燥し、下記式(D)で表される中間体(D)14部を得た。
【0044】
【0045】
(合成例2)ジアゾ成分(A)の製造
メタノール300部に、中間体(D)10部、パラトルエンスルホン酸一水和物7部、及びパラフェニレンジアミン4部を加え、55〜60℃で5時間加熱した。熱時ろ過した後、メタノール及び水で洗浄した。80℃で乾燥し、下記式(A)で表されるジアゾ成分(A)11部を得た。
【0046】
【0047】
<黒色アゾ顔料の製造>
(実施例1)黒色アゾ顔料(E)の製造
式(A)で表される化合物(ジアゾ成分(A))4部をジメチルアセトアミド60部に溶解した。常法により濃塩酸を加えて塩酸塩とした後、過剰量の亜硝酸ナトリウム水溶液を加えてジアゾ化し、ジアゾニウム塩溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム0.6部及びメタノール400部に、下記式(F)で表される化合物4部を溶解させたカップリング成分の溶液を用意した。15℃以下に保ったジアゾニウム塩溶液にカップリング成分の溶液を徐々に添加した。酢酸ナトリウムを添加してpHを6.5〜7.0に調整して1時間撹拌した後、25℃で2時間撹拌した。次いで、40℃に昇温して3時間撹拌し、カップリング反応を完結させて顔料を生成させた。生成した顔料をろ過した後、メタノールで洗浄した。さらに、水洗及び乾燥して、下記式(E)で表される黒色アゾ顔料(E)6部を得た。粒度測定機器(商品名「NICOMP 380ZLS−S」、インターナショナル・ビジネス社製)を使用して測定した黒色アゾ顔料(E)の体積平均粒子径は、約90nmであった。
【0048】
【0049】
(実施例2)黒色アゾ顔料(G)の製造
式(F)で表される化合物4部に代えて、下記式(H)で表される化合物4部を使用したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、下記式(G)で表される黒色アゾ顔料(G)7部を得た。得られた黒色アゾ顔料(G)の体積平均粒子径は、約80nmであった。
【0050】
【0051】
(実施例3)黒色アゾ顔料(I)の製造
式(F)で表される化合物4部に代えて、下記式(J)で表される化合物4部を使用したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、下記式(I)で表される黒色アゾ顔料(I)6部を得た。得られた黒色アゾ顔料(I)の体積平均粒子径は、約90nmであった。
【0052】
【0053】
(比較例1)黒色アゾ顔料(K)の製造
特許文献1に記載の方法にしたがって、下記式(K)で表される黒色アゾ顔料(K)を製造した。
【0054】
(比較例2)アゾ顔料(L)の製造
特許文献2に記載の方法にしたがって、下記式(L)で表されるアゾ顔料(L)を製造した。
【0055】
<評価>
(塗料試験)
以下に示す配合にしたがって各成分を配合し、ペイントコンディショナーを使用して90分間分散させて塗料を調製した。なお、比較例3の顔料としてカーボンブラック(銘柄「#45B」、三菱化学社製)を使用し、同様にして塗料を調製した。アプリケーター(3ミル)を使用して調製した塗料を展色紙に展色した後、140℃で30分間焼き付けて厚さ約20μmの塗膜を形成し、塗膜付き展色紙を得た。
・顔料 1.5部
・商品名「スーパーベッカミンJ−820」(*1) 8.5部
・商品名「フタルキッド133〜60」(*2) 17.0部
・キシレン/1−ブタノール(2/1質量比)混合溶剤 5.0部
(*1)ブチル化メラミン樹脂(大日本インキ化学工業社製)
(*2)椰子油の短油性アルキド樹脂(日立化成社製)
【0056】
(黒色度)
展色紙に形成した塗膜の反射率を測定し、光学濃度(OD値)を算出した。そして、以下に示す基準にしたがって黒色度を評価した。評価結果を表1に示す。
○:黒色度が非常に高い(OD値:2.5以上)
△:黒色度が高い(OD値:2.2以上2.5未満)
×:黒色度が低い(OD値:2.2未満)
【0057】
(耐溶剤性)
顔料1部をニトロベンゼン10部に添加して煮沸した。そして、目視にてブリードの有無を観察し、以下に示す基準にしたがって耐溶剤性を評価した。評価結果を表1に示す。
○:ほとんどブリードしない
△:著しくブリードする
×:ほとんど溶解している
【0058】
【0059】
(可視−赤外吸収スペクトルの測定)
分光光度計(商品名「U−4100」、日立ハイテクノロジーズ社製)を使用し、実施例1〜3、比較例1及び3の顔料をそれぞれ用いて展色紙に形成した塗膜の可視−赤外吸収スペクトルを測定した。測定したスペクトルを図1に示す。図1に示すように、比較例1の顔料を用いて形成した塗膜については、約700nm以上の波長域から反射率(%)が上昇することがわかる。これに対して、実施例1〜3の顔料を用いて形成した塗膜については、いずれも約750nm以下の波長域では平滑であり(反射率が低く)、約750nmを超えた波長域から反射率(%)が上昇することがわかる。以上より、実施例1〜3の顔料は比較例1の顔料に比して高い黒色度を示すことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の黒色アゾ顔料は、CF用のブラックマトリックスなどの高い黒色度が要求される製品等を製造するための材料として有用である。また、近赤外線非吸収性の顔料であるため、カーボンブラック等が不適当である熱線非吸収性の黒色顔料としても有用である。
図1