(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-193808(P2017-193808A)
(43)【公開日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】作業用フード
(51)【国際特許分類】
A42B 1/04 20060101AFI20170929BHJP
【FI】
A42B1/04 J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-86390(P2016-86390)
(22)【出願日】2016年4月22日
(71)【出願人】
【識別番号】305032106
【氏名又は名称】吉田 崇
(71)【出願人】
【識別番号】305032092
【氏名又は名称】於田 正光
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇
(72)【発明者】
【氏名】於田 正光
(57)【要約】
【課題】本開示は、面ファスナーを用いることなく、作業用フードを顔にフィットさせつつ顔を露出させることの可能な作業用フードの提供を目的とする。
【解決手段】本開示は、着用者の頭部を覆いつつ、顔の少なくとも一部を露出させる開口部11を有する作業用フード1であって、作業用フード1は、全体をニット素材で形成され、開口部11の周縁に配置され、開口部11の周方向に伸縮するニット素材で形成された縁取り布13と、着用者の頭上部を覆い、頭上部の周方向31に伸縮するニット素材で形成された環状ベルト布12と、を備える作業用フードである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭部を覆いつつ、顔の少なくとも一部を露出させる開口部を有する作業用フードであって、
前記作業用フードは、全体をニット素材で形成され、
前記開口部の周縁に配置され、前記開口部の周方向に伸縮するニット素材で形成された縁取り布と、
前記着用者の頭上部を覆い、前記頭上部の周方向に伸縮するニット素材で形成された環状ベルト布と、
を備える作業用フード。
【請求項2】
前記着用者の頭頂部を覆い、前記着用者の側頭部をつなぐ方向に対して伸縮するニット素材で形成される頭頂部押え布をさらに備える請求項1に記載の作業用フード。
【請求項3】
前記縁取り布は、
前記着用者の額を覆う縁取り布上部と、
前記着用者の顎の少なくとも一部を覆う縁取り布下部と、
前記着用者のこめかみ付近で前記縁取り布上部及び前記縁取り布下部を接合する接合部と、
を備える請求項1又は2に記載の作業用フード
【請求項4】
前記接合部における前記縁取り布上部と前記縁取り布下部とのなす角が略90°である、
請求項3に記載の作業用フード。
【請求項5】
一端が前記接合部付近の前記縁取り布上部に固定され、他端が前記接合部付近の前記縁取り布下部に固定され、前記一端と前記他端との間に眼鏡のテンプルが挿通可能な補助布部をさらに備える、
請求項3又は4に記載の作業用フード。
【請求項6】
前記縁取り布及び前記環状ベルト布に隣接して配置され、前記頭上部の周方向と平行な方向に伸縮するニット素材で形成されるフード布部と、
前記フード布部に配置され、マスクのかけ紐を係止するマスク掛け部と、
をさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載の作業用フード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業用フードに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造作業、医薬品製造作業及び食品製造作業といった清潔さを要求される作業にあっては、頭髪などの異物の製品への混入を防止するため、頭部を完全に覆う作業用フードが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の作業用フードは、顔の両脇から下垂する2枚の布を、面ファスナーやテープ生地と一体になったスナップボタンなどの留め具を用いて顎付近で固定することによって、作業用フードを顔にフィットさせつつ顔を露出させる構成となっていた。
【0003】
面ファスナーなどの留め具は、凹凸があるため、洗濯時に洗濯槽内のゴミが凹凸部にからまる。この状態で作業用フードを使用すると、留め具の固着が甘くなるため、作業時に留め具が外れる可能性がある。また、作業時に留め具の凹凸部に吸着したゴミがはがれると、異物混入につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−106380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、面ファスナーなどの留め具を用いることなく、作業用フードを顔にフィットさせつつ顔を露出させることの可能な作業用フードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る作業用フードは、着用者の頭部を覆いつつ、顔の少なくとも一部を露出させる開口部を有する作業用フードであって、前記作業用フードは、全体をニット素材で形成され、前記開口部の周縁に配置され、前記開口部の周方向に伸縮するニット素材で形成された縁取り布と、前記着用者の頭上部を覆い、前記頭上部の周方向に伸縮するニット素材で形成された環状ベルト布と、を備える。
【0007】
本開示に係る作業用フードでは、前記着用者の頭頂部を覆い、前記着用者の側頭部をつなぐ方向に対して伸縮するニット素材で形成される頭頂部押え布をさらに備えていてもよい。
【0008】
本開示に係る作業用フードでは、前記縁取り布は、前記着用者の額を覆う縁取り布上部と、前記着用者の顎の少なくとも一部を覆う縁取り布下部と、前記着用者のこめかみ付近で前記縁取り布上部及び前記縁取り布下部を接合する接合部と、を備えていてもよい。
ここで、前記接合部における前記縁取り布上部と前記縁取り布下部とのなす角が略90°であってもよい。
【0009】
本開示に係る作業用フードでは、一端が前記接合部付近の前記縁取り布上部に固定され、他端が前記接合部付近の前記縁取り布下部に固定され、前記一端と前記他端との間に眼鏡のテンプルが挿通可能な補助布部をさらに備えていてもよい。
【0010】
本開示に係る作業用フードでは、前記縁取り布及び前記環状ベルト布に隣接して配置され、前記頭上部の周方向と平行な方向に伸縮するニット素材で形成されるフード布部と、前記フード布部に配置され、マスクのかけ紐を係止するマスク掛け部と、をさらに備えていてもよい。
【0011】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、面ファスナーなどの留め具を用いることなく、作業用フードを顔にフィットさせつつ顔を露出させることの可能な作業用フードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態に係る作業用フードの一例を示す正面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る作業用フードの一例を示す側面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る作業用フードを頭部に装着して使用した状態(眼鏡をかけた場合)を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0015】
図1及び
図2に、実施形態に係る作業用フードの構成の一例を示す。実施形態に係る作業用フード1は、着用者の頭部を覆いつつ、顔の少なくとも一部を露出させる開口部11を有する。顔の少なくとも一部は、鼻及び目を含む。開口部11は、口を露出させてもよい。
【0016】
作業用フード1は、全体をニット素材で形成される。これにより、実施形態に係る作業用フード1は、特定の方向に伸縮性を有するニット素材を用いることで、作業用フード1の過度の変形を防ぎつつ、作業用フードを着用者の頭部にフィットさせることができる。
【0017】
ニット素材は、例えば、
図3に示すような、地の目の横方向D
Hを長手方向とする横編みのニット構造の布地である。このようなニット構造は、横方向D
Hに対する伸縮性が良好である。横編みの組織としては、特に制限はなく、例えば、
図3に示す平編みのほか、リブ編み、ゴム編み、パール編み等の従来公知の組織を採用することができる。
【0018】
ニット素材を構成する繊維は、汗等の水分を吸収するよう、親水性繊維を含むことが好ましい。親水性線維は、例えば、綿、レーヨン、親水性の高い合成繊維である。親水性の高い合成繊維は、例えば親水基を含むポリエステル素材であるボディオアシス(登録商標)である。ボディオアシス(登録商標)は、親水性が高くかつ膨潤しないため、汗や水分を吸収して素速く発散することができる。また、ニット素材を構成する繊維は、肌表面の熱が拡散するよう、エバールなどの熱伝導性の高い繊維を含むことが好ましい。
【0019】
作業用フード1は、環状ベルト布12、縁取り布13、頭頂部押え布14、及びフード布部15を備える。
【0020】
縁取り布13は、開口部11の周縁に配置され、開口部11の周方向32に伸縮するニット素材で形成されている。例えば、ニット構造の横方向D
Hが開口部11の周方向32に沿って配置されている。これによって、実施形態に係る作業用フード1は、面ファスナーなどの留め具を用いることなく、作業用フード1を顔にフィットさせつつ顔を露出させることができる。
【0021】
縁取り布13は、縁取り布上部131及び縁取り布下部132で形成されていることが好ましい。縁取り布上部131は、着用者の額部を覆い、開口部11の周方向32aに伸縮する。縁取り布下部132は、着用者の顎部の少なくとも一部を覆い、開口部11の周方向32bに伸縮する。縁取り布上部131及び縁取り布下部132は、着用者のこめかみ付近で接合されている。接合部における縁取り布上部131と縁取り布下部132との成す開口部11側の角θは、略90°であり、70〜90°程度であることが好ましい。このように、縁取り布上部131および縁取り布下部132を配置することで、縁取り布13が円形になることを防止して着用者の広い視野を確保すると共に、面ファスナーなどの留め具を使用することなく開口部11に露出する着用者の顔にフィットすることができる。
【0022】
縁取り布13は、着脱の度に大きく伸縮するため、ニット素材の伸縮性が維持されるよう、複数のニット素材が重ねられていることが好ましい。この場合、顔の汗が効率よく吸収されるよう、親水性繊維の多く含まれている面が表面になるように重ねられていることが好ましい。
【0023】
環状ベルト布12は、頭上部全体を覆うように配置され、頭上部の周方向31に伸縮可能である。頭上部は、前頭部、側頭部、後頭部を含む。環状ベルト布12は、頭上部の周方向31に伸縮可能である。例えば、ニット構造の横方向D
Hが頭上部の周方向31に配置されている。これによって、作業用フード1を着用者の頭部にフィットさせることができる。作業用フード1を装着した場合に、適度なフィット感を維持し、長い間使用しても不快感を与えることがない。環状ベルト布12の幅は、作業用フード1のサイズにより適宜決定すればよいが、おおむね2〜8cm程度とすればよい。環状ベルト布12は、後頭部で接合されていることが好ましい。
【0024】
実施形態に係る作業用フード1は、縁取り布13が開口部11の周方向32に伸縮し、環状ベルト布12が頭上部の周方向31に伸縮するため、頭からかぶるだけで、作業用フード1を顔及び頭部にフィットさせることができる。このため、面ファスナーなどの留め具を用いてフードを顔や頭にフィットさせる必要がないため、誰でも簡単に作業用フード1を着用することができる。
【0025】
頭頂部押え布14は、着用者の頭頂部を覆い、冠状面すなわち側頭部の方向33に対して伸縮可能である。頭頂部押え布14の伸縮方向が側頭部の方向33に制限され、前頭部及び後頭部の方向に伸縮しないことによって、環状ベルト布12を頭上部に保持することができる。そして、頭頂部押え布14が側頭部方向33に伸縮することによって、着用者の頭頂部に対するフィット感が増す。
【0026】
フード布部15は、環状ベルト布12および縁取り布13に隣接して配置され、周方向34に対して伸縮するニット素材で形成される。例えば、ニット構造の横方向D
Hが周方向34に配置されている。フード布部15の後頭部の位置に、周方向34に伸縮するゴムが配置されていることが好ましい。これによって、着用者の頭部に対するフィット感を高めることが可能である。
【0027】
実施形態に係る作業用フード1は、つば部22を備えてもよい。つば部22は、環状ベルト布12と縁取り布上部131の間に配置される円弧状で、長さは縁取り布13よりも短い。つば部22を備えることによって、強い光や埃などから着用者の目を守る効果もある。また、つば部22の曲率を着用者の額部の曲率に近づけることによって、額部を固定してフードが動くのを防止する効果もある。
【0028】
実施形態に係る作業用フード1は、マスク掛け部23を備えることが好ましい。マスク掛け部23を備えることによって、着用者が容易にマスクをかけることが可能になる。マスク掛け部23は、フード布部15に配置され、マスクのかけ紐を係止する。このとき、マスク掛けのパーツとしては、たとえば、ボタン、突起、金具、などが挙げられる。
【0029】
実施形態に係る作業用フード1は、補助布部21を備えることが好ましい。
図4に、着用者が作業用フード1を着用した状態を示す。補助布部21は、縁取り布上部131および縁取り布下部132の接合部に配置され、一端が縁取り布上部131の結合部21aにて縫い合わされ、他端が縁取り布下部132の結合部21bにて縫い合わされて固定されていることによって、縁取り布上部131及び縁取り布下部132をより開口部11側に近づけることができる。また、補助布部21のフィット感を高めるため、結合部21c及び結合部21dにて縫い合わせてもよい。なお、結合部21cと結合部21dとの間に挿通部21eがあり、眼鏡4のテンプルが挿通可能になっている。眼鏡4のテンプルを挿通部21eに挿通させることによって、補助布部21が存在していても、着用者は眼鏡を着用することが可能である。
【0030】
関連技術で作業用フードに用いられる生地は、テトロン(登録商標)とコットン(綿)を混紡したTC(TC:Tetoron and Cotton)(Tetoronは登録商標)生地で形成されている。TC生地は、毛髪を通さない程度の密な構造を有するため、通気性が悪く、熱がこもりやすく、着用者のストレスの原因となることがあった。一方、実施形態に係る作業用フード1は、ニット素材で形成されるため、通気性に優れ、フード内の頭部の熱が常温に近い状態に保てるため、着用者のストレスを軽減することができる。
【0031】
加えて、実施形態に係る作業用フード1は、フィット感を生地全体で支えているため、強度的に強い。また、ニット素材では生地自体が伸縮するため、他力に依る締め付けがなくてもニット素材だけで、フィット感が得られるスッポリかぶるタイプの縫製が出来る。また、ニット構造は洗濯における耐久性も良好であるため、数回の洗濯で伸縮性が劣化することもなく、作業用フード1に良好なフィット感を長い期間付与することができる。
【0032】
作業用フードのサイズがM、L、LLとある場合、TC生地は伸縮性がないため、MとLサイズの間などのサイズの中間の大きさの頭部を持つ着用者は、自分の頭部よりも大きいLサイズの作業用フードを用いることとなる。このため、作業用フードと頭部の間に隙間が生じ、異物混入の原因となる。一方、実施形態に係る作業用フード1は、頭部サイズがMとLの中間の人は、Mサイズの生地が伸びるため、Mサイズとしてぴったりと隙間なくかぶることができる。
【0033】
実施形態に係る作業用フード1は、面ファスナーを使用しないでニット生地のみで構成されていることによって、クリーニングなどでゴミのたまりが附着しない。そのため、作業時にクリーニングで附着したゴミが、作業時に異物として混入することはない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示の作業用フードは、例えば、半導体、食品、医薬品等の製造作業時における作業用フードに適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:作業用フード
11:開口部
12:環状ベルト布
13:縁取り布
131:縁取り布上部
132:縁取り布下部
14:頭頂部押え布
15:フード布部
21:補助布部
22:つば部
23:マスク掛け部
4:眼鏡