(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-193862(P2017-193862A)
(43)【公開日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】震動吸収体及び建物基礎構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20170929BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20170929BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20170929BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
F16F1/40
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-84358(P2016-84358)
(22)【出願日】2016年4月20日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB11
2E139AC02
2E139AC03
2E139AC04
2E139AC72
2E139BD32
2E139BD41
3J048AA01
3J048BA08
3J048BA11
3J048BD08
3J048CB01
3J048DA01
3J048EA38
3J059AA06
3J059BA43
3J059BB03
3J059BC05
3J059BD01
3J059BD05
3J059CA14
3J059CB03
3J059GA42
(57)【要約】
【課題】 少数の震動吸収体で建物及びベタ基礎に耐震強度を与えるとともに、短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を達成できる震動吸収体及び建物基礎構造を提供する。
【解決手段】 硬質ブロック30と弾性マット40を積層した震動吸収体20を地盤とベタ基礎2の間に介挿した建物基礎構造において、弾性マット40の表面に、複数の第1突起43と、第1突起43よりも短い複数の第2突起44を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ブロックと弾性マットを積層した震動吸収体を地盤とベタ基礎の間に介挿した建物基礎構造であって、
前記弾性マットの表面には、複数の第1突起と、前記第1突起よりも短い複数の第2突起が形成されていることを特徴とする建物基礎構造。
【請求項2】
前記硬質ブロック及び前記弾性マットに貫通孔が形成されており、
前記貫通孔に挿通した紐体により前記硬質ブロック及び前記弾性マットが結付されていることを特徴とする請求項1に記載の建物基礎構造。
【請求項3】
地中に埋設した枠体に前記震動吸収体を収容したことを特徴とする請求項1又は2に記載の建物基礎構造。
【請求項4】
弾性マットを積層した震動吸収体であって、
前記弾性マットの表面には、複数の第1突起と、前記第1突起よりも短い複数の第2突起が形成されたことを特徴とする震動吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の耐震性向上を図るための震動吸収体及び建物基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の耐震建物では、地震等によって生じた建物の震動を吸収するために、建物の柱等に震動吸収体が使用されている。かかる震動吸収体として、例えば、特許文献1,2のように積層ゴムを使用したもの、特許文献3のように複数の耐震ゴムと複数の板状対を交互に積層したもの、特許文献4のように複数のプレキャストコンクリート製のブロックを緊張材によりプレストレスを与えた状態で緊結し、集合体としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371723号公報
【特許文献2】特開2001−329715号公報
【特許文献3】実用新案登録第3091236号公報
【特許文献4】特開2001−13315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の耐震建物では、震動吸収体は、コンクリート基礎(ベタ基礎)よりも上部で使用されており、コンクリート基礎の下に震動吸収体を使用したものは存在しなかった。コンクリート基礎よりも上部に震動吸収体を使用する場合には、建築基準法上の認定を受けることが必要になるため、建築コストの増加につながる。
【0005】
更に、従来の震動吸収体は、主として直下型地震等の短周期の地震動に対する震動吸収効果を有するが、短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を得ることはできなかった。
【0006】
本発明は、コンクリート基礎の下に震動吸収体を配置するという新規な建物基礎構造を提供する。また、短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を達成できる震動吸収体及び建物基礎構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬質ブロックと弾性マットを積層した震動吸収体を地盤とベタ基礎の間に介挿した建物基礎構造であって、前記弾性マットの表面には、複数の第1突起と、前記第1突起よりも短い複数の第2突起が形成されていることを特徴とする建物基礎構造とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、震動吸収体を地盤とベタ基礎の間に介挿した。すなわち、ベタ基礎の下に震動吸収体を配置した。これにより、建築基準法上の認定を受けなくても建物を耐震化することができる。また、地盤からベタ基礎に作用する地震動が吸収されるため、建物の損害を防ぐだけでなく、地震によるベタ基礎の損害も防ぐことができる。弾性マットは、長さの異なる2種類の突起(第1突起と第2突起)を有するため、短周期の地震動(震度5程度まで)だけでなく、長周期の地震動にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1実施形態の建物基礎構造1を示す。
【
図5】建物基礎構造1の上部に建物3を設置した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の1実施形態に建物基礎構造1を示す。建物基礎構造1は、ベタ基礎2と、枠体10と、震動吸収体20を有する。
【0011】
枠体10は、例えば、コンクリート等の硬質材料で形成される。本実施形態の枠体10は、有底中空の四角柱状の形状を有するが、円筒形状等、他の形状にしても良い。枠体10は、地中に敷いた砕石11の上に埋設される。
【0012】
枠体10には、震動吸収体20が収容される。震動吸収体20は、上下に積層された硬質ブロック30及び弾性マット40を有する。
【0013】
図2は、硬質ブロック30を示す。硬質ブロック30は、四隅に貫通孔31が形成された概略方形のブロックである。硬質ブロック30の形状は、円形、多角形等にしても良い。硬質ブロック30は、コンクリート等の硬質の材料で形成される。
【0014】
図3は、弾性マット40を示す。弾性マット40は、概略方形の基材41と、基材41の四隅に形成された貫通孔42と、基材41の上下表面に配列された複数の第1、第2突起43、44を有する。基材41の形状は、円形、多角形等にしても良い。第1突起43の寸法(高さ)は、第2突起44よりも長い。第1突起43及び第2突起44の形状は任意である。図では、先端が湾曲した円柱形状(弾丸形状)を示すが、円柱形状や四角柱形状、半球状等、他の形状でもよい。第1、第2突起43、44の配置は任意であるが、図示のように、マトリクス状に配置することが好ましい。弾性マット40は、ゴムやシリコン樹脂等の弾性材料で形成される。
【0015】
図1に示すように、硬質ブロック30と弾性マット40は交互に積層され、貫通孔31、42に通したロープ50により連結される。上端及び下端の硬質ブロック30には、段穴32が形成され、当該段穴32にロープ50を固定するための留具51が嵌着される。ロープ50は、ゴムやバネ等の伸縮性のある材料で形成される。
【0016】
ベタ基礎2は、震動吸収体20の上部に打設される。図示しないが、ベタ基礎2と上端の硬質ブロック30をアンカーボルト等で固定してもよく、枠体10と下端の硬質ブロック30をアンカーボルト等で固定してもよい。
【0017】
図4は、建物基礎構造1を平面視で示し、
図5は、建物基礎構造1の上部に建物3を設置した状態を示す。図示のように、建物を建設する土地の全面にベタ基礎2が打設される。ベタ基礎2の下には、複数の枠体10が敷設される。各枠体10には、上記した震動吸収体20が収容される。枠体10は、ベタ基礎2の上部に設置される建物の重量等を考慮し、例えば、2m間隔とか、5mとかの間隔を空けて配列される。
【0018】
建物基礎構造1では、平時は、第1突起43と硬質ブロック30は接触するが、第2突起44と硬質ブロック30は接触しない。すなわち、ベタ基礎2や建物3等の重量は、第1突起43により支持される。弾性のある第1突起43の支持により、短周期(例えば、震度5程度まで)の地震動を吸収することができる。また、長周期の地震動が作用した場合には、第2突起44と硬質ブロック30が接触する。これにより、長周期の地震動を吸収することができる。
【0019】
本発明では、少数の震動吸収体20により、ベタ基礎2及びその上部の建物3への震動の伝達を吸収することができる。
【0020】
図6は、変形形態の震動吸収体20Aを示す。震動吸収体20Aは、硬質ブロック30の上下面及び弾性マット40も湾曲している点が震動吸収体20と相違する。硬質ブロック30の湾曲により、弾性マット40を安定に保持することができる。
図6では、貫通孔31、42が硬質ブロック30及び弾性マット40の中央に位置するが、震動吸収体20と同様、四隅の位置に設けても良い。
【0021】
図7は、他の実施形態の建物基礎構造1Aを示す。建物基礎構造1Aでは、枠体10と震動吸収体20の間にエアマット60が介挿されている。エアマット60には、エアチューブ61が接続されており、エアマット60にエアを注入することで、震動吸収体20を上昇させることができる。よって、軟質地盤等のために建物3が傾いてきた場合には、沈降した場所のエアマット60にエアを注入することで、建物3を水平に戻すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の建物基礎構造は、耐震性を必要とする住宅等の建物の基礎として使用することができる。本発明の震動吸収体は、建物基礎構造に使用することが可能であり、又は、建物の柱等として使用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・建物基礎構造
2・・・ベタ基礎
3・・・建物
10・・・枠体
11・・・砕石
20・・・震動吸収体
30・・・硬質ブロック
31・・・貫通孔
32・・・段穴
40・・・弾性マット
41・・・基材
42・・・貫通孔
43・・・第1突起
44・・・第2突起
50・・・ロープ
51・・・留具
60・・・エアマット