(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-193863(P2017-193863A)
(43)【公開日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】震動吸収柱
(51)【国際特許分類】
E04B 1/36 20060101AFI20170929BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20170929BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20170929BHJP
【FI】
E04B1/36 A
E04H9/02 351
F16F15/04 A
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-84359(P2016-84359)
(22)【出願日】2016年4月20日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB04
2E139AC02
2E139AC19
2E139BA16
2E139BA17
2E139BA22
2E139BA23
3J048AA01
3J048AA07
3J048AB01
3J048BA02
3J048BA08
3J048CB21
3J048EA29
(57)【要約】
【課題】 短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を達成できる震動吸収柱を提供する。
【解決手段】 複数のブロック2を積層した震動吸収柱1であって、ブロック2の上面には、中央凹部22と、中央凹部22の底部に位置する底部突部23が形成され、ブロック2の下面には、中央凹部22に収容可能な形状の中央突部32と、中央突部32の先端に位置する底部突部23を収容可能な形状の先端凹部33が形成され、各ブロック2は、下側ブロック22の底部突部23の先端と上側ブロック22の先端凹部33の天井を接触させるとともに、中央凹部22の側面と中央突部32の側面の間に弾性部材3A・3Bを介挿した状態で積層され、中央突部32の側面と弾性部材3A・3Bの間には隙間が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックを積層した震動吸収柱であって、
前記ブロックの上面には、中央凹部と、前記中央凹部の底部に位置する底部突部が形成され、前記ブロックの下面には、前記中央凹部に収容可能な形状の中央突部と、前記中央突部の先端に位置する前記底部突部を収容可能な形状の先端凹部が形成され、
前記複数のブロックは、前記底部突部の先端と前記先端凹部の天井を接触させるとともに、前記中央凹部の側面と前記中央突部の側面の間に弾性部材を介挿した状態で積層され、
前記中央突部の側面と前記弾性部材の間に隙間が形成されていることを特徴とする震動吸収柱。
【請求項2】
前記弾性部材が、第1及び第2弾性部材を含み、
前記中央突部と前記第1弾性部材の間隔と、前記中央突部と前記第2弾性部材の間隔が相違することを特徴とする請求項1に記載の震動吸収柱。
【請求項3】
前記中央凹部の外周に周縁突部が形成され、前記中央突部の外周に周縁凹部が形成され、
前記ブロックは、下側の周縁突部の先端と上側の周縁凹部の天井を接触させて積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の震動吸収柱。
【請求項4】
前記底部突部及び/又は前記周縁突部が弾性材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の震動吸収柱。
【請求項5】
各ブロックは、前記中央凹部と前記中央突部を貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に紐状体が挿通されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の震動吸収柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の耐震性向上を図るための震動吸収柱に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等によって生じた建物の震動を減衰・吸収するために、建物の柱に震動吸収体が使用されている。かかる震動吸収体として、例えば、特許文献1,2のように積層ゴムを使用したもの、特許文献3のように複数の耐震ゴムと複数の板状対を交互に積層したもの、特許文献4のように複数のプレキャストコンクリート製のブロックを緊張材によりプレストレスを与えた状態で緊結し、集合体としたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371723号公報
【特許文献2】特開2001−329715号公報
【特許文献3】実用新案登録第3091236号公報
【特許文献4】特開2001−13315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の震動吸収体は、主として直下型地震等の短周期の地震動に対処するものであり、短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を得ることができなかった。
【0005】
本発明は、短周期の地震動と長周期の地震動の両方に対して十分な震動吸収効果を達成できる震動吸収柱を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のブロックを積層した震動吸収柱であって、前記ブロックの上面には、中央凹部と、前記中央凹部の底部に位置する底部突部が形成され、前記ブロックの下面には、前記中央凹部に収容可能な形状の中央突部と、前記中央突部の先端に位置する前記底部突部を収容可能な形状の先端凹部が形成され、前記複数のブロックは、下側ブロックの前記底部突部の先端と上側ブロックの前記先端凹部の天井を接触させるとともに、前記中央凹部の側面と前記中央突部の側面の間に弾性部材を介挿した状態で積層され、前記中央突部の側面と前記弾性部材の間に隙間が形成されていることを特徴とする震動吸収柱とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、下側ブロックの底部突部の先端と上側ブロックの先端凹部の天井を接触させた状態でブロックが積層され、それ以外の部分に隙間が形成されるため、上下のブロックが左右に揺れることができる。それにより、短周期の地震動(例えば、震度5程度まで)を効果的に吸収することができる。さらに、中央凹部の側面と中央突部の側面の間に弾性部材を介挿し、中央突部の側面と弾性部材の間に隙間を形成した。これにより、より長周期の地震動を効果的に吸収することができる。よって、短周期と長周期の両方の地震動に対応することが可能になる。
【0008】
弾性部材を第1及び第2弾性部材で構成し、中央突部と第1弾性部材の間隔と、中央突部と第2弾性部材の間隔を相違させることで、より幅広い周期範囲の地震動に対応すること(短周期、中周期、長周期の地震動のそれぞれに対応すること)が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1実施形態の震動吸収柱1に使用されるブロック2を示す。
【
図3】第1弾性部材3A及び第2弾性部材3Bの形状を示す。
【
図4】本発明の他の実施形態の震動吸収柱1Aを示す。
【
図5】本発明の更に他の実施形態の震動吸収柱1Bを示す。
【
図7】弾性リング4の変形形態である弾性リング4’を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の震動吸収柱1で使用されるブロック2を示す。
図1(a)は、ブロック2の上面図であり、
図1(b)は、ブロック2を
図1(a)のX−Xで切断した断面図である。ブロック2は、コンクリートや鋼鉄等の硬質の材料で形成される。
【0011】
ブロック2の上面には、環状の周縁突部21と、その内周側の中央凹部22と、中央凹部22の底部に位置する底部突部23が形成され、ブロック2の下面には、環状の周縁凹部31と、その内周側の中央突部32と、中央突部32の先端に位置する先端凹部33が形成されている。周縁凹部31は、周縁突部21を収容する形状・寸法を有し、中央凹部22は、中央突部32を収容する形状・寸法を有し、先端凹部33は、底部突部23を収容する形状・寸法を有する。
【0012】
中央凹部22の側面には、複数のスロット(窪み)24A、24Bが周方向に配列されている。スロット24A、24Bは、後述の第1弾性部材3A及び第2弾性部材3Bの一部を収容できる寸法・形状を有する。スロット24A、24Bは、例えば、円弧状の形状を有する。図では、スロット24Aがスロット24Bよりも長いが、両者は同じ長さでもよい。スロット24Aとスロット24Bの幅や深さも、同じでもよく、相違してもよい。
【0013】
図2は、本発明の1実施形態に係る震動吸収柱1を示す。震動吸収柱1は、上下に積層された複数のブロック2と、各ブロック2の間に介挿された第1弾性部材3A及び第2弾性部材3Bを有する。第1弾性部材3A及び第2弾性部材3Bは、ゴムやシリコン樹脂等の弾性材料で形成される。第1弾性部材3A及び第2弾性部材3Bは、それぞれ、スロット24A及びスロット24Bに装着・保持されている。
【0014】
図示のように、上下のブロック2が接触しているのは、底部突部23の先端と先端凹部33の天井の間と、周縁突部21の先端と周縁凹部31の天井の間だけであり、それ以外の部分には隙間が形成されている。このため、上下のブロック2は、相互に振り子状に揺れることができる。また、底部突部23の側面と第1弾性部材3Aの間には、隙間D1が形成され、底部突部23の側面と第2弾性部材3Bの間には、隙間D1よりも大きい隙間D2が形成されている。
【0015】
震動吸収柱1に地震等による水平方向の荷重が掛かると、最下層のブロックが一番大きく水平方向に移動し、それに伴い、2番目のブロックは反対方向に移動する。同様にして、各ブロックは、下から順次逆方向にジグザグ状に移動し、上方にいくに従い、移動距離は小さくなっていく。よって、震動吸収柱1の上部に位置する建築物・構造物への地震の影響が小さくなる。また、ブロック2の移動に伴い、震動吸収柱1の全体の重心位置も移動するが、各ブロック2の移動方向がジグザグ状であるため、震動吸収柱1の傾きが小さくなり、結果として、震動吸収柱1に掛かるせん断力は小さくなる。このようにして、短周期の地震動(例えば、震度5程度まで)に対しては、十分な対応が可能となる。
【0016】
震動吸収柱1に中周期の地震動が作用した場合、上側のブロックの中央突部32と第1弾性部材3Aが接触し、第1弾性部材3Aによる復元力が上下のブロック間に作用することで、地震動による影響が軽減される。震動吸収柱1に長周期の地震動が作用した場合、上側のブロックの中央突部32と第2弾性部材3Bが接触し、第2弾性部材3Bによる復元力が上下のブロック間に作用することで、地震動による影響が軽減される。このようにして、中周期、長周期の地震動に対しても十分な免震効果を得ることができる。
【0017】
図3は、第1弾性部材3A及び第2弾性部材3Bの例示的な形状を示す。図示の第1弾性部材3A及び第2弾性部材3Bは、概略円弧形状を有し、第1弾性部材3Aの方が第2弾性部材3Bよりも、長さ及び幅が大きく、厚さが小さい。これにより、より幅広い周期範囲に対して高い免震効果を得ることができる。両者の長さ、幅、厚さを相違させる代わりに、第1弾性部材3Aと第2弾性部材3Bを異なる弾性率の材料で形成してもよい。
【0018】
震動吸収柱1の他の実施形態として、各ブロック2の周縁突部21及び周縁凹部31を省略してもよい。すなわち、ブロック2の上面(中央凹部22よりも外側)及び下面(中央突部32よりも外側)を平坦にしても良い。この場合も、震動吸収柱1と同様の効果を有し、震動吸収柱1よりも構造が簡略化される。
【0019】
図4は、更に他の実施形態の震動吸収柱1Aを示す。震動吸収柱1Aでは、各ブロック2を上下に貫通する貫通孔25を有し、当該貫通孔25に紐状体6が挿通されている。紐状体6は、弾力性のあるバネやゴム、紐、ロープ等を使用できる。各ブロック2に紐状体6を挿通することで、震動吸収柱1Aの結束性、一体性が高くなる。
【0020】
図5は、更に他の実施形態の震動吸収柱1Bを示す。震動吸収柱1Bでは、各ブロック2の周縁突部21と底部突部23が、弾性リング4と弾性柱5で置き換えられている。弾性リング4及び弾性柱5は、ゴムやシリコン樹脂等の弾性材料で形成される。このように、ブロックを積み重ねたときに接触する部分に弾性リング4と弾性柱5を使用したことで、ブロック間の衝突による損傷の軽減と、弾性体による一層の震動エネルギーの吸収効果の増大を達成できる。
【0021】
弾性リング4は、基部41と、基部41から上下に延びる円環状の周縁突部42、43を有する。周縁突部42は、周縁突部21と同形状である。ブロック2には、周縁突部43を収容する円環状の凹部26と、周縁突部42を収容する円環状の凹部27が形成されている。
【0022】
中央凹部22の底面には、弾性柱5を収容する凹部28が形成されている。弾性柱5は、円筒状又は弾丸状の形状を有し、凹部28は、円筒状の形状を有する。
図6は、弾性柱5を拡大して示す。この例では、弾性柱5は、多数の弾性体の薄板を積層して略円柱状に形成されている。弾性柱5は、単一の弾性体で作成してもよい。弾性柱5の底面と凹部28の底面を接着剤等で接着するとよい。
【0023】
震動吸収柱1Bの変形形態として、震動吸収柱1Aと同様に、ブロック2及び弾性柱5に貫通孔25を形成し、それに紐状体6を挿通してもよい。
【0024】
図7(a)は、
図5の弾性リング4の変形形態である弾性リング4’を示す。
図7(b)は、
図7(a)のA−A’断面を示す。
図7の弾性リング4’は、基部41と、基部41から上方に延びる周縁突部42A及び42Bと、基部41から下方に延びる周縁突部43A及び43Bを有する。周縁突部42A、43Aは、周縁突部42B、43Bよりも寸法(高さ)が長い。周縁突部42A及び42Bは、円環方向に交互に配列され、周縁突部43A及び43Bは、円環方向に交互に配列されている。寸法の長い周縁突部42A、43Aを有することで、中周期の地震動に対する免震効果が増進し、寸法の短い周縁突部42B、43Bを有することで、長周期の地震動に対する免震効果が増進する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の震動吸収柱は、耐震性を必要とする住宅等の建築物の柱として使用できる。
【符号の説明】
【0026】
1・・・震動吸収柱
2・・・ブロック
3A・・・第1弾性部材
3B・・・第2弾性部材
4・・・弾性リング
5・・・弾性柱
6・・・紐状体
21・・・周縁突部
22・・・中央凹部
23・・・底部突部
24A・・・スロット
24B・・・スロット
25・・・貫通孔
31・・・周縁凹部
32・・・中央突部
33・・・先端凹部