特開2017-193868(P2017-193868A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-193868(P2017-193868A)
(43)【公開日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】住宅の基礎シール材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20170929BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20170929BHJP
【FI】
   E04B1/64 A
   E04H9/02 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-84578(P2016-84578)
(22)【出願日】2016年4月20日
(71)【出願人】
【識別番号】504451690
【氏名又は名称】半澤 薫和
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】半澤 薫和
(72)【発明者】
【氏名】半澤 和夫
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA21
2E001HD03
2E001HD08
2E001HD09
2E001HD11
2E001MA02
2E001MA04
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC02
2E139AC03
2E139AC04
2E139CB04
2E139CC02
(57)【要約】
【課題】住宅の土台と基礎の間隙を確実にシールすることができ、基礎と土台との間に介挿される摩擦減震装置と併用することでそれぞれの機能を生かすことができる基礎シール材を提供する。
【解決手段】土台に固着される平板状の平板部と、前記平板部の下端縁が外側に曲折した後に内側に再度曲折する曲折部と、前記曲折部の再度曲折した下面に長さ方向に沿って添設されるクッション材と、からなり、外側から見た前記平板部と前記曲折部の再度曲折した下面との挟角は70°ないし90°となる構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上の土台に添設されて該基礎と該土台との隙間をシールする長尺のシール材であって、
前記土台に固着される平板状の平板部と、
前記平板部の下端縁が外側に曲折した後に内側に再度曲折する曲折部と、
前記曲折部の再度曲折した下面に長さ方向に沿って添設されるクッション材と、からなり、
外側から見た前記平板部と前記曲折部の再度曲折した下面との挟角は70°ないし90°である、ことを特徴とする基礎シール材。
【請求項2】
前記曲折部の再度曲折した下面には下方に突出する一対のリブが長さ方向に凸設されて前記クッション材は該リブ間に挟着され、該クッション材の下部面は該リブ先端よりも突出している、ことを特徴とする請求項1に記載の基礎シール材。
【請求項3】
前記平板部、前記曲折部および前記リブは一体成型された合成樹脂製であり、前記クッション材は弾性発泡樹脂である、ことを特徴とする請求項2に記載の基礎シール材。
【請求項4】
断面から見たときに前記曲折部の再度曲折した先端は前記平板部の延長線よりも内側に位置している、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基礎シール材。
【請求項5】
前記クッション材の厚さは予定される前記基礎および前記土台の隙間と略同一である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基礎シール材。
【請求項6】
前記平板部の裏面には粘着層が形成されるとともに該平板部には一定間隔に釘が貫通する釘孔が貫設されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の基礎シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の床下空間の気密性を確保するために基礎と土台の間の隙間をシールする基礎シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネ住宅の一環として行われる基礎断熱には、熱橋となるコンクリート基礎の断熱とともに、基礎と土台の隙間から侵入する外気を遮断する必要があることから、外気を遮断する技術が例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示されている。
【0003】
特許文献1に関示の技術は、本願出願人によるものであって、「床下空間が換気型や密閉型等の木造住宅に対応でき、簡単な構造を有し低コストで施工性にも優れ、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置を提供する。」ことを課題としていて、その解決手段として土台と基礎との間に2枚重ねあるいは3枚重ねの滑り平板を介挿し、その滑り平板間の滑りによる摩擦で減震効果を得る構成としている。そして、密閉型等の木造住宅に対しては、「土台と基礎との隙間は5mm程度または8mm程度の間隙となるが、この間隙に弾性シール材等を埋入させる場合にはテーパー形状により土台および第1の滑り平板には段差部分がなくなって密閉度が増大することから、密閉型の床下空間を具える住宅に適用することができる」(段落〔0011〕の記載)としている。すなわち、土台と基礎との隙間をなるべく小さくしてその間隙に弾性シール材等を埋入させることにより床下空間の気密性を確保している。
【0004】
また、特許文献2に関示の技術は、「空調し断熱防湿施工された湿気が溜まらない床下でコンクリート基礎と土台とを一体化させる気密化機能や防振化機能を有するホース形状の基礎パッキンを提供する。」ことを課題としていて、その解決手段を「アンカーボルトと基礎上面には、振動を吸収する平板基礎パッキンを静止状態で建物全体の重量を支え水平を保持するだけの数量として配設する。その外側を気密化機能や防振化機能を得るため圧縮空気で膨らむホース形状である基礎パッキンを直線的に配設する。平板基礎パッキンの側面は弓型形状とし基礎パッキンをアンカーボルトに近づける。基礎パッキンは、地震時に加わる大きな加速度を土台全体にバランス良く分散させ大きなダメーシが加わらない機能と役割があり、また土台と基礎上面との間に挟み一周するように配設することで基礎と土台との気密性能を高める。」こととしている。
【0005】
そして、特許文献3に関示の技術は、「換気部を備えた土台パッキンを敷設した場合であっても、パッキン材に形成された換気部および布基礎や土台との隙間を確実に閉塞して、空気の侵入を防止し、良好な気密性を得ることができる土台パッキンの換気遮断構造を提供すること。」を課題としていて、その解決手段を「建築物における土台と布基礎の天端との間に介装される所定厚みの敷板部材であって、幅方向には屋外と当該建物の床下との間を換気する複数の貫通孔が成形されたパッキン材と、このパッキン材の貫通孔に圧縮弾性変形して挿入可能な複数の櫛歯状突片が連結帯部によって一体に成形された柔軟な発泡樹脂製のストッピング材との組み合わせから成るという技術的手段を採用した。」こととしている。
【0006】
【特許文献1】特開2015−224488号公報
【特許文献2】特開2008−038572号公報
【特許文献3】特開2010−248864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、床下空間を密閉型とすることが容易となる厚さの薄い摩擦減震装置に関する技術であり、「密閉型」とするには別途、弾性シール材等を埋入させる必要がある。すなわち前記の摩擦減震装置を介挿することにより生じる土台と基礎との隙間をシール材等で埋めるためには、後施工でシール材等を圧入するか、前もって土台または基礎表面にシール材等を貼り付けておく必要がある。
【0008】
ところが、後施工でシール材等を圧入する場合は土台や基礎に固着することは難しく経時とともにシール材等が抜け出すおそれがあり、また、土台または基礎表面に前もってシール材等を貼り付ける場合は土台取り付け時にシール材等が破損したり、基礎の施工精度(基礎表面仕上げの鏝ムラやアンカーボルトの位置のズレ等)の関係からシール材等が土台と基礎との隙間を確実にシールできるとは限らない場合が生じる。
【0009】
また、特許文献2に開示の技術は、「振動を吸収する平板基礎パッキン」および「気密化機能や防振化機能を得るため圧縮空気で膨らむホース形状である基礎パッキン」の二重構造となっていて設置に手間が掛かる上にホース形状の基礎パッキンが抜出するおそれがないとは言い切れない。そして、特許文献3に開示の技術は、パッキン材とストッピング材とを組み合わせて土台と基礎の間隙に挿入する構成となっていることから、材料コストが掛かる上に施工手間も掛かり、床下空間の気密性を確保するという機能面から見れば経済性に問題がある。
【0010】
そこで、本願発明は、住宅の土台と基礎の間隙を確実にシールすることができ、基礎と土台との間に介挿される摩擦減震装置と併用することでそれぞれの機能を生かすことができる基礎シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る基礎シール材は、基礎上の土台に添設されて該基礎と該土台との隙間をシールする長尺のシール材であって、
前記土台に固着される平板状の平板部と、前記平板部の下端縁が外側に曲折した後に内側に再度曲折する曲折部と、前記曲折部の再度曲折した下面に長さ方向に沿って添設されるクッション材と、からなり、外側から見た前記平板部と前記曲折部の再度曲折した下面との挟角は70°ないし90°である、ことを特徴としている。
なお、「外側」「内側」「上」および「下」は基礎シール材を土台に取り付けたときの概念である。
また、本願請求項2に係る基礎シール材は、請求項1に記載の基礎シール材であって、前記曲折部の再度曲折した下面には下方に突出する一対のリブが長さ方向に凸設されて前記クッション材は該リブ間に挟着され、該クッション材の下部面は該リブ先端よりも突出している、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る基礎シール材は、請求項2に記載の基礎シール材であって、前記平板部、前記曲折部および前記リブは一体成型された合成樹脂製であり、前記クッション材は弾性発泡樹脂である、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る基礎シール材は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基礎シール材であって、断面から見たときに前記曲折部の再度曲折した先端は前記平板部の延長線よりも内側に位置している、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る基礎シール材は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基礎シール材であって、前記クッション材の厚さは予定される前記基礎および前記土台の隙間と略同一である、ことを特徴としている。
なお、「厚さ」とは、基礎シール材を土台に取り付けた状態のときの垂直方向の距離をいう。
そして、本願請求項6に係る基礎シール材は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の基礎シール材であって、前記平板部の裏面には粘着層が形成されるとともに該平板部には一定間隔に釘が貫通する釘孔が貫設されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により本願発明は以下の効果を奏する。
(1)基礎シール材は平板部と曲折部とが1枚の板状となっていてそれにクッション材が曲折部の下面に添設されているので、基礎に土台を設置した後に取り付けることができる。さらに、取り付けた状態においては曲折部が2度曲折して断面がU字を横にした形状となっている上、外側から見た平板部と曲折部の再度曲折した下面との挟角は80°ないし90°であるため、クッションとしての機能を担うとともにその下部のクッション材により、鏝ムラによる基礎表面の凹凸にも対応して基礎と土台との隙間を塞いで気密にすることができる。特にクッション材に緩衝性や可撓性に優れるとともに適度な弾性を有し寸法維持性が高い弾性発泡樹脂を使用すればその気密効果は一段と優れたものとなる。
(2)曲折部の下面に一対のリブを凸設しそのリブ間にクッション材を挟着することにより、取付が容易となる上、たとえ地震等による基礎と土台の相対的な変位があってもクッション材はそのリブに阻まれて抜脱することはない。
(3)平板部、曲折部およびリブを合成樹脂製として一体成型することにより、その製造コストは経済的に優れたものとなるとともに、施工時の切断等も容易になる。なお、基礎シール材同士のジョイント部分は防水テープで処理するようにすると良い。
(4)断面から見たときに曲折部の先端を平板部の延長線よりも内側に位置させることにより、基礎シール材を土台に添設したときには曲折部の先端縁は該土台外面よりも内側に位置させて基礎と土台との隙間に挿入することになるから、基礎シール材の「基礎と土台の隙間のシール」という役割を確実に果たすことができる。
(5)クッション材の厚さを予定される基礎および土台の隙間以下とすれば、実際の隙間と異なった場合であっても、隙間が大きい場合には土台に対する基礎シール材の平板部を基礎の表面(天端)に押しつけるようにすることで対応でき、隙間が小さい場合には曲折部のクッションおよびクッション材の圧縮で対応することができるので支障は生じない。
(6)土台外面に対置する平板部の裏面に粘着層を形成するとともに平板部に一定間隔で釘孔を貫設することで、まず、釘を打ち付けることで土台に対する基礎シール材の高さ方向の位置決めが容易になり、その後に、土台外面を平板部の裏面の粘着層を介して密着ができるので、平板部すなわち基礎シール材と土台とは確実に密着して、気密化された床下空間を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は実施例に係る基礎シール材の側面図である。
図2図2は実施例に係る基礎シール材を土台に取り付けた状態を示す基礎・土台の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態に係る実施例について、図1および図2を参照して説明する。なお、図1および図2において、符号1は実施例に係る基礎シール材、符号11は平板部、符号12は曲折部、符号13はリブ、符号15はクッション材、符号17は粘着層、符号20は基礎、符号30は土台、符号40は摩擦減震装置、符号αは挟角、符号gは土台と基礎の間隙、である。
【0015】
基礎シール材1は主に長尺の板状体と断面が長円形のクッション材15とから構成されている。なお、図1は基礎シール材1の側面図であるが、基礎シール材1の断面も同一形状である。
【0016】
板状体は一体成形された合成樹脂製であって、土台20に粘着層17を介して固着される平板状の平板部11と、平板部11の下端縁が外側に曲折した後に内側に再度曲折する曲折部12と、曲折部12の再度曲折した下面に下方に向けて突出する一対のリブ13、13と、から構成されている。実施例では平板部11の板厚を1mmとしていて、その上端縁は外側に突設したリブ状となっている。このため、平板部11が薄板であっても上端縁のリブと下端縁に続く曲折部12により剛性が確保されて施工性が向上する。
【0017】
平板部11の長さ方向の中心線近傍には一定間隔で図示外の釘孔が貫設されていて、さらに、平板部11の裏面、すなわち、土台30に対置する面には、ブチルゴム製で厚さが0.5mmの粘着テープが粘着されて粘着層17が形成されている。平板部11が土台20に粘着層17を介して粘着されるため、平板部11と土台20とが確実に密着するばかりでなく、土台20に対する平板部11の微少な動きや振動も粘着層17により吸収される。
【0018】
平板部11に続く曲折部12は断面がヘヤーピンのようにU字状に曲折していて平板部11による垂直方向の力をクッションとして受け止める役割を担っている。そして、その先端縁は平板部11の仮想延長線よりも内側に位置するように形成されるとともに、平板部11と曲折部12の再度曲折した面との外側から見た挟角(α)は82.5°となっている。換言すれば曲折部12の再度曲折した面は水平面に対して7.5°の俯角を形成するようになっている。
【0019】
曲折部12の再度曲折した下面の先端縁および曲折終端縁近傍には一対のリブ13、13が突設されていて、そのリブ間にクッション材15が挟着されている。実施例ではクッション材15に弾性を有する発泡ポリスチレン樹脂を使用しているが、その他の弾性発泡樹脂としてはポリウレタン樹脂やポリエチレン樹脂等がある。そして、クッション材15の厚みを概ね予定される基礎30および土台30の隙間(g)以下とするようにしている。
【0020】
つぎに基礎シール材1の取り付け手順例について説明する。この取り付け手順例では、前述した特許文献1に関示の摩擦減震装置と併用する場合を例にしている。
【0021】
取り付け手順例は以下の通りである。
(1)摩擦減震装置40は、上段に位置し土台20に接触する上部滑り平板と、下段に位置し基礎30に接触する下部滑り平板と、から構成されている。この摩擦減震装置40をアンカーボルトに挿入して基礎30上に載置し、あるいはそのまま基礎30上に載置する。
(2)その上からアンカーボルト挿通孔を刻設した土台20を設置してアンカーボルトで固定する。このとき予定される基礎30および土台20の隙間(g)は6mmである。
(3)基礎シール材1のクッション材15を基礎30の表面(天端)に押しつけると同時に曲折部12を土台20の方向へ押し込むようにする。基礎配筋の関係でアンカーボルトの位置は設計図通りに収まらない場合もあり、土台20に対してアンカーボルトの位置は幅方向にズレたりするが、摩擦減震装置40の上部滑り平板の外周縁にテーパーが付いていることにより、このような不具合は吸収される。
(4)基礎シール材1に貫設された釘孔から釘を打ち付けて土台20に仮固定する。その後、基礎シール材1の平板部11の表面を土台20に押しつけて平板部11と土台20を密着させる。
【0022】
以上で基礎シール材1の土台20への取り付けが完了する。基礎シール材1は摩擦減震装置と併用することで、アンカーボルトの設置誤差を吸収して減震効果を減ずることなく住宅床下の気密性を高めることになるが、摩擦減震装置と併用することなく単独で使用してもその高気密性の効果を発揮する。
【符号の説明】
【0023】
1 実施例に係る基礎シール材
11 平板部
12 曲折部
13 リブ
15 クッション材
17 粘着剤
20 基礎
30 土台
図1
図2