特開2017-194097(P2017-194097A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-194097(P2017-194097A)
(43)【公開日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】滑り免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20170929BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20170929BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20170929BHJP
【FI】
   F16F15/02 L
   E04H9/02 331E
   E04H9/02 301
   E04B1/94 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-83783(P2016-83783)
(22)【出願日】2016年4月19日
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 久巳
(72)【発明者】
【氏名】上月 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】西本 晃治
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001GA01
2E001HD00
2E001LA08
2E139AA01
2E139AA15
2E139AC04
2E139AC06
2E139AC20
2E139AD03
2E139CA22
2E139CA24
2E139CB04
2E139CB11
2E139CC05
2E139CC07
2E139CC11
3J048AA04
3J048AB01
3J048AC03
3J048BE12
3J048BG04
3J048CB05
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】

【課題】上沓および下沓と、上沓と下沓の間に配設される摺動体と、から構成される滑り免震装置に関し、現場にて耐火被覆材を設置する作業を不要とでき、地震時における免震性能に優れ、かつ火災時の耐火性能に優れた滑り免震装置を提供すること。
【解決手段】下摺動面1dをその下面1aに備えた上沓1と、上摺動面2dをその上面2aに備えた下沓2と、上沓1と下沓2の間に配設された摺動体3とから構成される滑り免震装置10であって、上沓1の側面1bから下面1aの下摺動面1d以外の領域に亘って第一の熱膨張性耐火材4が装着され、下沓2の側面2bから上面2aの上摺動面2d以外の領域に亘って第二の熱膨張性耐火材5が装着されており、非火災時には第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5は非接触状態にあり、火災時には第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5が熱膨張して相互に密着して摺動体3の配設されている空間を密閉する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率を有する下摺動面をその下面の内側に備えた上沓と、
曲率を有する上摺動面をその上面の内側に備えた下沓と、
上沓と下沓の間で、該上沓および該下沓と接して曲率を有する上面および下面を備えた柱状の摺動体と、から構成される滑り免震装置であって、
前記上沓の側面から前記下面の前記下摺動面以外の領域に亘って第一の熱膨張性耐火材が装着されており、
前記下沓の側面から前記上面の前記上摺動面以外の領域に亘って第二の熱膨張性耐火材が装着されており、
非火災時には、前記第一の熱膨張性耐火材と前記第二の熱膨張性耐火材は非接触状態にあり、
火災時には、前記第一の熱膨張性耐火材と前記第二の熱膨張性耐火材の双方が熱膨張して相互に密着して前記摺動体の配設されている空間を密閉する、滑り免震装置。
【請求項2】
前記上沓の前記下面のうち、前記下摺動面の周囲に環状の第一のストッパーが配設され、
前記下沓の前記上面のうち、前記上摺動面の周囲に環状の第二のストッパーが配設され、
前記第一の熱膨張性耐火材が前記第一のストッパーの周囲まで装着され、前記第二の熱膨張性耐火材が前記第二のストッパーの周囲まで装着されている請求項1に記載の滑り免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下沓とそれらの間に介在する摺動体とから構成される滑り免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震国であるわが国においては、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅といった様々な構造物に対して、地震力に抗する技術、構造物に入る地震力を低減する技術など、様々な耐震技術、免震技術、制震技術が開発され、各種構造物に適用されている。
【0003】
中でも免震技術は、構造物に入る地震力そのものを低減する技術であることから、地震時の構造物の振動は効果的に低減される。この免震技術を概説するに、下部構造物である基礎と上部構造物との間に免震装置を介在させ、地震による基礎の振動の上部構造物への伝達を低減し、上部構造物の振動を低減して構造安定性を保証するものである。なお、この免震装置は、地震時のみならず、構造物に対して常時作用する交通振動の上部構造物への影響低減にも効果を発揮するものである。
【0004】
免震装置には鉛プラグ入り積層ゴム支承装置や高減衰積層ゴム支承装置、積層ゴム支承とダンパーを組み合わせた装置、滑り免震装置など、様々な形態の装置が存在している。その中で滑り免震装置を取り上げてその一つの形態の構成を説明すると、曲率を有する摺動面を備えた上沓および下沓と、上沓と下沓の間で、それぞれの沓と接して同じ曲率を有する上面および下面を備えた柱状の摺動体と、から構成されており、上下球面滑りタイプの免震装置、あるいはダブルコンケイブ式の免震装置などと称されることもある。この種の免震装置では、上下の沓の動作性能が、それらの間に介在する摺動体との間の摩擦係数やこれに重量が乗じられた摩擦力に支配される。
【0005】
ところで、上記する滑り免震装置が建物の途中階に設置される、いわゆる中間層免震構造を形成する場合、建築基準法によれば、この滑り免震装置に対して、当該滑り免震装置の上下に位置する柱等の構造部材と同等の耐火性能が要求される。
【0006】
より具体的には、3時間で1100℃の加熱状態下において、上下の柱間に介在する滑り免震装置には、上方の柱から作用する長期軸力を下方の柱に伝達できる性能を保持することが要求される。
【0007】
したがって、特に中間層免震構造に適用される滑り免震装置においては、地震時の振動低減性能に加えて、火災時の耐火性能が要求されることになる。
【0008】
ここで、特許文献1には、免震装置の耐火被覆構造が開示されている。具体的には、下部構造体に取り付けられたすべり板と、上部構造体に形成されたすべり支承下面にすべり板の上面を摺動するように取り付けられた樹脂製あるいは金属製のすべり材と、を有するすべり支承型の免震装置であり、すべり支承下面におけるすべり材の周囲に、火災時に膨張してすべり材を被覆する熱膨張耐火材がすべり板と非接触状態を保って取り付けられているものである。
【0009】
この免震装置の耐火被覆構造によれば、建物の上部構造体の荷重を免震装置より下方の下部構造体に伝達するための樹脂製あるいは金属製のすべり材の周囲に、すべり板と非接触状態を保って熱膨張耐火材を取り付けたことにより、地震時の摺動に影響を与えることなく、火災時にはすべり材を効率よく被覆することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5356743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1で開示される免震装置の耐火被覆構造は、上沓および下沓と、上沓と下沓の間に配設される摺動体と、から構成される滑り免震装置とは構成を異にすることから(摺動体を備えていない)、摺動体を備えた滑り免震装置であって耐火性能に優れた滑り免震装置を開示するものではない。
【0012】
また、この免震装置の耐火被覆構造は、現場にて免震装置を囲む耐火被覆材を取り付ける作業を必須とすることから、現場施工性に課題を有している。
【0013】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、上沓および下沓と、上沓と下沓の間に配設される摺動体と、から構成される滑り免震装置に関し、現場にて耐火被覆材を設置する作業を不要とでき、地震時における免震性能に優れ、かつ火災時の耐火性能に優れた滑り免震装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明による滑り免震装置は、曲率を有する下摺動面をその下面の内側に備えた上沓と、曲率を有する上摺動面をその上面の内側に備えた下沓と、上沓と下沓の間で、該上沓および該下沓と接して曲率を有する上面および下面を備えた柱状の摺動体と、から構成される滑り免震装置であって、前記上沓の側面から前記下面の前記下摺動面以外の領域に亘って第一の熱膨張性耐火材が装着されており、前記下沓の側面から前記上面の前記上摺動面以外の領域に亘って第二の熱膨張性耐火材が装着されており、非火災時には、前記第一の熱膨張性耐火材と前記第二の熱膨張性耐火材は非接触状態にあり、火災時には、前記第一の熱膨張性耐火材と前記第二の熱膨張性耐火材の双方が熱膨張して相互に密着して前記摺動体の配設されている空間を密閉するものである。
【0015】
本発明の滑り免震装置は、上沓の側面からその下面の下摺動面以外の領域に亘って第一の熱膨張性耐火材が装着され、下沓の側面からその上面の上摺動面以外の領域に亘って第二の熱膨張性耐火材が装着され、非火災時には、第一の熱膨張性耐火材と第二の熱膨張性耐火材は非接触状態にあることにより、第一、第二の熱膨張性耐火材が地震時の摺動体の摺動を阻害しないことから、地震時における免震性能に優れた滑り免震装置である。
【0016】
さらに、火災時には、第一の熱膨張性耐火材と第二の熱膨張性耐火材の双方が熱膨張して相互に密着して摺動体の配設されている空間を密閉することにより、火災時の熱から摺動体を遮断することができ、火災時の熱で摺動体が熱劣化して十分な軸力伝達機能を失わないようにすることができ、耐火性能に優れた滑り免震装置となっている。
【0017】
より具体的には、火災時には、上沓および下沓の間の隙間から熱が内部に入り込む熱の流れと、上沓および下沓を介して摺動体に伝熱する熱の流れがあり、これらの熱が摺動体に伝熱されて摺動体が熱劣化し得る。
【0018】
この火災時の熱の流れに対し、第一、第二の熱膨張性耐火材がそれぞれ上沓および下沓の側面から摺動面の周囲に亘って配設されていて、火災時に双方が熱膨張して相互に密着して摺動体の配設されている空間を密閉することにより、上記する二つの熱の流れを効果的に遮断することができる。
【0019】
ここで、第一、第二の熱膨張性耐火材としては有機系耐火材を適用することができる。
【0020】
第一、第二の熱膨張性耐火材は、たとえば製作工場にて上沓および下沓に対して予め取り付けることができるため、滑り免震装置が設置される現場において、第一、第二の熱膨張性耐火材を取り付ける作業は不要となり、現場施工性に優れた滑り免震装置となる。
【0021】
また、滑り免震装置の実施の形態として、前記上沓の前記下面のうち、前記下摺動面の周囲に環状の第一のストッパーが配設され、前記下沓の前記上面のうち、前記上摺動面の周囲に環状の第二のストッパーが配設され、前記第一の熱膨張性耐火材が前記第一のストッパーの周囲まで装着され、前記第二の熱膨張性耐火材が前記第二のストッパーの周囲まで装着されている形態を挙げることができる。
【0022】
環状の第一のストッパーと第二のストッパーにて摺動体の摺動範囲が規定され、摺動体の脱落等が抑止される。
【0023】
また、環状の第一のストッパーと第二のストッパーがあることで、それらの内側が摺動面となることから、第一、第二の熱膨張性耐火材の取り付け範囲が明瞭になり、それらの取り付け性も良好になる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の滑り免震装置によれば、上沓の側面からその下面の下摺動面以外の領域に亘って第一の熱膨張性耐火材が装着され、下沓の側面からその上面の上摺動面以外の領域に亘って第二の熱膨張性耐火材が装着され、非火災時には、第一の熱膨張性耐火材と第二の熱膨張性耐火材は非接触状態にあることにより、第一、第二の熱膨張性耐火材が地震時の摺動体の摺動を阻害しないことから、地震時における免震性能に優れた滑り免震装置となる。
【0025】
また、火災時には、第一の熱膨張性耐火材と第二の熱膨張性耐火材の双方が熱膨張して相互に密着して摺動体の配設されている空間を密閉することにより、火災時の熱から摺動体を遮断することができ、火災時の熱で摺動体が熱劣化して十分な軸力伝達機能を失わないようにすることができ、耐火性能に優れた滑り免震装置となる。
【0026】
さらに、第一、第二の熱膨張性耐火材は、たとえば製作工場にて上沓および下沓に対して予め取り付けることができるため、滑り免震装置が設置される現場において、第一、第二の熱膨張性耐火材を取り付ける作業は不要となり、現場施工性に優れた滑り免震装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の滑り免震装置の実施の形態の縦断面図であって、上部構造体と下部構造体の間に設置されている状態を示した図である。
図2】地震時の滑り免震装置の動作態様を説明した図である。
図3】火災時の滑り免震装置の作用を説明した図であって、(a)は火災発生前の状態を示した図であり、(b)は火災発生後の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の滑り免震装置の実施の形態を説明する。
【0029】
(滑り免震装置の実施の形態)
図1は本発明の滑り免震装置の実施の形態の縦断面図であって、上部構造体と下部構造体の間に設置されている状態を示した図である。
【0030】
図示する滑り免震装置10は、曲率を有するSUS製の下摺動面1dをその下面1aの内側に備えた上沓1と、曲率を有するSUS製の上摺動面2dをその上面2aの内側に備えた下沓2と、上沓1と下沓2の間で、上沓1および下沓2と接して曲率を有する上面および下面を備えた柱状で鋼製(SUS製を含む)の摺動体3と、から構成される。
【0031】
上沓1の下面1aのうち、下摺動面1dの周囲には環状の第一のストッパー1cが配設されており、下沓2の上面2aのうち、上摺動面2dの周囲にも環状の第二のストッパー2cが配設されている。
【0032】
環状の第一のストッパー1cと第二のストッパー2cにより、摺動体3の摺動範囲が規定され、摺動体3の脱落等が抑止される。
【0033】
上沓1と下沓2と摺動体3はいずれも、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A,B,C、もしくはSN490B,C、もしくはS45C)から形成され、面圧60MPa程度の耐荷強度を有している。
【0034】
また、摺動体3の上面と下面にはそれぞれ、不図示の二重織物層が接着固定されているのが好ましい。この二重織物層は、たとえばPTFE繊維とPTFE繊維よりも引張強度の高い繊維からなる二重織物層であり、PTFE繊維が上沓1の下摺動面1dと下沓2の上摺動面2d側に配設されるようにして各二重織物層が摺動体3の上下面に固定されている。ここで、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン4・6などのポリアミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやパラアラミド、メタアラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、LCP、ポリイミド、PEEKなどの繊維を挙げることができる。また、さらに、熱融着繊維や綿、ウールなどの繊維を適用してもよい。その中でも、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、引張強度の極めて高いPPS繊維が望ましい。これら二重織物層は、エポキシ樹脂系接着剤等からなる接着剤を介して摺動体3の上下面に接着固定される。
【0035】
滑り免震装置10では、上沓1の側面1bからその下面1aの下摺動面1d以外の領域(第一のストッパー1cの周囲まで)に亘って第一の熱膨張性耐火材4が装着されており、下沓2の側面2bからその上面2aの上摺動面2d以外の領域(第二のストッパー2cの周囲まで)に亘って第二の熱膨張性耐火材5が装着されている。
【0036】
そして、図1で示す状態、すなわち、非火災時においては、第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5は相互に非接触状態にあり、双方の間に隙間Gがある。なお、図示を省略するが、この隙間Gを閉塞するように、第一のストッパー1cと第二のストッパー2cに環状の防塵ゴムをそれぞれ取り付け、摺動体3の収容された空間に塵が入り込まないようになっている形態であってもよい。この形態では、第一のストッパー1cの外側の側面からその端面(第二のストッパー2cに対向する端面)に亘って防塵ゴムが接着され、同様に、第二のストッパー2cの外側の側面からその端面(第一のストッパー1cに対向する端面)に亘って防塵ゴムが接着され、非火災時において、双方の防塵ゴムにて隙間Gが閉塞されており、双方の防塵ゴムの外側に第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5がそれぞれ取り付けられている。
【0037】
ここで、第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5は有機系耐火材から形成され、より詳細には、積水化学工業株式会社製の「フィブロック」(登録商標)から形成されている。
【0038】
非火災時においては、第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5の厚みは3mm程度である。
【0039】
第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5は、製作工場にて上沓1と下沓2に対して予め取り付けることができる。そのため、滑り免震装置10が設置される現場において、第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5を取り付ける作業は不要となり、現場施工性に優れた滑り免震装置10となる。
【0040】
図1で示すように、滑り免震装置10は、柱等の上部構造体S1と、同様に柱等の下部構造体S2の間に設置され、地震時における上部構造体S1と下部構造体S2の水平変位を滑り免震装置10の動作にて低減する。さらに、滑り免震装置10は上部構造体S1と下部構造体S2の間に設置される、いわゆる中間層免震構造を形成することから、建築基準法に則り、滑り免震装置10には、上部構造体S1と下部構造体S2と同等の耐火性能が要求される。そこで、以下、図2,3を参照して、地震時と火災時の滑り免震装置10の作用を説明する。
【0041】
図2は、地震時の滑り免震装置10の動作態様を説明したものである。
【0042】
図2で示すように、地震時においては、上部構造体S1と下部構造体S2の水平変位に応じて上沓1と下沓2の間で摺動体3が摺動することにより、地震力の低減を図ることができる。
【0043】
ここで、滑り免震装置10では、第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5が相互に非接触状態にあることから、これら第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5が上沓1や下沓2の水平変位、摺動体3の摺動を阻害しない。
【0044】
したがって、滑り免震装置10は、地震時において優れた免震性能を発揮することができる。
【0045】
一方、図3は、火災時の滑り免震装置10の作用を説明した図であって、図3(a)は火災発生前の状態を示した図であり、図3(b)は火災発生後の状態を示した図である。
【0046】
図3(a)で示すように、火災時においては、上沓1と下沓2の間の隙間Gから火災時の熱が内部に入り込む熱の流れR1と、上沓1と下沓2を介して摺動体3に伝熱する熱の流れR2があり、これらの熱が摺動体3に伝熱されて摺動体3が熱劣化し得る。
【0047】
これに対し、滑り免震装置10では、図3(b)で示すように、第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5の双方が熱膨張して熱膨張した第一の熱膨張性耐火材4’と第二の熱膨張性耐火材5’となり、第一の熱膨張性耐火材4’と第二の熱膨張性耐火材5’が相互に密着して摺動体3の配設されている空間を密閉する。
【0048】
たとえば、非火災時において厚みが3mm程度の第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5は、火災時に熱膨張してそれらの厚みが30mm以上になる。
【0049】
第一の熱膨張性耐火材4’と第二の熱膨張性耐火材5’が相互に密着することで、図3(a)で示す熱の流れR1が遮断される。
【0050】
また、第一の熱膨張性耐火材4’と第二の熱膨張性耐火材5’の厚みが10倍以上に熱膨張することで、図3(a)で示す熱の流れR2が遮断される。
【0051】
このように、第一の熱膨張性耐火材4と第二の熱膨張性耐火材5の双方が熱膨張して相互に密着して摺動体3の配設されている空間を密閉することにより、火災時の熱から摺動体3を遮断することができ、火災時の熱で摺動体3が熱劣化して十分な軸力伝達機能を失わないようにすることができる。たとえば、火災時に1100℃程度かそれ以上の温度雰囲気下において、摺動体3の温度を500℃程度かそれ以下に留めることが可能になる。
【0052】
したがって、滑り免震装置10は、火災時において優れた耐火性能を発揮することができる。
【0053】
このように、図示する滑り免震装置10は、現場施工性に優れ、地震時における免震性能に優れ、かつ火災時の耐火性能に優れた滑り免震装置となる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…上沓、1a…下面、1b…側面、1c…第一のストッパー、1d…下摺動面、2…下沓、2a…上面、2b…側面、2c…第二のストッパー、2d…上摺動面、3…摺動体、4,4’…第一の熱膨張耐火材、5,5’…第二の熱膨張耐火材、10…滑り免震装置、G…隙間、S1…上部構造体、S2…下部構造体
図1
図2
図3