【解決手段】弾性波センサ2は、軸と摺動する内周面β10を有する軸受から、その内周面β10において発生した弾性波を検出する。ハウジング1は、弾性波センサ2および軸受を保持する。断熱材3は、ハウジング1よりも熱伝導率の低い材質で構成される。断熱材3は、ハウジング1に保持された弾性波センサ2と、軸受との間に配置される。弾性波センサ2の受信面は断熱材3によって保護されるため、破損や検出精度低下の可能性が抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、AEセンサなどの検出デバイスは、弾性波を検出するために圧電素子を用いており高熱下で使用すると壊れやすく、検出の精度も低下しやすい。特許文献1に記載の標定装置は、摺動発熱をする部位に熱の影響を受け易いAEセンサを直接接触させているため、熱が加わることによりAEセンサ内の圧電素子の出力が低下し、検波の精度が下がる、という問題があった。
【0005】
本発明は、軸受の摺動面において発生する弾性波を弾性波センサによって検出する際に、軸受の発熱による弾性波センサへの影響を低減する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸と摺動する内周面を有する軸受から、該内周面において発生した弾性波を検出する弾性波センサと、前記弾性波センサおよび前記軸受を保持するハウジングと、前記ハウジングに保持された前記弾性波センサおよび、前記軸受の間に配置される、前記ハウジングよりも熱伝導率の低い断熱材と、を有することを特徴とする検出装置を提供する。
【0007】
本発明において、前記ハウジングは、外壁面と、前記軸受の外周面に接触して該軸受を支持する内壁面と、前記外壁面から前記内壁面にわたって貫通し、前記断熱材および前記弾性波センサが収容される孔と、前記孔に挿入され、前記弾性波センサを前記外壁面の側から前記内壁面に向かって押し付けて固定する固定部材と、を有するとよい。
【0008】
本発明において、前記軸受は、半割形状であり、前記孔は、前記軸受の周方向における、前記軸の回転方向の上流側に対応する位置に設けられているとよい。
【0009】
本発明において、前記軸受は、半割形状であり、前記孔は、前記軸受の周方向における中央部に対応する位置に設けられているとよい。
【0010】
本発明は、上述の検出装置を有することを特徴とする軸受試験装置を提供する。
【0011】
本発明は、上述の検出装置を有することを特徴とする車両を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸受の発熱による弾性波センサへの影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態
図1は、本発明における検出の対象である軸受βの一例を示す図である。また、
図2は、本発明に係る軸受βと軸αとの配置を説明するための図である。以下、図において、軸受βが配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、−y方向、z軸方向、+z方向、−z方向を定義する。
【0015】
図1に示す軸受βは半割形状であり、+z方向の側のアッパー側軸受β1と、−z方向の側のロア側軸受β2とを組合せて構成される。アッパー側軸受β1は、内周面β10と外周面β11とを有する。ロア側軸受β2は、内周面β20と外周面β21とを有する。なお、
図1における−z方向は重力の方向であってもよい。すなわち
図1において、+z方向は「上」を、−z方向は「下」を示していてもよい。
【0016】
図2に示す軸αは、x軸方向に伸びる丸棒状または円柱状の部材である。
図2に示す通り、軸αは、軸受βのアッパー側軸受β1とロア側軸受β2とによりz軸方向に沿って挟み込まれることで回転可能な状態で支持される。軸αは側周面α11を有する。側周面α11は、+z方向の側でアッパー側軸受β1の内周面β10と摺動し、−z方向の側でロア側軸受β2の内周面β20と摺動する。側周面α11と内周面β10との間、および側周面α11と内周面β20との間には、それぞれ潤滑油が供給される。
【0017】
(1)第1実施例
図3は、本発明に係る検出装置9の第1実施例を示す図である。また、
図4は、
図3の領域IVを拡大した図であって、本発明の第1実施例に係る弾性波センサ2と断熱材3とを説明するための図である。
【0018】
検出装置9は、軸受βからその内周面において発生した弾性波を検出する弾性波センサ2と、この弾性波センサ2と軸受βとを保持するハウジング1と、弾性波センサ2と軸受βとの間に配置される断熱材3とを有する。この断熱材3は、例えばジルコニアなど、ハウジング1よりも熱伝導率の低い材質で構成される。なお、ハウジング1には、鉄やアルミニウムなどが用いられる。
【0019】
図3に示す通りハウジング1は、x軸方向に配置された軸α(
図3において図示せず)を受ける軸受βを固定する部材であり、上部ハウジング11と下部ハウジング12とをz軸方向に重ねて挟み込むことで軸受βを固定するものである。
【0020】
また、ハウジング1は、外壁面110および外壁面120と、内壁面10と、孔13とを有する。内壁面10は、軸受βの外周面β11および外周面β21に接触して軸受βを回転可能な状態で支持する。孔13は、外壁面110から内壁面10にわたって貫通する。
【0021】
この孔13は、ハウジング1において、アッパー側軸受β1の周方向における中央部に対応する位置に設けられている。
【0022】
図3に示す通り、上部ハウジング11は−z方向に、下部ハウジング12は+z方向にそれぞれ軸受βを押し付ける。上部ハウジング11に設けられたボルト穴111およびボルト穴112は、それぞれ下部ハウジング12のボルト穴121およびボルト穴122に対向しており、ボルト穴121に対向するボルト穴111と、ボルト穴122に対向するボルト穴112とに、それぞれ図示しないボルトを通すことにより上部ハウジング11と下部ハウジング12とが密着し、それぞれの内壁面10が繋がる。
【0023】
図4に示す通り、孔13の中で軸受βの外周面β11に接触する位置には、断熱材3が配置されており、断熱材3の+z方向には弾性波センサ2が配置されている。これらの配置により、軸受βの外周面β11から伝えられる熱は、直接、弾性波センサ2に伝わることがなく、断熱材3を介して伝わる。
【0024】
なお、断熱材3が+z方向で弾性波センサ2に接する面は、算術平均粗さRaが0.5以下になるように加工される。
また、断熱材3が−z方向で接する軸受βの外周面β11は曲面のままであってもよいが、
図3、4に示すように、例えばxy平面に沿った平面形状に削られていてもよい。外周面β11のうち、平面形状に削られて断熱材3と接する部分は、算術平均粗さRaが1.6以下になるように加工されるとよい。
【0025】
また、弾性波センサ2のy軸方向の両側は、上部ハウジング11から離れている。この弾性波センサ2と、上部ハウジング11との間の空間には空気が満ちている。この空間をジャケット5と呼ぶ。つまり、上部ハウジング11と弾性波センサ2とが互いに接触せず、ジャケット5を介在させている。このジャケット5により、弾性波センサ2はハウジング1からy軸方向に進む熱が伝わり難くなっている。すなわち、このジャケット5は、いわゆる「エアジャケット」として機能する。なお、ジャケット5は、弾性波センサ2のx軸方向の両側にも配置されていてもよい。ジャケット5は、弾性波センサ2のz軸方向以外を取り囲むように配置されていてもよい。
【0026】
固定部材4は、孔13に挿入され、弾性波センサ2を外壁面110の側から内壁面10に向かって押し付けて固定する部材である。
図4に示す固定部材4は、孔13の外壁面110側に設けられた雌ネジに対応する雄ネジを有し、この雄ネジを雌ネジにねじ込むことにより、弾性波センサ2を−z方向に押し付ける。これにより、弾性波センサ2は、断熱材3とともに固定部材4と軸受βとに挟まれて固定される。
【0027】
なお、固定部材4の−z方向の面にはシリコンゴム層6が貼られている。このシリコンゴム層6は、固定部材4が−z方向に押し付ける力を受けて、これによる衝撃や振動を和らげ、弾性波センサ2が破損しないように保護する。
【0028】
弾性波センサ2は、−z方向に弾性波の受信面を有しており、受信面の内側には圧電素子(図示せず)が貼り付けられている。これらの受信面や圧電素子は、例えばセラミックスなどであり、閾値を超える熱が伝えられると破損したり検出精度が低下したりすることがある。
【0029】
上述した通り、弾性波センサ2の受信面は断熱材3によって保護されており、z軸方向に対する側面もジャケット5により保護されているため、弾性波センサ2には軸受βやハウジング1からの熱が伝わり難い。その結果、弾性波センサ2の受信面や圧電素子は、過度に加熱されることが少なく、破損の可能性や検出精度が低下する可能性が抑制される。
【0030】
なお、弾性波センサ2によって軸受βから検出される弾性波は、軸受βと軸αとの馴染みや摩耗(コーティングの剥離を含む)の程度の指標に用いられたり、クラックやキャビテーションの発生、異物混入、移着、焼き付きなどの判定に用いられたりする。
【0031】
また、軸受βの内周面β10から弾性波センサ2の受信面までの距離Lは20ミリメートル以内であることが望ましい。距離Lは弾性波が伝達される距離であり、一定の距離を超えると弾性波が検出されなくなる可能性があるためである。例えば、軸受βの径方向の肉厚が1.2ミリメートルである場合、断熱材3の厚み、すなわち、z軸方向の距離は18.8ミリメートル以下であることが望ましい。なお、断熱材3の厚みは3ミリメートル以上であることが望ましい。
【0032】
(2)第2実施例
図5は、本発明の第2実施例に係る弾性波センサ2と断熱材3とを説明するための図である。第1実施例に係る弾性波センサ2はy軸方向の両側にジャケット5が存在していたが、第2実施例においては、この位置に断熱材3が存在している。
【0033】
すなわち、断熱材3には、上(+z方向)側に凹部が設けられている。この凹部は、弾性波センサ2と同等の大きさ・形状に成形されており、弾性波センサ2が収容される。これにより、弾性波センサ2は、−z方向から伝わる熱のほか、y軸方向に沿って伝わる熱も伝わり難くなっている。なお、断熱材3は、弾性波センサ2のx軸方向の両側にも設けられていてもよい。この場合、断熱材3は、x軸方向に沿って弾性波センサ2に伝わる熱も伝わり難くする。
【0034】
(3)第3実施例
図6は、本発明の第3実施例に係る弾性波センサ2と断熱材3とを説明するための図である。第1実施例に係る弾性波センサ2はy軸方向の両側に、空気が満ちているだけの空間であるジャケット5が存在していたが、第3実施例においては、この位置に下方が開口したジャケット5が存在している。
【0035】
第3実施例に係るジャケット5は、例えば径方向の大きさが異なる2つ筒が同軸に配置された二重筒であって、上方(+z方向)が平板により閉じた蓋状であり、下方(−z方向)が開口している。この下方側の開口を断熱材3の上に置くことで、2つの筒の間に空気層が形成され、y軸方向に沿って熱が出入りすることを抑制する。すなわち、ジャケット5は、上部ハウジング11に対する弾性波センサ2の位置決めをするとともに、y軸方向に沿った伝熱を抑制するエアジャケットとして機能する。
【0036】
(4)第4実施例
図7は、本発明の第4実施例に係る弾性波センサ2と断熱材3とを説明するための図である。第3実施例に係る弾性波センサ2はy軸方向の両側に、下方が開口したジャケット5が存在していたが、第4実施例においては、この位置に上方および下方がいずれも閉じたジャケット5が存在している。このジャケット5は、いわゆる真空断熱材であり、減圧した空気が収容された内部空間を熱が通り抜け難い構造となっている。このジャケット5により、弾性波センサ2はハウジング1からy軸方向に進む熱が伝わり難くなっている。なお、ジャケット5は、弾性波センサ2のx軸方向の両側にも配置されていてもよい。ジャケット5は、弾性波センサ2のz軸方向以外を取り囲むように配置されていてもよい。この場合においてもジャケット5は、上部ハウジング11に対するy軸方向(またはx軸方向)に沿った弾性波センサ2の位置決めをするとともに、伝熱を抑制する。
【0037】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組合せてもよい。
【0038】
2−1.変形例1
上述した検出装置9は、軸受βの試験を行うための装置である軸受試験装置に用いられてもよい。
【0039】
また、上述した検出装置9は、自動車や自動二輪車等の車両に用いられていてもよい。検出装置9を車両に用いることにより、車両を運転する利用者は、その車両に用いられる軸受βの異常の有無を把握することができる。
【0040】
2−2.変形例2
上述した実施形態において、弾性波センサ2はハウジング1に設けられた孔13に収容されていたが、弾性波センサ2の設置される場所は孔13に限られない。例えば、ハウジング1の上部ハウジング11の外壁面110に断熱材3が接着され、その断熱材3のさらに外側に弾性波センサ2が接着されていてもよい。この場合であっても、弾性波センサ2の受信面は断熱材3によって保護されるため、破損や検出精度低下の可能性が抑制される。
【0041】
また、孔13は内壁面10まで貫通していなくてもよい。例えば、孔13は、外壁面110から内壁面10に向けて、内壁面10に貫通しないように設けられた「窪み」であってもよい。この窪みである孔13に、断熱材3が配置され、さらにその外側に弾性波センサ2が配置されていればよい。この場合、弾性波センサ2は、断熱材3に加えてハウジング1の一部を介して、軸受βから伝わる弾性波と熱とを受けるため、比較的高熱になり難く、破損や検出精度低下の可能性が抑制される。
【0042】
2−3.変形例3
上述した実施形態において、孔13はハウジング1において、軸受βの周方向における中央部に対応する位置に設けられていたが、これに限られない。孔13は、外壁面110から内壁面10に向けて設けられていればよい。なお、孔13が軸受βの周方向における中央部に対応する位置に設けられることにより、弾性波センサ2の受信面は軸受βの両端からほぼ等しい距離にあるため、軸受βのどの位置で弾性波が発生したとしても、ほぼ偏りなくその弾性波を受信することとなる。
【0043】
また、孔13は、ハウジング1において、軸受βの周方向における、軸αの回転方向の上流側に対応する位置に設けられていてもよい。例えばクランクシャフトに適用される場合、半割形状のアッパー側軸受β1は、軸αの回転方向の上流側に圧力がかかり易い。したがって、潤滑状態に異常が生じ易いのも軸αの回転方向の上流側であることが多い。つまり、この構成によれば、弾性波が発生し易い部位の近くに弾性波センサ2の受信面を配置するので、検出精度が向上する場合がある。
【0044】
なお、上述した実施形態において、軸受βは半割形状であったが、円筒形状であってもよい。
【0045】
2−4.変形例4
上述した実施形態において、ハウジング1は軸受βの外周面β11および外周面β21を内壁面10と接触させて軸受βを支持していたが、ハウジング1が接触するのは軸受βに限られない。例えば、軸受βをコンロッドスリーブの内周側に収容し、コンロッドスリーブの外周面をハウジング1に接触させてもよい。この場合、断熱材3はコンロッドスリーブの外周面に接触させてもよい。なお、コンロッドスリーブの径方向の肉厚が9.5ミリメートルであり、軸受βの径方向の肉厚が1.2ミリメートルである場合、上述した距離Lが20ミリメートル以内であることが望ましいため、断熱材3の厚みは9.3ミリメートル以内であることが望ましい。