特開2017-19467(P2017-19467A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017019467-鉄道車両 図000003
  • 特開2017019467-鉄道車両 図000004
  • 特開2017019467-鉄道車両 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-19467(P2017-19467A)
(43)【公開日】2017年1月26日
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20170105BHJP
   B61D 17/08 20060101ALI20170105BHJP
【FI】
   B61D37/00 G
   B61D17/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-140920(P2015-140920)
(22)【出願日】2015年7月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽子
(57)【要約】
【課題】プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、鉄道車両の情報を表すための装飾部の視認性を確保すると共に、装飾部の施工コストを抑えつつ、鉄道車両の外観のバランスを向上させること。
【解決手段】戸袋106の外面上に配設されると共に鉄道車両100の情報を表すための装飾部107の上端が側構体102の上下方向における中心よりも上側に形成されるので、プラットホームにホーム柵110が設置されている場合であっても、装飾部107の視認性を確保できる。また、装飾部107が側構体102の上下方向に沿って縦長に形成されるため、側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成して外観のバランスを取るという従来の方法に比べ、施工面積が狭くなり、装飾部107の施工コストを低く抑えることができる。また、装飾部107とサイン108,109とが側構体102の上部に集中せず、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、を備えた鉄道車両において、
前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、
前記装飾部は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成されると共に、前記装飾部の上端は、前記側構体の上下方向における中心よりも上側に位置されることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、を備えた鉄道車両において、
前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、
前記装飾部は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成されると共に、前記装飾部の上端は、プラットホームに設置されるホーム柵の高さよりも上側に位置されることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
前記装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記装飾部は、前記ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記側構体に配設される窓を備え、
前記装飾部は、前記ドアと前記窓との間において、水平方向に2つ以上が隣接して配設されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、鉄道車両の情報を表すための装飾部の視認性を確保すると共に、装飾部の施工コストを抑えつつ、鉄道車両の外観のバランスを向上させることができる鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
駅構内の路線案内図や駅名標に鉄道車両の所有事業者や運行系統の情報を表すラインカラーを色分けして表示すると共に、鉄道車両の側構体の外面にも同様にラインカラーを配設する装飾部を形成することによって、乗客に鉄道車両の情報を容易に判別させ、誤乗車の防止や、利便性の向上を図る技術が知られている。従来は、特許文献1(特許文献1の図1)のように側構体の下部に装飾部を水平方向に形成することによって、鉄道車両の情報を表示していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−018762号公報(例えば、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1のように、側構体の下部に装飾部を形成する構成では、プラットホームにホーム柵が設置される場合に装飾部を視認しづらくなり、鉄道車両の情報の判別が困難になるという問題点があった。これに対し、装飾部の視認性を確保するために側構体の上部に装飾部を形成することが考えられるが、戸袋の上部には鉄道車両の用途を示すサインが配設されているため、装飾部とサインとが側構体の上部に集中して外観のバランスが悪くなる。一方、上下の外観のバランスを取るために側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成したのでは、その施工面積が広くなるため、施工のコストが高くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、鉄道車両の情報を表すための装飾部の視認性を確保すると共に、装飾部の施工コストを抑えつつ、鉄道車両の外観のバランスを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の鉄道車両は、側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、を備えるものであり、前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、前記装飾部は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成されると共に、前記装飾部の上端は、前記側構体の上下方向における中心よりも上側に位置されている。
【0007】
請求項2記載の鉄道車両は、側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、を備えるものであり、前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、前記装飾部は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成されると共に、前記装飾部の上端は、プラットホームに設置されるホーム柵の高さよりも上側に位置されている。
【0008】
請求項3記載の鉄道車両は、請求項1又は2に記載の鉄道車両において、前記装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されている。
【0009】
請求項4記載の鉄道車両は、請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両において、前記装飾部は、前記ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設されている。
【0010】
請求項5記載の鉄道車両は、請求項1から4のいずれかに記載の鉄道車両において、前記装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置されている。
【0011】
請求項6記載の鉄道車両は、請求項1から5のいずれかに記載の鉄道車両において、前記側構体に配設される窓を備え、前記装飾部は、前記ドアと前記窓との間において、水平方向に2つ以上が隣接して配設されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の鉄道車両によれば、装飾部の上端は側構体の上下方向における中心よりも上側に形成されるので、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、装飾部の視認性を確保できるという効果がある。よって、乗客が鉄道車両の情報を容易に判別できる。
【0013】
請求項2記載の鉄道車両によれば、装飾部の上端はプラットホームに設置されるホーム柵の高さよりも上側に形成されるので、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、装飾部の視認性を確保できるという効果がある。よって、乗客が鉄道車両の情報を容易に判別できる。
【0014】
請求項1又は2に記載の鉄道車両によれば、装飾部は側構体の上下方向に沿って縦長に形成されるので、側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成して外観のバランスを取るという従来の方法に比べ、施工面積が狭くなり、装飾部の施工コストを低く抑えることができるという効果がある。また、装飾部とサインとが側構体の上部に集中せず、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
【0015】
また、装飾部は戸袋の外面上、即ち、ドアに隣接して形成されるので、乗客が鉄道車両に乗車する際にその情報を判別することができるという効果がある。よって、乗客の誤乗車を抑制できる。
【0016】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項1又は2に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されるので、装飾部とドアとの一体感により、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
【0017】
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部は、ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設されるので、装飾部とドアとの一体感により、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
【0018】
また、鉄道車両に乗車しようとする乗客がドアの左右両側で待機し降車中の客が降車し終わるのを待つ場合、ドアの左右両側に装飾部を備えるため、満員時の乗車であっても、乗車する際に鉄道車両の情報を判別することができるという効果がある。よって、乗客の誤乗車を抑制できる。
【0019】
請求項5記載の鉄道車両によれば、請求項1から4のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置される(装飾部の上下方向の長さが側構体の上下方向における中心に対して上下対称に形成される)ので、装飾部が複雑な形状(例えば、側構体の上下方向に沿って縞模様を描くような形状や、一端を楔状にカットした形状)であっても、装飾部の外観のバランスを保つことができる。よって、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
【0020】
請求項6記載の鉄道車両によれば、請求項1から5のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部は、ドアと窓との間において水平方向に2つ以上が隣接して配設されるので、鉄道車両の情報を複数同時に表すことができる。よって、乗客が複数の情報を同時に判別できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態における鉄道車両の側面模式図である。
図2】ホーム柵の設置されたプラットホームに進入した状態における鉄道車両の側面模式図である。
図3】第2実施形態における鉄道車両の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における鉄道車両100の側面模式図である。
【0023】
図1に示すように、鉄道車両100は、屋根構体101と、鉄道車両の進行方向(図1左右方向)に対して左右両側(図1紙面奥と手前)に形成される2つの側構体102と、台枠(図示せず)と、妻構体(先頭構体のみ図示)とを主に備える。
【0024】
側構体102は、窓103と、乗客が乗降するための乗降口104と、その乗降口104を開閉するためのドア105と、そのドア105を収納するための戸袋106とを主に備える。また、戸袋106の外面上、即ち、側構体102の外面における窓103とドア105との間に装飾部107を備える。
【0025】
装飾部107は、鉄道車両100の情報を表す色に着色され、乗客がその色を視認することによって鉄道車両100の情報を判別するためのものであり、本実施形態では、鉄道車両100の所有事業者や運行系統の情報を表すラインカラーに応じた色で着色されている。また、駅構内の路線案内図や駅名標にも同様にラインカラーが色分けして表示されることにより、乗客はそれらの色から各鉄道車両の情報を判別でき、誤乗車の防止や、利便性の向上を図ることができる。
【0026】
また、装飾部107は、戸袋106の外面上、即ち、窓103とドア105との間に側構体102の上下方向(図1上下方向)に沿ってフィルムを貼り付けることで形成され、その形状は、本実施形態では、長方形のフィルムの下端を斜めに切り欠いた楔状とされる。これにより、側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成して外観のバランスを取るという従来の方法に比べ、施工面積が狭くなるので、装飾部107の施工コストを低く抑えることができる。また、装飾部107がドア105と隣接して配置されるので、乗客が鉄道車両100に乗車する際にその情報を判別することができるため、乗客の誤乗車を抑制できる。
【0027】
また、装飾部107は、ドア105の水平方向(図1左右方向)中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設される。これにより、鉄道車両100に乗車しようとする乗客がドア105の左右両側で待機し降車中の客が降車し終わるのを待つ場合、ドア105の左右両側に装飾部107を備えるので、満員時の乗車であっても、乗客が鉄道車両100に乗車する際にその情報を判別することができるため、誤乗車を抑制できる。
【0028】
装飾部107の上端は、側構体102、窓103又はドア105の水平方向に形成される辺に対して平行な直線状に形成され、その高さの位置は、好ましくはドア105又は窓103の上端の高さと同一に設定される。但し、施工時の公差を考慮し、窓103又はドア105の上端の高さから上下10mm以内の高さに位置しても良い。これにより、装飾部107と窓103又はドア105との一体感が生まれ、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0029】
装飾部107の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺は、窓103の底辺の一端とドア105の底辺の一端とを結ぶ直線(図1に2点鎖線で図示する仮想線L1)に対して少なくとも平行に形成され、本実施形態では、仮想線L1に対して略同一の直線上に位置する。これにより、装飾部107と窓103及びドア105との一体感が生まれ、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0030】
装飾部107の上下方向(図1上下方向)の長さにおける中心(本実施形態では、装飾部107の上端の一点と下端の一点(楔形状の頂点)とを結ぶ鉛直線の中心)の高さの位置は、好ましくは側構体102の上下方向における中心(側構体102の上端の一点と下端の一点とを結ぶ鉛直線の中心)の高さと同一に設定される。但し、施工時の公差を考慮し、側構体102の上下方向における中心の高さから上下10mm以内の高さに位置しても良い。即ち、装飾部107の上下方向の長さが側構体102の上下方向における中心を通る水平直線に対して上下対称の長さに形成される。これにより、装飾部107が複雑な形状(本実施形態では、下端を斜めに切り欠いた楔状)であっても、装飾部107の外観のバランスを保つことができる。よって、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0031】
サイン108,109は、鉄道車両100の用途を表すものであり、本実施形態では、装飾部107のフィルムと一体に描かれて形成されると共に、サイン108によって女性専用車両であることを表し、サイン109によって1号車の車両であることを表している。これにより、乗客が装飾部107の色とサイン108,109とを視認することで鉄道車両100の情報を複数同時に判別することができる。また、サイン108,109が戸袋106の外面上の上部に配設される場合であっても、装飾部107が戸袋106の外面上の下部まで形成されているため、サイン108,109及び装飾部107が戸袋106の外面上の上部に集中しない。よって、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0032】
次いで、図2を参照して、第1実施形態の鉄道車両100がプラットホームに進入した状態について説明する。
【0033】
図2は、ホーム柵110の設置されたプラットホームに進入した状態における鉄道車両100の側面模式図である。なお、説明の便宜上、扉110bの一方は閉じた状態で、他方は開いた状態を図示している。
【0034】
図2に示すように、ホーム柵110は、乗客と鉄道車両100との接触を防ぐための安全柵であり、本体部110a及び開閉可能な扉110bを備える。扉110bは、鉄道車両100がプラットホームに進入する際は閉じた状態にあり、鉄道車両100がプラットホームに停止すると共に開く。これにより、乗降口104での乗客の乗降が可能とされる。
【0035】
ここで、側構体の下部に装飾部を形成した鉄道車両の場合、ホーム柵110が設置されたプラットホームでは、ホーム柵110に遮られて装飾部を視認することが困難となる。扉110bが開くことで装飾部を視認できる状態になるものの、視認可能な範囲が狭いため、乗客は鉄道車両の情報を容易に判別することができない。
【0036】
これに対して鉄道車両100によれば、装飾部107の上端は本体部110aの高さよりも上側に形成される。これにより、プラットホームにホーム柵110が設置されている場合であっても、装飾部107の視認性を確保できる。即ち、鉄道車両100がプラットホームに進入し始めてから常に装飾部107を視認することが可能となる。また、鉄道車両100がプラットホームに停止して扉110bが開くことで、装飾部107の上端から下端にかけて視認が可能となるので、乗客は鉄道車両100の情報を容易に判別することができる。
【0037】
次いで、図3を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、装飾部107が戸袋106の外面上に1つ形成される場合を説明したが、第2実施形態では戸袋106の外面上に2つの装飾部207a,207bが形成される。尚、上記第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0038】
図3は、第2実施形態における鉄道車両200の側面模式図である。図3に示すように、第2実施形態における鉄道車両200は、戸袋106の外面上、即ち、側構体102の外面における窓103とドア105との間に2つの装飾部207a,207bを備える。
【0039】
装飾部207aは、サイン108の表す情報に応じた色(本実施形態では、サイン108の表す情報は女性専用車両であるのでピンク)で着色され、装飾部207bは、鉄道車両200の所有事業者や運行系統の情報を表すラインカラーに応じた色で着色されている。これにより、乗客は装飾部207a,207bを視認することで、各装飾部の色から鉄道車両200の所有事業者や運行系統の情報及びサイン108の表す情報をそれぞれ同時に判別することができる。また、装飾部207aはサイン108の表す情報に応じた色に着色されるので、乗客はサイン108の表す情報を容易に判別することができる。
【0040】
装飾部207a,207bは、2つのフィルムを左右方向(図3左右方向)に一定の間隔を隔てて貼り付けることで形成される。これにより、2つの装飾部によって2つの情報が表示されていることを明確にすることができる。また、一定の間隔を隔てつつも互いに隣接して配設されるので、乗客は、2つの情報を同時に判別することができると共に、鉄道車両200の外観のバランスも向上する。更に、各装飾部の一方が表す情報を変更する場合、その一方のフィルムのみを交換すれば良いので、施工コストを低く抑えることができる。
【0041】
また、装飾部207a,207bの形状は、側構体102の上下方向(図3上下方向)に縦長の長方形とされ、その下部は、断続的に着色されることで縞模様を描くように形成される。これにより、各装飾部のデザイン性が向上する。
【0042】
装飾部207a,207bの上端(下端)は、互いに平行な直線状に形成され、その高さの位置は、好ましくは同一の高さに設定される。但し、施工時の公差を考慮し、高さの相違は10mm以内としても良い。これにより、各装飾部がそれぞれ別の色で着色される場合であっても、各装飾部の一体感が生まれ、鉄道車両200の外観のバランスが向上する。
【0043】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0044】
上記各実施形態では、装飾部107,207a,207bがフィルムによって形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、塗装で形成したり、着色された樹脂や金属からなる外板を取り付けて形成するようにしても良い。
【0045】
また、上記各実施形態では、サイン108,サイン109が装飾部107,207a,207bのフィルムと一体となって形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、装飾部107,207a,207b及びサイン108,109を、フィルムや塗装、又は着色された樹脂や金属からなる外板を組み合わせてそれぞれ別体で形成するようにしても良く、サインの配設される位置も戸袋106の上端よりも上側であっても良い。
【0046】
また、上記各実施形態では、装飾部107の一端が楔状に形成され,装飾部207a,207bの下部が縞模様を描いて形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、多角形を組み合わせた形状や、その一辺若しくはそれ以上の辺にR形状を持ったものでもよく、横や斜めに縞模様を描くものでもよい。また、装飾部107,207a,207bの領域内において、着色する色の色相、明度および彩度を徐々に変化させるように形成しても良く、その変化させる方向は、上下方向、左右方向または斜め方向のいずれの方向に変化させて形成しても良い。
【0047】
また、上記各実施形態では、装飾部107及び装飾部207bがラインカラーに応じた色に着色され、207aがサイン108の表す情報に応じた色に着色されると共に、サイン108,109の表す情報が女性専用車両及び1号車の車両である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、それぞれの着色及びサインは、禁煙車、優先席、シンボルマーク、特別車の区分、車内設備の案内等の、鉄道車両の用途や情報を任意に選択して着色、配設することができる。
【0048】
また、上記各実施形態では、サイン108,109が装飾部107,207a,207b上に1つ形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数形成するようにしても良い。
【0049】
また、上記各実施形態では、ホーム柵110の本体部110aの高さが扉110bの高さよりも高く形成され、装飾部107,207a,207bの上端が本体部110aの高さよりも上側に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、扉110bの高さが本体部110aの高さよりも高く形成される場合は、装飾部107,207a,207bの上端を扉110bの高さよりも上側に形成すれば良い。
【0050】
また、第1実施形態では、装飾部107の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺が、仮想線L1に対して略同一の直線状に位置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、斜辺の角度を任意に設定し、装飾部107の上下方向の一辺の長さとドア105又は窓103の上下方向の長さとを略同一にすることで装飾部107のバランスを保つようにしても良い。また、窓103及びドア105のそれぞれの中心、辺の中点又は辺の端同士を結ぶ直線に対して斜辺を平行にすることで装飾部107のバランスを保つようにしても良い。
【0051】
また、第1実施形態では、装飾部107の上下方向の長さにおける中心の高さの位置が側構体102の上下方向における中心の高さと略同一に設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、側構体102の上下方向における中心の高さからずれていても良く、その場合は、上述の通り、装飾部107の各辺と窓103及びドア105との関係でバランスを保てば良い。また、装飾部107の上下方向の長さにおける中心の高さの位置を、窓103又はドア105の上下方向における中心の高さと略同一に設定することで鉄道車両100の外観のバランスを保つようにしても良い。
【0052】
また、第2実施形態では、各戸袋106の外面上にそれぞれ2つの装飾部(装飾部207a,207b)を形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各戸袋106の外面上にそれぞれ異なる数の装飾部を形成するようにしても良い。
【0053】
また、第2実施形態では、装飾部207a及び207bをそれぞれ別のフィルムで形成する場合を説明したが、1枚のフィルム又は1枚の樹脂や金属からなる外板に複数の領域を設け、その領域ごとに色分けして複数の色を着色するようにしても良い。これにより、1枚のフィルム又は外板を施工することで、複数の鉄道車両の情報を表すことができるので、施工コストを低く抑えることができる。また、フィルムや塗装、又は着色された樹脂や金属からなる外板を組み合わせて複数の情報を表すようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
100,200 鉄道車両
102 側構体
103 窓
104 乗降口
105 ドア
106 戸袋
107,207a,207b 装飾部
110 ホーム柵
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2016年9月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、前記側構体に配設される窓と、を備えた鉄道車両において、
前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、
前記装飾部は、前記ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設され、前記装飾部の形状は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成される長方形の下端を斜めに切り欠いた楔状とされると共に、前記装飾部の上端は、前記側構体の上下方向における中心よりも上側に位置され
前記装飾部の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺は、前記窓の底辺の一端と前記窓の底辺よりも上下方向に低い位置となる前記ドアの底辺の一端とを結ぶ仮想線上に位置し、
プラットホームに停止して、前記プラットホームに設置されるホーム柵の扉が開くことで、前記装飾部の前記ドア側の側縁部分が上端から下端にかけて視認可能となることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、前記側構体に配設される窓と、を備えた鉄道車両において、
前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、
前記装飾部は、前記ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設され、前記装飾部の形状は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成される長方形の下端を斜めに切り欠いた楔状とされると共に、前記装飾部の上端は、前記側構体の上下方向における中心よりも上側に位置され
前記装飾部の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺は、前記窓の底辺の一端と前記窓の底辺よりも上下方向に低い位置となる前記ドアの底辺の一端とを結ぶ仮想線上に位置し、
前記プラットホームに停止して、前記プラットホームに設置されるホーム柵の扉が開くことで、前記装飾部の前記ドア側の側縁部分が上端から下端にかけて視認可能となることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
前記装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記側構体に配設される窓を備え、
前記装飾部は、前記ドアと前記窓との間において、水平方向に2つ以上が隣接して配設されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の鉄道車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、鉄道車両の情報を表すための装飾部の視認性を確保すると共に、装飾部の施工コストを抑えつつ、鉄道車両の外観のバランスを向上させることができる鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
駅構内の路線案内図や駅名標に鉄道車両の所有事業者や運行系統の情報を表すラインカラーを色分けして表示すると共に、鉄道車両の側構体の外面にも同様にラインカラーを配設する装飾部を形成することによって、乗客に鉄道車両の情報を容易に判別させ、誤乗車の防止や、利便性の向上を図る技術が知られている。従来は、特許文献1(特許文献1の図1)のように側構体の下部に装飾部を水平方向に形成することによって、鉄道車両の情報を表示していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−018762号公報(例えば、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1のように、側構体の下部に装飾部を形成する構成では、プラットホームにホーム柵が設置される場合に装飾部を視認しづらくなり、鉄道車両の情報の判別が困難になるという問題点があった。これに対し、装飾部の視認性を確保するために側構体の上部に装飾部を形成することが考えられるが、戸袋の上部には鉄道車両の用途を示すサインが配設されているため、装飾部とサインとが側構体の上部に集中して外観のバランスが悪くなる。一方、上下の外観のバランスを取るために側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成したのでは、その施工面積が広くなるため、施工のコストが高くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、鉄道車両の情報を表すための装飾部の視認性を確保すると共に、装飾部の施工コストを抑えつつ、鉄道車両の外観のバランスを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の鉄道車両は、側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、前記側構体に配設される窓と、を備えたものであり、前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、前記装飾部は、前記ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設され、前記装飾部の形状は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成される長方形の下端を斜めに切り欠いた楔状とされると共に、前記装飾部の上端は、前記側構体の上下方向における中心よりも上側に位置され、前記装飾部の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺は、前記窓の底辺の一端と前記窓の底辺よりも上下方向に低い位置となる前記ドアの底辺の一端とを結ぶ仮想線上に位置し、プラットホームに停止して、前記プラットホームに設置されるホーム柵の扉が開くことで、前記装飾部の前記ドア側の側縁部分が上端から下端にかけて視認可能となる。
【0007】
請求項2記載の鉄道車両は、側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、前記側構体に配設される窓と、を備えた鉄道車両において、前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、前記装飾部は、前記ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設され、前記装飾部の形状は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成される長方形の下端を斜めに切り欠いた楔状とされると共に、前記装飾部の上端は、前記側構体の上下方向における中心よりも上側に位置され、前記装飾部の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺は、前記窓の底辺の一端と前記窓の底辺よりも上下方向に低い位置となる前記ドアの底辺の一端とを結ぶ仮想線上に位置し、前記プラットホームに停止して、前記プラットホームに設置されるホーム柵の扉が開くことで、前記装飾部の前記ドア側の側縁部分が上端から下端にかけて視認可能となる。
【0008】
請求項3記載の鉄道車両は、請求項1又は2に記載の鉄道車両において、前記装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されている。
【0009】
【0010】
請求項記載の鉄道車両は、請求項1からのいずれかに記載の鉄道車両において、前記装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置されている。
【0011】
請求項記載の鉄道車両は、請求項1からのいずれかに記載の鉄道車両において、前記側構体に配設される窓を備え、前記装飾部は、前記ドアと前記窓との間において、水平方向に2つ以上が隣接して配設されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の鉄道車両によれば、装飾部の上端は側構体の上下方向における中心よりも上側に形成されるので、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、装飾部の視認性を確保できるという効果がある。よって、乗客が鉄道車両の情報を容易に判別できる。
【0013】
請求項2記載の鉄道車両によれば、装飾部の上端はプラットホームに設置されるホーム柵の高さよりも上側に形成されるので、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、装飾部の視認性を確保できるという効果がある。よって、乗客が鉄道車両の情報を容易に判別できる。
【0014】
請求項1又は2に記載の鉄道車両によれば、装飾部の形状は側構体の上下方向に沿って縦長に形成される長方形の下端を斜めに切り欠いた楔状とされるので、側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成して外観のバランスを取るという従来の方法に比べ、施工面積が狭くなり、装飾部の施工コストを低く抑えることができるという効果がある。また、装飾部とサインとが側構体の上部に集中せず、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
【0015】
また、装飾部は戸袋の外面上、即ち、ドアに隣接して形成されるので、乗客が鉄道車両に乗車する際にその情報を判別することができるという効果がある。よって、乗客の誤乗車を抑制できる。
また、装飾部の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺は、窓の底辺の一端とその窓の底辺よりも上下方向に低い位置となるドアの底辺の一端とを結ぶ仮想線上に位置するので、装飾部と窓およびドアとの一体感が生まれ、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
また、装飾部は、ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設されるので、装飾部とドアとの一体感により、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
また、鉄道車両に乗車しようとする乗客がドアの左右両側で待機し降車中の客が降車し終わるのを待つ場合、ドアの左右両側に装飾部を備えるため、満員時の乗車であっても、乗車する際に鉄道車両の情報を判別することができるという効果がある。よって、乗客の誤乗車を抑制できる。
【0016】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項1又は2に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されるので、装飾部とドアとの一体感により、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
【0017】
【0018】
【0019】
請求項記載の鉄道車両によれば、請求項1からのいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置される(装飾部の上下方向の長さが側構体の上下方向における中心に対して上下対称に形成される)ので、装飾部が複雑な形状(例えば、側構体の上下方向に沿って縞模様を描くような形状や、一端を楔状にカットした形状)であっても、装飾部の外観のバランスを保つことができる。よって、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
【0020】
請求項記載の鉄道車両によれば、請求項1からのいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部は、ドアと窓との間において水平方向に2つ以上が隣接して配設されるので、鉄道車両の情報を複数同時に表すことができる。よって、乗客が複数の情報を同時に判別できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態における鉄道車両の側面模式図である。
図2】ホーム柵の設置されたプラットホームに進入した状態における鉄道車両の側面模式図である。
図3】第2実施形態における鉄道車両の側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における鉄道車両100の側面模式図である。
【0023】
図1に示すように、鉄道車両100は、屋根構体101と、鉄道車両の進行方向(図1左右方向)に対して左右両側(図1紙面奥と手前)に形成される2つの側構体102と、台枠(図示せず)と、妻構体(先頭構体のみ図示)とを主に備える。
【0024】
側構体102は、窓103と、乗客が乗降するための乗降口104と、その乗降口104を開閉するためのドア105と、そのドア105を収納するための戸袋106とを主に備える。また、戸袋106の外面上、即ち、側構体102の外面における窓103とドア105との間に装飾部107を備える。
【0025】
装飾部107は、鉄道車両100の情報を表す色に着色され、乗客がその色を視認することによって鉄道車両100の情報を判別するためのものであり、本実施形態では、鉄道車両100の所有事業者や運行系統の情報を表すラインカラーに応じた色で着色されている。また、駅構内の路線案内図や駅名標にも同様にラインカラーが色分けして表示されることにより、乗客はそれらの色から各鉄道車両の情報を判別でき、誤乗車の防止や、利便性の向上を図ることができる。
【0026】
また、装飾部107は、戸袋106の外面上、即ち、窓103とドア105との間に側構体102の上下方向(図1上下方向)に沿ってフィルムを貼り付けることで形成され、その形状は、本実施形態では、長方形のフィルムの下端を斜めに切り欠いた楔状とされる。これにより、側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成して外観のバランスを取るという従来の方法に比べ、施工面積が狭くなるので、装飾部107の施工コストを低く抑えることができる。また、装飾部107がドア105と隣接して配置されるので、乗客が鉄道車両100に乗車する際にその情報を判別することができるため、乗客の誤乗車を抑制できる。
【0027】
また、装飾部107は、ドア105の水平方向(図1左右方向)中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設される。これにより、鉄道車両100に乗車しようとする乗客がドア105の左右両側で待機し降車中の客が降車し終わるのを待つ場合、ドア105の左右両側に装飾部107を備えるので、満員時の乗車であっても、乗客が鉄道車両100に乗車する際にその情報を判別することができるため、誤乗車を抑制できる。
【0028】
装飾部107の上端は、側構体102、窓103又はドア105の水平方向に形成される辺に対して平行な直線状に形成され、その高さの位置は、好ましくはドア105又は窓103の上端の高さと同一に設定される。但し、施工時の公差を考慮し、窓103又はドア105の上端の高さから上下10mm以内の高さに位置しても良い。これにより、装飾部107と窓103又はドア105との一体感が生まれ、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0029】
装飾部107の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺は、窓103の底辺の一端とドア105の底辺の一端とを結ぶ直線(図1に2点鎖線で図示する仮想線L1)に対して少なくとも平行に形成され、本実施形態では、仮想線L1に対して略同一の直線上に位置する。これにより、装飾部107と窓103及びドア105との一体感が生まれ、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0030】
装飾部107の上下方向(図1上下方向)の長さにおける中心(本実施形態では、装飾部107の上端の一点と下端の一点(楔形状の頂点)とを結ぶ鉛直線の中心)の高さの位置は、好ましくは側構体102の上下方向における中心(側構体102の上端の一点と下端の一点とを結ぶ鉛直線の中心)の高さと同一に設定される。但し、施工時の公差を考慮し、側構体102の上下方向における中心の高さから上下10mm以内の高さに位置しても良い。即ち、装飾部107の上下方向の長さが側構体102の上下方向における中心を通る水平直線に対して上下対称の長さに形成される。これにより、装飾部107が複雑な形状(本実施形態では、下端を斜めに切り欠いた楔状)であっても、装飾部107の外観のバランスを保つことができる。よって、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0031】
サイン108,109は、鉄道車両100の用途を表すものであり、本実施形態では、装飾部107のフィルムと一体に描かれて形成されると共に、サイン108によって女性専用車両であることを表し、サイン109によって1号車の車両であることを表している。これにより、乗客が装飾部107の色とサイン108,109とを視認することで鉄道車両100の情報を複数同時に判別することができる。また、サイン108,109が戸袋106の外面上の上部に配設される場合であっても、装飾部107が戸袋106の外面上の下部まで形成されているため、サイン108,109及び装飾部107が戸袋106の外面上の上部に集中しない。よって、鉄道車両100の外観のバランスが向上する。
【0032】
次いで、図2を参照して、第1実施形態の鉄道車両100がプラットホームに進入した状態について説明する。
【0033】
図2は、ホーム柵110の設置されたプラットホームに進入した状態における鉄道車両100の側面模式図である。なお、説明の便宜上、扉110bの一方は閉じた状態で、他方は開いた状態を図示している。
【0034】
図2に示すように、ホーム柵110は、乗客と鉄道車両100との接触を防ぐための安全柵であり、本体部110a及び開閉可能な扉110bを備える。扉110bは、鉄道車両100がプラットホームに進入する際は閉じた状態にあり、鉄道車両100がプラットホームに停止すると共に開く。これにより、乗降口104での乗客の乗降が可能とされる。
【0035】
ここで、側構体の下部に装飾部を形成した鉄道車両の場合、ホーム柵110が設置されたプラットホームでは、ホーム柵110に遮られて装飾部を視認することが困難となる。扉110bが開くことで装飾部を視認できる状態になるものの、視認可能な範囲が狭いため、乗客は鉄道車両の情報を容易に判別することができない。
【0036】
これに対して鉄道車両100によれば、装飾部107の上端は本体部110aの高さよりも上側に形成される。これにより、プラットホームにホーム柵110が設置されている場合であっても、装飾部107の視認性を確保できる。即ち、鉄道車両100がプラットホームに進入し始めてから常に装飾部107を視認することが可能となる。また、鉄道車両100がプラットホームに停止して扉110bが開くことで、装飾部107の上端から下端にかけて視認が可能となるので、乗客は鉄道車両100の情報を容易に判別することができる。
【0037】
次いで、図3を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、装飾部107が戸袋106の外面上に1つ形成される場合を説明したが、第2実施形態では戸袋106の外面上に2つの装飾部207a,207bが形成される。尚、上記第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0038】
図3は、第2実施形態における鉄道車両200の側面模式図である。図3に示すように、第2実施形態における鉄道車両200は、戸袋106の外面上、即ち、側構体102の外面における窓103とドア105との間に2つの装飾部207a,207bを備える。
【0039】
装飾部207aは、サイン108の表す情報に応じた色(本実施形態では、サイン108の表す情報は女性専用車両であるのでピンク)で着色され、装飾部207bは、鉄道車両200の所有事業者や運行系統の情報を表すラインカラーに応じた色で着色されている。これにより、乗客は装飾部207a,207bを視認することで、各装飾部の色から鉄道車両200の所有事業者や運行系統の情報及びサイン108の表す情報をそれぞれ同時に判別することができる。また、装飾部207aはサイン108の表す情報に応じた色に着色されるので、乗客はサイン108の表す情報を容易に判別することができる。
【0040】
装飾部207a,207bは、2つのフィルムを左右方向(図3左右方向)に一定の間隔を隔てて貼り付けることで形成される。これにより、2つの装飾部によって2つの情報が表示されていることを明確にすることができる。また、一定の間隔を隔てつつも互いに隣接して配設されるので、乗客は、2つの情報を同時に判別することができると共に、鉄道車両200の外観のバランスも向上する。更に、各装飾部の一方が表す情報を変更する場合、その一方のフィルムのみを交換すれば良いので、施工コストを低く抑えることができる。
【0041】
また、装飾部207a,207bの形状は、側構体102の上下方向(図3上下方向)に縦長の長方形とされ、その下部は、断続的に着色されることで縞模様を描くように形成される。これにより、各装飾部のデザイン性が向上する。
【0042】
装飾部207a,207bの上端(下端)は、互いに平行な直線状に形成され、その高さの位置は、好ましくは同一の高さに設定される。但し、施工時の公差を考慮し、高さの相違は10mm以内としても良い。これにより、各装飾部がそれぞれ別の色で着色される場合であっても、各装飾部の一体感が生まれ、鉄道車両200の外観のバランスが向上する。
【0043】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0044】
上記各実施形態では、装飾部107,207a,207bがフィルムによって形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、塗装で形成したり、着色された樹脂や金属からなる外板を取り付けて形成するようにしても良い。
【0045】
また、上記各実施形態では、サイン108,サイン109が装飾部107,207a,207bのフィルムと一体となって形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、装飾部107,207a,207b及びサイン108,109を、フィルムや塗装、又は着色された樹脂や金属からなる外板を組み合わせてそれぞれ別体で形成するようにしても良く、サインの配設される位置も戸袋106の上端よりも上側であっても良い。
【0046】
また、上記各実施形態では、装飾部107の一端が楔状に形成され,装飾部207a,207bの下部が縞模様を描いて形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、多角形を組み合わせた形状や、その一辺若しくはそれ以上の辺にR形状を持ったものでもよく、横や斜めに縞模様を描くものでもよい。また、装飾部107,207a,207bの領域内において、着色する色の色相、明度および彩度を徐々に変化させるように形成しても良く、その変化させる方向は、上下方向、左右方向または斜め方向のいずれの方向に変化させて形成しても良い。
【0047】
また、上記各実施形態では、装飾部107及び装飾部207bがラインカラーに応じた色に着色され、207aがサイン108の表す情報に応じた色に着色されると共に、サイン108,109の表す情報が女性専用車両及び1号車の車両である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、それぞれの着色及びサインは、禁煙車、優先席、シンボルマーク、特別車の区分、車内設備の案内等の、鉄道車両の用途や情報を任意に選択して着色、配設することができる。
【0048】
また、上記各実施形態では、サイン108,109が装飾部107,207a,207b上に1つ形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数形成するようにしても良い。
【0049】
また、上記各実施形態では、ホーム柵110の本体部110aの高さが扉110bの高さよりも高く形成され、装飾部107,207a,207bの上端が本体部110aの高さよりも上側に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、扉110bの高さが本体部110aの高さよりも高く形成される場合は、装飾部107,207a,207bの上端を扉110bの高さよりも上側に形成すれば良い。
【0050】
また、第1実施形態では、装飾部107の下端を斜めに切り欠いた楔状部分における斜辺が、仮想線L1に対して略同一の直線状に位置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、斜辺の角度を任意に設定し、装飾部107の上下方向の一辺の長さとドア105又は窓103の上下方向の長さとを略同一にすることで装飾部107のバランスを保つようにしても良い。また、窓103及びドア105のそれぞれの中心、辺の中点又は辺の端同士を結ぶ直線に対して斜辺を平行にすることで装飾部107のバランスを保つようにしても良い。
【0051】
また、第1実施形態では、装飾部107の上下方向の長さにおける中心の高さの位置が側構体102の上下方向における中心の高さと略同一に設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、側構体102の上下方向における中心の高さからずれていても良く、その場合は、上述の通り、装飾部107の各辺と窓103及びドア105との関係でバランスを保てば良い。また、装飾部107の上下方向の長さにおける中心の高さの位置を、窓103又はドア105の上下方向における中心の高さと略同一に設定することで鉄道車両100の外観のバランスを保つようにしても良い。
【0052】
また、第2実施形態では、各戸袋106の外面上にそれぞれ2つの装飾部(装飾部207a,207b)を形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各戸袋106の外面上にそれぞれ異なる数の装飾部を形成するようにしても良い。
【0053】
また、第2実施形態では、装飾部207a及び207bをそれぞれ別のフィルムで形成する場合を説明したが、1枚のフィルム又は1枚の樹脂や金属からなる外板に複数の領域を設け、その領域ごとに色分けして複数の色を着色するようにしても良い。これにより、1枚のフィルム又は外板を施工することで、複数の鉄道車両の情報を表すことができるので、施工コストを低く抑えることができる。また、フィルムや塗装、又は着色された樹脂や金属からなる外板を組み合わせて複数の情報を表すようにしても良い。
<その他>
<手段>
技術思想1記載の鉄道車両は、側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、を備えるものであり、前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、前記装飾部は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成されると共に、前記装飾部の上端は、前記側構体の上下方向における中心よりも上側に位置されている。
技術思想2記載の鉄道車両は、側構体に開口される乗降口と、その乗降口を開閉するドアと、そのドアを収納する戸袋と、を備えるものであり、前記戸袋の外面上に配設されると共に前記鉄道車両の情報を表すための装飾部を備え、前記装飾部は、前記側構体の上下方向に沿って縦長に形成されると共に、前記装飾部の上端は、プラットホームに設置されるホーム柵の高さよりも上側に位置されている。
技術思想3記載の鉄道車両は、技術思想1又は2に記載の鉄道車両において、前記装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されている。
技術思想4記載の鉄道車両は、技術思想1から3のいずれかに記載の鉄道車両において、前記装飾部は、前記ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設されている。
技術思想5記載の鉄道車両は、技術思想1から4のいずれかに記載の鉄道車両において、前記装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置されている。
技術思想6記載の鉄道車両は、技術思想1から5のいずれかに記載の鉄道車両において、前記側構体に配設される窓を備え、前記装飾部は、前記ドアと前記窓との間において、水平方向に2つ以上が隣接して配設されている。
<効果>
技術思想1記載の鉄道車両によれば、装飾部の上端は側構体の上下方向における中心よりも上側に形成されるので、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、装飾部の視認性を確保できるという効果がある。よって、乗客が鉄道車両の情報を容易に判別できる。
技術思想2記載の鉄道車両によれば、装飾部の上端はプラットホームに設置されるホーム柵の高さよりも上側に形成されるので、プラットホームにホーム柵が設置されている場合であっても、装飾部の視認性を確保できるという効果がある。よって、乗客が鉄道車両の情報を容易に判別できる。
技術思想1又は2に記載の鉄道車両によれば、装飾部は側構体の上下方向に沿って縦長に形成されるので、側構体の上部及び下部の双方に装飾部を形成して外観のバランスを取るという従来の方法に比べ、施工面積が狭くなり、装飾部の施工コストを低く抑えることができるという効果がある。また、装飾部とサインとが側構体の上部に集中せず、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
また、装飾部は戸袋の外面上、即ち、ドアに隣接して形成されるので、乗客が鉄道車両に乗車する際にその情報を判別することができるという効果がある。よって、乗客の誤乗車を抑制できる。
技術思想3記載の鉄道車両によれば、技術思想1又は2に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部の上端は、前記ドアの上端と略同一の高さに位置されるので、装飾部とドアとの一体感により、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
技術思想4記載の鉄道車両によれば、技術思想1から3のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部は、ドアの水平方向中央を通る鉛直線に対して対称に2つ配設されるので、装飾部とドアとの一体感により、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
また、鉄道車両に乗車しようとする乗客がドアの左右両側で待機し降車中の客が降車し終わるのを待つ場合、ドアの左右両側に装飾部を備えるため、満員時の乗車であっても、乗車する際に鉄道車両の情報を判別することができるという効果がある。よって、乗客の誤乗車を抑制できる。
技術思想5記載の鉄道車両によれば、技術思想1から4のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部の上下方向における中心は、前記側構体の上下方向における中心と略同一の高さに位置される(装飾部の上下方向の長さが側構体の上下方向における中心に対して上下対称に形成される)ので、装飾部が複雑な形状(例えば、側構体の上下方向に沿って縞模様を描くような形状や、一端を楔状にカットした形状)であっても、装飾部の外観のバランスを保つことができる。よって、鉄道車両の外観のバランスが向上するという効果がある。
技術思想6記載の鉄道車両によれば、技術思想1から5のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、装飾部は、ドアと窓との間において水平方向に2つ以上が隣接して配設されるので、鉄道車両の情報を複数同時に表すことができる。よって、乗客が複数の情報を同時に判別できるという効果がある。
【符号の説明】
【0054】
100,200 鉄道車両
102 側構体
103 窓
104 乗降口
105 ドア
106 戸袋
107,207a,207b 装飾部
110 ホーム柵
110b
L1 仮想線