【解決手段】本発明の錠剤検査支援装置1は、錠剤トレイ100における複数の錠剤マス110のそれぞれに収容された一包化相当分の錠剤の適否を、複数の錠剤マス110に錠剤が分配された状態の実画像データと、複数の錠剤マスに適正に錠剤を分配した状態での仮想画像データとを比較して判定する構成である。各錠剤マスに錠剤が分配された状態で比較するため、速やかに比較判定できる。
前記仮想画像データ作成手段は、各種錠剤の錠剤画像データが格納された錠剤データベースにアクセスし、錠剤を分配するための分配根拠情報を参照して、所定の錠剤画像データを読み出し、読み出した錠剤画像データを、前記錠剤トレイの仮想画像中の各錠剤マスに配して前記仮想画像データを作成する請求項1記載の錠剤検査支援装置。
錠剤トレイの各錠剤マスに分配された一包化相当分の錠剤の適否を、実画像データ取得部によって取得された前記錠剤トレイの実画像データに基づいて判定させる錠剤判定手順をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記錠剤判定手順として、
前記各錠剤マスに、錠剤が適正に分配された状態の前記錠剤トレイの仮想画像データを作成する仮想画像データ作成手順と、
前記実画像データ取得部において取得された前記実画像データと、前記仮想画像データ作成手段において作成された前記仮想画像データとを比較する比較手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
前記仮想画像データ作成手順は、各種錠剤の錠剤画像データが格納された錠剤データベースにアクセスし、錠剤を分配するための分配根拠情報を参照して、所定の錠剤画像データを読み出し、読み出した錠剤画像データを、前記錠剤トレイの仮想画像中の各錠剤マスに配して前記仮想画像データを作成する請求項6記載のコンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2では、撮影した薬剤を1錠ずつ表示し、処方箋データに基づいて抽出した各薬剤のマスタ画像と比較している。そして、コンピュータによる判定の結果、分包された薬剤が適切なものと判定されない場合には、薬剤師が目視確認しているが、その際、確認作業を容易にするため、撮影画像とマスタ画像を1錠ずつ整列させて一覧形式でディスプレイに表示している。
【0006】
一方、薬剤の分包用の容器として、特許文献3のように、縦欄に1週間の曜日(日付)、横欄に1日における服用時間というように区分けされたカレンダー形式のものが知られている。これは、トレイ状の容器(錠剤トレイ)の各錠剤マスに薬剤を分包するものであり、薬剤師が監査を行う場合、服用複数回分に相当する錠剤マスを視野に入れることができ、1袋ずつ小分けされた分包袋と比較して、確認作業の迅速化が図れるという利点がある。しかし、この錠剤トレイにおける分包の適否の監査を支援するシステムとして、特許文献2の技術を応用しても、各錠剤マスの錠剤の画像(撮影画像とマスタ画像)を結局は一錠ずつ整列表示することになってしまう。それでは、錠剤トレイにおいて複数回の服用分を視野に入れて迅速に確認作業が可能であるという錠剤トレイの利点を十分には生かすことができない。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、錠剤トレイの有する上記利点を生かしつつ、各錠剤マスに収容された一包化相当分の錠剤の適否を速やかに確認でき、調剤作業の所用時間の短縮化にも貢献できる錠剤検査支援装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の錠剤検査支援装置は、
錠剤トレイの複数の錠剤マスのそれぞれに分配された一包化相当分の錠剤の適否を判定する錠剤検査支援装置において、
前記各錠剤マスに錠剤が分配されている状態の錠剤トレイの実画像データを取得する実画像データ取得部と、
前記各錠剤マスに分配された一包化相当分の錠剤の適否を、前記実画像データ取得部によって取得された前記錠剤トレイの実画像データに基づいて判定する錠剤判定手段と
を有し、
前記錠剤判定手段が、
前記各錠剤マスに、錠剤が適正に分配された状態の前記錠剤トレイの仮想画像データを作成する仮想画像データ作成手段と、
前記実画像データ取得部において取得された前記実画像データと、前記仮想画像データ作成手段において作成された前記仮想画像データとを比較する比較手段と
を有することを特徴とする。
【0009】
前記仮想画像データ作成手段は、各種錠剤の錠剤画像データが格納された錠剤データベースにアクセスし、錠剤を分配するための分配根拠情報を参照して、所定の錠剤画像データを読み出し、読み出した錠剤画像データを、前記錠剤トレイの仮想画像中の各錠剤マスに配して前記仮想画像データを作成する構成とすることが好ましい。
前記分配根拠情報を示す分配根拠情報表示部が前記錠剤トレイに設けられており、
前記仮想画像データ作成手段は、前記分配根拠情報表示部を認識して、前記分配根拠情報を読み込む構成とすることが好ましい。
前記分配根拠情報表示部に対応する前記分配根拠情報としては処方箋データを利用することができる。
前記仮想画像データ作成手段は、さらに、
前記実画像データ取得部により取得された前記実画像データに映り込んでいる各錠剤マスにおける各錠剤の姿勢を判定する錠剤姿勢判定手段と、前記実画像データ取得部により取得された前記実画像データに映り込んでいる各錠剤マスにおける各錠剤の位置を判定する錠剤位置判定手段とのうち、少なくとも一方の手段を有すると共に、
作成する前記仮想画像データの各錠剤マスにおける各錠剤の姿勢及び位置の少なくとも一方を、前記錠剤姿勢判定手段又は前記錠剤位置判定手段による判定結果に基づいて調整する錠剤画像調整手段と
を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明のコンピュータプログラムは、錠剤トレイの各錠剤マスに分配された一包化相当分の錠剤の適否を、実画像データ取得部によって取得された前記錠剤トレイの実画像データに基づいて判定させる錠剤判定手順をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記錠剤判定手順として、
前記各錠剤マスに、錠剤が適正に分配された状態の前記錠剤トレイの仮想画像データを作成する仮想画像データ作成手順と、
前記実画像データ取得部において取得された前記実画像データと、前記仮想画像データ作成手段において作成された前記仮想画像データとを比較する比較手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
前記仮想画像データ作成手順は、各種錠剤の錠剤画像データが格納された錠剤データベースにアクセスし、錠剤を分配するための分配根拠情報を参照して、所定の錠剤画像データを読み出し、読み出した錠剤画像データを、前記錠剤トレイの仮想画像中の各錠剤マスに配して前記仮想画像データを作成することが好ましい。
前記仮想画像データ作成手順として、さらに、
前記実画像データ取得部により取得された前記実画像データに映り込んでいる各錠剤マスにおける各錠剤の姿勢を判定する錠剤姿勢判定手順と、前記実画像データ取得部により取得された前記実画像データに映り込んでいる各錠剤マスにおける各錠剤の位置を判定する錠剤位置判定手順とのうち、少なくと一方と、
作成する前記仮想画像データの各錠剤マスにおける各錠剤の姿勢及び位置の少なくとも一方を、前記錠剤姿勢判定手順又は前記錠剤位置判定手順による判定結果に基づいて調整する錠剤画像調整手順と
をコンピュータに実行させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の錠剤検査支援装置は、複数の錠剤マスに錠剤が分配された状態の錠剤トレイの実画像データを、当該複数の錠剤マスに適正に錠剤を分配した状態での仮想画像データと比較する構成である。よって、実画像データに写っている各錠剤の適否を、錠剤マス単位で比較でき、すなわち、各錠剤マスに収容されている状態の錠剤を改めて1錠単位で整列比較する必要がなく、調剤作業全体の所要時間の短縮化にも貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明の一の実施形態を説明する。
図1は本実施形態に係る錠剤検査支援装置1を説明するための図である。この図に示したように、錠剤検査支援装置1は、実画像データ取得部10と、錠剤判定手段20とを有している。
【0015】
実画像データ取得部10は、錠剤トレイ配置部11とスキャナ12とを有している。錠剤トレイ配置部11には、各錠剤マス110に一包化相当分の錠剤A,B,Cが収容されている状態の錠剤トレイ100が設置される(
図2参照)。スキャナ12は、錠剤トレイ配置部11の下方に設けられ、錠剤トレイ11上に配置される錠剤トレイ100の画像を取得する。スキャナ12で取得した錠剤トレイ100の画像データ(実画像データ)はディスプレイ30に表示される。なお、ディスプレイ30には、後述の仮想画像データ作成手段210により作成された仮想画像データもあわせて表示され、実画像データとの間で、視覚的な確認が可能となっている。
【0016】
ここで、錠剤トレイ100について説明する。この錠剤トレイ100は、複数の錠剤マス110を有しており、各錠剤マス110に服用量1回分の単数又は複数の錠剤が分配される。各錠剤マス110は、所定の深さを有し、その内方に錠剤を収容できるように立体形状に形成されている(
図2参照)。薬剤師が錠剤シート(メーカーから納品された状態の錠剤が収容されたPTPシート)から、錠剤を一つずつ手動で取り出し、複数の錠剤を組み合わせて服用量1回分ずつに手蒔きで各錠剤マス110に分配する。また、薬剤師の手蒔き以外に、自動で除包と分配を行う装置を用いても良い。
【0017】
錠剤トレイ100は、
図2に示したように、例えば、平面視で略方形に形成され、錠剤マス110が縦横に複数列となるように設けられている。例えば、縦列は、服用タイミングに合わせて、朝、昼、夕、就寝前用の4列とし、横列は、月曜日から日曜日までの7列となっている。もちろん、これはあくまで一例であり、例えば、縦列を3列としたり、横列を7列以上すなわち1週間分以上としたりすることも可能である。
【0018】
錠剤トレイ100は、各錠剤マス110の上面開口を閉塞するための被覆シート120が貼着されている。被覆シート120は、合成樹脂製あるいは紙製等の薄いフィルム状のもので、被覆シート120が貼着されることによって、各錠剤マス110に収容した錠剤が密封され、一包化がなされることになる。服用時においては、被覆シート120を各錠剤マス110に対応する領域毎に剥がして錠剤を取り出す。
【0019】
また、錠剤トレイ100を構成する各錠剤マス110又は被覆シート120は、いずれか少なくとも一方が透明又は半透明であることが好ましい。それにより、錠剤トレイ配置部11上に錠剤トレイ100を配置した際、透明又は半透明になっている錠剤マス110側又は被覆シート120側を下向きにすることで、その下方に設けられたスキャナ12により、錠剤トレイ100内の錠剤の画像を読み取ることができる。
【0020】
各錠剤マス110に分配された各錠剤が、処方箋データ等に基づいて正しく分配されているか否かは、薬であれば薬剤師が最終的な監査を行うように義務づけられているが、その全てを人手で行うのは手間がかかる。そこで、本実施形態の錠剤検査支援装置1を用いれば、薬剤師の最終的な監査の手前の予備的な確認に役立つ。また、サプリメント等、薬剤師の最終的な監査が義務づけられていないものであれば、本実施形態の錠剤検査支援装置1による確認を最終工程とすることもできる。
【0021】
また、薬剤師の手蒔き以外に、自動で除包と分配を行う装置を使用する場合は、本実施形態の錠剤検査支援装置1を自動で除包と分配を行う装置に組み込んで、錠剤トレイ100への分包終了後、錠剤トレイ100が自動的に錠剤検査支援装置1の錠剤トレイ配置部11上に搬送される構成とすることもできる。
【0022】
また、本実施形態では、錠剤トレイ配置部11の下方に配置したスキャナ12で画像データを取得しているが、スキャナ12に代え、錠剤トレイ配置部11の下方又は上方にカメラを配置して錠剤トレイ100を撮影するようにしてもよい。
【0023】
実画像データ取得部10におけるスキャナ12の読み取り範囲は、錠剤が分配された状態における錠剤トレイ100において、錠剤マス110を1マス以上含む範囲とする。但し、1マスずつ比較すると比較時間がかかるため、錠剤マス110を複数マス単位で読み取るように設定することが好ましく、全ての錠剤マス110を含むようにすなわち錠剤トレイ100全体を読み取り範囲とすることがより好ましい。
【0024】
錠剤判定手段20は、コンピュータにより構成され、記憶部に設定されたコンピュータプログラムである錠剤判定手順によって実行されることで機能する。
図3に示したように、錠剤判定手段20として機能するコンピュータは、さらに、コンピュータプログラムである仮想画像データ作成手順及び比較手順の実行により、仮想画像データ作成手段210及び比較手段220として機能する。なお、コンピュータプログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。記録媒体を用いて、上記コンピュータに上記コンピュータプログラムをインストールすることができる。ここで、上記コンピュータプログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体が挙げられる。また、通信回線を通じて上記コンピュータプログラムを上記コンピュータに伝送してインストールすることも可能である。
【0025】
仮想画像データ作成手段210は、実画像データ取得部10によって取得した実画像データと比較するための仮想画像データを作成する。仮想画像データは、錠剤トレイ100の各錠剤マス110に複数種類の錠剤を分配する根拠となった情報(分配根拠情報)に基づいて作成される。例えば、薬の場合には、処方箋データに基づいて分配するため、仮想画像データ作成手段210は、
図4のフローチャートに示したように、まず、該処方箋データの情報を取得する(S41)。なお、処方箋データでは、例えば、1回服用分として、朝、昼、晩の3回はA薬、B薬、C薬をそれぞれ1錠ずつ、就寝前はB薬1錠のみとなっていると仮定する。次に、予めコンピュータとしての錠剤判定手段20の記憶部に記憶されている錠剤データベース230にアクセスする(S42)。錠剤データベース230には、錠剤毎に、錠剤画像データが記憶されており(
図3参照)、好ましくは3次元形状の錠剤画像データが記憶されており、A薬、B薬、C薬の各情報にアクセスして、処方箋データに対応する各錠剤画像データを読み込む(S43)。次に、仮想画像データ作成手段210は、各錠剤画像データを、錠剤トレイ画像の各錠剤マス画像に当てはめる(S44)。この例では、
図5に示したように、朝、昼、晩についてはA薬、B薬及びC薬の1錠ずつの画像を、一つの錠剤マス画像に当てはめ、就寝前についてはB薬1錠の画像を当てはめる。
【0026】
仮想画像データ作成手段210は、このようにして、各錠剤マス画像に各薬の錠剤画像データを配した状態での錠剤トレイ全体の画像を、仮想画像データとして、上記のディスプレイ30に表示させる(S45,S46)。この仮想画像データは、分配根拠情報である処方箋データに沿って作成したものであり、錠剤が各錠剤マス110に適正に分配されたデータである。
【0027】
比較手段220は、実画像データ取得部10において取得された上記実画像データと、仮想画像データ作成手段210において作成された上記仮想画像データとを比較して分配された錠剤の適否を判定する(
図3参照)。
【0028】
具体的には、比較手段220は、例えば、まず比較対象の錠剤マス110を特定する。次に、当該錠剤マス110に含まれる実画像データ中の各錠剤の画像と、仮想画像データ中の各錠剤の画像とを比較し、それぞれの画像データ上の特徴量(大きさ、形、色等)の差異を演算する。
図6(a)は
図5の実画像データを再掲した図であり、
図6(b)は
図5の仮想画像データを再掲した図であるが、これを例にとると、例えば「月曜日、朝」に相当する錠剤マス110について、
図6(b)の仮想画像データ中のA薬と、実画像データ中の「月曜日、朝」に相当する錠剤マス110に映っている3つの錠剤とを比較して、画像データ同士の特徴量の差異が所定以下のものをA薬と判定する。次に、B薬について、残りの2錠を対象にして同様に比較判定し、さらに、残りの1錠がC薬であるか否かを比較判定する。それにより、実画像データに映っている各錠剤が特定される。比較手段220は、この比較判定の結果、比較している錠剤マス110同士に含まれている錠剤が全て一致している否かを出力する。出力方法は任意であり、全て一致している場合には、例えば、ディスプレイ30の実画像データにおける「月曜日、朝」に相当する錠剤マス110に「OK」と表示する。1錠でも異なる場合、例えば、「日曜日、朝」に相当する錠剤マス110には、処方箋データに基づいて作成された仮想画像データでは「A薬、B薬、C薬」が1錠ずつ含まれているにもかかわらず、実画像データでは、「B薬」が特定されずに、「A薬1錠、C薬2錠」と判定された場合には、当該錠剤マス110に「NG」と表示する(
図6(a)参照)。
これにより、薬剤師等、最終的に人による確認をする際には、特に、「NG」と表示された錠剤マス110について重点的に目視確認すればよく、確認作業の軽減を図ることができる。本実施形態では、実際の錠剤トレイ100と同様に区分されたディスプレイ30上の錠剤マス110に各錠剤の画像を分配表示するため、この状態であっても実画像データとの目視確認は十分可能である。しかしながら、
図6(b)の仮想画像データの場合、A薬、B薬、C薬が各錠剤マス110に順に整列表示されているだけで、実画像データとは、各錠剤の姿勢、位置ともに一致していない。従って、薬剤師等の作業をより軽減するために、実画像データ中の錠剤マス110に含まれる各錠剤の画像データと、仮想画像データ中の錠剤マス110の各錠剤の画像データの姿勢や配置をできるだけ一致させることが好ましい。
【0029】
そこで、本実施形態の仮想画像データ作成手段210は、
図3に示したように、コンピュータプログラムである錠剤姿勢判定手順及び錠剤画像調整手順により実行される錠剤姿勢判定手段211及び錠剤画像調整手段212を有している。錠剤姿勢判定手段211は、実画像データ取得部10において取得された実画像データに映り込んでいる各錠剤マスにおける各錠剤の姿勢を判定する。実画像データ中の各錠剤マスの錠剤のうち、例えば、A薬は、平面視で円形の面が上方に向いた姿勢で、B薬は、側面が上方に向いた姿勢となっている等を判定する。
【0030】
そして、この判定結果に基づき、錠剤画像調整手段212は、
図6(b)に示した仮想画像データ中、例えば、所定の錠剤マス内において、A薬の錠剤画像データを平面視で円形の面が上方に向いた姿勢に調整すると共に、B薬の錠剤画像データを、側面が上方に向いた姿勢に調整する。
【0031】
このようにして錠剤姿勢の調整を行うことにより、仮想画像データは、
図6(b)から
図6(c)に示したように実画像データにより近い画像となる。従って、例えば、比較手段220によって「NG」と判定された「日曜日、朝」に相当する錠剤マス110について、
図6(a)の実画像データと
図6(c)の姿勢調整済みの仮想画像データとを比較した場合、
図6(b)の仮想画像データを用いる場合よりも、目視確認が容易となる。同様に、他の「OK」と判定された錠剤マス110同士を比較しても、
図6(b)と比べると、目視確認が容易となる。
【0032】
仮想画像データ作成手段210としては、
図3に示したように、錠剤位置判定手順により実行される各錠剤マス内における錠剤の位置を判定する錠剤位置判定手段213を有し、錠剤画像調整手段212によって、錠剤の位置も調整できる構成とすることがより好ましい。錠剤位置判定手段213は、例えば、
図6(a)の実画像データについて、A薬がB薬の下側に位置し、C薬がA薬及びB薬の左側に位置するといったように、各錠剤マス110内における各錠剤の位置を判定して比較する。仮想画像データ作成手段210によって作成された仮想画像データが、当初、
図6(b)であったものが、上記の姿勢調整によって
図6(c)のようになっている状態において、錠剤画像調整手段212は、錠剤位置判定手段213の比較結果に基づき、所定の錠剤マス110内において、例えば、「月曜日、朝」に相当する錠剤マス110において、A薬をB薬の下側に配置し、C薬をA薬及びB薬の左側に配置するように調整し、「日曜日、朝」に相当する錠剤マス110において、A薬をB薬の右側に配置すると共に、C薬をA薬及びB薬の上側に配置するように調整し、
図6(d)の仮想画像データとする。これにより、仮想画像データは、さらに
図6(a)の実画像データに近似する。従って、薬剤師等は実画像データ中の錠剤の目視確認をより行いやすくなる。例えば、「日曜日、朝」に相当する錠剤マス110を比較した場合、
図6(d)の仮想画像データにおいて「B薬」に相当する位置に、
図6(a)の実画像データには「B薬」と形状の異なる薬剤(例えばC薬)が含まれていることが一目瞭然で把握できる。なお、錠剤姿勢判定手段211及び錠剤位置判定手段213は、両方とも有することが好ましいが、少なくとも一方を備えた構成とすることもできる。
【0033】
ここで、仮想画像データ作成手段210は、上記のように分配根拠情報である処方箋データに基づいて作成されるが、処方箋データは、例えば、
図2に示したように、錠剤トレイ100に処方箋データに対応するバーコード、磁気ストライプ、ICチップ等の分配根拠情報表示部100aを付しておき、錠剤トレイ配置部11に分配根拠情報表示部100aの情報を読み取るリーダーを付設して、該錠剤トレイ配置部11に錠剤トレイ100が搬送された際に、該分配根拠情報表示部100aを読み取る構成とすることができる。
【0034】
ICチップ等、分配根拠情報表示部100a自体が所定の記憶容量を有している場合には、処方箋データは、ICチップ等に直接記憶させておき、錠剤トレイ配置部11において直接読み取ることができる。バーコード等の場合には、バーコードに紐付けされた処方箋データにアクセスして読み取ることができる。例えば、処方箋データ等の分配根拠情報は、病院の管理コンピュータ、あるいは、当該管理コンピュータからの情報を受け取った錠剤判定手段20の記憶部に予め記憶させておき、バーコード等を読み取ると、病院の管理コンピュータや錠剤判定手段20の記憶部にアクセスして読み取ったりする構成等とすることができる。
【0035】
本実施形態によれば、各錠剤マス110に錠剤が分配された状態の錠剤トレイ100の仮想画像データを作成し、その仮想画像データと実画像データとを比較する。すなわち、錠剤マス110に収容された状態で錠剤の適否をそのままの状態で比較するため、いずれのタイミングで服用する分が不適切であるかといった特定を速やかに行うことができ、薬剤師等も重点的に確認すべき錠剤マス110を特定しやすく、結果的に、錠剤の適否の確認作業が速やかに行うことにつながる。
【0036】
従って、例えば、錠剤トレイ100の全ての錠剤マス110に同じ錠剤が同じ個数ずつ収容されている場合の判定が容易にできることはもちろんのこと、朝、昼、晩は3種類の錠剤、就寝前は1種類の錠剤という場合でも(
図6参照)、仮想画像データ作成手段210により作成される仮想画像データがそれに対応しているため、容易かつ正確にその適否を判定できる。
【0037】
また、縦横に複数の錠剤マス110を備えた錠剤トレイ100は、例えば、福祉施設において、カレンダー形式の錠剤保持袋として利用される場合もある。このような場合、複数の要介護者に服用させる必要があり、例えば、
図7に示したように、一方の列に要介護者X,Y,Z等の氏名を表示し、他方の列に朝、昼、晩、就寝前といったタイミングを表示した錠剤トレイ100に、1日分の錠剤を、要介護者別に収容することも行われている。そこで、1日分の錠剤を錠剤トレイ100に分配したならば、その錠剤トレイ100を錠剤トレイ配置部11にセットし、スキャナ12で実画像データを取得し、仮想画像データ作成手段210により、各要介護者の分配根拠情報(例えば処方箋データ)に基づいて仮想画像データを作成し、比較手段220によって両者を比較する。
【0038】
仮想画像データ作成手段210は、複数人の分配根拠情報に基づいて一つの錠剤トレイの仮想画像データを作成する必要があるが、その具体的手法としては、例えば、錠剤判定手段20の記憶部に記憶された情報を読み出す際に、要介護者の特定、日付を入力できるようにしておき、それにより、該当する1日分の情報を読み出し、それを要介護者毎に、仮想画像データ上の一つの錠剤トレイ画像の錠剤マスに割り当てていく。これにより、複数人の要介護者の1日分の錠剤の適否の判定を自動的に行うことが可能となる。また、本実施形態では、錠剤マス110に錠剤が分配された状態で比較するため、このように各錠剤マス110に収容されるべき錠剤の種類、個数等が異なっていても、確実に判定でき、複数人に錠剤を服用させる施設等において、誤った服用を防ぐことに寄与できる。
【0039】
なお、上記した説明では、錠剤トレイ100の各錠剤マス110に、主に、処方箋を必要とする薬を分配する場合を例に挙げて説明しているが、市販薬、薬に分類されないサプリメント、健康食品等の錠剤を分配する際の確認用に本実施形態の錠剤検査支援装置1を用いることも、もちろん可能である。