【解決手段】多心ケーブル1は、n本の導体束10〜40を備え、n本の導体束10〜40は、それぞれ少なくとも1本の絶縁導体11〜13と、少なくとも1本の非絶縁導体14と、を有し、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度は、単位長当りAF(N)(N=1〜n)であり、AF(N)(N=1〜n)の少なくとも1つが他と異なり、n本の導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比が、2:3〜4:1の範囲であり、絶縁導体とペアとなる非絶縁導体は固定されていなく、各絶縁導体は、同じ導体束の非絶縁導体及び/又は異なる導体束の非絶縁導体とペアとなる。
長手方向に垂直な断面において、前記n本の導体束の各絶縁導体の中心から近接する前記非絶縁導体の表面までの最短距離を前記絶縁導体の中心から当該絶縁導体の最外面までの距離で除した値の平均値は、1〜1.3の範囲である、請求項1〜3に記載の多心ケーブル。
前記n本の導体束の各絶縁導体を並列接続したときの合成抵抗は、前記n本の導体束の各非絶縁導体を並列接続したときの合成抵抗よりも大きい、請求項1〜5の何れか一項に記載の多心ケーブル。
それぞれ少なくとも1本の絶縁導体と、少なくとも1本の非絶縁導体とを有するn本の導体束を、前記少なくとも1本の絶縁導体および前記少なくとも1本の非絶縁導体が前記導体束の長手方向における単位長当たりT(N)(N=1〜n)回撚り、
撚られた前記n本の導体束をまとめた導体群として当該導体群の長手方向における、単位長当たりT1回撚り、
前記T(N)(N=1〜n)のうち、少なくとも1つが他と異なり、
前記n本の導体束のそれぞれにおける前記絶縁導体の本数と前記非絶縁導体の本数の比が、2:3〜4:1の範囲であり、
絶縁導体と非絶縁導体とのペアは固定されていなく、各絶縁導体は、同じ導体束の非絶縁導体及び/又は異なる導体束の非絶縁導体とペアとなる多心ケーブルを製造する多心ケーブル製造工程と、
当該多心ケーブル製造工程によって製造された多心ケーブルを湾曲可能な金属製の保護管に挿通しする保護管挿通工程とを備えることを特徴とする保護管付き多心ケーブルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、絶縁導体同士のみが隣接して配置される場合には、クロストークが増大し、信号強度及び信号品質が劣化するおそれがある。また、絶縁導体と非絶縁導体との位置を長手方向に亘ってランダムに変化させた場合であっても、これらの絶縁導体と非絶縁導体との互いの距離が大きく変動している場合には、特性インピーダンスが整合しなくなりノイズ及び反射波が増加して、多心ケーブルの伝送性能が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の絶縁導体及び複数の非絶縁導体の断面において、絶縁導体の近くに必ず非絶縁導体が配置されるとともに、ケーブルの長手方向に亘って、絶縁導体同士並びに絶縁導体及び非絶縁導体の位置関係がランダムに変化させることによって、伝送性能が低下するおそれが低く、かつケーブルの径方向からの衝撃に対する耐久性を向上させた保護管付き多心ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保護管付き多心ケーブルは、多心ケーブルと、この多心ケーブルが挿通された状態で、湾曲可能な金属製の保護管と、を備え、多心ケーブルは、n本の導体束を有し、前記n本の導体束は、それぞれ少なくとも1本の絶縁導体と、少なくとも1本の非絶縁導体と、を有し、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度は、単位長当りAF(N)(N=1〜n)であり、前記AF(N)(N=1〜n)の少なくとも1つが他と異なり、前記n本の導体束のそれぞれにおける前記絶縁導体の本数と前記非絶縁導体の本数の比が、2:3〜4:1の範囲であり、絶縁導体と非絶縁導体とのペアは固定されていなく、各絶縁導体は、同じ導体束の非絶縁導体及び/又は異なる導体束の非絶縁導体とペアとなる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る保護管付き多心ケーブルの多心ケーブルは、導体束の長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度AF(N)(N=1〜n)の少なくとも1つが他と異なるので、絶縁導体間の容量性カップリングを長手方向で変動させてクロストークを低減させることができる。また、本発明に係る多心ケーブルは、導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比を2:3〜4:1の範囲にすることで、絶縁導体が非絶縁導体の近くに配置され、絶縁導体の静電容量のバラツキを小さくすることができる。
ツイストペアと違って、本発明に係る多心ケーブルでは、絶縁導体とペアとなる非絶縁導体は固定されていない。つまり、同じ束にある絶縁導体と非絶縁導体がペアになることもあるし、隣接する別の導体束にある、絶縁導体と非絶縁導体がペアになることもある。そのような理由から、見た目の構造以上にランダムな状態となり、クロストーク低減効果を向上させている。更に、多数の絶縁導体とそれ以下の本数の非絶縁導体という構成であっても、導体束の中だけでなく、ケーブル全体の中で、絶縁導体の近くには必ず非絶縁導体が存在することにより、静電容量のバラツキ低減効果を一層向上させている。
さらに、本発明にかかる保護管付き多心ケーブルは、多心ケーブルが挿通された状態で湾曲可能な金属製の保護管を備えており、ケーブルの径方向からの衝撃に対する耐久性が向上するため、超音波プローブケーブルとしての使用状況下の範囲が屋内/屋外または固定/移動の状況下において広く安全に使用することができ、汎用性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、n本の導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比が、1:1〜4:1の範囲であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、n本の導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比が、2:3以上、1:1未満の範囲であり、n本の導体束の、絶縁導体の直径の平均値と非絶縁導体の直径の平均値の比が、1.2:1以上、4:1以下の範囲であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、導体束の長手方向に垂直な断面において、n本の導体束の各絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの最短距離を絶縁導体の中心からこの絶縁導体の最外面までの距離で除した値の平均値は、1〜1.3の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る保護管付き多心ケーブルは、各絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの最短距離を絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離で除した値の平均値が1〜1.3の範囲であるので、特性インピーダンスの不整合に起因するノイズ及び反射波の増加による伝送性能の低下を防止できる。
【0013】
また、本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、n本の導体束の全体で、導体束全体の長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度は、0.01回/m以下であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、n本の導体束の全体で、導体束全体の長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度が0.01回/m以下であるで、100m以上に亘って同一の断面形状となることがなく、絶縁導体間の容量性カップリングを導体束全体の長手方向で変動させて遠端クロストークを低減させることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、n本の導体束の各絶縁導体を並列接続したときの合成抵抗は、n本の導体束の各非絶縁導体を並列接続したときの合成抵抗よりも大きいことが好ましい。
【0016】
本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、各絶縁導体を並列接続したときの合成抵抗を各非絶縁導体を並列接続したときの合成抵抗よりも大きくすることにより、非絶縁導体が信号線として機能し、ノイズが増加することを防止できる。
【0017】
さらに、本発明に係る保護管付き多心ケーブルは、多心ケーブルと、
当該多心ケーブルが挿通された状態で湾曲可能な金属製の保護管と、を備え、
前記多心ケーブルは、n本の導体束を有し、前記n本の導体束は、それぞれ少なくとも1本の絶縁導体と、少なくとも1本の非絶縁導体と、を有し、前記少なくとも1本の絶縁導体および前記少なくとも1本の非絶縁導体は、単位長当たりT(N)(N=1〜n)回撚られており、前記n本の導体束は、単位長当たりT1回撚られており、前記T(N)(N=1〜n)のうち、少なくとも1つが他と異なり、前記n本の導体束のそれぞれにおける前記絶縁導体の本数と前記非絶縁導体の本数の比が、2:3〜4:1の範囲であり、絶縁導体と非絶縁導体とのペアは固定されていなく、各絶縁導体は、同じ導体束の非絶縁導体及び/又は異なる導体束の非絶縁導体とペアとなる、ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る多心ケーブルは、絶縁導体および非絶縁体は単位長当たりの撚り回数の少なくとも1つが他の導体束のものと異なるので、絶縁導体間の容量性カップリングを長手方向で変動させて遠端クロストークを低減させることができる。また、本発明に係る多心ケーブルは、導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比を2:3〜4:1の範囲にすることで、絶縁導体の静電容量のバラツキを小さくすることができる。
さらに、本発明にかかる保護管付き多心ケーブルは、多心ケーブルが挿通された状態で湾曲可能な金属製の保護管を備えており、ケーブルの径方向からの衝撃に対する耐久性が向上するため、超音波プローブケーブルとしての使用状況下の範囲が屋内/屋外または固定/移動の状況下において広く安全に使用することができ、汎用性を向上させることができる。
【0019】
さらに、保護管付き多心ケーブルの製造方法は、それぞれ少なくとも1本の絶縁導体と、少なくとも1本の非絶縁導体とを有するn本の導体束を、前記少なくとも1本の絶縁導体および前記少なくとも1本の非絶縁導体が前記導体束の長手方向における単位長当たりT(N)(N=1〜n)回撚り、撚られた前記n本の導体束をまとめた導体群として当該導体群の長手方向における、単位長当たりT1回撚り、前記T(N)(N=1〜n)のうち、少なくとも1つが他と異なり、前記n本の導体束のそれぞれにおける前記絶縁導体の本数と前記非絶縁導体の本数の比が、2:3〜4:1の範囲であり、絶縁導体と非絶縁導体とのペアは固定されていなく、各絶縁導体は、同じ導体束の非絶縁導体及び/又は異なる導体束の非絶縁導体とペアとなる多心ケーブルを製造する多心ケーブル製造工程と、当該多心ケーブル製造工程によって製造された多心ケーブルを湾曲可能な金属製の保護管に挿通しする保護管挿通工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る保護管付き多心ケーブルの製造方法は、絶縁導体および非絶縁体を導体束の長手方向における単位長当たりの撚り回数撚り、このような導体束をn本準備し、各導体束の単位長当たりの撚り回数の少なくとも1つが他と異なるように撚るので、絶縁導体間の容量性カップリングを長手方向で変動させて遠端クロストークを低減させることができる。また、本発明に係る多心ケーブルは、導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比を2:3〜4:1の範囲にすることで、絶縁導体の静電容量のバラツキを小さくすることができる。
また、多心ケーブルが挿通された状態で湾曲可能な金属製の保護管を備えており、ケーブルの径方向からの衝撃に対する耐久性が向上するため、超音波プローブケーブルとしての使用状況下の範囲が屋内/屋外または固定/移動の状況下において広く安全に使用することができ、汎用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の絶縁導体及び複数の非絶縁導体の断面における位置を長手方向に亘ってランダムに変化させ且つ伝送性能が低下するおそれが低く、かつケーブルの径方向からの衝撃に対する耐久性を向上させた保護管付き多心ケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照して、本発明に係る保護管付き多心ケーブル及びその製造方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明との均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0024】
(本発明に係る多心ケーブルの概要)
本発明に係る保護管付き多心ケーブルは、それぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比が、2:3〜4:1の範囲であるn本の導体束を備える。ここで、n本の導体束の少なくとも1本は、導体束の長手方向に垂直な断面の形状が同一である頻度が他の(n−1)本の導体束と異なる。このような構成を採用することにより、ケーブルを構成する導体束として、絶縁導体の近くに必ず非絶縁導体が隣り合う状態となる。また、n本の導体束の少なくとも1本は、n本の導体束の全体の長手方向に垂直な断面の形状が同一である頻度が他の(n-1)本の導体束と異なるため、これらの導体束の断面の形状が同一である頻度が互いに同じ導体束で構成されたケーブルと比較して、ケーブルの長手方向において所定の長さまで同一の断面が出現する頻度が低下する。このように、本発明に係る多心ケーブルでは、複数の絶縁導体及び複数の非絶縁導体の断面における位置を長手方向に亘ってランダムに変化させ且つ伝送性能が低下するおそれを低くすることができる。
また、本発明に係る保護管付き多心ケーブルでは、絶縁導体とペアとなる非絶縁導体は固定されていない。つまり、同じ束にある絶縁導体と非絶縁導体がペアになることもあるし、隣接する別の導体束にある、絶縁導体と非絶縁導体がペアになることもある。そのような理由から、見た目の構造以上にランダムな状態となり、クロストーク低減効果を向上させている。更に、多数の絶縁導体とそれ以下の本数の非絶縁導体という構成であっても、導体束の中だけでなく、ケーブル全体の中で、絶縁導体の近くには必ず非絶縁導体が存在することにより、静電容量のバラツキ低減効果を一層向上させている。
また、本発明に係る保護管付き多心ケーブルは、多心ケーブルを保護する金属製の保護管を備えており、ケーブルの径方向からの衝撃に対する耐久性が向上するため、超音波プローブケーブルとしての使用状況下の範囲が屋内/屋外または固定/移動の状況下において広く安全に使用することができ、汎用性を向上させることができる。
【0025】
(実施形態に係る多心ケーブルの構成)
図1は、実施形態に係る多心ケーブルの分解斜視図である。
【0026】
保護管付き多心ケーブル1は、第1導体束10と、第2導体束20と、第3導体束30と、第4導体束40と、保護管50と、シース60とを有する。第1導体束10は、第11絶縁導体11と、第12絶縁導体12と、第13絶縁導体13と、第1非絶縁導体14とを有する。第2導体束20は、第21絶縁導体21と、第22絶縁導体22と、第23絶縁導体23と、第2非絶縁導体24とを有する。第3導体束30は、第31絶縁導体31と、第32絶縁導体32と、第33絶縁導体33と、第3非絶縁導体34とを有する。第4導体束40は、第41絶縁導体41と、第42絶縁導体42と、第43絶縁導体43と、第4非絶縁導体44とを有する。なお、多心ケーブル1では、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40はそれぞれ、3本の絶縁導体と、1本の非絶縁導体とを有するが、本発明に係る多心ケーブルでは、絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比は、2:3〜4:1の範囲であればよい。また、本発明に係る多心ケーブルでは、各絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの最短距離を絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離で除した値の平均値が1〜1.3の範囲になるように、それぞれの導体束に含まれる絶縁導体及び非絶縁導体の合計の本数は10本以下であることが好ましい。導体束において絶縁導体1本と非絶縁導体1本では、信号線数が少ないわりにケーブル全体径が大きくなりすぎるので、それぞれの導体束に含まれる絶縁導体及び非絶縁導体の合計の本数は3本以上が好ましい。
【0027】
図2は、絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が2:3〜4:1の多心ケーブルの導体の長手方向に垂直な断面を例示する図である。
図2(a)は絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が1:1のときの一例であり、
図2(b)は絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が2:1のときの一例であり、
図2(c)は絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が4:1のときの一例であり、
図2(d)は絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が2:3のときの一例である。
図2(a)〜2(d)において、破線は導体束の領域を概念的に示すものである。
【0028】
絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が1:1であるケーブルの導体部(以下、「コア」という)200は、第1導体束210〜第4導体束240を有する。第1導体束210の絶縁導体211〜第4導体束240の絶縁導体241のそれぞれは、第1導体束210の非絶縁導体212〜第4導体束240の非絶縁導体242の何れかと近接して配置される。
【0029】
絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が2:1であるコア300は、第1導体束310〜第4導体束340を有する。第1導体束310の絶縁導体311、312〜第4導体束340の絶縁導体341、342のそれぞれは、第1導体束310の非絶縁導体313〜第4導体束340の非絶縁導体343の何れかと近接して配置される。
【0030】
絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が4:1であるコア500は、第1導体束510〜第4導体束540を有する。導体部500の絶縁導体511〜514、521〜524、531〜534及び541〜544は、絶縁導体542を除き、第1導体束510の非絶縁導体515〜第4導体束540の非絶縁導体545の何れかと近接して配置される。絶縁導体542は、同じ第4導体束540の非絶縁導体545とは遠いが、異なる導体束となる第3導体束530の非絶縁導体535と近接している。そして、導体部500では、絶縁導体のそれぞれと非絶縁導体との間の距離の平均値は、非絶縁導体の口径の1.3倍以下となっている。なお、ここで用語「絶縁導体のそれぞれと非絶縁導体との間の距離の平均値」は、多心ケーブル1の長手方向に垂直な断面を複数ヶ所サンプリングし、その各断面における絶縁導体と非絶縁導体との関係における「導体束の各絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの最短距離を絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離で除した値」を複数ヶ所計測した計測値の平均値をいう(以下、同じ)。一例では、サンプリングされる断面の数は5であり、1つの断面で計測される「導体束の各絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの最短距離を絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離で除した値」の数は12(断面を放射状に12等分し、その等分された各スペースにおける任意の上記値を各1つずつ)である。
【0031】
絶縁導体及び非絶縁導体の本数の比が2:3であるコア600は、第1導体束610〜第4導体束640を有する。コア600の絶縁導体612、613、621、623、632、633、642及び644は、非絶縁導体611、614、615、622、624、625、631、634、635、641、643及び645の何れかと近接して配置される。そして、コア600では、絶縁導体のそれぞれと非絶縁導体との間の距離の平均値は、非絶縁導体の口径の1.3倍以下となっている。
【0032】
図1において、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40はそれぞれ、導体束の長手方向において単位長当たりT(1)、T(2)、T(3)、及びT(4)回の回数で左方向に撚られている。一例では、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40がまとめて撚られる撚りピッチL1は、60mmである。このときの第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の撚りピッチは、それぞれ、一例では4mm、6mm、7mm、9mmである。
【0033】
第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の絶縁導体はそれぞれ、銀メッキすず入り銅合金で形成された心材と、ポリテトラフルオロエチレン(PFA)で形成され、心材の周囲に配置される被覆層とを有する。第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の絶縁導体は、信号を伝送する信号線として機能する。第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の絶縁導体口径は互いに等しい。また、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の絶縁導体の心材の口径は互いに等しい。
【0034】
第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の非絶縁導体は、絶縁導体の心材と同様に、銀メッキすず入り銅合金で形成される。第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の非絶縁導体はそれぞれ、接地されドレイン線として機能する。第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の非絶縁導体の口径は互いに等しく且つ第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の絶縁導体の心材の口径よりも大きい。
【0035】
図3は第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40のそれぞれが他の導体束と撚られる前の側面図である。
図3(a)は第1導体束10の側面図であり、
図3(b)は第2導体束20の側面図であり、
図3(c)は第3導体束30の側面図であり、
図3(d)は第4導体束40の側面図である。
【0036】
第1導体束10は、第11絶縁導体11、第12絶縁導体12、第13絶縁導体13及び第1非絶縁導体14の順で左巻きに導体束の長手方向において単位長当たりT(1)回撚られることにより形成される。第2導体束20は、第21絶縁導体21、第22絶縁導体22、第23絶縁導体23及び第2非絶縁導体24の順で左巻きに導体束の長手方向において単位長当たりT(2)回撚られることにより形成される。第3導体束30は、第31絶縁導体31、第32絶縁導体32、第33絶縁導体33及び第3非絶縁導体34の順で左巻きに導体束の長手方向において単位長当たりT(3)回撚られることにより形成される。第4導体束40は、第41絶縁導体41、第42絶縁導体42、第43絶縁導体43及び第4非絶縁導体44の順で左巻きに導体束の長手方向において単位長当たりT(4)回撚られることにより形成される。
【0037】
第1導体束10において長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度AF(1)は、第1導体束10の単位長当たりの撚り回数T(1)と等しく、第2導体束20において長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度AF(2)は、第2導体束20の単位長当たりの撚り回数T(2)と等しい。また、第3導体束30において長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度AF(3)は、第3導体束30の単位長当たりの撚り回数T(3)と等しく、第4導体束40において長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度AF(4)は、第4導体束40の単位長当たりの撚り回数T(4)と等しい。
【0038】
一例では、第1導体束10の撚りピッチL(1)は4mmであり、第2導体束20の撚りピッチL(2)は6mmであり、第3導体束30の撚りピッチL(3)は7mmであり、第4導体束40の撚りピッチL(4)は9mmである。第1導体束10〜第4導体束40の単位長当たりの撚り回数T(1)〜T(4)のそれぞれは、第1導体束10〜第4導体束40の撚りピッチL(1)〜L(4)の逆数として規定される。すなわち、撚りピッチL(1)が4mmのときの第1導体束10の単位長当たりの撚り回数T(1)は250回/mであり、撚りピッチL(2)が6mmのときの第2導体束20の単位長当たりの撚り回数T(2)は166回/mである。また、撚りピッチL(3)が7mmのときの第3導体束30の単位長当たりの撚り回数T(3)は142回/mであり、撚りピッチL(4)が9mmのときの第4導体束40の単位長当たりの撚り回数T(4)は111回/mである。また、第1導体束10〜第4導体束40のそれぞれにおいて、導体束の長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度AF(1)〜AF(4)は、それぞれの単位長当たりの撚り回数T(1)〜T(4)と同一回数になる。ここで、長手方向に垂直な断面が同一面である状態とは、絶縁導体及び非絶縁導体との間の位置関係が同一であることに加えて、断面の位相が同一であることが必要である。第1導体束10〜第4導体束40のそれぞれは、導体束の長手方向に亘って同一の撚りピッチで絶縁導体及び非絶縁導体を撚っているため、絶縁導体及び非絶縁導体との間の位置関係は長手方向に亘って変化しない。しかしながら、第1導体束10〜第4導体束40のそれぞれでは、長手方向に垂直な断面が、撚りピッチを1周期として徐々に位相が変化する。そこで、ここでは、絶縁導体及び非絶縁導体との間の位置関係が同一であるものの、断面の位相が一致しない場合は、長手方向に垂直な断面が同一面であるとしない。
【0039】
図4は導体束が撚られた状態の長手方向の各断面において、同一断面が出現するまでの位相関係の経過を概念的に示す図である。
図4(a)〜4(i)のそれぞれにおいて、上段は第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40がまとめて撚られる前の状態を示し、下段は第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40がまとめて撚られた後の状態を示す。第1導体束10〜第4導体束40の撚りピッチL(1)〜L(4)はそれぞれ、例えば4mm、6mm、7mm及び9mmである。また、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40がまとめて撚られた導体群の長手方向における撚りピッチL1は、60mmである。
図4(a)は第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の位相が一致している状態を示す。
図4(b)〜4(i)のそれぞれは、
図4(a)に示す位置から30mm、45mm、60mm、100mm、200mm、220mm、240mm及び252mm離れた位置の状態を示す。
図4(a)〜4(i)のそれぞれにおいて、丸で囲まれた数字はそれぞれ導体束の番号に対応するとともに、丸で囲まれた数字およびY字状の記号(以下、記号「Y」という)の向きは、各導体束の断面の位相の変化に対応して変化させたものである。すなわち、第1導体束10は丸1で示され、第2導体束20は丸2で示され、第3導体束30は丸3で示され、第4導体束40は丸4で示される。ここで、丸1〜丸4のそれぞれは、円の内部にそれぞれ「1」〜「4」の数字が配置された表記を示す。また、
図4(a)〜4(i)のそれぞれにおいて、記号「Y」は断面における第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40のそれぞれの位相を示す。丸1〜丸4のそれぞれを上方に挟持して記号「Y」が直立しているときの位相は「0」であり、丸1〜丸4のそれぞれを右側に挟持して記号「Y」が右向きに90度倒れているときの位相は「π/2」である。また、丸1〜丸4のそれぞれを下方に挟持して記号「Y」が倒立しているときの位相は「π」であり、丸1〜丸4のそれぞれを左側に挟持して記号「Y」が左向きに90度倒れているときの位相は「3π/2」である。
【0040】
図4(a)〜4(i)の上段にそれぞれ示すように、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40のそれぞれは、撚りピッチL(1)〜L(4)が互いに異なるので、それぞれの断面に現れる位相が相違する。撚りピッチL(1)〜L(4)の最小公倍数に当たる長さである252mmになるまで、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の全てが同一の位相となる断面は現れない。
【0041】
図4(a)〜4(i)の下段にそれぞれ示すように、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40を撚りピッチL1で撚ったとき、それぞれの断面に現れる位相は、撚りピッチL1に応じて更に変化する。すなわち、撚りピッチL1で撚ったとき、撚りピッチL(1)〜L(4)及びL1の最小公倍数である1260mmになるまで、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の全てが同一の位相となる断面は現れない。
【0042】
前述した
図1に示すように、保護管50は、金属製(本実施携帯ではステンレス)のフレキシブルチューブで構成され、まとめて撚られた第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の外周面を不図示のEPTFEテープを介して覆うように配置される。シース60は、ポリエチレンで形成される保護被膜層であり、保護管50の外周に配置される。
【0043】
(実施形態に係る多心ケーブルの製造方法)
図5は多心ケーブル1の製造工程を示すフローチャートであり、
図6は第1導体束10〜第4導体束40のそれぞれを撚るとき、及び第1導体束10〜第4導体束40をまとめて撚るときに使用される撚り機を示す図である。また、
図7は、
図6に示す撚り機の動作状態を示す図である。
【0044】
まず、第1導体束10〜第4導体束40のそれぞれを撚る(S101)。次いで、S101において撚られた第1導体束10〜第4導体束40をまとめて撚って導体群を形成する(S102)。ここで導体群とは、n本の導体束の全体に対応する。
【0045】
撚り機80は、第1回転板81と、第2回転板82と、第3回転板83と、回転軸84と、絞り口85と、4つの巻き出し装置86(3つのみ図示)とを有する。第1回転板81、第2回転板82及び第3回転板83のそれぞれは、回転軸84の周囲に回転可能に配置される。第1回転板81は、一方の面に互いに90度ずれた位置に、4つの巻き出し装置86を回転可能に支持する。第2回転板82は、4つの第2ケーブル貫通口87が形成される。第3回転板83は、12個の第3ケーブル貫通口88が形成される。12個の第3ケーブル貫通口88のそれぞれは、第2ケーブル貫通口87よりも回転軸84に近い位置に形成される。4つの巻き出し装置86のそれぞれは、絶縁導体、非絶縁導体、又は絶縁導体及び非絶縁導体が撚られた導体束が巻き回される。4つの巻き出し装置86のそれぞれに巻き回された導体の先端部は、第2ケーブル貫通口87及び第3ケーブル貫通口88を介して絞り口85を貫通するように配置される。第1回転板81、第2回転板82及び第3回転板83を同一の所定の回転速度で回転させると共に、絞り口85を貫通するように配置された導体の先端部を所定の速度で水平方向に移動させることにより、所望のピッチで例えば4本の導体を撚ることができる。
【0046】
第1導体束10を撚るとき、4つの巻き出し装置86のそれぞれに第11絶縁導体11、第12絶縁導体12、第13絶縁導体13及び第1非絶縁導体14を巻き回し、巻き回した4本の導体の先端が絞り口85を貫通するように配置する。そして、撚りピッチL(1)が4mmになるように、第1回転板81、第2回転板82及び第3回転板83を所定の回転速度で回転させると共に、導体の先端部を所定の速度で水平方向に移動させる。また、第1導体束10〜第4導体束40をまとめて撚るとき、4つの巻き出し装置86のそれぞれに第1導体束10〜第4導体束40を巻き回し、巻き回した4本の導体束の先端が絞り口85を貫通するように配置する。そして、第1回転板81、第2回転板82及び第3回転板83を所定の回転速度で回転させると共に、導体束の先端部を所定の速度で水平方向に移動させる。
【0047】
次いで、まとめて撚られた第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の外周面に保護管50が形成される(S103)。一例では、保護管50は、まとめて撚られた第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の回りにEPTFEテープを介して導線を編むことによって形成される。そして、保護管50の外周面にシース60が形成される(S104)。一例では、シース60は、溶解したPVCを保護管50の外周面に押し出すことにより形成される。
【0048】
なお、
図5〜7を参照して説明した多心ケーブルの製造方法は、本発明に係るケーブルの製造方法の一例であり、他の製造方法によって、本発明に係るケーブルを製造してもよい。例えば、本発明に係るケーブルは、第1回転板81〜第3回転板83が回転する撚り機80の代わりに、送り出されたケーブルを受ける絞り口を回転させる撚り機を採用してもよい。
【0049】
(実施形態に係る多心ケーブルの作用効果)
実施形態に係る多心ケーブルは、互いに異なる撚りピッチで撚られた複数の導体束をまとめて更に撚ることにより、絶縁導体をランダムに配置することで、長手方向の周期性を低減して、遠端クロストークを低減できる。遠端クロストークは、信号線が長手方向に亘って平行に配列されて信号線間の容量性カップリングが変化しない状態が連続する場合に発生する。実施形態に係る多心ケーブルでは、絶縁導体をランダムに配置することにより、絶縁導体間の容量性カップリングを長手方向で変動させて遠端クロストークを低減させている。すなわち、実施形態に係る多心ケーブルでは、導体束は何れも被覆されていないので、導体束をまとめて撚るときに互いに干渉しながら撚られる。このため、実施形態に係る多心ケーブルの長手方向に垂直な断面は、導体束それぞれの撚りピッチ、及び導体束をまとめて撚るときの撚りピッチの最小公倍数に当たる長さの間は同一の形状とはならない。
【0050】
例えば、実施形態に係る多心ケーブルを超音波プローブケーブルとして使用する場合、周波数は数MHz〜数10MHz程度であり、ケーブル長は4〜5m程度である。実施形態に係る多心ケーブルをこのような条件で使用する場合、導体束それぞれの撚りピッチ、及び導体束をまとめて撚るときの撚りピッチの最小公倍数に当たる長さは、5〜10m程度とすればよい。しかしながら、導体束それぞれの撚りピッチ、及び導体束をまとめて撚るときの撚りピッチの最小公倍数に当たる長さは、100m以上であることが好ましい。導体束それぞれの撚りピッチ、及び導体束をまとめて撚るときの撚りピッチの最小公倍数に当たる長さを100m以上にすることにより、n本の導体束の全体で、長手方向に垂直な断面の形状が同一である頻度は、0.01回/mとすることができる。
【0051】
ここで、用語「長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度」は、後述するように、導体束それぞれの撚りピッチ、及び導体束をまとめて撚るときの撚りピッチに基づいて規定される。導体束のそれぞれの長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度は、導体束それぞれの撚りピッチの逆数として規定される。例えば、多心ケーブル1における第1導体束10の「長手方向に垂直な断面の形状が同一である頻度」は、第1導体束10の撚りピッチL(1)が4mmであるので、250回/mとなる。また、n本の導体束の全体で、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度は、導体束それぞれの撚りピッチ、及び導体束をまとめて撚るときの撚りピッチの最小公倍数に当たる長さの逆数として規定される。
【0052】
また、実施形態に係る多心ケーブルでは、導体束は何れも被覆されていないので、導体束に含まれる絶縁導体及び非絶縁導体は、導体束をまとめて撚るときの張力により、空隙を埋めるように近接して配置されることになる。導体束に含まれる絶縁導体及び非絶縁導体が近接して配置されることにより多心ケーブル内に形成される空隙の大きさが小さくなるので、実施形態に係る多心ケーブルの口径は小さくなる。
【0053】
また、実施形態に係る多心ケーブルでは、導体束のそれぞれは、少なくとも1本の絶縁導体と、少なくとも1本の非絶縁導体とを有する。導体束のそれぞれが絶縁導体及び非絶縁導体のそれぞれを少なくとも1本有することにより、複数の絶縁導体のそれぞれと複数の非絶縁導体のそれぞれとの間の最小の距離は、所定の長さよりも短くすることができる。実施形態に係る多心ケーブルでは、導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比が、2:3〜4:1の範囲であることが好ましい。導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比を2:3〜4:1の範囲にすることで、実施形態に係る多心ケーブルは、絶縁導体の静電容量のバラツキを小さくすることができる。実施形態に係る多心ケーブルは、絶縁導体の静電容量のバラツキを小さくすることにより、特性インピーダンスの不整合に起因するノイズ及び反射波の増加による伝送性能の低下を防止できる。
また、絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比が、2:3以上、1:1未満の範囲であり、絶縁導体の直径の平均値と非絶縁導体の直径の平均値の比が、1.2:1以上、4:1以下の範囲に設定することにより、絶縁導体とペアとなる非絶縁導体の本数が増えることにより、クロストークの低減効果を向上させることができるだけでなく、絶縁導体の直径の平均値と非絶縁導体の直径の平均値の比が、1:1よりも大きく4:1以下の範囲であるため、絶縁導体の直径の平均値と非絶縁導体の直径の平均値の比が1:1以下のものと比較して、すべての絶縁導体および非絶縁導体の全体の外径をより小さくすることができ、ケーブルの細径化を図ることができる。
【0054】
(実施形態に係る多心ケーブルの変形例)
多心ケーブル1は、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40のまとめて撚られた4本の導体束を有するが、実施形態に係る多心ケーブルは、複数の導体束を有していればよい。すなわち、実施形態に係る多心ケーブルは、まとめて撚られた2本又は3本の導体束を有してもよく、まとめて撚られた5本以上の導体束を有してもよい。また、実施形態に係る多心ケーブルでは、n本の導体束をまとめて撚った導体群を更に複数本まとめて撚って多心ケーブルのコアを形成してもよい。すなわち、実施形態に係る多心ケーブルは、3階層以上の階層に亘って撚られたケーブルとしてもよい。
【0055】
また、多心ケーブル1では、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40のそれぞれは、3本の絶縁導体と1本の非絶縁導体とを撚ることにより形成される。しかしながら、実施形態に係る多心ケーブルでは、複数の導体束のそれぞれは、少なくとも1本の絶縁導体と少なくとも1本の非絶縁導体とを有し且つ導体束のそれぞれにおける絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数の比が2:3〜4:1の範囲であればよい。また、実施形態に係る多心ケーブルでは、導体束に含まれる絶縁導体の本数及び非絶縁導体の本数は、導体束毎に相違してもよい。
【0056】
また、多心ケーブル1では、第1導体束10〜第4導体束40のそれぞれの撚りピッチL(1)〜L(4)は4mm、6mm、7mm及び9mmであり、第1導体束10〜第4導体束40をまとめて撚ったときの撚りピッチL1は60mmである。しかしながら、実施形態に係る多心ケーブルでは、n本の導体束の撚りピッチL(N)(N=1〜n)の少なくとも1本が他と異なればよい。一方、n本の導体束の撚りピッチL(N)(N=1〜n)及びn本の導体束をまとめて撚ったときの撚りピッチL1の最小公倍数がより大きくなるようにL(N)及びL1規定すると、より長い距離に亘って絶縁導体をランダムに配置することができる。また、実施形態に係る多心ケーブルでは、n本の導体束の撚りピッチL(N)(N=1〜n)の何れかは、一定の周期を有さずに、長さ方向に亘って変動するように形成されてもよい。
【0057】
また、多心ケーブル1では、柔軟性および耐久性の観点から、導体束それぞれの撚り方向、及び導体束をまとめて撚るときの撚り方向は同一であるが、実施形態に係る多心ケーブルでは、導体束のいくつかの撚り方向を他の導体束の撚り方向及び導体束をまとめて撚る撚り方向と反対にしてもよい。また、実施形態に係る多心ケーブルでは、導体束のいくつかは、撚っていなくてもよい。導体束のいくつかの撚り方向を他の導体束の撚り方向及び導体束をまとめて撚る撚り方向と反対にする場合、反対方向に撚られる導体束の撚りピッチは、他の導体束の撚りピッチと比べて非常に大きなピッチとする。反対方向に撚られる導体束の撚りピッチを非常に大きなピッチとすることにより、導体束をまとめて撚るときに、反対方向に撚られた導体束は、他の導体束と互いに干渉しながら撚られることになる。これにより、反対方向に撚られた導体束の絶縁導体は、他の導体束の絶縁導体と同様に、絶縁導体間の距離の長手方向の周期性を低減することができる。
【0058】
また、多心ケーブル1では、第1導体束10、第2導体束20、第3導体束30及び第4導体束40の非絶縁導体の口径は絶縁導体の心材の口径よりも大きいが、非絶縁導体の口径は絶縁導体の心材の口径よりも小さくてもよい。しかしながら、実施形態に係る多心ケーブルでは、非絶縁導体の合成抵抗が、絶縁導体の合成抵抗よりも大きいことが好ましい。ここで、非絶縁導体の合成抵抗は、所定の長さの多心ケーブルに含まれる非絶縁導体を並列接続したときの抵抗値であり、絶縁導体の合成抵抗は、非絶縁導体の合成抵抗を測定したケーブルと同一の多心ケーブルの絶縁導体を並列接続したときの抵抗値である。
【0059】
(「長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度」の決定方法)
図8は「長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度」を決定する処理を示すフローチャートであり、
図9、10(a)及び10(b)のそれぞれは「長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度」を決定する処理を説明する図である。
図10(a)において、同一の導体束には同一のハッチングがされている。
図10(b)は、
図10(a)に矢印Aで示される円で囲まれた部分の拡大図である。
【0060】
図8に示すように、まずオペレータは、「長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度」を決定するために使用されるケーブルを準備し(S201)、ケーブルの少なくとも一部が所望の距離に亘って水平方向に延伸するようにケーブルを固定する(S202)。次いで、オペレータは、ケーブルのシースを除去した(S203)後に、外部シールドを除去する(S204)ことにより、ケーブルのコアを取り出す(S205)。ここでは、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度」を決定するために使用されるコアは、3階層に亘って撚られたものについて説明する。すなわち、
図9に示すように、3階層に亘って撚られて形成されたコアは、それぞれが小撚りピッチL(1)又はL(2)で絶縁導体及び非絶縁導体を小撚りされた4つの導体束を、中撚りピッチL1で中撚りしてまとめた4つの導体群を更に大撚りピッチL0で大撚りして形成される。小撚りして導体束を形成するとき、中撚りして導体群を形成するとき、及び大撚りしてコアを形成するときのいずれも、
図6に示す撚り機80が使用される。
【0061】
次いで、オペレータは、4本の導体群を大撚りしたときの大撚りピッチL0を測定する(S206)。大撚りピッチL0は、S205で取り出されたコアの長手方向に同一の導体群が出現する間隔を測定することによって、測定する。なお、大撚りピッチL0は、コアの位置毎に長さが変化するおそれがあるので、複数の導体群について複数の位置で、同一の導体群が出現する間隔を測定し、測定値の平均値を大撚りピッチL0とすることが好ましい。
【0062】
次いで、オペレータは、4本の導体束を中撚りしたときの中撚りピッチL1を測定する(S207)。中撚りピッチL1は、中撚りの導体群のそれぞれが大撚りされた導体群が巻回する方向に同一の導体束が出現する間隔を測定することによって、測定する。なお、中撚りピッチL1は、コアの位置毎に長さが変化するおそれがあるので、導体群毎に複数の位置で、同一の導体束が出現する間隔を測定し、測定値の平均値を中撚りピッチL1とすることが好ましい。
【0063】
次いで、オペレータは、4本の導体を小撚りしたときの小撚りピッチL(1)及びL(2)を測定する(S208)。小撚りピッチL(1)及びL(2)はそれぞれ、導体束の長手方向に、同一の絶縁導体又は非絶縁導体が出現する間隔を測定することによって、測定する。なお、小撚りピッチL(1)及びL(2)は、導体の位置毎に長さが変化するおそれがあるので、導体束毎に複数の位置で、同一の絶縁導体又は非絶縁導体が出現する間隔を測定し、測定値の平均値を小撚りピッチL(1)及びL(2)とすることが好ましい。
【0064】
次いで、オペレータは、それぞれの導体束について、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度を決定する(S209)。オペレータは、S208で測定された小撚りピッチL(1)及びL(2)の逆数をそれぞれ、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度として決定する。S208で小撚りピッチがL(1)と測定された導体束の長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度は、小撚りピッチL(1)の逆数である。S208で小撚りピッチがL(2)と測定された導体束の長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度は、小撚りピッチL(2)の逆数である。
【0065】
そして、オペレータは、4本の導体束で形成される導体群の全体で、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度を決定する(S210)。オペレータは、S207で測定された中撚ピッチL1、並びにS208で測定された小撚りピッチL(1)及びL(2)の最小公倍数の逆数を、4本の導体の全体で、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度として決定する。
【0066】
(実施例1)
次に、比較例、第1実施例、第2実施例、第3実施例、第4実施例、第5実施例及び第6実施例、及び第7実施例の8本のケーブルのクロストークを比較する。これらのコアのそれぞれは、4本の導体束、4本の導体群、及びコアの3階層で形成される。それらのケーブルのそれぞれにおいて、4本の導体束のそれぞれは、比較例および第1実施例では4本の絶縁導体と1本の非絶縁導体を小撚りして形成され、第2実施例では、4本の絶縁導体と2本の非絶縁導体を小撚りして形成され、第3及び第6実施例では、2本の絶縁導体と3本の非絶縁導体を小撚りして形成され、第4、第5及び第7実施例では、4本の絶縁導体と6本の非絶縁導体を小撚りして形成される。
また、4本の導体群のそれぞれは、4本の導体束を中撚りして形成される。そして、3階層に亘って撚られたケーブルのそれぞれのコアは、4本の導体群を大撚りして形成される。比較例、第1実施例、第2実施例及び第3実施例の3本のケーブルの絶縁導体の心材のサイズは42AWG(7本撚り、外径0.075mm)で、かつ0.0225mmの肉厚で絶縁被覆されており、非絶縁導体のサイズは38AWG(外径0.12mm)である。第4及び第6実施例では、絶縁導体の心材のサイズは42AWG(7本撚り、外径0.075mm)で、かつ0.0225mmの肉厚で絶縁被覆されており、非絶縁導体のサイズは42AWG(外径0.075mm)である。第5実施例では、絶縁導体の心材のサイズは44AWG(7本撚り、外径0.06mm)で、かつ0.03mmの肉厚で絶縁被覆されており、非絶縁導体のサイズは44AWG(外径0.06mm)である。第7実施例では、絶縁導体の心材のサイズは42AWG(7本撚り、外径0.075mm)で、かつ0.11mmの肉厚で絶縁被覆されており、非絶縁導体のサイズは42AWG(外径0.075mm)である。
比較例及び第1実施例では、導体束のそれぞれは、4本の絶縁導体と、1本の非絶縁導体とを有し、絶縁導体のそれぞれと非絶縁導体との間の距離の平均値は、非絶縁導体の口径の1.3倍以下である。すなわち、比較例及び第1実施例では、各絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの最短距離を絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離で除した値の平均値は、1〜1.3の範囲である。第2実施例では、導体束のそれぞれは、4本の絶縁導体と、2本の非絶縁導体とを有し、絶縁導体のそれぞれと非絶縁導体との間の距離の平均値は、非絶縁導体の口径の1.3倍以下である。第3及び第6実施例では、導体束のそれぞれは、2本の絶縁導体と、3本の非絶縁導体とを有し、絶縁導体のそれぞれと非絶縁導体との間の距離の平均値は、非絶縁導体の口径の1.3倍以下である。第4、第5および第7実施例では、導体束のそれぞれは、4本の絶縁導体と、6本の非絶縁導体とを有し、絶縁導体のそれぞれと非絶縁導体との間の距離の平均値は、非絶縁導体の口径の1.3倍以下である。すなわち、第2、第3、第4、第5、第6、第7実施例においても、各絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの最短距離を絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離で除した値の平均値は、1〜1.3の範囲である。表1〜5に、比較例、第1実施例、第2実施例、第3実施例、第4実施例及び第5実施例の撚りピッチを示す。表1〜5において、Sは絶縁導体の数を示し、Gは非絶縁導体の数を示す。
【0072】
比較例では、4本の導体束はそれぞれ10mmの小撚りピッチで形成され、4本の導体群は25mmの中撚りピッチで形成され、コアは80mmの大撚りピッチで形成される。このことから、比較例ではコアの長手方向において、上記のピッチの最小公倍数である400mm付近で、断面に同一面が出現する。
【0073】
第1実施例では、表2に示すように、4本の導体束のそれぞれは小撚りピッチL(1)〜L(4)のそれぞれ異なり、これらの最小公倍数に当たる長さが長くなり、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度が小さくなるような小撚りピッチで形成される。このような構成では、コアの長手方向において、表2に記載のピッチの最小公倍数となる10の17乗を超えた値(mm)において、断面に同一面が出現する。このように、第1実施例では、小撚りピッチL(1)〜L(4)及び中撚りピッチL1の最小公倍数が比較例と比べても大きくなり、4本の導体の全体で、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度が小さくなるような中撚りピッチで形成される。また、第1実施例では、コアは、中撚りピッチのそれぞれよりも更に大きな素数の大撚りピッチで形成されている。
【0074】
第2実施例では、表3に示すように、4本の導体束のそれぞれが、第1実施例と同一の小撚りピッチで形成されている。また、第2実施例では、第1実施例のそれぞれの中撚りピッチL1よりも大きな素数となる中撚りピッチで撚ることにより、4本の導体の全体で、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度が小さくなるよう形成されている。また、第2実施例では、コアは、第1実施例の大撚りピッチよりも更に大きな大撚りピッチで形成されている。
【0075】
第3〜第7実施例でも、表4及び表5に示すように、4本の導体束のそれぞれが、第1実施例と同一の小撚りピッチで形成されている。また、第3〜第7実施例では、第1実施例のそれぞれの中撚りピッチL1よりも大きな素数となる中撚りピッチで撚ることにより、4本の導体の全体で、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度が小さくなるよう形成されている。また、第3〜第7実施例では、コアは、第1実施例の大撚りピッチよりも更に大きな大撚りピッチで形成されている。
【0076】
図11は、比較例、第1実施例〜第7の8本のケーブルのクロストークの周波数特性を示す図である。
図11において、横軸は信号の周波数〔MHz〕を示し、縦軸はクロストークの大きさ〔dB〕を示す。また、矢印Aが指すグラフは比較例の特性を示し、矢印Bが指すグラフは第1実施例の特性を示し、矢印Cが指すグラフは第2実施例の特性を示し、矢印Dが指すグラフは第3実施例の特性を示し、矢印Eが指すグラフは第4実施例の特性を示し、矢印Fが指すグラフは第5実施例の特性を示し、矢印Gが指すグラフは第6実施例の特性を示し、矢印Hが指すグラフは第7実施例の特性を示す。
ここで、第1〜第7実施例における、それぞれの絶縁導体および比絶縁導体をすべて撚り合わせた状態での導体全体の外径は、第1実施例では1.95mm、第2実施例では、2.1mm、第3実施例では1.6mm、第4実施例では2.1mm、第5実施例では1.8mm、第6実施例では1.5mm、第7実施例では1.6mmである。このように、導体全体の本数が第2実施例よりも多い第4及び第5実施例であっても、絶縁導体の直径の平均値と非絶縁導体の直径の平均値の比を、第4実施例では8:5、第5実施例では2:1、第7実施例では約4:1に設定することで、第1及び第2実施例と比較して、絶縁導体が同じ本数で、かつ非絶縁導体の本数が多い状態であっても、すべての絶縁導体および非絶縁導体の全体の外径の大きさを第1および第2実施例以下にするすることができ、ケーブルの細径化が図られるとともに、クロストークの低減効果が図られることが確認された。
【0077】
同図が示すように、クロストークは第3実施例(D)が一番低く、次いで、第6実施例(G)、第4実施例(E)、第7実施例(H)、第5実施例(F)、第2実施例(C)、第1実施例(B)そして比較例(A)の順で大きくなる。第1〜第5実施例のケーブルは、20〔MHz〕程度の帯域まではいずれも、クロストークが20〔dB〕を下回っている。このように、小撚りピッチ及び中撚りピッチの間の最小公倍数に当たる長さを長くして、導体及び導体束における、長手方向に垂直な断面に同一面が出現する頻度を小さくすることにより、クロストークを小さくすることができる。
【0078】
なお、比較例、第1実施例、第2実施例、第3実施例、第4実施例及び第5実施例の6本のケーブルのそれぞれにおいて、小撚り、中撚り及び大撚りの順で撚りピッチが大きくなるように形成されているが、実施形態に係るケーブルでは、階層を上げるごとに撚りピッチを大きくしなくてもよい。実施形態に係るケーブルでは、例えば、小撚りの撚りピッチの1つを中撚りの撚りピッチよりも大きくしてもよい。
【0079】
(実施例2)
次に、非絶縁導体の本数と、絶縁導体の本数との比率を変化させたときのクロストークを比較する。ここでは、非絶縁導体の本数と、絶縁導体の本数との比率は、0:16、1:16、1:8(2:16)、1:4(4:16)、1:3(6:18)、1:2(8:16)及び1:1(16:16)と変化させる。なお、上記のかっこ内の数字は、絶縁体を16本に統一した場合の非絶縁導体の本数と絶縁導体の本数との比率を表したものである。ここで、絶縁導体の心材のサイズは42AWGであり、非絶縁導体のサイズは38AWGである。
【0080】
図12は、信号の周波数が20〔MHz〕のときに、ケーブルの含まれる絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数との比率を変化させたときのクロストークの変化を示す図である。
図12において、横軸は絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数との比率を示し、縦軸はクロストークの大きさ〔dB〕を示す。
【0081】
ケーブルの含まれる絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数との比率が0:16のとき、クロストークは−10〔dB〕程度になり、ケーブルの含まれる絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数との比率が1:4のとき、クロストークは−20〔dB〕程度になる。また、ケーブルの含まれる絶縁導体の本数と非絶縁導体の本数との比率が1:1のとき、クロストークは−35〔dB〕程度になる。
【0082】
図13(a)はクロストークが−20〔dB〕よりも小さいときの信号状態を示し、
図13(b)はクロストークが−20〔dB〕よりも大きいときの信号状態を示す。
【0083】
図13(a)に示すようにクロストークが−20〔dB〕よりも大きいとき、信号の帯域幅が広くなり、良好な信号特性を得ることができない。一方、
図13(b)に示すようにクロストークが−20〔dB〕よりも小さいとき、信号の帯域幅が狭くなり、良好な信号特性を得ることができる。したがって、前述した
図11における第1および第2実施例が示すように、20〔MHz〕までは、良好な信号特性を得ることが確認された。
【0084】
(実施例3)
次に、絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの距離を、絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離で除した値を変化させたときの特性インピーダンス及び損失を比較する。表6は、絶縁導体の中心から近接する非絶縁導体の表面までの距離(L)を、絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離(l)で除した値を変化させたときの特性インピーダンス(Zo)及び損失(ロス)の変化を示す。ここで、(L/l)が1のときは、非絶縁導体と絶縁導体とが接していることを示し、(L/l)が2のときは、非絶縁導体と絶縁導体との間の距離が、絶縁導体の中心から絶縁導体の最外面までの距離の2倍であることを示す。
【0086】
(L/l)が1のときに0%であった損失は、(L/l)が1.3のときに10%になる。多心ケーブルを超音波プローブケーブル等として使用する場合、損失が10%を超えると、良好な伝送性能が得られないと考えられる。
【0087】
以下に示す、表6は、絶縁導体及び非絶縁導体の心材の材料として銀メッキすず入り銅合金を使用したときの絶縁導体及び非絶縁導体のそれぞれの合成抵抗を示す。ここで、絶縁導体及び非絶縁導体の合成抵抗のそれぞれは、ケーブルに含まれる絶縁導体及び非絶縁導体をそれぞれ並列接続したときの単位長さ当たりの抵抗値を示す。例えば、非絶縁導体の本数と絶縁導体の本数との比率が1:16のとき、非絶縁導体の合成抵抗は1本の非絶縁導体の単位長さ当たりの抵抗値を示し、絶縁導体の合成抵抗は16本の絶縁導体を並列接続したときの単位長さ当たりの抵抗値を示す。
【0089】
次に、本実施形態の多心ケーブルに保護管の有無に分け、それぞれのケーブルに側圧破断試験を行った際の結果を示す。ここで、側圧破断試験は、検査台の上にケーブルを載置し、その上から、直径150mmの加圧具を押し当て、導体が断線するまでの最大荷重を計測したものである。これによれば、保護管50があるものは最大荷重が2856Kgfであるのに対し、保護管50がないものは1085Kgfであり、保護管を設けることにより、ケーブルの径方向からの衝撃に対する耐久性が263%以上も向上するため、超音波プローブケーブルとしての使用状況下の範囲が屋内/屋外または固定/移動の状況下において広く安全に使用することができ、汎用性を向上させることができる。