【実施例】
【0056】
以下の実施例において単に「セサミノール」という場合、糖鎖を有していないアグリコンを指す。
【0057】
<乳酸菌株>
後述する実験1〜3では乳酸菌株として「DNBL1826株」、「DNBL1832株」、「DNBL1829株」、「DNBL1830株」、「DNBL1831株」、「A221株」を使用した。
【0058】
DNBL1826株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・パラカゼイに分類されている。DNBL1826株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号292−0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託され、受託番号:NITE
P−02225が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
【0059】
DNBL1832株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・パラカゼイに分類されている。DNBL1832株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02229が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
【0060】
DNBL1829株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・プランタラムに分類されている。DNBL1829株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02226が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
【0061】
DNBL1830株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・ペントーサスに分類されている。DNBL1830株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02227が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
【0062】
DNBL1831株は、本発明者らが発酵食品から単離した乳酸菌であり、16s rDNA配列解析に基づきラクトバシルス・プランタラムに分類されている。DNBL1831株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号:NITE P−02228が付与されている(受託日:平成28年(2016年)3月23日)。
【0063】
A221株は、本出願人による特開2015−156832号公報に開示されているラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株を指し、ラクトバチルス属に属する。A221株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託され、受託番号:FERM BP−10123が付与されている(受託日:平成15年(2003年)8月11日、受託番号:FERM BP−10123)。
【0064】
<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>
これらの乳酸菌株のペレット,あるいは懸濁液を次の手順で調製した。
【0065】
<実験1>及び<実験5>〜<実験8>においては先ず、各菌株を予めMRSプレートにストリークして得られたコロニーを一白金耳分釣菌し、15ml遠沈管(IWAKI社製)へ分注した一般乳酸菌培地(日水)4mlへ植菌した。37℃にて静置培養し3日後、3500rpmにて遠心し、培地を破棄した後、滅菌精製水2mlにて洗浄を行った。よく懸濁して菌株懸濁液とし、1.5mlマイクロチューブ(エッペンドルフ社製)へ500μlずつ分注し、再度3500rpmにて遠心した。異なる菌株の混合ペレットの調製では各菌株懸濁液500μlを1.5mlマイクロチューブへ混合する形で分注し、遠心を行った。上清を破棄し、得られた乳酸菌株のペレットを試験に供した。
【0066】
<実験2>においては実験1と同様に、プレートよりコロニー一白金耳分釣菌し、一般乳酸菌培地4mlへ植菌した。37℃にて3日間静置培養を行い、その後1mlを1.5mlマイクロチューブへ取り、3500rpmにて遠心を行った。培地を破棄した後、滅菌精製水1mlへ菌体ペレットを懸濁し、洗浄を行った。再び3500rpmにて遠心し、上清を捨てた後、再度滅菌精製水1mlに懸濁し、当該乳酸菌懸濁液を試験に供した。
【0067】
<実験3>及び<実験4>においては先の実験1及び2と同様にプレートよりコロニー一白金耳分釣菌し、一般乳酸菌培地4mlへと植菌した。37℃にて3日間静置培養を行い、その後、45mlの一般乳酸菌培地へ全量を投入した。引き続き37℃にて3日間静置培養を実施し、その後14mlを15ml遠沈管へ取った。3500rpmにて遠心し、培地を捨て、滅菌精製水10mlで洗浄を行った。その後、再度3500rpmの遠心に供して沈殿物として菌体ペレットを得た。上清を破棄し滅菌精製水10mlに再懸濁し、試験へ供した。
【0068】
<試薬>
以下の試験の説明ではセサミノール関連物質を以下の略号で表す場合がある。
SMN:セサミノール
SEM:セサミン
STG:セサミノールトリグルコシド
SDG:セサミノールジグルコシド
β1,2 SDG:β1,2結合により結合した糖鎖を有するSDG
β1,6 SDG:β1,6結合により結合した糖鎖を有するSDG
【0069】
以下の試験では、それぞれの標準品として以下の市販されている試薬を用いた。
SMN標準品:(+)Sesaminol(長良サイエンス社製:製品番号NS182102)
SEM標準品:(+)Sesamin(長良サイエンス社製:製品番号NS180103)
STG標準品:Sesaminol Triglucoside(長良サイエンス社製:製品番号NS185102)
β1,2 SDG標準品:Sesaminol(1→2)Diglucoside(長良サイエンス社製:製品番号NS185201)
β1,6 SDG標準品:Sesaminol(1→6)Diglucoside(長良サイエンス社製:製品番号NS185301)
【0070】
<実験1:セサミノールの生成試験>
市販のすりゴマ(白)、又は、市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その熱水抽出物を
基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
使用した乳酸菌株は結果の欄に示す通りである。
【0071】
(実験1/手順)
原料10gと精製水100mlとを300ml三角フラスコ容器に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後の懸濁液をNo.2ろ紙(アドバンテック社製)でろ過し、ろ液を再滅菌した。当該再滅菌して得られたろ液を熱水抽出液として、使用した。
【0072】
その後、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で述べた方法で1.5mlマイクロチューブ内に用意した乳酸菌ペレットに上記熱水抽出液を1mLずつ加え、懸濁した。
【0073】
撹拌せず静置したまま37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。
ネガティブコントロールとして、前記原料の熱水抽出液を、乳酸菌を添加しない以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
【0074】
発酵処理の第2日(下記結果1の場合)、第5日(下記結果2の場合)、又は第4日(下記結果3の場合)に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。比較のために、セサミノール標準品の水溶液と、乳酸菌未処理の試験区のサンプルについても同様に薄層クロマトグラフィーにより展開した。薄層クロマトグラフィーの展開は、展開溶媒として酢酸エチル:メタノール:水をそれぞれ14:5:4の比率で混合したものを用いた。展開後の発色液としては硫酸10%(v/v)水溶液を用い、噴霧して加熱することで検出した。
【0075】
発酵処理の第7日(下記結果1、3の場合)又は第5日(下記結果2の場合)に、前記各マイクロチューブからの乳酸菌懸濁液とエタノールとを、エタノール濃度が50%(v/v)となるように混合した。その後遠心分離して上清液を0.45μmフィルター(アドバンテック社製)に通して得たサンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC(島津製作所社製)では分離カラムにμBondasphere(I.D. 150×3.9mm、C18 5μm;ウォーターズ社製)を用いた逆相系
を使用し、移動相としてアセトニトリル及び2%酢酸を用いたグラジエント条件下で分析を行った。カラムオーブンを30℃に設定したまま5%アセトニトリル溶液から開始し、0分から10分までに20%まで、さらに10分から25分までに、80%まで濃度を上げ、その後100%アセトニトリルによる洗浄工程を経る条件を用いた。なお流速1mL/分で290nmでの検出を行った。また、サンプル注入量は20μlとした。
【0076】
(実験1/結果1)
乳酸菌として
DNBL1826株のみ、
DNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1830株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1832株のみ、
DNBL1832株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1832株とDNBL1830株との組み合わせ、又は
DNBL1832株とDNBL1831株との組み合わせ、
を用い、基質として市販のすりゴマの熱水抽出物、又は、市販のゴマ圧搾粕の熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第2日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図1、2に、
発酵処理第7日のHPLCの結果を下記表1、2に示す。
【0077】
図1A及び
図2Aに示される通りDNBL1826株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1826株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
【0078】
同様に、
図1B及び
図2Bに示される通りDNBL1832株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1832株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1、2においてNDはNot Detected(検出されず)を意味する。他の表においても同様である。
各成分の原料粉末100gあたりの含有量は、抽出効率が100%であると仮定して算出している。他の実験においても同様である。
【0082】
DNBL1826株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1826株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
【0083】
同様に、DNBL1832株には、どちらの原料を用いた場合にもセサミノールを生産する能力が僅かに認められた。DNBL1832株にDNBL1829〜DNBL1831株のいずれかを併用した場合に、セサミノールの生産が著しく促進された。
【0084】
(実験1/結果2)
乳酸菌として
DNBL1826株とA221株との組み合わせ、又は
DNBL1832株とA221株との組み合わせ
を用い、基質として市販のすりゴマの熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第5日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図3に、発酵処理第5日のHPLCのチャートを
図4f、gに、発酵処理第5日のHPLCの分析結果を下記の表3にそれぞれ示す。
【0085】
なお、
図4aはSTGの標準品、
図4bはβ1,2SDGの標準品、
図4cはβ1,6SDGの標準品、
図4dはSMNの標準品の、同条件によるHPLCでの保持時間を示すチャートである。
図4eは乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを示し、
図4fはDNBL1826株とA221株とを併用した試験区のHPCLチャートを示し、
図4gはDNBL1832株とA221株とを併用した試験区のHPCLチャートを示す。
【0086】
図3及び
図4f、gに示される通りDNBL1826株及びDNBL1832株はどちらもA221株を併用したとき、基質としてすりゴマ熱水抽出物を用いた場合にセサミノールが多く生成された。また、セサミノールの生成に伴って、セサミノールトリグルコシ
ドが減少した。
【0087】
【表3】
【0088】
DNBL1826株及びDNBL1832株はどちらもA221株を併用したとき、基質としてすりゴマ熱水抽出物を用いた場合にセサミノールが多く生成されたことは表3の分析結果によっても示される。
【0089】
(実験1/結果3)
乳酸菌として
DNBL1832株のみ、又は
DNBL1832株とA221株との組み合わせ
を用い、基質として市販のゴマ圧搾粕の熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第4日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図5に、発酵処理第7日のHPLCの分析結果を下記の表4にそれぞれ示す。
図5に示される通りDNBL1832株は単独でも少量のセサミノールを生成することができ、A221株を併用したときにセサミノールの生産能が顕著に高い。
【0090】
【表4】
【0091】
DNBL1832株はA221株と併用したとき、基質としてゴマ圧搾粕熱水抽出物を用いた場合にセサミノールが多く生成されたことは表4の分析結果によっても示される。
【0092】
<実験2:セサミノール含有組成物製造例1>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その懸濁液を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノール含有組成物の製造を試みた。
使用した乳酸菌株は結果の欄に示す通りである。
【0093】
(実験2/手順)
後述する試験区ごとに、原料1gと精製水20mLとを50ml遠沈管に入れて懸濁液を調製し、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
【0094】
オートクレーブ処理後の懸濁液を含む前記各容器に、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で記載した方法で予め調整した乳酸菌懸濁液を500μl加え、よく混合した。2種類の乳酸菌を併用する場合はそれぞれ別に用意した乳酸菌懸濁液を500μlずつ同一の50ml遠沈管に加え、よく混合した。
【0095】
37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。培養開始後、3日に一回手で振り、発酵液を混和する処置を行った以外は、撹拌せず静置したまま発酵を行った。
【0096】
ネガティブコントロールとして、前記原料の懸濁液を、乳酸菌懸濁液の代わりに滅菌精製水を添加した以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
【0097】
発酵処理の第7日に、前記容器中の乳酸菌懸濁液に等量(20ml)のエタノールを、エタノール濃度が50%(v/v)となるように混合し、遠心分離した。上清液を0.45μmのフィルターへ通して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC分析は<実験1>と同じ条件を適用した。
【0098】
(実験2/結果)
乳酸菌として
DNBL1826株のみ、
DNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1832株のみ、
DNBL1832株とDNBL1829株との組み合わせ、又は
DNBL1832株とDNBL1831株との組み合わせ
を用い、基質として市販のすりゴマの懸濁液を用いた試験における発酵処理第7日のHPLCの分析結果を下記の表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
DNBL1826株及びDNBL1832株はどちらもDNBL1829株又はDNBL1831株と併用したとき、基質としてすりゴマ懸濁液を用いた場合のセサミノールの生産能が高かった。
また、セサミン(SEM)の量は乳酸菌発酵によっては変動しなかった。
【0101】
今回の試験では、DNBL1826株又はDNBL1832株を単独で用いた場合の発酵生成物中ではセサミノール:セサミンの重量比は1:2.84〜1:26.5であった。一方、DNBL1829株又はDNBL1831株と併用した場合の発酵生成物中ではセサミノール:セサミンの重量比は1:1.45〜1:1.67であった。
【0102】
図6Aには乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを、
図6BにはDNBL1826株のみを用いた試験区のHPLCチャートを、
図6CにはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。
図6Bで示される通りDNBL1826株は単独でもセサミノールを生産する能力を有していた。一方、
図6Cに示される通り、DNBL1826株とDNBL1829株を併用した場合にセサミノールの生産能が著しく向上した。乳酸菌による発酵はセサミン量にほとんど影響を与えず、発酵生成物中ではセサミノールとセサミンとは共存した。
【0103】
<実験3:セサミノール含有組成物製造例2>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その懸濁液を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノール含有組成物の製造を試みた。
乳酸菌株としてDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた。
【0104】
(実験3/手順)
原料20gと精製水100mLとを300mlの三角フラスコに入れて懸濁液を調製し、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
【0105】
オートクレーブ処理後の懸濁液を含む前記各容器に、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で記載した通りの方法で予め用意したDNBL1826株の乳酸菌懸濁液とDNBL1829株の乳酸菌懸濁液をそれぞれ5ml添加した。
【0106】
37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。培養開始後、3日に一回手で振り、発酵液を混和する処置を行った以外は、撹拌せず静置したまま発酵を行った。
【0107】
ネガティブコントロールとして、前記原料の懸濁液を、乳酸菌懸濁液の代わりに滅菌精製水を添加した以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
発酵処理の第7日に、前記容器中の乳酸菌懸濁液をオートクレーブ処理により滅菌し、凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を得た。
【0108】
前記凍結乾燥組成物250mgを秤とり、99.5%エタノール5mLにより2日間抽出した後、遠心分離して上清液を取り、0.45μmのフィルターを通して得た試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC分析は<実験1>と同じ条件を適用した。
【0109】
(実験3/結果)
DNBL1826株及びDNBL1829株により発酵させた試験区で得られた凍結乾燥組成物と、乳酸菌未処理の試験区で得られた凍結乾燥組成物のHPLCの分析結果を下記の表6に示す。
【0110】
【表6】
【0111】
図7Aには乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを、
図7BにはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。DNBL1826株とDNBL1829株を併用した場合に多量のセサミノールが生成された。乳酸菌による発酵はセサミン量にほとんど影響を与えず、発酵生成物中ではセサミノールとセサミンとは共存した。
なお、99.5%エタノールではSTGは効率良く抽出されない。
【0112】
<実験4:セサミノール含有組成物製造例3>
市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その懸濁液を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノール含有組成物の製造を試みた。
乳酸菌株としてDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた。
【0113】
(実験4/手順)
原料20gと精製水100mLとを300mlの三角フラスコに入れて懸濁液を調製し、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
【0114】
オートクレーブ処理後の懸濁液を含む前記各容器に、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で記載した通りの方法で予め用意したDNBL1826株の乳酸菌懸濁液とDNBL1829株の乳酸菌懸濁液をそれぞれ5ml添加した。
【0115】
37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第1日とし、第7日まで発酵を続けた。培養開始後、3日に一回手で振り、発酵液を混和する処置を行った以外は、撹拌せず静置したまま発酵を行った。
【0116】
ネガティブコントロールとして、前記原料の懸濁液を、乳酸菌懸濁液の代わりに滅菌精製水を添加した以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
【0117】
発酵処理の第7日に、前記容器中の乳酸菌懸濁液をオートクレーブ処理により滅菌し、凍結乾燥して、凍結乾燥組成物を得た。
【0118】
前記組成物250mgを秤とり、99.5%エタノール5mLにより2日間抽出した後、遠心分離して上清液を取り、0.45μmのフィルターを通して得た試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLC分析は<実験1>と同じ条件を適用した。
【0119】
(実験4/結果)
DNBL1826株及びDNBL1829株により発酵させた試験区で得られた凍結乾燥組成物と、乳酸菌未処理の試験区で得られた凍結乾燥組成物のHPLCの分析結果を下記の表7に示す。
【0120】
【表7】
【0121】
図8Aには乳酸菌未処理の試験区のHPLCチャートを、
図8BにはDNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせを用いた試験区のHPLCチャートを示す。DNBL1826株とDNBL1829株を併用した場合にセサミノールが生産された。乳酸菌による発酵はセサミン量にほとんど影響を与えず、発酵生成物中ではセサミノールとセサミンとは共存した。
なお、99.5%エタノールではSTGは効率良く抽出されない。
【0122】
<実験5:すりゴマ熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
使用した乳酸菌株は結果の欄に示す通りである。
【0123】
(実験5/手順)
原料10gと精製水100mLとを300ml三角フラスコ容器に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後の懸濁液をNo.2ろ紙(アドバンテック社製)でろ過し、ろ液を再滅菌した。当該再滅菌して得られたろ液を熱水抽出液として、使用した。
【0124】
その後、<乳酸菌ペレット、乳酸菌懸濁液の調整>の項で述べた方法で1.5mlマイクロチューブ内に用意した乳酸菌ペレットに上記熱水抽出液を1mLずつ加え、懸濁した。
【0125】
撹拌せず静置したまま37℃でインキュベートして乳酸菌による発酵を行った。発酵を開始した初日を第0日とし、第7日まで発酵を続けた。
ネガティブコントロールとして、前記原料の熱水抽出液を、乳酸菌を添加しない以外は同様の手順で処理した。この試験区を「乳酸菌未処理」の試験区とした。
【0126】
発酵処理の第2日、及び第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。比較のために、セサミノール標準品の水溶液と、乳酸菌未処理の試験区のサンプルについても同様に薄層クロマトグラフィーにより展開した。薄層クロマトグラフィーの展開は、展開溶媒として酢酸エチル:メタノール:水をそれぞれ14:5:4の比率で混合したものを用いた。展開後の発色液としては硫酸10%(v/v)水溶液を用い、噴霧して加熱することで検出した。
【0127】
発酵処理の第7日に、前記各マイクロチューブからの乳酸菌懸濁液とエタノールとを、エタノール濃度が50%(v/v)となるように混合した。その後遠心分離して上清液を0.45μmフィルター(アドバンテック社製)に通して得たサンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLCによる分析条件は実験1と同じとした。
【0128】
(実験5/結果)
乳酸菌として
DNBL1826株のみ、
DNBL1826株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1830株との組み合わせ、
DNBL1826株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1826株とA221株との組み合わせ、
DNBL1832株のみ、
DNBL1832株とDNBL1829株との組み合わせ、
DNBL1832株とDNBL1830株との組み合わせ、
DNBL1832株とDNBL1831株との組み合わせ、
DNBL1832株とA221株との組み合わせ、
DNBL1829株のみ、
DNBL1830株のみ、
DNBL1831株のみ、又は、
A221株のみ
を用い、基質として市販のすりゴマの熱水抽出物を用いた試験における、発酵処理第2日
の薄層クロマトグラフィーの結果を
図9に、発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図10に示す。また、発酵処理第2日及び第7日でのHPLC分析の結果をそれぞれ下記表8及び9に示す。
【0129】
【表8】
【0130】
【表9】
【0131】
表8、9に示す結果から、すりゴマ熱水抽出物を基質とした発酵において、DNBL1826株、DNBL1832株、DNBL1829株、DNBL1830株、DNBL1831株をそれぞれ単独で用いた場合と比較して、DNBL1826株又はDNBL1832株と、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株のうち1種とを併用した場合にセサミノール生成量が顕著に高まることが確認された。
【0132】
また、A221株は単独でもセサミノール生成能を有することが確認された。
図9、10に示すTLCによる分析結果から、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力は低いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力が高いことが示唆された。
【0133】
一方、DNBL1826株及びDNBL1832株は、セサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力が高いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力は低いことが示唆された。
【0134】
A221株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力が高く、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力も有することが示唆された。
【0135】
<実験6:ゴマ圧搾粕熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を
行ってセサミノールの生成を試みた。
【0136】
(実験6/手順)
実験5において、原料として市販のすりゴマ(白)に代えて、市販のゴマ圧搾粕を用いた以外は実験5と同様の手順により、ゴマ圧搾粕の熱水抽出物による乳酸発酵を7日間行った。乳酸菌も実験5と同じものを用いた。
【0137】
発酵処理の第2日、及び第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。
発酵処理の第7日に、実験5と同様の手順でHPLC分析を行った。
【0138】
(実験6/結果)
発酵処理第2日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図11に、発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図12に示す。また、発酵処理第2日及び第7日でのHPLC分析の結果をそれぞれ下記表10及び11に示す。
【0139】
【表10】
【0140】
【表11】
【0141】
表10、11に示す結果から、ゴマ圧搾粕熱水抽出物を基質とした発酵において、DNBL1826株、DNBL1832株、DNBL1829株、DNBL1830株、DNBL1831株をそれぞれ単独で用いた場合と比較して、DNBL1826株又はDNBL1832株と、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株のうち1種とを併用した場合にセサミノール生成量が顕著に高まることが確認された。
また、A221株は単独でもセサミノール生成能を有することが確認された。
【0142】
図11、12に示すTLCによる分析結果から、DNBL1829株、DNBL1830株及びDNBL1831株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力は低いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力が高いことが示唆された。
【0143】
一方、DNBL1826株及びDNBL1832株は、セサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力が高いが、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力は低いことが示唆された。
【0144】
A221株はセサミノールトリグルコシド(STG)をセサミノールジグルコシド(SDG)に変換する能力と、セサミノールジグルコシド(SDG)をセサミノール(SMN)に変換する能力が共に高いことが示唆された。
【0145】
<実験7:すりゴマ熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のすりゴマ(白)を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
【0146】
(実験7/手順)
実験5と同様の手順により、すりゴマの熱水抽出物による乳酸発酵を7日間行った。各乳酸菌を単独で用いた。
【0147】
発酵処理の第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。
発酵処理の第7日に、実験5と同様の手順でHPLC分析を行った。
【0148】
(実験7/結果)
発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図13に示す。また、発酵処理第7日でのHPLC分析の結果を下記表12に示す。
【0149】
【表12】
【0150】
表12及び
図13の結果から、各乳酸菌株を単独で使用した場合に実験5と同様の傾向が確認された。
【0151】
<実験8:ゴマ圧搾粕熱水抽出物からのセサミノールの生成試験>
市販のゴマ圧搾粕を原料として用い、その熱水抽出物を基質として乳酸菌による発酵を行ってセサミノールの生成を試みた。
【0152】
(実験8/手順)
実験6と同様の手順により、ゴマ圧搾粕の熱水抽出物による乳酸発酵を7日間行った。各乳酸菌を単独で用いた。
【0153】
発酵処理の第7日に、前記各マイクロチューブから乳酸菌懸濁液を微量サンプリングして薄層クロマトグラフィーにより展開した。
発酵処理の第7日に、実験5と同様の手順でHPLC分析を行った。
【0154】
(実験8/結果)
発酵処理第7日の薄層クロマトグラフィーの結果を
図14に示す。また、発酵処理第7日でのHPLC分析の結果を下記表13に示す。
【0155】
【表13】
【0156】
表13及び
図14の結果から、各乳酸菌株を単独で使用した場合に実験6と同様の傾向が確認された。