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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-196326(P2017-196326A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】敷きパッド
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/20 20060101AFI20171006BHJP
   A47C 27/07 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
   A47C27/20
   A47C27/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-91864(P2016-91864)
(22)【出願日】2016年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】599071946
【氏名又は名称】株式会社弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 弘樹
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB04
3B096AD02
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】複数個のスプリングユニットを内蔵する敷きパッドにおいて、各スプリングユニットのずれ動きを確実に規制しながら、敷きパッドを少ない部品点数で構成して、その製造コストを削減する。
【解決手段】上下一対の表装材1・2で被覆固定される弾性ユニット3を、ウレタンフォームからなる上下一対のクッション材14・15と、一群のポケットコイル13からなる複数個のスプリングユニット10〜12とで構成する。各ポケットコイル13を構成する不織布製の袋体19に、コイルスプリング18の上下方向のばね力を受け止める上下一対の平坦なばね受壁20を設ける。各スプリングユニット10〜12の上下面の一群のばね受壁20を上下のクッション材14・15に接着固定して、各スプリングユニット10〜12を両クッション材14・15に対してずれ動き不能に一体化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対の表装材(1・2)と、両表装材(1・2)の間に収容される弾性ユニット(3)とを備えており、
両表装材(1・2)の周縁どうしが周回状に縫着されて、弾性ユニット(3)が両表装材(1・2)でずれ動き不能に被覆固定されており、
弾性ユニット(3)は、ウレタンフォームからなる上下一対のクッション材(14・15)と、弾性ユニット(3)の長手方向に沿って両クッション材(14・15)の間に隣接配置される複数個のスプリングユニット(10〜12)とで構成されており、
各スプリングユニット(10〜12)は、縦横に隣接配置された一群のポケットコイル(13)で構成されており、
各ポケットコイル(13)が、上下方向に伸縮可能なコイルスプリング(18)と、コイルスプリング(18)を包む不織布製の袋体(19)とで構成されており、
各袋体(19)が、コイルスプリング(18)の上下方向のばね力を受け止める上下一対の平坦なばね受壁(20)を備えており、
各スプリングユニット(10〜12)の上下面の一群のばね受壁(20)を上下のクッション材(14・15)に接着固定して、各スプリングユニット(10〜12)が両クッション材(14・15)に対してずれ動き不能に一体化してあることを特徴とする敷きパッド。
【請求項2】
弾性ユニット(3)が一対の表装材(1・2)で被覆固定された状態において、各ポケットコイル(13)のコイルスプリング(18)の直径寸法(D)が上下寸法(H)よりも大きく設定されている請求項1に記載の敷きパッド。
【請求項3】
隣接するスプリングユニット(10〜12)どうしが、上下一対のクッション材(14・15)を介して間接的に固定されている請求項1または2に記載の敷きパッド。
【請求項4】
弾性ユニット(3)が、その長手方向に隣接する3個のスプリングユニット(10〜12)を備えており、
弾性ユニット(3)の長手方向における両端のスプリングユニット(11・12)の寸法が同一に設定されており、
上下一対のクッション材(14・15)が同一の上下厚みのウレタンフォームで形成されている請求項1から3のいずれかに記載の敷きパッド。
【請求項5】
中央のスプリングユニット(10)を構成する各ポケットコイル(13)が、両端のスプリングユニット(11・12)を構成する各ポケットコイル(13)よりも高い弾性力を有しており、
弾性ユニット(3)の長手方向における中央のスプリングユニット(10)の寸法が、弾性ユニット(3)の全長寸法の3分の1を越え、かつ2分の1未満に設定されている請求項4に記載の敷きパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド用マットレスや敷き布団などの上面に敷いて使用される敷きパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の敷きパッドは、例えば特許文献1に公知である。そこでは、シート状のウレタンフォームの少なくとも表面に立体編物を積層して敷きパッドを構成している。この敷きパッドを使用すると、表面の立体編物が有するソフトな触感および良好な通気性により、快適な寝心地が得られる。また、ウレタンフォームが体重を吸収することにより、立体編物の残留ひずみを効果的に低減して、立体編物の初期の良好なクッション性を長期にわたって維持することができる。
【0003】
一方、ベッド用マットレスの市場では、多数のコイルスプリングを縦横に並設してなるスプリングユニットを内蔵したスプリングマットレスが多く流通している。スプリングマットレスには主として、コイルスプリングどうしがヘリカル線で連結されるボンネルコイル式マットレスと、コイルスプリングが一つずつ袋体に収容されて互いに独立しているポケットコイル式マットレスとが存在する。本発明は、ポケットコイル式のスプリングユニットを内蔵する敷きパッドを提供するものである。
【0004】
従来のポケットコイル式マットレスの公知例としては、例えば特許文献2を挙げることができる。そこでは、直方体状の収容空間を区画する下部弾性体および上部弾性体と、該収容空間を前後や左右に分割する間仕切り用弾性体と、分割された各空間に1個ずつ収容されるスプリングユニットと、下部弾性体および上部弾性体の外面を覆う外装体などで、ポケットコイル式マットレスを構成している。間仕切り用弾性体で分割された各空間に、使用者の所望の弾性特性のスプリングユニットを収容することにより、使用者の好みに応じてマットレスの弾性特性を部分ごとに変更できる。各スプリングユニットは、前後左右に並べた一群のポケットコイルを布地の袋で覆って構成してあり、各ポケットコイルは直径寸法よりも上下寸法が充分に大きい円筒状に形成してある。下部弾性体の側壁内面および間仕切り用弾性体の表面には、スプリングユニットの側面に弾性変形しながら当接する突起が形成してあり、これら突起の当接により各スプリングユニットの収容空間内におけるずれ動きが規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−109896号公報
【特許文献2】特開2010−252937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に敷きパッドは、折り畳んだ状態や渦巻状に巻いた状態での収納あるいは持ち運びを可能にするため、ベッド用マットレスに比べて充分に薄く形成される。例えば、一般的なベッド用マットレスの上下厚みが約20cmであるのに対し、敷きパッドの上下厚みは約6cmである。
【0007】
特許文献2に記載のベッド用マットレスのスプリングユニット等の上下寸法を充分に小さくして、折り畳みや巻回が可能な敷きパッドとすることは可能である。しかし、この場合の敷きパッドは、スプリングユニットの収容空間を分割する間仕切り用弾性体が必要になるため、その分だけ敷きパッドの材料コストが嵩んでしまう。また、スプリングユニットと間仕切り用弾性体の弾性力が大きく異なる場合には、両者の境界部分で使用者が違和感を覚えるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、複数個のスプリングユニットを内蔵する敷きパッドにおいて、各スプリングユニットのずれ動きを確実に規制しながら、敷きパッドを少ない部品点数で構成して、その製造コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る敷きパッドは、上下一対の表装材1・2と、両表装材1・2の間に収容される弾性ユニット3とを備える。両表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着して、弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定する。弾性ユニット3を、ウレタンフォームからなる上下一対のクッション材14・15と、弾性ユニット3の長手方向に沿って両クッション材14・15の間に隣接配置される複数個のスプリングユニット10〜12とで構成する。各スプリングユニット10〜12を、縦横に隣接配置された一群のポケットコイル13で構成し、各ポケットコイル13を、上下方向に伸縮可能なコイルスプリング18と、コイルスプリング18を包む不織布製の袋体19とで構成する。各袋体19は、コイルスプリング18の上下方向のばね力を受け止める上下一対の平坦なばね受壁20を備える。各スプリングユニット10〜12の上下面の一群のばね受壁20を上下のクッション材14・15に接着固定して、各スプリングユニット10〜12を両クッション材14・15に対してずれ動き不能に一体化することを特徴とする。
【0010】
弾性ユニット3が一対の表装材1・2で被覆固定された状態において、各ポケットコイル13のコイルスプリング18の直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定することが好ましい。
【0011】
隣接するスプリングユニット10〜12どうしを、上下一対のクッション材14・15を介して間接的に固定することが好ましい。
【0012】
弾性ユニット3が、その長手方向に隣接する3個のスプリングユニット10〜12を備えており、弾性ユニット3の長手方向における両端のスプリングユニット11・12の寸法が同一に設定されており、上下一対のクッション材14・15が同一の上下厚みのウレタンフォームで形成されている形態を採ることができる。
【0013】
中央のスプリングユニット10を構成する各ポケットコイル13が、両端のスプリングユニット11・12を構成する各ポケットコイル13よりも高い弾性力を有しており、弾性ユニット3の長手方向における中央のスプリングユニット10の寸法が、弾性ユニット3の全長寸法の3分の1を越え、かつ2分の1未満に設定されている形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、上下一対の表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着し、弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定した。また弾性ユニット3を、ウレタンフォームからなる上下一対のクッション材14・15と、一群のポケットコイル13からなる複数個のスプリングユニット10〜12とで構成し、各スプリングユニット10〜12の上下面を上下のクッション材14・15に接着固定した。以上のように構成した敷きパッドによれば、表装材1・2に対する弾性ユニット3のずれ動きと、クッション材14・15に対する各スプリングユニット10〜12のずれ動きとを確実に規制して、敷きパッドの作製当初における弾性ユニット3とそのスプリングユニット10〜12の適切な配置を常に維持することができ、従って、敷きパッドの使用者に常に快適な使用感を提供することができる。従来のベッド用マットレスで用いられていた間仕切り用弾性体が無くても、各スプリングユニット10〜12のずれ動きを規制できるので、敷きパッドを少ない部品点数で構成してその材料コストを削減でき、従って敷きパッドを低コストで製造できる。また、間仕切り用弾性体のような異物を介することなくスプリングユニット10〜12どうしを隣接配置できるので、スプリングユニット10〜12の隣接部分で使用者が違和感を覚えるおそれを解消して、使用者の寝心地を向上させることができる。
【0015】
さらに本発明では、各ポケットコイル13を構成する不織布製の袋体19が、コイルスプリング18の上下方向のばね力を受け止める上下一対の平坦なばね受壁20を備えるものとし、この平坦なばね受壁20をクッション材14・15に接着したので、各ポケットコイル13とクッション材14・15の接着面積を十分に大きくして、スプリングユニット10〜12をクッション材14・15に対して強固に接着できる。コイルスプリング18の上下方向のばね力は、上下一対のばね受壁20をクッション材14・15に押し付けて、その接着状態を良好に維持することにも寄与する。
【0016】
各ポケットコイル13のコイルスプリング18の直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定すると、従来のベッド用マットレスで用いられている縦長のポケットコイルを用いる場合に比べて、ポケットコイル13の上下寸法に対する袋体19のばね受壁20の面積を大きくできる。従って、各ポケットコイル13とクッション材14・15の接着面積をさらに大きくして、スプリングユニット10〜12をクッション材14・15に対してさらに強固に接着できる。また本発明によれば、従来の縦長のポケットコイルを用いる場合に比べて、スプリングユニット10〜12を少数のポケットコイル13で構成することができ、その分だけスプリングユニット10〜12を軽量化し、またその材料コストを削減することができる。
【0017】
隣接するスプリングユニット10〜12どうしを、上下一対のクッション材14・15を介して間接的に固定して、スプリングユニット10〜12の隣接部分の連結構造を廃することが好ましい。隣接部分に連結構造を設けると、連結構造が敷きパッドの使用者に対して異物感を与えてしまい、使用者の寝心地が低下するおそれがある。これに対して本発明のように、隣接するスプリングユニット10〜12どうしを間接的に固定して、隣接部分の連結構造を廃すると、連結構造に起因する異物感を解消して、使用者の寝心地を向上させることができる。
【0018】
前後方向(弾性ユニット3の長手方向)に隣接する3個のスプリングユニット10〜12のうち、前後端のスプリングユニット11・12の前後寸法を同一に設定し、さらに、上下一対のクッション材14・15を同一の上下厚みのウレタンフォームで形成すると、弾性ユニット3を前後対称かつ上下対称に形成して、敷きパッドを前後と上下(表裏)の区別無く使用することができる。このように、敷きパッドの前後と上下の区別を無くすと、敷きパッドを定期的に前後反転あるいは上下反転させるローテーションが可能となる。敷きパッドのローテーションを定期的に行うと、各スプリングユニット10〜12において長期使用に伴う部分的なへたりが生じ難くなるので、敷きパッドを長寿命化することができる。
【0019】
中央のスプリングユニット10を、高弾性のポケットコイル13で構成するとともに、弾性ユニット3の全長寸法の3分の1を越える寸法に設定すると、敷きパッドの使用者の腰部を高弾性のスプリングユニット10で受け止めることができる。使用者の体重が最も集中する腰部を高弾性のスプリングユニット10で支持すると、使用者の寝姿勢を良好なものとして、使用者の寝心地を向上させることができる。なお、高弾性のスプリングユニット10の寸法が弾性ユニット3の全長寸法の3分の1を越えない場合には、特に身長の低い使用者が敷きパッドの長手方向の一側端に片寄った寝姿勢の場合に、その腰部を高弾性のスプリングユニット10で支持できないことがある。また、高弾性のスプリングユニット10は比較的高価であることから、このスプリングユニット10を弾性ユニット3の全長寸法の2分の1未満の寸法に設定すると、弾性ユニット3に占める高弾性のスプリングユニット10の割合が大きくなることに伴う材料コストの増加の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例に係る敷きパッドの要部を示す縦断面図である。
図2】実施例に係る敷きパッドの(a)一部破断平面図と(b)側面図である。
図3】実施例に係る敷きパッドの分解斜視図である。
図4】スプリングユニットの一部破断平面図である。
図5図2におけるA−A線断面図である。
図6図2におけるB−B線断面図である。
図7】実施例に係る敷きパッドの(a)三つ折り状態と(b)巻回状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例) 図1ないし図7は、本発明に係る敷きパッドの実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。本発明における敷きパッドの長手方向は、本実施例における前後方向に一致する。また、本実施例における左右方向と上下方向は、敷きパッドの幅方向と厚み方向にそれぞれ一致する。
【0022】
図2および図3において敷きパッドは、キルティング生地からなる上下一対の表装材1・2の間に弾性ユニット3を収容して構成される。弾性ユニット3は、前後方向に隣接配置される3枚のスプリングユニット10〜12と、同ユニット10〜12の上下面を覆う一対のクッション材14・15とで構成される。各スプリングユニット10〜12は、上下方向に伸縮可能な一群のポケットコイル13を縦横に隣接配置して矩形シート状に形成されている。前後端のスプリングユニット11・12は同一形状であり、前後中央のスプリングユニット10は前後端のスプリングユニット11・12よりも前後に長く形成してある。上下のクッション材14・15はウレタンフォームからなり、同一形状の矩形シート状に形成されている。各クッション材14・15の前後寸法は、3枚のスプリングユニット10〜12の前後寸法を合わせたものに略等しい。各クッション材14・15はスプリングユニット10〜12と略同一の左右寸法を有し、またスプリングユニット10〜12よりも上下方向に薄く形成されている。
【0023】
本実施例に係る敷きパッドはシングルサイズとし、弾性ユニット3を構成するスプリングユニット10〜12およびクッション材14・15の左右寸法をそれぞれ100cmに設定した。また、中央のスプリングユニット10の前後寸法を85cm、前後のスプリングユニット11・12の前後寸法を55cm、各クッション材14・15の前後寸法を195cmに設定した。中央のスプリングユニット10は、600個のポケットコイル13の集合体からなり、前後方向に24個、左右方向に25個のポケットコイル13が配列されている。前後のスプリングユニット11・12は、それぞれ400個のポケットコイル13の集合体からなり、前後方向に16個、左右方向に25個のポケットコイル13が配列されている。なお本発明は、シングルサイズとは左右寸法が異なるセミダブルサイズやダブルサイズの敷きパッドにも適用が可能である。セミダブルサイズの敷きパッドは、左右寸法が例えば120cmに設定され、各スプリングユニット10〜12が左右に30個のポケットコイル13を並べて構成される。ダブルサイズの敷きパッドは、左右寸法が例えば140cmに設定され、各スプリングユニット10〜12が左右に35個のポケットコイル13を並べて構成される。
【0024】
図4および図5において各ポケットコイル13は、上下方向に伸縮可能な中空円筒状のコイルスプリング18と、コイルスプリング18を包む不織布製の袋体19とで構成される。袋体19は、コイルスプリング18の上下端の座巻に密着して、コイルスプリング18の上下方向のばね力を受け止める上下一対の平坦なばね受壁20を備えている。このポケットコイル13で構成される各スプリングユニット10〜12は、複数個のコイルスプリング18と、2枚の不織布製の被覆シート21・21から作製することができる。具体的には、2枚の被覆シート21・21の間にコイルスプリング18を縦横に配列し、隣接するコイルスプリング18・18の間で2枚の被覆シート21・21を熱溶着によりミシン目状に接合して、各コイルスプリング18を1個ずつ囲むように格子状の区画線22を形成する。2枚の被覆シート21・21と区画線22で囲まれる空間が、コイルスプリング18を個別に収容するポケット23を構成する。
【0025】
被覆シート21を不織布のような通気性の素材で構成すると、各コイルスプリング18が中空円筒状であることと相俟って、スプリングユニット10〜12の全体が上下方向に優れた通気性を発揮するので、敷きパッドの全体としての上下方向の通気性を高めて、蒸れの少ない敷きパッドとすることができる。各スプリングユニット10〜12は前後方向および左右方向の通気性にも優れるので、弾性ユニット3の四周縁部からも湿気を排出できる。なお区画線22は、ミシン目以外に例えば連続線状に形成してもよく、また熱溶着以外の例えば縫製や接着などの方法で形成することができる。
【0026】
図1に示すように、中央のスプリングユニット10を構成する各ポケットコイル13のコイルスプリング18は、前後のスプリングユニット11・12を構成する各ポケットコイル13のコイルスプリング18よりも太い線材で形成されており、従って前者のポケットコイル13は後者のポケットコイル13よりも高い弾性力を有する。具体的には、中央のスプリングユニット10の各コイルスプリング18の線径L1を1.2mmに設定し、前後のスプリングユニット11・12の各コイルスプリング18の線径L2を1.0mmに設定した。本実施例では、高弾性のポケットコイル13で構成される中央のスプリングユニット10を、その前後のスプリングユニット11・12よりも前後に長く形成して、敷きパッドの使用者の腰部を中央のスプリングユニット10で受け止められるようにした。使用者の体重が最も集中する腰部を高弾性のスプリングユニット10で支持すると、使用者の寝姿勢を良好なものとして、使用者の寝心地を向上させることができる。
【0027】
図1に拡大して示すように各スプリングユニット10〜12は、上下のクッション材14・15に対してそれぞれ柔軟な接着剤層25を介して固定されている。本実施例では、上下のクッション材14・15の内面に液状の接着剤をスプレーガンで吹き付けて接着剤層25を形成し、スプリングユニット10〜12の上下面の一群のばね受壁20を接着剤層25に押し付けることにより、スプリングユニット10〜12とクッション材14・15を接着固定した。もちろん、クッション材14・15に接着剤を吹き付けるのに代えて、スプリングユニット10〜12の各袋体19の外面に接着剤を吹き付けてもよく、クッション材14・15と各袋体19の両方に接着剤を吹き付けてもよい。接着剤層25を構成する接着剤は、ウレタンフォームと不織布を接着可能なものから適宜選択できる。このようにスプリングユニット10〜12とクッション材14・15を接着固定すると、各スプリングユニット10〜12が両クッション材14・15に対してずれ動き不能に一体化されて、本実施例に係る弾性ユニット3を得ることができる。
【0028】
各ポケットコイル13の袋体19の平坦なばね受壁20をクッション材14・15に接着すると、各ポケットコイル13とクッション材14・15の接着面積を十分に大きくして、スプリングユニット10〜12をクッション材14・15に対して強固に接着できる。さらに本実施例では、各コイルスプリング18の直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定して(図5参照)、従来のベッド用マットレスで用いられている縦長のポケットコイルを用いる場合に比べて、ポケットコイル13の上下寸法に対するばね受壁20の面積を大きくしたので、各ポケットコイル13とクッション材14・15の接着面積をさらに大きくして、スプリングユニット10〜12をクッション材14・15に対してさらに強固に接着できる。コイルスプリング18の上下方向のばね力は、上下一対のばね受壁20をクッション材14・15に押し付けて、その接着状態を良好に維持することにも寄与する。また、各コイルスプリング18の直径寸法Dを上下寸法Hよりも大きく設定すると、従来の縦長のポケットコイルを用いる場合に比べて、スプリングユニット10〜12を少数のポケットコイル13で構成することができ、その分だけスプリングユニット10〜12を軽量化し、またその材料コストを削減することができる。
【0029】
弾性ユニット3において、中央のスプリングユニット10と前後のスプリングユニット11・12は僅かな隙間を介して前後に隣接しており、上下のクッション材14・15を介して間接的に固定されている。このように、スプリングユニット10〜12どうしを間接的に固定して、スプリングユニット10〜12の隣接部分の連結構造を廃すると、連結構造に起因する異物感を解消して、使用者の寝心地を向上させることができる。
【0030】
上記のようにスプリングユニット10〜12とクッション材14・15が一体化された弾性ユニット3は、2枚の表装材1・2の間に収容される。図6に拡大して示すように各表装材1・2は、外面側から順に織布30と、ポリエステルわたで形成されたシート状のキルト芯31と、ウレタンフォームからなる弾性シート32と、不織布33とを積層し、キルティング加工を施すことにより作製されている。本実施例に係る敷きパッドを得るには、2枚の表装材1・2の間に弾性ユニット3を挟み、両表装材1・2の周縁どうしを全周にわたって重ね合わせ、縁テープ37を被せて糸38で周回状に縫着すればよい。縫着前の各表装材1・2の縦横寸法(前後寸法および左右寸法)は、その周縁どうしの間に弾性ユニット3が挟まれて縫着されない程度に、弾性ユニット3の縦横寸法よりも一回り大きく設定されている。縫着された両表装材1・2の周縁は、弾性ユニット3の上下方向の略中央と同じ高さに位置する。上下の表装材1・2の周縁どうしを直接縫着すると、弾性ユニット3の側面のみを別の表装材で覆い、当該表装材を上下の表装材1・2にそれぞれ縫着する場合に比べて、敷きパッドの構造を簡素化することができ、さらに、表装材を縫着する作業の手間を半減させて、敷きパッドを低コストで製造することができる。
【0031】
両表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着すると、弾性ユニット3が両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定される。より詳しくは、上下のクッション材14・15に正対する各表装材1・2の主面部が、弾性ユニット3の上下面に対して上下方向に圧接し、また各主面部の周囲の部分が、弾性ユニット3の上下面の前後左右の周縁に対して斜め下向きあるいは斜め上向きに圧接することにより、表装材1・2に対する弾性ユニット3の全方向(上下方向、前後方向、および左右方向)のずれ動きが規制されている。このように、弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定すると、弾性ユニット3と表装材1・2の間における接着剤などの固定手段を省略し、その分だけ製造に要する手間を削減して、敷きパッドを低コストで製造することができる。
【0032】
弾性ユニット3を表装材1・2で被覆固定して完成する敷きパッドの上下厚みは約6cmである。この敷きパッドは、図7(a)に示すように三つに折り畳んだ状態や、図7(b)に示すように渦巻き状に巻いた状態で、収納あるいは持ち運ぶことができる。布団のように竿に掛けて干すことも可能である。上記のように本実施例では、コイルスプリング18の直径寸法Dが上下寸法Hよりも大きいポケットコイル13で各スプリングユニット10〜12を構成して、敷きパッドの全体を軽量化したので、折り畳んだ状態や渦巻き状に巻いた状態で容易に持ち運ぶことができる。この敷きパッドの全体重量は約6.8kgである。なお、本実施例に係る敷きパッドは、展開状態で厚み方向に圧縮された後で渦巻き状に巻かれ、気密性の袋に梱包された状態で出荷、販売に供される。
【0033】
以上のように本実施例では、上下一対の表装材1・2の周縁どうしを周回状に縫着し、弾性ユニット3を両表装材1・2でずれ動き不能に被覆固定した。また弾性ユニット3を、3枚のスプリングユニット10〜12とその上下面を覆う一対のクッション材14・15で構成し、各スプリングユニット10〜12の上下面を上下のクッション材14・15にそれぞれ接着固定した。以上のように構成した敷きパッドによれば、表装材1・2に対する弾性ユニット3のずれ動きと、クッション材14・15に対する各スプリングユニット10〜12のずれ動きとを確実に規制して、敷きパッドの作製当初における弾性ユニット3とそのスプリングユニット10〜12の適切な配置を常に維持することができ、従って、敷きパッドの使用者に常に快適な使用感を提供することができる。従来のベッド用マットレスで用いられていた間仕切り用弾性体が無くても、各スプリングユニット10〜12のずれ動きを規制できるので、敷きパッドを少ない部品点数で構成してその材料コストを削減でき、従って敷きパッドを低コストで製造できる。
【0034】
本実施例では、前後のスプリングユニット11・12と上下のクッション材14・15をそれぞれ同一の形状とし、敷きパッドの全体を前後対称かつ上下対称に形成して、敷きパッドを前後および上下(表裏)の区別無く使用できるようにした。このように、敷きパッドの前後と上下の区別を無くすと、敷きパッドを定期的に上下反転あるいは前後反転させるローテーションが可能となる。敷きパッドのローテーションを定期的に行うと、各スプリングユニット10〜12において長期使用に伴う部分的なへたりが生じ難くなるので、敷きパッドを長寿命化することができる。ただし本発明において、敷きパッドを前後対称かつ上下対称とすることは必須ではなく、例えば前後のスプリングユニット11・12の前後寸法や弾性を異ならせてもよく、また一対のクッション材14・15の上下厚み寸法を異ならせてもよい。弾性ユニット3を構成するスプリングユニットの枚数は3枚に限られず、それ以外の複数枚、例えば5枚のスプリングユニットで構成してもよい。
【0035】
スプリングユニット10〜12を構成するポケットコイル13の弾性を異ならせる手法としては、上記実施例のようにコイルスプリング18の線径L1・L2を異ならせる以外に、例えばコイルスプリング18の直径寸法Dや巻き数を異ならせてもよい。また、各スプリングユニット10〜12を構成するポケットコイル13の弾性は全て同一であってもよい。コイルスプリング18は中空円筒状以外に、上下中央が括れた鼓形状や、上下中央が膨らんだ樽形状などに形成してあってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1・2 表装材
3 弾性ユニット
10〜12 スプリングユニット
13 ポケットコイル
14・15 クッション材
18 コイルスプリング
19 袋体
20 ばね受壁
25 接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7