【解決手段】通電路にリアクトルWLが設けられており、アークが発生しているときのベース電圧の上昇に基づいてベース電流を増加させて磁気吹きに対処するパルスアーク溶接制御方法において、リアクトルWLと並列にトランジスタTRを設け、ベース電圧の上昇状態が基準値以上になったときは、トランジスタTRをオン状態にしてリアクトルWLを短絡状態にし、ベース電流を増加させる。これにより、磁気吹きが発生したときは通電路のインダクタンス値を小さくすることによって、ベース電流の増加速度を速くすることができる。このために、インダクタンス値が大きな場合でも、アーク切れを防止することができる。
溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間とベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返し、前記ピーク電流及び前記ベース電流の通電路にリアクトルが設けられており、アークが発生しているときの前記ベース電圧の上昇に基づいて前記ベース電流を増加させて磁気吹きに対処するパルスアーク溶接制御方法において、
前記リアクトルと並列にトランジスタを設け、
前記ベース電圧の上昇状態が予め定めた基準値以上になったときは、前記トランジスタをオン状態にして前記リアクトルを短絡状態にし、前記ベース電流を増加させる、
ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法。
【背景技術】
【0002】
消耗電極パルスアーク溶接では、溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間と、ベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返して溶接が行われる。ピーク電流は500A程度の大電流値に設定され、溶接ワイヤを溶融して溶滴の形成及び移行が行われる。ベース電流は30A程度に設定され、溶接ワイヤはほとんど溶融しない。パルスアーク溶接では、1回のピーク電流の通電によって1つの溶滴を移行させる1パルス1溶滴移行の状態を維持することが、スパッタの発生の少ない高品質の溶接ビードを得るために重要である。
【0003】
鉄鋼等のパルスアーク溶接においては、母材を通電する溶接電流によってアーク発生部の周辺に磁界が形成されて、この磁界からアークは力を受けて変形する場合がよくある。このような状態を、一般的に磁気吹き又はアークブローと呼んでいる。磁気吹きの発生状態がひどくなると、アークは大きく変形してアーク長が非常に長くなり、アークを維持することができなくなり、アーク切れを発生することになる。アーク切れが発生すると、溶接品質は悪くなる。このために、パルスアーク溶接においては、磁気吹き対策は大きな課題である。
【0004】
特許文献1の発明では、ベース期間中にアークが発生しているときのベース電圧の上昇率が基準上昇率以上になったことを検出して磁気吹きが発生したと判別し、ベース電流を200A以上に急増する磁気吹き対処制御を行っている。磁気吹きは、電流値が小さいためにアークの硬直性が弱くなるベース期間中に発生する。磁気吹きによってアーク長が長くなると、アーク電圧(ベース電圧)が大きくなることを利用して、磁気吹きの発生を判別している。また、ベース電流を増加させると、アークの硬直性が強くなり、磁界から力を受けてもアークの変形を抑制することができる。この結果、アーク切れを防止することができる。このときに、ベース電流は急増させる必要がある。この理由は、磁気吹きは一定のレベルを超えると急速に進行するので、ベース電流の増加が緩やかであると、アークの変形を抑制することができないからである。
【0005】
溶接電源の内部には溶接電圧を平滑するためのリアクトルが設けられている。リアクトルは、溶接電流の通電路(以下、単に通電路という場合がある)に挿入されているので、溶接電流の変化を緩やかにすることになる。リアクトルのインダクタンス値が大きくなるほど溶接電流の変化は緩やかになる。リアクトルとして可飽和リアクトルを使用する場合がある。可飽和リアクトルは、電流飽和値以下の電流範囲ではインダクタンス値が非常におおきくなり、飽和電流値よりも大きな電流範囲ではインダクタンス値が非常に小さくなる静謐を有している。可飽和リアクトルは、飽和電流値が通常のベース電流値よりも少し大きな値となるように設計される。この結果、ベース電流が通電するときのインダクタンス値が大きくなるために、通電状態が安定化する。そして、飽和電流値よりも大きな電流範囲ではインダクタンス値が小さくなるので、ベース電流からピーク電流への変化率を大きな値に設定することができる。
【0006】
リアクトルのインダクタンス値が大きい場合には、磁気吹きを判別してベース電流を増加させるときの増加率が緩やかになる。この結果、上述した従来技術では、磁気吹きの進行に対してベース電流の増加が遅れるために、アーク切れを抑制することができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、リアクトルのインダクタンス値が大きな場合でも、磁気吹きによるアーク切れを抑制することができるパルスアーク溶接制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、溶接ワイヤを送給し、ピーク電流及びピーク電圧を出力するピーク期間とベース電流及びベース電圧を出力するベース期間とを繰り返し、前記ピーク電流及び前記ベース電流の通電路にリアクトルが設けられており、アークが発生しているときの前記ベース電圧の上昇に基づいて前記ベース電流を増加させて磁気吹きに対処するパルスアーク溶接制御方法において、
前記リアクトルと並列にトランジスタを設け、前記ベース電圧の上昇状態が予め定めた基準値以上になったときは、前記トランジスタをオン状態にして前記リアクトルを短絡状態にし、前記ベース電流を増加させる、
ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法である。
【0010】
請求項2の発明は、前記増加させた前記ベース電流の値が予め定めた基準電流値以上になったときは、前記トランジスタをオフ状態にする、ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
【0011】
請求項3の発明は、前記リアクトルが可飽和リアクトルであるときは、前記基準電流値を飽和電流値よりも大きな値に設定する、ことを特徴とする請求項2に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベース電圧の上昇状態が基準値以上になったことで磁気吹きの発生を判別すると、トランジスタをオン状態にしてリアクトルを短絡状態にし、ベース電流を急速に増加させている。このために、本発明では、リアクトルのインダクタンス値が大きな場合でも、磁気吹きによるアーク切れを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0016】
電源主回路MCは、3相200V等の商用電源(図示は省略)を入力として、後述する電流誤差増幅信号Eiに従ってインバータ制御、サイリスタ位相制御等の出力制御を行い、溶接に適した出力電圧を出力する。
【0017】
リアクトルWLは、電源主回路MCの出力に設けられ、出力電圧を平滑する。リアクトルWLとして、可飽和リアクトルが使用される場合がある。可飽和リアクトルは、通電する電流値が飽和電流値未満のときはインダクタンス値がおおきくなり、飽和電流値以上のときはインダクタンス値は小さくなる。ベース電流Ibの通常値は20〜50A程度であるので、飽和電流値が50A程度になるように可飽和リアクトルは設計される。
【0018】
溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータ(図示は省略)に結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間には溶接電圧Vwが印加し、溶接電流Iwが通電する。
【0019】
電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。電圧平均化回路VAVは、上記の電圧検出信号Vdを平均化して、電圧平均信号Vavを出力する。電圧設定回路VRは、所望値の電圧設定信号Vrを出力する。
【0020】
電圧誤差増幅回路EVは、上記の電圧設定信号Vrと上記の電圧平均信号Vavとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。V/FコンバータVFは、上記の電圧誤差増幅信号Evに応じた周波数を有するパルス周波数信号Tfを出力する。このパルス周波数信号Tfは、ピーク期間とベース期間とを1周期とする周波数を決定する信号である
【0021】
ピーク期間タイマ回路TTPは、上記のパルス周波数信号Tfの周波数ごとに予め定めたピーク期間TpだけHighレベルとなるピーク期間信号Ttpを出力する。したがって、このピーク期間信号Ttpは、ピーク期間Tp中はHighレベルとなり、ベース期間中はLowレベルとなる信号である。
【0022】
アーク判別回路ADは、上記の電圧検出信号Vdを入力として、この値に基づいてアーク発生状態であるかを判別してHighレベルとなるアーク判別信号Adを出力する。
【0023】
ベース電圧上昇状態検出回路DVは、上記のピーク期間信号Ttp、上記のアーク判別信号Ad及び上記の電圧検出信号Vdを入力として、ピーク期間信号TtpがLowレベル(ベース期間Tb)であり、かつ、アーク判別信号AdがHighレベル(アーク発生状態)であるときの電圧検出信号Vd(ベース電圧)の上昇状態を検出して、ベース電圧上昇状態検出信号Dvを出力する。ベース電圧上昇状態検出信号Dvは、例えば以下のようにして算出される。
1)ベース期間中のアーク発生状態における電圧検出信号Vdの上昇率(微分地)
2)予め定めた基準ベース電圧値からの、ベース期間中のアーク発生状態における電圧検出信号Vdの上昇値(差分値)
3)ベース期間中のアーク発生状態における電圧検出信号Vdの絶対値
【0024】
判別回路HBは、上記のベース電圧上昇状態検出信号Dv及び上記のピーク期間信号Ttpを入力として、ベース電圧上昇状態検出信号Dvの値が予め定めた基準値以上になるとHighレベルにセットされ、その後にピーク期間信号TtpがHighレベルになるとLowレベルにリセットされる判別信号Hbを出力する。基準値は、ベース電圧の上昇状態が磁気吹き発生状態にあることを判別するためのしきい値である。
【0025】
通常ベース電流設定回路IBSRは、予め定めたベース電流の通常値を設定するための通常ベース電流設定信号Ibsrを出力する。通常ベース電流設定信号Ibsrの設定範囲は、20〜50A程度である。
【0026】
増加ベース電流設定回路IBURは、予め定めた増加ベース電流設定信号Iburを出力する。増加ベース電流設定信号Iburは、200A以上であり、ピーク電流設定信号Ipr以下に設定される。増加ベース電流設定信号Iburは、磁気吹き発生状態となり、急速に進行するアークの変形を抑制することができる値に設定される。
【0027】
ベース電流設定回路IBRは、上記の判別信号Hb、上記の通常ベース電流設定信号Ibsr及び上記の増加ベース電流設定信号Iburを入力として、判別信号HbがLowレベルのときは通常ベース電流設定信号Ibsrをベース電流設定信号Ibrとして出力し、判別信号HbがHighレベル(磁気吹き発生状態)のときは増加ベース電流設定信号Iburをベース電流設定信号Ibrとして出力する。
【0028】
ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。ピーク電流設定信号Iprは、溶接ワイヤの直径、材質、送給速度等に応じて、400〜600A程度に設定される。
【0029】
電流設定回路IRは、上記のベース電流設定信号Ibr、上記のピーク電流設定信号Ipr及び上記のピーク期間信号Ttpを入力として、ピーク期間信号TtpがHighレベルのときはピーク電流設定信号Iprを電流設定信号Irとして出力し、ピーク期間信号TtpがLowレベルのときはベース電流設定信号Ibrを電流設定信号Irとして出力する。
【0030】
電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流設定信号Irと上記の電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
【0031】
駆動回路DRは、上記の判別信号Hb及び上記の電流検出信号idを入力として、判別信号HbがHighレベルに変化するとHighレベルにセットされ、その後に電流検出信号Idの値が予め定めた基準電流値以上になるとLowレベルにリセットされる駆動信号Drを出力する。トランジスタTRは、上記のリアクトルWLと並列に接続されて、上記の駆動信号Drがベース端子に接続される。したがって、トランジスタTRは、駆動信号DrがHighレベルになるとオン状態となり、Lowレベルになるとオフ状態となる。すなわち、トランジスタTRは、磁気吹き発生を判別するとオン状態となり、リアクトルWLを短絡状態にする。トランジスタTRは、溶接電流Iwの値が基準電流値まで増加するとオフ状態となり、リアクトルWLは通電路に挿入された通常の状態となる。上記の基準電流値は、通常ベース電流設定信号Ibsrの値よりも大きく、増加ベース電流設定信号Iburの値以下に設定される。リアクトルWLが可飽和リアクトルであるときは、基準電流値は、飽和電流値よりも10〜50A程度大きな値に設定される。基準電流値の設定範囲は、60〜100A程度に設定される。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1に係るパルスアーク溶接制御方法を示す
図1の溶接電源における各信号のタイムチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は判別信号Hbの時間変化を示し、同図(D)は駆動信号Drの時間変化を示す。同図は、リアクトルWLが可飽和リアクトルの場合である。以下、同図を参照して動作を説明する。
【0033】
同図は、2周期の波形を示している。第1周期は、ベース期間Tb中に磁気吹きが発生しなかった場合である。第2周期は、ベース期間Tb中に磁気吹きが発生した場合である。
【0034】
(1)時刻t1〜t3の第1周期の動作説明
時刻t1〜t2の予め定めたピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、ベース電流Ibから傾斜を有して増加した後に急速に増加し、予め定めたピーク電流Ipが通電する。傾斜を有するのは、可飽和リアクトルのインダクタンス値が大きいためであり、飽和電流値以上になるとインダクタンス値が小さくなり、ピーク電流Ipへと急速に増加する。同時に、同図(B)に示すように、アーク長に比例したピーク電圧が印加する。ピーク電流Ipは、
図1のピーク電流設定信号Iprによって設定される。ピーク期間Tp中に、溶接ワイヤの先端が溶融されて、溶滴が形成され、ピーク期間Tpの終了前後のタイミングで溶滴は溶融池へと移行する(1パルス1溶滴移行状態)。ピーク期間Tp及びピーク電流Ipは、この1パルス1溶滴移行状態になるように設定される。
【0035】
時刻t2〜t3のベース期間Tb中は、磁気吹きが発生していない状態であるので、同図(A)に示すように、ピーク電流Ipから急速に減少した後に傾斜を有して減少し、予め定めた通常値のベース電流Ibが通電する。傾斜を有するのは、上述したように、可飽和リアクトルのインダクタンス値が飽和電流値以下になると大きくなるためである。同時に、同図(B)に示すように、略一定値となる通常値のベース電圧Vbが印加する。通常値のベース電流Ibは、
図1の通常ベース電流設定信号Ibsrによって設定される。
【0036】
上述した時刻t1〜t3が1パルス周期となる。パルス周期(パルス周波数)は、溶接電圧Vwの平均値が電圧設定信号Vrの値と等しくなるようにフィードバック制御(周波数変調制御)される。これにより、アーク長の平均値が適正値に維持される。時刻t1〜t3の第1周期中は磁気吹きは発生していないので、同図(C)に示すように、判別信号HbはLowレベルのままである。また、同図(D)に示すように、駆動信号DrはLowレベルのままであるので、
図1のトランジスタTRはオフ状態となり、リアクトルWLは通電路に挿入される通常の状態となる。
【0037】
(2)時刻t3〜t4の第2周期の動作説明
時刻t3〜t4のピーク期間Tpの動作は、時刻t1〜t2と同様である。さらに、時刻t4〜t41の期間の動作は、時刻t2〜t3と同様である。
【0038】
時刻t41において、磁気吹きが発生したためにアークが変形してアーク長が通常状態よりも次第に長くなる。このために、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbは、時刻t41から上昇し、時刻t42において上昇状態が基準値以上となる。ベース電圧Vbの上昇状態が基準値以上となると、同図(C)に示すように、判別信号HbがHighレベルに変化する。これに応動して、同図(D)に示すように、駆動信号DrはHighレベルに変化し、トランジスタTRがオン状態となり、リアクトルWLは短絡状態(バイパス状態)となる。このために、通電路のインダクタンス値は飽和電流値未満であっても小さな値となる。そして、同図(A)に示すように、ベース電流Ibはインダクタンス値が小さいので増加ベース電流値Ibuへと急速に増加する。増加中の時刻t43において、ベース電流Ibの値が予め定めた基準電流値以上となると、同図(D)に示すように、駆動信号Drはオフ状態に戻り、通電路にリアクトルWLが挿入された状態に戻る。駆動信号DrがLowレベルにリセットされるタイミングを、ベース電流Ibの値が増加ベース電流値Ibuに達した時点、又は、次のパルス周期が開始された時点としても良い。増加ベース電流値Ibuは、
図1の増加ベース電流設定信号Iburによって設定される。
【0039】
時刻t43から、同図(A)に示すように、ベース電流Ibが増加ベース電流値Ibuへと急増するために、アークの変形は抑制される。この結果、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbは、時刻t43から上昇状態が緩やかになり、その後は時刻t5まで下降状態となる。時刻t43〜t5の期間中は、同図(A)に示すように、ベース電流Ibは増加ベース電流値Ibuを維持する。時刻t5において、次のパルス周期が開始されると、同図(C)に示す判別信号HbはLowレベルに戻る。判別信号HbがLowレベルにリセットされるタイミングを、ベース電圧Vbの上昇状態が終わり下降状態になったときとしても良い。同図ではリアクトルWLが可飽和リアクトルである場合を説明したが、電流範囲によらずインダクタンス値が略一定値となる通常のリアクトルの場合も同様である。
【0040】
以下、実施の形態1に係るパルスアーク溶接制御方法による磁気吹き対処の作用について説明する。
図2の第2周期の動作で説明したように、ベース電圧Vbの上昇状態によって磁気吹きの発生を判別している。ベース電圧Vbの上昇状態が基準値以上になったことによって磁気吹きの発生を判別すると、トランジスタTRをオン状態にしてリアクトルWLを短絡状態(バイパス状態)にする。そして、通電路のインダクタンス値を小さくした上で、ベース電流Ibを増加ベース電流値Ibuまで急速に増加させる。これにより、アークの硬直性を迅速に強くして、アーク切れの発生を阻止している。従来技術では、リアクトルのインダクタンス値が大きい場合には、ベース電流Ibが増加ベース電流値Ibuに達するまでに時間がかかり、アーク切れが発生する場合があった。これに対して、本実施の形態では、アーク切れを確実に阻止することができる。
【0041】
上述した実施の形態1によれば、通電路のリアクトルと並列にトランジスタを設け、ベース電圧の上昇状態が予め定めた基準値以上になったときは、トランジスタをオン状態にしてリアクトルを短絡状態にし、ベース電流を急速に増加させる。本実施の形態では、ベース電圧の上昇状態が基準値以上になったことで磁気吹きの発生を判別すると、トランジスタをオン状態にしてリアクトルを短絡状態にし、ベース電流を急速に増加させている。このために、本実施の形態では、リアクトルのインダクタンス値が大きな場合でも、磁気吹きによるアーク切れを抑制することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態において、増加させた前記ベース電流の値が予め定めた基準電流値以上になったときは、トランジスタをオフ状態に戻すようにしても良い。このようにすると、必要最小限の時間だけトランジスタがオン状態となるので、トランジスタの損失を小さくすることができ、安価になる。また、電流値が必要以上に大きくなる前にトランジスタがオフされるので、ターンオフ時のサージ電圧を小さく抑制することができ、トランジスタの損傷を抑制することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態において、リアクトルが可飽和リアクトルであるときは、基準電流値を飽和電流値よりも10〜50A大きな値に設定する。これにより、トランジスタのオン状態を必要最小限の適正時間に設定することができる。