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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-196785(P2017-196785A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20171006BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20171006BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20171006BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20171006BHJP
   B41J 17/08 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
   B41J2/325 A
   B41J11/70
   B41J11/42
   B41J15/04
   B41J17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-88840(P2016-88840)
(22)【出願日】2016年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】西出 陽子
【テーマコード(参考)】
2C058
2C060
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C058AB18
2C058AC06
2C058AE04
2C058AE09
2C058AF06
2C058AF51
2C058GC09
2C058LA02
2C058LB09
2C058LB17
2C058LC02
2C058LC10
2C060BA04
2C060BC47
2C060BC84
2C060BC93
2C065AA01
2C065AC01
2C065DA12
2C065DA22
2C065DA26
2C065DA38
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068AA22
2C068BD23
2C068GH03
2C068KK16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】用紙装填時のイニシャル動作時に用紙の汚れがリボンに付着することを、リボンを無駄にせず且つリボンを破断させることなく有効に解決したプリンタを提供する。
【解決手段】用紙Paの初期装填を受けて制御手段7がイニシャル制御を行い、そのイニシャル制御に、繰り出した用紙の先端所定領域をカットして用紙先端を印刷開始位置にセットする制御と、リボンのうち染料が塗布されている印刷領域の先端を所定の印刷開始位置にセットする制御とを含む。そして、そのイニシャル制御中における用紙搬送時にリボンRbのうち使用される予定のない非使用領域を予め用紙ガイド位置Aに送り込むステップと、このステップ後からイニシャル制御終了までの間に非使用領域よりも繰り出し側に位置する次の印刷領域を所定の印刷開始位置にセットするステップとを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールから繰り出した用紙と巻取側リボンリールに巻き取られるリボンとを対向させてリボンを用紙に押し付け印刷を行なうにあたり、前記リボンの一部を用紙ガイド位置にて前記用紙のガイドに用いる搬送構造を備えるとともに、前記用紙の初期装填を受けて制御手段がイニシャル制御を行い、そのイニシャル制御に、繰り出した前記用紙の先端所定領域をカットして用紙先端を印刷開始位置にセットする制御と、前記リボンのうち染料が塗布されている印刷領域を所定の印刷開始位置にセットする制御とを含むプリンタにおいて、
前記イニシャル制御中に、少なくとも一部の用紙搬送時に前記リボンのうち使用される予定のない非使用領域を予め前記用紙ガイド位置に送り込むステップと、このステップ後からイニシャル制御終了までの間に前記非使用領域よりも繰り出し側に位置する前記印刷領域を所定の印刷開始位置にセットするステップとを実行するように構成したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記イニシャル制御中に、前記リボンを巻き取り方向にのみ移動させる請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記イニシャル制御が、前記用紙を往復方向に複数回搬送する制御を含み、前記リボンを用紙搬送の度に巻き取り方向に移動させて、用紙ガイドに供される非使用領域の位置を順次更新する請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記イニシャル制御が、カット位置に向かう前記用紙の先頭所定領域の後端が用紙ガイド位置を通過した時点でも、用紙ガイドに供した前記リボンの非印刷領域を巻き取り側に移動させる請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記リボンが複数色の染料の塗布領域を一組の印刷領域として当該印刷領域を巻き取り方向に連ねて構成されており、前記非使用領域が一組の印刷領域のなかの色と色の境界に位置する色間領域に設定されている請求項1〜4の何れかに記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙装填時のイニシャル動作時に用紙の汚れが染料リボン(以下、「リボン」と称する)の使用領域に付着することを効率良く適切に防止したプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプリンタとして、特許文献1に示すサーマルプリンタが知られている。このようなサーマルプリンタのなかでも、図24(a)に示すように、ロールから繰り出した用紙Paと巻取側リボンリール32に巻き取られるリボンRbとを対向させてリボンRbを押し付け印刷を行なうにあたり、リボンRbの一部を用紙ガイド位置Aにて用紙Paのガイドに用いる搬送構造を備えたものがある。このものは、用紙Paの初期装填を受けて印刷準備のためのイニシャル制御を行い、そのイニシャル制御に、繰り出した用紙Paの先端所定領域をカットして用紙先端を印刷開始位置にセットする制御と、リボンRbのうち染料が塗布されている印刷領域Z(図26参照)を所定の印刷開始位置にセットする制御とを含んでいる。このような制御を行うのは、ロール紙の外周1周分は用紙交換時や、用紙詰まり等によりプリンタから用紙を一旦取り外してプリンタへ再セットする作業時に、ユーザが用紙を触るために汚れが付着していることが多く、このような状態で印刷を行なっても染料が適切に発色せず、使用に耐えない場合が多いことにより、カット排出することが無難なためである。
【0003】
用紙Paを装填してからプリンタが待機状態になるまでの動作を、図24および図26に基づいて説明する。ここで、リボンRbは塗料としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバーコード(OP)が順次塗布されたものを使用しているとする。図24(a)で用紙Paをセットし、イニシャル制御が開始されると、図24(b)でリボンRbのY色先頭を検知するために、用紙Paを格納方向へ搬送し、図24(c)でリボンRbを所定の印刷開始位置(Y色プリント開始位置)まで送る。次に、図25(a)で用紙Paの汚れた部分gをカットするために用紙Paをカット位置まで搬送してカットし、図25(b)で用紙Paを印刷開始位置まで搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−20561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図24(c)でリボンRbを印刷開始位置にセットした後に図25(a)で用紙Paをカット排出のために搬送すると、用紙Paに汚れgがある場合にリボンRbの未使用領域に汚れg1として付着し、これが図25(b)以降の印刷工程で用紙Paに再転写されるという不都合を招来する。
【0006】
そこで従来では、図26に示すように、一部が汚損した未使用である一組の印刷領域Z(YMCOPの一組)を使用せずに巻取側リボンリール32に巻き取っており、リボンRbが無駄になるという課題があった。
【0007】
これに対して、リボンRbの印刷領域(YMCOP領域)のうち印刷済のものを用紙装填時におけるイニシャル動作時の用紙ガイドとして用いることも考えられるが、熱によるダメージを受けているため、破断するおそれがある。
【0008】
特に、図27に示すように、用紙ガイド位置Aへ向かう用紙Paのパスラインが印刷部を構成するサーマルヘッド11とプラテンローラ12の対向位置のところで屈曲している構造のものでは、用紙Paを差し込む動作が繰り返されることにより、用紙先端で熱ダメージを受けたリボンRbを突き上げて破損させるおそれが高い。一旦破断すると、破断箇所を適切に接着してリボンRbを再びプリンタ本体に装着しなければならず、場合によってはリボン全体が使用不可となるおそれもある。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決したプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明のプリンタは、ロールから繰り出した用紙と巻取側リボンリールに巻き取られるリボンとを対向させてリボンを用紙に押し付け印刷を行なうにあたり、前記リボンの一部を用紙ガイド位置にて前記用紙のガイドに用いる搬送構造を備えるとともに、前記用紙の初期装填を受けて制御手段がイニシャル制御を行い、そのイニシャル制御に、繰り出した前記用紙の先端所定領域をカットして用紙先端を印刷開始位置にセットする制御と、前記リボンのうち染料が塗布されている印刷領域を所定の印刷開始位置にセットする制御とを含むプリンタにおいて、前記イニシャル制御中に、少なくとも一部の用紙搬送時に前記リボンのうち使用される予定のない非使用領域を予め前記用紙ガイド位置に送り込むステップと、このステップ後からイニシャル制御終了までの間に前記非使用領域よりも繰り出し側に位置する前記印刷領域を所定の印刷開始位置にセットするステップとを実行するように構成したことを特徴とする。
【0012】
ここで「初期装填」には、新しい用紙を装填する場合のほか、保守等で一時的に用紙を取り出した後に再装填する場合も含まれる。また「イニシャル制御」とは、用紙の初期装填を受けてプリント開始に必要な準備を行なうための制御をいう。さらに、「染料が塗布されている印刷領域」は、ここではそれが使用済であるか否かを特に限定していない。
【0013】
このようにすれば、非使用領域を用紙ガイドに用いる事によって汚損してもリボンの無駄にならず、しかも印刷に供されていないことから熱的ダメージも受けていない。そして、印刷開始前にはかかる非使用領域は用紙ガイド位置からリボン巻き取り側に退避されるため、印刷時に用紙を再汚損するおそれも回避することができる。
【0014】
用紙の再汚損の可能性をより低減するためには、前記イニシャル制御中に、前記リボンを巻き取り方向にのみ移動させることが望ましい。
【0015】
特に、前記イニシャル制御が、前記用紙を往復方向に複数回搬送する制御を含む場合には、前記リボンを用紙搬送の度に巻き取り方向に移動させて、用紙ガイドに供される非使用領域の位置を順次更新することが効果的である。
【0016】
この場合、より万全を期すためには、前記イニシャル制御が、カット位置に向かう前記用紙の先頭所定領域の後端が用紙ガイド位置を通過した時点でも、用紙ガイドに供した前記リボンの非印刷領域を巻き取り側に移動させることが好適である。
【0017】
リボンが複数色の染料の塗布領域を一組の印刷領域として当該印刷領域を巻き取り方向に連ねて構成されている場合に、好ましい非使用領域としては、非使用領域が一組の印刷領域のなかの色と色の境界に位置する色間領域に設定されているものが挙げられる。
【0018】
ここで「色」には、有彩色のほか、無彩色やオーバーコート層等も含まれる。また、「色と色の境界に位置する色間領域」には、色と色の境界の色がない部分や、色と色が隣接している場合には色の境界を含む所定領域を指す。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した本発明によれば、用紙装填時のイニシャル動作時に用紙の汚れがリボンの使用領域に付着することを、リボンを無駄にせず且つリボンを破断させることなく有効に防止したプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの概略構成を示す構成図。
図2】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図3】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図4】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図5】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図6】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図7】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図8】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図9】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図10】本発明の第2実施形態に係るプリンタの概略構成とイニシャル制御時における制御手順を示す構成図。
図11】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図12】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図13】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図14】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図15】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図16】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図17】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図18】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図19】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図20】本発明の第3実施形態に係るプリンタの概略構成とイニシャル制御時における制御手順を示す構成図。
図21】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図22】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図23】同実施形態のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図24】従来のプリンタの概略構成とイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図25】同従来例のイニシャル制御時における制御手順を示す図。
図26】同従来例のイニシャル制御時におけるリボンの扱いを説明する図。
図27】同従来例のプリンタ構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0022】
この実施形態のプリンタであるサーマルプリンタは、図2に示すように、互いに異なる染料の塗料であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバーコード(OP)が順次塗布されたリボンRbを用い、記録媒体たる用紙Paに順次各色を印刷してカラープリントを行うプリンタである。本実施形態では、Y、M、C、OPを一組の印刷領域Zとして、この印刷領域ZがリボンRbの長手方向に連なって構成される。各色において白抜き四角の部分は印刷に供される使用領域Uであり、使用領域U、U間は使用される予定のない未使用領域(色間領域)αY、αM、αC、αOPである。
【0023】
サーマルプリンタの具体的な構成は、図1に示すように、印刷部1と、用紙Paを搬送する用紙搬送手段2と、リボンRbを搬送するリボン搬送手段3と、用紙Paをカットする用紙カット手段4と、染料のエッジ(境界)を検出するリボンセンサ5と、用紙Paの先端位置や後端位置を検出する用紙センサ6a、6bと、これらのセンサ5、6a、6bからの信号等に基づき印刷部1、用紙搬送手段2、リボン搬送手段3、用紙カット手段4を制御する制御手段7とを有する。
【0024】
印刷部1は、サーマルヘッド11及びプラテンローラ12を相対接離自在に構成したもので、ヘッドダウン状態とヘッドアップ状態とを切り替え可能にしている。ヘッドダウン状態は、図9に示すように、サーマルヘッド11及びプラテンローラ12でリボンRbを用紙Paに圧接した状態であり、ヘッドアップ状態は、図1に示すように、サーマルヘッド11及びプラテンローラ12を離間させてリボンRb及び用紙Paの圧接状態を開放した状態である。
【0025】
用紙搬送手段2は、フィードローラ21及びピンチローラ22を有し、両ローラ21、22で用紙Paを挟持しつつフィードローラ21を図示しないモータで回転駆動することで、用紙Paをグリップしつつ搬送する。なお、用紙Paは、図示しない位置に配したロール紙からサーマルヘッド11に対して繰り出され又は巻き戻される。
【0026】
リボン搬送手段3は、図1に示すように、サーマルヘッド11に供給するリボンRbを保持する供給側リボンリール31と、繰り出したリボンRbを巻き取る巻取側リボンリール32と、供給側リボンリール31、巻取側リボンリール32を回転駆動する図示しないリボン駆動部とを有し、巻取側リボンリール32を回転駆動することで供給側リボンリール31からリボンRbが繰り出され、繰り出されたリボンRbが巻取側リボンリール32に巻き戻される。リボンRbはサーマルヘッド11の周辺で用紙ガイドとしての機能を果たすべく、サーマルヘッド11に設けられた発熱抵抗部11aとその近傍に設けられたリボンガイドローラ33との間でリボンRbを用紙Paに対し略平行に張設する搬送構造が採用されている。このリボンRbの位置を「用紙ガイド位置A」と称する。勿論、発熱抵抗体11aと巻取側リボンリール32の間、またはその周辺にリボン剥離板やリボンガイド等が設けられている場合には、用紙ガイド位置Aは上記範囲よりも狭い範囲又は広い範囲となる場合もある。この用紙ガイド位置AでのリボンRbのガイド機能により、ロール紙から繰り出された用紙Paが反りを伴って装填されても、当該用紙Paを適切にサーマルヘッド11とプラテンローラ12の間の印刷位置に位置づけることができる。
【0027】
用紙カット手段4は、一対のカッタ刃41、42を相対接離自在に配置し、図示しない駆動機構でこれらを接離駆動して用紙Paをカットする。
【0028】
リボンセンサ5は、供給側リボンローラ31からサーマルヘッド11に至るリボンRbを挟み込む位置に配置される発光部51及び受光部52で構成され、発光部51で発光された光に対して受光部52の受光状態をもって染料のエッジを検出する。
【0029】
用紙センサ6a、6bは、印刷位置の周辺に配置され、発光した光が反射したか否かの状態によって、用紙Paの先端位置や後端位置を検出する。
【0030】
制御手段7は、周知のサーマルプリンタと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に図示しない所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、印刷制御部71、用紙搬送部制御72、リボン搬送制御部73、用紙カット制御部74等として機能する。
【0031】
印刷制御部71は、サーマルヘッド11のヘッドアップ、ヘッドダウン、発熱抵抗部11aへの印刷データに基づく通電制御を行う。用紙搬送制御部72は、アルゴリズムに沿った所定のタイミングで所定方向、所定量の用紙搬送を行うもので、用紙センサ6a、6bによる検知位置を基点として、フィードローラ21に設けた図示しないエンコーダから入力される回転数と予め設定されたフィードローラ21の径から用紙搬送量を取得し、制御に用いる。勿論、エンコーダを用いる代わりに、モータを制御するパルス信号、またはモータからのフィードバック信号を通じて回転角を割り出し、用紙搬送量を取得してもよいし、用紙センサ6a、6b間の用紙Paの通過時間から用紙搬送量を取得してもよい。リボン搬送制御部73は、アルゴリズムに沿った所定のタイミングで所定方向、所定量のリボンRbの送り動作を行なうもので、供給側リボンリール31に設けた図示しないエンコーダから入力される回転数と予め設定されたリボンロールRRの径からリボン送り量を取得して制御に用いる。勿論、巻取側リボンリール32にエンコーダを設けてその回転数と予め設定された巻取側リボンロール径からリボン送り量を取得してもよいし、リボン検知センサで現状の送り量を検出してもよい。リボンロールRRの径は使用とともに小さくなるので、径を検出する検出部をリボンロールRRに対して設けたり、初期装填時からの供給側リボンリール31の回転数の積算値とリボンRbの繰り出し速度の関係を表わす演算式やテーブルを設けるなどして、リボン送り量を割り出してもよい。用紙カット制御部74は、所定のタイミングでカッタ刃41、42を相対動作させて用紙Paを切断する。
【0032】
このような制御手段7を通じ、例えばY色の印刷開始位置へのリボンRbの繰り出し動作、Y色を用いた印刷動作、M色の印刷開始位置へのリボンRbの繰り出し動作、M色を用いた印刷動作…というように所定の印刷開始位置へのリボンRb繰り出し動作と、サーマルヘッド11への通電を通じた印刷動作と、用紙Paの往復動作とを順次実行することにより、複数種類の染料を用紙Paに順次印刷し、印刷が完了したら1頁分をカッタ4で切断する。
【0033】
そして本実施形態の制御手段7は、用紙Paが初期装填されたときのイニシャル制御として、用紙検知後にロール紙から繰り出された用紙Paの先頭所定領域分、具体的には手の脂等によって汚損している可能性のあるロール紙の外周1周分をカッタ4で切断し、しかる後、用紙PaおよびリボンRbを所定の印刷開始位置に移動させて印刷準備を完了するアルゴリズムを備えている。そしてその際に、用紙Paの先端所定領域に付着した汚れがリボンRbの使用領域に転写されることを防ぐべく、リボンRbのうち使用される予定のない領域である非使用領域、具体的には図2に示す色と色の間の色間領域αC、αOPを前記印刷ガイド位置Aに位置づけて用紙Paを搬送する制御を行うように構成されている。
【0034】
以下、そのアルゴリズムを図に基づいて説明する。
【0035】
まず、図2においてリボンRbが装填されている状態で用紙Paを初期装填すると、用紙センサ6aが用紙Paを検知した段階で、イニシャル制御を開始する。リボンRbが前回印刷終了時の状態にある場合には、前回印刷時に使用した一組の印刷領域ZのうちY色先頭又はその印刷領域Zについて必要に応じて定めた位置をリボンセンサ5が検出するまでリボンRbを供給側リボンリール31側へ巻き戻す。
【0036】
そして先ず、図3で用紙先端Pを検知するために、用紙センサ6bの位置に用紙先端Pが位置するまで用紙Paを格納方向へ搬送する。このとき、用紙Paに汚れdがあれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れd1として付着する。
【0037】
次に、図4のようにリボンセンサ5でリボンRbの位置を検出し、第1の非使用領域が用紙ガイド位置Aに来るようにリボンを巻き取る。ここでの第1の非使用領域は、オーバーコートOPとシアンCの間の色間領域αCに設定されている。リボンセンサ5の位置から用紙ガイド位置Aの所定部位(例えばサーマルヘッド11の発熱抵抗部11aとリボンロール33の中間位置)までの距離は予め判っているため、リボンセンサ5でオーバーコートOPとシアンCの境界を検出したら、この境界が上記中間位置にくるまでリボンRbを巻き取り方向に所定量搬送する。
【0038】
次に、図5に示すように、汚損している可能性のある用紙Paの先端所定領域であるロール紙の外周1周分をカットするため、カット位置に向かって用紙Paを所定距離搬送する。送り量は、用紙センサ6bからカッタ4までの距離+先端所定領域寸法である。このとき、用紙Paに汚れdが残っていれば、これが用紙ガイド位置Aにある色間領域αCに汚れd2として付着する。
【0039】
そして、図6において、用紙Paをカット、排出する。なお、用紙カット後、そのままの位置、もしくは印刷開始位置までの用紙搬送が短い場合は、後述する図9のリボン送り動作にスキップしてもよい。
【0040】
その後、印刷準備のため、図7のようにリボンセンサ5でリボンRbのY色先頭を検出し、印刷開始前の位置にリボンRbをセットする。この印刷開始前の位置とは、リボンRbの第2の非使用領域であるイエローYとオーバーコートOPの境界の色間領域αOPが用紙ガイド位置Aに到来する位置である。
【0041】
次に、制御手段7は図8で、必要に応じて用紙Paを印刷開始位置まで搬送し、図9において、リボンRbを、未使用の印刷領域Zに属するY色先頭Y0が印刷位置を少し過ぎた状態となる印刷開始位置に到来するまで所定長さ分送り、イニシャル制御を完了する。その後、印刷指令が入ったら、ヘッドダウンして印刷を開始する。図8で用紙Paに汚れdが付着していればこれが用紙ガイド位置Aにある色間領域αOPに汚れd3として付着するが、図9のリボン送り動作によって印刷位置から巻き取り側に退避される。
【0042】
用紙Paへの汚れdの再転写があったとしても、汚れdは転写の度に希釈化されて問題のないレベルに低減される。
【0043】
以上のように、この実施形態のプリンタは、ロールから繰り出した用紙Paと巻取側リボンリール32に巻き取られるリボンRbとを対向させてリボンRbを用紙Paに押し付け印刷を行なうにあたり、リボンRbの一部を用紙ガイド位置Aにて用紙Paのガイドに用いる搬送構造を備えるとともに、用紙Paの初期装填を受けて制御手段7がイニシャル制御を行い、そのイニシャル制御に、繰り出した用紙Paの先端所定領域をカットして用紙先端を印刷開始位置にセットする制御と、リボンRbのうち染料が塗布されている印刷領域Zの先端を所定の印刷開始位置にセットする制御とを含むものである。
【0044】
そして、そのイニシャル制御中における用紙搬送時にリボンRbのうち使用される予定のない非使用領域αC、αOPを予め用紙ガイド位置Aに送り込むステップと、このステップ後からイニシャル制御終了までの間に非使用領域αC、αOPよりも繰り出し側に位置する印刷領域Zすなわち次の未使用の印刷領域Zを所定の印刷開始位置にセットするステップとを実行するように構成している。
【0045】
このようにすれば、非使用領域αC、αOPが用紙ガイドによって汚損してもリボンの無駄にならず、しかも非使用領域αC、αOPは印刷に供されていないことから熱的ダメージも受けておらず破断の恐れもない。そして、印刷開始前にはかかる非使用領域αC、αOPは用紙ガイド位置Aからリボン巻き取り側に退避されるため、印刷時に用紙Paを再汚損するおそれも有効に回避することができる。
【0046】
特に、イニシャル制御中に、リボンRbを巻き取り方向にのみ移動させるので、汚損した非印刷領域αC、αOPがイニシャル動作中に再び用紙ガイド位置Aに戻ってくることがなく、用紙Paの再汚損の可能性はより低減されたものとなる。
【0047】
より具体的には、イニシャル制御が、用紙Paを往復方向に複数回搬送する制御を含んでおり、リボンRbを用紙搬送の度に巻き取り方向に移動させて、用紙ガイドに供される非使用領域αC、αOPの位置を順次更新するようにしており、用紙搬送の度に汚損した非使用領域αC、αOPが巻き取り側に退避されるので、用紙Paの再汚損の可能性はより有効に低減されたものとなる。
【0048】
特に、リボンRbが複数色の染料の塗布領域を一組の印刷領域Zとしてこの印刷領域Zを巻き取り方向に連ねて構成されており、非使用領域が一組の印刷領域Zのなかの色と色の境界に位置する色間領域αC、αOPに設定されており、これらの色間領域αC、αOPは印刷に使用されないので、無駄がなく効率的である。
【0049】
なお、非使用領域として一組の印刷領域Zのうちのどの色間領域を使うかは、適宜設定することができる。また、図5において、カット位置に向かう用紙Paの先頭所定領域(未使用の用紙ロールの外周1周分)の後端が用紙ガイド位置Aを通過した時点で一旦用紙搬送を止め、用紙ガイドに供したリボンRbの非印刷領域である色間領域を巻き取り側に移動させ、しかる後に用紙搬送を再開させても有効である。このようにすると、汚損した用紙Paの先端所定領域をガイドした非使用領域である色間領域は、先端所定領域が通過した時点で退避され、汚損箇所d2が巻き取り側に移動するので、その後に先端所定領域の後端がカット位置に移動するまでに用紙ガイド位置Aを通過する用紙を再汚損することを防止することができる。このような制御を含める場合には、色間領域を1つ余分に使用する必要があるので、最初に色間領域αMを用紙ガイド位置Aに当てがって順次αC、αOPと更新していくのがよい。
<第2実施形態>
【0050】
この実施形態は、図10に示すように、リボン検出と用紙検出を兼ねたセンサ105を用いており、センサ105は上記実施形態の発光部51及び受光部52と同様にして染料のエッジを検出する発光部151及び受光部152を有するほか、用紙Paに反射した光を受光することで用紙検出を行う受発光部(図示せず)を有する。発光部151が受光機能を兼ねていてもよい。ただし、用紙Paを退避させなければリボン位置が検出できないため、部品点数は少ないがその分の制御ステップが増えている。図10において図1図2と共通する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
まず、図10においてリボンRbが装填されている状態で、用紙Paを初期装填すると、用紙センサ105が用紙装填を検知した段階で、イニシャル制御を開始する。
【0052】
図11でリボンRbの位置を検知するために、用紙Paを格納方向へ搬送する。このとき、用紙Paに汚れeがあれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れe1として付着する。
【0053】
次に、リボンRbが前回印刷終了時の状態にある場合には、図12に示すリボンセンサ105でリボンRbの位置を検出し、前回印刷時に使用した一組の印刷領域ZのうちのY色先頭又はその印刷領域Zについて必要に応じて定めた位置をリボンセンサ105が検出するまでリボンRbを供給側リボンリール31側へ巻き戻した後、第1の非使用領域が用紙ガイド位置Aに来るように巻取側リボンリール32でリボンRbを巻き取る。ここでの第1の非使用領域は、前記実施形態よりも1つ隣の色間領域であるシアンCとマゼンダMの間の色間領域αMに設定されている。ここでも、センサ105の位置から用紙ガイド位置Aの所定部位(例えばサーマルヘッド11の発熱抵抗部11aとリボンロール33の中間位置)までの距離は予め判っているため、センサ105でシアンCとマゼンダMの境界を検出したら、この境界が上記中間位置にくるまでリボンRbを所定量搬送する。
【0054】
次に、図13に示すように、汚損している可能性のある用紙Paの先端所定領域であるロール紙の外周1周分をカットするため、カット位置に向かって用紙Paを所定距離搬送する。送り量は、センサ105が用紙Paの先端を検知したときを基点として、センサ105からカッタ4までの距離+先端所定領域寸法である。このとき、用紙Paに汚れeがあれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れe2として付着する。
【0055】
そして、図14において、カッタ4で用紙Paをカットする。
【0056】
さらに、図15において、第2の非使用領域が用紙ガイド位置Aに来るようにリボンRbを巻き取る。ここでの第2の非使用領域は、オーバーコートOPとシアンCの間の色間領域αCに設定されている。色間領域αMから色間領域αCまでの距離は予め判っているため、その距離だけリボンRbを搬送する。
【0057】
そして、図16に示すように、リボンRbのY色先頭をセンサ105で検知するために、用紙Paを格納方向へ搬送する。このとき、図14の用紙搬送時にリボンRbの汚れが用紙Paに汚れeとして転写されていれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れe3として付着する。
【0058】
さらに、印刷準備のため、図17のようにセンサ105でリボンRbのY色先頭を検出し、印刷開始前の位置にリボンRbをセットする。この印刷開始前の位置とは、第3の非使用領域であるイエローYとオーバーコートOPの境界の色間領域αOPが用紙ガイド位置Aに到来する位置である。
【0059】
そして、制御手段7は図18で、用紙を印刷開始位置まで搬送する。このときに用紙Paに汚れeがあれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れe4として付着する。そして、図19において、リボンRbを、Y色先頭が印刷位置を少し過ぎた状態となる印刷開始位置まで所定長さ分送る。以上でイニシャル制御を完了する。その後、印刷指令が入ったら、ヘッドダウンして印刷を開始する。
【0060】
用紙Paへの汚れeの再転写があったとしても、汚れeは転写の度に希釈化されて問題のないレベルに低減される。
【0061】
以上のように構成しても、非使用領域αM、αC、αOPが用紙Paによって汚損してもリボンの無駄にならず、しかも印刷に供されていないことから熱的ダメージも受けていない。そして、印刷開始前にはかかる非使用領域αM、αC、αOPは用紙ガイド位置Aからリボン巻き取り側に退避されるため、印刷時に用紙Paを再汚損するおそれも回避することができる。
【0062】
特に、イニシャル制御中に、リボンRbを巻き取り方向にのみ移動させる点で上記第1実施形態と同様であり、汚損した非印刷領域αM、αC、αOPがイニシャル動作中に再び用紙ガイド位置Aに戻ってくることがなく、用紙Paの再汚損の可能性はより低減されたものとなる。
【0063】
より具体的には、イニシャル制御が、用紙Paを往復方向に複数回搬送する制御を含んでおり、リボンRbを用紙搬送の度に巻き取り方向に移動させて、用紙ガイドに供される非使用領域αM、αC、αOPの位置を順次更新する点でも上記第1実施形態と同様であり、用紙搬送の度に汚損した非使用領域αM、αC、αOPが巻き取り側に退避されるので、用紙Paの再汚損の可能性はより有効に低減されたものとなる。
【0064】
さらに、リボンRbが複数色の染料の塗布領域を一組の印刷領域Zとしてこの印刷領域Zを巻き取り方向に連ねて構成され、非使用領域が一組の印刷領域Zのなかの色と色の境界に位置する色間領域に設定されている点でも上記実施形態と同様であり、リボンRbの色間領域は印刷に使用されないので、無駄がなく効率的である。
<第3実施形態>
【0065】
上記第2実施形態では、これから印刷に供しようとする一組の印刷領域Zの1つ前の印刷領域Zであって既に印刷に供された箇所を、当該印刷領域Zの先端が印刷位置よりも供給側リボンリールに位置するように巻き戻すステップが前提にあるが、図20に示す本実施形態ではリボンRbと用紙Paの検出を共用するセンサ205を用いつつ、前回の印刷終了時点からそのような巻き戻しをせずに上記に準じた効果を得ようとするものである。
【0066】
なお、図1及び図2と共通する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
この実施形態では、図20(a)に示すようにリボンRbが装填されている状態で用紙Paが初期装填されると、イニシャル制御が開始され、図20(b)でリボンRbのY色先頭又はその印刷領域Zについて必要に応じて定めた位置を検知するために用紙Paを格納方向へ移動させる。このとき、用紙Paに汚れfがあれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れf1として付着する。
【0068】
次に、図21(a)で示すように今のリボンRbの位置を確認するため、リボンRbをY色先頭を検知するまで送り、図21(b)でリボンRbの非使用領域が用紙ガイド位置にくるまでリボンRbを巻き戻す。この非使用領域は何れかの色間領域である。その後、図22(a)で用紙Paをカット方向に所定距離移動させてカッタ4で用紙Paをカット排出する。このとき、用紙Paに汚れfがあれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れf2として付着する。そして、図22(b)でリボンのY色先頭を検知するため、再び用紙Paを格納方向へ搬送する。このときも、用紙Paに汚れfがあれば、これが用紙ガイド位置AにあるリボンRbに汚れf3として付着する。最後に、図23(a)でリボンRbをY色プリント開始位置まで送り、図23(b)で用紙Paを印刷開始位置まで搬送して、イニシャル動作を終了する。その後、印刷指令が入ると、ヘッドダウンして印刷を開始する。
【0069】
このようにすると、イニシャル制御の途中でリボンRbの汚損した部分を用紙ガイド位置A側に巻き戻す点で万全とは言えないまでも、最終的にリボンRbの一部の非使用領域は用紙の汚れを写し取って印刷位置から巻き取り側に退避するので、上記実施形態に準じた作用効果が奏される。
【0070】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されない。
【0071】
例えば、リボンを用紙とともに取り替えたときは、連なった印刷領域のうち巻き取り側の先頭にあって未使用状態にある一組の印刷領域の一部を上記非使用領域に設定してもよい。リボンを用紙とともに取り替えたときは、リボンのうち巻き取り側の先頭にあって未使用状態にある一組の印刷領域の一部は巻取側リボンリールに巻き付けられてYMCOPが揃わないことから印刷に供することができず、もともと非使用領域であるため、ここを汚損した用紙のガイドに使用すればリボンを無駄にすることもない。
【0072】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
7…制御手段
32…巻取側リボンリール
A…用紙ガイド位置
Pa…用紙
Rb…リボン
Z…一組の印刷領域
αOP、αC、αM…非使用領域(色間領域)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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図15
図16
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