(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-197146(P2017-197146A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】車載用照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/74 20170101AFI20171006BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20171006BHJP
F21W 101/08 20060101ALN20171006BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20171006BHJP
【FI】
B60Q3/02 C
F21V7/00 570
F21V7/00 320
F21W101:08
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-91765(P2016-91765)
(22)【出願日】2016年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 順平
【テーマコード(参考)】
3K040
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040CA05
3K040DA03
3K040FB03
3K040GA02
3K040GA04
3K040GB01
3K040GC01
(57)【要約】
【課題】車載用照明装置の構造を簡単にすること、あるいは、車載用照明装置のデザインの変更を容易にすることを目的とする。
【解決手段】後方に向かう光を前方のあらゆる方向に反射するミラープレート24と、ミラープレート24に開けられた穴の後方から前方に向けて光を発する発光ダイオード36と、ミラープレート24の前方に設けられ、発光ダイオード36から発せられた光を後方に広がった範囲に向けて反射する拡散反射部25と、拡散反射部25よりも前方の位置でミラープレート24の前面に対向し、ミラープレート24で反射した光の一部をミラープレート24側に反射し、残りを前方に透過するルームランプ用レンズ18とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方に向かう光を前方のあらゆる方向に反射する反射板と、
前記反射板の前方に向けて光を発する光源と、
前記反射板の前方に設けられ、前記光源から発せられた光を後方に広がった範囲に向けて反射する拡散反射部と、
前記拡散反射部よりも前方の位置で前記反射板に対向し、前記反射板で反射した光の一部を前記反射板側に反射し、残りを前方に透過するレンズと、を備えることを特徴とする車載用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用照明装置において、
前記反射板は前後に開口する穴を有し、
前記光源は、前記穴よりも後方に位置して前記穴よりも前方に光を発し、
前記拡散反射部は、前記穴の前方に位置することを特徴とする車載用照明装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車載用照明装置において、
前記レンズの後面に設けられ、前記反射板で反射した光の一部を前記反射板側に反射し、残りを前方に透過する電極と、
前記電極の静電容量に応じて、前記光源を点灯させ、または消灯させる制御回路と、を備えることを特徴とする車載用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用照明装置に関し、特に、光源から発せられた光を反射板で反射して前方を照らす装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室の天井には照明装置が取り付けられている。この照明装置には、車室の全体を照らすルームランプや運転席および助手席を個別に照らすマップランプが設けられている。自動車に搭載される照明装置には、車室側に開口が設けられたケース内に発光ダイオードや電球等の光源が設けられ、光を透過するレンズがケースの開口を覆うものがある。
【0003】
近年、車室の居住性を向上させるため、照明装置には様々な工夫が凝らされている。例えば、レンズにダイヤカット加工、シボ加工等を施し、レンズで光を散乱させて美観を奏するものがある。
【0004】
以下の特許文献1には、自動車に搭載される照明装置が記載されている。また、特許文献2には表示装置が記載されている。この表示装置では、光源から発せられた光が、ハーフミラー板とミラー板との間に挟まれた導光板に導かれる。導光板に入射した光は、ハーフミラー板とミラー板との間を多重反射しながら一部がハーフミラー板を透過する。導光板には光を散乱させる構造が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−230450号公報
【特許文献2】特開2010−2635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
照明装置の美観を向上させようとする場合、一般に、部品点数が増加し構造が複雑となる。また、複数種のデザインの照明装置を製造する場合には、デザインごとに特異な設計がなされることにより、デザインごとに異なる部品を用いなければならない場合もある。
【0007】
本発明は、車載用照明装置の構造を簡単にすること、あるいは、車載用照明装置のデザインの変更を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、後方に向かう光を前方のあらゆる方向に反射する反射板と、前記反射板の前方に向けて光を発する光源と、前記反射板の前方に設けられ、前記光源から発せられた光を後方に広がった範囲に向けて反射する拡散反射部と、前記拡散反射部よりも前方の位置で前記反射板に対向し、前記反射板で反射した光の一部を前記反射板側に反射し、残りを前方に透過するレンズと、を備えることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、前記反射板は前後に開口する穴を有し、前記光源は、前記穴よりも後方に位置して前記穴よりも前方に光を発し、前記拡散反射部は、前記穴の前方に位置する。
【0010】
望ましくは、前記レンズの後面に設けられ、前記反射板で反射した光の一部を前記反射板側に反射し、残りを前方に透過する電極と、前記電極の静電容量に応じて、前記光源を点灯させ、または消灯させる制御回路と、を備える。
【0011】
望ましくは、前記反射板の前面は凹凸形状を有する。また、望ましくは、前記拡散反射部は、後方に突出した形状を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車載用照明装置の構造を簡単にすることができる。あるいは、車載用照明装置のデザインの変更を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車室の天井に取り付けられた車載用照明装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には本発明の実施形態に係る車載用照明装置10が示されている。車載用照明装置10は、車室の天井12に取り付けられている。
図1には、車載用照明装置10が、フロントガラス14の近傍の領域に、車室の後方斜め下に前面が向けられるように取り付けられた例が示されている。
【0015】
車載用照明装置10は、ルームランプおよびマップランプを備えている。ルームランプおよびマップランプは筐体16内に収容され、それぞれ、ルームランプ用レンズ18およびマップランプ用レンズ20によって覆われている。ルームランプから発せられる光は、ルームランプ用レンズ18を透過して車室を全体的に明るく照らす。マップランプから発せられる光はマップランプ用レンズ20を透過して座席を部分的に明るく照らす。車載用照明装置10には、各ランプやアクセサリ機器を操作するためのボタン22が筐体16の前面に設けられている。
【0016】
図2には、ルームランプから発せられる光の美観を向上させるための部品に着目した分解斜視図が示されている。車載用照明装置10は、筐体16の後方から、ミラープレート24、ミラーガイド26、および基板34が重ねられた構造を有する。ミラーガイド26は、略長方形の底面28の周囲が側壁30で囲まれたミラー嵌め込み部32を有している。ミラー嵌め込み部32には、ミラープレート24が前方から嵌め込まれる。側壁30は底面28の周囲から前方に立ち上がっており、ミラープレート24を保持する。
【0017】
ミラーガイド26の後方には、ルームランプ(光源)としての発光ダイオード36が実装された基板34が取り付けられる。ミラー嵌め込み部32の底面28には導光穴40が設けられており、基板34に実装された発光ダイオード36は導光穴40の後方に位置する。発光ダイオード36の前方には柱状の導光部材38が設けられる。導光部材38は、光を透過するプラスチック樹脂等によって形成されている。
【0018】
ミラープレート24の中央付近には拡散反射部25が設けられている。拡散反射部25は、発光ダイオード36から導光部材38および導光穴40を介して前方に放射された光を後方に広がった範囲に反射する構造を有している。拡散反射部25で反射した光は、ミラープレート24の前面に照射される。
【0019】
図3には、
図1におけるAA線断面が示されている。ここでは、図の左方向(z軸正方向)を車載用照明装置10の前方向、上方向(y軸正方向)を車載用照明装置10の上方向としてその構造を説明する。ただし、本明細書における上下左右の定義は、構造を説明するための便宜上のものであり、車載用照明装置10の姿勢を限定するものではない。
図3には、筐体16、ルームランプ用レンズ18、ボタン22、ミラーガイド26、ミラープレート24および基板34が示されている。筐体16は、筐体本体42、意匠パネル44およびボタン操作パネル46を備える。筐体本体42および意匠パネル44には、ルームランプ開口50が設けられており、意匠パネル44は、ルームランプ開口50の縁が重なるように筐体本体42の前方に取り付けられている。ルームランプ開口50はルームランプ用レンズ18の形状に合わせて略長方形に形成されており、ルームランプ開口50にはルームランプ用レンズ18が嵌め込まれている。
【0020】
ルームランプ用レンズ18の後面には電極19が形成されている。この電極19は、例えば、スパッタリング、蒸着等の加工法によって金属を付着させることで形成されている。電極19の材料にはステンレスやクロムがあり、光の透過率を、例えば、20%〜25%とする。これによってルームランプ用レンズ18はハーフミラーとして機能する。すなわち、ルームランプ用レンズ18は、後方から照射された光の一部を後方に反射し、残りを前方に透過する。
【0021】
意匠パネル44の上方は後方に下がっており、ボタン22の本体やその電気配線を配置するためのボタン領域48が設けられている。ボタン領域48の前方はボタン操作パネル46に覆われている。ボタン操作パネル46には、ボタン配置穴が設けられており、ボタン配置穴からボタン22が前面に現れている。
【0022】
筐体本体42のルームランプ開口50の位置には、後方からミラーガイド26が取り付けられている。ミラーガイド26における底面28の中央付近には、前後方向に延びる導光穴40が設けられている。底面28にはミラープレート24が固定されており、ミラープレート24の前面はルームランプ用レンズ18の後面に対向している。ミラープレート24における導光穴40の前方には拡散反射部25が形成されている。拡散反射部25の構造の詳細については後述する。
【0023】
ミラーガイド26の後方には基板34が配置されている。基板34の前面には発光ダイオード36が取り付けられている。発光ダイオード36は導光穴40の後方に位置している。発光ダイオード36の前方には導光部材38が設けられている。
【0024】
基板34には、発光ダイオード36の点灯および消灯を切り換える制御回路が実装されている。ルームランプ用レンズ18の後面の電極19は、人体を検出するための静電容量センサとなっている。電極19は基板34に電気的に接続されている。ユーザがルームランプ用レンズ18の前面に手を触れるか、手を近付けると電極19の静電容量が変化する。制御回路は、電極19の静電容量の変化に応じて発光ダイオード36を点灯し、または、消灯する。
【0025】
図4には、ミラープレート24の斜視図が示されている。この図には部分拡大図が併せて示されている。ミラープレート24は、乱反射プレート52および支持プレート54を備える。支持プレート54の中央付近には拡散反射部25が形成されている。また、支持プレート54における拡散反射部25の後方には、ミラーガイドの導光穴から放射された光を前方に通す第2導光穴56が設けられている。
【0026】
乱反射プレート52は、後方に向かう光を前方のあらゆる方向に反射する反射板としての機能を有する。乱反射プレート52は支持プレート54の前面に接合されている。乱反射プレート52の中央付近には拡散反射部25を挿通する穴が設けられている。乱反射プレート52は、複数の六角錐凹み58が配列された形状を有している。六角錐凹み58は、形状および大きさが同一の6枚の三角形板を、これらの底辺が六角形を描くように配置し後方に頂点を向けて六角錐を形成したものである。六角錐凹み58の開口は正六角形を有しており、複数の六角錐凹み58が隙間なく並べられている。乱反射プレート52の表面には、光を反射する加工が施されている。例えば、乱反射プレート52の表面には、スパッタリング、蒸着等の加工法によってアルミニウム等の金属を付着させることで鏡面が形成される。乱反射プレート52の表面に光が照射されると各六角錐凹み58で多方向に光が反射する。複数の六角錐凹み58のそれぞれにおいて多方向に光が反射するため、乱反射プレート52の表面全体においてあらゆる方向に光が反射(乱反射)する。
【0027】
図5には、形状が異なる別のミラープレート24が示されている。乱反射プレート60は、内側から外側に向かって凹凸を繰り返す形状を有している。
図5には、凹凸形状が三角波形状である例が示されている。すなわち、乱反射プレート60は、内側から外側、あるいは、外側から内側に向かって山および谷を繰り返す形状を有している。各山部分62は円または円弧形状となっており、複数の山部分62が複数の同心円の一部または同心円を描く。山部分62は外側程高くしてもよい。
図4の乱反射プレート52と同様、
図5の乱反射プレート60の表面には光を反射する加工が施されている。乱反射プレート60の表面に光が照射されると、各山部分62の傾斜面で多方向に光が反射する。複数の山部分62のそれぞれにおいて多方向に光が反射するため、乱反射プレート60の表面全体において光が乱反射する。
【0028】
図6には拡散反射部25の拡大図が示されている。z軸正方向は車載用照明装置の前方向に対応し、y軸正方向は車載用照明装置の上方向に対応する。拡散反射部25は、円板64、拡散突出部68、および脚66を備えている。円板64の周辺近傍からは、後方に3本の脚66が伸びている。3本の脚66の先端は支持プレート54の前面に結合しており、円板64は一方の面が前方に向けられた姿勢で支持プレート54の第2導光穴56の前方で固定されている。
【0029】
円板64の後面には、拡散突出部68が形成されている。拡散突出部68は、yz平面上で左斜め上方に凸である仮想曲線Cを母線として、仮想曲線Cの上端を通りz軸方向に伸びる仮想軸Aを中心に回転させた回転体形状を有する。すなわち、拡散突出部68は、後方に突出し、その側面が凹んだ形状を有している。第2導光穴56から前方に向かう光は、拡散突出部68で拡散され、後方に広がった範囲に向かって反射する。円板64の後面および拡散突出部68の表面には、光を反射する加工が施されている。例えば、これらの面には、スパッタリング、蒸着等の加工法によって金属を付着させることで鏡面が形成される。また、円板64の後面および拡散突出部68の表面には適切な粗さの凹凸形状を持たせてもよい。
【0030】
なお、拡散突出部68は、側面が斜め後方に膨らんだ形状を有していてもよいし、円錐形状や多角錐形状であってもよい。
【0031】
図3に戻って、車載用照明装置10の動作について説明する。ルームランプ用レンズ18はハーフミラーとして機能する。発光ダイオード36が消灯しているときは、車室側から入射しルームランプ用レンズ18の後面で反射した光が車室側のユーザに認識される。これによって、発光ダイオード36が消灯しているときは、ルームランプ用レンズ18は鏡のように見える。
【0032】
発光ダイオード36が点灯すると、発光ダイオード36から発せられる光が導光部材38に入射する。その光は導光部材38を通って前方の拡散反射部25の拡散突出部68に入射する。導光部材38内では、導光部材38とその外部との境界で光が反射するため、発光ダイオード36から発せられた光には、導光部材38内で多重反射して導光部材38から前方の拡散突出部68に入射するものもある(L1)。
【0033】
拡散突出部68に入射した光は、後方に広がった範囲に向かって反射し、ミラープレート24の表面に入射する(L2)。ミラープレート24の表面で乱反射した光は、ルームランプ用レンズ18の後面に入射する(L3)。ルームランプ用レンズ18の後面に入射した光は、その一部が後方に反射し(L4)、残りがルームランプ用レンズ18を透過する(L5)。ミラープレート24の表面での乱反射およびルームランプ用レンズ18での反射によって、光は、ミラープレート24とルームランプ用レンズ18との間で多重反射し筐体16内に光が行き渡る。この多重反射と共に、ルームランプ用レンズ18に光が透過して車載用照明装置10の前方に光が放射され、車室が明るく照らされる。
【0034】
このように、ルームランプ用レンズ18の後方では、光が乱反射すると共にミラープレート24とルームランプ用レンズ18との間で多重反射し、ミラープレート24の表面形状に応じた模様が光によって描かれる。例えば、
図4に示されているミラープレート24を用いた場合には、複数の光源が立体的に配列されているかのような奥行き感がユーザに認識される。
【0035】
本発明に係る車載用照明装置では、ミラープレートの形状を工夫することで、複数の光源を用いなくとも、あたかも複数の光源を用いたかのような光の模様が描かれる。これによって、車載用照明装置の構造が簡単となる。また、ミラープレートを表面形状が異なる別のミラープレートに変更することで、光の模様が変更される。したがって、本発明に係る車載用照明装置ではデザインの変更が容易である。
【符号の説明】
【0036】
10 車載用照明装置、12 天井、14 フロントガラス、16 筐体、18 ルームランプ用レンズ、19 電極、20 マップランプ用レンズ、22 ボタン、24 ミラープレート、25 拡散反射部、26 ミラーガイド、28 底面、30 側壁、32 ミラー嵌め込み部、34 基板、36 発光ダイオード、38 導光部材、40 導光穴、42 筐体本体、44 意匠パネル、46 ボタン操作パネル、48 ボタン領域、50 ルームランプ開口、52,60 乱反射プレート、54 支持プレート、56 第2導光穴、58 六角錐凹み、62 山部分、64 円板、66 脚、68 拡散突出部。