特開2017-197387(P2017-197387A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-197387(P2017-197387A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】繊維機械およびその動作方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/00 20060101AFI20171006BHJP
   D01H 13/00 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
   B65H67/00
   D01H13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-87440(P2017-87440)
(22)【出願日】2017年4月26日
(31)【優先権主張番号】10 2016 107 994.4
(32)【優先日】2016年4月29日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】509120344
【氏名又は名称】ライター インゴルスタドト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ウェイドナー − ボーネンベルガー
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112KA00
3F112QA01
3F112VB02
4L056AA02
4L056AA15
4L056EB04
4L056EB20
4L056EB29
4L056ED03
4L056FC06
(57)【要約】
【課題】作業ステーションのメンテナンス処理を効率化し、繊維機械の生産性を向上させること。
【解決手段】複数の作業ステーション(2)を有する繊維機械(1)の動作方法であって、前記作業ステーション(2)の通常動作により、糸を製造し、または供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るステップと、前記作業ステーション(2)の通常動作を所定時間中断するステップと、1つまたは複数のメンテナンス装置(3)により、前記作業ステーション(2)の通常動作を再開させるためのメンテナンス処理を行うステップとを含み、前記メンテナンス処理を必要とする作業ステーション(2)の数が前記メンテナンス装置(3)によって同時にメンテナンス処理を行うことができる作業ステーション(2)の数を超える場合、各作業ステーション(2)の製造パラメータを考慮して、バッチ変更が最も早く完了するように、前記メンテナンス処理が行われる作業ステーション(2)の順序が決定されることを特徴とする方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業ステーション(2)を有する繊維機械(1)の動作方法であって、
前記作業ステーション(2)の通常動作により、糸を製造し、または供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るステップと、
前記作業ステーション(2)の通常動作を所定時間中断するステップと、
1つまたは複数のメンテナンス装置(3)により、前記作業ステーション(2)の通常動作を再開させるためのメンテナンス処理を行うステップとを含み、
前記メンテナンス処理を必要とする作業ステーション(2)の数が前記メンテナンス装置(3)によって同時にメンテナンス処理を行うことができる作業ステーション(2)の数を超える場合、各作業ステーション(2)の製造パラメータを考慮して、バッチ変更が最も早く完了するように、前記メンテナンス処理が行われる作業ステーション(2)の順序が決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記製造パラメータには、製造進捗、予想製造速度および/または予想されるメンテナンス処理が含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッチ変更は、すべてのまたは一部の前記作業ステーション(2)において行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各作業ステーション(2)には、糸の製造完了予定時刻が設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各作業ステーション(2)には、同一の前記製造完了予定時刻が設定されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各作業ステーション(2)の製造パラメータを考慮して、バッチ変更を行うための1つまたは複数の玉揚げ装置(7)のタイムテーブルが作成され、
前記タイムテーブルは、前記玉揚げ装置(7)による玉揚げ作業が各作業ステーション(2)において一度ずつ行われるように構成され、
前記タイムテーブルに基づき、各作業ステーション(2)に前記玉揚げ装置(7)による玉揚げ開始予定時刻が設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記製造パラメータに基づき、各作業ステーション(2)における糸の製造完了予定時刻が決定され、前記製造完了予定時刻と前記玉揚げ開始予定時刻の差が大きい作業ステーション(2)ほど、前記メンテナンス処理の優先順位が高く設定されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記優先順位を考慮して、前記タイムテーブル、前記玉揚げ開始予定時刻および前記製造完了予定時刻が更新され、前記更新された製造完了予定時刻と玉揚げ開始予定時刻の差に基づいて前記優先順位が更新され、
前記優先順位の更新は、繰り返し行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記製造完了予定時刻と前記玉揚げ開始予定時刻の差が第1の所定値より大きい作業ステーション(2)の製造速度は増大され、前記製造完了予定時刻と前記玉揚げ開始予定時刻の差が第2の所定値より小さい作業ステーション(2)の製造速度は低減されることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
糸の製造が完了していない作業ステーション(2)においても、バッチ変更が行われ得ることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
糸を製造し、または供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るための複数の作業ステーション(2)と、
1つまたは複数のメンテナンス装置(3)とを有する繊維機械(1)であって、
前記繊維機械(1)はさらに、前記繊維機械(1)を請求項1〜10のいずれかに記載の方法にしたがって動作させるように構成された制御ユニット(5)を有するか、または、前記制御ユニット(5)に連動可能に接続されていることを特徴とする繊維機械(1)。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の作業ステーションの通常動作により、糸を製造し、または供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るステップと、作業ステーションの通常動作を所定時間中断するステップと、1つまたは複数のメンテナンス装置により、作業ステーションの通常動作を再開させるためのメンテナンス処理を行うステップとを含む繊維機械の動作方法に関する。
【0002】
また、本発明は、糸を製造し、または供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るための複数の作業ステーションと、1つまたは複数のメンテナンス装置とを有する繊維機械に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明に係る繊維機械には、リング紡績機、ロータ紡績機および空気紡績機などの紡績機、または巻取機が含まれる。これらの繊維機械は、通常複数の作業ステーションを有する。
【0004】
紡績機では、繊維複合体から糸が製造され、巻取機では、供給ボビンから供給された糸が巻取ボビンに巻き取られる。
【0005】
繊維機械の通常動作は、様々な理由で中断され得る。例えば、糸の製造または巻き取り中に切断(糸切れ)が生じた場合や、糸欠陥の切除を行う場合である。糸欠陥の切除は、糸が所望の品質を備えていない場合(糸の太さが不均一である場合、汚れがある場合等)に、これを改善するために行われる。また、例えば、空になった供給ボビンを満ボビンに交換する場合や、所定量の糸の製造(あるいは巻き取り)が完了した場合にも、繊維機械の通常動作は中断される。
【0006】
作業ステーションの動作を再開させる方法は、繊維機械の種類や動作中断の理由により3つに大別される。1つ目は、作業ステーションの動作再開に必要な処理を行うように構成されたメンテナンス装置を各作業ステーションに配置する方法である。しかし、この方法は、作業ステーションの動作の中断(例えば、糸欠陥の切除等のために)が頻繁に発生する場合を除き、経済性が低い。2つ目は、複数の作業ステーションに対して動作再開処理を実行するためのメンテナンス装置を配置する方法である。この場合、メンテナンス装置は、複数の作業ステーションに沿って移動可能に構成される。3つ目は、例えば作業ステーションの動作中断原因が複雑であり、メンテナンス装置による動作再開が困難である場合に、作業員の手作業によって動作再開処理を行う方法である。
【0007】
本発明は、特にメンテナンス装置を用いて作業ステーションの通常動作を再開させる場合に適用される。繊維機械において、例えば、メンテナンス装置の数や動力源(電気、圧縮空気、負圧等)が不足している場合に、メンテナンス処理を必要とする作業ステーションの数が、メンテナンス装置によって同時にメンテナンス処理を行うことができる作業ステーションの数を超えることがある。このような場合、動作が中断した作業ステーションに対し順次メンテナンス処理を行うことが考えられる。その際、複数の作業ステーションに沿って移動可能なメンテナンス装置を用いることで、メンテナンス処理を効率化することができる。さらに、メンテナンス装置の移動経路や移動時間を考慮することで、繊維機械の生産性をより向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、作業ステーションのメンテナンス処理を効率化し、繊維機械の生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、独立請求項に記載された特徴を有する繊維機械およびその動作方法により達成される。
【0010】
本発明は、複数の作業ステーションを有する繊維機械の動作方法に関する。各作業ステーションは、通常動作において、糸を製造し、または供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るように構成されている。本発明に係る繊維機械は、リング紡績機、ロータ紡績機および空気紡績機などの紡績機、または巻取機を含む。
【0011】
作業ステーションの通常動作は、糸切れが発生した場合や、糸欠陥の切除または供給ボビンの交換を行う場合に中断され、メンテナンス処理によって再開される。メンテナンス処理には、例えば、空ボビンに糸端を糸掛けするための糸掛け処理、2つの糸端を連結するための糸継ぎ処理、および、空になった供給ボビン(または巻管)を満ボビンに交換するための供給ボビン交換処理が含まれる。
【0012】
メンテナンス処理は、1つまたは複数のメンテナンス装置によって行われる。メンテナンス装置は、メンテナンス処理を必要とする作業ステーションに移動し(または移動され)、メンテナンス処理を行うように構成されている。各メンテナンス装置は、1つの作業ステーションのメンテナンス処理を終えると、順次他の作業ステーションに移動してメンテナンス処理を行う。メンテナンス装置によってメンテナンス処理が行われる作業ステーションの順序(優先順位)は、中央制御ユニットにより決定される。
【0013】
本発明では、各作業ステーションに1つまたは複数の製造パラメータが設定される。メンテナンス処理を必要とする作業ステーションの数が、メンテナンス装置によって同時にメンテナンス処理を行うことができる作業ステーションの数を超える場合、各作業ステーションの製造パラメータを考慮して、バッチ変更が最も早く完了するように、メンテナンス処理が行われる作業ステーションの順序が決定される。バッチ変更とは、製造する糸の糸種(材料、太さ、撚数または表面処理等の特性が異なる糸)を変更することをいう。バッチ変更を迅速に完了させることで、作業ステーションは新たな糸の製造を早期に開始することができるため、繊維機械の生産性を向上させることができる。
【0014】
製造パラメータには、製造進捗、予想製造速度および/または予想されるメンテナンス処理が含まれることが好ましい。製造進捗は、例えば、ボビンに巻回された糸の量から測定することができる。予想製造速度は、例えば、一定時間における製造速度の平均値として算出される。予想されるメンテナンス処理は、各作業ステーションにおいて一定時間に行われたメンテナンス処理から決定される。製造パラメータに基づき、各作業ステーションにおける糸の製造または巻き取りの完了予定時刻等を決定することができる。これらの情報を用いて、バッチ変更が最も早く完了するように、さらには、繊維機械の生産性が増大するように、メンテナンス処理を制御することができる。
【0015】
バッチ変更は、すべてのまたは一部の作業ステーションにおいて行われることが好ましい。これにより、複数の糸種を同時に、かつ、各糸種の目標製造量や繊維機械の種類に応じた最適かつ効率的な態様で製造することが可能となる。
【0016】
メンテナンス処理が行われる作業ステーションの順序を最適化するために、各作業ステーションには、現在製造されている糸の製造(巻き取り)完了予定時刻が設定されることが好ましい。製造完了予定時刻は、メンテナンス処理の完了目標時刻とされる。
【0017】
各作業ステーションには、同一の製造完了予定時刻が設定されることが好ましい。これにより、すべての作業ステーションで同時に玉揚げ(ボビンの交換およびバッチ変更)を行うことができる。糸の製造がすべての作業ステーションで同時に完了する場合、各作業ステーションは他の作業ステーションにおける製造およびバッチ変更が完了するまで待機する必要がないため、繊維機械の生産性を最大限に高めることができる。
【0018】
バッチ変更が、すべての作業ステーションで同時に行われるのではなく、1つまたは複数の玉揚げ装置により各作業ステーションごとに個別に行われる場合、すべての作業ステーションに同一の製造完了予定時刻を設定することは適切ではない。このような場合、玉揚げ装置のタイムテーブルを作成することが好ましい。タイムテーブルは、玉揚げが各作業ステーションにおいて一度ずつ行われるように構成される。また、タイムテーブルは、各作業ステーションの製造パラメータを考慮して作成されることが好ましい(例えば、糸の製造が早く完了した作業ステーションから順に玉揚げが行われるように構成される)。タイムテーブルに基づき、各作業ステーションに玉揚げ作業の開始予定時刻が設定される。玉揚げ開始予定時刻を、すべての作業ステーションのバッチ変更が最も早く完了するように設定することで、繊維機械の生産性を向上させることができる。
【0019】
製造パラメータに基づき、各作業ステーションに糸製造の完了予定時刻が設定されることが好ましい。糸製造が完了した作業ステーションにおいて、順次玉揚げおよびバッチ変更が行われる。バッチ変更をより早く完了させるために、糸製造完了予定時刻と玉揚げ開始予定時刻の差が大きい(すなわち、玉揚げ開始予定時刻が糸製造完了予定時刻よりも早い)作業ステーションほど、メンテナンスの優先順位が高く設定される。一方、糸製造完了予定時刻と玉揚げ開始予定時刻の差がマイナスである(すなわち、糸製造完了予定時刻が玉揚げ開始予定時刻よりも早い)作業ステーションは、メンテナンスの優先順位が低く設定される。すなわち、他の作業ステーションよりも製造が遅れている作業ステーションに対して、メンテナンス処理が優先的に行われる。これにより、繊維機械全体の生産性を高めることができる。
【0020】
メンテナンスの優先順位に基づき、各作業ステーションの玉揚げ開始予定時刻、糸製造完了予定時刻および玉揚げ装置のタイムテーブルが更新されることが好ましい。更新された玉揚げ開始予定時刻および糸製造完了予定時刻に基づき、メンテナンスの優先順位が更新される。このように、メンテナンスの優先順位を適宜調整することで、繊維機械の生産性を高めることができる。
【0021】
メンテナンスの優先順位の更新は、所定の回数、または繊維機械の生産性の上昇が所定値を下回るまで繰り返し行われることが好ましい。
【0022】
糸製造完了予定時刻と玉揚げ開始予定時刻の差が第1の所定値より大きい作業ステーションの製造速度は、増大されることが好ましい。これにより、繊維機械の生産性を向上させることができる。また、糸製造完了予定時刻と玉揚げ開始予定時刻の差が第2の所定値より小さい作業ステーションの製造速度は、低減されることが好ましい。これにより、エネルギー消費および/または糸切れの発生を抑制し、繊維機械全体のコスト効率および生産性を高めることができる。
【0023】
繊維機械の生産性を高めるために有用な場合には、糸の製造が完了していない作業ステーションにおいても、バッチ変更が行われ得ることが好ましい。これは、例えば、動作が中断した作業ステーションにおいて、作業員の手作業による長時間のメンテナンス作業が必要となった場合に有用である。すなわち、糸の製造が大幅に遅れた作業ステーションについて、製造完了を待たずにバッチ変更を行うことで、不要な待機時間の発生を抑制し、繊維機械の生産性を確保することができる。
【0024】
上述の実施形態は、個々に、または相互に組み合わせて実施することができる。
【0025】
本発明はさらに、糸を製造し、または供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るための複数の作業ステーションを有する繊維機械に関する。本発明に係る繊維機械には、リング紡績機、ロータ紡績機および空気紡績機などの紡績機、または巻取機が含まれる。本発明に係る繊維機械はさらに、各作業ステーションにおいて糸掛け処理、糸継ぎ処理、およびボビン交換処理等のメンテナンス処理を行うように構成された1つまたは複数のメンテナンス装置を有する。メンテナンス装置は、メンテナンス処理を必要とする作業ステーションに移動し(または移動され)、メンテナンス処理を行うように構成される。
【0026】
本発明に係る繊維機械はさらに、制御ユニットを有するか、または、制御ユニットに連動可能に接続される。制御ユニットは、繊維機械を上述の方法にしたがって動作させるように構成される。制御ユニットは、バッチ変更が最も早く完了するように、メンテナンス処理を行う作業ステーションの優先順位を決定する。これにより、繊維機械全体の生産性およびコスト効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる利点については、以下の実施形態の記載により説明する。
図1a図1aは、本発明に係る繊維機械の概略平面図である。
図1b図1bは、本発明に係る繊維機械においてバッチ変更が行われる様子を示す概略平面図である。
図2図2は、メンテナンス処理が行われる作業ステーションの順序を決定するための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1aは、本発明に係る繊維機械1を示す。繊維機械1は、複数の作業ステーション2を有する。各作業ステーション2は、通常動作において、糸を製造し、または、供給ボビンから供給された糸を巻取ボビンに巻き取るように構成されている。繊維機械1には、リング紡績機、ロータ紡績機および空気紡績機などの紡績機、または巻取機が含まれる。
【0029】
繊維機械1はさらに、2つのメンテナンス装置3を有する。メンテナンス装置3は、レール4上を走行して通常動作が中断した作業ステーション2に移動し、通常動作を再開させるためのメンテナンス処理を行うように構成されている。メンテナンス処理には、例えば、空ボビンに糸端を糸掛けするための糸掛け処理、2つの糸端を連結するための糸継ぎ処理、および、空の供給ボビン(または巻管)を満ボビンに交換するための供給ボビン交換処理が含まれる。
【0030】
メンテナンス装置3は、例えば繊維機械1の端部6に配置された中央制御ユニット5によって制御される。メンテナンス処理を必要とする作業ステーションの数が、メンテナンス装置によって同時にメンテナンス処理を行うことができる作業ステーションの数を超える場合、制御ユニット5は、作業ステーション2の製造パラメータやメンテナンス装置3の移動経路および移動時間を考慮して、繊維機械1の生産性が最大となるように、メンテナンス処理が行われる作業ステーション2の順序を決定する。
【0031】
また、制御ユニット5は、レール8上を走行して各作業ステーション2に移動可能に構成された玉揚げ装置7を制御する。玉揚げ装置7は、作業ステーション2のバッチ変更(すなわち、製造する糸種(材料、太さ、撚数または表面処理等の特性が異なる糸)の変更)に際し、巻取ボビンを交換するように構成されている。玉揚げ装置7は、バッチ変更が行われない間は、図1aに示すようにレール8の端部で停止している。
【0032】
図1aに示すように、レール4、8は、メンテナンス装置3および玉揚げ装置7が繊維機械1の両側に配置された作業ステーション2に到達することができるように、弓状に構成されている。なお、コストやスペースの関係でレール4、8を弓状に構成できない場合は、メンテナンス装置3および玉揚げ装置7を繊維機械1の両側に少なくとも1つずつ配置してもよい。これらのメンテナンス装置3および玉揚げ装置7は、それぞれ繊維機械1の片側に配置された作業ステーション2に対してメンテナンス処理または玉揚げ作業を行うよう、制御ユニット5により制御される。
【0033】
図1bは、繊維機械1においてバッチ変更が行われる様子を示す。図1bを参照すると、糸(現在製造されている糸種)の製造が完了した作業ステーション2において、玉揚げ装置7により(新たな糸種の製造に移行するための)バッチ変更が行われている。一方、他の作業ステーション2では、現在の糸種の製造が継続されている。制御ユニット5は、通常動作が中断した作業ステーション2においてメンテナンス処理を行うようメンテナンス装置3を制御している。
【0034】
メンテナンス処理を必要とする作業ステーションの数が、メンテナンス装置によって同時にメンテナンス処理を行うことができる作業ステーションの数を超える場合、制御ユニット5は、作業ステーション2の製造パラメータを考慮して、バッチ変更が最も早く完了するように、また、繊維機械1の生産性が最大となるように、メンテナンス処理が行われる作業ステーション2の順序を決定する。作業ステーション2の製造パラメータには、製造進捗、予想製造速度および予想されるメンテナンス処理などが含まれる。制御ユニット5により、すべての作業ステーション2の製造パラメータが継続的に決定されることが好ましい。
【0035】
メンテナンス処理が行われる作業ステーション2の順序は、図2に示す流れ図に従って決定される。制御ユニット5は、製造パラメータを考慮して、玉揚げ装置7のタイムテーブルを作成する。タイムテーブルは、玉揚げ装置7による玉揚げ作業が各作業ステーション2において一度ずつ行われるように構成される。各作業ステーション2には、玉揚げの開始予定時刻が設定される。
【0036】
制御ユニット5は、製造パラメータに基づき、各作業ステーション2における糸の製造完了予定時刻を算出し、これと玉揚げ開始予定時刻との差を算出する。算出された差に基づいて、メンテナンス処理を行う作業ステーション2の順序(優先順位)が決定される。上記差が大きい作業ステーション2ほど、メンテナンス処理が優先的に行われる。
【0037】
メンテナンスの優先順位を最適化し、バッチ変更をより早く完了させるために、玉揚げ装置7のタイムテーブル、玉揚げ開始予定時刻および製造完了予定時刻が、メンテナンスの優先順位に基づいて更新される。続いて、更新された製造完了予定時刻と玉揚げ開始予定時刻の差が算出され、これに基づいてメンテナンスの優先順位が更新される(図2中の破線)。
【0038】
メンテナンスの優先順位の更新は、所定の回数、または生産性の上昇が所定値を下回るまで繰り返し行われることが好ましい。
【0039】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、請求項の範囲内で種々の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:繊維機械
2:作業ステーション
3:メンテナンス装置
4:レール
5:制御ユニット
6:繊維機械の端部
7:玉揚げ装置
8:レール
図1a
図1b
図2
【外国語明細書】
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2017197387000002.pdf
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