特開2017-197474(P2017-197474A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-197474(P2017-197474A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20171006BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20171006BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20171006BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/365
   A61Q19/00
   A61K8/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-89516(P2016-89516)
(22)【出願日】2016年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】岩井 秀隆
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC481
4C083AC482
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD271
4C083AD272
4C083CC02
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】化粧料に含まれる成分の徐放性に優れる皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】成分(A)繊維状のカルボキシアルキル化セルロース、および、成分(B)ヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体を含み、成分(A)が、セルロース骨格の2、3または6位の水酸基に、pKaが4.70以上4.90以下であるカルボン酸由来のカルボキシアルキル置換基を有し、成分(B)のIOB値が0.90以上6.5以下である、皮膚化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および(B):
(A)繊維状のカルボキシアルキル化セルロース、
(B)ヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体
を含み、
前記成分(A)が、セルロース骨格の2、3または6位の水酸基に、pKaが4.70以上4.90以下であるカルボン酸由来のカルボキシアルキル置換基を有し、
前記成分(B)のIOB値が0.90以上6.5以下である、皮膚化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)が、繊維状のカルボキシメチル化セルロースまたは繊維状のカルボキシエチル化セルロースを含む、請求項1に記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)の平均繊維径が2nm以上5000nm以下である、請求項1または2に記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
前記成分(A)の平均繊維長が10nm以上2mm以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
前記成分(B)が、ヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンカルボン酸エステルおよびその塩からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1乃至4いずれか一項に記載の皮膚化粧料。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の皮膚化粧料を皮膚に適用するステップを含む、皮膚化粧料の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維状のセルロースに関する技術として、特許文献1〜3に記載のものがある。
特許文献1(特開2015−157796号公報)には、セルロースの分散流体を100〜245MPaの高圧噴射処理により解繊することによりセルロースナノファイバーが得られることが記載されている。
【0003】
特許文献2(特開2009−293167号公報)には、セルロースの水酸基の一部に多塩基酸無水物を半エステル化してカルボキシル基を導入することにより、多塩基酸半エステル化セルロースを調製し、これを微細繊維化することにより、ナノ繊維を製造する技術が記載されている。
【0004】
特許文献3(特開2013−127141号公報)には、セルロースを含む繊維原料をリンのオキソ酸またはその塩により処理した後、セルロースを解繊処理することにより微細繊維状セルロースを製造する技術が記載されている。
【0005】
また、前述した特許文献1には、繊維状セルロースを化粧品分野に用いようとすることも記載されている。すなわち、同文献によれば、同文献に記載の方法で得られる繊維状セルロースを乳化剤として用いると、一般的な乳化剤よりも低濃度でありながら、水と油が分離しない状態を長期に亘って維持することができるため、化粧料に余分な添加剤の割合を低くできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−157796号公報
【特許文献2】特開2009−293167号公報
【特許文献3】特開2013−127141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、化粧料およびこれに含まれる有効成分の経皮吸収は、化粧料と皮膚との濃度勾配に従うため、化粧料を皮膚に適用した直後に高い浸透性が生じる一方、時間が経過すると皮膚への浸透性が低下してしまう。
一方、近年、長時間にわたって徐々に経皮吸収させることができ、成分の効果の持続性を持たせる化粧料が求められるようになってきた。
しかしながら、背景技術の項で前述した各特許文献に記載の技術においては、化粧料を皮膚へ適用する際に、化粧料中の成分の徐放効果を高めるという観点からの検討はなされていない。また、従来のセルロース含有の化粧料は、洗浄剤として使われていたり、パック剤にして適用しなければいけないなど、用途等も限られていた。
【0008】
そこで、本発明は、化粧料に含まれる成分の徐放性に優れる皮膚化粧料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、化粧料剤型に適したセルロースと、機能性成分として特定のヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体とを組み合わせて用いることで、化粧料を皮膚に適用した際に、機能性成分の経皮吸収に徐放性が発現することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
以下の成分(A)および(B):
(A)繊維状のカルボキシアルキル化セルロース、
(B)ヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体
を含み、
前記成分(A)が、セルロース骨格の2、3または6位の水酸基に、pKaが4.70以上4.90以下であるカルボン酸由来のカルボキシアルキル置換基を有し、
前記成分(B)のIOB値が0.90以上6.5以下である、皮膚化粧料が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、前述した本発明における皮膚化粧料を皮膚に適用するステップを含む、皮膚化粧料の使用方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化粧料に含まれる成分の徐放性に優れる皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態において、皮膚化粧料は、以下の成分(A)および(B)を含む。
(A)繊維状のカルボキシアルキル化セルロース
(B)ヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体
そして、成分(A)が、セルロース骨格の2、3または6位の水酸基に、pKaが4.70以上4.90以下であるカルボン酸由来のカルボキシアルキル置換基を有し、成分(B)のIOB値が0.90以上6.5以下である。
【0014】
以下、各成分について具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本明細書において、「皮膚化粧料」を単に「化粧料」ともよぶ。
【0015】
(成分(A))
成分(A)は、繊維状のカルボキシアルキル化セルロースであり、セルロース骨格の2、3または6位の水酸基に、pKaが4.70以上4.90以下であるカルボン酸由来のカルボキシアルキル置換基を有する。
成分(A)のセルロースの由来に制限はなく、木材繊維(パルプ)等の植物原料由来のもの等が挙げられる。
また、繊維状のセルロースは、微小繊維化されたセルロースであり、好ましくは水に不溶である。
【0016】
成分(A)は、セルロース骨格の2、3または6位の水酸基に、酸解離定数pKaが4.70以上4.90以下であるカルボン酸由来のカルボキシアルキル置換基を有する。
pKaが4.70以上4.90以下であるカルボン酸の具体例として、酢酸(pKa4.77、出典:日本化学会編、「化学便覧 基礎編」、改訂5版、丸善、2004年発行(以下同じ。))、プロピオン酸(pKa4.874)、酪酸(pKa4.82)、イソ酪酸(pKa4.86)および吉草酸(pKa4.86)が挙げられる。このうち、成分(B)の徐放効果を高める観点から、上記カルボン酸は、好ましくは酢酸またはプロピオン酸であり、より好ましくは酢酸である。
【0017】
また、成分(A)のセルロース骨格の2、3または6位の酸素原子に結合する置換基の具体例として、−CH2COOH(酢酸由来のカルボキシアルキル置換基)、−CH2CH2COOH(プロピオン酸由来のカルボキシアルキル置換基)、−CH2CH2CH2COOH(イソ酪酸由来のカルボキシアルキル置換基)、−CH2CH2CH2CH2COOH(吉草酸由来のカルボキシアルキル置換基)等のカルボキシアルキル基が挙げられる。このうち、成分(B)の徐放効果を高める観点から、上記置換基は、好ましくは−CH2COOHすなわちカルボキシメチル基または−CH2CH2COOHすなわちカルボキシエチル基であり、より好ましくはカルボキシメチル基である。
また、同様の観点から、成分(A)は、好ましくは繊維状のカルボキシメチル化セルロースまたは繊維状のカルボキシエチル化セルロースであり、より好ましくは繊維状のカルボキシメチル化セルロースである。
【0018】
成分(A)において、セルロース骨格を構成する無水グルコース単位あたりのカルボキシアルキル基の置換度(以下、単に「置換度」ともよぶ。)は、化粧料中の成分(A)の分散安定性を向上させる観点、および、成分(B)の徐放効果を向上させる観点から、好ましくは0.12mmol/g以上であり、より好ましくは0.30mmol/g以上、さらに好ましくは0.60mmol/g以上であり、また、好ましくは2.20mmol/g以下であり、より好ましくは2.16mmol/g以下、さらに好ましくは2.00mmol/g以下、さらにより好ましくは1.95mmol/g以下、殊更好ましくは1.80mmol/g以下、またさらに好ましくは1.42mmol/g以下である。
ここで、成分(A)の置換度は、実施例の項において後述する方法で測定される。
【0019】
また、成分(B)の徐放効果を向上させる観点、および、皮膚に適用後、化粧料のヨレ、ポロポロとした消しかす状の崩れ等の化粧崩れが生じるのを抑制する観点から、成分(A)は、好ましくは微小繊維状のカルボキシアルキル化セルロースであり、より好ましくは微小繊維状のカルボキシメチル化セルロースまたは微小繊維状のカルボキシエチル化セルロースであり、さらに好ましくは微小繊維状のカルボキシメチル化セルロースである。
微小繊維状のカルボキシアルキル化セルロースは、ナノメートルオーダーの繊維径を有する繊維状のセルロースである。微小繊維状のカルボキシアルキル化セルロースの平均繊維径は、成分(B)の徐放効果を向上させる観点、成分(A)の製造安定性を向上させる観点、および、化粧料の皮膚への馴染み性を向上させる観点から、好ましくは2nm以上であり、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは3.5nm以上であり、さらにより好ましくは8nm以上であり、殊更好ましくは9nm以上、殊更好ましくは10nm以上であり、またより好ましくは15nm以上である。
また、水等の分散媒への分散性を高める観点から、成分(A)の平均繊維径は、好ましくは5000nm以下であり、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは50nm以下であり、殊更好ましくは40nm以下である。
【0020】
成分(A)の平均繊維長は、成分(B)の徐放効果を高める観点、および、皮膚に適用された化粧料の耐汗性や耐摩擦性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは300nm以上、さらにより好ましくは500nm以上、殊更好ましくは800nm以上である。
また、成分(A)の水等の分散媒への分散性を高める観点から、成分(A)の平均繊維長は、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらにより好ましくは100μm未満、殊更好ましくは10μm以下である。
【0021】
また、成分(A)の平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、成分(B)の徐放効果と成分(A)の水等の分散媒への分散性とのバランスを向上させる観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上、さらに好ましくは50以上、さらにより好ましくは60以上、殊更好ましくは250以上であり、また、好ましくは5000以下であり、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、さらにより好ましくは400以下、殊更好ましくは300以下である。
【0022】
ここで、成分(A)の平均繊維径、平均繊維長および平均アスペクト比の測定は、以下の方法で測定される。すなわち、繊維状のセルロースの平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析し、200本の算術平均を算出する。また、平均アスペクト比は下記の式により算出する。
平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0023】
また、成分(B)の徐放効果を高める観点、成分(A)の分散安定性を高める観点、および、化粧料の皮膚への馴染み性を向上させる観点から、成分(A)は、好ましくは、平均繊維径が2nm以上40nm以下であって、平均繊維長が800nm以上10000nm以下のものであり、より好ましくは平均繊維径および平均繊維長が上記範囲にあるとともに、平均アスペクト比が250以上300以下であるものである。
【0024】
成分(A)の1質量%分散液の粘度は、成分(B)の徐放性を向上させる観点、および、化粧料の皮膚への馴染み性を向上させる観点から、好ましくは900mPa・s以上であり、より好ましくは2000mPa・s以上、さらに好ましくは3000mPa・s以上であり、また、好ましくは4750mPa・s以下であり、より好ましくは4500mPa・s以下であり、さらに好ましくは4000mPa・s以下である。
また、成分(A)の分散安定性を向上させる観点から、成分(A)の1質量%分散液の粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上であり、また、好ましくは900mPa・s未満であり、より好ましくは850mPa・s以下、さらに好ましくは830mPa・s以下である。
ここで、成分(A)の粘度は、成分(A)の1質量%の分散液(分散媒:水)について、B型粘度計(東機産業社製 VISCOMETER TVB−10、ローターNo.4)を用いて、25℃、回転数60rpm、1分の条件にて測定される。
【0025】
また、成分(A)の透明度は、成分(A)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは46%以上であり、また、好ましくは100%以下であり、より好ましくは96%以下、さらに好ましくは94%以下である。
ここで、成分(A)の透明度は、成分(A)の0.1質量%の分散液(分散媒:水)の光透過率(%)であって、紫外・可視分光光度計U−3000(日立ハイテク社製)を用いて、25℃、波長660nm、セル長10mmの条件で測定される。
【0026】
成分(A)として、成分(B)の徐放性を向上させる観点、化粧料の皮膚への馴染み性を向上させる観点、および、入手のしやすさの観点から、一般工業用の微小繊維状のカルボキシアルキル化セルロースを用いることができる。微小繊維状のカルボキシアルキル化セルロースの市販品の具体例として、BiNFi−sシリーズの微小繊維状のカルボキシメチル化セルロース(スギノマシン社製)等が挙げられる。
また、成分(A)として、特開2015−000977号公報または特開2015−134873号公報に記載のものを用いることもできる。
【0027】
成分(A)は、たとえば、公知の方法によりセルロース原料をカルボキシアルキルエーテル化した後、機械的方法等により解砕して所定の繊維径の繊維状とすることにより得られる。
成分(A)が微小繊維状のカルボキシメチル化セルロースであるとき、その製造方法として、たとえば特開2015−000977号公報に記載の方法を用いることができる。具体的には、カルボキシメチル化セルロースの分散流体を、100〜245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させ解繊して微小繊維状とすることにより成分(A)を得ることができる。
また、成分(A)が微小繊維状のカルボキシメチル化セルロースであるとき、特開2015−134873号公報に記載のカルボキシメチル化工程、解繊工程等を用いて微小繊維状のカルボキシメチル化セルロースを製造することもできる。
【0028】
化粧料中の成分(A)の含有量は、成分(B)の徐放効果の持続性をさらに向上させる観点から、化粧料全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.15質量%以上、殊更好ましくは0.2質量%以上である。
また、化粧料の滑らかな使用感をさらに高める観点からは、化粧料中の成分(A)の含有量は、化粧料全体に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下であり、さらにより好ましくは1.5質量%以下、殊更好ましくは1.2質量%以下である。
【0029】
(成分(B))
成分(B)は、ヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体である。成分(B)のIOB値は0.90以上6.5以下である。
【0030】
本実施形態においては、成分(B)が成分(A)とともに化粧料中に含まれるため、成分(B)が化粧料中に適度に保持されて、徐々に放出される。このため、たとえば、化粧料を皮膚に適用した直後には、化粧料が皮膚に穏やかに作用し、また、皮膚への適用後の化粧料の作用を経時的に持続させることも可能となる。
【0031】
成分(B)のIOB値は、化粧料中に成分(B)を安定的に保持する効果と化粧料が成分(B)を徐放する効果とのバランスを向上させる観点から、0.90以上であり、より好ましくは0.95以上、さらに好ましくは0.97以上、さらにより好ましくは1.0以上であり、また、6.5以下であり、より好ましくは5.5以下、さらに好ましくは4.5以下、さらにより好ましくは2.0以下、殊更好ましくは1.4以下である。
ここで、成分(B)のIOB値(Inorganic-Organic Balance)は、下記式:
IOB値=Σ無機性値/Σ有機性値
により計算される。上記式中、「無機性値」および「有機性値」のそれぞれについては、たとえば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子および官能基毎に設定された「無機性値」および「有機性値」に基づいて、油剤等の有機化合物を構成する原子および官能基の「無機性値」および「有機性値」を積算することにより算出することができる(甲田善生著、「有機概念図−基礎と応用−」、第11〜17頁、三共出版、1984年発行参照)。
なお、化粧料が複数のヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体を含む場合、成分(B)のIOB値は、個々のIOB値に質量割合を乗じることにより得られる加重平均値である。
【0032】
成分(B)のうち、ヒドロキシベンゼンカルボン酸誘導体は、好ましくはヒドロキシベンゼンカルボン酸塩、ヒドロキシベンゼンカルボン酸エステルおよびその塩からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エステル、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エステルおよびこれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である。
塩を構成する対イオンの具体例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;チタン等の上記以外の金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンが挙げられ、好ましくはナトリウム、マグネシウムおよびチタンからなる群から選択される金属由来のイオンである。
成分(B)は、好ましくはヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンカルボン酸エステルおよびその塩からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0033】
また、成分(B)の具体例として、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸(IOB1.89)、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸ジプロピレングリコール(IOB1.13)、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸Na(IOB5.46)、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸チタン(IOB3.32)、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチル(IOB1.09)、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸アセトアミドフェニル(IOB1.30)、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチレングリコール(IOB1.53)、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸ジフェンヒドラミン(IOB1.52)等の2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体;および
4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸(IOB1.89)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルNa(IOB4.22)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルNa(IOB3.75)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸プロピルNa(IOB3.38)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸イソブチルNa(IOB3.21)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸ブチルNa(IOB3.07)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチル(IOB1.09)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチル(IOB0.97)、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸イソプロピル(IOB0.92)等の4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体が挙げられる。
【0034】
成分(B)の徐放効果を高める観点から、成分(B)は、好ましくは、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチレングリコール、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルおよび4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルからなる群から選択される1種または2種以上であり;
より好ましくは、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチレングリコール、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルおよび4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルからなる群から選択される1種または2種以上であり;
より好ましくは、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルおよび4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルからなる群から選択される1つまたは2つであり;
さらに好ましくは4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチル、または、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルおよび4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルであり;
さらにより好ましくは4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルである。
【0035】
皮膚化粧料中の成分(B)の含有量は、化粧料中に成分(B)を安定的に保持する効果と化粧料が成分(B)を徐放する効果とのバランスを向上させる観点から、化粧料全体に対して好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.15質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは4質量%以下、殊更好ましくは3質量%以下であり、またさらに好ましくは1質量%以下である。
【0036】
また、化粧料中の成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量の質量比((B)/(A))は、化粧料中に成分(B)を安定的に保持する効果と化粧料が成分(B)を徐放する効果とのバランスを向上させる観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、さらにより好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは5以下であり、殊更好ましくは1以下である。
【0037】
本実施形態において、成分(B)の徐放効果を高める観点、成分(A)の分散安定性を高める観点、および、化粧料の皮膚への馴染み性を向上させる観点から、成分(A)および(B)の組み合わせは、好ましくは、成分(A)の平均繊維径が2nm以上40nm以下であって、平均繊維長が800nm以上10000nm以下であるとともに、成分(B)のIOB値が0.90以上1.4以下であって;
より好ましくは、成分(A)平均繊維径および平均繊維長が上記範囲にあるとともに、平均アスペクト比が250以上300以下であって、成分(B)が、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルおよび4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルからなる群から選択される1つまたは2つであり;
さらに好ましくは、成分(A)平均繊維径および平均繊維長が上記範囲にあるとともに、平均アスペクト比が250以上300以下であって、成分(B)が、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチル、または、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルおよび4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸エチルであり;
さらにより好ましくは、成分(A)平均繊維径および平均繊維長が上記範囲にあるとともに、平均アスペクト比が250以上300以下であって、成分(B)が、4−ヒドロキシベンゼンカルボン酸メチルである。
【0038】
本実施形態において、化粧料は、上記以外の成分を含んでいてもよい。
たとえば、化粧料が水等の分散媒を含んでもよい。水等の分散媒の含有量は、たとえば化粧料中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。
【0039】
また、化粧料が、水以外の溶媒(分散媒)を含んでもよく、このような溶媒として、たとえば、エタノール、2−プロパノール等の炭素数1以上4以下のアルコールが挙げられる。本実施形態の化粧料を皮膚に塗布することにより形成される皮膜の動きに対する追従性を向上させる観点から、炭素数1以上4以下のアルコールの化粧料中の含有量は、化粧料全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0040】
また、本実施形態において、化粧料が、成分(B)の徐放効果が得られる範囲で、ビタミン類、消臭剤、制汗剤、冷感剤、香料、温感剤、グリセリン等の多価アルコールまたは他の保湿剤、油剤、pH調整剤等、必要に応じて通常化粧料に配合される成分であって、成分(A)および(B)以外のものを含んでいてもよい。
本実施形態の化粧料を皮膚に塗布することにより形成される皮膜の動きに対する追従性を向上させる観点から、多価アルコールの化粧料中の含有量は、化粧料全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0041】
次に、本実施形態における化粧料の製造方法を説明する。
本実施形態における化粧料は、皮膚化粧料の形態に応じて所定の手順により製造することができる。たとえば、化粧料の製造方法が、水を含む分散媒に成分(A)を分散させて分散液を得る工程と、この分散液に成分(B)を溶解または分散させる工程と、を含んでもよい。
【0042】
また、得られる化粧料の形態は、ローション状、溶液状、乳液状、クリーム状、軟膏状、ゲル状等とすることができ、さらに具体的には、乳液、化粧水、ジェルが挙げられる。
また、化粧料が、皮膚に適用した際、皮膚上に皮膜を形成するものであることが好ましい。
【0043】
本実施形態の化粧料は、特定の成分(A)および(B)を含むため、化粧料を皮膚に適用した後の成分(B)の徐放性に優れるものである。
さらに具体的には、本実施形態においては、化粧料中の成分(B)が成分(A)と適度に相互作用するため、化粧料を皮膚へ適用した直後に、成分(B)が過度に高い濃度で一過的に浸透することを抑制できる。このため、皮膚への適用直後の化粧料の作用を穏やかなものとし、たとえば皮膚への過度の刺激を抑制することができる。その詳細なる理由は不明なるも、成分(B)である特定のIOB値を有するヒドロキシベンゼンカルボン酸またはその誘導体のベンゼン環と、成分(A)である特定のセルロースとの相互作用により、成分(B)をトラップしているためと考えられる。
加えて、本実施形態においては、化粧料中の成分(B)が成分(A)と適度に相互作用するため、成分(B)が化粧料から徐々に放出される。このため、化粧料を皮膚に適用後、成分(B)を長時間にわたって徐々に経皮吸収させることができる。よって、化粧料中の成分(B)の効果の持続性を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態の化粧料は、成分(A)および(B)を含んでいるため、皮膚に適用された化粧料が皮膚上に皮膜を形成することができる。また、本実施形態によれば、たとえば耐摩擦性に優れており、擦れやひっかきに強く、使用感が良好な皮膜を得ることも可能となる。
さらに具体的には、本実施形態によれば、たとえば化粧料が親水性の化粧料である場合にも、耐水性であって擦れに対して強固な皮膜を形成することが可能となる。このため、発汗や皮膚の擦れに対する耐性に優れており、化粧料の皮膚への作用を長時間持続させることができる。
また、本実施形態の化粧料を用いることにより、たとえば、強固な皮膜を形成することも可能となる。このため、たとえば、襟による皮膚の擦れが低減され、襟汚れ、すなわち、皮膚角層メラニン色素の付着を予防することもできるため、襟汚れ防止能を発現させることも可能となる。
また、本実施形態の化粧料を用いることにより、たとえば、化粧料を皮膚に適用した後に生じた汗を化粧料の皮膜中に拡散させることもできる。そして、生じた汗が化粧料の皮膜に広がり、化粧料の皮膜を濡らすことで、汗が外気に触れる表面積が増加するため、たとえば発汗した後の汗の速乾性に優れた構成とすることも可能となる。また、これにより体臭を抑制することも可能となる。
【0045】
次に、化粧料の使用方法を説明する。
本実施形態における化粧料の使用方法は、たとえば、化粧料を皮膚に適用するステップを含み、好ましくは化粧料を皮膚に塗布するステップを含む。さらに具体的には、化粧料の使用方法が、化粧料を皮膚に塗布して皮膜を形成するステップを含んでもよい。
また、本実施形態における化粧料は、皮膚上に皮膜を形成するために用いられるものであってもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0047】
はじめに、以下の例では、セルロースとして、以下の素材を用いた。
(繊維状のセルロース)
繊維状のセルロースとしては、以下の成分(A1)〜(A6)、(A'1)および(A'2)を用いた。
(A1)繊維状のカルボキシメチル化(CM化)セルロース:BiNFi−s TFo−10002、スギノマシン社製(平均繊維径:20nm、平均繊維長:1100nm、平均アスペクト比:55、1質量%の分散液の粘度:800mPa・s、透明度:82%、カルボキシメチル置換度:2.16mmol/g)
(A2)繊維状のカルボキシメチル化セルロース:平均繊維径:4nm、平均繊維長:1000nm、平均アスペクト比:250、1質量%の分散液の粘度:3900mPa・s、透明度:94%、カルボキシメチル置換度:1.42mmol/g、製造方法については後述する。
(A3)繊維状のカルボキシメチル化セルロース:平均繊維径:25nm、平均繊維長:900nm、平均アスペクト比:36、1質量%の分散液の粘度:250mPa・s、透明度:54%、カルボキシメチル置換度:1.31mmol/g、製造方法については(A2)と同様である。
(A4)繊維状のカルボキシメチル化セルロース:平均繊維径:10nm、平均繊維長:2400nm、平均アスペクト比:240、1質量%の分散液の粘度900mPa・s、透明度:72%、カルボキシメチル置換度:1.62mmol/g、製造方法については(A2)と同様である。
(A5)繊維状のカルボキシメチル化セルロース:平均繊維径:30nm、平均繊維長:8400nm、平均アスペクト比:280、1質量%の分散液の粘度:4750mPa・s、透明度:46%、カルボキシメチル置換度:1.72mmol/g、製造方法については(A2)と同様である。
(A6)繊維状のカルボキシエチル化(CE化)セルロース:平均繊維径:15nm、均繊維長:6000nm、平均アスペクト比:400、1質量%の分散液の粘度:4400mPa・s、透明度:72%、カルボキシエチル置換度:1.92mmol/g、製造方法については後述する。
(A'1)KMN−01:酸化セルロース微小繊維、花王社製(平均繊維径:3.3nm、平均繊維長:830nm、平均アスペクト比:251.5、1質量%の分散液の粘度:2600mPa・s、透明度:95%、カルボキシ基含有量:1.4mmol/g、製造方法については後述する。)
(A'2)セリッシュFD−200L:ミクロフィブリル化繊維状セルロース、ダイセルファインケム社製(平均繊維長:3〜0.5mm、1質量%の分散液の粘度:2000mPa・s、透明度:12%)
(他のセルロース)
他のセルロースとしては、以下の成分(A'3)〜(A'5)を用いた。
(A'3)サンローズSLD−FM:微細粉末状のカルボキシメチル化セルロースナトリウム、日本製紙社製(平均粒子径:20μm)
(A'4)CMCダイセル1190:水溶性カルボキシメチル化セルロース、ダイセルファインケム社製(1質量%分散液の粘度:1520mPa・s、分子量:68万、カルボキシメチル置換度:3.45mmol/g)
(A'5)HECダイセル SE850:水溶性ヒドロキシエチル化セルロース、ダイセルファインケム社製(1質量%分散液の粘度:2800mPa・s、平均分子量:115万、エーテル化度:1.3)
【0048】
上記のうち、成分(A2)の繊維状のカルボキシメチル化セルロースの製造方法は以下の通りである。
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度1.42mmol/gのカルボキシメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、繊維状のカルボキシメチル化セルロースとした。
得られた繊維状のカルボキシメチル化セルロースの平均繊維長は1000nm、平均繊維径は4nm、平均アスペクト比は250であった。
また、上記製造方法において、モノクロロ酢酸ナトリウムの添加量を変更すること、および高圧ホモジナイザーの処理圧を変更することにより、成分(A3)〜(A5)の繊維状のカルボキシメチル化セルロースを得た。
【0049】
上記成分(A6)の繊維状のカルボキシエチル化セルロースは、上述した成分(A2)の製造方法において、モノクロロ酢酸ナトリウムに代えて3−クロロプロピオン酸ナトリウム242g(有効成分換算)を用い、成分(A2)の製造方法に準じて製造された。
得られた繊維状のカルボキシエチル化セルロースの平均繊維長は6000nm、平均繊維径は15nm、平均アスペクト比は400であった。
【0050】
また、上記成分(A'1)の酸化セルロース微小繊維(KMN−01)の製造方法は以下の通りである。
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム28.4質量%をこの順で添加した。pHスタットを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持し、酸化反応をおこなった。酸化反応を120分間おこなった後に滴下を停止し、酸化パルプを得た。イオン交換水を用いて酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理をおこなった。その後、酸化パルプ3.9gとイオン交換水296.1gをミキサー(Vita−Mix−Blender ABSOLUTE、大阪化学社製)によって10分間攪拌した。その操作によって繊維の微細化処理をおこない、セルロース微小繊維の分散液を得た。分散液の固形分濃度は、1.3質量%であった。このセルロース微小繊維の平均繊維径は3.3nm、平均繊維長は830nm、平均アスペクト比は251.5、カルボキシ基含有量は1.4mmol/gであった。
【0051】
繊維状セルロースの評価方法を以下に示す。
(無水グルコース単位あたりのカルボキシアルキル基の置換度の測定方法)
繊維状のカルボキシアルキル化(CA化)セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液を100mL加え、3時間振とうして、カルボキシアルキル化セルロース塩(CA化セルロース)を水素型CA化セルロースにした。水素型CA化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CA化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。置換度(DS)を、次式によって算出した。
A=[(100×F'−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CA化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CA化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F':0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
【0052】
(実施例1〜10、比較例1〜6)
表1に示す成分を常温(25℃、以下同じ。)で混合して皮膚化粧料を調製し、化粧料中の成分の保持量を評価した。評価結果を表1にあわせて示す。
成分(A1)〜(A6)または(A'1)〜(A'4)のいずれかのセルロースを水に分散させて分散液を調製した。得られた分散液に、成分(B)または(B')を溶解して試料を得た。試料中の各成分の濃度は表1に記載のとおりである。
得られた試料をメンブランフィルター(ADVANTEC社製、DISMIC、PTFEメンブランフィルター25HPO45AN)にてろ過し、得られたろ液中に含まれる成分(B)または(B')の濃度を測定した。また、得られた濃度の定量値から、各例の皮膚化粧料中に保持された成分(B)または(B')の割合を下記式にて算出した。
成分(B)または(B')の保持量(%)=(添加量−定量値)/添加量×100
【0053】
【表1】
【0054】
表1より、各実施例で得られた皮膚化粧料は、各比較例のものに比べて、成分(B)の保持効果に優れていることがわかる。
【0055】
(実施例11〜14、比較例7〜12)
表2に示す成分を常温で混合して皮膚化粧料を調製し、化粧料の使用性、化粧料中の成分の皮膚への浸透性を評価した。評価結果を表2にあわせて示す。
成分(A1)、(A2)、(A4)、(A6)または(A'2)〜(A'5)のいずれかのセルロースを水に分散させて分散液を調製した。得られた分散液に、成分(B)または(B')を溶解して各例の皮膚化粧料を得た。化粧料中の各成分の濃度は表2に記載のとおりである。
【0056】
1名の専門パネラーが得られた化粧料を人上腕に塗布し(40μL/4cm2)、肌塗布時の使用性として、均一に化粧料を塗布することができるかどうかを評価した。
また、塗布から1時間または6時間経過後に、皮膚表面の化粧料を湯せんにて洗浄後、皮膚中に浸透した成分(B)または(B')をカップシェイク法(溶媒:水)で回収し、回収した試料液中に含まれるヒドロキシベンゼンカルボン酸誘導体含量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて後述する方法および条件で定量した。
そして、得られた定量値から、成分(B)または(B')の塗布量に対する皮膚への浸透量(%)を算出した。化粧料を皮膚に適用してからの経過時間が1時間と6時間の場合について、各々評価した。
【0057】
(HPLC測定方法)
(測定条件)
紫外部吸収検出器付高速液体クロマトグラフを用い、以下の条件とした。
カラム:L−column ODS 5μm、4.6×150mm(化学物質評価機構製)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/5mmolL-1クエン酸(6:4)
流量:1.0mL/min
注入量:10μL
測定波長:254nm
(定量方法)
実施例または比較例で用いた各ヒドロキシベンゼンカルボン酸について、上記条件にてあらかじめ検量線を作成した。
次に、各例において皮膚表面から回収された試料液について、上記条件にてHLPC測定をおこない、検量線を用いて試料液中のヒドロキシベンゼンカルボン酸誘導体の濃度(μg/mL)を求め、次式に基づきヒドロキシベンゼンカルボン酸誘導体含量(g/kg)を算出した。
ヒドロキシベンゼンカルボン酸誘導体含量(g/kg)=C/(25×W)
(上記式中、Cは試料液中のヒドロキシベンゼンカルボン酸誘導体の濃度(μg/mL)であり、Wは、試料液(10μL)の採取量(g)である。)
【0058】
【表2】
【0059】
表2より、各実施例で得られた皮膚化粧料は、皮膚に均一に塗布されて皮膜を形成するものであった。そして、各実施例で得られた皮膚化粧料では、各比較例のものに比べて、化粧料を皮膚へ適用して1時間後の成分(B)の過度の浸透が抑制されるとともに、化粧料を皮膚へ適用して6時間後にも成分(B)が持続的に浸透していることがわかる。