【解決手段】クレイモデル本体の表面に貼付してクレイモデルを製造するために用いられる擬装用フィルム10である。第1の熱可塑性樹脂からなる透明フィルム1と、透明フィルム1の一方の面上に積層して配置される、第2の熱可塑性樹脂からなる自己粘着性の着色フィルム2とを備え、着色フィルム2が粘着付与剤を含有し、着色フィルム2の剪断接着力が7.0〜30.0N/25mmであり、初期タックが2以下である。
前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂が、それぞれ、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アセテート系樹脂、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の擬装用フィルム。
前記粘着付与剤が、フェノール系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、キシレン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族共重合樹脂、脂肪族/脂環族共重合樹脂、水添石油樹脂、C5系石油樹脂、及びC5/C9系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の擬装用フィルム。
クレイモデル本体と、前記クレイモデル本体の表面に前記着色フィルムの表面が貼付して配置された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の擬装用フィルムと、を備えるクレイモデル。
【背景技術】
【0002】
自動車やオートバイ等の工業製品を開発する際には、デザイナーのスケッチをもとにして実物大又はミニチュアサイズの模型(モデル)が製造される。このようなモデルを製造するための材料としては、盛り・削り等の形状加工が容易な工業用粘土(インダストリアルクレイ)(以下、単に「クレイ」とも記す)が主として用いられている。そして、一般的には、クレイを用いて製造されたクレイモデル本体の表面に彩色が施されてクレイモデルが完成する。なお、通常、種々の色に着色された擬装用フィルムをクレイモデル本体の表面に貼着することによって、クレイモデル本体を彩色(擬装)することができる。
【0003】
このような目的で使用される擬装用フィルムとしては、例えば、着色された熱可塑性フィルムの一方の面上に、デンプン質等の水溶性糊からなる粘着剤層と、吸水性紙とが順次積層されたクレイモデリングフィルムが知られている(非特許文献1)。このクレイモデリングフィルムを用いるには、まず、フィルム全体を水に浸漬させて粘着剤層を湿潤させる。次いで、吸水性紙を剥離して、クレイモデル本体の表面に貼着する。
【0004】
また、着色された熱可塑性フィルムの一方の面上に、粘着剤からなる粘着剤層と、セパレーターとが順次積層された、非浸水タイプのクレイモデリングフィルムが知られている(非特許文献2)。このクレイモデリングフィルムを用いるには、まず、水に浸漬させることなくセパレーターを剥離する。次いで、露出させた粘着剤層をクレイモデル本体の表面に貼着する。
【0005】
なお、車両内外装材等に貼着される一般的なマーキングフィルムとしては、例えば、(メタ)アクリル系のフィルムと、フィルムの表面側に受容された着色剤と、フィルムの裏面側に配置された接着剤からなる接着剤層と、備えた積層フィルムが知られている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1で開示されたクレイモデリングフィルムは、水を多量に確保するとともに、フィルム全体を水に浸漬する必要があることから、使用時に手間が掛かるものであった。また、水溶性糊が溶出した排水を廃棄する必要があるため、環境に対する影響についても十分に考慮する必要があった。さらに、溶出した水溶性糊がフィルム表面に付着しやすく、汚れが生じやすいといった課題もあった。
【0009】
また、非特許文献2で開示されたクレイモデリングフィルムは、粘着剤層からセパレーターを剥離する際に静電気が発生しやすい。このため、発生した静電気の影響によってフィルム同士が貼りつきやすく、作業性が低下しやすい。さらに、貼りついたフィルムを引き剥がそうとすると、フィルム自体が損失するといった課題もあった。なお、特許文献1においては、クレイモデルを製造するために用いる擬装用フィルムに要求される作業性や特性等については、何ら検討されていない。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、クレイモデル本体への貼りつき性及び固定度に優れているとともに、作業性に優れており、かつ、汎用性の高い擬装用フィルムを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、この擬装用フィルムを用いたクレイモデル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粘着剤によって形成された粘着剤層を設けることなく、着色フィルムの主たる構成材料(熱可塑性樹脂)に粘着付与剤を配合し、着色フィルムそのものを自己粘着性のフィルムとして透明フィルムと積層した積層体とすることによって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、以下に示す擬装用フィルムが提供される。
[1]クレイモデル本体の表面に貼付してクレイモデルを製造するために用いられる擬装用フィルムであって、第1の熱可塑性樹脂からなる透明フィルムと、前記透明フィルムの一方の面上に積層して配置される、第2の熱可塑性樹脂からなる自己粘着性の着色フィルムと、を備え、前記着色フィルムが、粘着付与剤を含有し、前記着色フィルムの剪断接着力が7.0〜30.0N/25mmであり、初期タックが2以下である擬装用フィルム。
[2]引張破断強度が5.0〜20.0MPaであるとともに、引張破断伸びが50〜400%である前記[1]に記載の擬装用フィルム。
[3]前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂が、それぞれ、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アセテート系樹脂、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]又は[2]に記載の擬装用フィルム。
[4]前記透明フィルムの厚さが10〜100μmであり、前記着色フィルムの厚さが10〜100μmである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の擬装用フィルム。
[5]前記粘着付与剤が、フェノール系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、キシレン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族共重合樹脂、脂肪族/脂環族共重合樹脂、水添石油樹脂、C5系石油樹脂、及びC5/C9系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の擬装用フィルム。
【0013】
また、本発明によれば、以下に示すクレイモデル及びその製造方法が提供される。
[6]クレイモデル本体と、前記クレイモデル本体の表面に前記着色フィルムの表面が貼付して配置された、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の擬装用フィルムと、を備えるクレイモデル。
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の擬装用フィルムの前記着色フィルムの表面をクレイモデル本体の表面に貼付する工程を有するクレイモデルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クレイモデル本体への貼りつき性及び固定度に優れているとともに、作業性に優れており、かつ、汎用性の高い擬装用フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、上記の擬装用フィルムを用いたクレイモデル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の擬装用フィルムは、クレイモデル本体の表面に貼付してクレイモデルを製造するために用いられるフィルムであり、第1の熱可塑性樹脂からなる透明フィルムと、この透明フィルムの一方の面上に積層して配置される、第2の熱可塑性樹脂からなる自己粘着性の着色フィルムと、を備える。
【0017】
<擬装用フィルム>
図1は、本発明の擬装用フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。また、
図2は、本発明の擬装用フィルムの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図1及び2に示すように、本実施形態の擬装用フィルム10は、透明フィルム1と、透明フィルム1の一方の面上に積層して配置される着色フィルム2とを備える。透明フィルム1は、第1の熱可塑性樹脂を主体として構成されている。また、着色フィルム2は、第2の熱可塑性樹脂を主体として構成された自己粘着性を有するフィルムであり、粘着付与剤を含有する。そして、着色フィルム2の剪断接着力は7.0〜30.0N/25mmであり、初期タックは2以下である。なお、本実施形態の擬装用フィルム10は、
図1及び2に示すように、透明フィルム1の他方の面(着色フィルム2が配置される面と異なる面)上に積層して配置される剥離フィルム5をさらに備えていてもよい。
【0018】
前述の通り、本発明の擬装用フィルムは、粘着剤によって形成された粘着剤層を設けることなく、着色フィルムの主成分である第2の熱可塑性樹脂に粘着付与剤を配合し、着色フィルムそのものを自己粘着性フィルムとした積層フィルムである。すなわち、本発明の擬装用フィルムは粘着剤からなる粘着剤層を実質的に有さず、積層フィルムを構成する着色フィルム自体が自己粘着性を発揮する。このため、着色フィルムの表面(貼着面15(
図1参照))をクレイモデル本体に接触させる程度では貼りつかず、貼り付け位置を決定するための微調整が容易である。また、貼りつけ位置を決定した後は、固定したい部分に人肌程度の熱(例えば、掌の熱)を数秒から数十秒程度与えることで着色フィルムの自己粘着性が発揮され、クレイモデル本体の表面に擬装用フィルムを固定することができる。
【0019】
本発明の擬装用フィルムをクレイモデル本体の表面に貼着する際には、非特許文献1で開示されたフィルムのように水に浸漬する必要がないため、作業が簡単である。さらに、水性糊が溶出した排水が生ずることがないため、排水を廃棄する手間を削減可能であるとともに、環境に対する負荷も生じない。また、本発明の擬装用フィルムを構成する着色フィルムは自己粘着性のフィルムであるため、非特許文献2で開示されたフィルムのように、貼着面(粘着剤層の表面)にセパレーターを貼りつけておく必要がない。したがって、貼着時に静電気が発生しにくく、作業性に優れている。さらに、着色フィルム同士が接触した場合であっても極めて容易に引き剥がすことができるため、フィルムが損失する等の不具合も生じない。したがって、本発明の擬装用フィルムは、いわゆる熟練者以外の者であっても容易に取り扱うことが可能な汎用性の高いフィルムである。
【0020】
(透明フィルム)
本発明の擬装用フィルムを構成する透明フィルムは、第1の熱可塑性樹脂を主体として構成されている。第1の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アセテート系樹脂、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
透明フィルム(透明フィルムを構成する、第1の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物)には、透明性を損なわない範囲で、必要に応じて、クリアーな有機顔料や無機顔料などの着色成分(色材)を含有させてもよい。透明フィルムに着色成分を含有させることで、隣接する着色フィルムの色調を変化させることができる。一例を挙げると、着色フィルムにアルミニウムフィラーを含有させてシルバーメタリックの色調にするとともに、透明フィルムにクリアーな黄色又はオレンジ色の色材を含有させることで、全体の色調を金色にすることができる。なお、透明フィルムには、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤等の各種の添加剤を含有させてもよい。
【0022】
可塑剤としては、例えば、ポリエステル系可塑剤や芳香族系可塑剤を用いることができる。特に、ポリエステル系可塑剤と芳香族系可塑剤を併用することが好ましい。ポリエステル系可塑剤と芳香族系可塑剤を併用することで、クレイモデル本体への擬装用フィルムの固定度をさらに向上させることができるとともに、透明フィルム表面の風合いをより高めることができる。
【0023】
透明フィルムの厚さは特に限定されず、取り扱い性、実用強度、及び意匠性等を考慮して適宜決定することができる。透明フィルムの厚さは、通常、10〜100μmであり、好ましくは20〜70μmである。透明フィルムが厚すぎると、クレイモデル本体への固定度や、フィルム表面の風合いが低下する場合がある。一方、透明フィルムが薄すぎると、フィルム表面の風合いや、色合い・輝度が低下する場合がある。
【0024】
(着色フィルム)
本発明の擬装用フィルムを構成する着色フィルムは、第2の熱可塑性樹脂を主体として構成されている。第2の熱可塑性樹脂の具体例としては、第1の熱可塑性樹脂の具体例と同様のものを挙げることができる。なお、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂は、同一種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
【0025】
前述の通り、着色フィルムは、いわゆる粘着剤によって形成された粘着剤層ではなく、第2の熱可塑性樹脂を主体として形成された自己粘着性のフィルムである。したがって、着色フィルムの剪断接着力は7.0〜30.0N/25mmであり、好ましくは10.0〜20.0N/25mmである。着色フィルムの剪断接着力が7.0N/25mm未満であると、接着力が低すぎるために、クレイモデル本体に対する固定度が不足する。一方、着色フィルムの剪断接着力が30.0N/25mm超であると、接着力が強すぎるため、固定箇所の変更や貼り直しが困難になるとともに、着色フィルム同士が接着しやすくなり、取り扱い性が不足する。また、着色フィルムの初期タック(クレイモデル本体に貼着する前段階におけるボールタック)は2以下である。着色フィルムの初期タックが2超であると、剪断接着力が強すぎる場合と同様に作業性及び取り扱い性が低下する。さらに、貼り直しの際に着色フィルムの表面にクレイモデル本体の一部が付着してしまい、貼り付け作業自体を中断せざるを得なくなる場合がある。なお、本明細書における「着色フィルムの剪断接着力」とは、JIS Z 0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠して測定される剪断接着力(単位:N/25mm)を意味する。また、本明細書における「着色フィルムの初期タック」とは、JIS Z 0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠したJ.DOW法により、傾斜角30°の条件で測定されるボールタック(単位:ボールナンバー)を意味する。
【0026】
着色フィルムには、粘着付与剤が含まれている。これにより、着色フィルムは自己粘着性を示すことになる。なお、粘着付与剤の含有量を適宜設定することで、着色フィルムの粘着力を上記の所定の範囲にすることができる。
【0027】
粘着付与剤としては、自己粘着性のフィルムを形成する際に使用しうる通常の粘着付与剤を用いることができる。粘着付与剤の具体例としては、フェノール系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、キシレン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族共重合樹脂、脂肪族/脂環族共重合樹脂、水添石油樹脂、C5系石油樹脂、及びC5/C9系石油樹脂等を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
着色フィルム(着色フィルムを構成する、第2の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物)中の粘着付与剤の含有量(固形分)は、1〜60質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましく、10〜25質量%であることが特に好ましい。粘着付与剤の含有量が1質量%未満であると、着色フィルムの粘着力(自己粘着性)が不足する場合がある。一方、粘着付与剤の含有量が60質量%超であると、着色フィルムの粘着力が過度に高まるとともに、強度が不足する場合があり、コスト面でも不利になることがある。
【0029】
着色フィルムには、通常、着色成分(色材)が含まれている。着色成分の種類は特に限定されず、擬装用フィルムを好ましい色調とするための色材等が適宜選択されて用いられる。着色成分としては、例えば、有機顔料や無機顔料等を用いることができる。また、着色フィルムには、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤等の各種の添加剤を含有させてもよい。
【0030】
着色フィルムの厚さは特に限定されず、取り扱い性、実用強度、及び意匠性等を考慮して適宜決定することができる。着色フィルムの厚さは、通常、10〜100μmであり、好ましくは20〜70μmである。
【0031】
(擬装用フィルム)
本発明の擬装用フィルムの厚さ(透明フィルムの厚さと着色フィルムの厚さの合計)は、10〜200μmであることが好ましく、40〜140μmであることがさらに好ましい。厚すぎると、クレイモデル本体への固定度が低下したり、重くなるために取り扱い性が低下したりする場合がある。一方、薄すぎると、やはり取り扱い性が低下する場合がある。
【0032】
JIS K 6732:2006に準拠して測定される擬装用フィルムの引張破断強度は、5.0〜20.0MPaであることが好ましく、7.0〜15.0MPaであることがさらに好ましい。また、JIS K 6732:2006に準拠して測定される擬装用フィルムの引張破断伸びは、50〜400%であることが好ましく、100〜350%であることがさらに好ましい。引張破断強度及び引張破断伸度をそれぞれ上記の範囲内とすると、擬装用フィルムを適度に引っ張って延ばすことができ、透明フィルムに艶退け等を生じさせることなく着色フィルムに応力を生じさせることができる。さらに、フィルム全体の剥がれや捲れ等も発生せず、クレイモデル本体の曲面部分、入り組んだ形状部分、及び凹凸部分等に良好に追従させてより優れた密着性を発揮させることができる。
【0033】
(擬装用フィルムの製造方法)
次に、本発明の擬装用フィルムの製造方法について説明する。本発明の擬装用フィルムの製造方法は、第1の熱可塑性樹脂、及び必要に応じて用いられる可塑剤等の各種添加剤を含有する第1の樹脂組成物を用いて透明フィルムを形成する第1の工程と、第2の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、着色成分、及び必要に応じて用いられる可塑剤等の各種添加剤を含有する第2の樹脂組成物を用いて着色フィルムを形成する第2の工程とを有する。
【0034】
透明フィルムは、例えば、キャスト法等によって形成することができる。キャスト法は、エクストルーダー(押出機)を用いる方法であっても、熱可塑性樹脂等を有機溶剤に溶解させて得た溶液を成膜する溶液キャスト法であってもよい。さらに、カレンダー法によっても透明フィルムを形成することができる。
【0035】
例えば、コンバーティング機械を使用することによって、透明フィルム、着色フィルム、及びこれらを積層した擬装用フィルムを製造することができる。
図3は、コンバーティング機械の構成の一例を示す模式図である。第1の工程で透明フィルムを形成するには、まず、
図3に示すコンバーティング機械100の受け容器20に第1の樹脂組成物を入れる。次いで、工程用フィルム25(又は工程用紙)上に第1の樹脂組成物を付着させた後、工程用フィルム25を成膜ヘッド30へと移動させて所定の厚さの塗工膜を形成する。さらに、工程用フィルム25を乾燥炉35内へと順次送り込んで通過させ、有機溶剤を揮発させる。これにより、第1の樹脂組成物中の固形分のみが残り、所定厚さの透明フィルムを形成することができる。なお、形成された透明フィルムは、適宜冷却した後、連続的に巻き取ることができる。乾燥炉35内の温度は、例えば、70〜130℃の範囲とすればよい。また、ライン速度は、例えば、1〜20m/分の範囲とすればよい。
【0036】
工程用フィルム25としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の剥離フィルムや、紙製のフィルム(剥離紙)等を用いることができる。工程用フィルムは、片面剥離処理又は両面剥離処理されたものであってもよい。なお、工程用フィルムが剥離処理されたものである場合、2つの面の剥離力が異なる(例;重剥離と軽剥離)ことが好ましい。2つの面の剥離力が異なる工程用フィルムを用いると、完成したフィルムの逆貼着を防止することができる。
【0037】
第2の工程で着色フィルムを形成する際にも、上記の第1の工程と同様にすればよい。すなわち、第2の工程で透明フィルムを形成するには、まず、
図3に示すコンバーティング機械100の受け容器20に第2の樹脂組成物を入れる。次いで、工程用フィルム25(又は工程用紙)上に第2の樹脂組成物を付着させた後、工程用フィルム25を成膜ヘッド30へと移動させて所定の厚さの塗工膜を形成する。さらに、工程用フィルム25を乾燥炉35内へと順次送り込んで通過させ、有機溶剤を揮発させる。これにより、第2の樹脂組成物中の固形分のみが残り、所定厚さの着色フィルムを形成することができる。乾燥炉35内の温度は、60〜150℃とすることが好ましく、70〜130℃とすることがさらに好ましい。
【0038】
その後、加熱した圧力ロール40を使用し、形成された着色フィルムと、第1の工程で得た透明フィルムとを積層するとともに、工程用フィルム25を離脱させながら、加熱加圧条件下で巻き上げる。これにより、積層構造を有する本発明の擬装用フィルムを連続的に製造することができる。なお、圧力ロール40の圧力は、1〜15kg/cm
2とすることが好ましく、2〜10kg/cm
2とすることがさらに好ましい。また、圧力ロール40の温度は、60〜150℃とすることが好ましく、90〜120℃とすることがさらに好ましい。
【0039】
<クレイモデル及びその製造方法>
上述の本発明の擬装用フィルムを用いれば、自動車やオートバイ等の工業製品のクレイモデルを、従来のフィルムを用いた場合に比して容易に製造することができる。すなわち、本発明のクレイモデルは、クレイモデル本体と、このクレイモデル本体の表面に着色フィルムの表面(貼着面)が貼付して配置された、上述の擬装用フィルムとを備える。また、本発明のクレイモデルの製造方法は、上述の擬装用フィルムの着色フィルムの表面(貼着面)をクレイモデル本体の表面に貼付する工程を有する。なお、本発明のクレイモデルの製造方法は、上述の擬装用フィルムを用いること以外、従来のクレイモデルの製造方法と概ね同様である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0041】
<擬装用フィルムの製造>
(実施例1)
ポリ塩化ビニル15部、ポリエステル系可塑剤3.5部、芳香族系可塑剤1.5部、消泡剤0.2部、安定剤0.3部、表面張力調整剤0.07部、シクロヘキサノン56部、及び酢酸ブチル24部を容器に入れ、撹拌機を使用して撹拌及び混合し、固形分濃度約20%の溶液を得た。得られた溶液を、
図3に示すコンバーティング機械100の受け容器20に入れた後、ポリエステル製の工程用フィルム25に付着させた。工程用フィルム25を移動させ、付着した溶液の膜厚が150μmとなるように設定した成膜ヘッド30を通過させた。次いで、120℃に設定した乾燥炉35内を5分間かけて通過させて溶液を加熱して乾燥させ、厚さ30μmの透明フィルムを形成した。
【0042】
ポリ塩化ビニル13.2部、ロジンエステル(商品名「パインクリスタル」、荒川化学工業社製)6部、ポリエステル系可塑剤10.8部、消泡剤0.3部、安定剤0.26部、表面張力調整剤0.15部、シクロヘキサノン49部、酢酸ブチル21部、アルミニウムペースト11.4部を容器に入れ、撹拌機を使用して撹拌及び混合し、固形分濃度約30%の粘稠溶液を得た。得られた粘稠溶液を、
図3に示すコンバーティング機械100の受け容器20に入れた後、ポリエステル製の工程用フィルム25に付着させた。工程用フィルム25を移動させ、付着した粘稠溶液の膜厚が100μmとなるように設定した成膜ヘッド30を通過させた。次いで、120℃に設定した乾燥炉35内を5分間かけて通過させて粘稠溶液を加熱して乾燥させ、厚さ30μmの着色フィルムを形成した。そして、形成した透明フィルムと着色フィルムを積層し、100℃に加熱した圧力ロール40を通過させて加熱圧着し、厚さ60μmの擬装用フィルムを得た。
【0043】
(実施例2〜7、比較例1、2)
表1−1及び1−2に示す各成分の配合としたこと、及び表1−1及び1−2に示す厚さとなるようにコンバーティング機械の成膜ヘッドを適宜設定したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1、2の擬装用フィルムを製造した。製造した各擬装用フィルムの厚さを表1−1及び1−2に示す。
【0044】
【0045】
【0046】
<評価>
実施例1〜7及び比較例1、2の擬装用フィルムについて、以下に示す各項目の評価を行った。
【0047】
(着色フィルムの剪断接着力)
JIS Z 0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠し、擬装用フィルムを構成する着色フィルムの剪断接着力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
(着色フィルムの初期タック)
JIS Z 0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠したJ.DOW法により、傾斜角30°の条件で擬装用フィルムを構成する着色フィルムのボールタック(初期タック)を測定した。結果を表2に示す。
【0049】
(引張破断強度)
JIS K 6732:2006に準拠し、擬装用フィルムの引張破断強度(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
(引張破断伸び)
JIS K 6732:2006に準拠し、擬装用フィルムの引張破断伸び(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
(自己粘着性)
擬装用フィルムを構成する着色フィルムの表面を指で触り、以下に示す評価基準にしたがって自己粘着性を評価した。結果を表2に示す。
○:ベタツキを感じることができる。
△:ベタツキをやや感じることができる。
×:ベタツキを感じることができない。
【0052】
(貼りつき性)
擬装用フィルムを構成する着色フィルムの表面をクレイの水平面上に負荷をかけずに載置した。その擬装用フィルム上に50gの錘を10秒間接触させた後、擬装用フィルムを水平方向に引っ張って剥離する強度(剪断力)を測定し、以下に示す評価基準にしたがって貼りつき性を評価した。結果を表2に示す。
○:剪断力が7.0N/25mm以上であった。
△:剪断力が3.0N/25mm以上7.0N/25mm未満であった。
×:剪断力が3.0N未満であり、容易に剥離した。
【0053】
(固定度)
凹凸及び曲面を有するクレイの表面に、固定具や粘着テープ等を用いずに擬装用フィルムを貼りつけた。そして、1ヶ月後の貼りつき状態を確認し、以下に示す評価基準にしたがって固定度を評価した。結果を表2に示す。
○:継続して貼りついていた。
△:一部剥離していたが、大分部は継続して貼りついていた。
×:剥離していた。
【0054】
(風合い)
擬装用フィルムを構成する透明フィルムの表面を手で触り、以下に示す評価基準にしたがって風合いを評価した。結果を表2に示す。
○:しっとり感及びしなやか感があるとともに、ゴワツキ感及び硬質感がなかった。
×:しっとり感及びしなやか感のいずれかがない、又はゴワツキ感及び硬質感のいずれかがあった。
【0055】
(色合い・輝度)
擬装用フィルムを引っ張った後、透明フィルムの表面を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって色合い・輝度を評価した。結果を表2に示す。
○:退色、退艶、及び輝度低下のいずれも認められなかった。
×:退色、退艶、及び輝度低下の少なくともいずれかが認められた。
【0056】