特開2017-197672(P2017-197672A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙パピリア株式会社の特許一覧 ▶ 日本製紙株式会社の特許一覧

特開2017-197672コンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物及び水漏れ検知方法
<>
  • 特開2017197672-コンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物及び水漏れ検知方法 図000003
  • 特開2017197672-コンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物及び水漏れ検知方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-197672(P2017-197672A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物及び水漏れ検知方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20171006BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171006BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20171006BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20171006BHJP
   C09D 123/26 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
   C09D129/04
   C09D7/12
   C09D5/00
   G01M3/20 Z
   C09D123/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-90300(P2016-90300)
(22)【出願日】2016年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】島田 照久
(72)【発明者】
【氏名】藤野 謙一
【テーマコード(参考)】
2G067
4J038
【Fターム(参考)】
2G067AA19
2G067BB15
2G067BB22
2G067BB31
2G067CC02
2G067DD10
2G067EE08
4J038CE021
4J038CP031
4J038HA446
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA12
4J038PA18
4J038PA19
4J038PB05
4J038PB13
4J038PC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンクリート構造物への十分な接着性、塗膜としの長期安定性、水で濡れた箇所とそうでない箇所との色の違いが明確である、水漏れを検知することのできるコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物の提供。
【解決手段】低屈折率顔料及びバインダーを含有するコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物であって、該バインダーがポリビニルアルコール類と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体でグラフト変性されたポリオレフィン樹脂との混合物であり、該混合物中のポリビニルアルコール類/変性ポリオレフィン樹脂の重量比が、固形分で、5/95〜60/40である、コンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物。低屈折率顔料として無定形シリカを含有し、無低形シリカ以外の低屈折率の割合が50%以下であることが好ましく、より好ましくは0%である塗料組成物。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低屈折率顔料及びバインダーを含有するコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物であって、該バインダーがポリビニルアルコール類と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体でグラフト変性されたポリオレフィン樹脂との混合物であり、該混合物中のポリビニルアルコール類/変性ポリオレフィン樹脂の重量比が、固形分で、5/95〜60/40である、コンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物。
【請求項2】
前記低屈折率顔料として無定形シリカを含有し、該低屈折率顔料中の無定形シリカ以外の低屈折率顔料の割合が50重量%未満である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記低屈折率顔料が無定形シリカ以外の低屈折率顔料を含まない請求項1〜2いずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコール類が完全ケン化型ポリビニルアルコールである請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記低屈折率顔料/バインダーの重量比が、固形分で、60/40〜40/60である請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料組成物を溶媒に溶解して得られるコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料。
【請求項7】
前記溶媒が水、又は水とアルコールの混合溶液であって該混合溶液中のアルコールの含有量が45重量%未満である混合溶液である請求項6に記載の塗料。
【請求項8】
コンクリート構造物の水漏れが予想される箇所を含む表面に請求項1〜5のいずれか一項に記載の水漏れ検知用塗料組成物を塗工する工程、及び該塗料が変色しているかどうかを観察し、変色していればその変色箇所の近辺で水漏れが発生していると判断し、変色していなければ水漏れが無いと判断する工程、から成るコンクリート構造物の水漏れを検知する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物の水漏れを検知するために使用する塗料組成物、この塗料組成物を用いて水漏れを検知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、ビル等の建物、トンネル等の壁面、プレキャスト、橋梁、橋脚、橋台、桟橋、高欄、床版下面、バルコニー、煙突、コンクリートポール、タンク、法枠、堤防等の構造物に広く用いられている。このコンクリート構造物は、竣工直後、あるいは経年時に、コンクリートのひび割れなどに起因する水漏れなど検査が必要となり、コンクリート構造物のひび割れ検査としては、磁場パルスを発生する励磁コイルと音響パルスを検出する音響センサからなるコンクリートポールのひび割れ評価装置を用いる方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、紙やフィルムの上に様々なタイプの顔料やバインダー等から成る塗工層を設けた水筆用紙(又は水像用紙)は、その上に水で濡らした筆で文字等を書くことができ、乾燥するとこの文字等が消えるため、文字等の練習などに用いられている(特許文献2等)。
【0004】
また、本出願人は、親水性に変性され、金属や非極性材料との接着性が優れた変性ポリオレフィン樹脂を開発している(特許文献3、4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−309232
【特許文献2】特公昭50−5097
【特許文献3】特開2002−173514
【特許文献4】特開2015−105294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、水筆用紙(又は水像用紙)用の塗工層に使用されている塗液を、コンクリート構造物に塗工して水漏れをチェックできるか確かめる実験を行ったところ、コンクリート構造物への接着が不十分、塗膜として長期間安定しない、水で濡れた箇所とそうでない箇所との色の違い(以下「変色」ともいう。)が不明瞭であるなどの問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、これらの性能を有し、水漏れを検知することのできるコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は[1]〜[8]を提供する。
[1] 低屈折率顔料及びバインダーを含有するコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物であって、該バインダーがポリビニルアルコール類と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体でグラフト変性されたポリオレフィン樹脂との混合物であり、該混合物中のポリビニルアルコール類/変性ポリオレフィン樹脂の重量比が、固形分で、5/95〜60/40である、コンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物。
[2] 前記低屈折率顔料として無定形シリカを含有し、該低屈折率顔料中の無定形シリカ以外の低屈折率顔料の割合が50重量%未満である[1]に記載の塗料組成物。
[3] 前記低屈折率顔料が無定形シリカ以外の低屈折率顔料を含まない[1]に記載の組成物。
[4] 前記ポリビニルアルコール類が完全ケン化型ポリビニルアルコールである[1]に記載の組成物。
[5] 前記低屈折率顔料/バインダーの重量比が、固形分で、60/40〜40/60である[1]に記載の塗料組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の塗料組成物を溶媒に溶解して得られるコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料。
[7] 前記溶媒が水、又は水とアルコールの混合溶液であって該混合溶液中のアルコールの含有量が45重量%未満である混合溶液である[6]に記載の塗料。
[8] コンクリート構造物の水漏れが予想される箇所を含む表面に[1]〜[5]のいずれか一項に記載の水漏れ検知用塗料組成物を塗工する工程、及び該塗料が変色しているかどうかを観察し、変色していればその変色箇所の近辺で水漏れが発生していると判断し、変色していなければ水漏れが無いと判断する工程、から成るコンクリート構造物の水漏れを検知する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリート構造物への十分な接着性、塗膜としの長期安定性、水で濡れた箇所とそうでない箇所との色の違いが明である、水漏れを検知することのできるコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ひび割れを発生させた、水漏れ検知用塗料組成物を塗布したコンクリート構造物を示した図である。
図2】水漏れ検知用塗料組成物を塗布したコンクリート構造物のひび割れから水が染み出している状態を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のコンクリート構造物用の水漏れ検知用塗料組成物(以下、「水漏れ検知用塗料組成物」あるいは「塗料組成物」ということがある。)は、低屈折率顔料及びバインダーを含有する。
【0012】
本発明において、コンクリート構造物とは、コンクリートを用いた構造物であり、ビル等の建物、トンネル等の壁面、プレキャスト、橋梁、橋脚、橋台、桟橋、高欄、床版下面、バルコニー、煙突、コンクリートポール、タンク、法枠、堤防を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、本発明におけるコンクリート構造物は、ペンキなどの塗料によって加飾や機能性を付与されたコンクリート構造物も含まれる。
【0013】
本発明において、顔料として低屈折率顔料を使用することにより、例えば、本発明の水漏れ検知用塗料組成物をコンクリート構造物に塗工した場合に、水漏れにより塗工層が透明あるいは半透明になり下地(コンクリート構造物表面)が明確に視認でき、その結果水漏れを検知することができる。
【0014】
このような低屈折率顔料として、例えば、無定形シリカ、炭酸カルシウム複合シリカ、コロイダルシリカ、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等の無機顔料やプラスチックピグメントなどの有機顔料が挙げられる。これらの顔料の中では、水吸収性と水吸収後の透明性に優れる無定形シリカが好ましい。
【0015】
また、本発明で使用する低屈折率顔料として、無定形シリカとそれ以外の上記顔料を併用してもよい。併用する顔料は、使用目的(例えば、下地の隠蔽性を向上させる、塗料の塗工性能を向上させる等)により適宜選択することができる。無定形シリカとそれ以外の上記顔料を併用する場合、併用する顔料によってその適切な添加量は異なるが、顔料中の無定形シリカ以外の顔料の割合は、通常50重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量未満、さらに好ましくは8重量%未満である。
【0016】
本発明で使用するバインダーは、ポリビニルアルコール類(以下「PVA」ともいう。)と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体でグラフト変性されたポリオレフィン樹脂(以下「変性ポリオレフィン樹脂」ともいう。)との混合物である。
【0017】
本発明で使用するポリビニルアルコール類としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどが挙げられるが、ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールとしては、ケン化度が95mol%以上の完全ケン化型やケン化度が80〜88mol%程度の部分ケン化型が挙げられる。
【0018】
ポリビニルアルコール類の重合度は800〜2500であることが好ましく、1000〜1800であることがより好ましい。塗布後の塗膜の耐水強度や濡れ時の視認性の点から、完全ケン化型ポリビニルアルコールであればその重合度は800〜2500であることが好ましく、より好ましくは1000〜2000であり、また部分ケン化型ポリビニルアルコールであれば、重合度は1000〜2500であることが好ましく、より好ましくは1500〜2500である。
【0019】
本発明で使用する変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体でグラフト変性されたポリオレフィン樹脂(即ち、変性ポリオレフィン樹脂)であり、コンクリートの他、各種プラスチックなどへの優れた付着性を有している。このため、変性ポリオレフィン樹脂を含有する本発明の塗料組成物は、剥き出しのコンクリート構造物の他、ペンキなどで塗装を施されたコンクリート構造物に対しても優れた付着性を有している。
【0020】
この変性ポリオレフィン樹脂は、特に限定されるものではないが、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1,4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上20以下、好ましくは2以上8以下のα-オレフィンの単独重合体、又はこれらの任意の二種以上を原料モノマーとする共重合体である。また、この変性ポリオレフィン樹脂は、シクロペンテン、シクロヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の鎖状あるいは環状ポリエン、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニルなどをコモノマーとして使用する共重合体であってもよい。
【0021】
本発明で使用する不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体は、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する不飽和カルボン酸化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物(たとえば、不飽和ジカルボン酸の無水物)であり、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。このような不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸、エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。またこの不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体は、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸など対応する酸無水物の形態を有していてもよい。また、例えば、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等の形態を有するものであってもよく、このような不飽和カルボン酸誘導体として、具体的には塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
【0022】
変性ポリオレフィン樹脂組成物中のグラフト重量は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%程度である。
【0023】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは20,000〜200,000、より好ましくは30,000〜150,000である。重量平均分子量の測定法としては公知の方法、例えばGPC法、光散乱法等により求めることができる。
【0024】
また発明の変性ポリオレフィン樹脂の示差走査型熱量計(以下、DSC)による融点(以下、Tm)は、好ましくは50℃〜135℃であり、より好ましくは60℃〜100℃である。
【0025】
本発明で用いる変性ポリオレフィン樹脂は、公知の方法で得られるもののほか、日本製紙株式会社製アウローレンAE−202、AE−301、AE−502などの市販品の変性ポリオレフィン水性エマルジョン、あるいは水性ディスパージョンを用いてもよい。
【0026】
本発明のバインダー混合物中のポリビニルアルコール類/変性ポリオレフィン樹脂の重量比は、固形分で、5/95〜60/40、好ましくは10/90〜50/50、より好ましくは15/85〜40/60である。
【0027】
このうちポリビニルアルコール類は、本発明の塗料組成物を塗工した物品の感水性を向上させ、塗工した物品が水に濡れた場合に、水に濡れたところと濡れていないところの色差の視認性を良好にする役割を果たしていると考えられる。一方、変性ポリオレフィン樹脂は、本発明の塗料組成物が物品表面上で塗膜として安定的に存在し、かつこの塗料組成物が物品表面に良好に密着する役割を果たしていると考えられる。
【0028】
本発明の混合物が上記の比をとることにより、本発明の塗料組成物が、上記2成分の機能がバランス良く発揮され、水漏れを適正に検知することのできる機能を果たすことが出来るものと考えられる。
【0029】
なお、この変性ポリオレフィン樹脂の配合割合が多くなると、塗工層の下地隠蔽性や感水性が低下する傾向にある。従って、ポリビニルアルコール類と変性ポリオレフィン樹脂の配合割合を、上記範囲内で、使用目的に合わせて適宜調整することができる。
【0030】
また、本発明の塗料組成物中の低屈折率顔料とバインダーの重量比(顔料/バインダー)は、固形分で、好ましくは60/40〜40/60、より好ましくは55/45〜45/55である。顔料の比率が多すぎると、配管基材との密着性が悪くなり、塗料を塗工して乾燥させると剥落が発生する傾向がある。また塗工層中に顔料がリッチに存在するため、曲率の大きな曲面に塗工して乾燥させると塗工層にひび割れが発生しやすくなる。また顔料の比率が少なすぎると、コンクリート構造物との密着性は問題ないものの、樹脂分リッチのため水吸収性が悪化する傾向がある。つまり、水吸収速度が遅くなり、水濡れに対する感度が低下する。しかも下地の隠蔽性が悪くなり、水濡れによる塗工層の透明化により水漏れを判断することが困難となる。
【0031】
本発明の水漏れ検知用塗料は、上記の塗料組成物を溶媒に溶解して得られる。 このような溶媒としては、水が好ましいが、塗液の泡立ち防止、配管基材への塗布性(均一塗布、濡れ性)などを改善する目的で、水とアルコールの混合溶液を溶媒として使用してもよい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。この混合溶液中のアルコールの含有量は、通常45重量%未満である。
【0032】
この塗料中の塗料組成物の重量割合は、使用資材、塗料組成物の処方、塗工方法等の塗工条件によって適宜選択すればよいが、通常15〜45重量%、好ましくは20〜40重量%である。
【0033】
この塗料には、塗料物性や塗工性を調整でするため、必要に応じて、消泡剤、増粘剤などの公知の添加剤を添加してもよい。この添加量は塗液中5重量%未満である。
【0034】
この塗料を、検査対象であるコンクリート構造物に塗工する。
【0035】
この塗工方法は、特に限定はないが、刷毛塗り、ローラーブラシ塗り、吹き付け塗り、エアースプレーなどが挙げられる。
【0036】
塗工厚は、塗料の塗工性や塗工後の配管の実用上の利便性などから薄い方が好まれるが、塗料設計と下地の隠蔽性の点から最適塗工厚を決めればよく、通常3〜100μmである。
【0037】
なお、塗料を適正な塗工厚で塗工するために塗工方法に適した塗料物性の改良が必要な場合がある。塗工厚を厚く設けたい場合、塗料濃度を上げる方法や増粘剤を添加して塗料粘度を上げる方法がある。この場合、塗料が泡を持ち込みやすくなるため、メタノールやイソプロピルアルコールを適量添加するか、シリコン系消泡剤を添加することが有効である。
【0038】
本発明の水漏れを検知する方法は、コンクリート構造物の水漏れが予想される箇所を含む表面に上記の水漏れ検知用塗料組成物が塗工された物品を用意する工程、及び該塗料が変色しているかどうかを観察し、変色していればその変色箇所の近辺で水漏れが発生していると判断し、変色していなければ水漏れが無いと判断する工程、から成る。
【0039】
なお、本塗工層は一度変色しても、水が蒸発して乾燥すれば再び元の状態に戻り、下地
隠蔽性が復活する。そして再び水に濡れると変色する特徴を有する。
【実施例】
【0040】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
なお、各実施例及び比較例中、特にことわらない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
<構造物の作製>
直径5cm、高さ10cmのプラスチック製のカップに練り混ぜたモルタルを投入し、20℃の環境下で24時間静置した後、カップから取り出し、さらに3日間静置して柱状のコンクリート構造物を作製した。
(モルタル組成)
C/W/S=100/50/250(質量比)
C:普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、比重3.16)
W:水道水
S:静岡県掛川産陸砂(細骨材、比重2.57)
【0041】
<塗料組成物>
所定量の水及び/又はメタノールを容器(調薬量に対して1.2〜1.5倍容量)に入れ、これに分散剤を添加して撹拌機(株式会社島崎エンジニアリング製ロータリー式攪拌機RH04型攪拌機、回転数:500〜1000rpm)を用いて撹拌を開始した。これに無定形シリカを少量ずつ添加し、回転数1000〜2000rpmで調整しながら全てを添加した。所定量を添加し終えてから、回転数2000rpm前後で30分間撹拌し充分に分散させた。これにPVA水溶液を徐々に添加し、その後に変性ポリオレフィン樹脂水性エマルジョンを徐々に添加した。添加終了後、回転数1000rpm前後で15分間撹拌した。得られた塗液は30分間静置し消泡、脱泡を促した後、ポリエステルメッシュ布(目開き200メッシュ)にて濾過した後、水で塗料濃度を18%に調整し、塗液を得た。
水 33.0部
メタノール 13.1部
変性ポリオレフィン樹脂水性エマルジョン
(プロピレン−エチレン−ブテン共重合体の酸変性物、重量平均分子量:60,000
Tm:65℃、無水マレイン酸グラフト重量:5%、固形分30.1%) 24.4部
完全ケン化型PVA水溶液(クラレ社製、PVA117)10%水溶液
20.6部
無定形シリカ(DSLジャパン社製、カープレックス#67、平均粒子径6.4μm)
8.57部
分散剤(東亜合成社製、アロンT−50、固形分40%) 0.063部
水(濃度調整) 適量
【0042】
[実施例1]
上記作製した円柱状のコンクリート構造物を上記調整した塗料組成物中に底面から5〜6cm程度を浸漬させた。その後、ゆっくりと引き上げ、60秒間静置した後に、温風(40〜50℃程度)により塗料組成物を乾燥させた。
次にこの構造物の上底部をハンマーで叩いて衝撃を与え、構造物にひび割れを発生させた(図1)。これを経年時で発生したコンクリートのひび割れと想定して、水の浸透による塗料の変化を観察した。水の浸透はひび割れを発生させた上底部のひび部分にスポイトにて水を約5ml浸み込ませた後、側面のひび割れ部の様子を観察した。塗料組成物を塗布していないコンクリート構造物は、ひび割れ部分からの水の染み出しを判別することが困難であるが、塗料組成物を塗布した上記コンクリート構造物は、ひび割れからの水の染み出しにより、塗料組成物が透明化するため、ひび割れ部分からの水の染み出しを容易に判別できる(図2)。
図1
図2