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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-197713(P2017-197713A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】ポリマーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/025 20160101AFI20171006BHJP
【FI】
   C08G75/025
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-2113(P2017-2113)
(22)【出願日】2017年1月10日
(31)【優先権主張番号】62/277,091
(32)【優先日】2016年1月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】105142423
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ポ−シェン
(72)【発明者】
【氏名】リン、チー−シャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、メン−シン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チェン−シン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、シン−チン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イー−ハー
【テーマコード(参考)】
4J030
【Fターム(参考)】
4J030BA04
4J030BA49
4J030BB45
4J030BD01
4J030BF06
4J030BF15
4J030BG02
4J030BG04
4J030BG27
4J030BG31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハロゲン副生成物の残留を回避することのできるスルホニウム塩ポリマーまたはポリアリーレンスルフィドの製造方法の提供。
【解決手段】式(I)で示される構造を有する少なくとも1つのモノマーを、スルホン酸、ジフェニルアミン及び酸素含有リン化物の存在下で反応させて、スルホニウム塩ポリマーを得る工程を含むポリマーの製造方法。

(Xは0〜2の整数;RはC1−6アルキル基;Rは夫々独立にH又はC1−6アルキル基)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される構造を有する少なくとも1つのモノマーを、スルホン酸、ジフェニルアミン、および酸素含有リン化物(oxygen-containing phosphide)の存在下で反応させて、スルホニウム塩ポリマー(sulfonium salt polymer)を得る工程を含むポリマーの製造方法。
【化1】

(式中、Xは0、1、または2であり;RはC1−6アルキル基であり;Rはそれぞれ独立に、水素、またはC1−6アルキル基である。)
【請求項2】
前記酸素含有リン化物が、無水リン酸、ポリリン酸、またはこれらの組み合わせである請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記スルホン酸が、式(II)で示される構造を有する化合物である請求項1または請求項2に記載のポリマーの製造方法。
【化2】

(式中、Rは水素、C1−6アルキル基、またはC1−6フルオロアルキル基である。)
【請求項4】
前記スルホン酸が、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロピルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、またはこれらの組み合わせである請求項1または請求項2に記載のポリマーの製造方法。
【請求項5】
式(I)で示される構造を有する前記モノマーが、
【化3】

【化4】

【化5】

である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項6】
式(I)で示される構造を有する前記少なくとも1つのモノマーが、
【化6】

【化7】

のいずれかである、請求項1〜4に記載のポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記スルホニウム塩ポリマーが、式(III)で示される構造を有する少なくとも1つの繰り返し単位を有する請求項5に記載のポリマーの製造方法。
【化8】

(式中、Xは0、1、または2であり;RはC1−6アルキル基であり;Rはそれぞれ独立に、水素、またはC1−6アルキル基であり;Rは水素、C1−6アルキル基、またはC1−6フルオロアルキル基である。)
【請求項8】
式(III)で示される構造を有する前記繰り返し単位が、
【化9】

【化10】

【化11】

である請求項7に記載のポリマーの製造方法。
【請求項9】
がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、またはヘキシルである請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項10】
が水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、またはヘキシルである、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項11】
求核試薬を前記スルホニウム塩ポリマーと反応させることで、ポリアリーレンスルフィドを得る工程をさらに含む請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項12】
前記求核試薬が、ピリジン、4−メチルピリジン、トリエチルアミン、塩化カリウム、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、またはこれらの組み合わせである請求項11に記載のポリマーの製造方法。
【請求項13】
前記ポリアリーレンスルフィドが、式(IV)で示される構造を有する少なくとも1つの繰り返し単位を有する請求項11に記載のポリマーの製造方法。
【化12】

(式中、Xは0、1、または2であり;Rはそれぞれ独立に、水素、またはC1−6アルキル基である。)
【請求項14】
式(IV)で示される構造を有する前記繰り返し単位が、
【化13】

【化14】

【化15】

である請求項13に記載のポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はポリマーの製造方法に関し、特にスルホニウム塩ポリマーまたはポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンスルフィドは、耐熱性、耐化学性、耐火性、および電気絶縁性といった優れた物理特性を備えるため、コンピュータ用アクセサリ、自動車用アクセサリに、耐化学性を備える工業用繊維として、および腐食性化学物質と接触する部品の塗料として広く利用されている。
【0003】
しかしながら、従来のポリアリーレンスルフィドの製造方法はハロゲン含有処理が主であり、ポリアリーレンスルフィド樹脂の収率が低いことに加え、環境汚染を引き起こす可能性のある再利用不可能なハロゲン含有副産物を生ずるものである。また、従来のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、精製が容易でなく、ハロゲン副産物がポリアリーレンスルフィド樹脂中に残留してしまう。
【0004】
よって、業界では、ポリアリーレンスルフィドを製造する新たな方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的の1つは、ハロゲン副生成物の残留を回避することのできるスルホニウム塩ポリマーまたはポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によれば、本開示は、式(I)で示される構造を有する少なくとも1つのモノマーを、スルホン酸、ジフェニルアミン、および酸素含有リン化物(oxygen-containing phosphide)存在下で反応させて、スルホニウム塩ポリマー(sulfonium salt polymer)得る工程を含むポリマーの製造方法を提供する。
【0007】
【化1】
【0008】
式中、Xは0、1、または2であり;RはC1−6アルキル基であり;Rはそれぞれ独立に、水素、またはC1−6アルキル基である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態は、モノマーがスルホニウム塩ポリマーに転化する転化率を高めることができ、かつ使用するモノマーを容易に得ることができるポリマーの製造方法を提供する。また、酸素含有リン化物(oxygen-containing phosphide)の存在下で重合反応を進行させることにより、式(I)で示される構造を有するモノマーが、スルホニウム塩ポリマー(またはポリアリーレンスルフィド)に転化する転化率を大幅に高めることができる。また、スルホニウム塩ポリマーを得た後、さらに求核試薬(nucleophile)を、得られたスルホニウム塩ポリマーと反応させることで、ハロゲンの残留がない耐高温ポリアリーレンスルフィド(polyarylene sulfide)(融解温度(Tm)が280℃以上であり得る)を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリアリーレンスルフィドを、モノマー(I)(その化学構造は
【0011】
【化2】
【0012】
であり得る)を酸性環境下で重合して陽イオンポリマーとし、さらに脱メチル化を行うことにより製造する場合、反応式(I)を参照されたいが、この場合、得られる陽イオンポリマー(モノマー(I)を重合してなる)の転化率は高くない。
【0013】
【化3】
【0014】
また、反応式(II)を参照してモノマー(I)を製造する場合、まずはメチルフェニルスルホキシド(methyl phenyl sulfoxide)とメチルフェニルスルフィド(methyl phenyl sulfide)を酸性環境下で合成し、陽イオン中間体を得た後、さらに脱メチル化および酸化反応を進行させなければならない。しかしながら、反応式(II)の製造プロセスが比較的複雑であるため、ポリアリーレンスルフィドの収率が低下してしまう。
【0015】
【化4】
【0016】
上述に基づき、本開示の実施形態は、モノマーがスルホニウム塩ポリマーに転化する転化率を高めることができるとともに、使用するモノマーも容易に得ることのできる、ポリマーの製造方法を提供する。本開示の実施形態によれば、該方法は、式(I)で示される構造を有する少なくとも1つのモノマーを、スルホン酸、ジフェニルアミン(diphenyl amine)、および酸素含有リン化物(oxygen-containing phosphide)の存在下で重合反応させて、スルホニウム塩ポリマー(sulfonium salt polymer)を得る工程を含む。
【0017】
【化5】
【0018】
式中、Xは0、1、または2であってよく;RはC1−6アルキル基であってよく;Rそれぞれ独立に、水素、またはC1−6アルキル基であってよい。本開示の実施形態によれば、式(I)で示される構造を有する前記モノマーのスルホキシド(S=O)官能基は、酸性環境下でプロトン化されて、反応性を有する水酸化スルホニウム(sulfonium hydroxide)官能基になることができ、さらに、ジフェニルアミンが、電荷安定試薬として働き、電子を提供して、水酸化スルホニウムと錯体(complex)構造を形成することにより、芳香環のπ電子の反応性が高まり、重合反応が進行することとなる。また、酸素含有リン化物(oxygen-containing phosphide)の存在下で重合反応を進行させることで、式(I)で示される構造を有するモノマーが、スルホニウム塩ポリマー(またはポリアリーレンスルフィド)に転化する転化率を大幅に高めることができる。また、スルホニウム塩ポリマーを得た後、さらに、求核試薬(nucleophile)を、得られたスルホニウム塩ポリマーと反応させることで、ハロゲンの残留が無い耐高温ポリアリーレンスルフィド(polyarylene sulfide)(融解温度(Tm)が280℃以上であり得る)を得ることができる。本開示の実施形態によれば、上記モノマーがスルホニウム塩ポリマー(またはポリアリーレンスルフィド)に転化する転化率の計算方式は下記方程式のとおりである。
【0019】
【数1】
【0020】
本開示の実施形態によれば、上記アルキル基は直鎖(linear)または分岐鎖(branched)アルキル基であってよい。よって、Rはメチル(methyl)、エチル(ethyl)、プロピル(propyl)、イソプロピル(isopropyl)、n−ブチル(n-butyl)、t−ブチル(t-butyl)、sec−ブチル(sec-butyl)、イソブチル(isobutyl)、ペンチル(pentyl)、またはヘキシル(hexyl)であってよい。また、Rはそれぞれ独立に、水素、フッ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、またはヘキシルであってよい。
【0021】
本開示の実施形態によれば、上記スルホン酸は、式(II)で示される構造を有する化合物であってよい。
【0022】
【化6】
【0023】
式中、Rは水素、C1−6アルキル基、またはC1−6フルオロアルキル基であってよい。ここで、上記フルオロアルキル基は、炭素上の水素の全部または一部がフッ素で置換されたアルキル基のことを指し、かつ直鎖(linear)または分岐鎖(branched)であってよい。例えば、フルオロメチルは、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、またはパーフルオロメチルであってよい。本開示の実施形態によれば、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、フルオロメチル、フルオロエチル、またはフルオロプロピルであってよい。本開示のいくつかの実施形態によれば、上記スルホン酸はメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロピルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、またはその組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、上記スルホン酸と上記モノマーとのモル比は、約1から200であってよく、例えば約1から100であってよい。ここで、上記スルホン酸は、酸性環境を提供して上記モノマーの重合反応の進行を促進することができ、また過剰量のスルホン酸は反応溶媒としても働き得る。
【0024】
本開示の実施形態によれば、本開示に係るポリマーの製造方法における上記酸素含有リン化物の添加は、式(I)で示される構造を有するモノマーがスルホニウム塩ポリマーに転化する転化率を大幅に高めることができる。上記酸素含有リン化物は、酸素およびリンからなる化合物、例えば無水リン酸(P)であってよい。また、上記酸素含有リン化物は、酸素、水素およびリンからなる化合物、例えばポリリン酸(H(n+2)(3n+1)、ただしnは1より大きい)であってよい。本開示の実施形態によれば、上記酸素含有リン化物と上記モノマーとのモル比は約0.5から2であってよく、例えば約0.5から1.5であってよい。
【0025】
本開示の実施形態によれば、上記ジフェニルアミンと上記モノマーとのモル比は約0.5から2であってよく、例えば約0.5から1.5であってよい。上記ジフェニルアミンおよび酸素含有リン化物は、式(I)で示される構造を有する上記モノマーの重合反応の進行を促進させるが、上記ジフェニルアミンおよび酸素含有リン化物は反応物質ではない。
【0026】
本開示の実施形態によれば、本開示に係るポリマーの製造方法は、式(I)で示される構造を有する1つのモノマーを、スルホン酸、ジフェニルアミン、および酸素含有リン化物の存在下で重合反応させることができ、式(I)で示される構造を有する上記モノマーは、例えば、
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
であってよい。また、本開示の実施形態によれば、本開示に係るポリマーの製造方法は、式(I)で示される構造を有する2種の異なるモノマーを、スルホン酸、ジフェニルアミン、および酸素含有リン化物の存在下で重合反応させることができ、式(I)で示される構造を有する上記2種の異なるモノマーのうちの1つは、
【0031】
【化10】
【0032】
であってよい。さらに、本開示の実施形態によれば、本開示に係るポリマーの製造方法は、(I)で示される構造を有する2種の異なるモノマーを、スルホン酸、ジフェニルアミン、および酸素含有リン化物の存在下で重合反応させることができ、式(I)で示される構造を有する上記2種の異なるモノマーはそれぞれ、
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】

であってよい。
【0035】
本開示の実施形態によれば、本開示に係るポリマーの製造方法で得られたスルホニウム塩ポリマーは、式(III)で示される構造を有する少なくとも1つの繰り返し単位を有し得る。
【0036】
【化13】
【0037】
式中、Xは0、1、または2であってよく;RはC1−6アルキル基であってよく;Rはそれぞれ独立に、水素、またはC1−6アルキル基であってよく;Rは水素、C1−6アルキル基、またはC1−6フルオロアルキル基であってよい。本開示のいくつかの実施形態によれば、式(III)で示される構造を有する上記繰り返し単位は、
【0038】
【化14】
【0039】
【化15】
【0040】
【化16】
【0041】
であってよい。
【0042】
本開示の実施形態によれば、上記ポリマーの製造方法は、上記スルホニウム塩ポリマーを得た後、求核試薬(nucleophile)を上記スルホニウム塩ポリマーと反応させることで、ポリアリーレンスルフィド(polyarylene sulfide)を得る工程をさらに含んでいてよい。このうち、上記求核試薬(nucleophile)は、例えば、置換または非置換基を有するピリジンもしくはその誘導体(例えばピリジン、4−メチルピリジン)、アミン(例えばトリエチルアミン)、ハロゲン化塩(例えば塩化カリウム)、アルコール(例えばメタノール、エタノール)、またはアミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)であってよく、かつ上記求核試薬と式(I)で示される構造を有するモノマー(上記スルホニウム塩ポリマーを合成するのに用いる)とのモル比は、約1から100であってよく、また、過剰量の求核試薬を溶媒として添加してもよい。上記ポリアリーレンスルフィドは、式(IV)で示される構造を有する少なくとも1つの繰り返し単位を有し得る。
【0043】
【化17】
【0044】
式中、Xは0、1、または2であってよく;Rはそれぞれ独立に、水素、またはC1−6アルキル基であってよい。式(IV)で示される構造を有する上記繰り返し単位は例えば、
【0045】
【化18】
【0046】
【化19】
【0047】
【化20】
【0048】
であってよい。
【実施例】
【0049】
本開示の上述ならびにその他の目的、特徴、および長所がより明確にかつ理解しやすくなるよう、以下にいくつかの実施例および比較例を挙げて詳細に説明する。
【0050】
[実施例1]
メチルフェニルスルフィド(methyl phenyl sulfide)0.5g、五酸化二リン(phosphorus pentoxide、P)0.25gおよびジフェニルアミン(diphenyl amine)0.3gを反応容器中に加えた。次いで、0℃の氷浴下、トリフルオロメタンスルホン酸(trifluoromethanesulfonic acid)3mlをゆっくり反応容器中に加えた。室温で1時間反応させた後、反応容器をゆっくり室温まで戻した。20時間反応させた後、得られたものをエチルエーテル100ml中に注ぎ入れ、激しく撹拌してから、少量のアセトンで洗浄した。乾燥後、スルホニウム塩ポリマー(I)(白色の固体)を得た。
【0051】
次いで、得られたスルホニウム塩ポリマー(I)を4−メチルピリジン(4-methylpyridine)15ml中に溶解し、加熱還流(約100℃)した。6時間反応させた後、得られた生成物を塩酸水溶液30ml(濃度10%)中に注ぎ入れ、次いで、少量のアセトンで洗浄し、ポリアリーレンスルフィド(I)(白色の固体)を転化率約88%で得た。上記反応の反応式は次のとおりである:
【0052】
【化21】
【0053】
次いで、示差走査熱量計(DSC:differential scanning calorimetry)を用いて、得られたポリアリーレンスルフィド(I)を測定したところ、その融解温度(Tm)が281℃に達し、かつその再結晶温度(Tc)が210℃に達したことがわかった。次いで、赤外分光光度計(FT−IR)でポリアリーレンスルフィド(I)を測定した。その結果は次の通りであった:IR(cm−1):3065,1573,1471,1387,1092,1009,998,815,742。
【0054】
[実施例2]
フェニルボロン酸(phenylboronic acid)3g、4−ブロモチオアニソール(4-bromothioanisole)3.45g、Pd(PPh0.1g、および炭酸ナトリウム(NaCO)1.5gを反応容器中に加えた。次いで、窒素下でその反応容器にトルエン50ml、脱イオン水60ml、およびメタノール10mlをゆっくり加えた。次いで、100℃で24時間反応させた後、得られた溶液を酢酸エチルと水を用いて3回抽出し、有機層を回収して乾燥し、化合物(I)(1−メチルスルファニル−4−フェニルベンゼン(1-methylsulfanyl-4-phenylbenzene))を収率約99%で得た。上記反応の反応式は次のとおりである:
【0055】
【化22】
【0056】
核磁気共鳴分光により化合物(I)を分析して得られたスペクトルデータは次のとおりである:H NMR(500MHz,ppm,CDCl):2.55(−CH,s),7.33−7.37(phenyl,3H,m),7.43−7.45(phenyl,2H,m),7.54−7.6(phenyl,4H,m)。
【0057】
次いで、化合物(I)1gを反応容器中に入れ、氷酢酸10mlおよび過酸化水素(濃度30%)2mlをゆっくり加えた。室温で20分反応させた後、得られた溶液を濾過し、オレンジ色の固体を得た。そのオレンジ色の固体をジクロロメタンと水を用いて3回抽出し、有機層を回収した。次いで、有機層を脱水、濾過および濃縮した後、化合物(II)を得た。上記反応の反応式は以下に示すとおりである:
【0058】
【化23】
【0059】
核磁気共鳴分光により化合物(II)を分析して得られたスペクトルデータは次のとおりである:H NMR(500MHz,ppm,CDCl):2.80(−CH,s),7.42−7.51(biphenyl,3H,m),7.62−7.63(biphenyl,2H,m),7.73−7.78(biphenyl,4H,m)。
【0060】
次いで、化合物(II)0.5g、ジフェニルアミン0.39g、および五酸化二リン(phosphorus pentoxide、P)0.16gを反応容器中に加えた。次いで、0℃の氷浴下、トリフルオロメタンスルホン酸5mlをゆっくり加えた。氷浴下で1時間反応させた後、ゆっくりと室温まで戻した。次いで、20時間反応させた後、得られたものをエチルエーテル100ml中に注ぎ入れて激しく撹拌し、さらに少量のアセトンで洗浄した。乾燥後にスルホニウム塩ポリマー(II)を得た。次いで、得られたスルホニウム塩ポリマー(II)を4−メチルピリジン(4-methylpyridine)6ml中に溶解し、室温下で1時間撹拌してから、加熱還流(約120℃)した。20時間反応させた後、得られた生成物を塩酸水溶液30ml(濃度10%)中に注ぎ入れ、次いで少量のアセトンで洗浄し、表1に示されるようにポリアリーレンスルフィド(II)(白色の固体)を転化率約90%で得た。
【0061】
【化24】
【0062】
次いで、示差走査熱量計(DSC:differential scanning calorimetry)を用いて、得られたポリアリーレンスルフィド(II)を測定したところ、その融解温度(Tm)が404℃に達し、かつその再結晶温度(Tc)が369℃に達したことがわかった。次いで、赤外分光光度計(FT−IR)でポリアリーレンスルフィド(II)を測定した。その結果は次のとおりであった:IR(cm−1):3026,1590,1474,1391,1313,1152,1137,1090,1045,998,952,811,758,690。
【0063】
[比較例1]
化合物(II)0.5gおよびジフェニルアミン0.39gを反応容器中に加えた。次いで、0℃の氷浴下、トリフルオロメタンスルホン酸5mlをゆっくり加えた。氷浴下で1時間反応させた後、ゆっくり室温まで戻した。次いで、20時間反応させた後、得られたものをエチルエーテル100ml中に注ぎ入れ、激しく撹拌してから、少量のアセトンで洗浄した。乾燥後、スルホニウム塩ポリマー(II)を得た。次いで、得られたスルホニウム塩ポリマー(II)を4−メチルピリジン(4-methylpyridine)6ml中に溶解し、室温下で1時間撹拌してから、加熱還流(約120℃)した。20時間反応させた後、得られた生成物を塩酸水溶液30ml(濃度10%)中に注ぎ入れ、次いで少量のアセトンで洗浄し、表1に示されるようにポリアリーレンスルフィド(II)(白色の固体)を転化率約57%で得た。
【0064】
【表1】
【0065】
比較例1と比べて、実施例2では、化合物(II)を重合する際、トリフルオロメタンスルホン酸およびジフェニルアミンの他に、さらに五酸化二リンも加えている。表1に参照されるように、比較例1と比べて、実施例2に記載された方式でポリアリーレンスルフィド(II)を製造すると、得られる転化率が顕著に高まる。
【0066】
[実施例3]
メチルフェニルスルフィド0.19g、化合物(II)0.3g、五酸化二リン0.2g、およびジフェニルアミン0.23gを反応容器中に加えた。次いで、0℃の氷浴下、トリフルオロメタンスルホン酸3mlをゆっくり加えた。氷浴下で1時間反応させた後、ゆっくりと室温まで戻した。次いで、20時間反応させた後、得られたものをエチルエーテル100ml中に注ぎ入れて激しく撹拌してから、少量のアセトンで洗浄した。乾燥後にスルホニウム塩ポリマー(III)を得た。次いで、得られたスルホニウム塩ポリマー(III)を4−メチルピリジン(4-methylpyridine)15ml中に溶解し、室温下で1時間撹拌してから、加熱還流(約100℃)した。6時間反応させた後、得られた生成物を塩酸水溶液30ml(濃度10%)中に注ぎ入れ、次いで少量のアセトンで洗浄し、表2に示されるようにポリアリーレンスルフィド(III)(白色の固体)を転化率約35%で得た。上記反応の反応式は次のとおりである。
【0067】
【化25】
【0068】
(ただし、スルホニウム塩ポリマー(III)またはポリアリーレンスルフィド(III)の繰り返し単位はランダムに配列する。)
【0069】
次いで、示差走査熱量計(DSC:differential scanning calorimetry)を用いて、得られたポリアリーレンスルフィド(III)を測定したところ、そのガラス転移温度(Tg)が113℃に達したことがわかった。次いで、赤外分光光度計(FT−IR)でポリアリーレンスルフィド(III)を測定した。その結果は次の通りであった:IR(cm−1):3024,1584,1474,1389,1319,1178,1155,1090,1001,810,759,694。
【0070】
[比較例2]
五酸化二リンを添加しなかったこと以外は、実施例3に記載したとおりに進行させた。表2に示されるように、得られたポリアリーレンスルフィド(III)の転化率は約≦5%であった。
【0071】
【表2】
【0072】
比較例2と比べて、実施例3では、メチルフェニルスルフィドと化合物(II)との共重合を行う際、トリフルオロメタンスルホン酸およびジフェニルアミンの他に、さらに五酸化二リンも加えている。表2に参照されるように、比較例2と比べて、実施例3に記載された方式でポリアリーレンスルフィド(III)を製造すると、得られる転化率が顕著に高まる。
【0073】
いくつかの実施形態により本発明を上述のとおり開示したが、本発明はこれによって限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない範囲で、任意の変更および修正を加えることができる。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で定義されたものを基準に判断するものとする。
【外国語明細書】
2017197713000001.pdf