【課題】芯板における全開ストッパ側の位置決め孔を廃止して位置決め可能とすることにより、チェックリンクの耐久性を向上させうるようにしたドアチェックリンク装置を提供する。
【解決手段】芯板10に被覆材11を被覆した際の位置決めの痕跡として、全開ストッパ100に、芯板10の上面及び下面の一部を露出させ、芯板10を板厚方向から挟むように互いに対向する上下の縦開口105と、芯板10の幅方向の両側面の一部を露出させ、芯板10を幅方向から挟むように互いに対向する左右の横開口106とを設ける。
金属製の芯板の表面を合成樹脂製の被覆材をもって被覆してなるチェックリンクを備え、前記チェックリンクの長手方向の一端部に、前記被覆材により、ドアの全開位置を規制する全開ストッパを形成したドアチェックリンク装置において、
前記芯板に前記被覆材を被覆した際の位置決めの痕跡として、前記全開ストッパに、前記芯板の上面及び下面の一部を露出させ、前記芯板を板厚方向から挟むように互いに対向する上下の縦開口と、前記芯板の幅方向の両側面の一部を露出させ、前記芯板を幅方向から挟むように互いに対向する左右の横開口とを設けたことを特徴とするドアチェックリンク装置。
前記全開ストッパを、上下寸法が長手方向の先端面に向かって漸次小となる先細り形状とし、前記全開ストッパの上下の傾斜面に設けた肉抜き溝の奥面に、前記上下の縦開口を設けたことを特徴とする請求項1に記載のドアチェックリンク装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のドアチェックリンク装置のチェックリンクは、金属製の芯板と、その全表面をインサート成形(モールド成形)によって被覆している合成樹脂製の被覆材とにより構成されており、これをインサート成形する場合には、芯板を金型の成形室内の一定位置に位置決めする必要がある。この位置決めは、通常、成形室内に向けて突出させた位置決めピンを、芯板の長手方向の複数箇所に形成された位置決め孔に嵌合して行われるが、従来においては、特許文献1の
図3、
図5に示されているように、位置決め孔(符号はなし)の一つを、芯板における全開ストッパに近い端部において、上下に貫通させて設けられている。
【0005】
このように、上下に貫通する位置決め孔が、芯板における全開ストッパに近い端部に設けられていると、チェックリンクの耐久性を低下させるおそれがある。すなわち、全開ストッパに近いチェックリンクの端部には、ケースが全開ストッパに当接してドアを全開位置に停止させる際に、大きな引張力が作用する。そのため、全開ストッパに近い芯板の端部に、上下に貫通する位置決め孔が設けられていると、チェックリンクの端部の強度が低下して、チェックリンクの耐久性を低下させるおそれがあるからである。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、芯板における全開ストッパ側の位置決め孔を廃止し、それにも拘わらず位置決め可能とすることにより、チェックリンクの耐久性を向上させるようにしたドアチェックリンク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
第1の発明は、金属製の芯板の表面を合成樹脂製の被覆材をもって被覆してなるチェックリンクを備え、前記チェックリンクの長手方向の一端部に、前記被覆材により、ドアの全開位置を規制する全開ストッパを形成したドアチェックリンク装置において、前記芯板に前記被覆材を被覆した際の位置決めの痕跡として、前記全開ストッパに、前記芯板の上面及び下面の一部を露出させ、前記芯板を板厚方向から挟むように互いに対向する上下の縦開口と、前記芯板の幅方向の両側面の一部を露出させ、前記芯板を幅方向から挟むように互いに対向する左右の横開口とを設けたことを特徴としている。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記全開ストッパを、上下寸法が長手方向の先端面に向かって漸次小となる先細り形状とし、前記全開ストッパの上下の傾斜面に設けた肉抜き溝の奥面に、前記上下の縦開口を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドアチェックリンク装置によると、芯板に被覆材を被覆した際の位置決めの痕跡として、全開ストッパに、芯板の上面及び下面の一部を露出させ、芯板を板厚方向から挟むように互いに対向する上下の縦開口と、芯板の幅方向の両側面の一部を露出させ、芯板を幅方向から挟むように互いに対向する左右の横開口とを設けたことにより、芯板の板厚方向の上下両面と幅方向の両側面には、それぞれ縦開口に対応する上下位置決め部と、横開口に対応する左右位置決め部とが必然的に形成される。従って、従来、芯板における全開ストッパに近い部分の一端部に設けていた上下に貫通する位置決め孔は不要となり、位置決め孔を廃止したにも拘わらず芯板の一端部が位置決め可能となるので、芯板の強度が低下するおそれはなく、チェックリンクの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する方向は、自動車を基準とし、
図1の矢印で示すように、自動車の前後方向を前後方向、左右方向を車内外方向、上下方向を上下方向として説明するとともに、ドアチェックリンク装置自体の前後方向及び車内外方向は、
図3の2点鎖線で示すように、ドアが全閉状態にある場合を基準として言うものとする。
図1〜
図4に示すように、ドアチェックリンク装置1は、自動車のボディBの後面と、ボディBの車外側の側面に上下方向のヒンジ軸H1を有する上下1対のヒンジH、Hにより枢着されるドアDとの間に設けられ、ドアDの開閉動作にチェック力を付与して、ドアDを中間開閉位置や全開位置に保持したり、ドアDの全開位置を規制したりするものである。
【0012】
ドアチェックリンク装置1は、前端部(基端部)がボディBに固定されたブラケット2の上下の挟持片2a、2aに、上下方向を向くヒンジピン3により車内外方向へ揺動可能に枢着されるチェックリンク4と、ドアD内に固定される金属製のケース5及びその後側の開口を閉塞する金属製のケースカバー6と、ケース5内に収容され、ドアDの開閉動作に伴って、チェックリンク4の上下両面を摺動する上下1対の硬質合成樹脂製(例えばポリアセタール系樹脂)の上部シュー7及び下部シュー8と、上部シュー7及び下部シュー8に一方の端面が保持され、他方の端面がケース5の内面に圧接することにより、上部シュー7及び下部シュー8をチェックリンク4における後述する上下のディテント面41、41方向に向かって付勢する、弾性部材としての上下1対の圧縮コイルばね9、9とを備えている。ケース5の開口は、ケース5内に上部シュー7と下部シュー8と圧縮コイルばね9を組み込んだ後、ケースカバー6によって閉塞される。
なお、圧縮コイルばね9の代わりに、ゴム等の弾性部材を用いることも可能である。
【0013】
図4及び
図5に示すように、チェックリンク4は、帯板状をなす金属製の芯板10(
図14参照)と、その全表面がインサート成形により被覆された硬質合成樹脂製(例えばポリアミド系樹脂)の被覆材11とにより構成されている。被覆材11の後端部(先端部)には、ドアDの全開位置を規制する全開ストッパ100が一体的に形成されている。被覆材11における前端部と全開ストッパ100を除いた上下両面には、それぞれ波形状のディテント面41、41が、対向させて形成されている。
【0014】
全開ストッパ100は、上方及び下方に向かって突出する上下1対のストッパ部101、101を有し、両ストッパ部101の前面は、ケースカバー6が当接するストッパ面102となっている。全開ストッパ100は、上下寸法が両ストッパ部101の上下両端から後端面に向かって漸次先細り状となる縦断面形状をなしている。
【0015】
図2及び
図4に示すように、ケース5の側壁及びケースカバー6の中央部には、チェックリンク4における全開ストッパ100を除いた部分が移動可能に貫通する縦長長方形の貫通孔12、12が形成されている。ケースカバー6が固定されたケース5は、ドアD内にボルト13、13より固定され、ドアDの開動作に伴って、ケース5がドアDと共にチェックリンク4の後端部(先端部)側に移動すると、ケースカバー6の後面が全開ストッパ100のストッパ面102、102に当接することにより、ドアDの全開位置が規制されるようになっている(
図3、
図4参照)。なお、上下のストッパ面102は、前方に凸状に膨出する平面視円弧状の湾曲面としてある。このようにしてあるから、ストッパ面102がケースカバー6に当接したときに片当たりせず、線接触するようになるので、全開ストッパ100に偏荷重が加わるのが防止される。
【0016】
図4及び
図14に示すように、芯板10の長手方向の複数箇所には、インサート成形時に合成樹脂材が充填される貫通孔14が形成されており、全開ストッパ100が形成される部分の貫通孔14は、長手方向を向く開口面積の大きな非円形のものとされ、合成樹脂材の充填量を大として全開ストッパ100の剥離強度を高めうるようになっている。また、芯板10におけるヒンジピン3が挿入される部分の前端部には、合成樹脂材により被覆される貫通孔15がバーリング加工により形成され、さらに、この貫通孔15に近い後方には、芯板10の前端部を金型内に位置決めするための位置決め孔16が形成されている。
【0017】
図2、
図4及び
図5に示すように、上部シュー7と下部シュー8は、チェックリンク4を上下から挟んだ状態で点対称の位置に配置されるもので、同形状をなしている。上部シュー7は、チェックリンク4の上部のディテント面41を摺接する摺接部71と、摺接部71の車外方向の側部(
図5において左側部)より下方に突出し、被覆材11の車外方向の側面(
図5において左側面)に摺接する案内壁72とを備えている。
【0018】
下部シュー8は、チェックリンク4の下部のディテント面41を摺接する摺接部81と、摺接部81の車内方向の側部(
図5において右側部)より上方に突出し、被覆材11の車内方向の側面(
図5において右側面)に摺接する案内壁82とを備えている。上部シュー7及び下部シュー8の摺接部71、81におけるディテント面41との摺接面は、波形状をなすディテント面41を円滑に摺動しうるように、ほぼ凸円弧状に形成されている。また、上部シュー7及び下部シュー8の案内壁72、82における被覆材11の車外方向の側面及び車内方向の側面に摺接する面も、ほぼ凸円弧状に形成されている。案内壁72、82のそれぞれの下方及び上方への突出寸法は、チェックリンク4におけるディテント面41が形成されている部分の板厚(上下幅)を2分する寸法よりも若干小とされている(
図10参照)。
【0019】
図2、
図4、
図5及び
図9に示すように、上部シュー7の上面と下部シュー8の下面には、それぞれ上方及び下方に開口する有底かつドーナツ状の嵌合孔73、83が形成され、両嵌合孔73、83には、それぞれ上方の圧縮コイルばね9の下端部及び下方の圧縮コイルばね9の上端部が嵌合されている。嵌合孔73の中心部の上向ガイド軸74及び嵌合孔83の中心部の下向ガイド軸84の外周面には、それぞれ、嵌合孔73、83に嵌合された圧縮コイルばね9の内周面が接触する軸方向(上下方向)の4個の突条75、85が、円周方向に等間隔おきに突設されている。これにより、嵌合孔73、83に嵌合された圧縮コイルばね9の端部が安定よく保持され、径方向へのがたつきが防止されるので、ドアの開閉動作に伴い、上部シュー7及び下部シュー8は前後方向に円滑に移動することができる。
【0020】
なお、圧縮コイルばね9の上下の端末は、クローズエンドとして閉じられ、かつ上下の端面を研削加工して平坦面としてある。このようにすると、上部シュー7、下部シュー8及びケース5に対しての圧縮コイルばね9の端面の接触面積が大となり、かつ傾きも防止されるので、シュー7、8が前後方向に安定よく移動することができる。
【0021】
チェックリンク4における被覆材11の前部と全開ストッパ100を除いた部分の上下方向の厚さは、車内外方向の幅寸法よりも大(例えば約2倍)とされ、その部分の被覆材11の上下両面には、複数(実施例では3個)の凸部411と凹部412とを前後方向(長手方向)に交互に連続させた波形状(凹凸面形)のディテント面41、41が形成されている。チェックリンク4におけるディテント面41、41よりも前方の被覆材11には、上下1対の傾斜部413、413と、厚さが車内外方向の幅よりも小さな平坦部414、414とが、上下のディテント面41、41と等幅をなして連続するように形成されている。また、平坦部414と連続する前端部には、ブラケット2に枢支される、平坦部414よりも厚肉のボス部415が形成されている。なお、ディテント面41、41が形成されている部分の上下方向の厚さを大とすると、傾斜部413、413の傾斜角度を大きく設定(例えば、約15度)することが可能となり、ドアが全閉方向に移動する際、閉まり易くすることができる。
【0022】
被覆材11におけるディテント面41、41が形成されている部分の車内外方向の両面(板厚面)には、上下方向(板厚方向)に離間するとともに、前後方向(長手方向)に連続する上下複数(本実施例では2本)の肉抜き溝17、17が形成され、チェックリンク4の軽量化が図られている。被覆材11の車内外方向の両面における肉抜き溝17、17を挟んで対向する長手方向へ延びる上下3条の残存部分は、上部シュー7及び下部シュー8におけるそれぞれの案内壁72、82が摺接する長手方向を向くリブ状の被摺接部18、19、20となっている。すなわち、車外側の上部の被摺接部18には、上部シュー7の案内壁72の基部(上方の付け根部)が、車内側の下部の被摺接部20には、下部シュー8の案内壁82の基部(下方の付け根部)がそれぞれ摺接するようになっている。また、車内外方向の両面の中央の被摺接部19、19には、上部シュー7及び下部シュー8の案内壁72、82の端部(先端部)が摺接するようになっている。ディテント面41、41と直交して連続する上部の被摺接部18と下部の被摺接部20は、互いに厚さが等しく、中央の被摺接部19は、被摺接部18、20の厚さよりも厚い幅広形状としてある(
図5、
図10参照)。
【0023】
図10に示すように、上下の肉抜き溝17は、上下のディテント面41、41の波形状に合わせて、上下方向に波形状をなすように形成されている。これにより、中央の被摺接部19の上面及び下面も波形状となり、中央の被摺接部19は、拡幅部191と狭幅部192とが前後方向(長手方向)に交互に連続する幅広の外形形状となる。その結果、上側のディテント面41から被摺接部18の板厚方向の上面までの距離、及び下側のディテント面41から被摺接部18の板厚方向の下面までの距離がほぼ一定となる。
【0024】
従って、
図5、
図10及び
図11に示すように、上部シュー7及び下部シュー8におけるそれぞれの案内壁72、82の下方及び上方への突出寸法を、それらの端部が中央の被摺接部19にオーバーラップする(側面視において重なる)長さに設定すれば、上部シュー7及び下部シュー8の摺接部71、81がディテント面41のいずれの位置を摺動しても、中央の被摺接部19の車内外方向の両側面に対する案内壁72、82の端部の当接代は変わらず、中央の被摺接部19から外れることなく常にオーバーラップしながら摺動するようになる。その結果、案内壁72、82の上下寸法、及び中央の被摺接部19の上下方向の厚さを必要以上に大としなくてもよくなり、チェックリンク4のさらなる軽量化が図れる。
【0025】
また、上部シュー7及び下部シュー8の案内壁72、82は、上部の被摺接部18と中央の被摺接部19、及び中央の被摺接部19と下部の被摺接部20に、それぞれ上下2箇所で摺接するようになっているので、案内壁72、82は、チェックリンク4におけるディテント面41、41が形成されている部分の車内外方向の両側面にガイドされて安定よく摺動することができる。従って、案内壁72、82の上下寸法(基部から端部までの寸法)を過度に大としなくてもよく、上部シュー7及び下部シュー8の小型、軽量化が図れる。
【0026】
さらに、被覆材11におけるディテント面41、41が形成されている部分の厚さを車内外方向の幅よりも大としてあるので、その分、上部シュー7と下部シュー8の案内壁72、82の上下寸法を長くすることができ、かつ長くした案内壁72、82の上下方向に離間する2箇所が、被摺接部18、19、20に摺接してガイドされるので、ドアDの開閉動作に伴い、上部シュー7と下部シュー8は、チェックリンク4の上下の面に沿って安定よく移動することができる。
【0027】
図4に2点鎖線で示すように、ドアDが閉じられた場合、上部シュー7及び下部シュー8の摺接部71、81は、チェックリンク4の前端部寄りに位置し、その平坦部414、414を上下から挟んでいる。この状態でドアDが開動作されると、上下の摺接部71、81は、チェックリンク4の傾斜部413、413を乗り越えてディテント面41まで移動し、いずれかの凹部412、412に嵌入することにより、ドアDは、中間開閉位置に保持される。この中間開閉位置から全開位置までドアDが開動作されると、
図4に実線で示すように、ケースカバー6が全開ストッパ100のストッパ面102、102に当接して、ドアDの全開位置が規制されるとともに、摺接部71、81が、ディテント面41、41の最後端側の凹部412、412に嵌入することにより、ドアDは全開位置に保持される。なお、前述したように、チェックリンク4の傾斜部413、413の傾斜角度を大としたことにより、ドアDを閉動作する際に閉まり易くなる。
【0028】
図3及び
図13に示すように、全開ストッパ100の上下の傾斜面には、2条の肉抜き溝103、103が形成され、両肉抜き溝103、103の間に傾斜リブ104を形成することにより、ストッパ部101を含む全開ストッパ100全体が補強されている。両肉抜き溝103における後端部の奥面(底面)には、芯板10を板厚方向から挟んで互いに対向し、芯板10の厚さ方向の上面及び下面に向かって開口する上下の縦開口105、105が形成され、芯板10の上面及び下面が上下の縦開口105内に露出するようになっている。
【0029】
また、
図10及び
図12に示すように、全開ストッパ100の後端部の車内外方向の両側面には、芯板10の後端部を幅方向(車内外方向)から挟んで対向し、芯板10の幅方向の両側面に向かって開口する横開口106、106が形成され、芯板10の後端部の幅方向の両側面の一部が車内外側の横開口106、106内に露出するようになっている。横開口106、106は、ストッパ部101の車内外方向の両面に形成された上下方向の凹溝107、107にそれぞれ連続している。縦開口105、横開口106及び凹溝107は、図示しない金型内に芯板10を位置決めし、これに合成樹脂製の被覆材11をインサート成形した際に形成される痕跡である。
【0030】
図2、
図3及び
図4に示すように、被覆材11の長手方向の中間部にも、芯板10の上下両面に向かって開口する上下1対の縦開口111、111が形成されている。この両縦開口111は、芯板10の中間部を上下1対の位置決めピンによって位置決めした際に形成される痕跡であるが、芯板10の長手方向の両端部を位置決めする場合は、中間部の縦開口111は省略することもある。
【0031】
図14は、芯板10を上下2分割及び側方スライド式金型(図示略)の成形室内に位置決めする際の一例を示すもので、全開ストッパ100が形成される芯板10の後端部の位置決めは、上下方向に進退可能な幅方向に離間する上下各2本ずつの上下位置決めピン21、21の先端を、芯板10の後端部(先端部)の上下両面に当接させるとともに、上下方向に進退可能な2本の車内外方向の位置決めピン22、22の下端部を、芯板10の後端部の幅方向の両側面に当接させる。これにより、芯板10の後端部は、上下及び車内外方向への移動が阻止されて位置決めされる。
【0032】
芯板10の前端部(基端部)の位置決めは、芯板10の前端部に設けられた位置決め孔16(
図4参照)に、先端部に拡径鍔部を有する上下方向に進退可能な上下1対の基部側位置決めピン23、23の先端を、上方及び下方から嵌合して行われる。これにより、芯板10全体は、上下方向、車内外方向及び前後方向への移動が阻止されるとともに、水平回動も規制されて、金型内に位置決めされる。
【0033】
なお、車内外方向の位置決めピン22を下方に配置して、下方から芯板10の後端部の車内外方向の両側面に当接させるようにしてよい。また、
図14に2点鎖線で示すように、上下方向に進退可能な車内外方向の位置決めピン22の代わりに、車内外方向に進退可能な2本の位置決めピン22、22を使用し、それらの先端を、芯板10の板厚面に直交状に当接させて位置決めすることも可能である。
【0034】
このように、芯板10の後端部を6本の位置決めピン21、22により位置決めした状態で、合成樹脂によりインサート成形すると、被覆材11における全開ストッパ100の後端部には、上述したように、芯板10の上面及び下面に向かって開口する縦開口105、105、芯板10の車内外方向の板厚面に向かって開口する横開口106、106、及び横開口106に連続する上下方向の凹溝107、107が、位置決めの痕跡として形成されることとなる。
【0035】
図6〜
図8に示すように、ボス部415におけるヒンジピン3が嵌合される軸孔24の内周面には、中央部の環状突条25と、軸方向の複数(6本)の縦突条26とが、環状突条25の内径と各縦突条26の内接円とが等しくなるように形成されている。環状突条25の内径及び各縦突条26の内接円の直径は、ヒンジピン3の外径よりも僅かに小とされている。これにより、ボス部415の軸孔24にヒンジピン3を圧入して下端部をかしめ、チェックリンク4をブラケット2の上下の挟持片2a、2aにより支持すると、
図8に示すように、ヒンジピン3の外周面は、環状突条25と複数の縦突条26の内面に接触し、軸孔24とヒンジピン3との間には若干の隙間が形成される。従って、チェックリンク4の揺動抵抗が小さくなるとともに、軸孔24とヒンジピン3との間のがたが防止され、ドアDを円滑に開閉することができる。
【0036】
軸孔24の周囲のボス部415の上下両面には、半球状の複数(6個)の突起27が等間隔おきに突設され、上下の各突起27は、
図8に示すように、ブラケット2の上下の挟持片2a、2aに点接触するようになっている。このようにすると、ボス部415とブラケット2間のがたが抑制されるので、ドア開閉時の異音等の発生を防止することができる。
【0037】
以上説明したように、上記実施形態のドアチェックリンク装置1においては、芯板10に被覆材11をインサート成形した際の位置決めの痕跡として、全開ストッパ100に、芯板10の上面及び下面の一部を露出させ、芯板10を板厚方向から挟んで互いに対向する上下の4個の縦開口105と、芯板10の幅方向の両側面の一部を露出させ、芯板10を幅方向から挟んで互いに対向する2個の横開口106とを設けたことにより、芯板10の一端部の板厚方向の上下両面と幅方向の両側面には、それぞれ縦開口105に対応する4箇所の上下位置決め部108(
図3、
図13参照)と、2個の横開口106に対応する2箇所の車内外方向位置決め部109(
図10、
図12参照)とが必然的に形成される。
【0038】
従って、従来、芯板10における全開ストッパ100に近い部分の一端部に設けていた上下に貫通する位置決め孔は不要となり、位置決め孔を廃止して芯板10の一端部が位置決め可能となるので、芯板10の強度(特に引張強度)が低下するおそれはなく、チェックリンク4の耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、縦開口105及び横開口106は、それぞれ全開ストッパ100の後端部(先端部)、すなわちケース5に当接するストッパ面102から離れた後端部に設けられているので、縦開口105及び横開口106の形成部に引張荷重が作用することはなく、従って全開ストッパ100の強度を低下させるおそれはない。
【0040】
さらに、先細り形状に形成した全開ストッパ100の上下の傾斜面に肉抜き溝103、103を設け、両肉抜き溝103の奥面に縦開口105を形成してあるので、縦開口105の深さを浅くすることができ、インサート成形後のチェックリンク4を金型より脱型する際に、位置決めピン21が抜きやすくなる。また、被覆材11における全開ストッパ100形成部の質量が小さくなるので、チェックリンク4を軽量化することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
上記実施形態では、全開ストッパ100の上下の傾斜面に形成した2条の肉抜き溝103の奥面に、2個ずつの縦開口105を設けたが、全開ストッパ100の傾斜面に肉抜き溝103や傾斜リブ104を設けない場合には、全開ストッパ100の後端部の中央部の上下両面に、芯板10を板厚方向から挟んで互いに対向し、芯板10の上下両面に向かって開口する上下2個の縦開口105を設けてもよい。