変位計1は、光ファイバ2と、光ファイバ2を保持する固定保持部3と、固定保持部3に対して移動自在、かつ、光ファイバ2を保持する移動保持部4と、固定保持部3と移動保持部4との間の該光ファイバ2の第3部分に設けられ、自らの屈曲状態に応じて前記検出用の光の態様を変化させるセンサ素子2hと、前記測定対象の変位の発生に伴って移動することにより、移動保持部4に力を加える可動部6と、ストッパ8とを備える。
請求項2記載の変位計において、前記第1バネ及び前記第2バネは、それぞれ、前記測定対象が所定の変位をした場合において前記移動保持部の移動量が前記光ファイバの破損を回避できる移動量以内となるようなバネ定数を有することを特徴とする変位計。
【背景技術】
【0002】
従来、コアとクラッドからなる光ファイバである本線体と、当該光ファイバ本線体のコアとコア径が異なるコアを有した前記光ファイバセンサ本線体よりも長さが短い光ファイバであるセンサ素子とを備えたセンサ用光ファイバが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の本線体とセンサ素子との間の界面における光のリークによるレーリ散乱光を測定することにより、本線体の歪み等を検出することが出来る。
【0004】
また、特許文献2には、このようなセンサ用光ファイバのOTDR(Optical Time−Domain Reflectometer)に接続された側の一部を保持する固定保持部と、当該固定保持部と所定の距離をおいて当該固定保持部に対して移動可能に配置され、センサ素子を中心として前記一部と線対称の位置にあるセンサ用光ファイバの他部を保持する移動保持部とを有するセンサ用光ファイバが提案されている。
【0005】
このセンサ用光ファイバは、移動保持部が固定保持部に接近するなど、移動保持部がセンサ用光ファイバを保持する点と固定保持部が前記センサ用光ファイバを保持する点とを結ぶ方向と同一の方向に応力が印加されたとき、その応力に応じてセンサ素子を中心としてセンサ用光ファイバを屈曲させ、当該応力が解除されたとき、屈曲状態から復帰させる機構を有する。
【0006】
このセンサ用光ファイバにおいては、移動保持部に連結された測定対象に歪みが生じると、センサ素子が屈曲し、センサ用光ファイバに光伝送の損失が生じる。換言すれば、センサ用光ファイバに接続されたOTDRでこの光伝送の損失を検出することにより、移動保持部に連結された測定対象の歪みを検出することが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、メンテナンス時の作業負荷の軽減のため、橋梁、トンネル及び大型建造物等の社会的インフラの歪みの自動検出に対する関心が高まっているところ、このような社会的インフラでは、地震等により瞬間的に大きな歪みが測定対象に生じる可能性がある。
【0009】
しかしながら、特許文献2の技術では、測定対象の変位による移動保持部の変位が大きい場合、センサ素子が大きく屈曲してしまい、センサ素子が破損するおそれがある。
【0010】
このような問題に鑑み、本発明は、測定対象の変位が大きい場合であっても各構成要素の破損を回避しながら、測定対象の変位を検出できる変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の変位計は、
検出用の光を入光する入光部及び前記検出用の光を受光する受光部に接続可能に構成された光ファイバと、
位置が固定され、かつ、該光ファイバの第1部分を保持する固定保持部と、
前記固定保持部に対して移動自在であって該光ファイバの第2部分を保持する移動保持部と、
前記固定保持部と前記移動保持部との間の該光ファイバの第3部分に設けられ、自らの屈曲状態に応じて前記検出用の光の態様を変化させるセンサ素子と、
測定対象と連結可能であって前記測定対象の変位の発生に伴って移動することにより、前記移動保持部に力を加える可動部と、
前記移動保持部の移動方向である第1方向の前方で該移動保持部に対して当接可能な位置に設けられたストッパとを備え、
前記移動保持部は、前記移動保持部が前記ストッパに当接した後、前記固定保持部に対し停止するように構成され、
前記可動部は、前記移動保持部を前記可動部に対して移動自在に支持し、
前記移動保持部は、前記可動部に設けられた第1バネにより、前記第1方向に付勢されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の変位計によれば、測定対象の変位の発生に伴って可動部が移動すると、移動保持部が可動部に設けられた第1バネにより第1方向に付勢されているので、移動保持部も当該第1方向に移動する。
【0013】
移動保持部が移動すると当該移動保持部と固定保持部との間の光ファイバが屈曲するので、ひいては、前記移動保持部と前記固定保持部との間の光ファイバの第3部分に設けられたセンサ素子が屈曲する。センサ素子の屈曲状態に応じて、センサ素子が受光部により受光される検出用の光の態様を変化させる。
【0014】
換言すれば、受光部により受光される検出用の光の態様の変化が測定されることにより、光ファイバの屈曲、ひいては測定対象の変位が検出される。
【0015】
他方、測定対象の変位が比較的大きい場合には、可動部の移動量が過大となり、センサ素子の湾曲が過大となりうる。このような場合を回避するように、移動保持部がストッパに当接して移動保持部の移動が停止する。移動保持部の移動が停止すれば、当該移動保持部と固定保持部との間の光ファイバの屈曲の進行も停止する。これにより、設計者の意図を越えた該移動保持部と固定保持部との間の光ファイバの屈曲が回避されるので、過剰な屈曲に起因する光ファイバの破損が防止される。
【0016】
また、移動保持部が停止しても、第1バネが収縮することにより可動部の移動継続が可能となる。このため、測定対象が変位している状況で可動部が停止することにより、可動部に過剰な負荷がかかることが回避される。これにより、可動部の破損が回避される。
【0017】
以上の通り、本発明の変位計によれば、測定対象の変位が大きい場合であっても各構成要素の破損を回避しながら、測定対象の変位を検出できる。
【0018】
本発明の変位計において、
前記移動保持部を前記第1方向と逆方向である第2方向に付勢する第2バネを備えることが好ましい。
【0019】
当該構成の変位計によれば、移動保持部が第2バネにより前記第1方向と逆方向である第2方向に付勢される。このため、測定対象に歪みが生じ、可動部が移動した場合でも、第2バネの付勢により移動保持部の移動方向と逆方向に付勢されるので、第2バネを備えない変位計と比較して、同じ測定対象の変位に対して移動保持部の移動量が小さくなる。移動保持部の移動量が小さくなると、移動保持部と固定保持部との間の光ファイバの屈曲量も小さくなる。すなわち、当該構成の変位計によれば、同一の測定対象の変位に対して、第2バネを備えない変位計と比較して光ファイバの屈曲量を小さくできる。
【0020】
換言すれば、当該構成の変位計によれば、第2バネを備えない変位計と比較してより大きな測定対象の変位に対して同一の光ファイバの屈曲量となるようにすることができる。この結果、移動保持部と固定保持部との間の光ファイバが破損しない範囲で検出可能な測定対象の変位の範囲を広げることが出来る。
【0021】
以上の通り、当該構成の変位計によれば、光ファイバを破損することなく測定対象の変位を検出できる範囲を広げることが出来る。
【0022】
本発明の変位計において、前記第1バネ及び前記第2バネは、それぞれ、前記測定対象が所定の変位をした場合において前記移動保持部の移動量が前記光ファイバの破損を回避できる移動量以内となるようなバネ定数を有することが好ましい。
【0023】
当該構成の変位計によれば、第1バネ及び第2バネから働く力により移動保持部の移動量が制御され、測定対象が所定の変位をした場合でも、移動保持部の移動量が光ファイバの破損を回避できる移動量以内となる。これにより、光ファイバの破損が回避されうる。
【0024】
本発明の変位計において、
前記受光部で受光した検出用の光の態様から前記測定対象の変位量を推定し、
当該推定された前記測定対象の変位量を前記第2バネのバネ定数に基づいて補正する変位量推定部を備えることが好ましい。
【0025】
当該構成の変位計によれば、センサ素子の屈曲状態に応じて検出用の光の態様が変化するところ、変位量推定部により、検出用の光の態様から測定対象の変位量が推定される。また、第2バネによりセンサ素子の屈曲が緩和されているので、変位量推定部により第2バネのバネ定数に基づいて測定対象の変位量が補正されることにより、測定対象の変位量が精度よく求められる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1A〜
図4Dを参照して、本発明の一の実施形態を説明する。
【0028】
(変位計の構成)
変位計1は、
図1A、
図1B及び
図2A〜
図2Eに示されるように、蓋1aと、収容室1bとを備える。収容室1bが本発明の「配置盤」に相当する。
【0029】
蓋1aは、収容室1bのボルト孔1cに螺合するボルト1dによって固定されている。
【0030】
収容室1bには空間が設けられ、その空間には、
図1A、
図1B及び
図2A〜
図2Eに示されるように、光ファイバ2と、固定保持部3と、移動保持部4と、光ファイバ固定部5と、測定対象と連結され、測定対象の変位に伴って
図1Aの紙面左側に向かう方向である第1方向D1及び第1方向D1の逆方向である第2方向D2に移動可能な可動部6の一部と、初期位置ストッパ7と、過剰屈曲防止ストッパ8とが収容されている。
【0031】
光ファイバ2は、
図1A及び
図1Bに示すように、収容室1bの光ファイバ出入口10から収容室1bの壁に沿ってほぼ1周し、固定保持部3に第1部分が保持され、移動保持部4に第2部分が保持され、光ファイバ固定部5に第4部分が保持され、第4部分から収容室1bの壁に沿って1周し、収容室1bの光ファイバ出入口10に到達するように構成されている。
【0032】
光ファイバ2のこの配置により、光ファイバ2の形状が無理な曲率となることが回避されるので、光伝送損失を低下させることが出来る。また、光ファイバ2を収容室1bの壁に沿って配置しているので、収容室1b内部への光ファイバ2の設置を容易に行うことが出来る。
【0033】
移動保持部4と光ファイバ固定部5との間の光ファイバ2は、第2方向D2に屈曲したU字形状の屈曲部2aを形成する。
【0034】
光ファイバ出入口10から露出した光ファイバ2iは、OTDR9に接続されている。
【0035】
光ファイバ2は、
図3A〜
図3Cに示すように、各箇所においてその構成が異なっている。
【0036】
光ファイバ2は、
図3Aに示すように、光ファイバ出入口10と固定保持部3との間及び移動保持部4と光ファイバ出入口10との間においては、コア2bとクラッド2cとを含む光伝搬部2dと、被覆部2eとを備える。
【0037】
コア2bは、クラッド2cよりも屈折率が高い素材で構成されており、コア2bの周りがクラッド2cで覆われている。光は、コア2bの屈折率とクラッド2c屈折率との相違による全反射によりコア2b内を伝搬する。
【0038】
コア2b及びクラッド2cのそれぞれは、石英ガラスで形成されている。これに代えて、コア2b及びクラッド2cのそれぞれがプラスチック等の屈折率が高い素材で形成されていてもよい。
【0039】
被覆部2eは、光伝搬部2dを外圧から保護するため、光伝搬部2dを被覆している。被覆部2eは、例えばプラスチックで形成される。
【0040】
光ファイバ2は、
図3Bに示すように、固定保持部3と移動保持部4との間においては、コア2bとクラッド2cとを含む光伝搬部2dが露出している。
【0041】
また、光ファイバ2は、固定保持部3と移動保持部4との間の中心部分である光ファイバ2の第3部分においては、
図3Cに示すように、コア2bに接続され、かつ、コア2bと径が異なるコア2fと、コア2fを覆うクラッド2gとを備えるセンサ素子2hを形成する。センサ素子2hとしては、例えば、特許文献1に開示されているセンサ素子を採用しうる。
【0042】
固定保持部3は、
図2B〜
図2E及び
図4Aに示すように、固定保持台3aと、固定蓋部3bとを備える。
【0043】
固定保持台3aは、直方体状に形成され、
図4A〜
図4Cに示すように、第1方向D1に対して前記センサ素子2h側が前記センサ素子2hの屈曲方向D3側に所定の角度θだけ傾けられ、かつ、光ファイバ2が通る程度の第1ガイド溝3cを備える。
【0044】
固定蓋部3bは、平板上に形成されている。
【0045】
光ファイバ2を第1ガイド溝3cに通した状態で、収容室1bの盛り上がった部分1gに設けられたボルト孔(不図示)、固定保持台3aに設けられたボルト孔3d、3eにそれぞれ螺合するボルト1e、1fによって、固定保持台3aと固定蓋部3bとが収容室1bの盛り上がった部分1gに対して固定されている。
【0046】
移動保持部4は、
図2B〜
図2E及び
図4Dに示すように、移動保持台4aと、移動保持板4bと、移動支持台4cとを備える。移動保持台4aは、直方体状に形成され、
図4B〜
図4Dに示すように、第1方向D1に対してセンサ素子2h側がセンサ素子2hの屈曲方向D3側に所定の角度θだけ傾けられ、かつ、光ファイバ2が通る程度の第2ガイド溝4dを備える。移動保持部4は、初期状態(可動部6に連結された測定対象が変位していない状態)で初期位置P1に位置する。
【0047】
光ファイバ2を第2ガイド溝4dに通した状態で、移動保持台4a及び移動支持台4cに設けられたボルト孔4e、4fに螺合するボルト4h、4jによって、移動保持台4aと移動保持板4bとが移動支持台4cに対して固定されている。
【0048】
図4Cに示すように、光伝搬部2dは、ガイド溝3c、4dのセンサ素子2h側から所定距離hだけ露出するように構成されている。ここで、所定距離hは、可動部6の変位に伴い、光ファイバ2が屈曲しても、光伝搬部2dが固定保持部3又は移動保持部4に接触しないような距離である。
【0049】
また、
図1A、
図1B及び
図2Aに示すように、移動保持部4は、収容室1bに固定された姿勢支持板4iにより、移動時の姿勢が収容室1bに対して一定になるように調整される。
【0050】
図1A及び
図1Bに示すように、光ファイバ固定部5は、例えば収容室1bに固定されるネジで構成される。光ファイバ固定部5は、収容室1bの壁及び床と自身とによって光ファイバ2の第4部分を挟むことより、光ファイバ2の第4部分の大きな変位を防止する。
【0051】
可動部6は、例えば金属のロッドにより構成され、
図1A、
図1B及び
図2A〜
図2Eに示されるように、一端部が収容室1bから露出し、他端部が収容室1bに収容されている。可動部6は、収容室1bから露出した一端部に連結された測定対象の歪みの発生に伴って、第1方向D1に移動し、測定対象の歪みの解消に伴って、第2方向D2に移動するように構成されている。可動部6は、初期状態(可動部6に連結された測定対象が変位していない状態)で初期位置R1に位置する。
【0052】
測定対象は、例えば、橋梁、トンネルの壁又は大型建造部の壁である。
【0053】
可動部6は、
図2B〜
図2Eに示されるように、移動支持台4cに対して移動自在となるように、移動支持台4cに設けられた第1挿通孔4gに挿通される。また、可動部6は、収容室1bの盛り上がった部分1gに対して移動自在となるように、当該部分1gに設けられた第2挿通孔1hにも挿通されている。
【0054】
可動部6は、移動支持台4cの両側に、第1バネ6b及び第2バネ6cを備える。第1バネ6b及び第2バネ6cは、それぞれコイルバネが採用されうる。これに代えて、圧縮バネ、又は引張バネが採用されてもよい。
【0055】
第1バネ6bは、移動支持台4cからみて第2方向D2側に取り付けられている。第1バネ6bの一端部が可動部6の第2方向D2側に設けられた突起部6dに当接し、第1バネ6bの他端部が移動支持台4cに当接している。可動部6が第1方向D1に移動すると、突起部6dも第1方向D1に移動する。このとき、第1バネ6bの収縮により第1バネ6bの力が働き、移動支持台4cが第1方向D1へ付勢される。
【0056】
第2バネ6cは、移動支持台4cからみて第1方向D1側に取り付けられている。第2バネ6cの一端部は収容室1bの盛り上がった部分1gに当接し、第2バネ6cの他端部が移動支持台4cに当接している。可動部6が第1方向D1に移動すると、第1バネ6bの力により、移動支持台4cも第1方向D1に移動する。このとき、第2バネ6cの収縮により第2バネ6cの力が働き、移動支持台4cが第1方向D1と逆方向である第2方向D2へ付勢される。
【0057】
第2バネ6cの力が働くことにより、移動支持台4cの初期位置P1から第2位置P2までの変位量x1が、可動部6の初期位置R1から第2位置R2までの変位量x2よりも小さくなる。
【0058】
具体的には、第1バネ6bのバネ定数をn及び第2バネ6cのバネ定数をmとすると、移動支持台4cの変位量x1は、以下の式(1)で表される。
【0060】
なお、想定される測定対象の変位量の最大値と式(1)とから、光ファイバ2の破損が回避できる移動支持台4cの移動量を実現するのに適切な第1バネ6b及び第2バネ6cを選択してもよい。
【0061】
可動部6が第1方向D1に移動した場合、上記したような動きにより、
図2Cに示すように、移動保持部4が第1方向D1へ移動する。
【0062】
移動保持部4の移動に伴って、光ファイバ2が引っ張られ、光ファイバ2の屈曲部2aが収縮する。光ファイバ2の屈曲部2aが収縮することにより、移動保持部4の移動による光ファイバ2の引張りが吸収されるので、光ファイバ固定部5と光ファイバ出入口10との間の光ファイバ2の部分はほとんど動かない。これにより、光ファイバ2の破損が回避される。
【0063】
また、移動保持部4の移動に伴って、固定保持部3と移動保持部4との間の光ファイバ2が屈曲する。これにより、センサ素子2hも屈曲する。センサ素子2hが屈曲すると、光ファイバ2を伝送された光をセンサ素子2hの界面でリークさせることが出来るので、その屈曲状態に応じて伝送損失が生じる。これにより、OTDR9で受光される検出用の光(たとえばレーリ散乱光)の態様が変化する。
【0064】
また、可動部6にかかる第1方向D1の力が解消すると、第1バネ6b及び第2バネ6cにより、移動保持部4及び可動部6にそれぞれの初期位置P1、R1に復帰するための力(第2方向D2の力)が働き、移動保持部4及び可動部6が第2方向D2に移動してそれぞれの初期位置P1、R1に復帰する。
【0065】
突起部6dは、例えばEリングで構成され、可動部6の周方向に設けられた溝に嵌め込まれている。当該溝の第2方向D2に隣接して縮径部が設けられている。当該縮径部の径は、可動部6の大部分の径よりも小さく形成されている。この結果、移動保持部4が過剰屈曲防止ストッパ8に当接したのち、第1バネ6bから突起部6dに第2方向D2に大きな力が付加された場合、突起部6dが溝から外れ、縮径部の第2方向D2にスライドする。これにより、第1バネ6bに過剰な負荷がかかることが回避されうる。縮径部の第2方向D2にスライドした突起部6dは、可動部6が初期位置R1に復帰した際、収容室1bの壁に当接することにより、溝に嵌め込まれるようになるまで、可動部6に対して第1方向D1に移動する。
【0066】
初期位置ストッパ7は、収容室1bと一体に構成され、移動保持部4からみて、第2方向D2に設けられている。初期位置ストッパ7は、
図2Bに示すように、可動部6のそれぞれの初期位置P1、R1(測定対象が変位していない状態)で、移動保持部4に当接するような位置に配置されている。初期位置ストッパ7は、移動保持部4の初期位置を安定させるとともに、第2方向D2への移動保持部4の過剰な変位を防止する。
【0067】
過剰屈曲防止ストッパ8は、収容室1bと一体に構成され、移動保持部4からみて第1方向D1に配置されている。過剰屈曲防止ストッパ8は、
図2Dに示すように、移動保持部4が第1方向D1へ所定距離だけ移動したときに移動保持部4に当接可能なように設けられている。
【0068】
移動保持部4が過剰屈曲防止ストッパ8に当接すると、移動保持部4は移動を停止する。たとえば、
図2Eに示すように、可動部6が第3位置R3にあり、移動保持部4が第3位置P3で過剰屈曲防止ストッパ8に当接しているとき、さらに第1方向D1へ可動部6が変位量x3だけ移動して第4位置R4に位置した場合であっても、第1バネ6bが収縮することにより可動部6の移動分を吸収するので、移動保持部4は第3位置P3のままである。これにより、固定保持部3と移動保持部4との間のセンサ素子2hの屈曲量が設計者の意図を超える事態が回避される。
【0069】
OTDR9は、検査用の光を光ファイバ2に入射する入光部9aと、レーリ散乱光等の検査用の光を受光する受光部9bと、受光した検査用の光に基づいて、測定対象の推定変位量ex2を推定する変位量推定部9cとを備える。OTDR9に代えて、変位計1は、LED (light−emitting diode、発光ダイオード)等の発光素子である入光部と、PD(Photodiode、フォトダイオード)等の受光素子である受光部と、受光した検査用の光に基づいて、測定対象の推定変位量を推定する変位量推定部とを備えてもよい。
【0070】
変位量推定部9cは、受光部9bで受光されたレーリ散乱光等の検査用の光に基づいてセンサ素子2hの屈曲態様を推定し、当該屈曲態様から移動保持部4の推定移動量ex1を推定する。
【0071】
続いて、変位量推定部9cは、当該推定移動量ex1から、測定対象の推定変位量ex2を下記式(2)により推定する。式(2)は式(1)から導き出される式であり、nは第1バネ6bのバネ定数、mは第2バネ6cのバネ定数である。
【0073】
(作用効果)
変位計1によれば、測定対象の変位の発生に伴って可動部6が移動すると、移動保持部4が可動部6に設けられた第1バネ6bにより第1方向D1に付勢されているので、移動保持部4も当該第1方向D1に移動する。
【0074】
移動保持部4が移動すると当該移動保持部4と固定保持部3との間の光ファイバ2が屈曲するので、ひいては、移動保持部4と固定保持部3との間の光ファイバ2の第3部分に設けられたセンサ素子2hが屈曲する。センサ素子2hの屈曲状態に応じて、センサ素子2hが受光部9bにより受光される検出用の光の態様を変化させる。
【0075】
換言すれば、受光部9bにより受光される検出用の光の態様の変化が測定されることにより、光ファイバ2の屈曲、ひいては測定対象の変位が検出される。
【0076】
他方、測定対象の変位が比較的大きい場合には、可動部6の移動量が過大となり、センサ素子2hの湾曲が過大となりうる。このような場合を回避するように、移動保持部4が過剰屈曲防止ストッパ8に当接して移動保持部4の移動が停止する。移動保持部4の移動が停止すれば、移動保持部4と固定保持部3との間の光ファイバ2の屈曲の進行も停止する。これにより、設計者の意図を越えた移動保持部4と固定保持部3との間の光ファイバ2の屈曲が回避されるので、過剰な屈曲に起因する光ファイバ2の破損が防止される。
【0077】
また、移動保持部4が停止ししても、第1バネ6bが収縮することにより可動部6の移動継続が可能となる。このため、測定対象が変位している状況で可動部6が停止することにより、可動部6に過剰な負荷がかかることが回避される。これにより、可動部6の破損が回避される。
【0078】
以上の通り、変位計1によれば、測定対象の変位が大きい場合であっても各構成要素の破損を回避しながら、測定対象の変位を検出できる。
【0079】
また、当該構成の変位計1によれば、移動保持部4が第2バネ6cにより第1方向D1と逆方向である第2方向D2に付勢される。このため、測定対象に歪みが生じ、可動部6が移動した場合でも、第2バネ6cの付勢により移動保持部4の移動方向と逆方向に付勢されるので、第2バネ6cを備えない変位計と比較して、同じ測定対象の変位に対して移動保持部4の移動量が小さくなる。移動保持部4の移動量が小さくなると、移動保持部4と固定保持部3との間の光ファイバ2の屈曲量も小さくなる。すなわち、当該構成の変位計1によれば、同一の測定対象の変位に対して、第2バネ6cを備えない変位計と比較して光ファイバ2の屈曲量を小さくできる。
【0080】
換言すれば、当該構成の変位計1によれば、第2バネ6cを備えない変位計と比較してより大きな測定対象の変位に対して同一の光ファイバ2の屈曲量となるようにすることができる。この結果、移動保持部4と固定保持部3との間の光ファイバ2が破損しない範囲で検出可能な測定対象の変位の範囲を広げることが出来る。
【0081】
以上の通り、当該構成の変位計1によれば、光ファイバ2を破損することなく測定対象の変位を検出できる範囲を広げることが出来る。
【0082】
当該構成の変位計1によれば、第1バネ6b及び第2バネ6cから働く力により移動保持部4の移動量が制御され、測定対象が所定の変位をした場合でも、移動保持部4の移動量が光ファイバ2の破損を回避できる移動量以内となる。これにより、光ファイバ2の破損が回避されうる。
【0083】
また、当該構成の変位計1によれば、センサ素子2hの屈曲状態に応じて検出用の光の態様が変化するところ、変位量推定部9cにより、検出用の光の態様から測定対象の変位量が推定される。また、第2バネ6cによりセンサ素子2hの屈曲が緩和されているので、変位量推定部9cにより第2バネ6cのバネ定数mに基づいて測定対象の変位量が補正されることにより、測定対象の変位量が精度よく求められる。