(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-198654(P2017-198654A)
(43)【公開日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】車セットを保持するデバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 13/02 20060101AFI20171006BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-20094(P2017-20094)
(22)【出願日】2017年2月7日
(31)【優先権主張番号】16166877.7
(32)【優先日】2016年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アードリアン・カマー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大きなディスプレー面を有し、単純で、低コストで実装することができる車セットを回転可能に保持しガイドするデバイスを提供する。
【解決手段】計時器用ムーブメント100の車セット2を保持するデバイスであって、計時器用ムーブメント100のメインプレート101上の第1の位置と第2の位置の間を、ガイド手段を介して滑るようにマウントされるように意図されているレバー1を有し、レバー1は、第1の端において、車セット2を保持する手段と連係するように意図されているロック用くちばし部10を有し、これによって、レバー1は、第1の位置において、車セット2を回転可能に保持しガイドし、第2の位置において、車セット2を自由にし、レバー1は、退避位置である第1の位置と展開位置である第2の位置との間で、並進運動することができるように構成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメント(100)の車セット(2)を保持するデバイスであって、
前記計時器用ムーブメント(100)のメインプレート(101)上の第1の位置と第2の位置の間を、ガイド手段を介して滑るようにマウントされるように意図されているレバー(1)を有し、
前記レバー(1)は、第1の端において、前記車セット(2)を保持する手段と連係するように意図されているロック用くちばし部(10)を有し、
これによって、前記レバー(1)は、前記第1の位置において、前記車セットを回転可能に保持しガイドし、前記第2の位置において、前記車セットを自由にし、
前記レバー(1)は、退避位置である前記第1の位置と展開位置である前記第2の位置との間で、並進運動することができるように構成している
ことを特徴とする記載のデバイス。
【請求項2】
前記車セット(2)を保持する手段は、前記車セット(2)に取り付けられたリング(20)を有し、
前記リング(20)には、前記レバー(1)の前記ロック用くちばし部(10)と連係するように構成している溝(21)が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記溝(21)は、前記リング(20)の周にわたって連続的に延在している
ことを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ガイド手段には、少なくとも1つの開口(11)が形成されており、
この開口(11)の内部は、前記メインプレート(101)に固定されるように意図されており前記レバー(1)のガイドを確実にするように構成している第1のねじ(110)と係合している
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記ガイド手段は、少なくとも第2の開口(12)を有し、
この開口(11)の内部は、前記メインプレート(101)に固定されるように意図されており前記レバー(1)のロックを確実にするように構成している第2のねじ(120)と係合している
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記メインプレート(101)には、自由端を呼ぶ前記レバー(1)の他方の端を受けるように構成しているハウジング(102)が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記ハウジング(102)内に配置されており前記レバーの前記自由端(14)に作用して前記展開位置に前記レバー(1)を附勢する弾性戻し手段を有する
ことを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記レバーの前記自由端(14)には、前記レバー(1)を動かすための操作穴(140)がある
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のデバイス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のデバイスを有する
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測時技術の分野に関し、特に、腕時計の分野に関する。本発明は、さらに詳細には、計時器用ムーブメントの車セットを回転可能に保持しガイドするデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、車セットを保持するデバイスに関連する多数の文献がある。
【0003】
ねじをアーバーに押したり保持リングを用いたりすることによって、ムーブメントの車セットをねじによって取り付けることが知られている。例えば、月相ディスプレーディスクは、一般的には、ねじ又はアーバーによってそれらの中心にて、又はガイドリングによって、保持される。これは、車セットのディスプレー面を小さくしてしまう。
【0004】
したがって、ディスプレー面を大きくするためにはこのような保持手段をなくせばいいが、車セットを適切な位置に確実に保持することができなくなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの既知の技術の様々な課題を克服することを目的とする。
【0006】
より具体的には、本発明は、車セットを回転可能に保持しガイドするデバイスを提供して、より大きなディスプレー面を有し単純であり低コストで実装することができる車セットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これら及び他の目的は、下においてより明確になり、本発明によって、計時器用ムーブメントの車セットを保持するデバイスによって達成される。このデバイスは、前記計時器用ムーブメントのメインプレート上の第1の位置と第2の位置の間を、ガイド手段を介して滑るようにマウントされるように意図されているレバーを有する。
【0008】
本発明によると、前記レバーは、第1の端において、前記車セットを保持する手段と連係するように意図されているロック用くちばし部を有し、これによって、前記レバーは、第1の位置において、前記車セットを回転可能に保持しガイドし、第2の位置において、前記車セットを自由にし、前記レバーは、退避位置と展開位置との間で並進運動することができるように構成している。
【0009】
したがって、本発明の主題は、上記の異なる機能的な及び構造的な態様を有することによって、計時器用ムーブメントの車セットを保持する信頼性が高くコンパクトなデバイスを得ることが可能になる。
【0010】
本発明の他の好ましい変形実施形態によると、以下の特徴を有する。
− 車セットを保持する手段は、車セットに取り付けられるリングを有し、このリングには、レバーのくちばし部と連係することができる溝が形成されている。
− 溝は、リングの周にわたって連続的に延在している。
− ガイド手段には、少なくとも1つの開口が形成されており、この開口の内部は、メインプレートに固定されることを意図されておりレバーのガイドを確実にするように構成している第1のねじと係合している。
− ガイド手段には、第2の開口が形成されており、この第2の開口の内部は、メインプレートに固定されることを意図されておりレバーのロックを確実にするように構成している第2のねじと係合している。
− メインプレートには、自由端であるレバーの他方の端を受けるように構成しているハウジングが形成されている。
− 当該デバイスは、ハウジング内に配置されレバーの自由端に作用してレバーを展開位置に附勢するような弾性戻し手段を有することができる。
− レバーの自由端は、レバーを動かすための操作穴を有する。
【0011】
本発明は、さらに、本発明に係るデバイスを有する計時器に関する。
【0012】
添付図面を参照しながら説明に役立つ例としてのみ与えられる本発明の特定の実施形態についての以下の説明を読むことで、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるであろう。なお、これに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1a及び1bはそれぞれ、本発明に係る保持デバイスを有する計時器用ムーブメントの斜視図及び分解図である。
【
図2】展開位置にある本発明に係る保持デバイスを下方から見た斜視図である。
【
図3】
図3a及び3bはそれぞれ、展開位置にある本発明に係るデバイスの下面図及び断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1a〜3bを一緒に参照して、本発明に係る計時器用ムーブメントの車セットを保持するデバイスについて説明する。
【0015】
本実施形態によると、計時器用ムーブメントは、月相ディスプレー車セットを有する計時器であって、この計時器の裏蓋の内部に収容され当該車セットを駆動するデバイスを有するような計時器の設計のために意図されている。
【0016】
もちろん、本発明は、情報のディスプレー用の任意の種類の車セットに適用することができる。月相ディスプレー車セットの例は、説明に役立つ例として与えているものであって、これに制限されない。
【0017】
本発明は、計時器用ムーブメント100の車セット2を保持するデバイスに関し、この車セット2は、アーバー22によってメインプレート101にマウントされている。このデバイスは、レバー1を有し、これは、計時器用ムーブメントのメインプレート101上でガイド手段を介して第1の位置と第2の位置の間で摺動するようにマウントされるように意図されている。
【0018】
好ましいことに、レバー1は、第1の端において、ロック用くちばし部10を有する。これは、車セット2を保持する手段と連係して、第1の位置にて車セット2を回転可能に保持しガイドし、第2の位置にて車セット2を自由にする。レバー1は、展開位置である第1の位置と退避位置である第2の位置との間において、並進運動することができるように構成している。
【0019】
図2に示すように、レバー1は、薄い金属板の形態である。これは、例えば、スタンピングによって得られる。レバー1は、計時器用ムーブメント100のメインプレート101上にて摺動可能にマウントされる。
【0020】
図面に示すように、レバー1は、レバーの本体と呼ばれる平坦な第1の部分と、及びレバー1のくちばし部10と呼ばれる隆起した第2の部分とを有し、隆起した第2の部分は、レバーの本体によって形成される平面と平行な平面内にある。もちろん、隆起したくちばし部のないレバー、すなわち、全長にわたって平坦であるレバー、をも想到することができる。
【0021】
レバー1は、くちばし部10を有し、これは、車セット2を保持する手段と連係して、アーバー22のまわりで回転可能に車セット2を保持しガイドするように意図されている。この車セットを保持する手段は、車セット2と一体的なリング20の形態であることができる。好ましいことに、リング20には、レバー1のくちばし部10と連係することができる溝21が形成されている。溝21は、リング20の周にわたって連続的に延在しており、溝21とのくちばし部10の連係によって、車セットを軸方向に保持し回転可能にガイドすることが可能になる。したがって、レバー1によって軸方向に保持されるので、車セット2をそのアーバー22から取り外すことができない。
【0022】
本発明によると、ガイド手段には、レバー1において形成されている長穴状の少なくとも第1の貫通開口11が形成されている。この第1の貫通開口11の内部には、第1のねじ110が係合する。これは、メインプレート101にある穴に固定されることを意図されており、レバー1の並進運動のガイドを確実にするように構成している。第1のねじ110によっても、レバーを適所に保持することが可能になり、第1のねじ110は、部分的にねじ込まれ、ねじ頭は、開口よりも幅広となっており、これによって、レバー1がリリースされるようなあらゆるリスクもなくすように構成している。
【0023】
ガイド手段には、さらに、第1の開口11の上流にてレバー1に形成された長穴状の第2の貫通開口12が設けられている。この第2の貫通開口12の内部には、第2のねじ120が係合する。この第2のねじ120は、メインプレート101にある穴に固定されるように意図されており、レバー1のロックを確実にするように構成している。第2のねじ120によって、ねじ頭がレバー1を保持するのに十分なトルクでねじを締めることによって、その展開位置にレバー1が固定されることが可能になり、これによって、レバーが変位してしまうリスクをなくす。
【0024】
なお、開口11及び12の長さは、レバー1のトラベルの長さを定める。
【0025】
本発明によると、
図1に示すように、メインプレート101には、レバー1の自由端、すなわち、くちばし部10とは反対側の端、を受けるように構成しているハウジング102が形成されている。
【0026】
好ましいことに、ハウジング102内のハウジング102の端に、レバー1の自由端と接するように、ばねのような弾性戻し手段を設けることができる。これによって、展開位置にレバー1を附勢し、可能性としては、ねじ110及び120が緩んだときのために安全メンバーとして作用する。
【0027】
車セット2を保持するデバイスは、以下のように適所にセットされる。
【0028】
第1に、第1及び第2の開口11及び12が、ねじ110及び120を受けるように意図されたプレート101にある穴と整列し、自由端がこの用途のために設けられるハウジング102内に配置されるように、レバー1はメインプレート101に対抗するように配置される。次に、第1及び第2ねじ110及び120は、レバー1がねじに沿って滑ることができるように、レバー1を適所に保持するために挿入され部分的にねじ込まれる。
【0029】
そして、レバー1は、退避位置に移動し、第2のねじ120を締め込んで退避位置にレバー1を保持し、レバー1が展開位置に動くことが可能になるように第2のねじ120が緩められると、第1のねじ110の締め込みがレバー1の並進を可能にするように調整される。
【0030】
最後に、車セット2はメインプレート101のアーバーに置かれ、第2のねじ120は、レバー1が展開位置へ動くことを可能にするように緩められる。これによって、くちばし部10は、車セット2のリング20の溝21内に挿入され、これによって、くちばし部10は、そのアーバーのまわりに回転可能に軸方向に保持される。最後に、第2のねじ12は、展開位置にレバー1を保持するように締め込められる。
【0031】
このような本発明の異なる態様の結果、異なる内径の大きさに適応することができ適所にセットすることが容易な計時器用ムーブメントの車セットを保持するデバイスが得られる。本発明は、さらに、本発明に係るデバイスを装備した計時器の組み立て/分解の操作やメンテナンスを促進する。
【0032】
上記の説明は、好ましい実施形態に対応するものであって、これに制限されるものと考えるべきではない。具体的には、マウントされるデバイスを形成する様々な構造的な要素又はそれらの材料について、上記の説明に制限されるものと考えるべきではない。
【符号の説明】
【0033】
1 レバー
2 車セット
10 くちばし部
11 第1の開口
12 第2の開口
20 リング
21 溝
22 車セットアーバー
100 ムーブメント
101 メインプレート
102 ハウジング
110 第1のねじ
120 第2のねじ