【解決手段】騒音予測プログラムは、地図画像上に配置された工具等の騒音源(工事騒音源)に加え、橋梁のI桁1、橋桁2等の施工対象の鋼構造物も騒音源(構造物騒音源)となる場合は、構造物騒音源を工事騒音源とは別の騒音源として配置する。地図画像上の予測地点毎に、全ての騒音源に対して、騒音レベルを予測し、その結果の等値線図を地図画像へ重ねて表示する。よって、工事騒音源から発生する騒音の周囲への伝搬量に加えて、施工対象が騒音源になった場合の構造物騒音源から発生する騒音の周囲への伝搬量をも予測し、これらを合成した騒音量を工事の騒音として出力するため、鋼構造物を対象にした工事においても、工事騒音のシミュレーションをより的確に行うことができる。
前記構造物騒音予測ステップは、前記構造物騒音源記憶手段から取得した構造物騒音源の大きさが実際の構造物より大きい場合には、実際の構造物の大きさを前記構造物騒音源の大きさとして、その構造物騒音源から発生する騒音の周囲への伝搬量を計算して予測するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の騒音予測プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。本実施形態では、鋼構造物等について工事を行った場合の工事騒音のシミュレーションを行う騒音予測プログラム23xについて説明する。
【0014】
まず
図1を参照して、橋梁の橋桁について説明する。
図1(a)は橋梁のI桁1の側面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示すIb−Ib断面線における橋梁のI桁1の断面図であり、
図1(c)は橋梁の箱桁2の断面図である。橋梁のI桁1は、橋軸方向(
図1(a)の左右方向)へ延設されるウェブ3と、ウェブ3の上下に配設される上フランジ4及び下フランジ5とを備える。I桁1は、複数のI桁同士を後述の添接板6で接合することで延設される。I桁1の始点Sから終点Eまでの長さをLとし、高さをHとしている。
【0015】
添接板6は、I桁同士を接合するための部材であり、I桁1の接合部におけるフランジの上下面およびウェブの側面に添接される。ボルト7は、I桁1のウェブ3、上フランジ4、下フランジ5と添接板6とを固定するためのボルトであり、ナットが締結されている。1つの添接板6に対して、複数のボルト7が取着される。通常、添接板6とボルト7とを固定するには、人力よりトルクが大きいインパクトレンチ等の工具が使用される。このボルト7の固定作業時に発生する騒音は、工具から発生する騒音と、工具からの騒音や振動がI桁1に伝搬し、I桁1自体から発生する騒音とがある。即ち、ボルト7の固定作業の作業箇所は1点であるが、発生する騒音は、工具が「点音源」となって発生する騒音と、I桁1が「線音源」又は「面音源」となって発生する騒音とがある。
【0016】
図1(b)はIb−Ib断面線における橋梁のI桁1の断面図である。I桁1のウェブ3と、上フランジ4及び下フランジ5は、断面がI型に形成される。I桁1のウェブ3の厚さ(以下「板厚」と称す)をDとし、上フランジ4の上面から下フランジ5の下面までの高さをHとしている。
【0017】
図1(c)は、橋梁の箱桁2の断面図である。箱桁2は、前述のI桁1と同じく橋梁において橋脚の上に架設される橋桁である。箱桁2も添接板6により複数の箱桁同士を接合することで延設される。添接板6は工具によって複数のボルト7で固定される。箱桁2は、橋軸方向へ延設される一対の左ウェブ8と右ウェブ9との上下に、上フランジ10及び下フランジ11とが配設され、断面が中空箱状に形成される。左ウェブ8又は右ウェブ9の板厚をDとし、上フランジ10の上面から下フランジ11の下面までの高さをHとしている。また、左ウェブ8の板厚方向の中央から右ウェブ9の板厚方向の中央までの幅(以下「ウェブ間隔」と称す)をWとし、箱桁2の長さをLとしている。箱桁2は断面が中空箱状に形成されるため、箱桁2に伝搬する音や振動の特性は、断面がI型であるI桁1とは異なる。よって、後述する本実施形態の騒音予測プログラムにおいては、I桁1と箱桁2とを区別して騒音レベルの予測を行っている。
【0018】
次に、工事現場で発生する騒音の周囲への伝搬量を予測する、本実施形態の騒音予測プログラム23xについて説明する。騒音予測プログラム23xでは、まず、読み込んだ地図画像上に、騒音源となる工具や建設機械等(以下「工事騒音源」と称す)を配置する。その工事騒音源の施工対象となる鋼構造物(例えば、I桁1、箱桁2等)に、工事騒音源からの騒音や振動が施工対象に伝搬することで、施工対象の鋼構造物自体が騒音源(以下「構造物騒音源」と称す)となる場合、その構造物騒音源を工事騒音源とは別の新たな騒音源として配置する。そして、設定された複数の予測地点毎に、全ての工事騒音源と構造物騒音源からの騒音レベルを算出する。算出された予測地点毎の騒音レベルに基づき、騒音レベルの等値線図(コンター図とも呼ばれる)を作成し、地図画像に重ねて表示する。
【0019】
図2は、騒音予測プログラム23xが実行される情報処理装置の電気的構成を示すブロック図である。本実施形態では、情報処理装置としてパーソナルコンピュータ(以下「PC」と称す)20を例示する。PC20は、CPU21、ROM22、フラッシュメモリ23、RAM24を備え、これらがバスライン25を介して入出力ポート26にそれぞれ接続されている。また、入出力ポート26には、LCD27、入力装置28、外部入出力端子29がそれぞれ接続されている。
【0020】
CPU21は、バスライン25により接続された各部を制御する演算装置である。ROM22は、CPU21により実行される、制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性メモリである。
【0021】
フラッシュメモリ23は、書き換え可能な不揮発性のメモリである。フラッシュメモリ23には、騒音予測プログラム23xと、音源種類テーブル23aと、I桁用音源サイズテーブル23bと、箱桁用音源サイズテーブル23cと、地図画像データ23dとがそれぞれ設けられる。CPU21によって騒音予測プログラム23xが実行されると、
図5の騒音予測メイン処理が実行される。
【0022】
音源種類テーブル23aは、騒音源毎に、その音源形状と音源データとが記憶されたテーブルである。
図3(a)を参照して、音源種類テーブル23aについて説明する。
図3(a)は音源種類テーブル23aを模式的に表した図である。音源種類テーブル23aは、音源種類データ23a1と、音源形状データ23a2と、音源データ23a3とを有し、それぞれが対応して記憶される。音源種類データ23a1は、音源の名称(文字列)が記憶される。本実施形態においては、「インパクトレンチ」、「低騒音工具」、「ブルドーザー」等、工具や建設機械の名称が記憶される。音源種類テーブル23aを参照して、後述の音源形状データ23a2の値または音源データ23a3の値を取得する場合は、所望の音源種類と、この音源種類データ23a1の値とが一致した「No.」の音源形状データ23a2または音源データ23a3をそれぞれ取得する。
【0023】
音源形状データ23a2には、音源種類に応じた音源の形状が記憶される。本実施形態において、音源形状データ23a2に記憶される音源の形状の値としては、音源を点として扱う「点音源」、音源を長さを持つ線として扱う「線音源」、音源を長さと高さとを持つ面として扱う「面音源」の3種類を有している。
【0024】
音源データ23a3には、音源種類に応じた、周波数帯毎の騒音レベルが記憶される。
図3(b)は音源データ23a3を模式的に表した図である。音源データ23a3は、周波数帯データ23a31と、騒音レベルデータ23a32とを有し、それぞれが対応付けられて記憶される。周波数帯データ23a31には周波数帯が記憶され、騒音レベルデータ23a32には、周波数帯における騒音レベルが記憶される。
図3(b)で例示すると、周波数帯データ23a31が「50」における騒音レベルデータ23a32には、音源の周波数帯が50Hzの場合の騒音レベル「50.3dB」が記憶される。また、周波数帯データ23a31が「63」における騒音レベルデータ23a32には、音源の周波数帯が63Hzの場合の騒音レベル「60.0dB」が記憶される。このように、騒音レベルデータ23a32には、周波数帯データ23a31に記憶される周波数帯に対応した、騒音レベルが記憶される。
【0025】
図2に戻る。I桁用音源サイズテーブル23bは、橋梁のI桁1が構造物騒音源となる場合の音源サイズが記憶されたテーブルであり、I桁1のウェブ3の板厚D毎にテーブルが設けられる。
図3(c)はI桁用音源サイズテーブル23bを模式的に表した図である。I桁用音源サイズテーブル23bは、橋桁高データ23b1と、音源サイズデータ23b2とを有し、それぞれが対応付けられて記憶される。橋桁高データ23b1は、I桁1の高さHに対応する値である。音源サイズデータ23b2には、音源の長さと音源の高さとが記憶される。
図3(c)において、橋桁高データ23b1の値が「1.0」に対応する音源サイズデータ23b2は「6.0,0.0」である。これは音源の長さ(音源長さデータ)が「6.0」、音源の高さ(音源高データ)が「0.0」であることを表す。
【0026】
なお、音源サイズデータ23b2には、その鋼構造物が工事対象(施工対象)とされた場合に発生する騒音を実測し、その実測値に基づいて、その鋼構造物がどのような音源サイズの構造物騒音源となっているのかを逆計算したものが、音源長さデータと音源高データとして記憶されている。
【0027】
本実施形態では、音源サイズデータ23b2において、音源の長さが「0.0」より大きく且つ音源の高さが「0.0」のものは、音源の長さが有効で音源の高さが無い「線音源」として扱われる。一方、音源の長さと音源の高さとがともに「0.0」より大きい場合は、音源の長さと音源の高さとがともに有効な「面音源」として扱われる。
【0028】
また、I桁1の音の伝搬は、板厚Dによって変化する。そのため、
図3(c)では板厚Dが6mmの場合のみを例示したが、I桁用音源サイズテーブル23bはI桁1のウェブ3の板厚D毎に複数用意されている。よって、I桁1の音源サイズデータを取得する場合は、板厚Dに応じたI桁用音源サイズテーブル23bを取得し、I桁用音源サイズテーブル23bにおいて、I桁1の高さHと一致する橋桁高データ23b1に対応する、音源サイズデータ23b2の値を取得する。
【0029】
図2に戻る。箱桁用音源サイズテーブル23cは、橋梁の箱桁2が構造物騒音源となる場合の音源サイズが記憶されたテーブルであり、箱桁2の左ウェブ8又は右ウェブ9の板厚D毎にテーブルが設けられる。箱桁2は、断面が中空箱状であるため、音の伝搬特性がI桁1とは異なる。そのため、I桁用音源サイズテーブル23bとは別の箱桁用音源サイズテーブル23cを用いる。
【0030】
図3(d)は箱桁用音源サイズテーブル23cを模式的に表した図である。箱桁用音源サイズテーブル23cは、橋桁高データ23c1と、ウェブ間隔データ23c2と、音源サイズデータ23c3とを有し、それぞれが対応付けられて記憶されている。橋桁高データ23c1は、箱桁2の高さHに対応する値であり、ウェブ間隔データ23c2は、ウェブ間隔Wに対応する値である。音源サイズデータ23c3には音源長さデータと音源高データとが記憶されている。音源サイズデータ23c2の記憶形態は、I桁用音源サイズテーブル23bの音源サイズデータ23b2と同一であるため、その説明を省略する。
【0031】
なお、音源サイズデータ23c2も、I桁用音源サイズテーブル23bの音源サイズデータ23b2の場合と同様に、その鋼構造物が工事対象とされた場合に発生する騒音を実測し、その実測値に基づいてその鋼構造物がどのような音源サイズの構造物騒音源となっているのかを逆計算したものが、音源長さデータと音源高データとして記憶されている。
【0032】
箱桁2の騒音の伝搬も、I桁1と同じく板厚Dによって変化する。そのため、
図3(d)では板厚Dが6mmの場合のみを例示したが、箱桁用音源サイズテーブル23cは板厚D毎に複数用意されている。よって、箱桁2の音源サイズデータを取得する場合は、板厚Dに応じた箱桁用音源サイズテーブル23cを取得し、箱桁2の高さHと橋桁高データ23b1とが一致し、かつ、箱桁2のウェブ間隔Wとウェブ間隔データ23c2が一致する音源サイズデータ23c3の値を取得する。
【0033】
図2に戻る。地図画像データ23dは、後述するLCD27へ表示する、工事現場等の地図画像が記憶される。本実施形態においては、地図画像データ23dから任意の場所の地図画像を読み出し、その地図画像上に騒音源と予測地点とを配置し、各予測地点毎における騒音レベルを算出する。なお、地図画像データ23bには、外部入出力端子29等を介して外部装置から入力した地図画像を記憶するようにしても良い。たとえば、インターネットを介して地図画像を取得し、これを地図画像データ23dへ記憶するようにしても良い。
【0034】
RAM24はCPU21が騒音予測プログラム23x等のプログラム実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、音源情報テーブル24aと、予測地点テーブル24bと、施工対象メモリ24cと、橋桁長さメモリ24dと、橋桁高メモリ24eと、板厚メモリ24fと、ウェブ間隔メモリ24gとがそれぞれ設けられる。
【0035】
音源情報テーブル24aは、地図画像上に配置された騒音源毎の、音源情報(音源種類、音源の形状、音源データ、音源サイズ、音源の位置)を記憶するテーブルである。本実施形態の騒音予測プログラム23xは、後述する予測地点テーブル24bに記憶された予測地点毎に、この音源情報テーブル24aに記憶された全ての音源情報から騒音レベルを算出し、それらを予測騒音レベルとして合成する。
【0036】
図4(a)は音源情報テーブル24aを模式的に表した図である。音源情報テーブル24aは、音源種類メモリ24a1と、音源形状メモリ24a2と、音源メモリ24a3と、音源長さメモリ24a4と、音源高メモリ24a5と、X座標メモリ24a6と、Y座標メモリ24a7と、角度メモリ24a8とを有し、それぞれが対応して記憶される。音源情報テーブル24aの要素数はm個(ただし、m>1)であり、電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、音源情報テーブル24aの各メモリの値は「(END)」で初期化される。ただし、m番目の要素の各メモリの値は常に「(END)」とし、テーブルの終端であることを示す。
図8(a)〜(d)の音源設定画面41でユーザによって音源情報が入力された場合に、音源情報テーブル24aの各メモリに値が記憶される。
【0037】
音源種類メモリ24a1は、後述する
図8(b)〜(d)の音源種類メニュー42で選択された、音源の名称(文字列)が記憶される。また、
図8(c),(d)にて施工対象メニュー43で「橋梁のI桁」または「橋梁の箱桁」が選択され、その構造物騒音源が工事騒音源とは別の音源として音源情報テーブル24aに追加される場合は、「橋梁のI桁」または「橋梁の箱桁」が記憶される。
【0038】
音源形状メモリ24a2は、騒音源の音源の形状、即ち、前述した「点音源」、「線音源」、「面音源」のいずれかが記憶される。
図8(b)〜(d)の音源種類メニュー42によって、音源種類メモリ24a1の値が設定された後に、音源種類メモリ24a1の値で音源種類テーブル23aを検索し、音源種類メモリ24a1の値と一致する、音源種類データ23a1に対応する音源形状データ23a2の値が音源形状メモリ24a2に記憶される。また、
図8(c),(d)にて施工対象メニュー43で「橋梁のI桁」または「橋梁の箱桁」が選択され、その構造物騒音源が工事騒音源とは別の音源として音源情報テーブル24aに追加される場合は、後述する音源長さメモリ24a4及び音源高メモリ24a5の値に応じた音源形状が記憶される。
【0039】
音源メモリ24a3には、騒音源の周波数帯毎の騒音レベルが記憶される。
図8(b)〜(d)の音源種類メニュー42によって、音源種類メモリ24a1の値が設定された後に、音源種類メモリ24a1の値で音源種類テーブル23aを検索し、音源種類メモリ24a1の値と一致する、音源種類データ23a1に対応する音源データ23a3の値が音源メモリ24a3に記憶される。また、
図8(c),(d)にて施工対象メニュー43で「橋梁のI桁」または「橋梁の箱桁」が選択され、その構造物騒音源が工事騒音源とは別の音源として音源情報テーブル24aに追加される場合も、
図8(b)〜(d)の音源種類メニュー42によって設定された音源種類と同一の音源データが音源メモリ24a3に記憶される。
【0040】
音源長さメモリ24a4は、騒音源の長さを記憶するメモリである。後述するが、音源長さメモリ24a4には、I桁1又は箱桁2の長さL或いは、I桁用音源サイズテーブル23b又は箱桁用音源サイズテーブル23cから取得した音源の長さが記憶される。
【0041】
音源高メモリ24a5は、騒音源の高さを記憶するメモリである。後述するが、音源高メモリ24a5には、I桁1又は箱桁2の高さH或いは、I桁用音源サイズテーブル23b又は箱桁用音源サイズテーブル23cから取得した音源の高さが記憶される。
【0042】
X座標メモリ24a6、Y座標メモリ24a7は、騒音源のX座標、Y座標を記憶するメモリであり、座標系は、
図8の表示画面40の左下を原点(0,0)としたものである。
図8(a)において、ユーザが設定した騒音源の始点SのX座標とY座標とが、それぞれX座標メモリ24a6とY座標メモリ24a7とに記憶される。
【0043】
角度メモリ24a8は、騒音源、特に線音源または面音源の角度を記憶するメモリである。
図8(a)において、ユーザが設定した騒音源の始点Sと終点Eとを結ぶ直線と、X軸との角度θが記憶される。
【0044】
本実施形態において、
図4(a)に示す通り、音源情報テーブル24aに記憶される要素数はNo.1〜No.mまでのm個(終端を含むため、実質的にはm−1個)としたが、必ずしもこれに限らず、騒音源が配置される数によって、100個であっても、1000個であってもよい。
【0045】
図2に戻る。予測地点テーブル24bは、地図画像上に配置された予測地点毎に、その座標と算出された騒音レベルとを記憶するテーブルである
図4(b)は予測地点テーブル24bを模式的に表した図である。予測地点テーブル24bは、X座標メモリ24b1と、Y座標メモリ24b2と、予測騒音レベルメモリ24b3とを有し、それぞれが対応して記憶される。電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、予測地点テーブル24bの各メモリの値は「(END)」で初期化される。予測地点テーブル24bの要素数はn個であり、電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、予測地点テーブル24bの各メモリの値は「(END)」で初期化される。ただし、n番目(ただし、n>1)の要素の各メモリの値は常に「(END)」とし、テーブルの終端であることを示す。X座標メモリ24b1、Y座標メモリ24b2は、予測地点を記憶するメモリである。座標系は、
図8の表示画面40の左下を原点(0,0)としたものである。本実施形態においては、予測地点はX座標方向、Y座標方向ともに「50.0」ずつ等間隔に設定される。
【0046】
予測騒音レベルメモリ24b3は、予測地点毎において算出された騒音レベルを記憶する。本実施形態においては、予測地点毎に、音源情報テーブル24aに記憶された全ての騒音源に対して、全ての周波数帯毎に騒音レベルの減衰計算を行い、その算出結果を合成し、予測騒音レベルメモリ24b3に記憶する。
【0047】
本実施形態において、予測地点テーブル24bに記憶される要素数はNo.1〜No.nまでのn個(終端を含むため、実質的にはn−1個)としたが、必ずしもこれに限らず、騒音レベルの予測精度に応じて予測地点テーブル24bの要素数を変更してもよい。また、予測地点はX座標方向、Y座標方向ともに「50.0」ずつ等間隔に設定されるとしたが、必ずしもこれに限らず、必要とされる予測精度に応じて、予測地点間の間隔を大きくしてもよいし、小さくしてもよい。また、予測地点をユーザにより任意に設定できるようにしてもよい。
【0048】
図2に戻る。施工対象メモリ24cは、ユーザにより設定された、工事の施工対象を記憶するメモリである。本実施形態において施工対象の値として「地面」、「橋梁のI桁」、「橋梁の箱桁」の3種類が用意されている。電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、施工対象メモリ24cの値は「地面」で初期化され、
図8(b)〜(d)の施工対象メニュー43でユーザにより選択された施工対象の値が、施工対象メモリ24cに記憶される。
【0049】
橋桁長さメモリ24dは、I桁1又は箱桁2の長さL(
図1(a)参照)を記憶するメモリである。電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、橋桁長さメモリ24dの値は「0.0」で初期化され、
図8(a)において、ユーザにより設定された始点S〜終点Eまでの距離が設定される。この始点S〜終点Eまでの距離は、施工対象となるI桁1又は箱桁2の実際の長さLである。
【0050】
橋桁高メモリ24eは、I桁1又は箱桁2の高さH(
図1参照)を記憶するメモリである。電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、橋桁高メモリ24eの値は「0.0」で初期化され、
図8(c)〜(d)の高さメニュー44でユーザにより選択されたI桁1又は箱桁2の実際の高さHが橋桁高メモリ24eに記憶される。
【0051】
板厚メモリ24fは、ユーザにより設定された、I桁1又は箱桁2の板厚D(
図1(b),(c)参照)を記憶するメモリである。電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、板厚メモリ24fの値は「0.0」で初期化され、
図8(c)〜(d)の板厚メニュー45でユーザにより選択されたI桁1又は箱桁2の実際の板厚Dが橋桁高メモリ24eに記憶される。
【0052】
ウェブ間隔メモリ24gは、箱桁2のウェブ間隔W(
図1(c)参照)を記憶するメモリである。電源投入時および
図5の騒音予測メイン処理が実行された直後に、ウェブ間隔メモリ24gの値は「0.0」で初期化され、
図8(c)〜(d)のウェブ間隔メニュー46でユーザにより選択されたI桁1又は箱桁2の実際のウェブ間隔Wがウェブ間隔メモリ24gに記憶される。
【0053】
LCD27は、
図8(a)〜(d)における表示画面40を表示するためのディスプレイである。入力装置28は、ユーザからの指示や各種情報をPC20に入力するためのキーボードや、マウスで構成され、表示画面40において騒音源の位置指定や、選択肢等を入力する。
【0054】
外部入出力端子29は、PC20と他のコンピュータとをインターネット回線等を介して接続し、データの送受信を行うためのインターフェイスである。PC20は、他のコンピュータで作成された音源種類テーブルや音源サイズテーブル、地図画像を外部入出力端子29を経由して受信し、それぞれ音源種類テーブル23a、I桁用音源サイズテーブル23b、箱桁用音源サイズテーブル23c、地図画像データ23dに記憶する。これにより、音源種類が増加した場合や、I桁1、箱桁2の材質や構造等の変更により、I桁1、箱桁2の音源サイズが変更された場合、また、新たな工事現場に対して騒音予測をする場合において、外部入出力端子29経由で、音源種類テーブル23a、I桁用音源サイズテーブル23b、箱桁用音源サイズテーブル23c、地図画像データ23dを書き換えることにより、これらの変更に対して柔軟に対応することができる。
【0055】
次に、
図5から
図8を参照して、PC20のCPU21で実行される騒音予測プログラム23xについて説明する。まず
図8を参照して、LCD27に表示される、表示画面40について説明する。
図8(a)は地図画像を表示する画面を示す図であり、
図8(b)は音源設定画面41で「施工対象」を「地面」とした場合の画面を示す図であり、
図8(c)は音源設定画面41で「施工対象」を「橋梁のI桁」とした場合の画面を示す図であり、
図8(d)は音源設定画面41で施工対象を「橋梁の箱桁」とした場合の画面を示す図であり、
図8(e)は予測結果の騒音レベルの等値線図を表す画面を示す図である。
【0056】
図8(a)は地図画像を表示する画面を示す図であり、
図5の騒音予測メイン処理における、S1及びS2の処理が実行された後、即ち、工事現場等の地図画像を地図画像データ23dから取得し、取得された地図画像を、ユーザが所望するエリアと一致させるように地図画像の縮尺設定した後に表示される。表示画面40において、X軸方向は表示画面40における左右方向であり、Y軸方向は上下方向である。また、表示画面40の左下が原点(0,0)である。
【0057】
表示画面40に表示される地図画像に対し、ユーザは、入力装置28を用いて騒音源の設定を行う。ブルドーザーやショベルカーといった、点音源を設定する場合は、地図画像上の点を入力装置28で選択することで、
図8(b)の音源設定画面41が地図画像上に表示される。この場合の、始点Sと終点Eとは、同一の座標となる。
【0058】
一方、I桁1及び箱桁2等、長さを持つ音源や構造物の場合は、その始点Sと、終点Eとの間を入力装置28で選択することで、
図8(c),(d)の音源設定画面41が地図画像上に表示される。この始点Sと、角度θ、長さLはそれぞれ、音源情報テーブル24aのX座標メモリ24a6と、Y座標メモリ24a7と、角度メモリ24a8及び橋桁長メモリ24dに記憶される値である。
【0059】
また、既に配置した音源を入力装置28で選択することで、
図8(b)〜(d)の音源設定画面41が表示され、その音源情報の変更や削除をすることができる。
【0060】
即ち、
図8(a)の地図画像が表示される表示画面40において、入力装置28で選択された場合に、
図8(b)〜(d)の音源設定画面41へ表示移行する。音源設定画面41は、音源情報を設定するための画面であり、「施工対象」によって表示される音源の設定項目が変化する。
図8(b)は、「施工対象」を「地面」とした場合の音源設定画面41である。
図8(b)には、音源種類メニュー42と施工対象メニュー43と、OKキー50と、削除キー51と、入力完了キー52とがそれぞれ表示される。
【0061】
音源種類メニュー42は音源種類を選択するメニューであり、音源種類メニュー42を入力装置28で選択することで、
図3(a)の音源種類テーブル23aの音源種類データ23a1に記憶された、音源の名称が選択肢として表示される。
【0062】
施工対象メニュー43は、工事における施工対象を選択するメニューであり、音源種類メニュー42が入力装置28で選択されることで「地面」と「橋梁のI桁」と「橋梁の箱桁」とが選択肢として表示される。これにより、ユーザによって、施工対象が選択される。本実施形態においては、施工対象が「地面」の場合は、音源種類の設定のみで騒音予測が可能であるので、その他の後述する高さメニュー44等の音源の設定項目は表示されない。
【0063】
OKキー50は、音源設定画面41で設定された音源情報を確定し、地図画像が表示される表示画面40(
図8(a))へ表示移行するキーである。このOKキー50が入力装置28で選択されると、
図6の音源情報入力処理のS12及びS13の処理が実行され、音源種類テーブル23aに音源情報が追加される。また、既に音源種類テーブル23aに登録されている音源情報である場合は、その音源情報を音源設定画面41で設定された音源情報へ更新する。
【0064】
削除キー51は、音源設定画面41で表示されている音源情報を削除し、地図画像が表示される表示画面40(
図8(a))へ表示移行するキーである。この削除キー51が入力装置28で選択されると、
図3(a)の音源種類テーブル23aのうち、音源設定画面41で表示されている音源情報に該当する音源情報を削除する。
【0065】
入力完了キー52は、全ての音源情報の入力を完了し、
図8(e)の予測結果の騒音レベルの等値線図を表す画面へ表示移行するためのキーである。入力完了キー52が入力装置28で選択されると、
図6の音源情報入力処理のS33の判断処理で「Yes」となり、
図5におけるS4(即ち、
図7の騒音レベル予測処理)及びS5の処理が実行される。その結果、
図8(e)の予測結果の騒音レベルの等値線図を表す画面が表示される。
【0066】
図8(c)は音源設定画面41で「施工対象」を「橋梁のI桁」とした場合の画面を示す図である。音源種類メニュー42と、施工対象メニュー43と、OKキー50と、削除キー51と、入力完了キー52とに加え、高さメニュー44と、板厚メニュー45とが表示される。
【0067】
高さメニュー44は、I桁1の高さHを選択するメニューであり、高さメニュー44が入力装置28で選択されることで、
図3(c)のI桁用音源サイズテーブル23b1の橋桁高データ23b1に記憶された高さHが選択肢として表示される。
【0068】
板厚メニュー45は、I桁1の板厚Dを選択するメニューであり、板厚メニュー45が入力装置28で選択されることで、
図3(c)のI桁用音源サイズテーブル23bを記憶する板厚Dの値が表示される。
【0069】
図8(d)は音源設定画面41で「施工対象」を「橋梁の箱桁」とした場合の画面を示す図である。音源種類メニュー42と、施工対象メニュー43と、OKキー50と、削除キー51と、入力完了キー52と、高さメニュー44と、板厚メニュー45とに加え、ウェブ間隔メニュー46が表示される。
【0070】
ウェブ間隔メニュー46は、箱桁2のウェブ間隔Wを選択するメニューであり、ウェブ間隔メニュー46が入力装置28で選択されることで、
図3(d)の箱桁用音源サイズテーブル23cのウェブ間隔データ23c2に記憶される値が表示される。
【0071】
高さメニュー44には、
図3(d)の箱桁用音源サイズテーブル23cの橋桁高データ23c1に記憶された値が選択肢として表示され、板厚メニュー45には、箱桁用音源サイズテーブル23cを記憶する板厚Dの値が表示される。
【0072】
施工対象の鋼構造物の形状(即ち、I桁や箱桁等)やサイズ(即ち、長さや高さ等)が近似している場合は、構造物騒音源の長さと高さも近似する。このことから、本実施形態の騒音予測プログラム23xにおいて、
図8(c),(d)の高さメニュー44等の選択項目では、実際の鋼構造物のサイズではなく、ユーザに近似したサイズを選択させることで、利便性の向上を図っている。また、高さメニュー44、板厚メニュー45、ウェブ間隔メニュー46で選択された値に応じて、I桁用音源サイズテーブル23b、箱桁用音源サイズテーブル23cから音源サイズデータを取得し、取得した音源サイズデータから騒音レベルを予測することで、プログラムの簡略化を図っている。
【0073】
図8(e)は騒音の予測結果を表す画面を示す図である。騒音の予測結果を表す画面には、地図画像上に、等値線47を重ねて表示する。等値線47は、騒音レベル予測処理(S4及び
図7参照)で予測地点毎に算出された予測騒音レベルにおいて、予測騒音レベルの値が等しい予測地点同士を線で結んだ線である。
図8(e)における2点鎖線の複数の楕円が等値線47である。騒音レベルの等値線図を作成し、地図画像上にその等値線図を重ねることよって、騒音レベルの分布が一目で把握でき、騒音対策が必要な場所を素早く特定できる。
【0074】
次に
図5を参照して、PC20のCPU21で実行される騒音予測プログラム23xについて説明する。
図5は、騒音予測プログラム23xの騒音予測メイン処理のフローチャートである。騒音予測メイン処理によって、地図画像を表示し、その地図画像上に騒音源を配置して騒音予測を行い、その予測結果として得られた騒音レベルの等値線図を地図画像に重ねて表示する。騒音予測メイン処理は、PC20の電源投入後に、ユーザの実行指示があった場合に実行される。
【0075】
まず、地図画像を取得し(S1)、取得した地図画像の縮尺設定を行う(S2)。具体的に、工事現場等の地図画像を地図画像データ23dから取得し、取得された地図画像を、ユーザが所望するエリアと一致させるように地図画像の縮尺設定を行う。その後に、音源情報入力処理を実行する(S3)。
【0076】
図6は、音源情報入力処理(S3)のフローチャートである。音源情報入力処理は、
図8の音源設定画面41等でユーザから入力された音源情報を、音源種類や施工対象に応じて処理を行った上で、音源情報テーブル24aに記憶させる処理である。まず、音源情報テーブル24aの記憶位置を先頭に移動する(S10)。音源情報入力処理では、音源情報テーブル24aに音源情報がユーザに入力された順に音源情報を記憶していくため、音源情報入力処理の実行開始直後に音源情報テーブル24aの記憶位置を先頭(即ち、
図4(a)における、音源情報テーブル24aの「No.1」の位置)に移動する。
【0077】
S10の処理の後、表示画面40にて音源情報を入力する(S11)。具体的には、ユーザはまず、
図8(a)の表示画面40において、騒音源を配置する地点を設定する。橋梁のI桁1および箱桁2の場合は、始点Sと終点Eとを設定する。その後、
図8(b)〜(d)において、音源、施工対象、高さ、板厚、ウェブ間隔をそれぞれ音源種類メニュー42、施工対象メニュー43、高さメニュー44、板厚メニュー45、ウェブ間隔メニュー46から選択する。
【0078】
S11の処理の後、入力された音源情報を取得し、音源情報テーブル24aへ記憶する(S12)。具体的には、S10でユーザにより指定された、始点SのX座標およびY座標を、音源情報テーブル24aのX座標メモリ24a6及びY座標メモリ24a7に記憶する。始点Sと終点Eとの距離(即ち、I桁1または箱桁2の長さL)を橋桁長さメモリ24dに記憶する。音源として例えば、ブルドーザーといった、点音源として扱う音源の場合、即ち、始点Sと終点Eとが略同一の座標である場合は、橋桁長さメモリ24dに「0」を記憶する。また、始点Sと終点Eとを結ぶ直線と、X軸との角度θを角度メモリ24a8に記憶する。
【0079】
図8(b)〜(d)における音源種類メニュー42、施工対象メニュー43、高さメニュー44、板厚メニュー45、ウェブ間隔メニュー46で設定された値をそれぞれ、音源情報テーブル24aの音源種類メモリ24a1、施工対象メモリ24c、橋桁高メモリ24e、板厚メモリ24f、ウェブ間隔メモリ24gに記憶する。
【0080】
S12の処理の後、音源情報テーブル24aの音源種類メモリ24a1の値で音源種類テーブル23aを検索し、該当する音源形状データ23a2と音源データ23a3とをそれぞれ、音源情報テーブル24aの音源形状メモリ24a2と音源メモリ24a3とに記憶する(S13)。
【0081】
S13の処理の後、施工対象メモリ24cの値を確認する(S14)。施工対象メモリ24cの値が「橋梁のI桁」又は「橋梁の箱桁」の場合は(S14:「橋梁のI桁」又は「橋梁の箱桁」)、音源情報テーブル24aの記憶位置を1つ進める(S15)。具体的には、
図4(a)の音源情報テーブル24aにおいて、現在の記憶位置に対応する「No.」から1つ進めた位置(例えば、「No.1」から「No.2」)を、次の記憶位置とする。施工対象が「橋梁のI桁」又は「橋梁の箱桁」の場合は、音源として設定したインパクトレンチ等の工事騒音源から発生する騒音に加えて、工事騒音源からの騒音や振動がI桁1又は箱桁2に伝搬することにより、I桁1又は箱桁2自体が構造物騒音源となり騒音が発生する。そこで、本実施形態においては、構造物騒音源を工事騒音源とは別の音源として配置し、騒音レベルの予測を行う。よって、音源情報テーブル24aの記憶位置を1つ進めて、構造物騒音源を、新たな音源として音源情報テーブル24aへ記憶する。これにより、工事騒音源とは音源の特性(特に、音源形状)が異なる構造物騒音源を、工事騒音源とは別に設定できるため、鋼構造物を対象にした工事においても、工事騒音のシミュレーションをより的確に行うことができる。
【0082】
S15の処理の後、入力された音源情報を取得し、音源情報テーブル24aへ記憶し(S16)、音源情報テーブル24aの音源種類メモリ24a1の値で音源種類テーブル23aを検索し、該当する音源形状データ23a2と音源データ23a3とをそれぞれ、音源情報テーブル24aの音源形状メモリ24a2と音源メモリ24a3とに記憶する(S17)。S15,S16の処理内容はS12,S13と同一のため、詳細な説明は省略する。本実施形態においては、構造物騒音源はその元となる工事騒音源と位置、音源の長さ、音源の高さ、音源データにおいて共通しているので、S11の処理で既に入力された音源情報を再度取得し、取得した音源情報を音源情報テーブル24a、施工対象メモリ24c、橋桁長さメモリ24d、橋桁高メモリ24e、板厚メモリ24f、ウェブ間隔メモリ24gに記憶する。後述するS18〜S31の処理で、音源情報テーブル24aの値を、構造物騒音源に応じた音源情報に変更する。
【0083】
S17の処理の後、施工対象メモリ24cの値を確認する(S18)。施工対象メモリ24cの値が「橋梁のI桁」の場合は(S18:「橋梁のI桁」)、板厚メモリ24fの値と橋桁高メモリ24eの値とでI桁用音源サイズテーブル23bを検索し、該当する音源サイズデータ23b2の音源長さデータと音源高データとを、音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4と音源高メモリ24a5とにそれぞれ記憶する(S19)。具体的には、板厚D毎に記憶されている、I桁用音源サイズテーブル23bのうち、板厚メモリ24fの値に該当するI桁用音源サイズテーブル23bを取得する。そのI桁用音源サイズテーブル23bを、橋桁高メモリ24eの値とで検索し、該当する音源サイズデータ23b2を取得し、その音源サイズデータ23b2の音源長さデータと音源高データとをそれぞれ音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4と音源高メモリ24a5とにそれぞれ記憶する。
【0084】
前述した通り、I桁用音源サイズテーブル23bの音源サイズデータ23b2には、例えば、「6.0,0.0」という値が記憶されている。このうち、「6.0」が音源長さデータであり、「0.0」が音源高データである。このようにして、板厚および橋桁の高さ毎に記憶された音源サイズデータを取得し、取得した音源サイズデータを騒音予測に用いる。S19の処理の後、音源情報テーブル24aの音源種類メモリ24a1の値に「橋梁のI桁」という音源の名称(文字列)を記憶する(S20)。
【0085】
一方S18の判断処理において、施工対象メモリ24cの値が「橋梁の箱桁」の場合は(S18:「橋梁の箱桁」)、板厚メモリ24fの値と橋桁高メモリ24eの値とウェブ間隔メモリ24gの値とで箱桁用音源サイズテーブル23c検索し、該当する音源サイズテーブル23cの音源サイズデータ23c3の音源長さデータと音源高データとを、音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4と音源高メモリ24a5とにそれぞれ記憶する(S21)。具体的には、板厚D毎に記憶されている、箱桁用音源サイズテーブル23cのうち、板厚メモリ24fの値に該当する箱桁用音源サイズテーブル23cを取得する。その箱桁用音源サイズテーブル23cを、橋桁高メモリ24eの値とウェブ間隔メモリ24gの値とで検索し、該当する音源サイズデータ23c3を取得し、その音源長さデータと音源高データとをそれぞれ音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4と音源高メモリ24a5とにそれぞれ記憶する。S21の処理の後、音源情報テーブル24aの音源種類メモリ24a1の値に「橋梁の箱桁」という音源の名称(文字列)を記憶する(S22)。
【0086】
S20,S22の処理の後、音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4の値が、橋桁長さメモリ24dの値より大きいかを確認する(S23)。音源長さメモリ24a4の値が橋桁長さメモリ24dの値より大きい場合(S23:Yes)、橋桁長さメモリ24dの値を音源長さメモリ24a4に記憶する(S24)。一方、音源長さメモリ24a4の値が橋桁長さメモリ24dの値以下の場合(S23:No)、S24の処理はスキップされる。
【0087】
S23,S24の処理の後、音源情報テーブル24aの音源高メモリ24a5の値が、橋桁高メモリ24eの値より大きいかを確認する(S25)。音源高メモリ24a5の値が橋桁高メモリ24eの値より大きい場合(S25:Yes)、橋桁高メモリ24eの値を音源高メモリ24a5に記憶する(S26)。一方、音源高メモリ24a5の値が橋桁高メモリ24eの値以下の場合(S25:No)、S26の処理はスキップされる。
【0088】
前述の通り、I桁用音源サイズテーブル23b、箱桁用音源サイズテーブル23cには実測値に基づいた音源長さデータと音源高データとが記憶されるため、地図画像上に設定される、I桁1、箱桁2の長さL及び高さHよりも大きな音源長さデータと音源高データとが記憶される場合がある。そこで、I桁用音源サイズテーブル23b、箱桁用音源サイズテーブル23cから取得された音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4、音源高メモリ24a5の値が、表示画面40で設定された橋桁長さメモリ24d、橋桁高メモリ24eの値より大きい場合は、それぞれ橋桁長さメモリ24d、橋桁高メモリ24eの値に縮小する。これにより、I桁1、箱桁2の長さL及び高さHより、サイズの大きな構造物騒音源が設定されることがなくなり、構造物騒音源のサイズに基づいて騒音レベルの算出が行われるので、的確な騒音レベルの算出が可能となる。
【0089】
S25,S26の処理の後、音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4の値が0より大、かつ、音源高メモリ24a5の値が0より大であるかを確認する(S27)。音源長さメモリ24a4の値が0より大、かつ、音源高メモリ24a5の値が0より大である場合(S27:Yes)、音源情報テーブル24aの音源形状メモリ24a2に「面音源」を記憶する(S28)。本実施形態においては、音源の長さと音源の高さとが0より大である、即ち騒音源の長さと騒音源の高さとがともに有効であるため「面音源」として扱う。
【0090】
音源情報テーブル24aの音源長さメモリ24a4の値が0より大、かつ、音源高メモリ24a5の値が0より大でない場合(S27:No)、音源長さメモリ24a4の値が0より大であるかを確認する(S29)。音源長さメモリ24a4の値が0より大である場合(S29:Yes)、音源情報テーブル24aの音源形状メモリ24a2に「線音源」を記憶する(S30)。音源の高さが0である一方、音源の長さが0より大である、即ち、騒音源の長さが有効であるため「線音源」として扱う。
【0091】
音源長さメモリ24a4の値が0ある場合(S29:No)、音源情報テーブル24aの音源形状メモリ24a2に「点音源」を記憶する(S31)。音源の高さと音源の長さとが0である、即ち、音源の高さと音源の長さが有効ではないため、かかる場合は「点音源」として扱う。
【0092】
S14の判断処理において、施工対象メモリ24cの値が「橋梁のI桁」、「橋梁の箱桁」以外の場合は(S14:「その他」)、施工対象メモリ24cの値に応じた、音源情報を設定する(S32)。本実施形態においては、「橋梁のI桁」、「橋梁の箱桁」以外の施工対象としては、「地面」が定義されている。施工対象が「地面」の場合は、前述した構造物騒音源を音源情報テーブル24aに設定する必要はないため、S15以下の処理はスキップされる。なお、施工対象は必ずしも「橋梁のI桁」、「橋梁の箱桁」、「地面」の3種類に限られるものではなく、工事現場等の施工対象に応じて適宜設定可能であり、その施工対象に応じて行われるS32の処理も適宜設定可能である。
【0093】
S28,S30、S31,S32の処理の後、ユーザーによる音源情報の入力が完了したかを確認する(S33)。具体的には、
図8(b)〜(d)における入力完了キー52が選択されたかを確認する。ユーザーによる音源情報の入力が完了していない場合(S33:No)、音源情報テーブル24aの記憶位置を1つ進める(S34)。即ち、次のユーザからの音源情報の入力に備え、
図4(a)の音源情報テーブル24aにおいて、現在の記憶位置に対応する「No.」から1つ進めた位置を、次の記憶位置とする。S34の処理の後、S11の処理を行う。一方、ユーザーによる音源情報の入力が完了した場合(S33:Yes)、本処理を終了し、
図5における騒音予測メイン処理へ戻る。
【0094】
図5に戻る。S3の音源情報入力処理後、騒音レベル予測処理を実行する(S4)。
図7は、騒音レベル予測処理(S4)のフローチャートである。騒音レベル予測処理は、地図画像上に騒音レベルを予測する予測地点を設定し、その予測地点毎に音源情報テーブル24aに記憶されている全ての工事騒音源または構造物騒音源について、騒音レベルを予測し予測騒音レベルを算出する処理である。
【0095】
図7の騒音レベル予測処理は、まず地図画像上に等間隔の予測地点を設定し、予測地点テーブル24bへ記憶する(S41)。本実施形態においては、X座標、Y座標ともに「50.0」ずつ等間隔に予測地点を設定し、それぞれ予測地点テーブル24bのX座標メモリ24b1とY座標メモリ24b2とに記憶する。
【0096】
S41の処理の後、まず予測地点テーブル24bの先頭の要素から順に騒音レベルの算出を行うため、予測地点テーブル24bの記憶位置を先頭に移動する(S42)。具体的には、
図4(b)における、予測地点テーブル24bの「No.1」の位置に移動する。次に、予測地点毎に行う騒音レベルの算出も、音源情報テーブル24aに記憶された音源情報順に行うため、音源情報テーブル24aの取得位置も先頭に移動する(S43)。具体的には、
図4(a)における、音源情報テーブル24aの「No.1」の位置に移動する。
【0097】
S43の処理の後、音源情報テーブル24aの音源形状メモリ24a2の値を確認する。音源形状メモリ24a2の値が「点音源」の場合(S44:「点音源」)、音源情報テーブル24aの値と予測地点テーブル24bの値とから点音源の減衰計算を行う(S45)。
【0098】
本実施形態において、予測地点の騒音レベルは、騒音源から発生する騒音が、予測地点ではどれだけ減衰して観測されるかを、減衰計算によって算出する。減衰計算は後述する「減衰計算式」と呼ばれる公知の計算式によって行う。本実施形態においては音源情報テーブル24aへ記憶された騒音レベルデータ23a32には、騒音源の騒音レベルが周波数帯データ23a31毎に記憶されている。よって、予測地点の騒音レベルは、全ての騒音源に対して、全ての周波数帯毎に騒音レベルの減衰計算を行い、その算出結果を合成することで算出する。また「減衰計算式」は、音源形状(点音源、線音源、面音源)によって異なる。
【0099】
S44において、音源形状メモリ24a2の値が「線音源」の場合(S44:「線音源」)、音源情報テーブル24aの値と予測地点テーブル24bの値とから線音源の減衰計算を行う(S46)。また、S44において、音源形状メモリ24a2の値が「面音源」の場合(S44:「面音源」)、音源情報テーブル24aの値と予測地点テーブル24bの値とから面音源の減衰計算を行う(S47)。
【0100】
なお、点音源、線音源、面音源の減衰計算式は、公知のものを使用する。点音源の減衰計算式として、以下の数式1が挙げられる。ここで、Lpは予測地点での騒音レベル(即ち、予測地点テーブル24bの予測騒音レベルメモリ24b3に合成する値)であり、Lwは騒音源の騒音レベル(即ち、音源情報テーブル24aの音源メモリ24a3の値)であり、rは騒音源と予測地点との距離(即ち、音源情報テーブル24aのX座標メモリ24a6、Y座標メモリ24a7と、予測地点テーブル24bのX座標メモリ24b1、Y座標メモリ24b2との距離)である。
【数1】
【0101】
線音源(有限長)の減衰計算式として、以下の数式2が挙げられる。ここで、r0は予測地点と騒音源との距離であり、φは予測地点と、騒音源の始点S、終点Eとのなす角であり、音源情報テーブル24aのX座標メモリ24a6の値とY座標メモリ24a7の値と角度メモリ24a8の値とから算出する。LwとLpは点音源の減衰計算式と同一の値である。
【数2】
【0102】
面音源の減衰計算式として、以下の数式3が挙げられる。まず、騒音源の単位面積当たりの出力をW,音速をc,予測地点と騒音源との垂直距離をd,面音源の長さ方向の範囲をx1〜x2,面音源の高さ方向の範囲をy1〜y2とすると、予測地点での音響エネルギ密度Eは次の数式3となる。
【数3】
数式3の簡略化のため、x1=0、y1=0、x2=a、y2=bとし、垂直距離dを単位として積分だけを取り出したψを、以下の数式4で算出する。ここで、a,bは、それぞれ面音源の長さ、高さ(即ち、音源長さメモリ24a4の値、音源高メモリ24a5の値)である。
【数4】
これより、面音源の予測地点での騒音レベルLpは、以下の数式5で算出する。ここで、Lwは点音源及び面音源の減衰計算式と同一の値である。
【数5】
【0103】
S45,S46,S47の処理の後、予測地点と騒音源との間に壁があるか確認する(S48)。予測地点と騒音源との間に壁がある場合(S48:Yes)、壁による減衰計算を行う(S49)。一方、予測地点と騒音源との間に壁がない場合(S48:No)、S49の処理をスキップする。なお、壁による減衰計算は公知の計算式を使用する。
【0104】
S48,S49の処理の後、S45,S46,S47,S49による、減衰計算の結果を予測地点テーブル24bの予測騒音レベルメモリ24b3に合成する(S50)。
【0105】
S50の処理の後、音源情報テーブル24aの取得位置を1つ進める(S51)。具体的には、
図4(a)の音源情報テーブル24aにおいて、現在の取得位置に対応する「No.」から1つ進めた位置を、次の取得位置とする。S51の処理の後、音源情報テーブル24aの取得位置が終端かどうかを確認する(S52)。具体的には、音源情報テーブル24aの各メモリのうち、いずれかの値が「(END)」である場合は、音源情報テーブル24aの取得位置が終端であると判断する。音源情報テーブル24aの取得位置が終端ではない場合は(S52:No)、S44の処理に戻る。一方、音源情報テーブル24aの取得位置が終端である場合(S52:Yes)、予測地点テーブル24bの記憶位置を1つ進める(S53)。具体的には、
図4(b)の予測地点テーブル24bにおいて、現在の記憶位置に対応する「No.」から1つ進めた位置を、次の記憶位置とする。
【0106】
S53の処理の後、予測地点テーブル24bの記憶位置が終端かどうかを確認する(S54)。具体的には、予測地点テーブル24bの各メモリのうち、いずれかの値が「(END)」である場合は、予測地点テーブル24bの記憶位置が終端であると判断する。予測地点テーブル24bの記憶位置が終端ではない場合は(S54:No)、S43の処理に戻る。一方、予測地点テーブル24bの記憶位置が終端である場合(S54:Yes)、本処理を終了し、
図5における騒音予測メイン処理へ戻る。
【0107】
図5に戻る。S4の騒音レベル予測処理の後、予測地点テーブル24bの予測騒音レベルメモリ24b3の値から騒音レベルの等値線図を作成し、地図画像に合成し、これをLCD27へ出力する(S5)。これにより、
図8(e)に示すような騒音の予測結果を表す画面がLCD27へ表示される。なお、等値線図の作成は公知の方法を使用する。
【0108】
以上説明したように、本実施形態における騒音予測プログラムは、地図画像上に配置された複数の工具や建設機械等の騒音源(即ち、工事騒音源)に加えて、工事の施工対象が新たな騒音源(即ち、構造物騒音源)となる場合は、構造物騒音源を工事騒音源とは別の騒音源として配置する。そして、地図画像上に、等間隔に設定された予測地点を配置し、その予測地点毎に、複数の工事騒音源および構造物騒音源の全てに対して、騒音レベルを予測し、その結果の等値線図を地図画像へ重ね合わせて表示する。このように、工事騒音源から発生する騒音の周囲への伝搬量に加えて、施工対象となる鋼構造物等が騒音源になった場合の構造物騒音源から発生する騒音の周囲への伝搬量をも予測し、これらを合成した騒音量を工事の騒音として出力する。よって、鋼構造物等を対象にした工事においても、工事騒音のシミュレーションをより的確に行うことができる。
【0109】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0110】
本実施形態において、騒音予測プログラムは橋梁工事、特にI桁1、箱桁2といった橋桁からの騒音を予測するものとした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、鉄骨工事、鉄塔工事、石油・ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門・水門等の門扉設置工事などの鋼構造物に対する工事を騒音予測の対象とするものとしてもよい。この場合は、これらの鋼構造物が工事対象(施工対象)とされた場合に発生する騒音を実測し、その実測値に基づいて、その鋼構造物がどのような音源サイズの構造物騒音源となっているのかを逆計算し、その音源長さデータと音源高データとして記憶したもの、即ち、I桁1におけるI桁用音源サイズテーブル23bに該当するテーブルを作成する。そして、音源情報入力処理(
図6参照)のS32の処理において、このテーブルを参照して鋼構造物の音源サイズを取得し、騒音レベル予測処理(
図7参照)における騒音レベルの算出に用いる。
【0111】
本実施形態においては、騒音予測プログラム23xをPC20のフラッシュメモリ23に記憶した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、騒音予測プログラム23xをROM22に記憶し、騒音予測プログラム23xのみを実行する専用装置に、本発明を適応するようにしてもよい。
【0112】
本実施形態において、騒音予測プログラム23xを利用可能な情報処理装置をPC20とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、携帯端末を騒音予測プログラムを利用可能な情報処理装置としてもよい。この場合、入力装置28として、マウスやキーボードの代わりにタッチパネルを用いてもよい。これにより、騒音源の再配置をした場合に、その騒音源の位置による騒音レベルの予測を、その場で行うことができる。よって、周囲への騒音の伝搬を考慮した、騒音源の配置を迅速に行うことができる。
【0113】
本実施形態において、騒音予測プログラム23xは、工事現場の周囲の多数地点について騒音量の予測計算を行って、その出力結果の等値線図を地図画像に合成して出力した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、地図画像の任意点を入力装置28で指定し、その地点での騒音レベルを「○○dB」と数値で表示するように構成してもよい。例えば、スマートフォンや処理能力の低い携帯型タブレットコンピュータで、騒音予測プログラム23xを実行する場合、等値線図を作成するために、工事現場の周囲の多数地点について騒音量の予測計算を行うと、予測計算に長時間を要してしまう。かかる場合に、地図画像の任意点を入力装置28で指定し、その地点での騒音レベルのみを予測計算するようにしても良い。該構成によれば、騒音量の予測計算をピンポイントで行うことができるので、騒音予測プログラム23xを処理能力の低いコンピュータで実行する場合においても、騒音量の予測計算を短時間で完了することができる。
【0114】
本実施形態において、外部入出力端子29を経由してPC20と他のコンピュータとを接続し、データを送受信する構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、LANや無線LAN経由でPC20と他のコンピュータとを接続してもよいし、インターネット経由で接続してもよい。この場合は、外部入出力端子29の代わりに、ネットワークインターフェイスや、無線LANインターフェイスをPC20の入出力ポート26に接続する。