特開2017-1997(P2017-1997A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-1997(P2017-1997A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】粉体化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20161209BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20161209BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20161209BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/31
   A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-119494(P2015-119494)
(22)【出願日】2015年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 里香子
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB322
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC242
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC422
4C083BB13
4C083BB26
4C083CC12
4C083CC14
4C083DD17
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】通常、粉体化粧料の塗布後に経時で起こる色変化やてかりと言った化粧崩れを抑制する粉体化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】スクワラン、流動パラフィン、ミリスチン酸オクチルデシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシルなどIOB値が0.1以下である油剤を、シリカなどの多孔質粉体にあらかじめ含浸させた油含浸多孔質粉体を粉体化粧料に配合することで、化粧崩れの原因である粉体原料の色変化や、てかりを抑制する粉体化粧料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めIOB値が0.1以下である油剤を含浸させた多孔質粉体を配合した粉体化粧料。
【請求項2】
多孔質粉体がシリカであることを特徴とする、請求項1に記載の粉体化粧料。
【請求項3】
多孔質粉体に対して、含浸させるIOB値が0.1以下である油剤の油量が10〜70質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の粉体化粧料。
【請求項4】
油含浸多孔質粉体を化粧料全体に対して1〜30質量%配合することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体化粧料に関する。より詳しくは、多孔質シリカ等の粉体に予め油分を含浸させた油含浸多孔質粉体を配合することで、塗布後の色変化やてかり等の化粧崩れを抑制する粉体化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション類は基本的には粉末、油剤、水の3成分のうち2種または3種を組み合わせて作られ、目的に応じて薬剤、乳化剤、保湿剤等を添加する。剤型はルースパウダー、プレストパウダーなどの粉末化粧料型やリキッドファンデーションやクリームファンデーションなどの乳化型など様々である。化粧膜中に存在する粉体原料は、皮膚の欠点をカバーし、美しく装う目的で使用されるため、使用中には長時間にわたり、皮膚上に留まるっていることが重要とされる。しかし、一般的に経時により、粉体原料は脱落したり、汗や皮脂に濡れることで化粧外観が変化する化粧崩れと言われる現象を引き起こす。
【0003】
そこで、粉体化粧料の化粧崩れを防止する技術として、粘着性高分子被膜を化粧膜上に形成させる技術や(特許文献1)、皮膚付着性の高いワックス基剤の化粧料への配合技術(特許文献2)など物理的脱着を防ぐ方法や、撥水撥油処理粉体を配合する方法(特許文献3)により皮脂の濡れを防ぐ方法がある。しかしながら、これら手段は、皮脂の除去を目的とした方法ではなく、あくまで化粧粉体の崩れを防止するだけであった。
【0004】
一般的に、ヒト皮脂中に存在する不飽和遊離脂肪酸が化粧膜中の粉体と濡れやすく、化粧崩れの原因であることが知られており、粘度鉱物の不飽和脂肪酸に対する特異的吸着特性を利用した化粧崩れ防止技術があるが、その効果は十分なものではなかった(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−60322号公報
【特許文献2】特開平07−187951号公報
【特許文献3】特開2003−146829号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本化粧品技術者会誌33(3)254−266(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、皮脂を吸着除去することで、粉体原料の色変化やてかり等の化粧崩れを防止する粉体化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題を解決すべく鋭意検討を加えたところ、予め多孔質シリカ等の粉体に対して非極性油剤を10〜70質量%含浸させた粉体を、化粧料全体に対して1〜30質量%配合した粉体化粧料に上記課題を解決する特性を見出したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明品は、吸油性に優れた多孔質シリカなどの粉体に予め油剤を含浸させた粉体を粉体化粧料に配合することで、配合しない場合と比較して、色変化やてかり等の化粧崩れを防止することが簡便にできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳述する。
本発明で用いられる油含浸多孔質粉体は、化粧料に配合する前に、あらかじめ油剤を含浸させた多孔質粉体であり、油剤を含浸させる方法としては特に限定されるものではなく、油剤と多孔質粉体を撹拌混合する方法などでも容易に含浸できる。
本発明に用いられる多孔質粉体としては、特に限定はされないが、平均粒子径が1〜50μm、比表面積が250〜1000m2/g、細孔容積が5mL/g以下、細孔直径が3〜50nm、吸油量は100〜400mL/100gの多孔質シリカが好ましく、市販品としてはサンスフェアHシリーズ(旭硝子株式会社製)などがある。
本発明に用いられる含浸させる油剤は、IOB値として0.1以下の油が好ましく、化粧品原料として汎用的に使用される炭化水素油などが挙げられる。具体的には、スクワラン、流動パラフィン、ミリスチン酸オクチルデシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシルなどが挙げられる。含浸させる油剤の量は、多孔質粉体質量に対して10〜70質量%が好ましい。
【0011】
さらに、本発明における粉体化粧料全体に対する、油含浸多孔質粉体の配合量は1.0〜30.0質量%であるが、好ましくは3.0〜15.0質量%である。この範囲であれば、化粧料の塗布時の色変化とてかりを効果的に抑制することができる。
また、本発明の粉体化粧料には、前記本発明の効果を損なわない範囲において、一般に化粧料に配合される各種任意成分、例えば油剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、顔料、その他の粉体、pH調整剤、薬効成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等を適宜配合することができる。
【0012】
本発明の粉体化粧料を調製する際は、粉体用ミキサーやプレス装置など通常の製造装置が使用できる。調製方法は、粉体用ミキサーで顔料やその他の粉体を攪拌混合し、必要であれば予め加温溶解したバインダーを加え、均一になるまで十分に攪拌し、必要であれば型に入れプレス成型する方法などが挙げられる。
さらに本発明の粉体化粧料とは、前述の油含浸多孔質粉体を必須成分として配合するものであり、形態としては特に限定されず、プレストパウダー、ルースパウダーのいずれも該当する。また用途としても特に限定されず、ボディパウダー、フェイスパウダー、ファンデーション、チーク、アイシャドウ、アイブロウなどが挙げられる。
次に本発明をより多くの実施例で詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
(1)油含浸多孔質粉体の調製
表1に示す処方に従って、多孔質粉体シリカと油剤を含浸させ、油含浸多孔質粉体(製造例1〜9)を調製した。

【表1】
【0014】
(2)プレストファンデーションの調製
表2、3に示す処方に従ってプレストファンデーションを調製した。各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型することでプレストファンデーションを得た。
【0015】
(3)色変化の評価
化粧品専門パネラー10名を用いて、調製したプレストファンデーションを塗布し、色差計(ミノルタ株式会社製COLOR READER CR-13)を用いて、塗布直後と6時間後の頬部のΔE値を評価した。
【0016】
(4)てかりの評価
化粧品専門パネラー10名を用いて、調製したプレストファンデーションの使用感(塗布6時間後のてかりにくさ)を評価した。評価は以下の4段階の基準に分類した。
◎:10名中8名以上が良好と感じた
○:10名中6〜7名が良好と感じた
△:10名中4〜5名が良好と感じた
×:10名中3名以下が良好と感じた

【表2】

【表3】
【0017】
(5)結果
油含浸多孔質粉体を配合した場合(発明品1〜9)は比較品1と比べ、ΔEは目視で差が分かるとされる1.5より低い値であり、色変化はほとんど確認されなかった。てかりに関する官能評価においても、優位に抑制されていた。また、多孔質粉体に油量を変更し含浸させた製造例1〜3を配合したプレストファンデーション(発明品1〜3)の物性には大きな差はなかった。
【実施例2】
【0018】
ルースパウダー
マイカ 100.0に調整(質量%)
製造例2の油含浸多孔質粉体 10.0
酸化亜鉛 5.0
顔料級二酸化チタン 10.0
ベンガラ 1.5
黄酸化鉄 4.5
黒酸化鉄 0.3
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型した。
(結果)実施例1と同様の評価を行ったところ、塗布6時間後の色変化とてかりは抑制されていた。
【実施例3】
【0019】
チークパウダー
タルク 100.0に調整(質量%)
製造例4の油含浸多孔質粉体 10.0
セリサイト 20.0
マイカ 5.0
二酸化チタン 5.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
流動パラフィン 4.0
2−エチルヘキサン酸セチル 1.5
着色料 適量
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型した。
(結果)実施例1と同様の評価を行ったところ、塗布6時間後の色変化とてかりは抑制されていた。
【実施例4】
【0020】
アイシャドウ
タルク 100.0に調整(質量%)
製造例5の油含浸多孔質粉体 10.0
セリサイト 20.0
マイカ 15.0
二酸化チタン 3.0
ステアリン酸亜鉛 3.0
流動パラフィン 4.0
2−エチルへキサン酸セチル 2.5
着色料 適量
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後にプレス成型した。
(結果)実施例1と同様の評価を行ったところ、塗布6時間後の色変化とてかりは抑制されていた。
【実施例5】
【0021】
粉おしろい
タルク 100.0に調整(質量%)
製造例1の油含浸多孔質粉体 10.0
セリサイト 10.0
カオリン 5.0
二酸化チタン 5.0
ステアリン酸亜鉛 5.0
炭酸マグネシウム 5.0
着色料 適量
防腐剤 適量
(調製方法)各成分をミキサーにて均一に混合し、メッシュを通した後に充填した。
(結果)実施例1と同様の評価を行ったところ、塗布6時間後の色変化とてかりは抑制されていた。