【解決手段】マイクロホン(1)のマイクロホンユニット(50)から出力される信号をフィルタリングする周波数フィルタ装置(F)であって、トランス(90)と、トランスの磁路に磁界を印加させる磁界印加部(102)と、を備え、トランスは、コイル(96)と、第1コア(93a)と、第2コア(93b)と、を備え、第1コアが形成する第1磁路(M1)の磁束は、第2コアが形成する第2磁路(M2)の磁束よりも大きく、磁界印加部は、第2磁路に磁界を印加することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるマイクロホン用周波数フィルタ装置とマイクロホンとの実施の形態について説明する。
【0013】
●マイクロホン●
先ず、本発明にかかるマイクロホンの実施の形態について説明する。
【0014】
●マイクロホンの構成
図1は、本発明にかかるマイクロホンの実施の形態を示す正面図である。
マイクロホン1は、音源(不図示)からの音波を収音する。マイクロホン1は、手持ち式マイクロホンである。
【0015】
図2は、
図1のマイクロホン1のAA線断面図である。
図3は、マイクロホン1の分解断面図である。
マイクロホン1は、グリップ筐体10と、ヘッドケース20と、ヘッドケース取付部材30と、取付ねじ40と、マイクロホンユニット(以下「ユニット」という。)50と、ユニットホルダ60と、第1弾性体70と、第2弾性体80と、トランス90と、スイッチ100と、出力コネクタ110と、ネームリング120と、を有してなる。
【0016】
以下の説明において、前方は、収音時にマイクロホン1が音源に向けられる側(
図2の紙面上側)の方向である。後方は、前方の反対側(
図2の紙面下側)の方向である。
【0017】
グリップ筐体10は、マイクロホン1のグリップとして機能する。グリップ筐体10は、例えば、真鍮などの金属製である。グリップ筐体10は、例えば、ダイカストで製造される。グリップ筐体10は、円筒状である。グリップ筐体10は、固定部11と、コネクタ収納部12と、スイッチ取付部13と、を備える。
【0018】
固定部11は、ヘッドケース取付部材30を固定する。固定部11は、グリップ筐体10の前端側に配置される。固定部11は、ねじ挿通孔11hを備える。ねじ挿通孔11hは、取付ねじ40が挿通される孔である。
【0019】
コネクタ収納部12は、出力コネクタ110を収納する。コネクタ収納部12は、グリップ筐体10の後端側に配置される。コネクタ収納部12の内径は、グリップ筐体10の他の部位の内径よりも小さい。コネクタ収納部12は、工具挿通孔12hを備える。工具挿通孔12hについては、後述する。
【0020】
スイッチ取付部13は、スイッチ100を前後方向(
図2の紙面上下方向)にスライド可能に支持する。スイッチ取付部13は、グリップ筐体10の前後方向のほぼ中央部に配置される。
【0021】
ヘッドケース20は、ユニット50を収納して、ユニット50を埃や風などから保護する。ヘッドケース20は、ケース部21とケース固定部22とを備える。
【0022】
ケース部21は、ユニット50を埃や風などから保護する。ケース部21は、例えば、鋼鉄製のアウターグリルと、金属メッシュ(不図示)と、ウレタンフォーム(不図示)との3層構造である。ケース部21は、後端に開口を有する樽状である。ケース固定部22は、ケース部21をヘッドケース取付部材30に固定する。ケース固定部22は、リング状である。ケース固定部22は、ケース部21の後端(開口端)に取り付けられる。ケース固定部22は、雌ねじ部22aを備える。雌ねじ部22aは、ケース固定部22の内周面に配置される。
【0023】
ヘッドケース取付部材30は、ヘッドケース20をグリップ筐体10に取り付ける。ヘッドケース取付部材30は、例えば、真鍮などの金属製である。ヘッドケース取付部材30は、有底円筒状である。ヘッドケース取付部材30は、雄ねじ部30aと雌ねじ孔30hとを備える。雄ねじ部30aは、ヘッドケース取付部材30の前端の外周面に配置される。雌ねじ孔30hは、ヘッドケース取付部材30の中央部の周壁に配置される。ヘッドケース取付部材30の底面31は、底面31の中央に支持孔31hを備える。支持孔31hは、ユニットホルダ60を支持する。
【0024】
取付ねじ40は、ヘッドケース取付部材30をグリップ筐体10に固定する。取付ねじ40は、例えば、皿小ねじである。
【0025】
ユニット50は、音源からの音波を収音して、収音した音波に応じた電気信号を出力する。ユニット50は、例えば、単一指向性のダイナミック型マイクロホンユニットである。
【0026】
なお、ユニット50の指向性は、単一指向性に限定されない。また、ユニット50の型は、ダイナミック型に限定されない。
【0027】
ユニットホルダ60は、ユニット50を保持すると共に、ユニットホルダ60の内部に後述する空気室Aを形成する。ユニットホルダ60は、例えば、真鍮などの金属製である。ユニットホルダ60は、前端が開口するほぼ有底円筒状である。ユニットホルダ60は、弾性体支持部61を備える。
【0028】
弾性体支持部61は、第2弾性体80を支持する。弾性体支持部61は円筒状である。弾性体支持部61は、ユニットホルダ60と一体である。弾性体支持部61は、ユニットホルダ60の底面から後方に突出する。弾性体支持部61は、ケーブル挿通孔61hを備える。ケーブル挿通孔61hは、ユニット50とトランス90とを電気的に接続するケーブル(不図示)が挿通される孔である。
【0029】
第1弾性体70は、グリップ筐体10(ヘッドケース取付部材30)からユニットホルダ60への振動の伝播を抑制する。第1弾性体70は、例えば、ゴムなどの弾性を有する合成樹脂製である。第1弾性体70は、リング状である。
【0030】
第2弾性体80は、グリップ筐体10(ヘッドケース取付部材30)からユニットホルダ60への振動の伝播を抑制する。第2弾性体80は、例えば、ゴムなどの弾性を有する合成樹脂製である。第2弾性体80は、ほぼリング状である。
【0031】
トランス90は、スイッチ100と共に、ユニット50からの電気信号のフィルタリングを行うフィルタであるマイクロホン用周波数フィルタ装置(以下「周波数フィルタ装置」という。)Fを構成する。フィルタリングとは、例えば、電気信号の所定帯域(例えば、低域)の周波数成分を劣化させる処理である。周波数フィルタ装置Fの構成や動作については、後述する。
【0032】
出力コネクタ110は、例えば、JEITA RC−5236「音響機器用ラッチロック式丸形コネクタ」に規定される出力コネクタである。出力コネクタ110は、円柱状の基台111と、接地用の1番ピン(不図示)と、信号のホット側の2番ピン112と、信号のコールド側の3番ピン113と、雄ねじ114と、を備える。
【0033】
基台111は、ねじ穴111hを備える。ねじ穴111hは、基台111の外周面に配置される。雄ねじ114は、ねじ穴111hに嵌め込まれる。1番ピンと2番ピン112と3番ピン113は、基台111を前後方向に貫通する。
【0034】
ネームリング120は、グリップ筐体10の固定部11と、取付ねじ40と、を覆って、マイクロホン1の外観の美感を高める。ネームリング120の材料は、例えば、金属である。ネームリング120の形状は、略円筒状である。
【0035】
●周波数フィルタ装置の構成
次に、本発明にかかる周波数フィルタ装置の実施の形態について説明する。
【0036】
周波数フィルタ装置Fは、ユニット50から出力される電気信号のフィルタリングを行う。周波数フィルタ装置Fは、例えば、入力信号の所定周波数(遮断周波数)より低い周波数成分を劣化させて、所定周波数より高い周波数成分を通すハイパスフィルタとして機能する。周波数フィルタ装置Fは、前述のとおり、トランス90とスイッチ100とにより構成される。
【0037】
図4は、トランス90の正面図である。
図5は、
図4のトランス90のB矢視の底面図である。
図4中の二点鎖線は、後述するコア93の磁路Mを示す。
【0038】
トランス90は、ユニット50からの電気信号を昇圧して、出力コネクタ110に出力する。トランス90は、コイルボビン91と、1次巻線(不図示)と、2次巻線92と、コア93と、を備える。コイルボビン91と1次巻線と2次巻線92とは、トランス90のコイル96を構成する。
【0039】
図6は、コイル96の正面図である。
図7は、
図6のコイル96のC矢視の底面図である。
コイルボビン91は、1次巻線と2次巻線92とが巻き回される芯材である。コイルボビン91は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂製である。コイルボビン91は、例えば、矩形筒状である。コイルボビン91は、孔(以下「中空部」という。)91hを備える。
【0040】
中空部91hは、コイルボビン91の軸方向(
図6の紙面上下方向)に沿って、コイルボビン91の中央に配置される。中空部91hは、底面視において矩形である。
【0041】
1次巻線は、コア93と共に、トランス90の入力側コイルを構成する。2次巻線92は、コア93と共に、トランス90の出力側コイルを構成する。1次巻線と2次巻線92とは、例えば、銅線である。
【0042】
コア93は、入力側コイルに入力された電気信号により発生した磁束の通路(以下「磁路」という。)Mを構成する。コア93は、
図4に示されるように、第1コア93aと第2コア93bとを備える。第1コア93aと第2コア93bとは、平面視において同じ矩形枠状である。第1コア93aの枠の一辺は、平面視において、第2コア93bの枠の一辺と共通する。コア93は、
図5に示されるように、複数の第1磁性材94と、複数の第2磁性材95と、から構成される。
【0043】
図8は、第1磁性材94の正面図である。
図9は、
図8の第1磁性材94のD矢視の底面図である。
【0044】
第1磁性材94は、第1コア93aと第2コア93bとを構成する。第1磁性材94は、例えば、透磁率の高い金属製である。第1磁性材94は、板状である。第1磁性材94は、正面視においてEの字状である。第1磁性材94は、ベース部94aと、ベース部94aから同一方向に延びる3つの脚部である第1脚部94bと第2脚部94cと第3脚部94dと、を備える。第1脚部94bの長さは、第2脚部94cの長さと第3脚部94dの長さと同じである。
【0045】
第1脚部94bは、ベース部94aの長手方向(
図8の紙面左右方向)の中央に配置される。第2脚部94cは、ベース部94aの長手方向の一端に配置される。第3脚部94dは、ベース部94aの長手方向の他端に配置される。第1脚部94bは、本発明における第1中央部である。第2脚部94cは、本発明における第11コア部である。第3脚部94dは、本発明における第12コア部である。
【0046】
図10は、第2磁性材95の正面図である。
図11は、
図10の第2磁性材95のE矢視の底面図である。
【0047】
第2磁性材95は、第1コア93aと、第2コア93bの一部と、を構成する。第2磁性材95は、例えば、透磁率の高い金属製である。第2磁性材95は、板状である。第2磁性材95は、正面視においてUの字状である。第2磁性材95は、ベース部95aと、ベース部95aから同一方向に延びる2つの脚部である第1脚部95bと第2脚部95cと、を備える。第1脚部95bの長さは、第2脚部95cの長さと同じである。
【0048】
第1脚部95bは、ベース部95aの長手方向(
図10の紙面左右方向)の一端に配置される。第2脚部95cは、ベース部95aの長手方向の他端に配置される。第1脚部95bは、本発明における第2中央部である。第2脚部95cは、本発明における第21コア部である。
【0049】
第1磁性材94の第1脚部94bと第2脚部94cとの間の距離L1は、第1磁性材94の第1脚部94bと第3脚部94dとの間の距離L2と、第2磁性材95の第1脚部95bと第2脚部95cとの間の距離L3と、同じである。
【0050】
スイッチ100は、
図3に示されるように、スライド式のスイッチである。スイッチ100は、本体部101と磁石102とを備える。トランス90とスイッチ100との位置関係については、後述する。
【0051】
本体部101は、例えば、真鍮などの金属製である。本体部101は、磁石102を収納する収納部101aを備える。
【0052】
磁石102は、コア93の磁路Mに磁界(直流磁界)を印加させる。磁石102は、本発明における磁界印加部の例である。磁石102は、例えば、永久磁石である。磁石102は、本体部101の収納部101aに収納される。
【0053】
なお、磁石は、コア93の磁路Mに磁界を発生させればよく、永久磁石に限定されない。
【0054】
●トランスの組立方法
次に、トランス90の組立方法について、
図4と
図5とを参照して説明する。
【0055】
コイル96は、1次巻線と2次巻線92とがコイルボビン91に巻き回されることで、組み立てられる。コイル96は、コイルボビン91の中空部91hを備える。1次巻線は、コイルボビン91の外周面を囲むように配置される。2次巻線92は、1次巻線の外側を囲むように配置される。
【0056】
コア93は、例えば、8枚の第1磁性材941−948と、6枚の第2磁性材951−958と、が積層されて構成される。
【0057】
第1磁性材941−948と第2磁性材951−956とは、コイル96に取り付けられる。第1磁性材941−948の第1脚部941b−948b(偶数番は不図示)は、コイル96の中空部91h内に、中空部91hの両端側から交互に挿通される。第2磁性材951−956の第1脚部951b−956b(偶数番は不図示)は、コイル96の中空部91h内に、中空部91hの両端側から交互に挿通される。
【0058】
第1磁性材941−948は、2枚を一対として、互いに向きを変えて積層される。第1磁性材941−948は、正面視において、並列に配置された2つの矩形状の閉磁路を形成する。
【0059】
第2磁性材951−956は、2枚を一対として、互いに向きを変えて積層される。第2磁性材951−956は、正面視において、矩形状の閉磁路を形成する。正面視において、第2磁性材951−956が形成する閉磁路の形状は、第1磁性材941−948が形成するいずれの閉磁路の形状とも同じである。
【0060】
一対の第1磁性材94は、一対の第2磁性材95と交互に積層される。
【0061】
第1磁性材941−948の第2脚部941c−948c(偶数番は不図示)と第2磁性材951−956の第2脚部951c−956c(偶数番は不図示)とは、中空部91hの貫通方向(
図5の紙面垂直方向)に直交する方向(
図5の紙面左右方向)におけるコイル96の一側方(以下「一側方」という。)に配置される。一方、第1磁性材941−948の第3脚部941d−948dは、コイル96の一側方の反対側の側方(以下「他側方」という。)に配置される。
【0062】
第1磁性材941−948のベース部941a−948aと第1脚部941b−948bと第2脚部941c−948cとは、第2磁性材951−956のベース部951a−956aと第1脚部951b−956bと第2脚部951c−956cと共に、第1コア93aを構成する。すなわち、第1コア93aは、第1磁性材94と第2磁性材95とが積層されて構成される。
【0063】
第1磁性材941−948のベース部941a−948aと第1脚部941b−948bと第3脚部941d−948dは、第2磁性材951−956のベース部951a−956aと第1脚部951b−956bと共に、第2コア93bを構成する。すなわち、第2コア93bは、第1磁性材94と、第2磁性材95の一部と、が積層されて構成される。
【0064】
第1コア93aと第2コア93bとは、中空部91hの貫通方向に直交する方向に並んで配置される。第2コア93bは、第1コア93aと比較して、第1磁性材94と第2磁性材95との積層方向(
図5の紙面上下方向)において隙間がある(歯抜け状である)。すなわち、第1コア93aが形成する磁路(以下「第1磁路」という。)M1は、第2コア93bが形成する磁路(以下「第2磁路」という。)M2と比較して、広い。つまり、第1磁路M1は、中空部91hに対して第2磁路M2とは非対称である。
【0065】
前述のとおり、第2磁路M2は、第1磁路M1よりも狭い。そのため、第2磁路M2の磁気抵抗は、第1磁路M1の磁気抵抗より大きい。すなわち、第1磁路M1の磁束は、第2磁路M2の磁束よりも大きい。
【0066】
なお、コアを構成する第1磁性材94と第2磁性材95の構成は、第1磁路と第2磁路とが非対称であれば、本実施の形態の枚数や積層順に限定されない。すなわち、例えば、複数の第1磁性材94と複数の第2磁性材95とは、交互に積層されずに、それぞれまとめて積層されてもよい。また、第1磁性材94と第2磁性材95の数は、第1磁路と第2磁路とが非対称であればよく、本実施の形態の数に限定されない。
【0067】
●マイクロホンの製造方法
次に、マイクロホン1の製造方法について、
図2と
図3とを参照して、説明する。
【0068】
先ず、ユニット50と第1弾性体70と第2弾性体80とが、ユニットホルダ60に取り付けられる。ユニット50の後端は、ユニットホルダ60の前端に嵌合される。ユニットホルダ60の内部において、ユニット50の後端とユニットホルダ60とにより空気室Aが形成される。
【0069】
第1弾性体70は、ユニットホルダ60の外周面に取り付けられる。第2弾性体80は、ユニットホルダ60の弾性体支持部61の外周面に取り付けられる。
【0070】
次いで、ユニットホルダ60がヘッドケース取付部材30に取り付けられる。ユニットホルダ60は、ヘッドケース取付部材30の前方からヘッドケース取付部材30の内側に挿入される。ユニットホルダ60の弾性体支持部61は、ヘッドケース取付部材30の支持孔31hに挿通される。ヘッドケース取付部材30の内周面とユニットホルダ60の外周面との間には、第1弾性体70が配置される。支持孔31hと弾性体支持部61との間には、第2弾性体80が配置される。すなわち、ユニットホルダ60は、第1弾性体70と第2弾性体80とにより、防振支持される。
【0071】
次いで、トランス90とスイッチ100と出力コネクタ110とがグリップ筐体10に取り付けられる。
【0072】
トランス90は、グリップ筐体10の前端側から、グリップ筐体10に収納される。トランス90は、例えば、不図示の固定部材によりグリップ筐体10の前後方向の中央に、第1コア93aを前方(
図2の紙面上方)に向けて固定される。
【0073】
スイッチ100は、グリップ筐体10のスイッチ取付部13に前後方向(
図2の紙面上下方向)に移動可能に取り付けられる。磁石102の一方の磁極は、スイッチ取付部13に面する。スイッチ100の移動方向は、トランス90の中空部91hの貫通方向(
図2の紙面左右方向)に直交する方向である前後方向(
図2の紙面上下方向)である。
【0074】
第1コア93aと磁石102との距離は、第2コア93bと磁石102との距離よりも長い。
【0075】
スイッチ100がスイッチ取付部13の前端に位置するとき(スイッチ100がONのとき)、磁石102は、グリップ筐体10の長手方向(
図2の紙面上下方向)において、第2コア93bの側方に配置される。スイッチ100がスイッチ取付部13の後端に位置するとき(スイッチ100がOFFのとき)、磁石102は、グリップ筐体10の長手方向において、第2コア93bの後方に配置される。
【0076】
第2コア93bと磁石102との距離は、スイッチ取付部13におけるスイッチ100の位置により可変する。第2コア93bと磁石102との距離は、スイッチ100がスイッチ取付部13の前端(ON)から後端(OFF)へ移動するに連れて遠ざかる。すなわち、スイッチ100がOFFのとき、磁石102は、第2コア93bから最も離れる。
【0077】
このように、磁路が非対称に形成されたトランス90と、スイッチ100と、により、周波数フィルタ装置Fが構成される。
【0078】
出力コネクタ110は、グリップ筐体10の後端側からコネクタ収納部12に収納される。出力コネクタ110がコネクタ収納部12に収納された後、予めねじ穴111hに嵌め込まれた雄ねじ114は、工具挿通孔12hに挿入されたドライバなどによりねじ穴111hから引き出されて、グリップ筐体10の内周面に当接する。その結果、出力コネクタ110は、グリップ筐体10に固定される。
【0079】
ここで、トランス90は、不図示のケーブルによりユニット50と出力コネクタ110とに接続される。
【0080】
次いで、ヘッドケース取付部材30がグリップ筐体10に取り付けられる。ヘッドケース取付部材30は、グリップ筐体10前端側からグリップ筐体10の固定部11に挿入される。取付ねじ40は、グリップ筐体10のねじ挿通孔11hに挿通されて、ヘッドケース取付部材30の雌ねじ孔30hに嵌め込まれる。
【0081】
次いで、ネームリング120がグリップ筐体10の固定部11の外周面に取り付けられる。取付ねじ40は、ネームリング120により外部から隠される。
【0082】
次いで、ヘッドケース20がグリップ筐体10の前方からヘッドケース取付部材30に取り付けられる。ヘッドケース20のケース固定部22の雌ねじ部22aは、ヘッドケース取付部材30の雄ねじ部30aに嵌め込まれる。ユニット50は、ヘッドケース20の内部に配置される。
【0083】
●周波数フィルタ装置の動作
次に、周波数フィルタ装置Fの動作について、説明する。
【0084】
図12は、スイッチ100がONのときの周波数フィルタ装置Fの模式図である。
図13は、スイッチ100がOFFのときの周波数フィルタ装置Fの模式図である。
図12と
図13とにおいて、楕円矢印は、スイッチ100が備える磁石102の磁界(磁束)を示す。
【0085】
スイッチ100がONのとき、磁石102は、第2コア93bの歯抜け状の部分(第2磁路M2の狭い部分)の側方に配置される。磁石102の一方の磁極は、スイッチ取付部13を介して、第2コア93bの歯抜け状の部分と対向する。このとき、磁石102からの直流磁界が、第2コア93b(第2磁路M2)に印加される。そのため、第2コア93bが形成する第2磁路M2は、第2磁路M2の狭い部分において、磁石102から印加された直流磁界により磁気的に飽和する。その結果、トランス90の低域の周波数応答は、劣化する。
【0086】
スイッチ100をONからOFFに移動させる、すなわち、磁石102を第2コア93bから遠ざけると、第2コア93bと磁石102との距離に応じて、磁石102から第2コア93bに印加される直流磁界の磁束密度は減少する。つまり、トランス90の低域の周波数応答の劣化は、磁石102と第2コア93bとの距離が遠ざかるに連れて、回復する。
【0087】
スイッチ100がOFFのとき、磁石102からの直流磁界は、第2磁路M2にほとんど印加されない。すなわち、スイッチ100がOFFのとき、トランス90の低域の周波数応答の劣化は、少ない。
【0088】
このように、磁石102から第2コア93bに印加される直流磁界の磁束密度は、第2コア93bと磁石102との距離を調節することにより調節される。
【0089】
ユニット50から出力された電気信号は、トランス90を介して出力コネクタ110からアンプなどの外部機器に出力される。トランス90の低域の周波数応答が劣化すると、ユニット50から出力された電気信号の周波数応答は、トランス90において所定の周波数より低域で劣化する。この電気信号の周波数応答の劣化が始まるローカットのカットオフ周波数(以下「ローカット周波数」という。)は、第2コア93bと磁石102との距離に依存する。すなわち、ローカット周波数は、第2コア93bと磁石102との距離が近くなるに連れて、高くなる。
【0090】
前述のとおり、スイッチ100は、前後方向に移動可能である。すなわち、第2コア93bと磁石102との距離は、連続的に変更可能である。つまり、周波数フィルタ装置Fは、ローカット周波数を連続的に可変させる。
【0091】
図14は、スイッチ100をONからOFFまで移動させたときの、マイクロホン1の周波数応答のグラフである。同図は、スイッチ100をOFFからONまで4段階に変化させたときのマイクロホン1の周波数応答を示す。符号「a」は、スイッチ100がOFFのときのマイクロホン1の周波数応答を示す。符号「b」「c」「d」は、スイッチ100がOFFからONへ段階的に移動したときのマイクロホン1の周波数応答を示す。磁石102から第2コア93bに印加される直流磁界の磁束密度は、符号「b」「c」「d」の順に増加する。
【0092】
ローカット周波数は、磁石102から第2コア93bに印加される直流磁界の磁束密度に応じて可変する。磁石102から第2コア93bに印加される直流磁界の磁束密度が高いとき(符号「d」のとき)、ローカット周波数は、例えば、350Hzである。磁石102から第2コア93bに加えられる直流磁界の磁束密度が低いとき(符号「b」のとき)、ローカット周波数は、例えば、45Hzである。
【0093】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、周波数フィルタ装置Fは、磁束が異なる2つのコア93a、93bを備える(磁路M1、M2が非対称に構成される)トランス90と、トランス90に直流磁界を印加する磁石102とを有してなる。そのため、トランス90の磁束が小さい側の第2コア93bが形成する第2磁路M2は、磁石102から印加された直流磁界により飽和する。その結果、トランス90の低域の周波数応答は、劣化する。
【0094】
また、磁石102は、第1コア93aと第2コア93bとが並んで配置される方向に移動可能である。そのため、第2コア93bと磁石102との距離の調節は、容易である。
【0095】
さらに、スイッチ取付部13におけるスイッチ100の位置を移動させることで、第2コア93bと磁石102との距離は、連続的に変わる。すなわち、トランス90のローカット周波数は、連続的に変わる。
【0096】
さらにまた、トランス90のコア93は、Eの字状の第1磁性材94と、Uの字状の第2磁性材95と、の2種類の磁性材が積層されて構成される。コア93は、第1磁性材94と第2磁性材95とから構成される第1コア93aと、第1磁性材94と第2磁性材95の一部とから構成される第2コア93bと、から構成される。そのため、本発明にかかる周波数フィルタ装置は、従来のEX型の積層コアの構成の一部を変更するという簡易な構成で、磁路Mの一部を狭くすることができる。
【0097】
さらにまた、第1コア93aと磁石102との距離は、第2コア93bと磁石102との距離よりも長い(遠い)。そのため、磁石102は、第1磁路M1よりも狭い第2磁路M2に効率的に直流磁界を印加することができる。
【0098】
このように、本発明にかかる周波数フィルタ装置は、簡易な構成で、容易、かつ、連続的にローカット周波数を変えることができる。
【0099】
また、本発明にかかるマイクロホンは、本発明にかかる周波数フィルタ装置を備える。そのため、本発明にかかるマイクロホンは、簡易な構成で、容易、かつ、連続的にローカット周波数を変えることができる。