【解決手段】アンテナ装置10Aは、コア20Aおよびコイル50Aの外周側に配置される平板状の渦電流発生手段を備え、渦電流発生手段が存在しない一方でコイル50Aを備えるとした場合にコイル50Aによる共振のピークの鋭さを表す第1Q値は、導線51Aの抵抗値の温度変化に基づいて温度上昇と共に減少し、渦電流発生手段を備えるとした場合にその渦電流発生手段による共振のピークの鋭さを表す第2Q値は、渦電流発生手段の抵抗値の温度変化に対応した電流変動によって温度上昇と共に増加する。また、コイル50Aと渦電流発生手段とに基づく共振のピークの鋭さを表す調整Q値の温度上昇における増減率は、第1Q値の温度上昇における増減率および第2Q値の温度上昇における増減率よりも小さい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、アンテナ装置10Aについて、図面を参照しながら説明する。
【0020】
また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明することがある。そのうち、X方向はアンテナ装置10Aの長手方向とし、X1側は後述するコネクタ接続部40Aが位置する側とし、X2側はそれとは逆側とする。また、Z方向はアンテナ装置10Aの厚み方向とし、Z1側は
図2における上側とし、Z2側は
図2における下側とする。また、Y方向はXZ方向に直交する方向(幅方向)とし、Y1側は
図1における右手前側とし、Y2側はそれとは逆の奥左側とする。
【0021】
<アンテナ装置10Aの全体構成について>
図1は、アンテナ装置10Aの全体構成を示す斜視図である。
図2は、アンテナ装置10Aのうち、コイル50Aを除去した状態を示す斜視図である。
図3は、アンテナ装置10Aの構成を示す側面断面図である。
図1から
図3に示すように、アンテナ装置10Aは、コア20Aと、ボビン体30Aと、コイル50Aと、接続端子60Aと、銅テープ巻回部70Aと、ケース90Aと、を主要な構成要素としている。
【0022】
図2および
図3に示すように、コア20Aは、磁性材料から形成されると共に、X方向に長い長尺状(棒状)に設けられている。また、コア20Aは、正面から見たときの断面を矩形状としている。なお、コア20Aは、その材質を磁性材としているが、磁性材としては、例えば、ニッケル系のフェライトまたはマンガン系のフェライト等の種々のフェライト、パーマロイ、センダスト等、各種の磁性材料および各種の磁性材料の混合物を用いることが可能である。
【0023】
また、
図2に示すように、コア20Aの外周側には、ボビン体30Aのボビン部31Aが取り付けられている。このボビン体30Aは、その材質を絶縁性に優れた熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とするのが好ましい。なお、ボビン体30Aを構成する材質の一例としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が挙げられるが、その他の樹脂を材質としても良い。また、ボビン体30Aは、半田付けや溶接加工などにより熱ダメージを受ける場合があることに鑑みて、耐熱性樹脂を用いることが更に好ましい。
【0024】
図4は、ボビン体30Aの構成を示す斜視図である。
図1から
図4に示すように、ボビン体30Aは、ボビン部31Aと、端子取付部35Aと、コネクタ接続部40Aとが設けられている。ボビン部31Aには、巻枠部32Aと、仕切部33Aと、コア挿入部34Aが設けられている。
【0025】
巻枠部32Aは、筒形状としても良いが、本実施の形態では、適宜打ち抜いた形状に設けられている。具体的には、
図4に示すように、側壁部32A1は残しつつ、天面32A2側(上方側;Z1側)および底面32A3側(下方側;Z2側)に、打ち抜き部分32A4やスリット32A5を設ける構成となっている。特に、スリット32A5は、長手方向(X方向)の他端側(X2側)に設けられている。また、スリット32A5の他端側(X2側)は開放した状態となっている。したがって、巻枠部32Aに導線51Aを所定の張力を付与する状態で巻き付けると、コア挿入部34Aに挿入されているコア20Aが巻締めされることで、コア20Aを部分的に保持する。
【0026】
また、ボビン部31Aには、仕切部33Aも設けられている。仕切部33Aは、コイル50Aの密巻線部53Aと、疎巻線部54Aとを区切るための部分である。
図4に示す構成では、仕切部33Aは、たとえば側壁部32A1を突出させた突起状の部分となっているが、巻枠部32Aの天面32A2や底面32A3側を突出させるようにしても良い。
【0027】
また、コア挿入部34Aは、ボビン部31Aを長手方向(X方向)に貫く穴状の部分であり、コア20Aが挿入される部分となっている。なお、コア挿入部34Aに面する側壁部32A1の内壁側には、コア20Aに当接するコア保持突起32A6が設けられている。コア保持突起32A6の個数は、幾つ設けられていても良いが、
図4に示す構成では、コア挿入部34Aの長手方向(X方向)の一方寄りの部分(X1側)に設けられている。このコア保持突起32A6と、他端側(X2側)における導線の巻締めによるボビン部31Aの内壁とにより、コア20Aがコア挿入部34A内で保持された状態となっている。
【0028】
また、端子取付部35Aは、接続端子60A(
図1および
図2参照)が取り付けられる部分となっている。端子取付部35Aには、上下方向に貫通している開口部35A1が設けられていて、この開口部35A1に、一対の接続端子60Aの絡げ部62Aが露出している。それぞれの絡げ部62Aには、コイル50Aの導線51Aの端末が絡げられ、その絡げ後に、半田付け等によって、コイル50Aと接続端子60Aとが電気的に接続されている。
【0029】
なお、端子取付部35Aとコア挿入部34Aとを区切るために、端子取付部35Aの他端側(X2側)には、隔壁35A2が設けられている。この隔壁35A2にコア20Aが突き当たることにより、コア挿入部34A内においてコア20Aが位置決めされる。
【0030】
ここで、端子取付部35Aには、たとえばコンデンサや抵抗等を実装している基板を取り付ける構成としても良い。基板を取り付ける場合には、絡げ部62A等のような接続端子60Aの一部が、基板を貫き、その貫いた部分で半田付けされる等により、基板の導体パターンと接続端子60Aとが電気的に接続される状態となる。なお、基板を端子取付部35Aに取り付ける場合、端子取付部35Aに対して基板が嵌合される構成とするのが好ましい。
【0031】
また、端子取付部35Aには、コネクタ接続部40Aが連続的に設けられている。本実施の形態では、コネクタ接続部40Aは、長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)に沿うように設けられている。このコネクタ接続部40Aは、有底のコネクタ穴(図示省略)を有していて、そのコネクタ穴の一端側(Y1側)は、仕切壁部41Aで仕切られている。
【0032】
ここで、
図4に示すように、仕切壁部41Aには、幅方向(Y方向)に延伸する端子孔42Aが設けられていて、この端子孔42Aには、接続端子60Aが差し込まれている。したがって、端子孔42Aに挿し込まれた接続端子60Aは、コネクタ穴に突出することを可能としている。なお、本実施の形態では、接続端子60Aは一対設けられているので、端子孔42Aも一対存在している。しかしながら、端子孔42Aの個数は、接続端子60Aの個数に応じて、適宜変更することが可能である。
【0033】
また、コネクタ穴の内部に突出している接続端子60Aには、このコネクタ穴に差し込まれる外部のコネクタが電気的に接続される。それにより、後述するコイル50A等に電流を導通させることが可能となっている。
【0034】
次に、コイル50Aについて説明する。
図5は、ボビン部31Aのうち、コイル50Aが巻回されている部分を示す平面図である。
図5に示すように、巻枠部32Aに導線51Aを巻回することによりコイル50Aが形成されている。本実施の形態では、導線51Aは、従来のアンテナ装置で用いられる導線と比較して、直径が小さいものとなっている。具体的には、従来のアンテナ装置においては直径が0.26mmが適正な導線の直径であるとした場合に、導線51Aは、その適正な直径よりも大幅にサイズが小さい、直径が0.08mmとするものがある。この直径の小さな導線51Aを用いる場合、コアを備える直列共振回路に抵抗素子が直列接続された構成(従来構成)と比較して、その抵抗素子の抵抗値の少なくとも一部(100%の抵抗値でも良いが、それより小さい抵抗値であるが従来構成のコイルの導線よりも大きな抵抗値でも良い)を有するように直径が減じられている。
【0035】
なお、直径の小さな導線51Aは、0.08mmを直径とする場合には限られず、従来のアンテナ装置よりも直径が小さければ、どのような値であっても良い。たとえば、従来のアンテナ装置の直径が0.26mmよりも十分に大きい場合には、導線51Aの直径は、0.26mm以下でも良いが、0.26mmを超えていても良い。なお、好ましい導線51Aの直径としては、たとえば0.1mm以下とする場合がある。
【0036】
ここで、アンテナ装置10Aは、銅テープ巻回部70Aが存在する構成とすることもできるが、銅テープ巻回部70Aが存在しない構成とすることもできる。銅テープ巻回部70Aが存在しない構成の場合、Q値およびL値は、以下の式(1)、式(2)によって求められる。
Q=(1/R)×(√L/C)…式(1)
L=k×μ
0 ×π×a
2 ×n
2 /b…式(2)
ここで、kは長岡定数、μ
0は透磁率、n
2はコイルの半径の2乗、n
2はコイルの巻数の2乗、bはコイルの長さを表す。
【0037】
上述の式(1)および式(2)より、アンテナ装置10Aにおいて、銅テープ巻回部70Aが存在しない構成においては、導線51Aの直径を小さくすることによって、従来のアンテナ装置と同等以上のインダクタンス値Lを確保しながらも、共振のピークの鋭さを表すQ値を、アンテナ装置10Aが組み込まれるシステムに合わせて下げることが可能となる。このような、Q値を下げるような調整は、従来の構成では、特許文献1に開示のように、抵抗素子を実装することにより実現している。しかしながら、本実施の形態では、抵抗素子を実装することなく、Q値を下げることが可能となる。
【0038】
図5に示すように、コイル50Aには、密巻線部53Aと、疎巻線部54Aとが設けられている。密巻線部53Aは、コイル50Aのうち巻枠部32Aの長手方向(X方向)の一方側(X1側;端子取付部35A側)に巻回されている部分である。一方、疎巻線部54Aは、仕切部33Aを境として、その仕切部33Aから巻枠部32Aの長手方向(X方向)の他方側(X2側)に亘って巻回されている部分である。
【0039】
図5に示す構成では、密巻線部53Aと疎巻線部54Aでは、導線51Aを2層巻回した構成となっており、たとえば巻枠部32Aの長手方向(X方向)の一端側(X1側)から巻回を開始して、巻枠部32Aの他端側(X2側)に到達した後に、再び一端側(X1側)まで巻回しながら到達するような状態となっている。したがって、下層(第1層)の導線51Aと上層(第2層)の導線51Aとは、交差する(クロスする)状態となっている。しかしながら、密巻線部53Aと疎巻線部54Aとは、2層の巻回には限られず、たとえば4層や6層のように幾層巻回しても良い。
【0040】
なお、巻枠部32Aの他端側(X2側)には、導線51Aの位置ずれおよび保持するための係止手段が存在する構成としても良い。この係止手段により、巻枠部32Aの他端側(X2側)で導線51Aが係止されることで、下層(第1層)の導線51Aと上層(第2層)の導線51Aとが、良好に交差する(クロスする)状態を実現しても良い。また、下層(第1層)の導線51Aと上層(第2層)の導線51Aとは、ボビン体30Aの長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)に対して、3度〜177度の範囲内の角度で交差する構成とすることができる。この角度範囲内であれば、上層(第2層)の導線51Aが、隣り合う下層(第1層)の導線51Aの間の凹部に落ち込んだままの状態とならずに済み、インダクタンス値の調整を行い易い状態となる。
【0041】
図5から明らかなように、疎巻線部54Aは、密巻線部53Aと比較して、巻線密度が低い部分となっている。すなわち、疎巻線部54Aにおける単位長さ当たりの導線51Aの巻回の回数は、密巻線部53Aと比較して少なくなっている。したがって、疎巻線部54Aにおいては、隣り合う導線51Aと導線51Aの間には、比較的大きな隙間S1が存在している。
【0042】
ここで、疎巻線部54Aにおいては、既に存在している下層の導線51Aの外側に、上層の導線51Aが隙間S1を有する状態で存在している。したがって、疎巻線部54Aでは、隙間S1の間隔を狭くするように導線51Aを移動させることにより、インダクタンスの調整を行うことを可能としている。
【0043】
また、下層の導線51Aと上層の導線51Aとは、交差する(クロスする)状態で巻回されているので、上層の導線51Aは、下層の導線51Aに対して、移動させ易い状態となっている。この様子を、
図6および
図7に示す。
図6は、本実施の形態に係るアンテナ装置10Aにおける下層の導線51Aと上層の導線51Aの巻回状態を拡大して示す平面図である。
図7は、比較例としてのアンテナ装置における下層の導線と上層の導線の巻回状態を拡大して示す平面図である。
【0044】
図6に示すように、下層の導線51Aと上層の導線51Aとが交差する(クロスする)状態のとき、上層の導線51Aは、隣り合う下層の導線51Aの間の凹みに落ち込むことが少なく、その下層の導線51Aに載置されたままスライドする。このとき、上層の導線51Aは、下層の導線51Aに対して接触面積が少ない状態で、スライドする。
【0045】
一方、
図7に示すように、下層の導線51Aと上層の導線51Aとは、交差せずに同じ向きに巻回されている場合、上層の導線51Aは、隣り合う下層の導線51Aの間の凹みに落ち込んだ状態となりがちとなる。そして、隣接する上層の導線51Aも、同様に凹みに落ち込んだ状態となっている。したがって、上層の導線51Aを下層の導線51Aに対してスライドさせる場合、対象となる上層の導線51Aと、隣接部位を含む周囲の上層の導線51Aに対して、凹みから下層の導線51Aの頂部へと持ち上げる必要があり、非常にスライドさせにくい状態となっている。
【0046】
なお、コイル50Aは、このような構成には限られない。たとえば、密巻線部53Aのみが存在する構成としても良い。また、コイル50Aは、疎巻線部54Aのみが存在するように構成しても良い。
【0047】
次に、接続端子60Aについて説明する。
図1から
図3に示す接続端子60Aは、金属製の端子に対してプレス成形を行い略L字形状に形成したものである。この接続端子60Aは、外観が略L字形状をなすように設けられている。この略L字形状をなすために、接続端子60Aは、その途中部分で略直角をなすように折り曲げられている。このような略L字形状の接続端子60Aには、差込片部61Aと絡げ部62Aとが設けられている。これらのうち、差込片部61Aは、接続端子60Aのうち幅方向(Y方向)に延伸する部分であり、上述したコネクタ接続部40Aのコネクタ穴に突出する部分である。また、絡げ部62Aは、上下方向(Z方向)に延伸する部分である。この絡げ部62Aは、導線51Aの端末が絡げられる部分となっている。
【0048】
次に、銅テープ巻回部70Aについて説明する。銅テープ巻回部70Aは、渦電流発生手段および巻回部に対応する。この銅テープ巻回部70Aは、銅箔層を備える銅テープをコイル50Aの外周側に巻回することで形成される部分である。なお、銅テープは、金属層を備えるフィルム状部材に対応する。
図1に示すように、本実施の形態のアンテナ装置10Aでは、銅テープ巻回部70Aは、コア20Aの長手方向(X方向)の両端寄りの部位において、コイル50Aの外周側を覆うように取り付けられている。この構成を採用する場合、銅テープ巻回部70Aが存在しない構成と比較して、Q値自体は低下するものの、広帯域化することが可能となっている。
【0049】
なお、コア20Aの長手方向(X方向)の両端寄りの部位とは、コア20Aの両端を含む部位でも良く、コア20Aの両端を含まないがその近傍であっても良い。
【0050】
ところで、コア20Aの長手方向(X方向)の両端付近は、コア20Aの内部を通過する磁束が外部に出る部分となっている。そのため、コア20Aの両端付近に銅テープ巻回部70Aが存在する場合、その銅テープ巻回部70Aには、磁束によって渦電流が発生する。
【0051】
ここで、渦電流が発生すると、銅テープ巻回部70Aにおいて温度上昇が生じる。ここで、銅を材質とする導体では、温度が上昇すると、抵抗が増大していく。したがって、銅テープ巻回部70Aにおいて温度上昇が生じると、温度上昇に応じて電流が流れ難くなっていく。そのため、渦電流が減少することになり、渦電流損失が小さくなる。一方、渦電流損失が大きい場合よりも、小さい場合の方が、Q値は高くなる。
【0052】
ここで、アンテナ装置10Aにおいて、銅テープ巻回部70Aを設ける一方で、導線51Aは従来と同等の構成を考える(後述するアンテナ装置12Aに対応)。この場合、温度上昇に伴う銅テープ巻回部70Aの抵抗増大によって渦電流損失が減少し、それに伴ってQ値が大きくなる。一方、アンテナ装置10Aにおいて、上述のように直径の小さな導線51Aによってコイル50Aが形成されているものの銅テープ巻回部70Aが存在しない構成を考える(後述するアンテナ装置11Aに対応)。この場合、温度上昇により、導線51Aの抵抗が増大するので、式(1)よりQ値が小さくなっていく。
【0053】
ここで、アンテナ装置10Aにおいては、直径の小さな導線51Aによってコイル50Aを形成すると共に、コア20Aの長手方向(X方向)の両端付近に、銅テープ巻回部70Aが存在する構成としている。このときのQ値の温度変化について、
図8に示す。
図8は、Q値と温度の関係を示す図である。なお、
図8においては、本実施の形態のアンテナ装置10AにおけるQ値(調整Q値に対応)の変化を実線で示している。また、直径の小さな導線51Aによってコイル50Aが形成されているものの銅テープ巻回部70Aが存在しないアンテナ装置11AにおけるQ値(第1Q値に対応)の変化を一点鎖線で示している。また、銅テープ巻回部70Aを設ける一方で、導線51Aが従来と同等のアンテナ装置12AにおけるQ値(第2Q値に対応)の変化を二点鎖線で示している。
【0054】
図8に示すように、本実施の形態のアンテナ装置10Aでは、アンテナ装置11Aとアンテナ装置12Aのような温度変化を示すQ値を合算したような状態で、Q値が変化する。したがって、アンテナ装置10Aにおいては、温度上昇が生じても、Q値が変動し難い状態となっているか、または、アンテナ装置11Aおよびアンテナ装置12AにおけるQ値の変動よりも小さなQ値の変動とすることができる。
【0055】
なお、
図8において実線で示すQ値は、銅テープ巻回部70Aを取り付ける位置や、銅テープ巻回部70Aの面積によって調整することも可能であり、また、導線51Aの直径を選定することによっても調整することが可能である。
【0056】
また、
図8に示す状態では、20度のときのQ値を基準とすると、−40度から+85度という実用温度範囲において、±3%以内の変動幅に収まっている。しかしながら、上述した温度範囲における変動幅は、±10%以内に収まっていれば良い。
【0057】
また、ケース90Aは、アンテナ装置10Aの全体を覆う部分であり、上述したコイル50Aやボビン体30Aを覆うような筒形状に設けられている。なお、ケース90Aには、外部機器に取り付けられるための取付部位が存在していても良い。
【0058】
<アンテナ装置10Aの製造方法について>
以上のような構成のアンテナ装置10Aを製造する場合、射出成形によりボビン体30Aを形成し、またプレス成形によりコア20Aを形成する。また、ボビン体30Aの形成後に、接続端子60Aを端子取付部35Aに位置させて、コネクタ接続部40Aのコネクタ穴に突出するように差し込む(コア挿入工程に対応)。
【0059】
この取り付けを行うのに前後して、コア挿入部34Aにコア20Aを取り付ける。その取り付けの後に、巻枠部32Aに導線51Aを巻回して、コイル50Aを形成する(コイル形成工程に対応)。このコイル形成工程においては、下層の導線51Aを巻回する場合、仕切部33Aまでは隣接する導線51Aが密接する状態で巻回する。それにより、下層側の密巻線部53Aが形成される。
【0060】
この下層側の密巻線部53Aに連続する状態で、巻枠部32Aのうち仕切部33Aよりも長手方向(X方向)の他方側(X2側)に導線51Aを巻回して、下層側の疎巻線部54Aを形成する。下層側の疎巻線部54Aを形成する場合においては、導線51Aと導線51Aの間に、比較的大きな隙間S1が存在する状態で巻回する。
【0061】
そして、巻枠部32Aの長手方向(X方向)の他方側(X2側)の端部に到達した後に、今度は下層の導線51Aとは逆向きの巻回方向となる状態で、仕切部33Aに向かって導線51Aを巻回する。したがって、上層の導線51Aは、下層の導線51Aに対して交差する(クロスする)状態で巻回される。
【0062】
上述のようなコイル50Aの形成に前後して、導線51Aの一方の端末を、一方の接続端子60A1の絡げ部62Aの先端側に絡げる。また、導線51Aの他方の端末は、コイル50Aの形成の後に、他方の接続端子60A2の絡げ部62Aに絡げる。それらの絡げの後に、たとえばディップ方式による半田付け等により、上述の絡げ部分を固定する。
【0063】
ここで、アンテナ装置10Aを製造した後に、インダクタンス値Lを調整する必要が生じる場合がある。このインダクタンス値Lは、上述した式(2)により求められるが、インダクタンス値Lを調整する場合、疎巻線部54Aにおいて、コイル長さbを短くする方向へ導線51Aを移動させる。すなわち、疎巻線部54Aにおいて、所定の部位の隙間S1が狭くなる向きへと、導線51Aをスライドさせる。それにより、インダクタンス値Lが若干大きくなるように調整することができる。
【0064】
また、インダクタンス値Lの調整に前後して、コイル50Aの外周側に銅テープを巻回することにより、銅テープ巻回部70Aを形成する(巻回部形成工程に対応)。この銅テープ巻回部70Aは、コア20Aの長手方向(X方向)の両端付近において、コイル50Aの外周側を覆うように形成する。しかしながら、銅テープ巻回部70Aを形成する位置は、適宜変更するようにしても良い。以上のようにして、アンテナ装置10Aが形成される。
【0065】
また、上述した各工程が終了した後に、ケース90A内にボビン体30Aやコイル50Aを挿入する。このとき、ケース90Aとボビン体30Aやコイル50Aの接触部位に接着剤を塗布することで、これらを接着するようにしても良い。
【0066】
<効果について>
以上のような構成のアンテナ装置10Aによると、銅テープ巻回部70Aが存在しない一方でコイルを備えるとした場合(アンテナ装置11Aに対応)において、コイル50Aによる共振のピークの鋭さを表すQ値(第1Q値)は、導線51Aの抵抗値の温度変化に基づいて温度上昇と共に減少している。また、銅テープ巻回部70Aを備えるとした場合において、銅テープ巻回部70Aによる共振のピークの鋭さを表すQ値(第2Q値)は、銅テープ巻回部70Aの抵抗値の温度変化に対応した電流変動によって温度上昇と共に増加する。また、コイル50Aと銅テープ巻回部70Aとに基づく共振のピークの鋭さを表すQ値(調整Q値)の温度上昇における増減率は、第1Q値の温度上昇における増減率および第2Q値の温度上昇における増減率よりも小さくなるように設けられている。
【0067】
このため、アンテナ装置10Aは、簡易な構成でありながらも、温度変化によってQ値(調整Q値)に変動が生じるのを抑制することが可能となる。特に、車載用といった、温度変化が生じ易い環境下において、Q値の変動を抑制することができるので、アンテナ装置10Aの性能を安定化させることが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態では、渦電流発生手段は、シート状部材に対応する銅箔層を備える銅テープを巻回することで形成される銅テープ巻回部70Aとなっている。このため、温度が上昇すると抵抗が増大する、という銅の物性を利用して、Q値(調整Q値)の温度上昇を良好に押さえることが可能となる。
【0069】
また、本実施の形態では、銅テープ巻回部70Aは、コア20Aの長手方向(X方向)の両端寄りの部位に位置している。したがって、コア20Aの内部を通過する磁束が外部に出る付近に、銅テープ巻回部70Aが存在するので銅テープ巻回部70Aに渦電流を良好に発生させることができる。そして、銅テープ巻回部70Aでの温度上昇によって内部抵抗を増大させることで、渦電流が流れ難くなる。そのため、
図8において二点鎖線で示すような、銅テープ巻回部70Aを設ける一方で、導線51Aが従来と同等のアンテナ装置12AにおけるQ値のように、温度上昇するにつれてQ値を良好に低下させることができる。それにより、アンテナ装置10Aは、簡易な構成でありながらも、温度変化によってQ値(調整Q値)に変動が生じるのを良好に抑制することが可能となる。
【0070】
さらに、本実施の形態のアンテナ装置10Aでは、コアを備える直列共振回路に抵抗素子が直列接続された構成(従来構成)と比較して、コイル50Aを構成する導線51Aは、当該抵抗素子の抵抗値の少なくとも一部を有するように直径が減じられている。したがって、本実施の形態のアンテナ装置10Aでは、コイル50Aと銅テープ巻回部70Aとによって、
図8において実線で示されるQ値(調整Q値)となるように、Q値の変動を抑制することが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態では、導線51Aの直径は、0.1mm以下に設けることができる。このように、本実施の形態のアンテナ装置10Aでは、抵抗素子を実装することなく、導線51Aの直径を0.1mmとするように細径化を図る(従来構成はたとえば0.26mm)ことで内部抵抗を増大させているので、Q値(第1Q値)を良好に低下させることができ、アンテナ装置10Aの広帯域化を図ることができる。また、抵抗素子の抵抗値を導線51Aが内在する構成であるので、抵抗素子を実装せずに済み、その分だけ工程を簡素化することができ、また抵抗素子の在庫管理を行わずに済む。
【0072】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る、アンテナ装置10Bについて、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aと共通の構成については、その説明を省略するものの、その符号の末尾に、第1の実施の形態に関連するアルファベット「A」に代えてアルファベット「B」を付すものとする。なお、アルファベット「B」は、第2の実施の形態に関連する構成とする。したがって、第2の実施の形態では説明および図示等しないものの第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aと同様の構成についても、アルファベット「B」を付して説明する場合があるものとする。
【0073】
図9は、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bの構成を示す斜視図である。
図10は、
図9に示すアンテナ装置10Bのボビン体30Bおよび接続端子60Bの構成を示す斜視図である。本実施の形態のアンテナ装置10Bの端子取付部35Bにおいては、上述した第1の実施の形態のアンテナ装置10Aの端子取付部35A付近とは異なる構成となっている。また、本実施の形態のアンテナ装置10Bのコネクタ接続部40Bは、上述した第1の実施の形態のアンテナ装置10Aのコネクタ接続部40Aとは異なる構成となっている。
【0074】
具体的には、端子取付部35Bには、接続端子60Bは一対ではなく、合計3つ設けられている。具体的には、接続端子60B1,60B2,60B3が存在している。
図11は、3つの接続端子60B1,60B2,60B3の形状を示す平面図である。
図11に示すように、3つの接続端子60Bのうち、接続端子60B1は、幅方向(Y方向)の手前側(Y1側)に位置する接続端子60B1である。また、接続端子60B2は、接続端子60B1に対して、幅方向(Y方向)の奥側(Y2側)に位置している。さらに、接続端子60B3は、接続端子60B1および接続端子60B2よりも、長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置している。
【0075】
ここで、接続端子60B1には、差込片部61Bと、絡げ部62Bと、上下延伸部63Bとが設けられている。差込片部61Bは、長手方向(X方向)に延伸する部分であり、上述した差込片部61Aと同様の部分となっている。そのため、差込片部61Bの一方側(X1側)は、コネクタ接続部40Bのコネクタ穴の内部に突出し、コネクタ穴に差し込まれる外部のコネクタと電気的に接続可能となっている。
【0076】
また、絡げ部62Bは、上述した絡げ部62Aと同様に、導線51Bの一方の端末が絡げられる部分となっている。また、上下延伸部63Bは、上下方向(Z方向)に延伸している部分である。このため、差込片部61Bと絡げ部62Bとは、高さ方向(Z方向)の位置が異なっている。
【0077】
また、接続端子60B2には、差込片部61Bと、チップ支持片部64Bとが設けられている。差込片部61Bは、接続端子60B1における差込片部61Bと同様の構成である。また、チップ支持片部64Bは、差込片部61Bよりも幅方向(Y方向)の寸法が大きく設けられている部分である。このチップ支持片部64Bは、その両端側がボビン体30Aの樹脂部分に入り込んでいるものの、両端の間の部分は、開口部35B1に露出している。このチップ支持片部64Bには、チップ状のコンデンサ100Bの一方側が、電気的に接続される状態で取り付けられている。
【0078】
また、接続端子60B3には、絡げ部62Bと、チップ支持片部64Bとが設けられている。絡げ部62Bには、導線51Bの他方の端末が絡げられる。また、チップ支持片部64Bには、コンデンサ100Bの他方側が、電気的接続される状態で取り付けられている。
【0079】
また、端子取付部35Bにおいては、接続端子60Bは、ボビン部31Bの底面32B3よりも上方側(Z1側)へ突出しないように設けられている。このような構成とするために、端子取付部35Bの底壁35B3は、底面32B3よりも厚肉に設けられている。そして、この底壁35B3に、上述した接続端子60B1〜60B3の一部が、たとえばインサート成形によって形成されることで、埋め込まれた状態となっている。
【0080】
ここで、第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aのボビン体30Aにおいては、端子取付部35Aとコア挿入部34Aとを区切る隔壁35A2が設けられている。しかしながら、本実施の形態のボビン体30Bにおいては、そのような隔壁に相当する構成が設けられていない。また、
図10に示すように、接続端子60Bは、底面32B3よりも上方側(Z1側)へ突出していない。したがって、コア20Bは、端子取付部35B側に移動可能となっている。
【0081】
なお、コア20Bは、上述の第1の実施の形態におけるコア20Aと同様に、コア保持突起32B6と、他端側(X2側)における導線の巻締めによるボビン部31Bの内壁とにより、コア挿入部34B内で保持された状態となっている。
【0082】
また、コネクタ接続部40Bは、第1の実施の形態におけるコネクタ接続部40Aとは異なり、長手方向(X方向)に沿うように設けられている。そして、端子取付部35Bとコネクタ接続部40Bとを区切る部分には、鍔部43Bが設けられている。鍔部43Bは、本実施の形態では、矩形の板状に設けられていて、この鍔部43Bの外周縁部には、段部44Bが設けられている。この段部44Bには、ケース90Aの開口縁部が嵌合する構成となっている。
【0083】
また、本実施の形態のアンテナ装置10Bにおいても、上述したコイル50Aと同様のコイル50Bを備えている。すなわち、コイル50Bを形成する導線51Bは、従来のアンテナ装置で用いられる導線と比較して、直径が小さいものとなっている。具体的には、従来のアンテナ装置においては直径が0.26mmが適正な導線の直径であるとした場合に、導線51Bは、その適正な直径よりも大幅にサイズが小さい、直径が0.08mmとするものがある。それにより、アンテナ装置10Bでは、抵抗素子を実装することなく、Q値を下げることが可能となっている。
【0084】
また、本実施の形態のアンテナ装置10Bも、銅テープ巻回部70Aと同様の銅テープ巻回部70Bを備えている。そして、アンテナ装置10Bでは、温度上昇が生じた場合に、
図8に示すようにQ値が変化する。それによって、温度変化が生じても、Q値の変動を抑えることが可能となっている。
【0085】
<効果について>
本実施の形態に係るアンテナ装置10Bに関しても、上述した第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aと同様の効果を発揮させることが可能となる。
【0086】
加えて、本実施の形態では、ボビン体30Bには、隔壁35A2に相当する構成が存在せず、しかも接続端子60Bは、底面32B3よりも上方側(Z1側)へ突出していない。このため、コア挿入部34Bの内部において、端子取付部35B側にスライドさせることが可能となっている。そのため、疎巻線部54Bにおける、第1層(上層)の導線51Bのスライドによるインダクタンス値の調整の他に、コア20Bをスライドさせることで、インダクタンス値を増減させたり、Q値(調整Q値)の調整を行うことが可能となる。
【0087】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係る、アンテナ装置10Cについて、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aと共通の構成については、その説明を省略するものの、その符号の末尾に、第1の実施の形態に関連するアルファベット「A」に代えてアルファベット「C」を付すものとする。なお、アルファベット「C」は、第3の実施の形態に関連する構成とする。したがって、第3の実施の形態では説明および図示等しないものの第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aと同様の構成についても、アルファベット「C」を付して説明する場合があるものとする。
【0088】
図12は、本発明の第3の実施の形態に係るアンテナ装置10Cを示す側断面図である。本実施の形態のアンテナ装置10Cにおいても、上述したコイル50Aと同様のコイル50Cを備えている。すなわち、コイル50Cを形成する導線51Cは、従来のアンテナ装置で用いられる導線と比較して、直径が小さいものとなっている。具体的には、従来のアンテナ装置においては直径が0.26mmが適正な導線の直径であるとした場合に、導線51Cは、その適正な直径よりも大幅にサイズが小さい、直径が0.08mmとするものがある。それにより、アンテナ装置10Cでは、抵抗素子を実装することなく、Q値を下げることが可能となっている。
【0089】
また、本実施の形態のアンテナ装置10Cでは、上述した第1の実施の形態における銅テープ巻回部70Aを備えていない。しかしながら、アンテナ装置10Cを、たとえば金属製の車体等の取付部位110Cに取り付けた場合に、その取付部位110Cの金属に渦電流を生じさせることで、上述した銅テープ巻回部70Aと同様の作用効果を発揮させることが可能となっている。
【0090】
具体的には、
図12に示すように、ケース90Cには、間隔維持部91Cが設けられている。間隔維持部91Cは、コア20Cから、ボビン体30Cの取付面37Cまでの距離が、所望するQ値となるような距離に設定されている。具体的には、導線51Cの直径が従来と同等であるものの規定の寸法となる間隔維持部91Cが存在するアンテナ装置においては、温度変化が生じた場合に、
図8において二点鎖線で示すようなQ値の変動が生じる。一方、直径の小さな導線51Cによってコイル50Cが形成されているものの間隔維持部91Cが存在しないアンテナ装置では、
図8において一点鎖線で示すようなQ値の変動が生じる。
【0091】
これに対して、本実施の形態のアンテナ装置10Cでは、
図8における一点鎖線と二点鎖線で示される温度変化を示すQ値を合算したような状態で、Q値が変化する。したがって、従来構成よりも小さなQ値の変動とすることができる。
【0092】
なお、間隔維持部91Cの寸法は、たとえば上述した実用温度範囲において所定の変動幅に収まるように、適宜設定することが可能となる。その一例としては、間隔維持部91Cの寸法を13.1mmに設定することが挙げられる。
【0093】
ここで、第3の実施の形態のアンテナ装置10Cでは、導線51Cは従来と同等の寸法(すなわち、適正な直径)としつつ、間隔維持部91Cのみが存在する構成としても良い。このような構成を採用する場合、アンテナ装置10Cにおいては従来のアンテナ装置と同等以上のインダクタンス値Lを確保しながらも、共振のピークの鋭さを表すQ値を、アンテナ装置10Cが組み込まれるシステムに合わせて下げることが可能となる。このような、Q値を下げるような調整は、従来の構成では、特許文献1に開示のように、抵抗素子を実装することにより実現しているが、本実施の形態では、抵抗素子を実装することなく、Q値を下げることが可能となる。
【0094】
<効果について>
本実施の形態のアンテナ装置10Cにおいては、渦電流を発生させる渦電流発生手段に対応する金属製の車体等の取付部位110Cと、コア20Cとの間隔を規定する間隔維持部91Cを備えている。そして、金属製の取付部位110Cが存在しない一方でコイルを備えるとした場合において、コイル50Cによる共振のピークの鋭さを表すQ値(第1Q値)は、導線51Cの抵抗値の温度変化に基づいて温度上昇と共に減少している。また、金属製の取付部位110Cが存在するとした場合において、金属製の取付部位110Cによる共振のピークの鋭さを表すQ値(第2Q値)は、金属製の取付部位110Cの抵抗値の温度変化に対応した電流変動によって温度上昇と共に増加する。また、コイル50Cと金属製の取付部位110Cとに基づく共振のピークの鋭さを表すQ値(調整Q値)の温度上昇における増減率は、第1Q値の温度上昇における増減率および第2Q値の温度上昇における増減率よりも小さくなるように設けられている。
【0095】
このため、アンテナ装置10Cは、より簡易な構成でありながらも、温度変化によってQ値(調整Q値)に変動が生じるのを抑制することが可能となる。特に、車載用といった、温度変化が生じ易い環境下において、Q値の変動を抑制することができるので、アンテナ装置10Cの性能を安定化させることが可能となる。
【0096】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0097】
上述の第1および第2の実施の形態では、渦電流発生手段および巻回部としては、銅テープを巻回した銅テープ巻回部70Aについて述べている。しかしながら、渦電流発生手段および巻回部は、銅テープ巻回部70Aには限られず、非磁性の金属層を備えるフィルム状部材を巻回したものであれば、種々のものが適用可能である。たとえば、フィルム状の鋼板や、アルミ箔等、種々の素材を用いることが可能である。
【0098】
また、上述の第3の実施の形態では、間隔維持部91Cは、ケース90Cと一体的に設けられている。しかしながら、間隔維持部91Cは、ケース90Cとは別体的な構成であっても良い。たとえば、ボビン体やケースを、各アンテナ装置において共通構成としつつ、そのボビン体やケースと嵌合する嵌合構造を備える嵌合体を、ボビン体やケースの間に挟み込む構成としても良い。このように構成する場合、嵌合体を変えるだけで、コア20C(コイル50C)と金属製の取付部位110Cの間の距離を調整することが可能となる。
【0099】
また、上述の各実施の形態では、フィルム状部材として、銅テープについて説明している。しかしながら、フィルム状部材としては、そのような幅の狭いテープ状のものには限られず、幅の広いシート状の部材も含まれる。
【0100】
また、上述の第3の実施の形態では、間隔維持部91Cの他に、さらに銅テープ巻回部等のような、渦電流発生手段および巻回部を備える構成を採用しても良い。
【0101】
また、上述の実施の形態では、一対の接続端子60Aの間に、電子部品が取り付けられていないが、取り付けるようにしても良い。また、上述の第2の実施の形態では、電子部品としてコンデンサ100Bを取り付ける場合について説明しているが、抵抗等のような他の電子部品を取り付けるようにしても良い。なお、電子部品としては、面実装タイプとピンタイプのいずれでも良い。
【0102】
また、上述の各実施の形態では、疎巻線部54A,54Bが長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置し、密巻線部53A,53Bが長手方向(X方向)の一方側(X1側)に位置する場合について説明している。しかしながら、このような構成には限られず、疎巻線部54A,54Bが長手方向(X方向)の一方側(X1側)に位置し、密巻線部53A,53Bが長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置する構成としても良い。
【0103】
また、疎巻線部54A,54Bを複数設け、疎巻線部54A,54Bの間に密巻線部53A,53Bが位置する構成を採用しても良い。また、密巻線部53A,53Bを複数設け、密巻線部53A,53Bの間に疎巻線部54A,54Bが位置する構成を採用しても良い。
【0104】
また、上述の各実施の形態では、コア20A,20Bが1つのみ存在する場合につい手述べている。しかしながら、コアは複数存在していても良い。また、ボビン体としては、密巻線部と疎巻線部とを形成可能であれば、どのような構成であっても良い。また、接続端子の本数も幾つであっても良く、その接続端子の構成も、どのような構成であっても良い。