【解決手段】異形積層鉄心10は、形状の異なる2種類以上の打ち抜き部材20が積層されてなる。異形積層鉄心10には、その積層方向に延びる軸孔10a内に異形部10cが設けられている。異形積層鉄心10の異形部10cを測定する方法は、軸孔10aの外側に位置する非接触式センサ38が、軸孔10aの入口を通じて異形部10cの表面形状に対応する表面プロファイルを取得する第1の工程と、コントローラ36が、当該表面プロファイルに基づいて異形部10cのサイズを算出する第2の工程とを含む。
前記第1の工程では、前記異形積層鉄心が積層方向において加圧された状態で、前記孔の外側に位置する前記非接触式センサが、前記孔の入口を通じて前記異形部の表面形状に対応する前記表面プロファイルを取得する、請求項1に記載の方法。
前記異形部は、前記孔の周面から前記積層方向に対して交差する交差方向に突出する突起部、又は、前記孔から分岐するように前記孔の周面から前記交差方向に延びる分岐孔である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記第2の工程では、前記表面プロファイルに基づいて、前記積層方向における前記異形部の長さ、又は、前記孔の周方向における前記異形部の長さを算出する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記第2の工程では、前記表面プロファイルに基づいて、前記孔の入口から前記異形部までの前記積層方向における長さを算出する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
積層鉄心は、モータ(電動機)を構成する部品であり、モータのロータ(回転子)及びステータ(固定子)をなす。積層鉄心は、電磁鋼板から所定形状に打ち抜き加工された複数の金属板(打ち抜き部材)を積み重ね、これらを締結することにより得られる。ステータとなる固定子積層鉄心には、コイルが巻き付けられる。ロータとなる回転子積層鉄心には、シャフト及び永久磁石が取り付けられる。その後、ステータとロータとが組み合わされて、モータが完成する。積層鉄心が採用されたモータは、例えば、冷蔵庫、エアコン、ハードディスクドライブ、電動工具、ハイブリッドカー、電気自動車等の駆動源として使用されている。
【0003】
積層鉄心は、一般に、順送り金型によって製造される。順送り金型内において、帯状の電磁鋼板を間欠的に打抜き加工して打ち抜き部材を得る工程と、所定の積厚になるまで複数の打ち抜き部材を積み重ねて積層鉄心を得る工程とが実施される。順送り金型から排出される積層鉄心は、その厚さ(積厚)が所定の公差内に収まっていることが求められる。しかし、帯状の電磁鋼板は必ずしも板厚が均一ではない。すなわち、帯状の電磁鋼板には板厚偏差が存在している。そのため、単に所定の枚数の打ち抜き部材を積層させたのでは、板厚偏差の影響によって積層鉄心の厚さが公差内に収まらない場合がある。
【0004】
特許文献1は、軸孔に段差が設けられたカウンタボアを有する積層鉄心の製造方法を開示している。特許文献1に記載の積層鉄心は、形状の異なる2種類以上の打ち抜き部材を組み合わせて構成される。特許文献1に記載の製造方法においては、積層枚数が指定されているカウンタボアを除くカウンタボアの内の一つを指定して積層枚数を補正する制御プログラムが利用される。一方、特許文献2は、形状の異なる2種類以上の打ち抜き部材を組み合わせて構成される積層鉄心の他の例として、軸孔内に冷媒流路が形成された積層鉄心を開示している。なお、本明細書では、形状の異なる2種類以上の打ち抜き部材が積層され、積層方向(軸方向)に延びる孔内に突起、窪み、孔等の異形部が設けられている積層鉄心を「異形積層鉄心」と称する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2等に記載の異形積層鉄心においては、異形部が所望のサイズであるか否かが、打ち抜き部材の積層枚数で判断されていた。しかしながら、近年、積層鉄心の高品質化の要求がますます高まってきており、異形部のサイズを精度よく取得することが望まれていた。
【0007】
そこで、本開示は、異形部のサイズを精度よく取得することが可能な異形積層鉄心の測定方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本開示の一つの観点に係る異形積層鉄心の測定方法は、形状の異なる2種類以上の金属板が積層され、積層方向に延びる孔内に異形部が設けられた異形積層鉄心の異形部を測定する方法であって、孔の外側に位置する非接触式センサが、孔の入口を通じて異形部の表面形状に対応する表面プロファイルを取得する第1の工程と、算出手段が、表面プロファイルに基づいて異形部のサイズを算出する第2の工程とを含む。
【0009】
ところで、異形積層鉄心の積層方向に延びる孔は、一般に、接触式センサによる内部への進入が困難な程度に小さく、接触式センサでは孔内の異形部を計測することができない。しかしながら、本開示の一つの観点に係る異形積層鉄心の測定方法では、孔の外側に位置する非接触式センサが、孔の入口を通じて異形部の表面形状に対応する表面プロファイルを取得している。そのため、非接触式センサが、異形部と対面せずとも、孔の外側から異形部の表面プロファイルを直接取得する。また、本開示の一つの観点に係る異形積層鉄心の測定方法では、算出手段が、当該表面プロファイルに基づいて異形部のサイズを算出している。このように、本開示の一つの観点に係る異形積層鉄心の測定方法では、金属板の積層枚数ではなく、非接触式センサを用いて異形部のサイズを直接取得している。従って、異形部のサイズを精度よく取得することが可能となる。
【0010】
[2]上記第1項に記載の異形積層鉄心の測定方法において、第1の工程では、異形積層鉄心が積層方向において加圧された状態で、孔の外側に位置する非接触式センサが、孔の入口を通じて異形部の表面形状に対応する表面プロファイルを取得してもよい。ところで、異形積層鉄心の測定後、異形積層鉄心が積層方向において加圧された状態で打ち抜き部材同士を溶接等で完全に接合することにより、異形積層鉄心の完成品を得る場合がある。このとき、上記のように、異形積層鉄心が積層方向において加圧された状態で表面プロファイルを取得することで、完成品における異形部と同等のサイズを取得することが可能となる。
【0011】
[3]上記第1又は2項に記載の異形積層鉄心の測定方法において、非接触式センサは非接触式レーザ変位計であり、第1の工程では、孔の外側に位置する非接触式センサが、孔の入口からレーザ光を異形部に向けて照射し、その反射光を受光することにより、異形部の表面形状に対応する表面プロファイルを取得してもよい。
【0012】
[4]上記第1〜3のいずれか一項に記載の異形積層鉄心の測定方法において、異形部は、孔の周面から積層方向に対して交差する交差方向に突出する突起部、又は、孔から分岐するように孔の周面から交差方向に延びる分岐孔であってもよい。
【0013】
[5]上記第1〜4のいずれか一項に記載の異形積層鉄心の測定方法において、異形積層鉄心及び非接触式センサの一方を他方に対して移動又は回転させる第3の工程をさらに含んでもよい。この場合、異形積層鉄心及び非接触式センサの一方が他方に対して移動又は回転するので、異形積層鉄心に複数の異形部が設けられている場合に、非接触式センサがこれら複数の異形部の表面プロファイルを一度に取得する。そのため、複数の異形部のサイズを一度に精度よく取得することができる。
【0014】
[6]上記第1〜5のいずれか一項に記載の異形積層鉄心の測定方法において、第2の工程では、表面プロファイルに基づいて、積層方向における異形部の長さ、又は、孔の周方向における異形部の長さを算出してもよい。
【0015】
[7]上記第1〜6のいずれか一項に記載の異形積層鉄心の測定方法において、第2の工程では、表面プロファイルに基づいて、孔の入口から異形部までの積層方向における長さを算出してもよい。
【0016】
[8]上記第1〜7のいずれか一項に記載の異形積層鉄心の測定方法において、異形部は、孔の周面から積層方向に対して交差する交差方向に突出する突起部であり、第2の工程では、表面プロファイルに基づいて、突起部の突出長を算出してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る異形積層鉄心の測定方法によれば、異形部のサイズを精度よく取得することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
[回転子の構成]
まず、
図1〜
図3を参照して、回転子1(ロータ)の構成について説明する。回転子1は、固定子(ステータ)と共にモータ(電動機)を構成する。回転子1は、異形積層鉄心10と、複数の永久磁石12と、複数の樹脂材料14と、シャフト(図示せず)とを備える。
【0021】
異形積層鉄心10は、帯状の電磁鋼板(図示せず)が打抜き加工された複数の打ち抜き部材20(金属板)が積層された積層体である。異形積層鉄心10は、形状の異なる2種類以上の打ち抜き部材20を有する。各打ち抜き部材20は、カシメ、溶接等によって互いに接合されている。
【0022】
異形積層鉄心10は、円筒形状を呈している。すなわち、異形積層鉄心10の中央部分には、中心軸Axに沿って延びるように異形積層鉄心10を貫通する軸孔10aが設けられている。すなわち、軸孔10aは、異形積層鉄心10の積層方向(以下、単に「積層方向」という。)に延びている。積層方向は、中心軸Axの延在方向でもある。軸孔10a内には、シャフトが挿通される。
【0023】
異形積層鉄心10には、複数の磁石挿入孔10b及び複数の異形部10cが形成されている。磁石挿入孔10bは、
図1に示されるように、異形積層鉄心10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔10bは、
図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように異形積層鉄心10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔10bは積層方向に延びている。
【0024】
磁石挿入孔10bの形状は、本実施形態では、異形積層鉄心10の外周縁に沿って延びる長孔である。磁石挿入孔10bの数は、本実施形態では16個である。磁石挿入孔10bの位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0025】
磁石挿入孔10b内には、複数の突起10dが設けられている。突起10dは、磁石挿入孔10bの内周面のうち中心軸Ax寄りの面(内側内周面)から外方に向けて、異形積層鉄心10の径方向(以下、単に「径方向」という。)に沿って突出している。すなわち、突起10dは、内側内周面から外方に向けて、積層方向に交差する交差方向(径方向)に延びている。突起10dは、磁石挿入孔10bの延在方向(積層方向)において所定間隔で並んでいる。
【0026】
異形部10cは、軸孔10a内に配置されている。異形部10cは、
図3に示されるように、軸孔10aの内周面から径方向外方に向けて窪む凹部である。すなわち、異形部10cは、軸孔10aから外方に向けて、径方向に延びている。本実施形態の異形部10cは、軸孔10aから分岐するように軸孔10aの内周面から径方向に延びる分岐孔の一形態である。
【0027】
異形部10cの形状は、本実施形態では、径方向から見て矩形状である。異形部10cの数は、本実施形態では2つであり、一対の異形部10cが中心軸Axに関して対称となるように位置している。異形部10cの形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0028】
永久磁石12は、
図1及び
図2に示されるように、磁石挿入孔10bに挿入されている。永久磁石12は、
図2に示されるように、磁石挿入孔10b内において、磁石挿入孔10bの内周面のうち異形積層鉄心10の外周縁寄りの面(外側内周面)と突起10dとによって挟持されている。磁石挿入孔10b内に挿通される永久磁石12の数は、一つであってもよいし、複数であってもよい。永久磁石12は、磁石挿入孔10b内において、積層方向に複数並んでいてもよいし、異形積層鉄心10の周方向に複数並んでいてもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0029】
樹脂材料14は、永久磁石12が挿入された後の磁石挿入孔10b内に充填されている。樹脂材料14は、永久磁石12を磁石挿入孔10b内に固定する機能を有する。樹脂材料14としては、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。樹脂材料14は、上下方向で隣り合う打ち抜き部材20同士を接合する。なお、樹脂材料14として熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0030】
[異形積層鉄心の測定方法]
続いて、
図4及び
図5を参照して、異形積層鉄心10の測定方法について説明する。まず、
図4に示されるように、積層方向において異形積層鉄心10を一対の挟持板30,32で挟持する。これにより、隣り合う打ち抜き部材20同士が密着する程度まで、挟持板30,32によって異形積層鉄心10がその積層方向において加圧される。挟持板30,32によって異形積層鉄心10に付与される圧力は、異形積層鉄心10のサイズによって種々の大きさとなりうるが、例えば、加圧後の異形積層鉄心10の厚さTが、加圧前の異形積層鉄心10の厚さT
0の99.9%以上で且つ厚さT
0未満(0.999T
0≦T<T
0)を満たす大きさであってもよい。本実施形態では、挟持板30が異形積層鉄心10の一方の端面(
図4の上面)に当接しており、挟持板32が異形積層鉄心10の他方の端面(
図4の下面)に当接している。
【0031】
挟持板30には、中心軸Axに沿って延びるシャフト34aを介してアクチュエータ34が接続されている。アクチュエータ34は、コントローラ36(算出手段)からの駆動信号に応じて回転駆動又は停止する。挟持板32の中央部には、軸孔10aよりも大きな貫通孔32aが設けられている。挟持板30,32が異形積層鉄心10を挟持した状態において、貫通孔32aは軸孔10aと連通している。
【0032】
次に、非接触式センサ38を準備する。具体的には、検出信号の受発信部が軸孔10aの入口を通じて検出対象である一の異形部10c側を向くように、非接触式センサ38を挟持板32の貫通孔32aの下方に配置する。すなわち、非接触式センサ38は、軸孔10aの外側に位置する。非接触式センサ38としては、測定対象物の表面形状に対応する表面プロファイルを測定対象物に非接触で取得することができれば種々のセンサを用いることができるが、例えば、非接触式レーザ変位計、超音波変位計等が挙げられる。非接触式レーザ変位計は、レーザ光を出射する光源と、反射光を受光する受光素子とを備え、受光素子における光量、結像位置等に基づいて測定対象物までの距離を算出する。超音波変位計は、超音波を送波する送波器と、その反射波を受信する受波器とを備え、超音波の発信から受信に要した時間に基づいて測定対象物までの距離を算出する。
【0033】
次に、コントローラ36が非接触式センサ38に駆動信号を送信し、例えば積層方向に拡がる検出信号を非接触式センサ38から発信させ、その反射信号を非接触式センサ38が受信することで、非接触式センサ38に異形部10cの表面プロファイルを取得させる。本実施形態では、異形積層鉄心10が回転しているので、非接触式センサ38は、異形部10cの表面プロファイルに加えて、軸孔10aの内周面の表面プロファイルも取得する。非接触式センサ38によって取得された表面プロファイルのデータは、コントローラ36に送信される。
図5に、非接触式センサ38が取得した異形部10cの表面プロファイルPの一例を示す。
【0034】
図5に一例として示される表面プロファイルPは、線分P1〜P6で構成されている。線分P1は、貫通孔32aの内周面に対応しており、
図5の鉛直方向に延びている。線分P2は、異形積層鉄心10の下面のうち貫通孔32aから露出している領域に対応しており、
図5の水平方向に延びている。線分P3は、軸孔10aの内周面のうち、異形積層鉄心10の下面(軸孔10aの入口)から異形部10cまでの領域に対応しており、
図5の鉛直方向に延びている。
【0035】
線分P4は、非接触式センサ38の検出信号が異形部10c内に到達する領域と、異形部10c内において非接触式センサ38の検出信号が死角となる領域との境界を示す仮想線であり、
図5において線分P3の上端点から左斜め上に延びている。線分P5は、異形部10cの内壁面(上壁面)に対応しており、
図5の水平方向に延びている。線分P6は、軸孔10aの内周面のうち異形部10cよりも上側の領域に対応しており、
図5の鉛直方向に延びている。
【0036】
次に、コントローラ36は、非接触式センサ38から送信された表面プロファイルPのデータに基づいて、異形部10cのサイズを算出する。算出される異形部10cのサイズとしては、例えば、異形部10cの高さ(積層方向における異形部10cの長さ)d1、異形積層鉄心10の下面(軸孔10aの入口)から異形部10cまでの積層方向における長さd2等が挙げられる。
【0037】
コントローラ36は、例えば、表面プロファイルPに基づいて、線分P3の上端点P10と線分P6の下端点P11との直線距離を求めることにより高さd1を算出する。上端点P10は、線分P3と仮想線分P4との交点でもある。下端点P11は、線分P5,P6の交点でもある。コントローラ36は、例えば、表面プロファイルPに基づいて、線分P3の長さを求めることにより長さd2を算出する。
【0038】
なお、パンチによる打ち抜き等によって打ち抜き部材20の周縁が丸みを帯びている場合(ダレ面が生じている場合)、線分P2,P3で構成される角部も同様に丸みを帯びるので、線分P3そのものの長さではなく、線分P2,P3を延長した延長仮想線同士の交点P12から長さd2が算出されてもよい。パンチによる打ち抜き等によって打ち抜き部材20の周縁に突起が生じている場合(バリが生じている場合)も同様に、線分P2,P3を延長した延長仮想線同士の交点P12から長さd2が算出されてもよい。
【0039】
次に、挟持板30,32が異形積層鉄心10を挟持した状態で、コントローラ36がアクチュエータ34に駆動信号を送信し、シャフト34aを介してアクチュエータ34により挟持板30を回転させる。このとき、挟持板30,32が異形積層鉄心10を挟持しているので、アクチュエータ34による挟持板30の回転に伴い、異形積層鉄心10及び挟持板32も回転する。コントローラ36は、検出信号の受発信部が軸孔10aの入口を通じて検出対象である他の異形部10c側を向いたときにアクチュエータ34に停止信号を送信し、アクチュエータ34の動作を停止する。その後、コントローラ36は、上記と同様に、他の異形部10cのサイズを取得する。
【0040】
[作用]
ところで、積層方向に延びる軸孔10aは、一般に、接触式センサによる内部への進入が困難な程度に小さく、接触式センサでは軸孔10a内の異形部10cを計測することができない。しかしながら、本実施形態では、軸孔10aの外側に位置する非接触式センサ38が、軸孔10aの入口を通じて異形部10cの表面形状に対応する表面プロファイルPを取得している。そのため、非接触式センサ38が、異形部10cと対面せずとも、軸孔10aの外側から異形部10cの表面プロファイルPを直接取得する。また、本実施形態では、コントローラ36が、表面プロファイルPに基づいて異形部10cのサイズを算出している。このように、本実施形態では、打ち抜き部材20の積層枚数ではなく、非接触式センサ38を用いて異形部10cのサイズを直接取得している。従って、異形部10cのサイズを精度よく取得することが可能となる。
【0041】
ところで、異形積層鉄心10の測定後、異形積層鉄心10がその積層方向において加圧された状態で打ち抜き部材20同士を溶接等で完全に接合することにより、異形積層鉄心10の完成品を得る場合がある。ここで、本実施形態では、異形積層鉄心10の測定にあたり、異形積層鉄心10がその積層方向において加圧された状態で、軸孔10aの外側に位置する非接触式センサが、軸孔10aの入口を通じて異形部10cの表面形状に対応する表面プロファイルPを取得している。そのため、完成品における異形部10cと同等のサイズを取得することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、異形積層鉄心10を非接触式センサ38に対して回転させて、複数の異形部10cのサイズをそれぞれ取得している。そのため、異形積層鉄心10が非接触式センサ38に対して回転するので、異形積層鉄心10に複数の異形部10cが設けられている場合に、非接触式センサ38がこれら複数の異形部10cの表面プロファイルPを一度に取得する。従って、複数の異形部10cのサイズを一度に精度よく取得することができる。
【0043】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、コントローラ36は、異形部10cに関する情報として、
図6に示されるように、異形部10cの幅(軸孔10aの周方向における異形部10cの長さ)d3を算出してもよい。この場合、コントローラ36が非接触式センサ38に駆動信号を送信し、例えば径方向に拡がる検出信号を非接触式センサ38から発信させ、その反射信号を非接触式センサ38が受信することで、非接触式センサ38に異形部10cの表面プロファイルを取得させる。
【0044】
図7に示されるように、シャフト34aが非接触式センサ38に接続されており、アクチュエータ34がシャフト34aを介して非接触式センサ38を回転させるようにしてもよい。すなわち、非接触式センサ38によって異形部10cの表面プロファイルPを取得する際には、挟持板30,32が異形積層鉄心10を挟持した状態で、コントローラ36がアクチュエータ34に駆動信号を送信し、シャフト34aを介してアクチュエータ34により非接触式センサ38を回転させてもよい。
【0045】
換言すれば、非接触式センサ38によって異形部10cの表面プロファイルPを取得する際に、異形積層鉄心10及び非接触式センサ38の一方を他方に対して回転させてもよい。非接触式センサ38によって異形部10cの表面プロファイルPを取得する際に、異形積層鉄心10及び非接触式センサ38の一方を他方に対して移動させてもよい(回転以外の変位を行わせてもよい)。
【0046】
あるいは、異形積層鉄心10及び非接触式センサ38の一方を他方に対して回転させながら、軸孔10aの外側に位置する非接触式センサ38が、軸孔10aの入口を通じて異形部10cの表面プロファイルPを取得してもよい。異形積層鉄心10及び非接触式センサ38の一方を他方に対して移動させながら(回転以外の変位を行わせながら)、軸孔10aの外側に位置する非接触式センサ38が、軸孔10aの入口を通じて異形部10cの表面プロファイルPを取得してもよい。このときの回転数は、非接触式センサ38の性能(例えば、サンプリングレート等)に応じて適切な大きさに設定してもよい。
【0047】
図8に示されるように、非接触式センサ38によって磁石挿入孔10b内の突起10dの表面プロファイルを取得し、突起10dのサイズをコントローラ36で算出するようにしてもよい。すなわち、突起10dは、磁石挿入孔10b内に存在する異形部であるともいえる。コントローラ36によって算出される突起10dのサイズとしては、異形部10cと同様に、突起10dの高さ、異形積層鉄心10の下面(磁石挿入孔10bの入口)から突起10dまでの積層方向における長さ、突起10dの幅に加えて、突起10dの突出長d4等が挙げられる。
【0048】
非接触式センサ38によって突起10dの表面プロファイルを取得する場合、挟持板32には、磁石挿入孔10bに対応する箇所に磁石挿入孔10bよりも大きな貫通孔32bが設けられている。挟持板30,32が異形積層鉄心10を挟持した状態において、貫通孔32bは磁石挿入孔10bと連通している。非接触式センサ38は、検出信号の受発信部が磁石挿入孔10bの入口を通じて検出対象である突起10d側を向くように、挟持板32の貫通孔32bの下方に配置される。
【0049】
図9に示されるように、異形部10cは、突起10dと同様に、軸孔10aの内周面から径方向内方(中心軸Ax側)に向けて突出する突起部であってもよい。この場合、コントローラ36によって算出される異形部10cのサイズとしては、異形部10cの高さd1、異形積層鉄心10の下面(軸孔10aの入口)から異形部10cまでの積層方向における長さd2、異形部10cの幅d3、異形部10cの突出長d5等が挙げられる。
【0050】
図10及び
図11に示されるように、異形部10cは、軸孔10aから分岐するように軸孔10aの内周面から径方向に延びる分岐孔であってもよい。
図10では、異形部10cが軸孔10aと磁石挿入孔10bとを連結している。
図11では、異形部10cが軸孔10aから異形積層鉄心10の外周面まで貫通している。図示はしていないが、異形部10cは、磁石挿入孔10bから分岐するように磁石挿入孔10bの内側内周面から径方向(中心軸Ax側又は異形積層鉄心10の外周面側)に延びる分岐孔であってもよい。
【0051】
一つの異形部10cに対して、非接触式センサ38による測定箇所を少しずつずらしながら複数箇所を測定してもよい。この場合、異形部10cにバリ等の異物があっても、異形部10cの複数箇所を測定することにより、異物を避けて異形部10cのサイズを取得することができる。
【0052】
非接触式センサ38による異形部10cの測定は、異形積層鉄心10の磁石挿入孔10bに永久磁石12及び樹脂材料14が設けられる前(すなわち異形積層鉄心10のみの状態のとき)に行われてもよいし、異形積層鉄心10の磁石挿入孔10bに永久磁石12及び樹脂材料14が設けられた後(すなわち回転子1の完成状態のとき)に行われてもよい。
【0053】
異形部10cが設けられている軸孔10a、突起10dが設けられている磁石挿入孔10b等の孔は、異形積層鉄心10の上下のどちらかの面にのみ開口していればよく、貫通孔でなくてもよい。
【0054】
異形部10cの形状は、特に限定されない。すなわち、少なくともコントローラ36及び非接触式センサ38を用いて、種々の形状の異形部10cのサイズを取得しうる。
【0055】
回転子のみならず、固定子を構成する異形積層鉄心に設けられた異形部のサイズについても、少なくともコントローラ36及び非接触式センサ38を用いて取得してもよい。