特開2017-200454(P2017-200454A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノエビアの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-200454(P2017-200454A)
(43)【公開日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】酸性飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20171013BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20171013BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20171013BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20171013BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20171013BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20171013BHJP
【FI】
   A23L2/00 F
   A61K31/198
   A61P25/18
   A61P25/00
   A61P25/28
   A61P3/04
   A61P5/24
   A61P15/00
   A61K9/08
   A61K47/12
   A23L2/00 N
   A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-93148(P2016-93148)
(22)【出願日】2016年5月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】松田 茉子
【テーマコード(参考)】
4B117
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC04
4B117LC15
4B117LK08
4B117LK11
4B117LK14
4C076AA11
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC21
4C076CC30
4C076CC40
4C076DD41Q
4C076DD41T
4C076FF36
4C076FF52
4C076FF63
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA18
4C206GA22
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA36
4C206NA03
4C206NA09
4C206ZA01
4C206ZA15
4C206ZA18
4C206ZA70
4C206ZA81
4C206ZC11
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、テアニンを含有する酸性飲料において、味の嗜好性を向上させるとともに、テアニンの安定性を向上させること
である。
【解決手段】
テアニンを含有する酸性飲料に、グルコン酸及び/又はその塩を配合する。グルコン酸塩とは、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸カルシウム等のグルコン酸のアルカリ土類金属塩を意味する。好ましくはグルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸のアルカリ金属塩である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テアニンと、グルコン酸及び/又はその塩を含有する酸性飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テアニンとグルコン酸を含有する酸性飲料に関する。なお本発明の酸性飲料は、特定保健用食品、保健機能食品、機能性表示食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野の酸性飲料を含み得る。
【背景技術】
【0002】
テアニンは茶葉に含まれるアミノ酸類であり、抗ストレス作用(特許文献1参照)、神経成長因子合成促進作用(特許文献2参照)、脳機能改善作用(特許文献3参照)、肥満抑制作用(特許文献4参照)、月経前症候群抑制作用(特許文献5参照)等多様な生理活性が知られている。しかしながら生理活性を発揮させる量のテアニンを飲料に配合すると、口当たりが悪く、とがった塩味が強く感じられる傾向にあり、味の嗜好性向上が課題となっていた。
【0003】
さらに、テアニンは、水溶液の安定性が高くないこと、純度の高いテアニンは高価であることが知られている(非特許文献1参照)。そのため、テアニンを配合した酸性飲料において、表示したテアニン量を賞味期間の間担保するため、1.8倍以上の量を増し仕込みすることが一般的であった。しかしながらテアニンは高価な原料であるため、増し仕込みにより飲料の原価が高騰することと合わせて、前述の通り増仕込みに伴う味の嗜好性低下という課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】食品機能性の科学、食品機能性の科学編集委員会編、1055p.、(2008)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−100442号公報
【特許文献2】特開平7−173059号公報
【特許文献3】特開平8−73350号公報
【特許文献4】特開2000−53568号公報
【特許文献5】特開2000−143508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、テアニンを含有する酸性飲料において、味の嗜好性を向上させるとともに、テアニンの安定性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、テアニンと、グルコン酸及び/又はその塩を併用して酸性飲料に用いることにより、味の嗜好性を向上させるとともに、経時安定性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明はテアニンと、グルコン酸及び/又はその塩を含有する酸性飲料に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、テアニンを含有する酸性飲料において、テアニンの味の嗜好性を向上させる効果を有するととともに、テアニンを比較的安定に配合できるため、飲料に配合する際の増し仕込みの割合が減少するという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
本発明に用いられるテアニンは、L−体、D−体、DL−体いずれも使用可能であるが、中でもL−体は、食品添加物にも認められており、経済的にも利用しやすいため、本発明においては、L−体が好ましい。市販の試薬、純品(テアニン含量98%以上の精製品)、粗精製品(テアニン含量50〜98%)の他、茶抽出物またはその濃縮物の形態でも用いることができる。テアニンの製造方法としては、例えば茶葉からの分離精製法、化学的合成法、茶細胞による組織培養法、酵素反応を利用する方法等が挙げられる。酵素反応を利用する方法として、グルタミンとエチルアミンの混合物にグルタミナーゼを作用させてテアニンを得る方法があり、「サンテアニン」(太陽化学株式会社)として市販されている。
【0012】
テアニンの配合量は、1回摂取量として10〜1000mgとすることが好ましく。さらには50〜500mg、より好ましくは100〜400mgである。10mg未満の配合量ではテアニンの作用が発揮できない場合がある。1000mgを超えて配合すると、テアニンの呈味が強くなりすぎ、飲料として適さない場合がある。
【0013】
本発明の酸性飲料に配合するグルコン酸及び/又はその塩は、従来からpH調整剤、酸味料等として広く食品、医薬品又は医薬部外品等に用いられているものであり、いずれも商業的に簡便に入手できるものである。ここでグルコン酸塩とは、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸カルシウム等のグルコン酸のアルカリ土類金属塩を意味する。好ましくはグルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸のアルカリ金属塩である。
【0014】
味の嗜好性の面を踏まえてグルコン酸及び/又はその塩の濃度は0.05〜2.0(w/w)%とすることが好ましく、さらには0.1〜1.0(w/w)%とすることがさらに好ましい。またこの範囲においてはテアニンの安定性向上にも寄与できる範囲とされる。
【0015】
本発明の酸性飲料はpHを7未満の酸性、特にpH4未満に調整することが好ましい。pH調整剤としては、グルコン暖を単独で、若しくはフィチン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸などの有機酸、塩酸、リン酸などの無機酸、レモン果汁、リンゴ果汁などの酸性を呈する果汁と併用して調整してもよい。
【0016】
本発明の酸性飲料には、甘味料を配合することができる。かかる甘味料としては保健機能食品、機能性表示食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用しうる甘味料であれば特に限定されず、白砂糖、グラニュー糖、和三盆、黒糖、三温糖などの砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、水飴、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖果糖液糖、還元麦芽糖水飴、粉飴、還元澱粉糖化物、エリスリトール、マルトーストレハロース、マルチトール、パラチノース、キシリトール、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア抽出物及び/又はその精製物、羅漢果抽出物、ソーマチン、モネリン、ミラクリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン及び/又はその塩、ズルチン、ネオテームなどが挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明の飲料には、ビタミン類を配合することができる。かかるビタミン類としては、飲料に配合し得るビタミンであれば特に限定されない。例えばアスコルビン酸若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンC類、チアミン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB1類、リボフラビン若しくはその誘導体並びにそれらの塩類から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB2類、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種または2種以上のビタミンB6類などが例示される。
【0018】
本発明の飲料には、アミノ酸、ペプチド、タンパク質を配合することができる。かかるアミノ酸、ペプチド、タンパク質としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得るものであれば特に限定されない。例えばアミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、アルギニン、トリプトファン、シスチン、テアニン、γ−アミノ酪酸、カルニチンなどが例示される。ペプチド、タンパク質としては、例えばコラーゲン及びその加水分解物、エラスチン及びその加水分解物、大豆タンパク質及びその加水分解物、プラセンタ及びその加水分解物などが例示される。
【0019】
本発明の酸性飲料には、上記の他、ヒアルロン酸、コンドロイチン、グルコサミン、ローヤルゼリー、コエンザイムQ10、カテキン、ポリフェノール、セラミド、アスタキサンチン、プロポリス、カルニチン、西洋カラマツ抽出物、DHA、食物繊維類、ミネラル類から選ばれる1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0020】
本発明の酸性飲料には、通常保健機能食品、、機能性表示食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野の飲料に用いることが可能な成分、例えば、有機酸類、無機酸類、生薬、着色料、香料、保存剤、増粘剤、多糖類、などの他、キトサン化合物、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができ、飲料製造の常法により製造することができる。
【0021】
本発明の飲料は通常の液状又はゼリー状の飲料であり、炭酸タイプの液状、ゼリー状飲料であってもよい。
【実施例】
【0022】
以下、実験例、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。テアニンとしては太陽化学製のサンテアニンを使用した。
【0023】
[テアニン経時安定性の確認]
本発明の実施例、比較例にかかる飲料について賞味期限2年分に相当する加速試験(60℃14日間)を行い、テアニンの定量を行った。
【0024】
【表1】
【0025】
pH調整剤としてグルコン酸を用いた実施例1、2においては、残存率が78%以上であり、4割の増し仕込みで表示量250mgを2年間担保することが可能であった。これに対しpH調整剤としてクエン酸を用いた場合は、残存率が66.4%、71.2%であり、4割の増し仕込みでは表示量250mgを2年間担保することができなかった。
【0026】
次に酸味料によるテアニンの味のマスキング効果を確認した。テアニンの0.2w/v%水溶液にpHが3.5となる量の酸味料を添加し、味の変化を測定した。測定は、味認識装置TS−5000Z (株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用いて評価した。測定値は、テアニン単独の水溶液の値を0とした相対値で示した。かかる相対値は、1目盛りがウェーバー比20%に相当し、数字が人が確実に舌で違いを感じることができる最小単位となっており、絶対値が大きいほど指数関数的に味覚が強く、弱くなることを意味する。
【0027】
【表2】
【0028】
表2の通り、酸味料を添加することにより、口当たりや味の濃さに影響を与える旨味(先味)、塩味が抑制され、飲み易い味に変化することが示された。特にその効果はグルコン酸で顕著であった。また酸味料の添加による渋味(先味)の増加はクエン酸、乳酸と比較してグルコン酸において抑制傾向が認められた。
【0029】
続いてグルコン酸添加量による味への影響を確認した。上述の味認識装置を用い、テアニンの0.2w/v%水溶液へのグルコン酸添加量による味への影響を確認した。グルコン酸を0.14w/v%添加した場合を0とした相対値にて結果を表3に示した。表3に示した通り、グルコン酸添加による味への影響は濃度依存的に増加した。
【0030】
【表3】
【0031】
[実施例3]
(1)液糖 5000(mg)
(2)エリスリトール 1000
(3)テアニン 200
(4)グルコン酸 pHを3.8とする量
(5)スクラロース 2
(6)水 全量を100mLとする量
【0032】
[実施例4]
(1)還元麦芽糖水飴 5000(mg)
(2)テアニン 270
(3)GABA(γ-アミノ酪酸) 30
(4)グルコン酸 400
(5)甘味料 適量
(6)水 全量を185mLとする量