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特開2017-200488内部標識プライマーを含む核酸の配列決定、増幅および検出のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-200488(P2017-200488A)
(43)【公開日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】内部標識プライマーを含む核酸の配列決定、増幅および検出のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20171013BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20171013BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   C12N15/00 A
   C12Q1/68 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-132022(P2017-132022)
(22)【出願日】2017年7月5日
(62)【分割の表示】特願2014-508823(P2014-508823)の分割
【原出願日】2012年5月4日
(31)【優先権主張番号】11165142.8
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスカ ディ パスクアール
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ミュラー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するための、内部標識核酸プライマーの使用を含む方法を提供する。
【解決手段】本発明は、核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するための方法を提供し、この方法は:i)少なくとも1つの標識ヌクレオチドを含む、少なくとも1つの核酸プライマーを提供するステップと、ii)前記少なくとも1つの標識核酸プライマーを用いて、標的核酸を増幅するための酵素および試薬を提供するステップと、iii)標的核酸プライマーの増幅に適する条件下で反応の成分をインキュベートするステップと、iv)標識ヌクレオチドを介して、増幅された核酸を検出するステップとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学および化学の分野、特に、分子生物学の分野にある。より具体的には、本発明は、核酸を配列決定するか、または核酸を増幅および検出するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、分子的方法は、診断法において重要な役割を果たし、例えば、法科学の分野または父系試験においても重要な役割を果たしている。これらの方法内では、標的領域の増幅が中心的な手順である。方法はさらに、大半がキャピラリー電気泳動などのゲル電気泳動による、増幅された標的領域の長さの解析を含む。増幅された材料の解析は、蛍光標識の検出を介して実施する。標識は、増幅に用いられる部位特異的プライマーの5’端へと付着する。しかし、増幅された産物を解析するとき、いわゆる「色素ブロブ」という小型で妨害的なアーチファクトピークが出現する結果、高い「バックグラウンドノイズ」を伴うベースラインがもたらされ、これが、方法の感度に干渉する。「色素ブロブ」とは、電気泳動図におけるピークであって、特定の増幅産物ではなく、標識を含む分解産物を表すピークである。色素ブロブを引き起こす分子は、遊離蛍光色素標識のほか、標識へと連結された1〜8bpの長さのオリゴヌクレオチドでもある。後者は、分解されたプライマーまたは分解されたPCR産物を表しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは今や、内部標識オリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより、色素ブロブの出現が減衰することを予測外に見出した。したがって、本出願は、核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するための方法を提供し、この方法は、内部標識核酸プライマーの使用を含む。内部標識プライマーを用いることの技法上の効果は、感度がより高い方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
よって、本発明は、上述の課題を解決し、核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するための方法を提供し、この方法は:
i)少なくとも1つの標識ヌクレオチドを含む、少なくとも1つの核酸プライマーを提供するステップと、
ii)前記少なくとも1つの標識核酸プライマーを用いて、標的核酸を増幅するための酵素および試薬を提供するステップと、
iii)標的核酸プライマーの増幅に適する条件下で反応の成分をインキュベートするステップと、
iv)標識ヌクレオチドを介して、増幅された核酸を検出するステップと
を含み、ここで、
核酸プライマーが、以下の配列:
5’−NXN−3’
を含み、式中、
Nは、任意のヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであることが可能であり、
aおよびbは、ヌクレオチドの数を表し、1〜150の範囲であることが可能であり、
Xは、前記少なくとも1つの標識ヌクレオチドである。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するための方法であって、上記方法は:
i)少なくとも1つの標識ヌクレオチドを含む、少なくとも1つの核酸プライマーを提供するステップと、
ii)上記少なくとも1つの標識核酸プライマーを用いて、標的核酸を増幅するための酵素および試薬を提供するステップと、
iii)標的核酸プライマーの増幅に適する条件下で反応の成分をインキュベートするステップと、
iv)上記標識ヌクレオチドを介して、増幅された核酸を検出するステップと
を含み、ここで
上記核酸プライマーは、以下の配列:
5’−NXN−3’
を含み、式中、
Nは、任意のヌクレオチドであることが可能であり、
「a」および「b」は、ヌクレオチドの数を表し、1〜150の範囲であることが可能であり、
Xは、上記少なくとも1つの標識ヌクレオチドである、方法。
(項目2)
ステップiv)が、上記増幅された核酸をそれらの長さに従い分離するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
標識を、上記ヌクレオチドの環外アミノ基または2’−アミノ基を介して上記ヌクレオチドへと連結する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
「a」が3〜25である、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
「b」が3〜25である、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
上記核酸プライマーの長さが10〜300ntである、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記標識が、フルオロフォア、発色団、放射性同位体、および化学発光物質からなる標識の群から選択され、そして5−カルボキシフルオレセインまたは6−カルボキシフルオレセイン(FAM(商標))、VIC(商標)、NED(商標)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD−700/800、シアニン色素、例えば、CY3(商標)、CY5(商標)、CY3.5(商標)、CY5.5(商標)、Cy7(商標)、キサンテン、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6−カルボキシ−1,4−ジクロロ−2’,7’−ジクロロ−フルオレセイン(TET(登録商標))、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE(商標))、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA(商標))、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G5)、6−カルボキシローダミン−6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、Rhodamin 6G(登録商標)、BODIPY TMRなどのBODIPY色素、Oregon Green、ウンベリフェロンなどのクマリン、Hoechst33258などのベンズイミド;フェナントリジン、例えば、Texas Red(登録商標)、California Red(登録商標)、Yakima Yellow、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)500、Alexa Fluor(登録商標)514、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa
Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)660、Alexa Fluor(登録商標)680、Alexa Fluor(登録商標)700、Alexa Fluor(登録商標)750、PET(登録商標)、臭化エチジウム、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン(polymethin)色素、Atto390、Atto425、Atto465、Atto488、Atto495、Atto520、Atto532、Atto550、Atto565、Atto590、Atto594、Atto620、Atto633、Atto 647N、Atto655、Atto RhoG6、Atto Rho11、Atto Rho12、Atto Rho101、BMN(商標)−5、BMN(商標)−6、CEQ8000 D2、CEQ8000 D3、CEQ8000 D4、DY−480XL、DY−485XL、DY−495、DY−505、DY−510XL、DY−521XL、DY−521XL、DY−530、DY−547、DY−550、DY−555、DY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−647、DY−651、DY−675、DY−676、DY−680、DY−681、DY−700、DY−701、DY−730、DY−731、DY−732、DY−750、DY−751、DY−776、DY−780、DY−781、DY−782、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、TET(商標)、CAL Fluor(登録商標)Gold540、CAL Fluor RED590、CAL Fluor Red610、CAL Fluor Red635、IRDye(登録商標)700Dx、IRDye(登録商標)800CW、Marina Blue(登録商標)、Pacific Blue(登録商標)、Yakima Yellow(登録商標)、6−(4,7−ジクロロ−2’,7’−ジフェニル−3’,6’−ジピバロイルフルオレセイン−6−カルボキサミド)−ヘキシル−1−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホルアミダイト(SIMA)、CAL Fluor(登録商標)Gold540、CAL Fluor(登録商標)Orange560、CAL Fluor Red635、Quasar570、Quasar670、LIZ、Sunnyvale Red、LC Red(登録商標)610、LC Red(登録商標)640、LC Red(登録商標)670、およびLC Red(登録商標)705を含むフルオロフォアの群から選択される、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
上記増幅の方法が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベースの増幅系(TAS)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、転写媒介増幅(TMA)、自己持続配列複製(3SR)およびQβ増幅、鎖置換増幅(SDA)、多重置換増幅(MDA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、スマート増幅法(SMAP)、定量的リアルタイムPCR(qPCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、サンガー配列決定からなる群より選択される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するためのキットであって、上記キットは:
少なくとも1つの標識ヌクレオチドを含む核酸プライマー
を含み、ここで、
上記核酸プライマーが、以下の配列:
5’−NXN−3’
を含み、式中、
Nは、任意のヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであることが可能であり、
aおよびbは、ヌクレオチドの数を表し、1〜150の範囲であることが可能であり、
Xは、上記少なくとも1つの標識ヌクレオチドである、キット。
(項目10)
核酸を増幅するための酵素および試薬をさらに含む、項目9に記載のキット。
(項目11)
核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するための方法における、項目9もしくは10に記載のキットまたは少なくとも1つの標識ヌクレオチドを含む核酸プライマーの使用であって、上記核酸プライマーは、以下の配列:
5’−NXN−3’
を有し、式中、
Nは、任意のヌクレオチドであることが可能であり、
「a」および「b」は、ヌクレオチドの数を表し、1〜150の範囲であることが可能であり、
Xは、上記少なくとも1つの標識ヌクレオチドである、使用。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1:内部標識プライマーによるベースラインの改善。0.4μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマーの各々により、鋳型DNAを伴わないPCRを実施した。その後、キャピラリー電気泳動により、PCRプローブを解析した。上方の電気泳動図では、標準的な標識プライマーによる鋳型を伴わない対照(NTC)PCRの結果を示す(A)。内部標識プライマーを用いるNTC−PCRの結果をBに示す。内部標識プライマーは、70〜550bpの範囲で何ら偽陽性シグナルを引き起こさず、ベースラインが完全に平坦である。
図2図2:内部色素のカップリング位置の影響。プライマーEPL11−Yを多様な内部プライマー位置において蛍光標識した(表1を参照されたい)。0.4μMのプライマー(最終濃度)は伴うが、鋳型DNAは伴わないPCR後におけるキャピラリー電気泳動の結果を示す。色素のカップリングをプライマーの中央へと近づけるほど、アーチファクトピークの発生は減少する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書における「核酸プライマー」とは、増幅に適するオリゴヌクレオチドを意味する。当業者は、増幅に適切とするために、3’端は、ポリメラーゼによる伸長に利用可能とすることを理解するであろう。核酸プライマーは、例えば、ホスホトリエステル法およびホスホジエステル法またはこれらの自動式実施形態など、任意の適切な方法を用いて調製することができる。このような自動式の一実施形態では、ジエチル−ホスホルアミダイトを出発物質として用い、参照により本明細書に組み込まれる、Beaucageら、Tetrahedron Letters、22巻:1859〜1862頁(1981年)により記載される通りに合成することができる。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成する1つの方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,458,006号において記載されている。また、生物学的供給源(制限エンドヌクレアーゼ消化物など)から単離されたプライマーを用いることも可能である。核酸プライマーの長さは、変化しうる。長さは、必要に合わせることができる。
【0007】
本発明に従う方法の文脈では、「核酸」とは、特定のクラスの核酸、とりわけ、RNA、DNA、cDNA(相補的DNA)、LNA(ロックト核酸)、mRNA(メッセンジャーRNA)、mtRNA(ミトコンドリア)、rRNA(リボソームRNA)、tRNA(転移RNA)、nRNA(核RNA)、siRNA(短鎖干渉RNA(short interfering RNA))、snRNA(低分子核RNA)、snoRNA(低分子核小体RNA(small nucleolar RNA))、scaRNA(低分子カハール体特異的RNA(Small Cajal Body specific RNA))、マイクロRNA、dsRNA(二本鎖RNA)、リボザイム、リボスイッチ、ウイルスRNA、dsDNA(二本鎖DNA)、ssDNA(一本鎖DNA)、プラスミドDNA、コスミドDNA、染色体DNA、ウイルスDNA、mtDNA(ミトコンドリアDNA)、nDNA(核DNA)、snDNA(低分子核DNA)など、または試料中のバルク核酸から識別可能な他の任意のクラスまたはサブクラスの核酸を意味する。
【0008】
本発明者らは、内部標識核酸プライマーを使用することによって、色素ブロブを引き起こす断片の低減をもたらすことを見出した。この色素ブロブは、検出前に増幅産物をそれらの長さに従って分離しなければならない場合、特に望ましくない。よって、本発明に従う方法の一実施形態では、ステップiv)が、それらの長さに従い増幅された核酸を、好ましくは、標識ヌクレオチドを介して増幅された核酸を検出する前に分離するステップを含む。当業者は、それらの長さに従い核酸を分離する多数の方法について承知している。一般に用いられる1つの方法は、ゲル電気泳動である。よって、本発明の一実施形態では、増幅された核酸のそれらのサイズに従う分離を、ゲル電気泳動を用いて実施する。ゲル電気泳動とは、ゲルマトリックスへと印加される電界を用いて核酸分子を分離するのに用いられる技法である。「ゲル」という用語は、標的分子を含有し、次いで、これを分離するのに用いられるマトリックスを指す。大半の場合に、ゲルとは、その組成および多孔性が、解析される標的の比重/長さ、および組成に基づき選択される架橋ポリマーである。小さな核酸(DNA、RNA、またはオリゴヌクレオチド)を分離する場合、ゲルは通常、異なる濃度のアクリルアミドおよびポリアクリルアミドによる異なるサイズのメッシュネットワークをもたらす架橋剤からなる。アクリルアミドは、例えば、アクリルアミド、直鎖状のポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、またはポリイソプロピルアクリルアミドの群のうちのものでありうる。より大きな核酸(数百塩基を超える)を分離する場合は、精製アガロースをマトリックスとして選択することができる。いずれの場合にも、ゲルは固体ではあるが、多孔性マトリックスを形成する。アガロースは、高分子および高分子複合体の分離を可能とする大きな孔(pore)を有するゲルを結果としてもたらす、架橋を伴わない非荷電炭水化物の長い非分枝状鎖からなる。よって、本発明の一実施形態では、核酸の分離に用いられるマトリックスは、ポリアクリルアミドまたはアガロースである。
【0009】
ゲル電気泳動は、法医学、分子生物学、遺伝学、微生物学、および生化学で用いられる。結果は、例えば、レーザーによって標識の蛍光を励起させる光源を通常含むイメージングデバイスを用いてゲル内の標識核酸を視覚化することにより、定量的に解析することができる。標識に由来するシグナルを検出デバイスで記録し、バンドまたはスポットの強度を測定する。測定および解析は大部分、検出されたシグナルを、核酸の長さおよび検出された核酸の量に従い電気泳動図へと変換する専門的なソフトウェアにより行う。本発明の好ましい実施形態では、増幅された核酸の分離を、キャピラリーゲル電気泳動により実施する。
【0010】
さらに、当業者には、内部位置においてオリゴヌクレオチドを標識する方法も公知である。1つの可能性は、標識の、核酸塩基、例えば、核酸塩基の環外アミノ基(本明細書ではまた、アミン基とも称する)への付着であり、別の可能性は、標識の、糖の2’−炭素への付着である。
【0011】
「環外」とは、環状化学構造の環の外側に位置する基を指し、例えば、環の置換基の部分は、環に対して環外にある。本明細書で用いられる環外アミンとは、複素環式塩基の環の置換基であるアミン基を指し、アミン基の窒素が環構造の環員へと直接付着される実施形態を包含し、また、アミン基の窒素が介在基を介して複素環式塩基の環構造へと連結されうる実施形態も包含する。
【0012】
さらに、例えば、アミン基を糖の2’−炭素へと直接付着するか、アミン基の窒素を、介在基を介して糖の2’−炭素へと連結することもできるなど、標識を2’−修飾ヌクレオチドへと連結することも可能である。
【0013】
本発明の一実施形態では、標識を、環外アミン基または標識ヌクレオチド(X)の修飾2’位を介して前記標識ヌクレオチド(X)へと連結する。好ましい実施形態では、標識を、標識ヌクレオチド(X)の環外アミノ基へと連結する。好ましい実施形態では、標識を、チミンの環外アミン基へと連結する。
【0014】
当業者には、オリゴヌクレオチドを標識する可能性が公知であり、アミノ−修飾剤−C6’−dT CEP(また、5−[E−2−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルボキサミド]ビニル]としても公知である5−[N−(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)−3−アクリルイミド]など)、アミノ−修飾剤−C2−dT CEP、5−アミノアリル−dU CEP、アミノ−修飾剤−C6−dA CEP、アミノ−修飾剤−C6−dG CEP(3’−O−[(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)ホスフィノ]−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N2−[(ジメチルアミノ)メチリデン]−N8−[6−(トリフルオロアセチルアミノ)ヘキシル]−2’−デオキシグアノシンなど)、アミノ−修飾剤−15−dT CEP(3’−O−[(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)ホスフィノ]−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−5−[E−2’−[N−[15−(トリフルオロアセトアミド)−7−アザ−10,13−ジオキサ−8−オキソペンタデシル]カルボキサミド]ビニル]−2’−デオキシウリジンなど)、2’−O−アミノリンカー−U CEP(3’−O−[(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)ホスフィノ]−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−O−2−[2−(トリフルオロアセトアミド)エトキシ]エチルウリジンなど)、および2’−アミノ−D−ウリジンが含まれるがこれらに限定されない。
【0015】
核酸プライマー内の標識ヌクレオチド(X)の位置は、変化しうる。しかし、本発明者らは、内部標識された核酸プライマーが電気泳動図における色素ブロブの出現を減衰させることを見出したので、本発明に従う核酸プライマーを内部標識する、すなわち、標識ヌクレオチドは、核酸プライマーの5’位または3’位におけるヌクレオチドではない。よって、本発明に従う核酸プライマーでは、「a」および「b」が少なくとも1である。「a」および「b」の値は、標識ヌクレオチドの内部位置および核酸プライマーの全長に依存している。好ましい実施形態では、「a」および/または「b」が、1〜150、好ましくは、2〜50、なおより好ましくは、3〜25、さらにより好ましくは、4〜17である。さらなる実施形態では、「a」が、1〜150、好ましくは、2〜50、なおより好ましくは、3〜25、さらにより好ましくは、4〜17である。さらなる実施形態では、「b」が、1〜150、好ましくは、2〜50、なおより好ましくは、3〜25、さらにより好ましくは、4〜17である。本発明者らは、標識ヌクレオチドがプライマーの中央位置に多いほど、色素ブロブの減衰効果が増強されることを予測外に見出した。よって、一実施形態では、「a」および「b」が、15以下だけ、好ましくは、10以下だけ、より好ましくは、5以下だけ異なる。さらに好ましい実施形態では、「a」および「b」が同じ値を有する。本発明者らは、「a」および「b」が10のときに、色素ブロブの減衰に関する最大の効果が達せられることを見出した。よって、本発明の一実施形態では、「a」および「b」が10である。しかし、当業者は、プライマーの長さおよび配列に依存する標識の正確な位置を変化させることができる。当業者は、ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチド(N)は、必ずしも分子全体にわたり同じでなくともよいこと、例えば、「a」または「b」が5であるとき、これは、結果として得られる配列NNNNNXNNNNNにおいて、全ての「N」が同じヌクレオチドであることを意味しないことを理解するであろう。さらに、当業者は、増幅される標的核酸に従い、核酸プライマーのヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを選択するであろう、すなわち、当業者は、標的核酸の一部と相補的な配列を選択するであろう。
【0016】
核酸プライマーの長さは、必要に従って、また所望の特異性に応じて適合させることができ、例えば、長いプライマーほど高度の特異性を有する。本発明の好ましい実施形態では、核酸プライマーの全長が約3〜300ntであり、より好ましくは、約5〜100nt、なおより好ましくは、約6〜50ntである。さらにまた好ましい実施形態では、核酸プライマーの全長が15〜34ntである。
【0017】
本発明に従う方法によって達成される技術上の効果は、非常に多様な標識にわたって観察され得る。よって、それは、原則として、核酸を標識するのに適した任意の標識を用いて実行され得る。しかし、本発明の一実施形態では、標識が、フルオロフォア、発色団、放射性同位体、化学発光物質、および酵素からなる標識の群より選択される。好ましい実施形態では、標識が、好ましくは、5−カルボキシフルオレセインまたは6−カルボキシフルオレセイン(FAM(商標))、VIC(商標)、NED(商標)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD−700/800、シアニン色素、例えば、CY3(商標)、CY5(商標)、CY3.5(商標)、CY5.5(商標)、Cy7(商標)、キサンテン、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6−カルボキシ−1,4−ジクロロ−2’,7’−ジクロロ−フルオレセイン(TET(登録商標))、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(dimethodyfluorescein)(JOE(商標))、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA(商標))、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G5)、6−カルボキシローダミン−6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、Rhodamin 6G(登録商標)、BODIPY TMRなどのBODIPY色素、Oregon Green、ウンベリフェロンなどのクマリン(coumarine)、Hoechst 33258などのベンズイミド;フェナントリジン、例えば、Texas Red(登録商標)、California Red(登録商標)、Yakima Yellow、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)500、Alexa Fluor(登録商標)514、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)660、Alexa Fluor(登録商標)680、Alexa Fluor(登録商標)700、Alexa Fluor(登録商標)750、PET(登録商標)、臭化エチジウム、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン(polymethin)色素、Atto 390、Atto 425、Atto 465、Atto 488、Atto 495、Atto 520、Atto 532、Atto 550、Atto 565、Atto 590、Atto 594、Atto 620、Atto 633、Atto 647N、Atto 655、Atto RhoG6、Atto Rho11、Atto Rho12、Atto Rho101、BMN(商標)−5、BMN(商標)−6、CEQ8000 D2、CEQ8000 D3、CEQ8000 D4、DY−480XL、DY−485XL、DY−495、DY−505、DY−510XL、DY−521XL、DY−521XL、DY−530、DY−547、DY−550、DY−555、DY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−647、DY−651、DY−675、DY−676、DY−680、DY−681、DY−700、DY−701、DY−730、DY−731、DY−732、DY−750、DY−751、DY−776、DY−780、DY−781、DY−782、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、TET(商標)、CAL Fluor(登録商標)Gold 540、CAL Fluor RED 590、CAL Fluor Red 610、CAL Fluor Red 635、IRDye(登録商標)700Dx、IRDye(登録商標)800CW、Marina Blue(登録商標)、Pacific Blue(登録商標)、Yakima Yellow(登録商標)、6−(4,7−ジクロロ−2’,7’−ジフェニル−3’,6’−ジピバロイルフルオレセイン−6−カルボキサミド)−ヘキシル−1−O−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホルアミダイト(SIMA)、CAL Fluor(登録商標) Gold 540、CAL Fluor(登録商標)Orange 560、CAL Fluor Red 635、Quasar 570、Quasar 670、LIZ、Sunnyvale Red、LC Red(登録商標)610、LC Red(登録商標)640、LC Red(登録商標)670、およびLC Red(登録商標)705を含むフルオロフォアの群より選択されるフルオロフォアである。さらに好ましい本発明の実施形態では、標識が、Atto 465、DY−485XL、FAM(商標)、Alexa Fluor(登録商標)488、DY−495、Atto 495、DY−510XL、JOE、TET(商標)、CAL Fluor(登録商標)Gold 540、DY−521XL、Rhodamin 6G(登録商標)、Yakima Yellow(登録商標)、Atto 532、Alexa Fluor(登録商標)532、HEX、SIMA、Atto RhoG6、VIC、CAL Fluor Orange 560、DY−530、TAMRA(商標)、Quasar 570、Cy3(商標)、NED(商標)、DY−550、Atto 550、Alexa Fluor(登録商標)555、PET(登録商標)、CAL Fluor RED 590、ROX、Texas Red(登録商標)、CAL Fluor Red 610、CAL Fluor Red 635、Atto 633、Alexa Fluor(登録商標)633、DY−630、DY−633、DY−631、LIZ、Quasar 670、DY−635、およびCy5(商標)からなるフルオロフォアの群より選択される。さらにまた好ましい実施形態では、標識が、FAM(商標)、DY−510XL、DY−530、およびAtto 550からなるフルオロフォアの群より選択される。
【0018】
一実施形態では、本発明に従う核酸プライマーが、修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、本明細書の上記で概括した標識を含むヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、脱塩基部位、および消光剤からなる群より選択される標識ヌクレオチドであるヌクレオチドを包含する。当業者は、必要に従い、適切なヌクレオチドを、包括的な数の異なるヌクレオチドの種類から選択することが可能である。好ましい実施形態では、各Nが独立して、チミジン、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、およびイノシンからなる群より選択される。また、例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、7−メチルグアニン、キサントシン(xanthinosine)、7−メチルグアノシン、5,6−ジヒドロウラシル、5−メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、5−メチルシチジンであるヌクレオチド塩基も包含される。よって、一実施形態では、1またはそれより多い「N」が、修飾ヌクレオチドである。
【0019】
本明細書における「修飾ヌクレオチド」とは、非天然ヌクレオチドを指す。当業者には「修飾ヌクレオチド」が公知である。しかし、本発明の一実施形態では、修飾ヌクレオチドが、ロックト核酸(LNA)またはペプチド核酸(PNA)、本明細書の上記で概括した標識ヌクレオチド、消光剤へと連結されたヌクレオチド、および脱塩基部位からなる群より選択される。
【0020】
消光とは、所与の物質の蛍光強度を減少させる任意の過程を指す。本発明の文脈における「消光剤」は、例えば、活性化を伴わない標識の基本的な蛍光を消光させるのに適する残基に関する。励起状態の反応物による消光、エネルギー移動による消光、複合体形成による消光、および衝突による消光など、多様な過程が、消光を結果としてもたらしうる。結果として、消光は、圧力および温度に大きく依存することが多い。酸素分子およびヨウ化物イオンは、一般的な化学消光剤である。消光は、レーザー誘起蛍光など、非即時的分光光度法の問題を提起する。消光は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイの基盤である。特定の分子生物学的標的との相互作用時における消光および脱消光は、分子イメージング用の活性化可能な光学造影剤の基盤である。エネルギーを2つの色素であるドナーとアクセプターとの間で非放射的に(光子の吸収または放射を伴わずに)移動させうる異なる機構がいくつか存在する:フェルスター共鳴エネルギー移動、デクスターエネルギー移動、エキシプレックス(励起状態錯体)の形成、および静的消光(また、接触消光とも称する)。当業者は、必要に従い消光剤を選択することができる。
【0021】
本発明の文脈における「脱塩基部位」(また、AP部位(脱プリン/脱ピリミジン部位)としても公知である)は、プリン塩基もピリミジン塩基も有さない核酸/オリゴヌクレオチド内の位置である。脱塩基部位については、「Compositions and Methods for Enhancing Hybridization and Priming Specificity」(US−B1 6,361,940)のほか、「Method for Label−free Detection of Hybridized DNA Target」(US−B1 6,579,680)および2003年7月4日にウェブ上で公開された「Use of Abasic Site−Containing DNA Strands for Nucleobase Recognition in Water」、Yoshimotoら、JACS Communicationsにおいて言及されている。
【0022】
当業者は、本発明に従う核酸プライマーが、異なる種類の核酸または修飾核酸からなることをさらに認識するであろう。よって、好ましい実施形態では、核酸プライマーが、DNA、RNA、PNA、またはLNAからなる。
【0023】
本発明者らは、標識を、リンカーにより核酸プライマー内のヌクレオチドへと付着すると、本発明に従う方法の技法上の効果をさらに増強しうることを予測外に見出した。よって、一実施形態では、標識を、リンカーを介してヌクレオチドへと付着する。適切なリンカーは、先行技術から公知のスペーサーを含みうる。標識と本発明に従うヌクレオチドとの間では、例えば、CリンカーまたはCリンカーなど、例えば、2〜18個の炭素原子を含むリンカーを用いることができる。スペーサーは、分枝状アミノリンカーまたは非分枝状アミノリンカーであることが好ましい。さらに好ましい実施形態では、スペーサーが、C〜C18リンカーまたはC〜C18アミノリンカーの群から選択され、好ましくは、スペーサーが、C〜C12リンカーまたはC〜C12アミノリンカーの群に由来する。リンカーまたはアミノリンカーは、直鎖状のアルキルであることが好ましい。極めて特殊な実施形態では、スペーサーが、CスペーサーまたはCスペーサーである。アミノリンカーを用いて、一級アミノ基を、オリゴヌクレオチドの5’端、3’端、環外アミノ基、または修飾2’位へと組み込むことができる。活性アミノ基は、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの形態にある標識化剤を用いて、オリゴヌクレオチドを標識するのに用いることができる。
【0024】
本発明の方法は、核酸の増幅を含む。増幅は、公知の多様な増幅法により実施することができる。よって、本発明の一実施形態では、増幅を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温増幅(Walkerら、「Strand displacement amplification−−an isothermal, in vitro DNA amplification technique」、Nucleic Acids Res.、20巻(7号):1691〜6頁(1992年)における等温増幅など)、リガーゼ連鎖反応(LCR;Landegrenら、「A Ligase−Mediated Gene Detection Technique」、Science、241巻:1077〜1080頁、1988年、またはWiedmannら、「Ligase Chain Reaction (LCR)−−Overview and Applications」、PCR Methods and Applications(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、1994年)、S51〜S64頁)におけるリガーゼ連鎖反応など)、転写ベースの増幅系(TAS)、核酸配列ベースの増幅(NASBA;Kievitsら(1991年)、J Virol Methods、35巻:273〜286頁)、ローリングサークル増幅(RCA;Liuら、「Rolling circle DNA synthesis: Small circular oligonucleotides as efficient templates for DNA polymerases」、J. Am. Chem. Soc.、118巻:1587〜1594頁(1996年)におけるローリングサークル増幅など)、転写媒介増幅(TMA;Vuorinenら(1995年)、J Clin Microbiol、33巻:1856〜1859頁)、自己持続配列複製(self−sustaining sequence replication)(3SR)、Qβ増幅、鎖置換増幅(SDA)(Walkerら(1992年)、Nucleic Acids Res、20巻(7号):1691〜6頁)、多重置換増幅(MDA)(Deanら(2002年)、Proc Natl Acad Sci USA、99巻(8号):5261〜5266頁)、制限支援RCA(restriction aided RCA)(Wangら(2004年)、Genome Res、14巻:2357〜2366頁)、単一プライマーによる等温増幅(SPIA;Daffornら(2004年)、Biotechniques、37巻(5号):854〜7頁)、ループ媒介等温増幅(LAMP;Notomiら(2000年)、Nucleic Acids Res、28巻(12号):e63)、転写媒介増幅(TMA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、熱安定性のHDA(tHDA)(Anら(2005年)、J Biol Chem、280巻(32号):28952〜28958頁)、スマート増幅法(smart−amplification process)(SMAP;Mitaniら(2007年)、Nat Methods、4巻(3号):257〜62頁))、定量的リアルタイムPCR(qPCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、サンガー配列決定からなる群より選択される方法により実施する。
【0025】
本発明は、核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するためのキットにさらに関し、このキットは:
少なくとも1つの標識ヌクレオチドを含む核酸プライマー
を含み、ここで、
この核酸プライマーは、以下の配列:
5’−NXN−3’
を含み、式中、
Nは、任意のヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドであることが可能であり、
aおよびbは、ヌクレオチドの数を表し、1〜150の範囲であることが可能であり、そして
Xは、前記少なくとも1つの標識ヌクレオチドである。
【0026】
本発明に従う方法について上記で概括された核酸プライマーの実施形態はまた、本発明に従うキットの核酸プライマーにも適用される。
【0027】
上記で概括された通り、増幅法は、異なる方法から選択することができる。鋳型核酸および増幅法に応じて、本発明に従うキットには異なる酵素または試薬を組み込むことができる。さらなる実施形態では、キットはまた、核酸プライマーに加えて、緩衝液、dNTPおよび/もしくはNTP、ならびに/または酵素も含む。
【0028】
本発明の一実施形態では、キットが、ポリメラーゼをさらに含む。ポリメラーゼは、キット内の別個の反応薬剤として存在させることもでき、組み合わせたアッセイミックス中、例えば、マスターミックス中で他のキット成分と併せてあらかじめ混合することもできる。DNAポリメラーゼは、好ましくは、「熱安定性」であり、これは一般に、DNA鎖の変性に用いられる高温で安定であることを意味する。より具体的には、熱安定性のDNAポリメラーゼは、PCRにおいて用いられる高温で実質的に不活化されない。このような温度は、pH、塩濃度、および当技術分野で公知の他の条件を含めた多数の反応条件に応じて変化する。本発明の文脈では、好ましい実施形態は、5’−3’エクソヌクレアーゼ活性を保有しうる熱安定性のDNAポリメラーゼ、または5’−3’エクソヌクレアーゼ活性が低下しているかもしくはこれを有さない熱安定性のDNAポリメラーゼを伴う。別の実施形態では、熱安定性のDNAポリメラーゼが、3’−5’エクソヌクレアーゼ(プルーフリーディング)活性も加えて保有しうる。当技術分野では、多数の熱安定性のDNAポリメラーゼが報告されている。特に、有用なポリメラーゼは、Thermus aquaticus、Thermus filiformis、Thermus flavus、またはThermus thermophilusなど、多様なThermus属細菌種から得られるポリメラーゼである。他の有用な熱安定性のポリメラーゼは、Thermococcus literalis、Pyrococcus furiosus、Thermotoga属種、およびWO−A−89/06691(1989年7月27日に公開)において記載される微生物供給源を含めた他の多様な微生物供給源から得られる。このようなポリメラーゼには、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermotoga neopalitana(Tne)DNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(TliまたはVENT.(商標))DNAポリメラーゼ、Thermus eggertssonii(Teg)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENT.DNAポリメラーゼ、Pyrococcus woosii(Pwo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus属種KDD2(KOD)DNAポリメラーゼ、Bacillus sterothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Bacillus caldophilus(Bea)DNAポリメラーゼ、Sulfolobus acidocaldarius(Sac)DNAポリメラーゼ、Thermoplasma acidophilum(Tac)DNAポリメラーゼ、Thermus flavus(Tfl/Tub)DNAポリメラーゼ、Thermus ruber(Tru)DNAポリメラーゼ、Thermus brockianus(DYNAZYME)DNAポリメラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth)DNAポリメラーゼ、Mycobacterium DNAポリメラーゼ(Mtb、Mlep)、ならびに室温では不活性であるが、高温におけるインキュベーションにより完全な活性が迅速に再獲得されうるホットスタート用ポリメラーゼを含めた、これらの変異体、改変体、および派生物が含まれるがこれらに限定されない。
【0029】
本明細書で用いられる「dNTP」という用語は、デオキシリボヌクレオシド三リン酸を指す。このようなdNTPの非限定的な例は、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、dUTPであり、これらはまた、例えば、蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識を含む標識誘導体の形態でも存在しうる。また、修飾ヌクレオチド塩基を伴うdNTPであって、ヌクレオチド塩基が、例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、7−メチルグアニン、イノシン、キサントシン、7−メチルグアノシン、5,6−ジヒドロウラシル、5−メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、5−メチルシチジンであるdNTPも包含される。本発明にはさらに、上記分子のddNTPも包含される。
【0030】
本明細書で用いられる「NTP」という用語は、リボヌクレオシド三リン酸を指す。このようなNTPの非限定的な例は、ATP、GTP、CTP、TTP、UTPであり、これらはまた、例えば、蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識を含む標識誘導体の形態でも存在しうる。
【0031】
本発明はまた、本発明に従うキットまたは核酸プライマーの、核酸を配列決定するかまたは核酸を増幅し、そして検出するための方法における使用にも関する。本明細書に記載された核酸プライマーの実施形態はまた、用いられる核酸プライマーの実施形態にも適用される。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
これらの例におけるPCRは、以下の通りに実行した:
0.2μlのMulti Taq2 DNAポリメラーゼ(QIAGEN、Hilden、Germany)を、ホットスタート用DNAポリメラーゼとして用いた。2.5μlのReaction MixB(QIAGEN、Hilden、Germany)を、PCR緩衝液として用いた。全てBiomers.net(Ulm、Germany)製である、0.4μMの未標識D16_revリバースプライマー(5’−gtttgtgtgtgcatctgtaagcatgtatc−3’;配列番号3)と組み合わせた、0.4μMの内部標識フォワードプライマーであるD16−P−intern(5’−gggggtctaagagcXtgtaaaaag−3’;配列番号1;配列中、Xは、チミジンヌクレオチドの環外アミノ基へと連結されたATTO550を表す)または0.4μMの標識フォワードプライマーであるD16−P−ATTO550(5’−ATTO550−gggggtctaagagcttgtaaaaag−3’;配列番号2)を、PCRの実行に用いた。
【0033】
【表1】
【0034】
ヌクレアーゼ不含水(QIAGEN、Hilden、Germany)により、容積25μlにした。
【0035】
PCRは、以下のプロトコールにより、サーモサイクラー9700 PCR System Gold(Life Technologies Corporation、Carlsbad、CA、USA)を用いて実行した。
【0036】
【表2】
【0037】
1μlのサイクリングされた(cycled)PCRプローブを、12μlのHi−Di Formamide(Life Technologies Corporation、Carlsbad、CA、USA)および0.5μlのDNAサイズ標準550(BTO)(QIAGEN、Hilden、Germany)へと添加し、95℃で3分間にわたりインキュベートした。
【0038】
変性させたPCRプローブを、標準的な条件下で3500Genetic Analyzer(Life Technologies Corporation、Carlsbad、CA、USA)を用いるキャピラリー電気泳動により解析した。
【0039】
図1に示される結果は、内部標識プライマーの使用が、通常のバックグラウンドノイズの望ましくないアーチファクトピークの低減を結果としてもたらすことを明確に裏付ける。70〜550bpの範囲におけるベースラインは、完全にノイズがない、すなわち、いかなるバックグラウンドピークも色素ブロブも伴わない。これに対し、5’端で標識された標準的なPCRプライマーは、最大500相対蛍光単位(rfu)の、多数のアーチファクトピークを引き起こす。最小量の鋳型DNAによるPCR増幅は、約200rfuのピークを与えるPCR産物を典型的に結果としてもたらす。標準的な標識プライマーを用いると、電気泳動図の解釈は、多数の高いアーチファクトピーク(色素ブロブ)により損なわれる結果、プローブの評価が不完全となる。内部標識プライマーを用いると、色素ブロブが目視できないので、200rfuのPCR産物を明確に識別し、割り当てることができる。これらの改善は、方法の感度において極めて大きな利点をもたらす。
【0040】
(実施例2)
任意の内部塩基において標識されたプライマーを用いると、バックグラウンドノイズの大幅な低減が明らかである。しかし、さらなる実験では、プライマー内の内部標識の位置を選択することにより、効果をさらに増強しうることが示される。
【0041】
プライマーを、EPL−11−Yの配列(配列番号4〜9;表1を参照されたい)の異なる塩基対位置において標識する。解析は、リバースプライマーとしてのプライマーEPL11/2(5’−gaacaactctggttgtattgtcttc−3’;配列番号10)および以下のサイクリング条件を用いて、実施例1で記載した通りに実施する。
【0042】
【表3】
【0043】
図2に示される結果は、プライマーの中央位置に近い標識の内部位置を選択することにより、ベースライン平滑化効果をさらに増強しうることを裏付ける。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【外国語明細書】
2017200488000001.pdf