【解決手段】 カテーテルは、高電極密度のバスケット形状電極アセンブリを有する。このバスケット形状電極アセンブリは、最大12個など複数のスパインを有することができ、各スパインは最大16個など複数の電極を有する。複数のスパインの遠位端は、遠位ハブに接合されている。これらはいずれも超弾性材料の単片から形作られている。
前記応力除去処理用縁部の前記形状記憶材料の少なくとも一部が、遠位端における第1の厚みと、前記可撓性ワイヤの前記遠位端における第2の厚みに向かう漸減部と、を備える、請求項2に記載のカテーテル。
前記複数の可撓性ワイヤがそれぞれブリッジ部分を更に備え、前記ブリッジ部分が、前記可撓性ワイヤの前記遠位端を前記遠位ハブに接続している、請求項1に記載のカテーテル。
隣接する2つの可撓性ワイヤの前記遠位端がブリッジ部分を形成し、前記ブリッジ部分が、前記可撓性ワイヤを前記遠位ハブに接続している、請求項1に記載のカテーテル。
前記正弦波形状陥凹が間隙を画定し、前記間隙は、送達構成にあるときに第1の距離を有し、配備構成にあるときに第2の距離を有する、請求項11に記載のカテーテル。
前記遠位ハブが、複数の遠位陥凹を更に含む連続リボン形の波形を備え、各遠位陥凹が、隣接する可撓性ワイヤの間に位置し、且つ前記可撓性ワイヤの前記遠位端から遠位に延在する、請求項1に記載のカテーテル。
前記遠位ハブが、遠位に配向された複数の遠位陥凹と、近位に配向された複数の近位陥凹とを有し、前記遠位陥凹及び近位陥凹が、互い違いになり、且つ前記遠位ハブの周縁の周りに等間隔に離間されている、請求項13に記載のカテーテル。
前記遠位ハブが、第1の応力除去処理用縁部と第2の応力除去処理用縁部とを有し、前記第1の応力除去処理用縁部が前記遠位ハブの遠位端上に波形形状を有し、前記第2の応力除去処理用縁部が前記遠位ハブの近位縁部上にアーチ型形状を有し、前記遠位ハブが少なくとも2つの遠位突起を更に含み、前記遠位突起が前記遠位ハブの周縁の周りに均等に分布している、請求項1に記載のカテーテル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、本開示は、具体的に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、変化し得ることが理解されるべきである。したがって、本開示の実践又は実施形態には、本明細書に記載されている選択肢と類似の又は等価ないくつかの選択肢を用いることが可能であるが、好ましい材料及び方法は本明細書に記載されている。
【0020】
本明細書で使用する用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためのみであって、制限することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0021】
添付の図に関連して下記に示される詳細記述は、本開示の例示的実施形態を説明するためのものであり、本開示が実践可能な限定的な例示的実施形態を示すことを意図したものではない。本記述全体にわたって使用される用語「例示的」とは、「実施例、事例、又は実例として役立つ」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細記述には、本明細書の例示的な実施形態の徹底した理解を提供することを目的とした、具体的な詳細が含まれる。本明細書の例示的実施形態が、これらの具体的な詳細なしでも実施可能であることは、当業者にとって明らかであろう。場合によっては、本明細書に提示されている例示的実施形態の新規性が不明確になるのを回避するため、周知の構造及びデバイスはブロック図の形式で図示されている。
【0022】
専ら便宜上、且つ明確さを期するため、上、下、左、右、上方、下方、上側、下側、裏側、後側、背側、及び前側などの方向を示す用語が、添付図面に関して使用されることがある。これら及び類似の方向を示す用語は、いかなる方法によっても本開示の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【0023】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0024】
最後に、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0025】
心室内での特定の種類の電気的活性は周期的ではない。例としては、動脈粗動又は動脈細動、及び梗塞から生じた心室壁の瘢痕に起因する心室性頻拍が挙げられる。かかる電気的活性は、1心拍ごとに不規則である。この種の電気的活性を解析、又は「マップ」するには、1心拍以内といったように、できるだけ迅速に「全体像」が得られることが望ましい。換言すると、マップ又は全体像のすべてのポイントは、10分の1秒以内に同時に捕捉することが可能である。本開示の技法に従い、電極と組織間の接触の改善により電極密度を高めたバスケット形状電極アセンブリを使用することによって、この電気的活性を正確にマッピングできる。
【0026】
図1に示すように、カテーテル10は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体の近位端に設けられた制御ハンドル14と、を備え、それぞれが複数の電極20を担持する複数のスパイン18を有するバスケット形状電極アセンブリ16が、カテーテル本体12の遠位端に装着されている。カテーテル本体12は、単一の軸方向ルーメン、つまり中央ルーメン26を有する細長い管状構造物を備えるが、所望により、任意追加的に複数のルーメンを有することもできる。電気信号の正確なマッピングを可能にするには、例えば、1回という少ない拍動で右房又は左房の電気的機能の大部分又はその実質的にすべてを検出するには、比較的高密度の電極アレイを提供することが望ましいことがある。したがって、スパイン18の使用数は、6、8、10、12、又は任意の好適な個数とすることができる。スパイン18の遠位端は、遠位ハブ22に一体的に接合される。遠位ハブ22を略円形の偏平構造としたことにより、マッピング対象の組織により多くの電極20を接触させることを可能にしている。スパイン18を遠位ハブ22の周りに均等又は不均等に径方向へ分布し得る。更に、スパイン1つにつき電極を少なくとも8個ないし最大約16個といったように、各スパイン18に複数の電極20を備えることもできる。同様に、電極を、スパインに沿って均等に分布させることも、又は近位に、中央に、若しくは遠位に偏って分布させることも可能であり、そうすることで、測定した電気信号の解析を容易にすることができる。
【0027】
カテーテル本体12は、可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造を有していてもよく、任意の好適な材料で作製することができる。或る構造物は、ポリウレタン又はPEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)製の外壁を備える。外壁は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼などの、埋め込まれた編組みメッシュを備えており、そのため、制御ハンドル14が回転されると、カテーテル本体の遠位端がそれに対応する方式で回転するようになっている。カテーテル本体12の外径は、重大な意味をもたないが、一般的に、可能な限り小さくすべきであり、所望される用途によっても異なるが、約10Fr(french)以下とすることが可能である。一態様では、カテーテル本体12の全径は、関連する電気リード線を収容する目的でバスケット形状電極アセンブリ16に実装された電極20の数に関係し得る。例えば、各スパインが16個の電極を担持する12個のスパイン(合計192個の電極)からなる設計、各スパインが16個の電極を担持する10個のスパイン(合計160個の電極)からなる設計、及び各スパインが16個の電極を担持する8個のスパイン(合計128個の電極)からなる設計では、最大10.0Frのカテーテル本体を使用することが可能である。同様に、外壁の厚みも決定的な重要性をもたないが、中央ルーメンが牽引ワイヤ、リードワイヤ、センサケーブル、及び任意の他のワイヤ、ケーブル、又はチューブを収容できるように、十分に薄いものとし得る。所望により、外壁の内部表面は補剛チューブ(図示せず)で裏張りされて、捩り安定性が改善される。本発明と関連して使用するうえで好適なカテーテル本体の構造物の例は、米国特許第6,064,905号に記載及び図示されており、同特許の全開示内容は本明細書において参照により援用されている。
【0028】
膨張状態のアレンジメントを取り易いように、後述するような形状記憶材料がスパイン18に備えてある。
図2に示すように、バスケット形状電極アセンブリ16が膨張状態の構成を取ると、スパイン18が外側に弓形状に曲がり、配備先となる房室(左房など)の壁に接触又は接近するようになる。
【0029】
一態様では、電気生理学医は、当該分野において一般に知られているように、ガイド用シース、ガイドワイヤ、及び拡張器を患者の体内に導入することが可能である。例としては、本発明のカテーテルと関連して用いるために好適なガイド用シースは、10FrのDiRex(商標)ガイド用シース(BARD(Murray Hill,NJ)から市販されている)が挙げられる。ガイドワイヤを挿入し、拡張器を除去して、カテーテルをガイド用シースに通して導入することにより、カテーテルが、ガイドワイヤルーメン26経由でガイドワイヤ上を通過することが可能になる。
図2に図示する1つの例示的方法では、カテーテルは、下大静脈(IVC)を通って右房(RA)に最初に導入され、左房(LA)に到達するために、隔膜(S)を通過する。
【0030】
上記の内容から分かるように、カテーテル全体が、患者の血管系を通って所望の位置に到達できるように、ガイド用シースは、収縮位置にあるバスケット形状電極アセンブリ16のスパイン18を被覆する。カテーテルの遠位端が所望の位置、例えば左房に到達すると、ガイド用シースは引き抜かれて、バスケット形状電極アセンブリ16が露出する。ガイド用シースが引き抜かれた際、バスケット形状電極アセンブリの形状記憶材料によって、房室内部でデバイスが径方向に膨張する。バスケット形状電極アセンブリ16は、径方向に膨張した状態で、リング電極20が心房の組織と接触する。当業者に認識されるように、バスケット形状電極アセンブリ16は、マッピング対象となる心臓の領域の構成に応じて、様々な構成にて完全に又は部分的に膨張させることも、直線状にすることも、又は偏向させることも可能である。
【0031】
バスケット形状電極アセンブリ16が膨張しているときに、電気生理学医は、電極20を使用して、局所活性化時間のマッピング及び/又は焼灼を行うことができる。この電極は、電気生理学医が患者を診断し、患者に対し治療を施す際の手引きとなり得るものである。カテーテル本体上に装着された1個若しくは2個以上の基準リング電極をカテーテルに備えることもできるし、且つ/又は1個若しくは2個以上の基準電極を患者の体外に配置することもできる。バスケット形状電極アセンブリ上に複数の電極を有するカテーテルを使用すると、電気生理学医が心房などの心臓洞領域に関する真の解剖学的構造を把握することができるため、この領域のマッピングの迅速化が可能になる。
【0032】
本明細書において、電極アセンブリ16の説明に用いられている「バスケット形状」という用語は、図に描かれた構成に限定されず、その近位端と遠位端に直接的又は間接的に接続された複数の膨張可能なアーム、つまりスパインを含む、他の設計(球形又は卵形の設計など)も含み得る。一態様では、調査対象の患者の右房又は左房などの領域に密着するような、患者の解剖学的構造に応じた異なるサイズのバスケット形状電極アセンブリを用いることができる。
【0033】
バスケット形状電極アセンブリ16の一実施形態の詳細図を
図3に示す。これは、16個の電極20をそれぞれ担持する、合計12個のスパイン18を特徴とする。上述した通り、他の実施形態では、スパイン18及び/又は電極20の使用数が異なる場合もあり、それぞれ、所望に応じて、均等又は不均等に分布させ得る。スパイン18の遠位端は遠位ハブ22に接合され、同様に、スパイン18の近位端はカテーテル本体12の遠位端に固定される。ルーメン26は、ガイドワイヤルーメンとして使用することもできるし、いくつかの実施形態では、ヘパリン加生理食塩水など好適な潅注流体をバスケット形状電極アセンブリ16に供給する目的にルーメン26を使用することもできる。制御ハンドル14に金具(図示なし)を装着して、好適な供給源又はポンプからの潅注流体をルーメン26に誘導し得る。
【0034】
各スパイン18は、1個又は2個以上のリング電極20が装着される非導電性被覆30付き可撓性ワイヤ28を備え得る。一実施形態では、可撓性ワイヤ28は形状記憶材料から形成されて、膨張状態のアレンジメントと収縮状態のアレンジメントとの移行を促進してよく、非伝導性被覆30は、ポリウレタン又はポリイミドチューブなど生体適合性プラスチックチューブをそれぞれ含み得る。複数の可撓性ワイヤ28を接合することによって、可撓性ワイヤアセンブリ29を形成できる。
【0035】
図4及び
図5には、可撓性ワイヤアセンブリ29の一実施形態が例証されている。可撓性ワイヤアセンブリ29は、複数の可撓性ワイヤ28を備える。可撓性ワイヤ28の遠位端は、遠位ハブ22に接合される。一実施形態において、可撓性ワイヤアセンブリ29は、ニチノールというニッケルチタン合金から構成される。
図4に例証されているように、一実施形態において、可撓性ワイヤアセンブリ29は、単一のニチノール製円筒チューブから形成される。本実施形態において、ニチノール製チューブは、2.59mm(0.102インチ)の外径と2.18mm(0.086インチ)の内径とを有する。一実施例において、この外径は10Fr以下である。加えて、或る実施形態において、ニチノール製チューブの長さは、1mm(0.039インチ)〜20mm(0.79インチ)、すなわち、スパインを形成するのに十分な長さである。当業者に理解されるように、スパインは長さがそれぞれ異なる場合があり、その長さはデバイスの配備先となる房室サイズに対応する。
【0036】
先に述べたように、可撓性ワイヤアセンブリ29は、単一チューブから形成される。一実施形態において、ニチノール製チューブは、レーザー切断又はエッチングなどの標準的な切断技術を用いて切断される。別の実施形態では、適切なドリルを使用してニチノール製チューブ中のパターンをトレースする場合もあれば、続いてレーザーを使用してニチノール製チューブ内のパターンを完成させる場合もある。可撓性ワイヤアセンブリ29にニチノール製チューブを形成する際には、他の公知の方法を使用することもできる。適切なレーザーを使用して、可撓性ワイヤ28及び遠位ハブ22を単一ユニットとしてチューブから切断する。個々の可撓性ワイヤ28を切断してチューブを作製し、残余の材料で遠位ハブ22を形成する。一実施形態において、遠位ハブ22の高さは、アセンブリが切断されるニチノール製チューブの太さと同じ寸法である。本実施形態において、遠位ハブ22の高さは、先行技術と比べて減縮されている。使用中、配備構成にあるときには、この高さの減縮が、減縮された寸法を有する遠位ハブに置き換えられる。遠位ハブ22の寸法を減縮することにより、遠位ハブ22に近接している電極のうち房室に接触する電極の数が増し、房室のマッピングの速度及び精度を向上させることが可能になる。
【0037】
チューブを可撓性ワイヤアセンブリ29に形成するプロセスはまた、ハブ22上に少なくとも1つの応力除去処理用縁部31を形成することを含む。応力除去処理用縁部31は、バスケット形状電極アセンブリ16を送達アレンジメントから配備アレンジメントに移行し易いように成形加工された縁部である
図4及び
図5に例証されているように、応力除去処理用縁部31は、可撓性ワイヤアセンブリ29の遠位端上にあるホタテガイ状縁部を含む。この縁部が形成されると、遠位ハブの材料の量が減少する。このような材料の減少によって、遠位ハブ22に対する応力の量を抑えながら、スパインをバスケット形状に膨張させることが可能になる。周知のように、可撓性ワイヤ28がバスケット形状になるまで膨張した際、遠位ハブの遠位端の成形加工された縁部31は、内側に移動又は回転する。この縁部が、配備後の遠位ハブ22の内径とされる。そのような動作が為されている間、バスケット形状デバイスが形成されるにつれて配備後の遠位ハブ22の内径サイズが縮小する。ゆえに、遠位ハブ22を形成する際に、この材料を取り除くと、送達アレンジメントから配備アレンジメントに移行する際にハブにかかる応力及び歪みが減じられる。遠位ハブ22を形成する際の追加的な工程において、ホタテガイ状縁部上に生じた鋭い縁部が平滑化され、使用中に組織が損傷するのを防ぐことが可能である。この応力除去処理用縁部の他の幾何学的形状の詳細は、
図8a〜
図15と関連させて後述してあり、例として、波形縁部、タブ状縁部、又は角錐台縁部を挙げることができる。
【0038】
図4及び
図5に更に例証されているように、遠位ハブ22の近位部分33に、第2の応力除去処理用縁部35を備えることもできる。一実施形態において、電極アセンブリ16が送達構成(
図4)から配備構成(
図5)に移行した際には、遠位ハブ22の近位部分33が、配備後の遠位ハブの外径とされる。配備中にデバイスの移動によって生ずる応力を更に減ずる目的で、遠位ハブの近位部分から余分な材料を取り除いても差し支えない。
図5に示すように、例えば、スパイン間の空間は、半円形状又はアーチ形状を有し得る。そのため、可撓性ワイヤ28の膨張中に、遠位ハブの内径が減分されるにつれて、ハブの近位部分33の外径が増分される。このプロセス中に、可撓性ワイヤ28間の外径材料を取り除けば、応力が更に減じられる。別の実施形態では、可撓性ワイヤアセンブリ29の遠位ハブ22は、焼きなましによって、可撓性を強化することが可能である。可撓性の強化により、遠位ハブが配備構成に遷移する際に遠位ハブにかかる応力を更に減ずることが可能である。
【0039】
また、可撓性ワイヤアセンブリ29の幾何学的形状によっても、作製プロセスで生じた応力が減じられる。いったんデバイスがバスケット形状に形成された後、可撓性ワイヤアセンブリ29を熱処理すると、熱処理応力が生ずる。この応力は、遠位ハブ22の幾何学的形状によって減じられる。ニチノール製ワイヤは、体温にて可撓性且つ弾性である。大部分の金属と同様、ニチノール製ワイヤは、最小限の力を受けて変形し、力の不在下で本来の形状に戻る。ニチノールは、可撓性及び弾性のほかに形状記憶及び超弾性などの興味深い機械的特性を有する、形状記憶合金(SMA)と呼ばれる材料クラスに属する。これらの機械的特性により、ニチノールは、その温度相に依存する「記憶形状」(例えばバスケット形状)を有することを可能にしている。オーステナイト相はニチノールのより強い、より高い温度相であり、単純な立法晶構造を有する。超弾性挙動は、この相(50〜60℃の温度の広がりにわたって)で生じる。
図5には、「記憶形状」又はバスケット形状の可撓性ワイヤアセンブリ29が例証されている。作製中には、ニチノール製チューブ(
図4)を加熱してバスケット形状に形成する。その後、この形状を、当該技術分野において公知であるように、ヒートセットさせる。それに応じて、マルテンサイト相は比較的弱く、より低い温度相であり、双晶構造を有する。ニチノール材料がマルテンサイト相内にあるとき、比較的容易に変形し、変形した状態で留まる。しかしながら、そのオーステナイト遷移温度を超えて加熱すると、ニチノール材料は変形前の形状に戻り、「形状記憶」効果をもたらす。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を開始する温度は、「As」温度と呼ばれる。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を完了した温度は、「Af」温度と呼ばれる。したがって、バスケット形状電極アセンブリ16は、容易に収縮してガイド用シースに送り込まれ、次いで所望の患者領域に送達されて、ガイド用シースが除去されると、その膨張した形状記憶構成に容易に戻ることができる三次元形状を有し得る。
【0040】
図4及び
図5には、単一ニチノール製チューブから切断されたデバイスが例証されている。他の実施形態では、ニチノール材料のシートに成形加工及びヒートセットを施して、所望される「記憶」形状にした、可撓性ワイヤアセンブリ29を作製する。
【0041】
ここで、
図6及び
図7を参照すると、
図6に例証されている可撓性ワイヤアセンブリ29の遠位部分は、未膨張の弛緩状態にあり、この状態では自然なチューブ形状のまま維持されるので、デバイスに対して応力又は歪みが全くかからない。
図7には、同じ可撓性ワイヤアセンブリ29の遠位部分が、膨張状態で例証されている。矢印80で指し示すように、可撓性ワイヤ28が外側に移動すると、遠位ハブ22に応力が集中する。例えば、可撓性ワイヤ28a及び28bが膨張するにつれて、ピーク部が、狭小化された空間に強制的に移動するため、円82で指し示されたピーク部に応力が集中する。この例では、隣接する可撓性ワイヤ対の各々について、可撓性ワイヤが遠位ハブに合流するピーク部に応力が集中する。遠位ハブに集中した応力は、後述の及び
図8a〜
図15に例証されている様々な遠位ハブの設計によって減ずることが可能である。
【0042】
図8aには、可撓性ワイヤアセンブリ29aの別の実施形態が、未膨張状態で例証されている。遠位ハブ22aに対する応力の低減を図った一実施形態では、遠位ハブの剛性を強化すること目的として、増厚区域を遠位ハブに備えることができる。
図8bには、
図8aのA−Aに沿って切り取った可撓性ワイヤ28a、及び遠位ハブ22aの一部の断面が、例証されている。本実施形態において、可撓性ワイヤ22aの上に延在する遠位ハブ22aの部分の厚み(t1)は、可撓性ワイヤの厚み(t2)と比べて増厚されている。本実施形態において、遠位ハブ22aの厚み(t1)は、遠位ハブ22aの遠位縁部から可撓性ワイヤ28aの遠位端に向かう距離(d)に沿って近位に漸減している。このような増厚部は、遠位ハブ22a全体に含まれる合もあれば、又は遠位ハブ22aの一部分のみに含まれる場合もある。例えば、増厚部(t1)が、隣接する可撓性ワイヤ間にある遠位ハブの区域、(すなわち「P」で指示された)ピーク部だけに限られる場合もあれば、又は可撓性ワイヤから延在する遠位ハブの区域、(すなわち「V」で指示された)谷部だけに限られる場合もある。
図8cに例証されている遠位ハブ22bの別の実施形態は、増厚され、しかも内側にわずかに湾曲している。他の実施形態では、遠位ハブは、内側への湾曲を簡単に備えることが可能であり、その際に厚みが増すこともない。これらの実施形態では、遠位ハブを内側に湾曲させることによって曲率半径を形成する。それにより、配備後の遠位ハブの寸法を更に縮小することが可能であるだけでなく、デバイスが接触し得る組織に対するあらゆる外傷を減ずることも可能である。
【0043】
図9〜
図15にはそれぞれ、遠位ハブの様々な幾何学的形状が例証されており、これらの幾何学的形状も同様に、送達構成から配備構成に移行する際に遠位ハブにかかる応力を減じ得る。これらの各実施形態において、遠位ハブ22及び/又は可撓性ワイヤ28は、可撓性ワイヤの膨張時に可撓性ワイヤ28から遠位ハブ22へと伝達される応力を減ずるように構成されている。
【0044】
図9には、可撓性ワイヤアセンブリ29cの別の実施形態が例証されており、この実施形態において遠位ハブ22cは、応力を減ずる構成になっている。上記されているように、本実施形態において遠位ハブ22cは第1の応力除去処理用縁部31cを備え、この第1の応力除去処理用縁部は波形形状又はホタテガイ形状を有する。加えて、遠位ハブ22cはまた、第2の応力除去処理用縁部35cを備える。本実施形態において、第2の応力除去処理用縁部は、遠位ハブ22cを含めて再構成された可撓性ワイヤ接合部を備える。可撓性ワイヤアセンブリ29cは、複数の可撓性ワイヤ28cを備える。各可撓性ワイヤは、第1の幅(w1)を含む主本体部分と、減幅部(w2)を有するブリッジ部分(ブリッジ)84cとを備え、このブリッジ部分で、可撓性ワイヤ28cを遠位ハブ22cに合流させている。本実施形態では、可撓性ワイヤの幅をw2(すなわち、可撓性ワイヤが遠位ハブに合流する地点における幅)に減縮することによって、遠位ハブ22cに対する機械的応力を減じている。その際に見出されたのは、ハブに対する応力を減らせば可撓性ワイヤアセンブリの全体的な堅牢性が向上する、ということである。
【0045】
図10には、可撓性ワイヤアセンブリ29dの別の実施形態が例証されており、本実施形態において遠位ハブ22dは、応力を減ずる構成になっている。上記されているように、本実施形態において遠位ハブ22dは第1の応力除去処理用縁部31dを備え、この第1の応力除去処理用縁部は波形形状又はホタテガイ形状を有する。遠位ハブ22dは更に、第2の応力除去処理用縁部35dの別の構成を備える。本実施形態において、第2の応力除去処理用縁部は、遠位ハブ22dを含めて再構成された可撓性ワイヤ接合部を備える。本実施形態において、可撓性ワイヤの各対(例えば、可撓性ワイヤ28d1及び28d2)は、ブリッジ84dを経由して遠位ハブ22dに合流している。本実施形態では、遠位ハブ22dに合流する可撓性ワイヤ28dの個数が抑えられるように、ニチノール製チューブを切断している。例えば、可撓性ワイヤアセンブリが有する可撓性ワイヤを12個とした場合、これらのワイヤを遠位ハブ22dに接続するために形成されるブリッジ数は6個となる。遠位ハブへの接続総数を減らすと、遠位ハブに対する機械的応力に低減が見られる。加えて、上記されているように、本実施形態では、第2の応力除去処理用縁部にホタテガイ状パターン又は波形パターンを備えることによって、応力負荷を更に減ずることも可能である。遠位ハブ22dに対する応力を更に減ずる目的で、可撓性ワイヤ28dに陥凹86dを備えることもできる。この陥凹86dは、各ワイヤ対が一緒に合流する接合部に位置している。この陥凹86dは、可撓性ワイヤ間の材料を除去することによって形成されるものであり、この材料除去によって、送達構成から配備構成に移行した際、ワイヤの膨張する自在度を高めることを可能にしている。可撓性ワイヤアセンブリ28dにおけるこの地点での応力を減ずることによって、遠位ハブ22dに対する応力が更に減じられる。
【0046】
図11には、可撓性ワイヤアセンブリ29eの別の実施形態が例証されており、この実施形態において遠位ハブ22eは、応力を減ずる構成になっている。本実施形態において、一対の可撓性ワイヤ28eと遠位ハブ22eとを接合するブリッジ84eは、
図10のブリッジ84dの直線形状とは対照的な、正弦波形状を含む。他のすべての態様において、本実施形態は、
図10に関して上記されている実施形態と同じである。
【0047】
図12a及び
図12bには、可撓性ワイヤアセンブリ29fの別の実施形態が例証されており、この実施形態において遠位ハブ22fは、応力を減ずる構成になっている。本実施形態において遠位ハブ22fは、波形形状又はホタテガイ形状を有する第1の応力除去処理用縁部31fを備える。
図12aに例証されている可撓性ワイヤアセンブリ29fは、送達構成のものであり、
図12bに例証されている可撓性ワイヤアセンブリ29fは、配備構成のものである。
図12aに示すように、遠位ハブ22fは、隣接する可撓性ワイヤ28fの各対間に位置する「U」字形陥凹88fを有する波形縁部を備えるように、構成されている。U字形陥凹88fは間隙を有し、この間隙は、送達構成にあるときに第1の距離D1を有し、配備構成にあるときに第2の距離D2を有する。本実施形態では、配備中に可撓性ワイヤ28fが膨張するにつれて、U字形陥凹の間隙がD1からD2に減縮される。この変化がU字形陥凹の形成物に起こると、可撓性ワイヤアセンブリが膨張した結果として生じた応力が吸収される。
図13a及び
図13bには、可撓性ワイヤアセンブリ29gの別の実施形態が例証されており、この実施形態において遠位ハブ22gは、
図12a及び
図12bの実施形態と同様、応力を減ずる構成になっている。ただし、本実施形態において、陥凹88gは、どちらかというと正弦波構成に類する。他のすべての態様において、可撓性ワイヤアセンブリ29gは、
図12a及び
図12bに関して上記されている実施形態に類似している。
【0048】
図14には、可撓性ワイヤアセンブリ29hの別の実施形態が例証されており、この実施形態において遠位ハブ22hは、応力を減ずる構成になっている。本実施形態において、遠位ハブ22hは、連続リボン状の波形形状を有する第1の応力除去処理用縁部31hを備える。本実施形態において、波形は、可撓性ワイヤ28hの遠位端から遠位に延在する。リボン形の遠位ハブ22hには、複数の遠位陥凹88hが形成されており、これらの遠位陥凹は、複数の近位陥凹90hとは互い違いになっている。遠位陥凹88hは間隙距離D1を有し、この間隙距離の寸法は、可撓性ワイヤアセンブリが配備されると、減縮される。近位陥凹90hは間隙距離D2を有し、この間隙距離の寸法は、可撓性ワイヤアセンブリが配備されると、増分される。本実施形態において、可撓性ワイヤアセンブリが送達構成から配備構成に遷移した際に生じた応力は、リボン形の遠位ハブ22hで吸収される。
【0049】
図15には、可撓性ワイヤアセンブリ29iの別の実施形態が例証されており、この実施形態において遠位ハブ22iは、応力を減ずる構成になっている。上記されているように、本実施形態において遠位ハブ22iは、波形形状又はホタテガイ形状を有する第1の応力除去処理用縁部31iと、アーチ形状構成を有する第2の応力除去処理用縁部35iとを備える。加えて、遠位ハブ22hは、複数の遠位突起92iを更に備える。遠位突起の数は、変わってもよい。
図15には4つの遠位突起が例証されているが、わずかの2つないし多くの8つとすることができる。本実施形態において、遠位突起92iは、遠位ハブ22iの周縁の周りに均等に分布している。送達構成では、これらの遠位突起92iが、可撓性ワイヤアセンブリの遠位端から遠位に延在する。上記されているように遠位ハブが内側に回転するのと同様、配備状態では、これらの遠位突起が内側に回転する。
図15に例証されている一実施形態には、4つの遠位突起92iが、3本組の可撓性ワイヤ28iを1群として、その1群おきに1つずつ示してある。当業者に認識されるように、その個数及び位置は、可撓性ワイヤの用途及び総数に応じて異なってくる場合もある。
【0050】
当業者に理解されるように、
図3〜
図15に関して上記されている各実施形態の要素を、他の実施形態による他の要素と組み合わせて用いることも可能であり、これらの組み合わせは本発明の範囲内に含まれる。例えば、
図10に例証されている遠位ハブ22dの応力除去処理用縁部31dに、22bの内側への湾曲を更に備えることにより、配備構成における遠位ハブのプロファイルを更に縮小できる。後述する
図16〜
図17に関する考察はまた、上記の各実施形態にも当てはまる。
【0051】
更なる態様では、
図16A〜
図16Cに示すように、各スパイン18に、ケーブル配線40を内蔵型又は組込形リード線42と共に備えることで、電極20をスパインに担持させ得る。ケーブル配線はコア44を有し、複数の概ね類似するワイヤ42はそれぞれ、絶縁層46で被覆されている。このため、各ワイヤを形成して、導体48として機能させることが可能となっている。コア44は、可撓性ワイヤ28及び/又は追加のリードワイヤ、ケーブル、チューブ、若しくは他の構成要素の形態の支持構造など他の構成要素が通過できるルーメン50をもたらす。
【0052】
下記の説明において、ケーブル配線40に関連する概ね類似の構成要素は、一般に構成要素識別番号により参照され、必要に応じて、文字A、B、...を数字に添えることにより、互いが区別される。よって、ワイヤ42Cは、絶縁層46Cで被覆された導電体48Cとして形成されている。ケーブル配線の実施形態は、実質的には、配線中の任意の複数のワイヤ42を用いて実施され得るが、明瞭さ及び簡便さのため、以下の説明では、配線40はN本のワイヤ42A、42B、42C、...42Nを備えると仮定する。なおNは、バスケット形状電極アセンブリ16のそれぞれの対応するスパイン18上のリング電極の数に少なくとも等しい数である。図示の都合上、ワイヤ42の絶縁層46は、導電部48と略等しい寸法を有するように描かれている。実際には、絶縁層は通常、ワイヤの直径の約10分の1に当たる寸法である。
【0053】
ワイヤ42は、内部コア44上に形成される。この内部コアは円筒チューブとして形成されるのがごく一般的であり、コア材料としては一般的に、ポリエーテルブロックアミド又はPEBAX(登録商標)などの熱可塑性エラストマー製のものが選択される。ワイヤ42は、チューブの周りにワイヤを巻き付けることにより、コア44の外側表面52上に形成される。表面52上にワイヤ42を巻き付ける際に、ワイヤは、「密に充填されて」構成され、互いに接触するように配置される。よって、コア44が円筒形の場合、その外側表面上にある各ワイヤ42は、多条ねじ構成で構成された、螺旋状コイルの形態である。例えば、本明細書においてN本のワイヤ42が想定される場合、ワイヤ42は、コア44の周りに、N条ねじ構成で配置される。
【0054】
本明細書におけるワイヤ42のすべての螺旋状コイルは、編組み状のものとは対照的に、同じ巻き方(巻き方向)を有している。しかも、円筒を囲む編組み状のワイヤは交互配置され、そのため、螺旋形態にはなっていない。編組み状のワイヤは、非螺旋状であるため、同じ巻き方を有する編組みワイヤでさえもねじ形状を有しておらず、また多条ねじ構成を有しないことは言うまでもない。更になお、ケーブル配線の諸実施形態におけるワイヤのアレンジメントにおいて、交互配置がされていないため、その結果生成するケーブル配線全体の直径は、編組みを用いたケーブル配線の直径よりも小さく、その小さい直径は、ケーブル配線がカテーテルに用いられる際には特に有益である。
【0055】
ワイヤ42が上記のような多条ねじ構成で形成されると、ワイヤは、例えば上記の非伝導性被覆30形態の、保護シースで被覆される。保護シースの材料には、例えば、透明になるように添加剤を加えない55D PEBAXなど熱可塑性エラストマーが選択されるのが一般的である。この点に関して、異なるワイヤを識別し区別する助けとして、ワイヤ42の少なくとも1本の絶縁層46に、残りのワイヤとは異なる色を付けてもよい。
【0056】
ワイヤ42をコア44の周りに巻き付けてからワイヤを非伝導性被覆30で被覆する工程は、本質的に、ケーブル配線40の壁(すなわち、コアとシースとを備えて構成されるケーブル配線40の壁)内にワイヤを埋め込むことになる。ワイヤを壁内に埋め込むとは、このケーブル配線がカテーテルを形成するために使用される場合に、ワイヤが機械的損傷を受けないことを意味する。カテーテルの組み立て中にワイヤがゆるんだまま放置された場合には、48AWGワイヤのような細いワイヤに、機械的損傷が生じ易い。
【0057】
カテーテルとして用いられる際に、略円筒状の容量、又は壁内に、(48AWGワイヤのような)より細いワイヤを埋め込むことにより与えられる、コア44により囲まれたルーメン50は、ルーメン50の少なくとも一部分を、他の構成要素のために用いることを可能にする。図に示されている複数のワイヤ42は、あくまで代表例であるにすぎず、好適なケーブル配線は、アセンブリのそれぞれのケーブル配線又はスパインに装着された複数のリング電極と少なくとも等しいか又はそれより多くの、複数のワイヤを提供するものであることが了解されよう。本発明で用いるのに好適なケーブル配線は、2013年4月11日出願の「HIGH DENSITY ELECTRODE STRUCTURE」と題する米国特許出願第13/860,921号、及び2013年10月25日出願の「CONNECTION OF ELECTRODES TO WIRES COILED ON A CORE」と題する同第14/063,477号に記載されており、これらの開示の全容は上記に援用されている。(リードワイヤ42が埋め込まれた)各ケーブル配線40は、制御ハンドル14まで延在して、ワイヤ42と好適に電気接続してよく、したがって、電極20によって測定された信号を検出可能にする。
【0058】
先に言及したように、各スパイン18及びケーブル配線40の対には、複数のリング電極20が担持されている。これらのリング電極は、当該技術分野において公知であるように、モノポーラー又はバイポーラーとして構成され得る。ケーブル配線40は、
図16Aには上面図にて
図16Cには側面図にて概略的に図示されている。これらの図には、非伝導性被覆30の一部分が破断されてケーブ配線40のワイヤ42が露出している様子、及びケーブル配線40にリング電極20が取り付けられている様子が例証されている。
図16Aは、電極20を取り付ける前のケーブル配線40を例証したものであり、
図16Cは、リング電極を取り付けた後のケーブル配線を例証したものである。リング電極20は、シース54上を滑動することを可能にする好適な寸法を有し得る。
【0059】
各電極20の取り付け位置は、例証されている実施例におけるワイヤ42Eなどの、1本又は2本以上のワイヤ42上に位置決めされ得る。ワイヤ42E上の非伝導性被覆30の区間及び対応する絶縁層46Eの区間が除去されて、導電部48Eへの通路54ができる。開示されている一実施形態では、導電性セメント56を通路に送り込める。次いで、リング電極20を摺動させてセメントと接触させることができ、最終的に電極を圧着固定できる。あるいは、非伝導性被覆30から特定のワイヤを引き出し、リング電極20をそのワイヤに抵抗溶接又は半田付けすることにより、リング電極20を特定のワイヤ42に取り付けることもできる。
【0060】
別の実施形態では、バスケット形状電極アセンブリに膨張部を備えることもできる。膨張部(不図示)は、ニッケルチタン合金などの好適な形状記憶材料から形成されたワイヤ又はハイポチューブを含み得る。理解されるように、長手方向軸に沿った膨張部22の相対運動量が変動すると、弓形に曲がる程度に影響を与え得る。例えば、スパイン18が心房組織にかける圧力を増大させ、組織とスパイン上の電極との接触を良好にすることが可能となり得る。それゆえ、ユーザーは、膨張部の長手方向の延伸又は後退を調整することによって、電極アセンブリの形状を変更できる。
【0061】
図17は、バスケット形状電極アセンブリ16の使用法を図示し易くするための、本発明の実施形態による侵襲性医療処置の概略図である。遠位端にバスケット形状電極アセンブリ16(この図では図示なし)を備えるカテーテル10は、検出した信号を記録し、解析するコンソール62に対応する電極20からのワイヤ42(いずれもこの図では図示なし)を接続するためのコネクタ60を近位端に有し得る。電気生理学医64は、患者66にカテーテル10を挿入することによって、この患者の心臓68から電極電位信号を取得することができる。この専門家は、カテーテルに取り付けられた制御ハンドル14を使用して、挿入を行う。受信信号を解析するプロセシングユニット70を、コンソール62に備えることが可能であり、解析結果は、コンソールに取り付けられたディスプレイ72上に表示することができる。この結果は典型的に、信号から誘導されたマップ、数値表示、及び/又はグラフの形式である。本発明のカテーテルを使用すると、遠位ハブ22の寸法が減縮され、バスケット形状電極アセンブリ16からのマッピングが良好になるため、より多くの電極を房室に接触させることが可能になる。
【0062】
更なる態様では、プロセシングユニット70はまた、
図1に概略的に示すように、バスケット形状電極アセンブリ16に隣接するカテーテル10の遠位端付近に設置された、1個又は2個以上の位置センサ74から信号を受信し得る。このセンサはそれぞれ、1個の磁場応答コイル又は複数個のかかるコイルを備えることができる。複数のコイルを使用することにより、六次元位置座標及び配向座標を決定できる。ゆえに、センサは、外部コイルからの磁場に応答して電気位置信号を生成し、それによってプロセッサ70が、心臓腔内におけるカテーテル10の遠位端の位置を判定すること(例えば、場所及び配向)を可能にする。次いで、電気生理学医は、ディスプレイ72において、患者の心臓画像上のバスケット形状電極アセンブリ16の位置を確認することができる。例として、この位置検出法は、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)製のCARTO(商標)システムを使用して実行し得る。その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に開示されており、これらの開示は、その全体が本明細書において参照により援用されている。理解されるように、他の位置検出法も用いることができる。所望により、少なくとも2個の位置センサがバスケット形状電極アセンブリ16の近位及び遠位に位置し得る。近位センサに対する遠位センサの座標を測定してよく、バスケット形状電極アセンブリ16のスパイン18の曲率に関する他の既知の情報と共に使用して、電極20のそれぞれの位置を検出する。
【0063】
上記の説明文は、現時点において開示されている本発明の実施形態に基づいて示したものである。本発明が関連する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を大きく逸脱することなく、記載される構造に改変及び変更を実施し得る点は認識されるであろう。当業者に理解されるように、図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、したがって、上記説明は、添付図面に記述及び例証されている厳密な構造のみに関連のあるものとして解釈すべきではなく、むしろ最大限且つ公正な範囲を有するものとされる下記特許請求の範囲と一貫性を有し、且つこれを支持するものとして解釈すべきである。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
近位端及び遠位端を有し、長手方向軸に沿って延在する、細長いカテーテル本体と、
複数の可撓性ワイヤを有し、単一片の形状記憶材料から形成される前記細長いカテーテル本体の前記遠位端に位置決めされる、可撓性ワイヤアセンブリであって、各可撓性ワイヤが近位端と遠位端と遠位ハブとを有し、前記遠位ハブが、前記複数の可撓性ワイヤの少なくとも一部分の前記遠位端から延在する、可撓性ワイヤアセンブリと、
前記複数の可撓性ワイヤから形成される複数のスパインと、
各スパインに取り付けられた複数の電極及びケーブル配線であって、前記複数の電極及びケーブル配線が、対応する複数のワイヤを有し、それらのワイヤをコア上に巻き付けてシースで被覆することによって前記シースを通して前記複数のワイヤのうちの1つに各電極が取り付けられ、結果として、前記カテーテルは、半径方向外側に前記スパインが弓形に曲がる或る動作状態と、前記スパインが概ね前記カテーテル本体の長手方向軸に沿って配列されている別の動作状態とを有する、複数の電極及びケーブル配線と、
を備える、カテーテル。
(2) 前記遠位ハブが、少なくとも1つの応力除去処理用縁部を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記応力除去処理用縁部の前記形状記憶材料の少なくとも一部が、遠位端における第1の厚みと、前記可撓性ワイヤの前記遠位端における第2の厚みに向かう漸減部と、を備える、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 前記応力除去処理用縁部が曲率半径を更に含み、前記曲率半径が前記遠位ハブの内径に向かって方向づけられている、実施態様2に記載のカテーテル。
(5) 前記複数の可撓性ワイヤがそれぞれブリッジ部分を更に備え、前記ブリッジ部分が、前記可撓性ワイヤの前記遠位端を前記遠位ハブに接続している、実施態様1に記載のカテーテル。
【0065】
(6) 隣接する2つの可撓性ワイヤの前記遠位端がブリッジ部分を形成し、前記ブリッジ部分が、前記可撓性ワイヤを前記遠位ハブに接続している、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記ブリッジ部分が正弦波形状を備える、実施態様6に記載のカテーテル。
(8) 前記ブリッジ部分が直線形状を備える、実施態様6に記載のカテーテル。
(9) 前記遠位ハブが複数のU字形陥凹を更に含む波形を備え、各U字形陥凹が隣接する可撓性ワイヤの間に位置する、実施態様1に記載のカテーテル。
(10) 前記U字形陥凹が間隙を画定し、前記間隙は、送達構成にあるときに第1の距離を有し、配備構成にあるときに第2の距離を有する、実施態様9に記載のカテーテル。
【0066】
(11) 前記遠位ハブが、複数の正弦波形状陥凹を更に含む波形を備え、各正弦波形状陥凹が、隣接する可撓性ワイヤの間に位置する、実施態様1に記載のカテーテル。
(12) 前記正弦波形状陥凹が間隙を画定し、前記間隙は、送達構成にあるときに第1の距離を有し、配備構成にあるときに第2の距離を有する、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記遠位ハブが、複数の遠位陥凹を更に含む連続リボン形の波形を備え、各遠位陥凹が、隣接する可撓性ワイヤの間に位置し、且つ前記可撓性ワイヤの前記遠位端から遠位に延在する、実施態様1に記載のカテーテル。
(14) 前記遠位ハブが、遠位に配向された複数の遠位陥凹と、近位に配向された複数の近位陥凹とを有し、前記遠位陥凹及び近位陥凹が、互い違いになり、且つ前記遠位ハブの周縁の周りに等間隔に離間されている、実施態様13に記載のカテーテル。
(15) 前記遠位ハブが、第1の応力除去処理用縁部と第2の応力除去処理用縁部とを有し、前記第1の応力除去処理用縁部が前記遠位ハブの遠位端上に波形形状を有し、前記第2の応力除去処理用縁部が前記遠位ハブの近位縁部上にアーチ型形状を有し、前記遠位ハブが少なくとも2つの遠位突起を更に含み、前記遠位突起が前記遠位ハブの周縁の周りに均等に分布している、実施態様1に記載のカテーテル。
【0067】
(16) カテーテルを形成する方法であって、
細長いカテーテル本体を形成することと、
遠位ハブで接合された複数の可撓性ワイヤを有する可撓性ワイヤアセンブリを、単一片の形状記憶材料から形成することと、
前記複数の可撓性ワイヤの反対側の位置にある前記遠位ハブの遠位端上に応力除去処理用縁部を形成することと、
前記可撓性ワイヤアセンブリを加熱してバスケット形状アレンジメントをヒートセットすることと、
複数の電極及びケーブル配線を前記複数の可撓性ワイヤのそれぞれに接続して、バスケット形状電極アセンブリを形成することと、
前記バスケット形状電極アセンブリを前記細長いカテーテル本体の遠位端に接続することと、
を含む、方法。
(17) 前記単一片の形状記憶材料がニチノール合金チューブを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記応力除去処理用縁部が、前記可撓性ワイヤを前記遠位ハブに接続しているブリッジ部分を備える、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記応力除去処理用縁部が、複数の陥凹を有する連続波形を含む、実施態様16に記載の方法。
(20) 前記応力除去処理用縁部が複数の遠位突起を含む、実施態様16に記載の方法。