(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-200887(P2017-200887A)
(43)【公開日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】表面被覆粉体及びこれを含有する化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20171013BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20171013BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20171013BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20171013BHJP
【FI】
A61K8/29
A61Q1/02
A61Q1/12
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-93122(P2016-93122)
(22)【出願日】2016年5月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB152
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC342
4C083AD152
4C083AD662
4C083BB25
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC06
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083DD11
4C083DD17
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD39
4C083EE07
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】
粉体にスキンケア効果を付与するとともに、肌に均一に塗布することができ、くすみや色ムラが少ない表面被覆粉体、及びこれを含有する化粧料を提供すること。
【解決手段】
多価アルコールで表面を被覆した、表面被覆粉体及びこれを含有する化粧料。多価アルコールとしてはグリセリンが好ましく用いられる。粉体としては、酸化チタン、特に顔料級酸化チタンが好ましく用いられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を多価アルコールで被覆した、表面被覆粉体。
【請求項2】
多価アルコールがグリセリンである、請求項1に記載の表面被覆粉体。
【請求項3】
粉体が、酸化チタンである、請求項1又は請求項2に記載の表面被覆粉体。
【請求項4】
請求項1〜3から選択される1項記載の表面被覆粉体を配合した、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーションなどのメイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料又は乳液などの化粧料に配合して好適な表面被覆粉体、及びその粉体を配合した化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション、アイシャドー、ほほ紅などのメイクアップ化粧料や、サンスクリーン化粧料や、乳液などに配合される粉体は、肌への付着性や、粉体の感触を良くするなどの目的で、顔料粉体の表面に各種の化合物を被覆させた表面被覆粉体が用いられている。
【0003】
表面被覆粉体としては、シリコーン処理(特許文献1)、金属石鹸処理等の疎水化処理粉体(特許文献2)、ヒアルロン酸処理(特許文献3)、アミノ酸処理(特許文献4)等の親水化処理粉体等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−163973号公報
【特許文献2】特開2004−051550号公報
【特許文献3】特開2002−201113号公報
【特許文献4】特開平8−48612号公報
【0005】
従来の処理粉体は皮膚が乾燥しやすい、ムラ付きしやすい等の課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、粉体にスキンケア効果を付与するとともに、肌に均一に塗布することができ、くすみや色ムラが少ない表面被覆粉体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するにいたった。すなわち本発明は、表面を多価アルコールで被覆した表面被覆粉体、及びかかる表面被覆粉体を配合した化粧料に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面被覆粉体は、粉体にスキンケア効果を付与するとともに、肌に均一に塗布することができ、くすみや色ムラが少ないという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、グリセリン被覆酸化チタンが、シリコーン処理酸化チタン、未処理酸化チタンと比較して、彩度が高く、ムラ付きしにくいことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
粉体の表面を被覆する多価アルコールとしては特に限定されないが、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールから選択される1種を単独で、若しくは2種以上を併用して用いることが好ましい。これらの多価アルコールの中でも特にグリセリンのみを用いることが、効果と価格の面から好ましい。
【0012】
本発明により表面を被覆処理される粉体としては、特に限定されないが、特に化粧料用の粉体を用いることが好ましい。かかる粉体としては、、酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、パール顔料、オキシ塩化ビスマスなどの無機顔料や、赤色3号、赤色10号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色205号、黄色401号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号などの有機色素や、クロロフィルやβ−カロチンなどの天然色素や、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの金属石鹸や、ナイロンパウダー、セルロースパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、ポリスチレンパウダー、アクリルパウダー、シリコンパウダー等の有機粉体等が例示される。
【0013】
粉体としては、本発明のスキンケア効果の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、タルク、カオリン、絹雲母、白雲母、金雲母、合成雲母から選択される1種又は2種以上の粉体が好ましく、さらには、酸化チタン、特に顔料級酸化チタンが好ましい。
【0014】
粉体の表面被覆処理に用いられる多価アルコールの質量比は、処理される粉体に対して0.1〜50質量部とするのが好ましい。前記質量比が0.1質量部未満であると肌への均一な付着性が充分でない場合がある。50質量部を越えると粉体が凝集しやすくなるため、化粧料としては適さない場合がある。
【0015】
次に、本発明の表面被覆粉体の製造方法について説明する。表面被覆方法としては特に限定されず常法により表面被覆することができる。例えば、表面被覆される顔料粉体を適切なミキサー中で撹拌し、多価アルコールをそのまま、若しくはエタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系有機溶剤、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の極性有機溶剤などに溶解した溶液を、液滴下又はスプレー噴霧にて加え撹拌した後、必要に応じて有機溶剤を完全に蒸発除去し、その後、粉体を粉砕した後、80〜200℃に加熱熟成させることによって、表面被覆処理を行うことができる。
【0016】
粉体の混合分散に用いる機器としては、溶液の濃度や粘度などに応じて適切な方法を選択することができる。好適な例としては、撹拌羽根を有した反応槽や、ディスパー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ニーダー、V型混合機、ロールミル、ビーズミル、2軸混練機等のブレンダーによる方法や、水溶液と顔料を加熱空気中に噴霧して水分を一気に除去するスプレードライの方法などを選択することができる。また、粉砕を行う場合においては、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等の通常の粉砕機を用いることができる。これらいずれの粉砕機によっても同等の品質のものが得られるため、特に限定されるものではない。
【0017】
本発明の表面被覆粉体の化粧料への配合量としては、0.5〜90質量%が好ましい。この配合量が0.5質量%未満では、表面被覆粉体のスキンケア効果が発揮されにくくなる傾向がある。一方、90質量%を超える複合粉体を配合すると、製剤化が困難になる傾向がある。
【0018】
本発明の化粧料の形態としては、ルースパウダー状、プレスパウダー状、スティック状、クリーム状、乳液状、液状、多層分離状のいずれの剤型でも採用できる。
【0019】
本発明の化粧料には通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。かかる成分としては、粉体、界面活性剤、油剤、高分子、水性成分、防腐剤、美容成分、香料等が挙げられる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
顔料級酸化チタン1000質量部をブレンダーに投入する。続いてイソプロピルアルコール100質量部にグリセリンを111.1質量部を溶解した溶液を滴下混合し、酸化チタンとよく混合した。その後、ブレンダー内を加熱及び減圧し、イソプロピルアルコールを除去した。被覆された粉体をブレンダーから取り出し、粉砕して加熱処理を行い、グリセリンを10質量%被覆した酸化チタンを得た。
【0022】
[比較例1]
市販の2%ジメチコン処理酸化チタン(商品名SA−チタン CR−50(100%)、三好化成製)を比較例1として用いた。
【0023】
[比較例2]
市販の未処理顔料級酸化チタン(商品名酸化チタンCR−50、石原産業製)を比較例2として用いた。
【0024】
[スキンケア効果評価]
前腕内側に、実施例1、比較例1をそれぞれ2mg/cm
2となるように塗布し、塗布前、塗布直後、塗布30分後の経皮水分損失(TEWL)をVapometer(Delfin technologies製)を用いて測定した。測定は3か所測定した平均値で示した。塗布前を100とした相対値にて結果を算出し、表1に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示した通り、比較例1塗布群においては、塗布によりTEWLへの影響は認められなかった。これに対し実施例1塗布群では、塗布直後からTEWLの低下が認められ、30分後には顕著にTEWLが減少していた。TEWLは、肌荒れの改善状態を示す指標(化粧品事典第439ページ、丸善出版、2003年発行)であり、TEWLの低下は肌荒れ状態が改善されたことを示すものである。従って、本発明の実施例は、肌荒れ改善効果、すなわち高いスキンケア効果を発揮するものである。
【0027】
[付着性評価]
前腕内側に実施例1、比較例1をそれぞれ2mg/cm
2となるように塗布し、塗布状態をマイクロスコープで観察した。その結果、比較例1は、皮膚に塗布すると、皮溝に極在した状態で塗布されていたのに対し、実施例1は、皮丘にとどまり均一に塗布されていた。
【0028】
[反射特性評価]
肌色の人工皮革の表面に実施例1、比較例1、2を塗布し、変角測色計(型番GC5000、日本電色工業製)を用いて反射特性の評価を行った。その結果、
図1に示した通り、本発明の実施例1は比較例1、2より彩度が高く、くすみやムラが少ないことが示された。
【0029】
本発明の実施例1を配合した化粧料の実施例を表2に示す。
【0030】
【表2】