【課題】 塩化ビニル系樹脂、特に医療用材料において優れた柔軟性や耐寒性を保持しつつ、耐熱着色を改善する方法、並びに上記方法に耐熱着色の改善された塩化ビニル系樹脂組成物、それからなる熱着色の低減された塩化ビニル系樹脂成形体、更にはその成形体からなる医療用材料、及びその原料である耐熱着色性の改善に効果のある可塑剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 特定の構造のトリメリット酸トリエステルと4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる可塑剤組成物を塩化ビニル系樹脂に可塑剤として配合することにより、柔軟性や耐寒性、耐熱性が良好であり、かつ課題であった耐熱着色性を改善することができることを見出し、上記課題を解決することが可能となった。
一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である、請求項1〜3の何れかに記載の可塑剤組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の要求を満足する、即ち、塩化ビニル系樹脂の本来有する優れた柔軟性や耐寒性、耐熱性を保持しつつ、耐熱着色性を改善する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造のトリメリット酸トリエステルと4−シクロヘキセン−1,2-ジカルボン酸ジエステルを組み合わせることにより、その理由は定かではないが、それぞれのエステルでは得られなかった耐熱着色性の改善効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
また、上記検討の過程で、特定の構造の4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを用いることにより、従来から課題であったトリメリット酸トリエステル系の可塑剤を配合した塩化ビニル系樹脂組成物の加工性の問題に関しても改良が可能であることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は以下に示す可塑剤組成物、その可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物、更にそれからなる塩化ビニル系樹脂成形体、並びに耐熱着色の改善方法および加工性の改善方法を提供するものである。
【0011】
[項1] (A)トリメリット酸トリエステルと(B)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物であって、
成分(A)が、下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルであり、
かつ、
成分(B)が、下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルであることを特徴とする塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物。
【化1】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
【化2】
[式中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
【0012】
[項2] 成分(A)と成分(B)の比率(重量比)が、95/5〜30/70の範囲である、[項1]に記載の可塑剤組成物。
【0013】
[項3] 成分(A)と成分(B)の比率(重量比)が、90/10〜40/60の範囲である、[項2]に記載の可塑剤組成物。
【0014】
[項4] 成分(A)と成分(B)の比率(重量比)が、80/20〜50/50の範囲である、[項3]に記載の可塑剤組成物。
【0015】
[項5] 一般式(1)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である、[項1]〜[項4]の何れかに記載の可塑剤組成物。
【0016】
[項6] 一般式(2)における飽和脂肪族アルコールが、主として炭素数8の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである、[項1]〜[項5]の何れかに記載の可塑剤組成物。
【0017】
[項7] 一般式(2)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数8の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである、[項6]に記載の可塑剤組成物。
【0018】
[項8] 一般式(2)における飽和脂肪族アルコールが、2−エチルヘキサノールある、[項7]に記載の可塑剤組成物。
【0019】
[項9] 一般式(2)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である、[項1]〜[項5]の何れかに記載の可塑剤組成物。
【0020】
[項10] 一般式(2)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である、[項9]に記載の可塑剤組成物。
【0021】
[項11] 一般式(2)における飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%以上である、[項10]に記載の可塑剤組成物。
【0022】
[項12] 前記塩化ビニル系樹脂が医療材料用の塩化ビニル系樹脂である、[項1]〜[項11]の何れかに記載の可塑剤組成物。
【0023】
[項13] 塩化ビニル系樹脂と[項1]〜[項12]の何れかに記載の可塑剤組成物を含んでなる、塩化ビニル系樹脂組成物。
【0024】
[項14] 塩化ビニル系樹脂組成物中の可塑剤組成物の含有量が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して20〜200重量部である、[項13]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【0025】
[項15] 塩化ビニル系樹脂組成物中の可塑剤組成物の含有量が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して30〜150重量部である、[項14]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【0026】
[項16] [項13]〜[項15]の何れかに記載の塩化ビニル系樹脂組成物を原料とする塩化ビニル系樹脂成形体。
【0027】
[項17] [項16]に記載の塩化ビニル系樹脂成形体からなる医療材料。
【0028】
[項18] 前記医療材料が、医療用チューブである[項17]に記載の医療材料。
【0029】
[項19] 塩化ビニル系樹脂成形体の耐熱着色性の改善方法であって、
下記一般式(1)で示される(A)トリメリット酸トリエステルと下記一般式(2)で示される(B)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物を、塩化ビニル系樹脂成形体の原料樹脂である塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として使用することを特徴とする方法。
【化3】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
【化4】
[式中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
【0030】
[項20] トリメリット酸トリエステル系の可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物の加工性の改良方法であって、
トリメリット酸トリエステルに加えて、下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物を、塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として使用することを特徴とする方法。
【化5】
[式中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数8の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
【発明の効果】
【0031】
本発明の塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物は、柔軟性や耐寒性、耐熱性が良好であり、かつ課題であった耐熱着色性の改善が可能である塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用することができる。また、その塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含むことにより、柔軟性や耐寒性、耐熱性が良好であり、更に耐熱着色性の改善された、即ち耐久性に非常に優れた塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体が得られ、特に高い耐熱着色性の要求される医療用材料(特に医療用チューブ)として好適に使用することができる。また、特定の構造の4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを用いた場合には、加工性に関しても改良が可能であり、より一層その実用性の面で期待される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<塩化ビニル系樹脂用可塑剤組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物は、(A)下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルと、(B)下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなることを最大の特徴としている。
【化6】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
【化7】
[式中、R
4及びR
5は、同一又は異なって、それぞれ飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。]
【0033】
なお、本発明において可塑剤組成物とは、予め混合されたものだけでなく、同時に塩化ビニル系樹脂に配合される成分(A)と成分(B)を含む可塑剤成分に関しても含まれる。
【0034】
前記成分(A)のトリメリット酸トリエステル(以下、「本エステル化合物1」という。)の好ましい態様としては、上記一般式(1)における残基を規定している飽和脂肪族アルコールが、炭素数7〜13、好ましくは8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである態様が挙げられる。その中でも、より好ましい態様としては、前記残基を規定している豊和脂肪族アルコールが、(i)炭素数8又は炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする直鎖状又は分鎖状の飽和脂肪族アルコールである態様、(ii)炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該残基を規定している飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該残基を規定している飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である態様、(iii)主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物であり、炭素数9、10、11の各アルコールの比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45となる範囲であり、かつ該残基を規定している飽和脂肪族アルコールの直鎖率が55%以上である態様などが推奨される。
【0035】
本エステル化合物1は、本発明の目的の性能を満たすものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸又はその無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールとを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。また、飽和脂肪族アルコールの種類によっては、予め炭素数1〜6程度の低級アルコールとエステル化後、上記飽和脂肪族アルコールを加えて、常法に従って、好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル交換することによっても容易に得ることができる。
【0036】
前記成分(B)の4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル化合物(以下、「本エステル化合物2」という。)の好ましい態様としては、上記一般式(2)における残基を規定している飽和脂肪族アルコールが、炭素数7〜13、好ましくは8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである態様が挙げられる。
【0037】
その中でも、より好ましい態様としては、前記残基を規定している飽和脂肪族アルコールが、(i)炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする直鎖状又は分鎖状の飽和脂肪族アルコールである態様、(ii)炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該残基を規定している飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該残基を規定している飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である態様、(iii)主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物であり、炭素数9、10、11の各アルコールの比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45となる範囲であり、かつ該残基を規定している飽和脂肪族アルコールの直鎖率が55%以上である態様などが推奨される。
【0038】
また、上記[項20]に記載の加工性の改良方法に関して、本エステル化合物1などのようなトリメリット酸エステル系の可塑剤の加工性の改良の観点からは、より好ましい態様としては、一般式(2)における残基を規定している飽和脂肪族アルコールが、炭素数8の飽和脂肪族アルコールを主成分とする直鎖状又は分鎖状の飽和脂肪族アルコールである態様が挙げられる。
【0039】
本エステル化合物2は、本発明の目的の性能を満たすものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールとを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。また、飽和脂肪族アルコールの種類によっては、予め炭素数1〜6程度の低級アルコールとエステル化後、上記飽和脂肪族アルコールを加えて、常法に従って、好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル交換することによっても容易に得ることができる。
【0040】
上記成分(A)と成分(B)の比率(重量比)が、好ましくは(A)/(B)=95/5〜30/70、より好ましくは90/10〜40/60、特に好ましくは80/20〜50/50であることが推奨される。成分(A)と成分(B)の比率が上記範囲内であることにより、成分(A)と成分(B)を組み合わせたことによる効果、即ち耐熱着色性の改善効果をより優位に発現することができる。
【0041】
[飽和脂肪族アルコール]
本エステル化合物1及び本エステル化合物2の原料として用いられる飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13、好ましくは8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。炭素数が7未満の飽和脂肪族アルコールが含まれると、揮発性等の性能が低下する傾向があり、炭素数が13を超える飽和脂肪族アルコールが含まれると、柔軟性等の性能が低下する傾向があり、何れも好ましくない。
【0042】
より具体的には、例えば、前記飽和脂肪族アルコールとしては、(i)炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであって、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールであり、その主成分である炭素数9の飽和脂肪族アルコールの割合が、その炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール中に、好ましくは60重量%以上(60〜100重量%)、より好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、特に好ましくは80重量%以上(80〜100重量%)である飽和脂肪族アルコール、(ii)主として炭素数9〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9の飽和脂肪族アルコール/炭素数10の飽和脂肪族アルコール/炭素数11の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である飽和脂肪族アルコールなどが推奨される態様である。
【0043】
また、加工性の改良も求められる場合には、本エステル化合物2の原料として用いられる飽和脂肪族アルコールが、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであって、炭素数8の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールである態様が推奨される。
【0044】
なお、前記「主成分とする」とは、飽和脂肪族アルコール中に占める比率が60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であることを意味し、前記「主として」とは、飽和脂肪族アルコール中に占める比率が90%以上、好ましくは95%以上であることを意味する。
【0045】
また、本発明に係る前記飽和脂肪族アルコールは、前記(i)又は(ii)の推奨の態様の場合には、その飽和脂肪族アルコールの直鎖率が、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは75〜98%の範囲が推奨される。
【0046】
また、上記(i)のの推奨の態様における飽和脂肪族アルコール中の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量は、その飽和脂肪族アルコール中に、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは75〜98重量%の範囲が推奨され、かつ、飽和脂肪族アルコール中の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール(例えば2−メチルオクタノール等)の含有量が、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは2〜25重量%の範囲が推奨される。
【0047】
前記炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの態様の詳細として、1つ目の好ましい態様としては、該飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールが主成分(好ましくは60重量%以上)であり、その炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。より好ましい態様としては、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分(好ましくは70重量%以上)とし、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である態様が推奨され、特に好ましい態様としては、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分(好ましくは80重量%以上)とし、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%である態様が推奨される。
【0048】
前記炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの態様の詳細として、2つ目の好ましい態様としては、該飽和脂肪族アルコールが、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物であり、炭素数9、10、11の各アルコールの占める比率が10〜25/35〜50/30〜45となる範囲であり、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が55%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは75〜98%である態様が推奨される。
【0049】
前記炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの態様の詳細として、3つ目の好ましい態様としては、該飽和脂肪族アルコールが、主として炭素数8の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである態様が推奨される。
【0050】
耐寒性や耐熱性等の性能の観点からは、飽和脂肪族アルコールの直鎖率が55%以上であれば、耐寒性や耐熱性等の性能を優位に保持した上で、本発明の目的である耐着色性を改善することが可能である。また、直鎖率が上記範囲でも本発明の目的である十分な性能が得られるが、更に直鎖率を55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは75〜98%の範囲にすることにより、耐寒性や耐熱性がより向上するだけでなく、塩化ビニル系樹脂との混合もより容易となり、その結果引張伸び等の引張特性に関してもより良好な性能を得られ易い傾向がある。
【0051】
また、加工性の改良等の観点からは、本エステル化合物2の原料として用いられる飽和脂肪族アルコールの炭素数が8程度であることが、その他の性能を保持した上で、加工性の改良が可能であり、かつ本発明の目的である耐着色性も改善することができる。
【0052】
本明細書及び特許請求の範囲において、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールの直鎖率とは、該飽和脂肪族アルコール中に占める直鎖アルコールの割合(重量比)であり、具体的にはガスクロマトグラフィーで分析する方法により求めることができる。
【0053】
上記の炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールの具体例(市販品)としては、約80重量%以上の直鎖状のノナノールと約20重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるシェルケミカルズ社製のリネボール9(商品名)や、約90重量%以上の直鎖状のノナノールと約10重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるオクセア社製のn−Nonanol等が挙げられる。また、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物である飽和脂肪族アルコールの具体例(市販品)としては、直鎖状又は分鎖状のノナノール、デカノール及びウンデカノールをそれぞれ18重量%、42重量%、38重量%含有するシェルケミカルズ社製のリネボール911(商品名)等が挙げられる。
【0054】
本発明で用いる炭素数7〜13の飽和脂肪族アルコールは、例えば、(1)炭素数6〜12のα−オレフィン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数7〜13のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数7〜13のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができる。
【0055】
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
【0056】
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
【0057】
[エステル化反応]
本エステル化合物1の製造において、上記飽和脂肪族アルコールとトリメリット酸又はその無水物とのエステル化反応を行うに際し、飽和脂肪族アルコールは、例えば、トリメリット酸又はその無水物1モルに対して、好ましくは3.05〜4.00モル、より好ましくは3.10〜3.80モル、特に3.15〜3.60モルを使用することが推奨される。また、本エステル化合物2の製造において、上記飽和脂肪族アルコールと4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物とのエステル化を行うに際し、飽和脂肪族アルコールは、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物1モルに対して、好ましくは2.05モル〜4.00モル、より好ましくは2.10モル〜3.00モル、特に好ましくは2.15モル〜2.50モルを使用することが推奨される。
【0058】
エステル化反応に用いる触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。
【0059】
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル化合物の合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01〜5.0重量%、より好ましくは0.02〜4.0重量%、特に0.03〜3.0重量%を使用することが推奨される。
【0060】
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3〜30時間でエステル化反応は完結する。
【0061】
本エステル化合物1の原料であるトリメリット酸又はその無水物、並びに本エステル化合物2の原料である4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物は、特に制約はなく、公知の方法で製造したものや、市販品、試薬等で入手できるものなどが使用できる。例えば、本エステル化合物2の原料としては、市販品としてリカシッドTH(商品名,新日本理化(株))などが例示される。4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物は、通常、無水マレイン酸と1,3−ブタジエンとをディールス・アルダー反応して得られる。また、エステル化反応の観点から、本エステル化合物1についてはトリメリット酸無水物を、本エステル化合物2については4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を、それぞれ原料として使用することが推奨される。
【0062】
エステル化反応においては、該反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
【0063】
また、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にてエステル化反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
【0064】
上記エステル化反応により得られた本エステル化合物1並びに本エステル化合物2は、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)、水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着精製処理等により精製してもよい。
【0065】
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
【0066】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0067】
上記処理は、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
【0068】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0069】
上記処理は、常温で行なっても良いが、40〜100℃程度に加温して行なうこともできる。
【0070】
<塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)(即ち、上述した本エステル化合物1と本エステル化合物2)を含んでなる可塑剤組成物(以下、「本可塑剤組成物」という)を塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
【0071】
なお、上述の通り、本可塑剤組成物とは、予め成分(A)と成分(B)を混合したものだけでなく、同時に塩化ビニル系樹脂に配合される成分(A)と成分(B)も含むことを意味するものである。即ち、上記塩化ビニル系樹脂に配合する方法としては、予め成分(A)と成分(B)を混合した後、塩化ビニル系樹脂に配合してもよく、また、成分(A)と成分(B)を同時に塩化ビニル系樹脂に配合してもよい。
【0072】
[塩化ビニル系樹脂]
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。例えば、汎用塩化ビニル樹脂の場合は、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法などが挙げられる。また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300から5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
【0073】
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類、マレイン酸及びそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
【0074】
[軟質塩化ビニル系樹脂組成物]
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物における本可塑剤組成物の含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部であり、より好ましくは20〜150重量部であり、更に好ましくは30〜120重量部である。1重量部以上であれば、加工時の可塑化、更には得られた成形品の可塑性向上に寄与することが可能であり、20重量部以上であれば、柔軟性の要求される用途においても十分な柔軟性を得ることができ、更に柔軟性の要求される用途では、適宜その配合量を調整することにより柔軟性を付与することができる。また、成形品表面へのブリード等が懸念される用途でも、200重量部以下であれば、その懸念もなく、好ましく使用することができる。但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合する場合もある。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を500重量部程度まで配合されていてもよい。
【0075】
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物には、本可塑剤組成物と共に他の公知の可塑剤を併用することもできる。また、必要に応じて安定化剤、安定化助剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、難燃剤、着色剤、加工助剤、充填剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を適宜配合して使用されることが多い。
【0076】
上記本可塑剤組成物以外の他の可塑剤やその他の添加剤は、1種で又は2種以上組み合わせて本可塑剤組成物と共に配合されていてもよい。
【0077】
本可塑剤組成物と併用することができる他の可塑剤としては、本技術分野で従来から使用されている公知の可塑剤が使用でき、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等のフタル酸エステル類、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOIP)等のイソフタル酸エステル類、テレフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等のテレフタル酸エステル類、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)、本発明の範囲外のテトラヒドロフタル酸エステル等の脂環式二塩基酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、本発明の範囲外のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル類、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油類、4,5−エポキシ−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシルエステル等エポキシエステル類、ジカプリン酸−1,4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリヘキシル(ATHC)、アセチルクエン酸トリエチルヘキシル(ATEHC)、ブチリルクエン酸トリヘキシル(BTHC)等のクエン酸エステル類、イソソルビドジエステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。上記併用できる他の可塑剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る可塑剤の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部程度が推奨される。
【0078】
安定化剤を配合することは、本発明の目的である耐着色性の改善のための有効な方法である。本可塑剤組成物と併用することのできる安定化剤としては、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属を含む有機酸化合物等の金属石鹸化合物、ステアリン酸バリウム−亜鉛、ラウリン酸バリウム−亜鉛、リシノール酸バリウム−亜鉛、オクチル酸バリウム−亜鉛、ステアリン酸カルシウム−亜鉛、ラウリン酸カルシウム−亜鉛、リシノール酸カルシウム−亜鉛、オクチル酸カルシウム−亜鉛等の複合金属を含む有機酸化合物等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物、等が例示される。上記安定化剤は、単独でまたは併用して配合することができる。上記安定化剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る可塑剤組成物の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0079】
また、以下に示す様な安定化助剤を配合することも、本発明の目的である耐着色性の改善をより効果的にする方法として有効である。その安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。安定化助剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る安定化剤の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0080】
また、酸化防止剤、紫外線吸収剤酸化防止剤や光安定化剤などを配合することも、本発明の目的である耐着色性の改善をより効果的にする方法として有効である。酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。また酸化防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
【0081】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。紫外線吸収剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0082】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。光安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0083】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。難燃剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0084】
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。着色剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
【0085】
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。加工助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0086】
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。充填剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
【0087】
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。滑剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0088】
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。帯電防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0089】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、本可塑剤組成物、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばモルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合を行い、塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉とすることができる。
【0090】
また、本可塑剤組成物、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペレット状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0091】
また、本可塑剤組成物、塩化ビニル系ペースト樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばポニーミキサー、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ディゾルバー、二軸ミキサー、ヘンシェルミキサー、三本ロールミル等の混合機により均一に混合し、必要に応じて減圧下で脱泡処理し、ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0092】
[塩化ビニル系樹脂成形体]
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物(配合粉状やペレット状などの形態)を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0093】
一方、上記ペースト状の軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スラッシュ成形、スクリーン加工等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0094】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
【0095】
かくして得られた成形体は、医療用チューブ、血液バック、輸液バックなどの医療材料、自動車アンダーボディコート、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、アンダーカーペット、トランクシート、ドアトリム類などの自動車内装材等、特に医療材料に有用である。又、上記以外にも、水道管などのパイプ類、パイプ用の継手類、雨樋などの樋類、窓枠サイディング、平板、波板、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、ホース、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、ターポリン、マット類、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、絶縁シート、工業用テープ、ガラスフィルム、字消し等にも有用に使用することができる。
【0096】
特に、前記医療材料用途においては、例えば、胸腔チューブ,透析チューブ、人工呼吸チューブ、気管内チューブ、呼吸器チューブ、栄養チューブ、延長チューブ等のチューブ類、導尿カテーテル、吸引カテーテル、静脈注射カテーテル、消化管カテーテル等のカテーテル類、血液バッグ、輸液バッグ、薬液バッグ、ドレインバッグ等のバッグ類、血液成分分離機、血液透析回路、腹膜透析回路、人工心肺回路等の回路機器部材、連結部材、分岐バルブ、速度調節部材等のコネクタ部材、輸液セット、輸血セット、静脈注射セット、心肺バイパス、手術用手袋、医薬品包装材料、医療用フィルム、衛生材料、呼吸マスク等に使用することが可能であり、非常に有用である。
【実施例】
【0097】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0098】
(1)飽和脂肪族アルコールの炭素数と直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率
本発明の実施例及び比較例で用いる本エステル化合物1及び本エステル化合物2において、一般式(1)及び一般式(2)における残基を規定する飽和脂肪族アルコールの炭素数と直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率は、その製造に用いた原料アルコール中の組成をガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した結果を、それら化合物中の飽和脂肪族アルコールの炭素数と直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率とした。前記GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム ZB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:安息香酸n−プロピルを内部標準物質として用い定量した。
前記内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコールに安息香酸n−プロピルがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
なお、上述のエステル化反応において、本発明の範囲内では原料アルコールの構造による反応性に差異はなく、用いた原料アルコール中の組成比と本エステル化合物1及び本エステル化合物2の残基を規定している飽和脂肪族アルコールの組成比に差異がないことは、予め確認している。
【0099】
(2)本エステル化合物1及び本エステル化合物2の物性評価
下記の製造例で得られたエステル化合物は次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
ヨウ素価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−0071(1998)に準拠して測定して、ハーゼン単位色数を求めた。
【0100】
[塩化ビニル系樹脂組成物の加工性]
(3)ゲル化温度:塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)2gに可塑剤10gを入れ混合したサンプル約0.01gをスライドガラス上に滴下し、カバーガラスをかけ、微量融点測定器にセットした。5℃/minの速度で昇温し、加熱昇温による塩化ビニル樹脂の粒子の状態変化を観察し、塩化ビニル樹脂の粒子が溶け始める温度と該粒子が透明になった温度をそれぞれゲル化開始温度およびゲル化終了温度とし、その平均値をゲル化温度とした。ゲル化温度が低いほど可塑剤の吸収速度が速く加工性に優れる。
【0101】
(4)塩化ビニルシートの作製
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定化剤として、カルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合後、本発明に係る可塑剤組成物、即ち(A)トリメリット酸トリエステル及び(B)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを表1に記載の比率で合計50重量部加え、均一になるまでハンドリング混合し、塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
【0102】
[塩化ビニル系樹脂成形体の物性評価]
(5)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
【0103】
(6)耐寒性:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して、プレスシートの柔軟温度(℃)を測定した。柔軟温度(℃)が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×103kg/cm2)を示す低温限界の温度を指す。
【0104】
(7)耐熱性(揮発性、着色性):加熱後の揮発減量及びシート着色の評価による。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分、120分加熱した後のシートの重量変化を測定し、下記の式に従って揮発減量(%)を算出した。
揮発減量の数値が小さいほど、耐熱性が高い。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分、90分間加熱した後の着色度の強弱を目視により4段階で評価した。
◎:着色なし、 ○:僅かに着色、 △:着色、 ×:強い着色
【0105】
[製造例1]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、トリメリット酸無水物(工業用市販品)96g(0.5モル)、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール重量11.7%を含む飽和脂肪族アルコール(直鎖率;87%、シェルケミカルズ社製:リネボール9)260g(1.8モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを加え、反応温度を190℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、「エステル1」という。)245gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色数:20であった。
【0106】
[製造例2]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)260gの代わりに2−エチルへキシルアルコール234gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル2という。)219gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色数:20であった。
【0107】
[製造例3]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物182.6g(1.2モル,新日本理化(株)製:リカシッドTH)、2−エチルヘキシルアルコール374g(2.9モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.24gを加え、反応温度を200℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とする4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル3」という。)269gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:283mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:10であった。
【0108】
[実施例1]
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例1で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル1)と製造例3で得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(エステル3)を80/20の比率で配合した可塑剤組成物を用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化温度試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0109】
[実施例2]
エステル1とエステル3の比率を70/30に変えた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0110】
[実施例3]
エステル1とエステル3の比率を60/40に変えた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0111】
[実施例4]
エステル1とエステル3の比率を50/50に変えた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0112】
[実施例5]
エステル1の代わりに上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例2で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル2)を用いた以外は実施例2と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0113】
[実施例6]
エステル1の代わりに上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例2で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル2)を用いた以外は実施例4と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0114】
[比較例1]
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例1で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル1)のみを用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0115】
[比較例2]
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例2で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル2)のみを用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0116】
[比較例3]
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例3で得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(エステル3)のみを用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0117】
【表1】
【0118】
表1の結果より、可塑剤として成分(A)と成分(B)を組み合わせた可塑剤組成物を配合することにより、成分(A)及び成分(B)をそれぞれ単独で配合した場合(比較例1〜3)と比較して熱着色が低減しており、明らかに本発明の可塑剤組成物を用いることにより耐熱着色性の改善が可能であることがわかる。また、成分(A)に本発明の成分(B)を加えることにより、成分(A)を単独で配合した場合(比較例1、2)と比較してゲル化温度が低減しており、明らかに本発明に成分(B)を加えたことによる加工性の改良効果が確認される。