特開2017-201092(P2017-201092A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大華物産の特許一覧

<>
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000003
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000004
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000005
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000006
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000007
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000008
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000009
  • 特開2017201092-建造物の修繕工事方法及び仮網戸 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-201092(P2017-201092A)
(43)【公開日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】建造物の修繕工事方法及び仮網戸
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/52 20060101AFI20171013BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20171013BHJP
【FI】
   E06B9/52 Z
   E06B9/52 B
   E04G23/02
   E06B9/52 C
   E06B9/52 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-92768(P2016-92768)
(22)【出願日】2016年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】512306520
【氏名又は名称】株式会社大華物産
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正人
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176BB01
(57)【要約】
【課題】大規模修繕工事等の建造物の修繕工事の際に、工事期間中であっても居住者が安全で快適な生活環境を保持することができる建造物の修繕工事方法及びその建造物の修繕工事の際に使用することができる仮網戸を提供する。
【解決手段】大規模修繕工事等の建造物の修繕工事の際に、窓2を開けて通気領域を確保したら、その通気領域を覆うように、窓2の移動領域とは重複しない位置である窓額縁3に、第一網戸体11と第二網戸体12とが摺動可能に接続されて上下に伸縮可能な仮網戸1を設置する。具体的には、仮網戸1の高さ寸法を窓額縁3の高さに合せ、仮網戸1の下端部分に備える緩衝部材を下側の窓額縁3に当接させ、仮網戸1の上端部分に備える緩衝部材を上側の窓額縁3に当接させることにより、窓額縁3に仮網戸1を固定して設置する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の修繕工事方法において、
前記建造物の室内に備えられた窓の一部を開放して前記室内を通気可能状態とし、
前記窓を開放した部分の前記窓よりも室内側に仮網戸を設置して通気領域を前記仮網戸で覆うことを特徴とする建造物の修繕工事方法。
【請求項2】
前記仮網戸は、上下に伸縮可能な構造であって、
前記室内の窓額縁に前記仮網戸の上部及び下部を当接させて固定することを特徴とする請求項1に記載の建造物の修繕工事方法。
【請求項3】
建造物の室内に備えられた窓の一部を開放した部分の前記窓よりも室内側に設置する仮網戸であって、
左右一対の縦枠と上下一対の横枠とからなる枠体に網を張設して成る第一網戸体と、
前記第一網戸体を上下に摺動可能に保持するものであって、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とからなる枠体に網を張設して成る第二網戸体と、
を備えたことを特徴とする仮網戸。
【請求項4】
前記第二網戸体の前記縦枠の内側に摺動溝を備え、
前記第一網戸体の前記縦枠の外側を前記摺動溝に対向するように摺動可能に組み合わせたことを特徴とする請求項3に記載の仮網戸。
【請求項5】
前記第一網戸体又は前記第二網戸体の前記横枠の外側部分に緩衝部材又は滑り止め部材を備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載の仮網戸。
【請求項6】
前記第一網戸体と前記第二網戸体との摺動箇所に摩擦軽減部材を備えたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の仮網戸。
【請求項7】
前記第一網戸体又は前記第二網戸体の前記横枠の外側部分に前記第一網戸体又は前記第二網戸体を前記仮網戸の中央方向に弾性的に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の仮網戸。
【請求項8】
前記第一網戸体又は前記第二網戸体に落下防止手段を備えたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の仮網戸。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基本性能を維持するために定期的に実施される大規模修繕工事等の建造物の修繕工事方法及びその建造物の修繕工事の際に使用する仮網戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マンション等の集合住宅の定期的なメンテナンスや老朽化対策のために、大規模修繕工事を行うことが知られている。大規模修繕工事の中には、様々な工事が含まれており、足場仮設工事、下地補修工事、シーリング工事、高圧水洗浄工事、塗装工事等の各種工事が順次行われることが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1では、様々な模様を立体的に表現することができ、大規模修繕工事等にも利用される建造物外壁の塗装方法に関する技術が開示されている。
また、特許文献2では、アルカリ性洗浄水を用いた外壁洗浄、あるいは、酸性洗浄剤を用いて外壁の洗浄を行う際における酸性洗浄剤を洗い流す手段として適用することができ、大規模修繕工事等にも利用される建物外壁の洗浄方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−063814号公報
【特許文献2】特開2013−086033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示すような大規模修繕工事が始まると、工事期間中は工事を進捗させるために居住者は種々の制限を受けることになり、それが居住者にとっては多大なストレスになっていた。
例えば、大規模修繕工事においては、窓に取り付けていた網戸は取り外さなくてはいけないので、各居住者は自ら網戸を取外し、その取外した網戸を室内等で各自保管する必要がある。さらに、網戸を取り外した後は、窓を閉めて施錠をし、カーテンを閉めて各自プライバシーを守る必要があるので、室内に入射する日光が遮られると共に、室内の風通しも悪くなる。
そのため、居住者にとっては、室内が暑くなって体調不良を起こしたり、換気をすると外から蚊等の虫や異物が入ってきたりする等の不都合があった。また、窓を閉め切っているため、部屋の湿度が高くなり、カビが生える等の不都合もあった。さらに、普段は自由に出入りできていたバルコニーにも、工事期間中は自由に出入りできなくなり、洗濯等の日常生活にも不都合を生じていた。
以前から上記のようなことに対する苦情が居住者から多数出ており、その解消策が求められてきているが、工事作業者としても、居住者を説得して我慢してもらう以外には解決方法はなく、大規模修繕工事の期間中、その建造物内で生活をする居住者は、安全で快適な生活を送ることができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、大規模修繕工事等の建造物の修繕工事の際に、工事期間中であっても居住者が安全で快適な生活環境を保持することができる建造物の修繕工事方法及びその建造物の修繕工事の際に使用することができる仮網戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の建造物の修繕工事方法によれば、建造物の修繕工事方法において、前記建造物の室内に備えられた窓の一部を開放して前記室内を通気可能状態とし、前記窓を開放した部分の前記窓よりも室内側に仮網戸を設置して通気領域を前記仮網戸で覆うこと、により解決される。
また、前記仮網戸は、上下に伸縮可能な構造であって、前記室内の窓額縁に前記仮網戸の上部及び下部を当接させて固定すること、が好適である。
【0008】
このように、本発明では、大規模修繕工事等の建造物の修繕工事期間中、室内に備えられた窓の一部を開放して通気領域を確保し、その通気領域に仮網戸を設置することにより、風通しが良くなり室内を効率良く換気することができるうえ、虫や異物等の外からの侵入を好適に防止することができる。そのため、居住者は、工事期間中であっても安全で快適な生活環境を保持することができる。
特に、仮網戸を上下に伸縮可能な構造とし、窓額縁に仮網戸の上部及び下部を当接させて固定することにより、種々の窓サイズに対応可能となるうえ、わざわざ窓のサッシレールに嵌め込む必要もなく上下の窓額縁に当接させて固定するだけで済むため、簡単に設置することができる。また、仮網戸は、サッシレール上の窓の移動領域とは異なる領域に設置することになるため、仮網戸を設置した状態まま、窓を全開にしてバルコニーに自由に出入りすることができたり、窓を閉めて施錠したりすることもできる。
【0009】
また、前記課題は、本発明の仮網戸によれば、建造物の室内に備えられた窓の一部を開放した部分の前記窓よりも室内側に設置する仮網戸であって、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とからなる枠体に網を張設して成る第一網戸体と、前記第一網戸体を上下に摺動可能に保持するものであって、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とからなる枠体に網を張設して成る第二網戸体と、を備えたこと、により解決される。
また、前記第二網戸体の前記縦枠の内側に摺動溝を備え、前記第一網戸体の前記縦枠の外側を前記摺動溝に対向するように摺動可能に組み合わせたこと、が好適である。
また、前記第一網戸体又は前記第二網戸体の前記横枠の外側部分に緩衝部材又は滑り止め部材を備えたこと、が好適である。
また、前記第一網戸体と前記第二網戸体との摺動箇所に摩擦軽減部材を備えたこと、が好適である。
また、前記第一網戸体又は前記第二網戸体の前記横枠の外側部分に前記第一網戸体又は前記第二網戸体を前記仮網戸の中央方向に弾性的に付勢する付勢手段を備えたこと、が好適である。
また、前記第一網戸体又は前記第二網戸体に落下防止手段を備えたこと、が好適である。
【0010】
このように、第一網戸体と、その第一網戸体を上下に摺動可能に保持する第二網戸体の2つの網戸体から仮網戸を構成することにより、仮網戸全体が上下に伸縮自在となり、高さ寸法の変更が可能となる。そのため、建造物の修繕工事において仮網戸を窓に設置する際、種々の窓サイズにも対応可能となり、簡単に設置することができる。
特に、第二網戸体の縦枠の内側に摺動溝を形成し、第一網戸体の縦枠の外側をその摺動溝に対向するように摺動可能に組み合わることにより、部品点数が増えたり、複雑な構成にしたりすることなく、好適に仮網戸全体を上下に伸縮自在として高さ寸法の変更が可能となる。
また、第一網戸体又は第二網戸体の横枠の外側部分、具体的には、仮網戸を設置したときに上下の窓額縁に当接する箇所に、摩擦係数の高いゴムやクッションスポンジ等の緩衝部材や滑り止め部材を備えたことにより、仮網戸の設置が容易になると共に、窓額縁を傷付けることなく保護することができ、設置した仮網戸を安定して保持することができる。
また、第一網戸体と第二網戸体との摺動箇所に摺動を補助するブラシ等の摩擦軽減部材を備えることにより、第一網戸体又は第二網戸体の上下の伸縮がよりスムーズになる。
また、第一網戸体又は第二網戸体の前記横枠の外側部分、具体的には、仮網戸を設置したときに上下の窓額縁に当接する箇所に、前記第一網戸体又は前記第二網戸体を仮網戸の中央方向(上下方向)に弾性的に付勢するスプリングやゴム等の付勢手段を備えたことにより、仮網戸の設置が容易になると共に、設置した仮網戸を安定して保持することができる。
また、第一網戸体又は前記第二網戸体に窓額縁等に引っ掛けるためのワイヤー等の落下防止手段を備えたことにより、設置した仮網戸を安定して保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の建造物の修繕工事方法及び仮網戸によれば、大規模修繕工事等の建造物の修繕工事の際に、工事期間中であっても居住者が安全で快適な生活環境を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る仮網戸の斜視図である。
図2】本発明に係る仮網戸の正面図である。
図3】本発明に係る仮網戸の正面図である。
図4】本発明に係る仮網戸の側面図である。
図5】本発明に係る仮網戸を窓に設置した状態を示す概略図である。
図6図5のA−A線断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る仮網戸の斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る仮網戸の要部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本実施形態>
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について図面を参照して説明する。
本実施形態は、大規模修繕工事等の建造物の修繕工事方法及びその建造物の修繕工事の際に使用する仮網戸に関するものであり、特に、建造物の修繕工事の際に仮網戸を設置することによって、室内の換気を効率良く行い、工事期間中であっても居住者が安全で快適な生活環境を保持することができる建造物の修繕工事方法及び仮網戸の発明に関するものである。
【0014】
まず、建造物の修繕工事の際に使用する仮網戸1の構成について説明する。
図1は、仮網戸1の伸長状態を示す斜視図である。図2は、仮網戸1の収縮状態を示す正面図である。図3は、仮網戸1の伸長状態を示す正面図である。図4は、仮網戸1の伸長状態を示す側面図である。
【0015】
図1乃至図4に示すように、仮網戸1は、第一網戸体11及び第二網戸体21の2枚の網戸体を上下に摺動可能にそれぞれの一面を重ね合せて接続することにより構成されている。
【0016】
第一網戸体11は、左右一対の縦枠12と上下一対の横枠(上枠13及び下枠14)とによって四辺を囲うように組まれた枠体に網部15を張設することによって構成されている。網部15は、その四辺を枠体(縦枠12、上枠13及び下枠14)に接着剤等により固定されている。本実施形態においては、仮網戸1を設置したときに外側(バルコニー側)に位置する面に網部15は取り付けられているが、これに限定されるものではない。
【0017】
上枠13の外側部分(上側部分)は、仮網戸1の上部端面となる部分であるが、その外側部分には、滑り止めも兼用する摩擦係数が高いゴムやクッションスポンジ等の緩衝部材16が接着剤等により上枠13の長手方向に沿って固定されている。緩衝部材16は、本実施形態のように上枠13の外側部分全面に備えることとしてもよいし、一部に備えることとしてもよい。
また、左右両方の縦枠12の外側部分には、繊維を束ねたブラシ状の摩擦軽減部材17が接着剤等により縦枠12の長手方向に沿って固定されている。摩擦軽減部材17は、本実施形態のように左右両方の縦枠12の外側部分全面に備えることとしてもよいし、一部に備えることとしてもよい。
【0018】
第一網戸体11は、第二網戸体21の内側領域にて上下に摺動可能に接続されているが、第一網戸体11を摺動させやすいように、第一網戸体11の略中央部分に左右の縦枠12を連絡した状態で設置された把持部18を備えている。把持部18は、第一網戸体11を摺動させる際にハンドルの役目を果たす。なお、本実施形態では、把持部18は、人の手で握りやすいように円柱形状となっている。
また、摺動可能な第一網戸体11を任意の位置で固定するために、下枠14の略中央部分に固定ネジ19を備えている。固定ネジ19は、下枠14の内部で不図示の固定手段に螺合されており、固定ねじを締め付けると第一網戸体11が摺動不能になる構成である。
【0019】
第二網戸体21は、左右一対の縦枠22と上下一対の横枠(上枠23及び下枠24)とによって四辺を囲うように組まれた枠体に網部25を張設することによって構成されている。網部25は、その四辺を枠体(縦枠22、上枠23及び下枠24)に接着剤等により固定されている。本実施形態においては、仮網戸1を設置したときに外側(バルコニー側)に位置する面に網部25は取り付けられているが、これに限定されるものではない。また、上枠23は、第一網戸体11と干渉しない形状である。
【0020】
下枠24の外側部分(下側部分)は、仮網戸1の下部端面となる部分であるが、その外側部分には、滑り止めも兼用する摩擦係数が高いゴムやクッションスポンジ等の緩衝部材26が接着剤等により下枠24の長手方向に沿って固定されている。緩衝部材26は、本実施形態のように下枠24の外側部分全面に備えることとしてもよいし、一部に備えることとしてもよい。
また、左右両方の縦枠22の内側部分には、第一網戸体11の縦枠12を摺動可能に保持するための摺動溝27が、縦枠22の長手方向に沿って形成されている。
【0021】
上記構成の第一網戸体11と第二網戸体21は、摺動可能に組み合わせて接続されているが、具体的には、第一網戸体11の縦枠12の外側部分が第二網戸体21の縦枠22の内側部分に形成された摺動溝27に対向する状態で上下に摺動可能に嵌め込まれている。
このとき、本実施形態では、第一網戸体11の縦枠12の外側部分には摺動を補助するための摩擦軽減部材17を備えているので、縦枠12と摺動溝27とが直接接触することなく、摩擦軽減部材17を介した状態となっている。そのため、第一網戸体11の摺動がスムーズになる。
なお、摩擦軽減部材17は、第一網戸体11と第二網戸体21の摺動箇所に設けてあればよいので、本実施形態のような第一網戸体11の縦枠12の外側部分ではなく、第二網戸体21の摺動溝27側に備えることとしてもよい。
【0022】
仮網戸1の高さ寸法を調整する場合、例えば、図2に示す収縮状態から図3に示す伸長状態に変形する際には、第一網戸体11の下枠14に備えられた固定ネジ19を緩め、把持部18を持って第一網戸体11を上方に引き上げる。このとき、第一網戸体11の縦枠12は、第二網戸体21の縦枠22に形成された摺動溝27内を摺動することにより移動する。そして、任意の高さ位置まで引き上げたら、固定ネジ19を締め付けて第一網戸体11を摺動不能にして固定する。
【0023】
次に、上述した仮網戸1の使用方法、すなわち、仮網戸1を使用した建造物の修繕工事方法について説明する。本実施形態では、一例として、サッシレール4上を移動する引き違いの窓2を備えた窓額縁3に仮網戸1を設置する場合について説明する。
図5は、仮網戸1を窓2に設置した状態を示す概略図である。図6は、図5のA−A線断面図である。
【0024】
建造物の修繕工事が開始されると、まず、窓2の一部を開放して通気領域(隙間)を確保し、室内を通気可能状態とする。このとき、窓2を開ける幅は、仮網戸1の横幅と同等かやや狭い範囲とする。例えば、仮網戸1の横幅が25cmであれば、窓2を約25cmまで開けることができる。
【0025】
窓2を開けて通気領域を確保した後、その通気領域を覆うように、サッシレール4上の窓2の移動領域とは重複しない位置であって、その窓2が移動するサッシレール4よりも室内側の窓額縁3に仮網戸1を設置する。
具体的には、窓2の高さ(厳密には窓額縁3の高さ)に合わせて、仮網戸1の高さ寸法を調整する。仮網戸1の高さ寸法を窓額縁3の高さに合せたら、仮網戸1の下端部分に備える緩衝部材26を下側の窓額縁3に当接させ、仮網戸1の上端部分に備える緩衝部材16を上側の窓額縁3に当接させることにより、窓額縁3に仮網戸1を固定する。このとき、仮網戸1の上下端面には緩衝部材16,26を備えているので、窓額縁3が傷付く心配もない。また、緩衝部材16,26は、摩擦係数が高く滑り止め効果も有しているので、仮網戸1を窓額縁3に安定して保持することができる。
なお、仮網戸1を設置する際には、仮網戸1の高さを窓額縁3の高さよりもやや低くして仮留めしておき、窓額縁3に嵌め込んでからさらに伸長させて高さを適合させるようにすると設置しやすい。
【0026】
本実施形態では、仮網戸1は、窓2よりも室内側の窓額縁3に設置されている。このように、窓額縁3に設置した仮網戸1は、サッシレール4上の窓2の移動領域とは重複しないため、仮網戸1は一度設置したら、設置したままで窓2を完全に閉めることができ施錠することもできる。また、外(バルコニー側)に出たい場合は、仮網戸1を設置したまま、さらに窓2を開ければよい。
また、補助錠を使用すれば、通気領域を確保したまま窓2を施錠することもできる。さらに、仮網戸1の伸縮を可能とする固定ネジ19は室内側に位置するので、外部からは仮網戸1を収縮させて取外すこともできない。
【0027】
このように、本実施形態では、大規模修繕工事等の建造物の修繕工事期間中、室内に備えられた窓2の一部を開放して通気領域を確保し、その通気領域に仮網戸1を簡単に設置することにより、風通しが良くなり室内を効率良く換気することができるうえ、虫や異物等の外からの侵入を好適に防止することができる。そのため、居住者は、工事期間中であっても安全で快適な生活環境を保持することができる。
【0028】
<他の実施形態>
次に、本発明の変形例である他の実施形態について図7及び図8を参照して説明する。
図7は、他の実施形態に係る仮網戸1の斜視図である。図8は、他の実施形態に係る仮網戸1の要部を示す部分断面図であり、(a)はケーシング31内のスプリング32が伸長した状態を示し、(b)はスプリング32が収縮した状態を示すものである。
【0029】
他の実施形態における仮網戸1は、図7及び図8に示すように、付勢手段であるスプリング32を内部に備えたケーシング31が、第二網戸体21に取付けられていることに特徴を有する。
具体的には、ケーシング31は、第二網戸体21の縦枠22の一部と下枠24とをケーシング31の内側領域にて上下に摺動可能な状態で嵌め込むことにより、第二網戸体21と接続されている。このとき、下枠24の外側部分(下側部分)は、ケーシング31内のスプリング32と接しており、そのスプリング32により、第二網戸体21全体が上方向へ付勢されている。
【0030】
この他の実施形態における仮網戸1を窓額縁3に設置する場合、仮網戸1の下端面(第二網戸体21に取り付けられたケーシング31の下端面)を下側の窓額縁3に当接させ、さらに仮網戸1を下方向に押さえつけることにより、図8(b)に示すようにスプリング32を収縮させる。そして、スプリング32を収縮させた状態で、仮網戸1の上端面(緩衝部材16)を上側の窓額縁3に嵌め込み当接させる。仮網戸1の上端面が上側の窓額縁3に当接すると、スプリング32の付勢力により仮網戸1は窓額縁3にしっかりと適合する。
このように、付勢手段であるスプリング32を備えた他の実施形態の仮網戸1であれば、仮網戸1の設置がさらに容易になると共に、設置した仮網戸1を安定して保持することができる。
【0031】
また、他の実施形態における仮網戸1は、図7に示すように、不図示の窓額縁3等に備えた突起部等に引っ掛けて吊るための落下防止手段であるワイヤー33を第一網戸体11の上枠13に備えたことに特徴を有する。
ワイヤー33は、伸縮自在の紐から成り、その一端には第一網戸体11の上枠13に形成された孔に連結されたフックが備え付けられており、他端である自由端側には円環部分を有している。仮網戸1を窓額縁3に設置したとき、ワイヤー33の円環部分を窓額縁3等の突起部等に引っ掛けて固定することにより、設置した仮網戸1をさらに安定して保持することができ、揺れや振動等でも仮網戸1が外れ難くなる。
【0032】
上記の実施形態では、主として本発明の建造物の修繕工事方法及びその建造物の修繕工事の際に使用する仮網戸について説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 仮網戸
2 窓
3 窓額縁
4 サッシレール
11 第一網戸体
12 縦枠
13 上枠
14 下枠
15 網部
16 緩衝部材
17 摩擦軽減部材
18 把持部
19 固定ネジ
21 第二網戸体
22 縦枠
23 上枠
24 下枠
25 網部
26 緩衝部材
27 摺動溝
31 ケーシング
32 スプリング
33 ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8